小説
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家の主
一つの家(炉)を治める者。
méira houmár tambór kelárail ínin.
読み:メーラ ホウマール タンボール ケラーライル イーニン。
| méir-a | houmár | tambór | kel-ár-ail | ínin. |
| 与える-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 雑穀<対格> | 伐る-<〜する人>-<〜らに> | それぞれ |
「「家の主は、樵たちそれぞれに雑穀を分け与える。」」
炉ばたで食べ物を分ける場面。受け手を与格 íninei で言い、誰のそれぞれかを複数属格 kelárar で添える。ínin は子音語幹の軽性として変化する。
méira houmár tambór faronárei, ré eséndo gromó éles krán.
読み:メーラ ホウマール タンボール ファロナーレイ、レー エセンド グロモー エーレス クラーン。
| méir-a | houmár | tambór | faronár-ei, | ré | es-énd-o | gromó | él-es | krán. |
| 与える-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 雑穀<対格> | 運び人-<与格> | <〜と(節)> | いる-<〜しますように>-<(重いものが)> | 体<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> | 硬い |
「家の主は、体が丈夫であるようにと、運び人に雑穀を与える。」
「ré+願望法」で目的を表す文。ここでの願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしいこと」を表す。主語の gromó は重性なので、願望法の語尾は -o になる。
mé vrinésa houmáran.
読み:メー ヴリネーサ ホウマーラン。
| mé | vrin-és-a | houmár-an. |
| <禁止・願いの打ち消し> | ないがしろにする-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 家の主-<対格> |
「家の主をないがしろにせぬこと。」
家の決まりを書いた戒めの文。当為法で主語を言わないので、「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。当為法の否定には mé を使う。
ésa anlóur némes houmár.
読み:エーサ アンロール ネーメス ホウマール。
| és-a | anlóur | ném-es | houmár. |
| いる-<(軽いものが)> | 親<主格> | <私>-<属格> | 家の主 |
「私の親は家の主だ。」
「AはBだ」の文で、繋辞 és- を先頭に置いている。anlóur は人を指すので軽性の子音語幹で、動詞は軽性の -a をとる。父か母かは区別しない。同じ流れの、親と同じ世代の親族(おじ・おばにあたる人)も指せる。
ké éses houmár? ésim.
読み:ケー エーセス ホウマール?エーシン。
| ké | és-es | houmár? | és-im. |
| <〜か> | いる-<あなたが> | 家の主 | いる-<私が> |
「「お前がこの家の主か?」「そうだ。」」
二人の発話。戸口で訪ねてきた者が家の者に尋ねる、くだけた問い。「AはBだ」の文も繋辞 és- で始める。高原語に「はい」にあたる語はないので、問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返して答える(éses → ésim)。2人称を使っているので下向きか並びの話し方で、目上の人には使わない。
méira houmár sáko torárei.
読み:メーラ ホウマール サーコ トラーレイ。
| méir-a | houmár | sáko | torár-ei. |
| 与える-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 塩<対格> | 客-<与格> |
「家の主は客に塩を出す。」
もてなしの作法を述べる文。小さな皿に塩をひとつまみ載せて出すのが、客への最高の礼とされる。語順は動詞–主語–目的語–与格。sáko「塩」は干潟から借りた語で重性なので、主格と対格が同じ形。
lúin mána houmár, mánimor tambór.
読み:ルーイン マーナ ホウマール、マーニモル タンボール。
| lúin | mán-a | houmár, | mán-imor | tambór. |
| とき | 食べる-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 食べる-<我々が> | 雑穀<対格> |
「家の主が箸をつけてから、我々は雑穀を食べる。」
家の中の食事の作法を言う文。年長の者、家の主が先に箸をつける。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。houmár は人を指すので軽性で、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。tambór は重性なので、対格も主格と同じ形。
méira houmár sáko torárei.
読み:メーラ ホウマール サーコ トラーレイ。
| méir-a | houmár | sáko | torár-ei. |
| 与える-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 塩<対格> | 客-<与格> |
「家の主が客に塩を与える。」
基本の語順「動詞–主語–目的語–与格」。受け手は与格で言う。sáko「塩」は干潟から借りた重性名詞で、対格は主格と同じ形。客に小皿で塩をひとつまみ出すのは、もてなしの最高の礼とされる。
lúin élþa elþá, dróumimor es houmáres.
読み:ルーイン エルサ エルサー、ドローミモル エス ホウマーレス。
| lúin | élþ-a | elþá, | dróum-imor | es | houmár-es. |
| とき | 燃える-<(軽いものが)> | 火<主格> | 悼む-<我々が> | から | 家の主-<属格> |
「火が燃えるあいだ、我らは家の主を悼む。」
火葬の場での言い方。死後一年は死者の名前を口にしないので、家の主のように立場で言い表す。悼む対象も es+属格で示す。
sáila houmár sáindarei sé.
読み:サイラ ホウマール サインダレイ セー。
| sáil-a | houmár | sáindar-ei | sé. |
| 喜ぶ-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 証文-<与格> | この<軽性> |
「家の主はこの証文を喜んでいる。」
喜ぶ理由は与格で示す。書かれた言葉が重い国なので、取り決めが証文に残ったことは喜ばれる。指示詞 sé は名詞句の終わりに置く。
grúuna houmár némei.
読み:グルーナ ホウマール ネーメイ。
| grúun-a | houmár | ném-ei. |
| 怒る-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | <私>-<与格> |
「家の主が私に怒っている。」
日常の言い方。怒りを向ける相手は与格で示す。主語の houmár は人なので、動詞は軽性の -a をとる。時制がないので、「怒った」とも「怒っている」とも訳せる。
dúmarim tambór sáun, houmár.
読み:ドゥーマリン タンボール サウン、ホウマール。
| dúmar-im | tambór | sáun, | houmár. |
| いただく-<私が> | 雑穀<対格> | 良い | 家の主 |
「よい雑穀をいただきます、ご主人。」
招かれた家で食事を受けるときの言い方。dúmar- は「食べる」の謙譲の補充形。tambór は重性なので主格と対格が同じ形になり、それに一致する sáun にも語尾がつかない。日常の呼びかけには呼格を使わず、役職や立場の名を文末に読点で区切って添える。
dróuma houmár ré ésa dulóur éles krán.
読み:ドローマ ホウマール レー エーサ ドゥロール エーレス クラーン。
| dróum-a | houmár | ré | és-a | dulóur | él-es | krán. |
| 嘆く-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | <〜と(節)> | いる-<(軽いものが)> | 子<主格> | <3人称単数・軽性>-<属格> | 頑固な |
「家の主は、息子が頑固だと嘆いている。」
ré は「〜と」の節を導く。節の中も動詞で始まる。人を重性で受けると侮辱になるので、頑固さを責める文であっても、主語の子は軽性の éisa で受ける。
méira houmár sáko torárei.
読み:メーラ ホウマール サーコ トラーレイ。
| méir-a | houmár | sáko | torár-ei. |
| 与える-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | もてなしの塩<対格> | 客-<与格> |
「家の主は客に塩を出して、手厚くもてなす。」
「塩を出す(与える)」は、小皿にひとつまみの塩を載せて出す最高の礼を言う慣用句で、手厚い歓迎そのものを指す。受け手の客は与格 torárei で、目的語の後ろに置く。
kéla houmár árnelais, ré esénde lúsa élei.
読み:ケーラ ホウマール アルネライス、レー エセンデ ルーサ エーレイ。
| kél-a | houmár | árnel-ais, | ré | es-énd-e | lúsa | él-ei. |
| 伐る-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 木-<〜たちを> | <〜と(節)> | いる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 日々の糧<主格> | <3人称単数・軽性>-<与格> |
「家の主は、粥に困らぬよう木を伐る。」
「ré+願望法」は目的を表す。所有は「ある+持ち主の与格」で言うので、「その人に粥がある」が「暮らしに困らない」という意味になる。élei は家の主を指す。ここでの lúsa は、日々の食い扶持を広く指している。
élþa elþá, kúula houmár tambór.
読み:エルサ エルサー、クーラ ホウマール タンボール。
| élþ-a | elþá, | kúul-a | houmár | tambór. |
| 燃える-<(軽いものが)> | 火<主格> | 煮る-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 雑穀<対格> |
「火が燃え、家の主が雑穀を煮ている。」
日々の炊事を言う文。主節を二つ、接続詞なしで読点で区切って並べている。どちらの節も VSO で、動詞が先に来る。tambór は重性なので、対格は主格と同じ形。
funeléra lisár tambór houmárar.
読み:フネレーラ リサール タンボール ホウマーラル。
| funelér-a | lisár | tambór | houmár-ar. |
| 書き留める-<(軽いものが)> | 書記<主格> | 雑穀<対格> | 家の主-<〜らの> |
「書記は家の主たちの雑穀を書き留める。」
役所の書記の務めを言う文。税として納められた雑穀を、家ごとに書き留めておく。tambór は重性なので、対格は主格と同じ形。houmárar は複数属格で「家の主たちの」。
méiran houmárai tambór brándalei.
読み:メーラン ホウマーライ タンボール ブランダレイ。
| méir-an | houmár-ai | tambór | brándal-ei. |
| 与える-<彼らが> | 家の主-<〜たちが> | 雑穀<対格> | 司-<与格> |
「家の主たちは司に雑穀を納める。」
乾風期の前半に、倉の司が税の雑穀を取り立てることを言う文。受け手の司は与格 -ei で言う。
tílan þelán houmáres.
読み:ティーラン セラーン ホウマーレス。
| tíl-an | þel-án | houmár-es. |
| 刻む-<彼らが> | 名前-<対格> | 家の主-<属格> |
「家の主の名を刻む。」
鋳物師が青銅の器に持ち主の名を入れる習わしを述べた文。銘は鋳型に刻んでから鋳こむ。主語を言わない3人称複数で、「(鋳物師たちは)〜する」という一般的な事柄を表す。名前を書いたり刻んだりするのは息を使わないので、禁忌には当たらない。
kánþa dóulin houmár tambór.
読み:カンサ ドーリン ホウマール タンボール。
| kánþ-a | dóulin | houmár | tambór. |
| 立っている穀物を刈る-<(軽いものが)> | もう | 家の主<主格> | 雑穀<対格> |
「家の主はもう雑穀を刈った。」
帳簿的な記録に近い言い方。相を表す語尾はないが、副詞 dóulin が「もう」を表し、干し上げ・脱穀へ送る前の収穫作業が済んだことを示す。
noumosénan houmárai.
読み:ノウモセーナン ホウマーライ。
| noumosén-an | houmár-ai |
| 顔色をうかがう-<彼らが> | 家の主-<〜たちが> |
「家の主たちが顔色をうかがい合った。」
集まりや相談の場面、また書物の記述に多い言い方。複数の者が判断の手がかりを得るため互いの顔を読む意。主語が複数なので動詞は3複数。noumosén- の第二義。
plúna houmár faronáran du orén.
読み:プルーナ ホウマール ファロナーラン ドゥ オレーン。
| plún-a | houmár | faronár-an | du | orén. |
| 使いに出す-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 運び人-<対格> | 下手 | 縁<対格> |
「家の主は運び人を縁へ使いに出す。」
家庭・職場での日常の文。段の低い運び人を、所定の用向きに遣る言い方。やや直截だが、この範囲では普通に使える。
ésa brál houmár
読み:エーサ ブラール ホウマール
| és-a | brál | houmár |
| いる-<(軽いものが)> | 父<主格> | 家の主<主格> |
「父は家の主である。」
家や炉の秩序を言う場面。存在・繋辞の文は és-+主語+述語の順になり、述語の名詞は自分の主格のままである。brál 自体は母方の父・父方の父を語形では区別しない。家系の流れや段を明確にする場面では、流れの属格や関係節を添えて区別する。
bála houmár nórlo.
読み:バーラ ホウマール ノルロ。
| bál-a | houmár | nórlo. |
| 空ける-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 寝床<対格> |
「家の主が寝床を空ける。」
日常の家の場面。主語は人を指す名詞で軽性、動詞は3人称単数軽性。寝床を次の者が使えるように残す基本義。
bála houmár aldáran torárei.
読み:バーラ ホウマール アルダーラン トラーレイ。
| bál-a | houmár | aldár-an | torár-ei. |
| 空ける-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 座-<対格> | 客-<与格> |
「家の主が客のために座を空ける。」
炉ばたの上座の作法。席を次の人、ここでは客に譲るため空ける。与格単数で利益者を示す。
hoinkráila houmár toráran fándoi.
読み:ホインクライラ ホウマール トラーラン ファンドイ。
| hoinkráil-a | houmár | torár-an | fánd-oi |
| 出迎える-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 客-<対格> | 戸口-<与格> |
「家の主は戸口で客を出迎える。」
もてなしや礼法の記述。fándoi は迎え場の与格。torár は軽性子音語幹の客で、対格単数は toráran。主語 houmár は人なので軽性。
kreuléla houmár, un houmbrúndoi.
読み:クレウレーラ ホウマール、ウン ホウンブルンドイ。
| kreul-él-a | houmár, | un | houmbrúnd-oi. |
| 拒む-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 中に | 寄り合い-<与格> |
「寄り合いの席では、家の主は拒むのでございましょう。」
改まった場での推し量り。直説法で断定せず、推量法で述べる。un+与格で「寄り合いの中で」。上位者や目上の人の行為を直接的に報告しない作法を示す。
世帯主
税や役所の記録の上で、世帯を代表する者。
lísa lisár þeláis houmárar.
読み:リーサ リサール セライス ホウマーラル。
| lís-a | lis-ár | þel-áis | houmár-ar. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 名前-<〜たちを> | 世帯主-<〜らの> |
「書記は世帯主たちの名を書き記す。」
税の取り立ての記録を述べる文。人は数えずに炉(世帯)を数えるので、役所の記録では世帯主の名を一つずつ書き並べる。名詞句は「名詞+属格」の順で、þeláis houmárar は「名・世帯主たちの」。
meirésan houmárai meiró tambóros brándalei.
読み:メイレーサン ホウマーライ メイロー タンボーロス ブランダレイ。
| meir-és-an | houmár-ai | meiró | tambór-os | brándal-ei. |
| 与える-<〜すべし>-<彼らが> | 世帯主-<〜たちが> | 税<対格> | 雑穀-<属格> | 司-<与格> |
「世帯主は、雑穀の税を司に納めるべし。」
法典の条文の文体。当為法 -és- で「〜すべし」を表す。強勢が接尾辞に移るので、語根 méir- の ´ は消える。受け手の司は与格 -ei で表す。
一つの炉(世帯)の主。炉の北側の一段高い座に座る。税と兵役では人を数えずに炉を数えるので、役所に対して世帯を代表するのも houmár である。
snénim houmárei.
読み:スネーニン ホウマーレイ。
| snén-im | houmár-ei |
| 泊まる-<私が> | 炉の主-<与格> |
「私は炉の主人のところに泊まる。」
客人として炉の主人の許しを得て一晩を預かる、一人称の日常的な言い方。炉の主を受益者として与格にとる。
sneníþa houmár toráran.
読み:スネニーサ ホウマール トラーラン。
| snen-íþ-a | houmár | torár-an |
| 泊まる-<〜させる>-<(軽いものが)> | 炉の主<主格> | 客-<対格> |
「炉の主人が客を泊める。」
基本語順 VSO に従い、動詞を文頭に置く。使役形 snen-íþ- で「泊める」。客人 torár は軽性子音語幹なので対格 toráran。
houmselván léunim, houmár.
読み:ホウンセルヴァーン レウニン、ホウマール。
| houmselv-án | léun-im, | houmár. |
| ただいま-<対格>, | 申す-<私が>, | 主 |
「「ただいま」と申し上げます、主よ。」
儀礼的・書面的な発話。houmselvá を名詞として引用し、軽性a語幹の対格形 houmselván にする。謙譲の léun- を用い、直接呼かけの houmár は無標のまま末尾に添える。実際の帰宅挨拶では、普通は無標主格 houmselvá を単独、または主格のまま用いる。
houmsíla houmár endríñan
読み:ホウンシーラ ホウマール エンドリーニャン
| houmsíl-a | houmár | endríñ-an |
| 炉ばたで諫める-<(軽いものが)> | 家主<主格> | 子-<対格> |
「家の主が炉ばたで子どもを諫めている。」
日常の家庭内の文。動詞 houmsíl- が軽性の主語 houmár に一致し、目的語 endríña は軽性 a 語幹の対格 -an をとる。声高に叱るのではなく、炉での所作を直し、越えてはならない線を静かに引かえすニュアンス。
名詞(軽性・子音語幹、-ár に強勢)。対 houmáran、複 houmárai
hóum「炉」+ -ár「〜する人」。
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