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この章では、名詞のまわりで働く語を扱います。名詞に一致する形容詞と分詞、名詞の代わりをする代名詞、名詞句を閉じる指示詞、名詞と組んで方向と位置を表す前置詞です。最後に、これらが名詞句の中でどう並ぶか、王や役人をどう呼ぶかをまとめます。
本来の形容詞は少ししかありません(gléin「清い」、þáil「澄んだ」など)。このほか、gróm「重い・粗野な」、fláin「軽い・上品な」、klér「冷たい」、káil「乾いた」、bróus「多い」、snír「少ない」なども形容詞として働きます。
日本語で形容詞にあたる語の多くは、実は動詞の分詞です(→ 第5章)。áuren「高い」は、もとは áur-「昇る」の分詞で「昇った」という意味でした。分詞は語根に -en をつけて作り、完了の意味をもちます。
形容詞と分詞は、置き場所も一致のしかたも同じなので、この章ではまとめて扱います。
形容詞と分詞は名詞の後ろに置き、名詞の性・数・格に一致させます。語尾は、軽性なら②型(aldár の型)、重性なら③型(gandér の型)と同じです(→ 3.4)。
| 軽性 | 重性 | |
|---|---|---|
| 単 主 | (なし) | (なし) |
| 単 対 | -an | (なし) |
| 単 属 | -es | -os |
| 単 与 | -ei | -oi |
| 双 主対 | -au | -ou |
| 双 属与 | -aun | -oun |
| 複 主 | -ai | -ul |
| 複 対 | -ais | -ul |
| 複 属 | -ar | -ur |
| 複 与 | -ail | -uls |
áuren「高い」の変化を、aldár「座」(軽性)と þráin「峰」(重性)につけて示します。
| 軽性 aldár áuren「高き座」 | 重性 þráin áuren「高い峰」 | |
|---|---|---|
| 単 主 | aldár áuren | þráin áuren |
| 単 対 | aldáran áurenan | þráin áuren |
| 単 属 | aldáres áurenes | þráinos áurenos |
| 単 与 | aldárei áurenei | þráinoi áurenoi |
| 双 主対 | aldárau áurenau | þráinou áurenou |
| 双 属与 | aldáraun áurenaun | þráinoun áurenoun |
| 複 主 | aldárai áurenai | þráinul áurenul |
| 複 対 | aldárais áurenais | þráinul áurenul |
| 複 属 | aldárar áurenar | þráinur áurenur |
| 複 与 | aldárail áurenail | þráinuls áurenuls |
aldána aldár áuren an dúnoi
読み:アルダーナ アルダール アウレン アン ドゥーノイ
| aldán-a | aldár | áur-en | an | dún-oi |
| おわす-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 上手 | 丘-<与格> |
「高き座は丘の上におわします。」
sénim lónan áurenan sélvanes.
読み:セーニン ローナン アウレナン セルヴァネス。
| sén-im | lón-an | áur-en-an | sélvan-es. |
| 見る-<私が> | 柱の木-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<対格> | セルヴァン-<属格> |
「私はセルヴァンの高い柱の木を見る。」
selvéna aurél virán fláinan.
読み:セルヴェーナ アウレール ヴィラーン フライナン。
| selvén-a | aurél | vir-án | fláin-an. |
| おっしゃる-<(軽いものが)> | あの方<主格> | 言葉-<対格> | 上品な-<軽性・対格> |
「あの方は上品なお言葉をおっしゃる。」
þóran planélai bróusai or flaindélail.
読み:ソーラン プラネーライ ブローサイ オル フラインデーライル。
| þór-an | planél-ai | bróus-ai | or | flaindél-ail. |
| 立つ-<彼らが> | 白樹皮の木-<〜たちが> | 多い-<〜たちが> | 日の出側 | 版の木-<〜らに> |
「版の木々の日の出側に、白樹皮の木がたくさん立っている。」
sán fáronul grómul ín an kórvoi.
読み:サーン ファーロヌル グロームル イーン アン コルヴォイ。
| sán | fáron-ul | gróm-ul | ín | an | kórv-oi. |
| いる<彼らが> | 荷-<〜たちが> | 重い-<〜たちが> | 一 | 上手 | 倉-<与格> |
「倉の北側に、重い荷がいくつかある。」
ほかの例:aldáres áurenes「高き座の」、þrén nadúlen「下りぬ段」(重・単・主)、elþái narímbenai「数えられぬ火」(軽・複・主)。
形容詞・分詞は、名詞の語形の性ではなく、名詞が指すもののいまの状態に一致します(→ 3.2.3)。伐った木を飾る分詞は、名詞が軽性でも重性の形になります(pélsei kélenoi「伐った脂の木に」)。ただし形容詞・分詞は、一致の階層(→ 3.2.5)の中で、名詞にいちばん近い語です。場面による転用(祀りの茶)では、ふつうの人は形容詞を元の性のまま残します。
性の違う名詞を並べたときは、人が一人でも含まれれば軽性、物どうしならいちばん近い名詞の性に合わせます(→ 3.2.7)。
ésau éndra si fáron káilau.
読み:エーサウ エンドラ シ ファーロン カイラウ。
| és-au | éndra | si | fáron | káil-au. |
| いる-<双数> | 人<主格> | と | 荷<主格> | 乾いた-<双数> |
「人と荷は乾いている。」
崖道の言葉では、双数の名詞を受ける形容詞を複数にします(→ 3.6.3)。
形容詞が述語になるときも、主語に一致させます。「AはBい」は、繋辞 és- を先頭に置いて「és- +主語+形容詞」の順に言います(→ 第6章)。
ésa lisím sélvanes gléin.
読み:エーサ リシーン セルヴァネス グレーン。
| és-a | lis-ím | sélvan-es | gléin. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜の技・〜さ・主格> | セルヴァン-<属格> | 清い |
「セルヴァンの書法は清い。」
éso dún náuren.
読み:エーソ ドゥーン ナウレン。
| és-o | dún | n-áur-en. |
| いる-<(重いものが)> | 丘<主格> | <〜ない>-昇る-<〜した・〜された> |
「丘は高からぬ(低い)。」
分詞と形容詞の頭に na- をつけると、その性質を打ち消します。母音で始まる語の前では n- になります。na- は無強勢です。
| もとの語 | na- のついた形 |
|---|---|
| dúlen「下りた」 | nadúlen「下りぬ」 |
| rímben「数えられた」 | narímben「数えられていない」 |
| gléin「清い」 | nagléin「清からぬ」 |
| áuren「高い」 | náuren「高からぬ」 |
na éso ílmo nagléin.
読み:ナ エーソ イルモ ナグレーン。
| na | és-o | ílmo | na-gléin. |
| <〜ない> | いる-<(重いものが)> | 水<主格> | <〜ない>-清い |
「水は清からぬものではない(悪くない水だ)。」
形容詞に -in をつけると、副詞「〜く」になります(gléinin「清く」、fláinin「軽く」)。これは動詞の副動詞 -in(→ 第5章)や、代名詞から副詞を作る -in(sérin「このように」、pórin「どのように」。→ 4.4.5)と同じ語尾です。-in の形は一致せず、形が変わりません。
lísa lisár plánan gléinin.
読み:リーサ リサール プラーナン グレーニン。
| lís-a | lis-ár | plán-an | gléin-in. |
| 書く-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | 帳簿-<対格> | 清い-<〜して・〜く> |
「書記は帳簿を清く書く。」
gléin・fláin の ein・ain は、二重母音に n がついた一つの音節で、-in ではありません。-in はいつも音節を一つ増やします(glei-nin)。
分詞は短い関係節の代わりになります(pélsa kélen「伐られた脂の木」)。主語と目的語の両方を言いたいときなど、分詞で言えない長い修飾には、関係節 te を使います(→ 第7章)。
比べる言い方にも、形容詞と前置詞 an・du を使います。「〜より(その性質が)まさって」は an +与格、「〜より劣って」は du +与格、「いちばん〜」は an +同じ仲間の複数与格です(áuren an lónail「柱の木々の上手に高い」=いちばん高い)。詳しくは第6章で扱います。
ésa lóna áuren an pélsei.
読み:エーサ ローナ アウレン アン ペルセイ。
| és-a | lóna | áur-en | an | péls-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 柱の木<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | 上手 | 脂の木-<与格> |
「柱の木は脂の木より高い。」
人称代名詞は、1人称・2人称・3人称の単数と複数、それに人称を区別しない双数があります。3人称は、単数・複数とも軽性と重性を区別します。変化のしかたは、次の三種類に分かれます。
| 主 | 対 | 属 | 与 | |
|---|---|---|---|---|
| 1単 | ném | néman | némes | némei |
| 2単 | tás | tásan | táses | tásei |
| 3単・軽 | él | élan | éles | élei |
| 3単・重 | ó | ó | ós | ói |
| 1複 | némor | némoran | némores | némorei |
| 2複 | társ | társan | társes | társei |
| 3複・軽 | élai | élais | élar | élail |
| 3複・重 | óul | óul | óur | óuls |
| 双数(人称なし) | dáun | dáun | dáunaun | dáunaun |
tóra lisár te séna néman.
読み:トーラ リサール テ セーナ ネーマン。
| tór-a | lis-ár | te | sén-a | ném-an. |
| 来る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | <関係節> | 見る-<(軽いものが)> | <私>-<対格> |
「私を見る書記が来る。」
anórel, an kórvoi, léisin sáindaran, méira lisár élan senárei.
読み:アノーレル、アン コルヴォイ、レーシン サインダラン、メーラ リサール エーラン セナーレイ。
| anórel, | an | kórv-oi, | léis-in | sáindar-an, | méir-a | lis-ár | él-an | sen-ár-ei. |
| 昨日 | 上手 | 倉-<与格> | 書く<〜し終えた>-<〜して・〜く> | 証文-<対格> | 与える-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人・主格> | <3人称単数・軽性>-<対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「昨日、倉の北側で、証文を書き終えて、書記はそれを目付に渡した。」
rímban brándalai némoran.
読み:リンバン ブランダライ ネーモラン。
| rímb-an | brándal-ai | némor-an. |
| 物のように扱う-<彼らが> | 司-<〜たちが> | <我々>-<対格> |
「お役所の連中は、俺たちを物のように扱う。」
二つめの例の élan「それを」は、軽性の証文 sáindar を受けています。3人称の代名詞は人だけでなく、物も指します。軽性のもの(人、鳥獣、言葉、紙など)は él、重性のもの(石、金属、硬木、荷、霧、泥など)は ó で受けます。
ké éso tambór tásei? na éso tambór némei.
読み:ケー エーソ タンボール ターセイ?ナ エーソ タンボール ネーメイ。
| ké | és-o | tambór | tás-ei? | na | és-o | tambór | ném-ei. |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | 雑穀<主格> | <あなた>-<与格> | <〜ない> | いる-<(重いものが)> | 雑穀<主格> | <私>-<与格> |
「「お前、雑穀はあるか?」「私には雑穀はない。」」
dáun は人称を区別しない双数の代名詞で、「われら二人」「お前たち二人」「あの二人」のどれにもなります。夫婦、組になって働く運び人、ひと組の綱など、二つでそろったものを指すのに好まれます。
gélau némor dáun du orén.
読み:ゲーラウ ネーモル ダウン ドゥ オレーン。
| gél-au | némor | dáun | du | orén. |
| 行く-<双数> | <我々> | 二人 | 下手 | 縁<対格> |
「我ら二人は縁へ行く。」
biléndes dáunaun.
読み:ビレンデス ダウナウン。
| bil-énd-es | dáun-aun. |
| 仲立ちする-<〜しますように>-<あなたが> | 二人-<双数の〜の・〜に> |
「二人の仲立ちを頼む。」
ó は3人称単数・重性の代名詞で、石・金属・硬木・荷・霧・泥など、重性の名詞が指すものを受けます。
| 文 | ó の位置 | 読み方 |
|---|---|---|
| 他動詞、前置きなし | 動詞の後ろに単独 | 目的語(dulíþo ó「それを下ろす」) |
| 他動詞、重性の主語を前に出した | 動詞のすぐ後ろ | 再述の ó(主語の枠を埋める。ílmo dulíþo ó fáron) |
| 自動詞 | 動詞の後ろ | 主語。目的語の枠がないので紛れない。わざわざ言うので強調になる |
| 自動詞 | 動詞の前 | 主語の強調(ó dúlo「ほかでもなく、それが下りていく」)。再述の ó は要らない |
dulíþo ó.
読み:ドゥリーソ オー。
| dul-íþ-o | ó. |
| 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・対格> |
「(それが)それを下ろす。」
ó dúlo.
読み:オー ドゥーロ。
| ó | dúl-o. |
| <3人称単数・重性・主格> | 下る-<(重いものが)> |
「ほかでもなく、それが下りていく。」
ílmo dulíþo ó fáron.
読み:イルモ ドゥリーソ オー ファーロン。
| ílmo | dul-íþ-o | ó | fáron. |
| 水<主格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・主格> | 荷<対格> |
「水こそが、荷を下ろす。」
gandér dulíþo óo.
読み:ガンデール ドゥリーソ オー。
| gandér | dul-íþ-o | óo. |
| 硬木<主格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・NOM+ACC> |
「硬木こそが、それを下ろす。」
| 形 | 意味 | 使い方 |
|---|---|---|
| aurél | あの方 | 3人称単数の尊敬の代名詞。話題の目上の人を、名を口にせず、役職名をくり返さずに受ける。数えられないので数詞も双数もつけない。複数 aurélai は「あの方々」というひとまとまりの意味だけ。今の王には使わず、王は aldár「座」で受ける |
| duném | 手前 | 1人称単数の謙譲の代名詞。上向きの話し方で、自分をわざわざ言う必要があるときに ném の代わりに使う。主語は動詞の語尾でわかるので、ふつう与格 dunémei「手前に」や属格 dunémes「手前の」で現れる。手紙や願い出の書面に多い。同じ段の相手に使うと、かえってよそよそしく皮肉に響く |
glóira aurél es orénos.
読み:グロイラ アウレール エス オレーノス。
| glóir-a | aurél | es | orén-os. |
| お越しになる-<(軽いものが)> | あの方<主格> | から | 縁-<属格> |
「あの方は縁からお越しになる。」
aumeirénde ausenár sáindaran dunémei.
読み:アウメイレンデ アウセナール サインダラン ドゥネーメイ。
| au-meir-énd-e | au-sen-ár | sáindar-an | duném-ei. |
| <お〜になる・御〜>-与える-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格> | 証文-<対格> | 手前-<与格> |
「目付殿に、手前へ証文をお下げ渡しいただきたく存じます。」
élaur「昇りゆく人」 は、亡くなってから一年のあいだ、名を口にできない死者を指す代名詞です。él「彼」+áur-「昇る」からできた語で、「昇っている彼」の意味です。複合語は後ろの要素に強勢を置くのがふつうですが(→ 9.4.1)、élaur は前の él に強勢を残します。代名詞として古くから固まった語で、一般の決まりの外にある例外です。名を呼ぶと、上へ昇っていく途中の魂を呼び戻してしまうとされるので、その代わりに使います。一年が過ぎて昇名が定まると使わなくなり、昇名に au- を添えて呼びます。王には使わず、王については「お昇りになった座」と言います(→ 3.2.8・3.8.5)。
mír「自分」 は、同じ節の主語と同じ人・ものを指し返す再帰代名詞です。ré の節の中の mír は ré の節の主語を指し、言った人・思った人は指しません(→ 7.2)。人称・性を区別しないので、私・お前・彼のどれにも、また重性の主語にも使えます。②型の語尾で変化します(対 míran、属 míres、与 mírei)。目上の人が主語のときは、尊敬形 aumír「御自身」 を使います。
flúuna faronár míran.
読み:フルーナ ファロナール ミーラン。
| flúun-a | faronár | mír-an. |
| 洗う-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 自分-<対格> |
「運び人は自分の体を洗う。」
lóima lourvirár ráun míres es fóndaros.
読み:ロイマ ロウルヴィラール ラウン ミーレス エス フォンダロス。
| lóim-a | lourvirár | ráun | mír-es | es | fóndar-os. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 系譜読み<主格> | 流れ<対格> | 自分-<属格> | から | 源-<属格> |
「系譜読みは、源から自分の流れを唱える。」
相互の代名詞 mírmir「互い」。 二人以上の者が、たがいに相手に同じことをするときは、mír を重ねた mírmir を使います。ínin「それぞれ」(ín の重ね形)と同じ作りです。
| 言いたいこと | 言い方 |
|---|---|
| 互いに相手を〜する | 目的語・与格に mírmir |
| それぞれが自分を〜する | 主語の後ろに ínin、目的語に mír |
| それぞれが自分の〜を…する | 主語の後ろに ínin、持ち主に míres |
flúunau dáu faronárau mírmiran.
読み:フルーナウ ダウ ファロナーラウ ミルミラン。
| flúun-au | dáu | faronár-au | mírmir-an. |
| 洗う-<双数> | 二 | 運び人-<双数> | 互い-<対格> |
「二人の運び人は互いを洗った。」
flúunau dáu faronárau ínin míran.
読み:フルーナウ ダウ ファロナーラウ イーニン ミーラン。
| flúun-au | dáu | faronár-au | ínin | mír-an. |
| 洗う-<双数> | 二 | 運び人-<双数> | それぞれ | 自分-<対格> |
「二人の運び人は、それぞれ自分の体を洗った。」
méiran kelárai fúnel mírmirei.
読み:メーラン ケラーライ フーネル ミルミレイ。
| méir-an | kel-ár-ai | fúnel | mírmir-ei. |
| 与える-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 綱<対格> | 互い-<与格> |
「樵たちは互いに綱を渡した。」
táulan kelárai ínin fúnel míres.
読み:タウラン ケラーライ イーニン フーネル ミーレス。
| tául-an | kel-ár-ai | ínin | fúnel | mír-es. |
| 取る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | それぞれ | 綱<対格> | 自分-<属格> |
「樵たちは、それぞれ自分の綱を取った。」
| 形 | 意味 | 使い方 |
|---|---|---|
| páin | 誰か | 不特定の人。na と組むと「誰も〜ない」。霧の中で名を呼べないとき、遠回しに「誰か」と呼びかけるのにも使う |
| póin | 何か | 不特定のもの。na と組むと「何も〜ない」。物は重性で受けるのがふつうなので、重性の形をとる |
| ómbra/ómbro | すべて・みな | 全体・全員。軽性 ómbra、重性 ómbro。単数は「まるごと・全体」、複数 ómbrai/ómbrul は「みな・どれも」 |
| ínin | それぞれ | ひとつひとつに分けて言う配分の語 |
na ésa páin séndoi.
読み:ナ エーサ パイン センドイ。
| na | és-a | páin | sénd-oi. |
| <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 誰も<主格> | ここ-<与格> |
「ここには誰もいない。」
ké éso póin tásei?
読み:ケー エーソ ポイン ターセイ?
| ké | és-o | póin | tás-ei? |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | 何か<主格> | <あなた>-<与格> |
「何か持っているか。」
hóinan ómbra kelárar.
読み:ホイナン オンブラ ケラーラル。
| hóin-an | ómbra | kel-ár-ar. |
| 帰る-<彼らが> | みな<主格> | 伐る-<〜する人>-<〜らの> |
「樵たちはみな帰っていく。」
méira houmár tambór kelárail ínin.
読み:メーラ ホウマール タンボール ケラーライル イーニン。
| méir-a | houmár | tambór | kel-ár-ail | ínin. |
| 与える-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 雑穀<対格> | 伐る-<〜する人>-<〜らに> | それぞれ |
「家の主は、樵たちそれぞれに雑穀を分け与える。」
lísa páin þelán míres sáindarei.
読み:リーサ パイン セラーン ミーレス サインダレイ。
| lís-a | páin | þel-án | mír-es | sáindar-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 誰か<主格> | 名前-<対格> | 自分-<属格> | 証文-<与格> |
「誰かが証文に自分の名を書いていった。」
疑問詞も名詞と同じように格で形が変わり、文の先頭、動詞の前に出ます。疑問文の組み立てと、目上の人への尋ね方は第6章で扱います。ここでは形をまとめます。
| 主 | 対 | 属 | 与 | |
|---|---|---|---|---|
| pá「誰」(軽性・a語幹) | pá | pán | pés | péi |
| pó「何」(重性・o語幹) | pó | pón(前置詞の後ろでは pó) | pós | pói |
pá éses? es pós tóres?
読み:パー エーセス?エス ポース トーレス?
| pá | és-es? | es | pós | tór-es? |
| 誰<主格> | いる-<あなたが> | から | 何<属格> | 来る-<あなたが> |
「お前は誰だ。どこから来た?(なぜ来た?)」
pón dulíþo gandér?
読み:ポーン ドゥリーソ ガンデール?
| pón | dul-íþ-o | gandér? |
| 何<対格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | 硬木<主格> |
「硬木は何を下ろすのか。」
pó dulíþo gandér?
読み:ポー ドゥリーソ ガンデール?
| pó | dul-íþ-o | gandér? |
| 何<主格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | 硬木<対格> |
「何が硬木を下ろすのか。」
そのほかの疑問詞:
| 形 | 意味 | 使い方 |
|---|---|---|
| pél/pól | どの・どれ | いくつかの中から一つを選ばせる。指示詞と同じく名詞の後ろに置き、性によってだけ形が変わる(軽性 pél、重性 pól)。名詞句ごと文頭に出す。目上の人を選ばせる問いには使わない |
| pómbar | いくつ | 物の数を尋ねる。名詞の前に置き、名詞は複数(→ 3.7.5) |
| plúin | いつ | 時を尋ねる(plúin tóres?「いつ来た」)。an plúin「いつより前に」、du plúin「いつより後に」とも言う |
| pórin | どのように | 方法・様子を尋ねる(pórin lísim?「どう書けばいい」)。sérin・térin と組になる(→ 4.4.5) |
fáron pól vándes?
読み:ファーロン ポール ヴァンデス?
| fáron | pól | vánd-es? |
| 荷<対格> | どの<重性> | 量る-<あなたが> |
「どの荷を量っているんだ?」
人の数を尋ねる疑問詞はありません。人は数えないからです。
名詞につく指示詞は「この」と「あの」の二つで、性によってだけ形が変わり、格では変わりません。どれも強勢をもちます。
| 軽性 | 重性 | |
|---|---|---|
| この | sé | só |
| あの | té | tó |
éso dún tó lóuvan, éso dún só trúin.
読み:エーソ ドゥーン トー ローヴァン、エーソ ドゥーン ソー トルーイン。
| és-o | dún | tó | lóuvan, | és-o | dún | só | trúin. |
| いる-<(重いものが)> | 丘<主格> | あの<重性> | 遠い | いる-<(重いものが)> | 丘<主格> | この<重性> | 近い |
「あの丘は遠く、この丘は近い。」
tóra dórin té es orénos.
読み:トーラ ドーリン テー エス オレーノス。
| tór-a | dórin | té | es | orén-os. |
| 来る-<(軽いものが)> | 男<主格> | あの<軽性> | から | 縁-<属格> |
「あの男が縁のほうから来る。」
luuménde ausenár plánan sé.
読み:ルーメンデ アウセナール プラーナン セー。
| luum-énd-e | au-sen-ár | plán-an | sé. |
| ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格> | 帳簿-<対格> | この<軽性> |
「目付殿に、この帳簿をご覧いただきたく存じます。」
三つめの例の plánan sé のように、名詞が対格でも、指示詞は sé のままです。
指示詞は、名詞句の中でいちばん後ろに置く語なので、名詞句の終わりの目印になります。
dúlo gandér kélen kelárar só du orén.
読み:ドゥーロ ガンデール ケーレン ケラーラル ソー ドゥ オレーン。
| dúl-o | gandér | kél-en | kel-ár-ar | só | du | orén. |
| 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 伐る-<〜した・〜された> | 伐る-<〜する人>-<〜らの> | この<重性> | 下手 | 縁<対格> |
「樵たちが伐ったこの硬木が、縁へ下りていく。」
éso fáron gróm só némei.
読み:エーソ ファーロン グローン ソー ネーメイ。
| és-o | fáron | gróm | só | ném-ei. |
| いる-<(重いものが)> | 荷<主格> | 重い | この<重性> | <私>-<与格> |
「私には、この重い荷がある。」
一つめの例では、só で名詞句が閉じるので、du orén は名詞句の中ではなく、主節の動詞にかかります。二つめの例では、só があるので、gróm が名詞句の中で荷を飾っていることがはっきりします(→ 4.6.4)。
関係節を導く小辞 te は、軽性の指示詞 té「あの」が固まったものです(→ 第7章)。二つは次のように見分けます。
指示詞と関係節を両方置くとき
tóra senár él te lísim sáindaran élei.
読み:トーラ セナール エール テ リーシン サインダラン エーレイ。
| tór-a | sen-ár | él | te | lís-im | sáindar-an | él-ei. |
| 来る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人・主格> | <3人称単数・軽性> | <関係節> | 書く-<私が> | 証文-<対格> | <3人称単数・軽性>-<与格> |
「私が証文を書いてやる、あの目付が来る。」
lisáran té, séna senár.
読み:リサーラン テー、セーナ セナール。
| lis-ár-an | té, | sén-a | sen-ár. |
| 書く-<〜する人>-<対格> | あの<軽性> | 見る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人・主格> |
「あの書記をこそ、目付が見る。」
二つめの例のように、前に出した名詞句が té で終わるときは、té の後ろに区切りを入れます。区切りがないと、関係節の te と読まれてしまいます。
té は単独で「そこの方」「おい」という呼びかけになります。霧の中など、名を呼べない場面で使います(→ 3.8.5)。
té, séir! na sénim nóumo táses.
読み:テー、セール!ナ セーニン ノーモ ターセス。
| té, | séir! | na | sén-im | nóumo | tás-es. |
| そこの方 | 待つ<命令法><あなたが> | <〜ない> | 見る-<私が> | 顔<対格> | <あなた>-<属格> |
「そこの方、待て!顔が見えない。」
「この」「あの」の sé・té から、場所・様子・時を指す語が作られています。
| 近い(この) | 遠い・既知(あの・その) | 問い | |
|---|---|---|---|
| 場所 | séndo「ここ」 | téndo「あそこ」 | (pói「どこで」) |
| 様子 | sérin「このように」 | térin「そのように・そのとおりに」 | pórin「どのように」 |
| 時 | selúin「今」 | telúin「その時」 | (plúin「いつ」) |
場所の指示詞 séndo・téndo
léim fáron séndo, ende.
読み:レーン ファーロン センド、エンデ。
| léim | fáron | séndo, | ende. |
| 置く<命令法><あなたが> | 荷<対格> | ここ | どうぞ |
「荷はここに置いてくれ、頼む。」
tóra faronár an séndo es orénos.
読み:トーラ ファロナール アン センド エス オレーノス。
| tór-a | faronár | an | séndo | es | orén-os. |
| 来る-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 上手 | ここ<対格> | から | 縁-<属格> |
「運び人が縁からここへ上ってくる。」
aldána ausenár téndoi.
読み:アルダーナ アウセナール テンドイ。
| aldán-a | au-sen-ár | ténd-oi. |
| おわす-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格> | あそこ-<与格> |
「目付殿は、あちらにおいでです。」
様子の指示詞 sérin・térin
lís þelán táses sérin.
読み:リース セラーン ターセス セーリン。
| lís | þel-án | tás-es | sérin. |
| 書く<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> | このように |
「自分の名前を、こうやって書いてごらん。」
mé vír térin!
読み:メー ヴィール テーリン!
| mé | vír | térin! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | そのように |
「そんなふうに言うんじゃない!」
meirésa orenvandár gandér térin lísen sáindarei.
読み:メイレーサ オレンヴァンダール ガンデール テーリン リーセン サインダレイ。
| meir-és-a | orenvandár | gandér | térin | lís-en | sáindar-ei. |
| 与える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | 硬木<対格> | そのとおりに | 書く-<〜した・〜された> | 証文-<与格> |
「縁商人は、証文に書かれたとおりに硬木を渡すべし。」
時の指示詞 selúin・telúin
指示詞は、一致の階層(→ 3.2.5)で形容詞と動詞のあいだにあります。
þróumo dórin tó.
読み:スローモ ドーリン トー。
| þróum-o | dórin | tó. |
| 死ぬ<〜し終えた>-<(重いものが)> | 男<主格> | あの<重性> |
「あの男はくたばった。」
この例では、人に「死ぬ」þrúm- を使い(→ 3.2.8)、動詞の -o と指示詞 tó で人を重性に受けていて、二重に罵る言い方になっています。
前置詞は名詞の前に置き、組む格によって意味が変わります。対格と組めば「〜へ」、与格なら「〜で」、属格なら「〜から」です。
| 前置詞 | 意味 | 成り立ち |
|---|---|---|
| an | 上手・北 | 古高原語 *an |
| du | 下手・南 | 動詞 dul-「下る」や謙譲の接頭辞 du- と同じ語源 |
| or | 日の出側・東 | órun「日の出」が縮まったもの |
| vel | 日の入り側・西 | vélun「日の入り」が縮まったもの |
| un | 内・中 | |
| sal | 外 | |
| es | 方向を問わない「〜から」 | 属格とだけ組む |
| 前置詞 | +対格(〜へ) | +与格(〜で) | +属格(〜から) |
|---|---|---|---|
| an | 上手へ | 上手で | 上手から |
| du | 下手へ | 下手で | 下手から |
| or | 日の出側へ | 日の出側で | 日の出側から |
| vel | 日の入り側へ | 日の入り側で | 日の入り側から |
| un | 〜の中へ | 〜の中で | 〜の中から |
| sal | 〜の外へ | 〜の外で | 〜の外から |
| es | — | — | 〜から |
方角の前置詞 an・du・or・vel には、二つの使い方があります。
dúlo gandér du dálor
読み:ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル
| dúl-o | gandér | du | dálor |
| 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 下手 | 下の国<対格> |
「硬木が下の国へ下りていく。」
mé duliþésa fáron es orénos.
読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。
| mé | dul-iþ-és-a | fáron | es | orén-os. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> | から | 縁-<属格> |
「縁から荷を落とさぬこと。」
hóinan faronárai vel orén.
読み:ホイナン ファロナーライ ヴェル オレーン。
| hóin-an | faronár-ai | vel | orén. |
| 帰る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 西へ | 縁<対格> |
「運び人たちは縁の日の入り側へと帰っていく。」
ésa rúsil vel álmarei.
読み:エーサ ルーシル ヴェル アルマレイ。
| és-a | rúsil | vel | álmar-ei. |
| いる-<(軽いものが)> | 赤月<主格> | 日の入り側 | 白月-<与格> |
「赤月は白月の日の入り側にある。」
þóra bóula mór or planélei.
読み:ソーラ ボーラ モール オル プラネーレイ。
| þór-a | bóula | mór | or | planél-ei. |
| 立つ-<(軽いものが)> | どんぐりの木<主格> | 大きい | 日の出側 | 白樹皮の木-<与格> |
「白樹皮の木の日の出側に、大きなどんぐりの木が立っている。」
éso sáko némei un kórvoi.
読み:エーソ サーコ ネーメイ ウン コルヴォイ。
| és-o | sáko | ném-ei | un | kórv-oi. |
| いる-<(重いものが)> | 塩<主格> | <私>-<与格> | 内に | 倉-<与格> |
「私には倉の中に塩がある。」
faronér fáron só sal kórvo!
読み:ファロネール ファーロン ソー サル コルヴォ!
| faronér | fáron | só | sal | kórvo! |
| 担ぐ<命令法><あなたが> | 荷<対格> | この<重性> | 〜の外に | 倉<対格> |
「この荷を倉の外へ担ぎ出せ。」
ésa dalorár sal þrénuls, na ésa du þrénuls.
読み:エーサ ダロラール サル スレーヌルス、ナ エーサ ドゥ スレーヌルス。
| és-a | dalorár | sal | þrén-uls, | na | és-a | du | þrén-uls. |
| いる-<(軽いものが)> | 下の国の者<主格> | 〜の枠の外に | 段-<〜らに> | <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 下手 | 段-<〜らに> |
「下の国の者は段の外にいるのであって、段の下にいるのではない。」
前置詞 an・du・or・vel・es・un・sal は強勢をもたず、次の語に寄りかかって一続きに発音されます(un bóralei「家の中で」)。
高原はふつう北ほど高いので、「上手」と「北」は重なります。ずれるのは、北へ下る斜面のような場所です。
dúlim an dún.
読み:ドゥーリン アン ドゥーン。
| dúl-im | an | dún. |
| 下る-<私が> | 上手 | 丘<対格> |
「私は丘の北側へ下る。」
これは都の言い方で、森や縁の人は同じ道を du dún と言います。都の役人と森の案内人が道を言い合って食い違うのは、この差のためです。
絶対方位と左右:地形や道案内は、an・du・or・vel の絶対方位で言います。上ったか下ったかは、移動の動詞で必ず言い分けます。いっぽう、体・家の中・宮廷の並び・書き物の上では、左右 ormár「左(日の出の手)」・velmár「右(日の入りの手)」を使います(→ 第10章)。星は指さしてはいけないので、星の位置も or ombára ilánail「十の灯の日の出側に」のように、ほかの星との位置関係で言います。
an・du は、空間の上手・下手だけでなく、時の前後と比較にも使います。時間は源から流れ下る川と見られ、早いほうが上手、遅いほうが下手です。
| 形 | 空間 | 時 | 比較 |
|---|---|---|---|
| an +与格 | 〜の上手で | 〜の前に(an nébroi「霧の前に」) | 〜より(その性質が)まさって |
| du +与格 | 〜の下手で | 〜の後に | 〜より劣って |
| an +属格 | 〜の上手から | 〜以来 | — |
| du +対格 | 〜の下手へ | 〜まで | — |
an nébros, na tóra orenvandár.
読み:アン ネーブロス、ナ トーラ オレンヴァンダール。
| an | nébr-os, | na | tór-a | orenvandár. |
| 上手 | 霧-<属格> | <〜ない> | 来る-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> |
「霧の季節が来て以来、縁商人は来ない。」
ésim séndoi du nébro.
読み:エーシン センドイ ドゥ ネーブロ。
| és-im | sénd-oi | du | nébro. |
| いる-<私が> | ここ-<与格> | 下手 | 霧<対格> |
「私は霧の季節までここにいる。」
時の読みと場所の読みの見分け方は第7章、比較の読みと場所の読みの見分け方は第6章で扱います。
双数の属格と与格は同じ形(-aun・-oun)なので、前置詞の後ろでは「〜で」か「〜から」かが決まりません。そこで、an・du・or・vel・un・sal の後ろでは、都の言葉でも双数のかわりに複数の形を使います(an sílarail「二つの月の上手に」)。紛れの起こらない方向の対格でも、これらの前置詞の後ろでは一律に複数にします(du sílarais「二つの月の下手へ」)。es は属格としか組まないので紛れず、双数のままでかまいません(es sílaraun「二つの月のほうから」)。例文は 3.6.2 にあります。
du pó fleiréla ausenár?
読み:ドゥ ポー フレイレーラ アウセナール?
| du | pó | fleir-él-a | au-sen-ár? |
| 下手 | 何<対格> | お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格> |
「目付殿は、下手のどちらへお出ましになるのでしょうか。」
or pó géles?
読み:オル ポー ゲーレス?
| or | pó | gél-es? |
| 東へ | 何<対格> | 行く-<あなたが> |
「東のどこへ行くのだ。」
前置詞は、ほかの語と結びついて多くの語を作っています(→ 第9章)。
| 語 | 成り立ち | 意味 |
|---|---|---|
| duói | du「下手」+ói「それに」 | それから(→ 第6章) |
| esós | es「から」+ós「それの」 | だから |
| salóur | sal「〜の外に」+lóur「瀬」(l が二つ続くところを一つにした) | しかし |
| orvél | or「日の出側」+vel「日の入り側」 | または |
| anórel | an+órel「日」 | 昨日(上手の日) |
| dórel | du+órel | 明日(下手の日) |
| amfóndar | an+fóndar「源」 | 上手の源(詩・系譜での国名) |
| anléuma | an+léuma「風」 | 上の風 |
| duléumo | du+léuma | 下の風(重性の語尾 -o に改まっている) |
| ansén- | an+sén-「見る」 | 思い出す(上手を見る) |
名詞句の中では、中心の名詞が先に来て、飾りの語はすべてその後ろに並びます。前に置けるのは、九十九までの数詞と量の名詞だけです。
〔数詞・量の名詞〕+ 名詞 + 形容詞・分詞 + 属格 + 指示詞・不定の ín + 関係節
| 位置 | 入るもの | 例 |
|---|---|---|
| 数詞・量の名詞 | ín・dáu・téir … 九十九まで、báron など | téir báronul gandérur「硬木三本」(→ 3.7) |
| 名詞 | 中心の名詞 | gandér |
| 形容詞・分詞 | 名詞の性・数・格に一致 | gandér kélen |
| 属格 | 持ち主・出どころ・動作主 | gandér kélen kelárar |
| 指示詞・不定の ín | sé・só・té・tó、または ín | gandér kélen kelárar só |
| 関係節 | te +動詞で始まる節 | → 第7章 |
gandér kélen kelárar só「樵たちが伐った、この硬木」:硬木・伐られた・樵たちの・この
éso fáron gróm némes só.
読み:エーソ ファーロン グローン ネーメス ソー。
| és-o | fáron | gróm | ném-es | só. |
| いる-<(重いものが)> | 荷<主格> | 重い | <私>-<属格> | この<重性> |
「この、私の重い荷がある。」
属格は、形容詞・分詞の後ろに置きます。どう読むかは、前に何があるかで決まります。
sénim plíndo lísen lisáres senáres só.
読み:セーニン プリンド リーセン リサーレス セナーレス ソー。
| sén-im | plíndo | lís-en | lis-ár-es | sen-ár-es | só. |
| 見る-<私が> | 荷札<対格> | 書く-<〜した・〜された> | 書く-<〜する人>-<属格> | 見る-<〜する人>-<属格> | この<重性> |
「私は、書記が書いた目付のこの荷札を見る。」
sénim lónan áurenan sélvanes.
読み:セーニン ローナン アウレナン セルヴァネス。
| sén-im | lón-an | áur-en-an | sélvan-es. |
| 見る-<私が> | 柱の木-<対格> | 昇る-<〜した・〜された>-<対格> | セルヴァン-<属格> |
「私はセルヴァンの高い柱の木を見る。」
éso ílmo klér ín an kórvoi.
読み:エーソ イルモ クレール イーン アン コルヴォイ。
| és-o | ílmo | klér | ín | an | kórv-oi. |
| いる-<(重いものが)> | 水<主格> | 冷たい | 一 | 上手 | 倉-<与格> |
「倉の北側に、冷たい水がある。」
sán fáronul grómul ín an kórvoi.
読み:サーン ファーロヌル グロームル イーン アン コルヴォイ。
| sán | fáron-ul | gróm-ul | ín | an | kórv-oi. |
| いる<彼らが> | 荷-<〜たちが> | 重い-<〜たちが> | 一 | 上手 | 倉-<与格> |
「倉の北側に、重い荷がいくつかある。」
ín で名詞句を閉じると、その後ろの an kórvoi は比較ではなく場所と読めます。これは次の決まりによります。
名詞を飾る形容詞の比較と述語の形容詞の比較の並べ方は、第6章で並べて示します。指示詞 só で閉じると「この冷たい水」と定まってしまうので、新しいものを紹介するときは ín を使います(→ 第6章)。
属格より後ろに来た形容詞は、名詞句の外にあります。 名詞を飾る形容詞はかならず属格より前に置くので、属格の後ろの形容詞は述語と読みます。
éso fáron némes gróm.
読み:エーソ ファーロン ネーメス グローン。
| és-o | fáron | ném-es | gróm. |
| いる-<(重いものが)> | 荷<主格> | <私>-<属格> | 重い |
「私の荷は重い。」
éso fáron gróm némes só.
読み:エーソ ファーロン グローン ネーメス ソー。
| és-o | fáron | gróm | ném-es | só. |
| いる-<(重いものが)> | 荷<主格> | 重い | <私>-<属格> | この<重性> |
「この、私の重い荷がある。」
主語が名詞一語だけで、属格も指示詞もないときは、名詞を飾る形容詞と述語の形容詞が同じ並びになります。このときの読み分け(後ろに与格があれば存在・所有の文として読む)は第6章で扱います。
éso fáron gróm némei.
読み:エーソ ファーロン グローン ネーメイ。
| és-o | fáron | gróm | ném-ei. |
| いる-<(重いものが)> | 荷<主格> | 重い | <私>-<与格> |
「私には重い荷がある。」
王の位そのものは aldár áuren「高き座」 と言います。話し手にとって今の王を指すときは、これだけで足ります。aldár「座」は、実際の座が石や木でできていても、人を指す語なので軽性です(→ 3.2.2)。
lúin fléira aldár áuren es dúnos, snéiman éndrai.
読み:ルーイン フレーラ アルダール アウレン エス ドゥーノス、スネーマン エンドライ。
| lúin | fléir-a | aldár | áur-en | es | dún-os, | snéim-an | éndr-ai. |
| とき | お出ましになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | から | 王の丘-<属格> | 身をかがめる-<彼らが> | 人-<〜たちが> |
「高き座が王の丘からお出ましになると、人々は身をかがめる。」
王一人ひとりを区別するときは、即位のときに与えられる座名を使います。座名は「aldár áuren +称えの語の属格」の形です。
aldár áuren þáiles「澄みの高き座」:座・高き・澄んだ(ものの)
王に直接ものを頼むときも、2人称は使わず、aldár áuren を3人称の主語にして願望法で言います(→ 第8章)。
luuménde aldár áuren sáindaran sé.
読み:ルーメンデ アルダール アウレン サインダラン セー。
| luum-énd-e | aldár | áur-en | sáindar-an | sé. |
| ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 座<主格> | 高い-<〜した・〜された> | 証文-<対格> | この<軽性> |
「高き座に、この証文をご覧いただきたく存じます。」
aulisénde aulisár sáindaran.
読み:アウリセンデ アウリサール サインダラン。
| au-lis-énd-e | au-lis-ár | sáindar-an. |
| <お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人・主格> | 証文-<対格> |
「書記の方に、証文をお書きいただきたく存じます。」
dulísim sáindaran aulisárei.
読み:ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。
| du-lís-im | sáindar-an | au-lis-ár-ei. |
| <〜させていただく>-書く-<私が> | 証文-<対格> | <お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格> |
「書記の方に、証文を書いて差し上げます。」
王のもとに置かれた六つの司(brándal)は、どれも「brándal +属格」で呼びます。
| 呼び名 | 字義 | 受け持ち |
|---|---|---|
| brándal lisímes | 書法の司(書の司) | 記録、年代記、王統の巻、法典、裁き、書記の養成 |
| brándal ilánar | 灯たちの司(星の司) | 暦、天文、宮廷の祭祀。星を数えて記録する |
| brándal arnélvares | 木々の天の司(森の司) | 王の森、硬木の伐り出し |
| brándal kumbóros | 青銅の司(金の司) | 鉱山、青銅の鋳造 |
| brándal kórvos | 倉の司 | 雑穀の税、倉、度量衡 |
| brándal orénos | 縁の司(道の司) | 崖道、降ろし場、縁の市 |
森の司は、ふだんは「森」の基本の語で brándal ráuvos とも言い、森の氏族は自分たちの語で brándal dravénes と呼びます。どの名で呼ぶかに、森を誰のものと見ているかが表れます。dravéna「森」を軽性で受けるか重性で受けるかが話し手によって分かれるのと(→ 3.2.4)、同じ種類の違いです。
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