第7章 従属節

7.1 概観

従属節の中も、主節と同じく動詞で始まります。従属の関係は、節の頭の小辞(ré・te・lúin)か、動詞の法(仮定法)で示します。

小辞・形 働き 節の位置 節
ré 「〜と(言う・知る)」 主節の後ろ 7.2
ré + 願望法 「〜するように」(目的) 主節の後ろ 7.3
te 関係節 名詞の後ろ(節のいちばん最後) 7.4
lúin 「〜するとき」 ふつう主節の前 7.5
仮定法(小辞なし) 「もし〜なら」 主節の前 7.6
組み合わせ(仮定法+salóur など) 譲歩・例外の条件・否定の目的・程度 — 7.8
添える句(es+属格、vír-+ré) 根拠(出典) 場面の枠 7.9

小辞はどれも動詞の前に置ける語の一つです(→ 6.3.1)。従属節の中でも、否定の na・mé は動詞の直前に置きます。逐語訳では、関係節の te を <関係節>、「〜と」の ré を <〜と(節)> と示します(→ 6.1.2)。

時の前後(「〜の前に」「〜の後に」「〜以来」「〜まで」)は、従属節ではなく前置詞句で言います。これも、この章の最後にまとめます(→ 7.7)。

7.2 「〜と(言う・知る)」:ré

「〜と言う」「〜と知る」の中身は、ré で導きます。

selvéna ausenár ré mé duliþésa fáron es orénos.

読み:セルヴェーナ アウセナール レー メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

selvén-aau-sen-árrémédul-iþ-és-afáronesorén-os.
おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人・主格><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

「目付殿は、「縁から荷を落とさぬこと」とおっしゃる。」

ここでは、度量衡の碑の一句 mé duliþésa fáron es orénos を、当為法のまま引用しています。目付が碑の前で揉め事を裁くときの言い方です。当為法で主語を言わないときは「人は〜すべし」という一般の主語を表し、軽性の形をとります。

mé duliþésa fáron es orénos

読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス

médul-iþ-és-afáronesorén-os
<禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

「縁から荷を落とさぬこと。」

ré の後ろには問いも置けます。目上の聞き手に、さらに別の目上の人のことを尋ねるときは、謙譲の「お尋ねいたします」dupovér- の後ろに ré で問いを置きます(dupovérim aulisárei ré du pó fleiréla ausenár「書記の方にお尋ねいたします。目付殿は下手のどちらへお出ましになったのでしょうか」)。

ré の節の中の視点。 ré の節の中の人称・場所・時の言葉を誰から見た形で置くかは、ré の節の使い方で決まります。

ré の節の使い方 視点 例
発言の引用(言う・おっしゃる・申す・尋ねる) もとの発言者から見た形(直接話法に近い) víra faronár ré gélim du orén.「運び人は、(自分が)縁へ行くと言った」
知識・思いの内容(知る・分かる・思う) いま話している人から見た形 þílim ré tóra él dórel.「彼が明日来ることを、私は知っている」
目的・願いの内容(ré+願望法) いま話している人から見た形 lísim sáindaran ré vandénde senár fáron.

mír「自分」が指すのは、同じ節の主語だけです。 ré の節の中の mír は、ré の節の主語を指し、主節の主語(言った人・思った人)は指しません。言った人を指したいときは、発言の引用なので ré の節の中で1人称を使います。思った人・知っている人を指したいときは、él や名前で言います(þíla sélvan ré flóora él sílanan「セルヴァンは、自分(セルヴァン)がシランを選んだと分かっている」の él)。

víra senár ré léisa lisár þelán némes.

読み:ヴィーラ セナール レー レーサ リサール セラーン ネーメス。

vír-asen-árréléis-alis-árþel-ánném-es.
言う-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格><〜と(節)>書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>名前-<対格><私>-<属格>

「目付は、書記が自分(目付)の名を書いたと言った。」

víra senár ré léisa lisár þelán míres.

読み:ヴィーラ セナール レー レーサ リサール セラーン ミーレス。

vír-asen-árréléis-alis-árþel-ánmír-es.
言う-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格><〜と(節)>書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>名前-<対格>自分-<属格>

「目付は、書記が自分(書記)の名を書いたと言った。」

一つめの ném「私の」は、言った目付自身です。二つめの mír は、ré の節の主語の書記を指します。「目付が言った、書記がある人の名を書いた」のように、どちらでもない第三者を指すときは él を使います(þelán éles)。

7.3 「〜するように(目的)」:ré + 願望法

ré の後ろの節を願望法にすると、「そうなってほしいこと」を表します。主節の動詞と文脈によって、二つの読みになります。

どちらも主節の後ろに置きます。願望法は、ここでは丁寧さではなく、「そうなってほしいこと」を表しています。「量れるように」と、できることまで言いたいときは、ré の節の中を可能の言い方(副動詞+vúur-)にします(ré vándin vuurénde senár fáron。→ 6.5.5)。

7.4 関係節:te

7.4.1 作り方

dúlo du dálor gandér te kéelan kelárai.

読み:ドゥーロ ドゥ ダーロル ガンデール テ ケーラン ケラーライ。

dúl-odudálorgandértekéel-ankel-ár-ai.
下る-<(重いものが)>下手下の国<対格>硬木<主格><関係節>伐る<〜し終えた>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

「樵たちが伐り終えた硬木が、下の国へ下りていく。」

関係節は文の終わり(か読点)まで続くので、du dálor を主節にかけるために、関係節つきの重い主語を文末に回しています(→ 7.4.7)。

7.4.2 要は前に出した語と同じ扱い

関係節の要(関係節がかかる名詞)は、動詞の前に出した語と同じ扱いです(→ 6.3.3)。要が関係節の目的語の枠を埋めているとみなすので、目的語の穴を空けておいても「目的語の枠を空けてはいけない」規則(→ 6.3.2)には反しません。

sénim gandér te dulíþo ílmo.

読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ イルモ。

sén-imgandértedul-íþ-oílmo.
見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

「私は、水が下ろす硬木を見る。」

sénim gandér te dulíþo ó ílmo.

読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ オー イルモ。

sén-imgandértedul-íþ-oóílmo.
見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>水<対格>

「私は、水を下ろす硬木を見る。」

sénim lisáran te séna senár.

読み:セーニン リサーラン テ セーナ セナール。

sén-imlis-ár-antesén-asen-ár.
見る-<私が>書く-<〜する人>-<対格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>

「私は、目付が見る書記を見る。」

三つめでは、残った senár が主格の形なので、ó は要りません。

7.4.3 再述代名詞

与格・属格・前置詞の目的語にあたるものは、代名詞で埋めます(再述代名詞)。

senár te lísim sáindaran élei「私がその人に証文を書いてやる目付」

tóra senár él te lísim sáindaran élei.

読み:トーラ セナール エール テ リーシン サインダラン エーレイ。

tór-asen-áréltelís-imsáindar-anél-ei.
来る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格><3人称単数・軽性><関係節>書く-<私が>証文-<対格><3人称単数・軽性>-<与格>

「私が証文を書いてやる、あの目付が来る。」

与格にあたる部分は、関係節の中で代名詞 élei「その人に」で埋めています。名詞の後ろの él については 7.4.9 を見てください。

7.4.4 要の格と、関係節の中での役割

sénim lisáran te séna senáran.

読み:セーニン リサーラン テ セーナ セナーラン。

sén-imlis-ár-antesén-asen-ár-an.
見る-<私が>書く-<〜する人>-<対格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>-<対格>

「私は、目付を見る書記を見る。」

sénim gandér te dulíþa éndra.

読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーサ エンドラ。

sén-imgandértedul-íþ-aéndra.
見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>人<主格>

「私は、人が下ろす硬木を見る。」

tóra lisár te séna néman.

読み:トーラ リサール テ セーナ ネーマン。

tór-alis-ártesén-aném-an.
来る-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)><私>-<対格>

「私を見る書記が来る。」

一つめでは、要の lisáran は主節の目的語なので対格です。関係節の中では、残った senáran が対格なので、要が主語だとわかります。二つめでは、関係節の動詞の -a(軽性)が主語は人だと示すので、重性の要は目的語とわかります。

性の転用があるとき。 一致の手がかりは、性の転用(→ 3.2.4)のないふつうの読みに限ります。伐った木を重性で受けるときや、人を侮って重性で受けるときは、動詞の一致が名詞の辞書の上の性と食い違うので、一致から役割を決められません。このときは格と語順だけで読みます。既定では要が目的語で、要が主語なら主語の枠に再述の ó を残します(7.4.2)。紛れそうなら、関係節をやめて分詞か二つの文で言います。三つめでは、関係節の中の代名詞の目的語が対格 néman になっています。

7.4.5 関係節のついた名詞句は、節のいちばん最後に置く

関係節は文の終わりか読点まで続くので、関係節のついた名詞句の後ろに語を続けると、その語は関係節の中に入ってしまいます。そこで、次のように決まっています。

節のいちばん最後に置く。 関係節のついた名詞句は、節のいちばん最後に置きます。与格や前置詞句は、その前に出します。このときに限り、「動詞・主語・目的語・与格・前置詞句」の基本の語順が入れ替わります。

méirim torárei nímbo te níla endríña.

読み:メーリン トラーレイ ニンボ テ ニーラ エンドリーニャ。

méir-imtorár-einímboteníl-aendríña.
与える-<私が>客-<与格>乳<対格><関係節>飲む-<(軽いものが)>子ども<主格>

「子どもが飲む乳を、私は客に出す。」

閉じずに右へ伸ばす関係節は、一つの節に一つまで。 読点で閉じずに文の終わりまで続ける関係節のついた名詞句は、一つの節に一つしか置けません。二つめを置きたいときは、文を二つに分けるのがふつうです。都の言葉でも、法令や証文のように一文にまとめたいときに限って、一つめを読点で閉じることがあります。崖道の言葉では、読点で閉じる言い方がふつうの語順として使われます(→ 7.4.6)。

読点はどこまで閉じるか。 読点は、その前に開いている関係節をすべて閉じ、主節に戻します。入れ子になっていても、内側の一つだけを閉じることはありません。

時の語や -in 句を主節にかけるとき。 関係節は文の終わりまで続くので、文の後ろに置いた時の語は関係節の中に入ります。sénim plánan te léisa lisár anórel. は「書記が昨日書き終えた帳簿を、私は見る」です。時の語を主節にかけたいときは、場面の枠(→ 6.3.4)に置きます。後ろに置く未完了の -in 句は読点で区切るので、関係節の外に出て主節にかかります。

anórel, sénim plánan te léisa lisár.

読み:アノーレル、セーニン プラーナン テ レーサ リサール。

anórel,sén-implán-anteléis-alis-ár.
昨日見る-<私が>帳簿-<対格><関係節>書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>

「昨日、私は書記が書き終えた帳簿を見た。」

右へ伸ばすのは自然、真ん中に挟むのは不自然。 関係節の中の最後の名詞にさらに関係節をつける入れ子は、そのまま正しく読めます。文の途中に関係節を挟む言い方は、読点で閉じないかぎり作れません。

sénim plánan te léisa lisár te séna senár.

読み:セーニン プラーナン テ レーサ リサール テ セーナ セナール。

sén-implán-anteléis-alis-ártesén-asen-ár.
見る-<私が>帳簿-<対格><関係節>書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>

「私は、目付が見る書記が書き終えた帳簿を見る。」

名詞が述語の文。 名詞が述語の文(és- +主語+述語 → 6.5.2)では、関係節のついた名詞句は、既定で述語として読みます。関係節のついた名詞句を主語にしたいときは、読点で閉じて前に出します(主題の前置き → 6.3.5)。

ésa lisár éndra te sénim.

読み:エーサ リサール エンドラ テ セーニン。

és-alis-áréndratesén-im.
いる-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>人<主格><関係節>見る-<私が>

「書記は、私が見た人だ。」

éndra te sénim, ésa lisár.

読み:エンドラ テ セーニン、エーサ リサール。

éndratesén-im,és-alis-ár.
人<主格><関係節>見る-<私が>いる-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>

「私が見た人は、書記だ。」

前に出した名詞句。 関係節のついた名詞句を読点で閉じて前に出すと、主題の前置きになります。他動詞の文では既定で目的語の枠を埋め、主語なら主語の枠に ó を残します(例 → 6.3.5)。

7.4.6 主語に関係節がつくとき

主語は動詞のすぐ後ろに来るので、関係節つきの主語の後ろに目的語を続けると、目的語が関係節の中に入ってしまいます。そこで、次のように言います。

都の言葉では、関係節つきの主語を、目的語の後ろ(文の終わり)へ回します。重い成分を後ろへ回す原則(→ 6.2.4)と同じです。目的語が主格と対格が同じ形の語で、後ろの主語と取り違えるおそれがあるときは、空いた主語の枠に ó を残します。このときの ó は、前置きのない文でも主語の枠にあります。

lísa sáindaran lisár te séna senár.

読み:リーサ サインダラン リサール テ セーナ セナール。

lís-asáindar-anlis-ártesén-asen-ár.
書く-<(軽いものが)>証文-<対格>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>

「目付が見る書記が、証文を書く。」

dulíþo ó gandér ílmo te séna senár.

読み:ドゥリーソ オー ガンデール イルモ テ セーナ セナール。

dul-íþ-oógandérílmotesén-asen-ár.
下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>硬木<対格>水<主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>

「目付が見る水が、硬木を下ろす。」

一つめでは、目的語 sáindaran は対格の形でわかるので、ó は要りません。

崖道の言葉では、主語の位置のまま関係節を読点で閉じ、読点の後ろは主節の残りの枠に戻ります(読点が開いている関係節をすべて閉じるのは 7.4.5 と同じです)。都の言葉で途中の読点閉じを使うのは、関係節つきの名詞句が二つある法令や証文の文に限られます。都の人には、言いさしてから付け足したような、くだけた言い方に聞こえます。

lísa lisár te séna senár, sáindaran.

読み:リーサ リサール テ セーナ セナール、サインダラン。

lís-alis-ártesén-asen-ár,sáindar-an.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>証文-<対格>

「目付が見る書記が、証文を書く。」

7.4.7 関係節はどこまで続くか

7.4.8 te と指示詞 té の見分け方

te は、もとは指示詞「あの」の軽性の形 té が固まったものです。そのため、軽性の名詞の後ろでは、同じ形に見えることがあります。次のようにして見分けます。

  1. 強勢:指示詞の té には強勢があり、そのあとに短い切れ目が入ります。関係節の te には強勢がなく、次の動詞に寄りかかって一続きに発音されます([te-lísim])。転写では、te と té と書き分けます。
  2. 後ろに来るもの:関係節の te の後ろには、かならず動詞(または na・mé+動詞)が来ます。
  3. 書き言葉:高原の文字は強勢を書かないので、te と té は同じ字になります。そのかわり、主節を接続詞なしで二つ並べるときは、あいだにかならず区切りの印(転写では読点)を打ちます。区切りの印なしで「名詞 té 動詞…」と続いていれば、関係節と読みます。
    • tóra senár té, lísim sáindaran élei.「あの目付が来る。私はその人に証文を書く」
    • tóra senár te lísim sáindaran élei.「私が証文を書いてやる目付が来る」
    • 対比のために前に出した名詞句が té で終わるときも、té の後ろに区切りの印を打ちます。対比の語句はふつう切れ目なく動詞に続けますが(→ 6.3.6)、té で終わるときだけは、関係節と読まれないように区切ります。話し言葉では、té の強勢と切れ目で区別できます。
  4. 性:重性の名詞の後ろでも、関係節なら te のままです。tó にはなりません。
    • gandér tó は「あの硬木」です。
    • gandér te dúlo … は「下りていく硬木」です。

lisáran té, séna senár.

読み:リサーラン テー、セーナ セナール。

lis-ár-anté,sén-asen-ár.
書く-<〜する人>-<対格>あの<軽性>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>

「あの書記をこそ、目付が見る。」

耳では強勢で聞き分けられても、文字では同じ字になるので、学習者には見分けにくい対です。

7.4.9 指示詞と関係節を両方置くとき

tóra senár él te lísim sáindaran élei.

読み:トーラ セナール エール テ リーシン サインダラン エーレイ。

tór-asen-áréltelís-imsáindar-anél-ei.
来る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格><3人称単数・軽性><関係節>書く-<私が>証文-<対格><3人称単数・軽性>-<与格>

「私が証文を書いてやる、あの目付が来る。」

7.4.10 関係節と分詞の使い分け

短い修飾は、関係節ではなく分詞ですませるのがふつうです(gandér kélen「伐られた硬木」 → 6.4)。分詞にも動作主の属格を添えられるので(gandér kélen kelárar「樵たちに伐られた硬木」)、主語と目的語を言うだけなら分詞でも足ります。関係節が要るのは、次のようなときです。

7.5 「〜するとき」:lúin

「〜するとき」の節は lúin で始めます。時を表す節は、ふつう主節の前に置き、読点で区切ります。

lúin áuran ombára ilánai, dulíþan kelárai gandér.

読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。

lúináur-anombárailán-ai,dul-íþ-ankel-ár-aigandér.
とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>

「十の灯が昇ると、樵たちは硬木を下ろす。」

ombára ilánai「十の灯」は星座の名前で、古い形の「十」が固まって残ったものです。星を数えているわけではありません。

7.6 「もし〜なら」:仮定法

条件の節には接続詞を使いません。動詞を仮定法にするだけで「もし〜なら」の意味になり、主節の前に置きます。帰結の節は、推量法か直説法にします。

duliþíre kelár fáron es orénos, toriþéla dálor.

読み:ドゥリシーレ ケラール ファーロン エス オレーノス、トリセーラ ダーロル。

dul-iþ-ír-ekel-árfáronesorén-os,tor-iþ-él-adálor.
下る-<〜させる>-<もし〜なら>-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>荷<対格>から縁-<属格>来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>下の国<対格>

「樵が縁から荷を落とせば、下の国を呼び寄せることになろう。」

toríro nébro es orénos, na senéimor ilánais

読み:トリーロ ネーブロ エス オレーノス、ナ セネーモル イラーナイス

tor-ír-onébroesorén-os,nasen-é-imorilán-ais
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格><〜ない>見る-<〜だろう>-<我々が>灯-<〜たちを>

「縁から霧が上がってくれば、我々には星が見えなくなるだろう。」

7.7 時の前後は「川の上手・下手」

高原語では、時間は源から流れ下る川です。早いほうが上手、遅いほうが下手になります。時の前後は、場所と同じ前置詞 an・du と格の組み合わせで言います。

7.7.1 an・du と格

形 字義 時の意味 例
an + 与格 〜の上手で 〜の前に an nébroi「霧の前に」
du + 与格 〜の下手で 〜の後に du nébroi「霧のあとに」
an + 属格 〜の上手から 〜以来 an nébros「霧の季節以来」
du + 対格 〜の下手へ 〜まで du nébro「霧の季節まで」

an nébros, na tóra orenvandár.

読み:アン ネーブロス、ナ トーラ オレンヴァンダール。

annébr-os,natór-aorenvandár.
上手霧-<属格><〜ない>来る-<(軽いものが)>縁商人<主格>

「霧の季節が来て以来、縁商人は来ない。」

ésim séndoi du nébro.

読み:エーシン センドイ ドゥ ネーブロ。

és-imsénd-oidunébro.
いる-<私が>ここ-<与格>下手霧<対格>

「私は霧の季節までここにいる。」

一つめの時の句は、場面の枠に置いています。

「今日」「昨日」「明日」 も同じ見方で言います。「今日」は sórel、「昨日」は anórel「上手の日」、「明日」は dórel「下手の日」です。

7.7.2 時の読みと場所の読み

前置詞の後ろが時を表す名詞(日・季節・巡り・霧のような出来事)のときは時の読み、場所や物を表す名詞のときは方角の読みになります(an nébroi「霧の前に」、an kórvoi「倉の北側で」)。時の句は、場面の枠(→ 6.3.4)か文の後ろに置きます。述語の形容詞のすぐ後ろには置かないので、比較の読み(→ 6.9)とはぶつかりません。

霧のように、時の名詞でも物の名詞でもある語(nébro「霧/霧の季節」)は、動詞で読みが決まります。

gélim du nébro.

読み:ゲーリン ドゥ ネーブロ。

gél-imdunébro.
行く-<私が>下手霧<対格>

「私は下手の霧の中へ行く。」

du nébro, ráumimor du orén.

読み:ドゥ ネーブロ、ラウミモル ドゥ オレーン。

dunébro,ráum-imorduorén.
下手霧<対格>歩く-<我々が>下手縁<対格>

「霧の季節まで、我々は縁へ歩いて通う。」

前置詞の後ろの双数は、複数の形で代えます。 双数の属格と与格は同じ形(-aun・-oun)なので、前置詞の後ろでは「〜で」(与格)か「〜から」(属格)かが決まりません。そこで、an・du・or・vel・un・sal の後ろでは、都の言葉でも双数のかわりに複数の形を使います。es「〜から」は属格としか組まないので紛れず、双数の属格のままでかまいません。

éso nébro an sílarail.

読み:エーソ ネーブロ アン シーラライル。

és-onébroansílar-ail.
いる-<(重いものが)>霧<主格>上手月-<〜らに>

「二つの月の上手(北側)に霧がある。」

tóra éndra es sílaraun.

読み:トーラ エンドラ エス シーララウン。

tór-aéndraessílar-aun.
来る-<(軽いものが)>人<主格>から月-<双数の〜の・〜に>

「人が二つの月のほうから来る。」

an ilánais と an ilánail。 違いは語末の一音だけです。

7.7.3 「もう」と「まだ」

「もう」と「まだ」も川の見方で言います。どちらも動詞のすぐ後ろ、主語の前に置きます。

léisa dóulin lisár plánan.

読み:レーサ ドーリン リサール プラーナン。

léis-adóulinlis-árplán-an.
書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>もう書く-<〜する人・主格>帳簿-<対格>

「書記はもう帳簿を書き終えた。」

na tóra unlóur senár.

読み:ナ トーラ ウンロール セナール。

natór-aunlóursen-ár.
<〜ない>来る-<(軽いものが)>まだ見る-<〜する人・主格>

「目付はまだ来ない。」

相の副詞は枠に数えません。 dóulin・unlóur は、動詞と一続きに発音する小さな語として、いつも動詞のすぐ後ろに置きます。主語や目的語を名詞で言っても、置き場所は変わりません。そのため「動詞の次の名詞が主語、その次が目的語」という数え方(→ 6.3.2)は崩れません。重性の名詞どうしの文でも、主語と目的語を取り違えずに済みます。

na léisa unlóur lisár sáindaran.

読み:ナ レーサ ウンロール リサール サインダラン。

naléis-aunlóurlis-ársáindar-an.
<〜ない>書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>まだ書く-<〜する人・主格>証文-<対格>

「書記はまだ証文を書き終えていない。」

四つ一組。

形 意味 例
肯定+unlóur まだ〜している éso unlóur nébro an orénoi.「縁の上手には、まだ霧がある」
否定+(完了)+unlóur まだ〜していない・まだ〜し終えていない na léisim unlóur sáindaran.「まだ証文を書き終えていない」
肯定+完了+dóulin もう〜し終えた léisa dóulin lisár plánan.「書記はもう帳簿を書き終えた」
否定+dóulin もう〜しない・もはや〜ない na gélim dóulin du orén.「私はもう縁へは行かない」

否定の二つの形は、完了の形を使うかどうかが違います。「もう〜しない」はふつうの形(na lísim dóulin)、「まだ〜し終えていない」は完了の形(na léisim unlóur)です。unlóur は「同じ瀬の内に」、dóulin は「下り終えて」で、時の川のどこにいるかで「まだ」と「もう」を言い分けます。

na gélim dóulin du orén.

読み:ナ ゲーリン ドーリン ドゥ オレーン。

nagél-imdóulinduorén.
<〜ない>行く-<私が>もう下手縁<対格>

「私はもう縁へは行かない。」

na lísim dóulin sáindarais.

読み:ナ リーシン ドーリン サインダライス。

nalís-imdóulinsáindar-ais.
<〜ない>書く-<私が>もう証文-<〜たちを>

「もう証文は書かない。」

否定と完了。 na+ふつうの形は「〜しない・〜しなかった」、na+完了は「〜し終えなかった」です。「まだ〜し終えていない」とはっきり言うときは、unlóur を添えます。精算や約束の場でよく使う言い方です。

na léisim unlóur sáindaran.

読み:ナ レーシン ウンロール サインダラン。

naléis-imunlóursáindar-an.
<〜ない>書く<〜し終えた>-<私が>まだ証文-<対格>

「私はまだ証文を書き終えていない。」

7.7.4 時間に価値の上下はない

昔は源に近いので、古いことや古い家は尊ばれます(瀬の数の多い家は誉れ)。しかし未来は、子孫が流れ下っていく先なので、悪いものとはされません。下手にあるのは「まだ来ていないもの」で、「低いもの」ではないのです。そのため、an・du の比較(→ 6.9)で「上手=まさる」と言うのは高さの話で、時の前後には当てはめません。

7.8 譲歩・例外・否定の目的・程度

「もし〜なら」「〜するように」「だから」のほかの論理の関係も、新しい接続詞を使わず、これまでの組み立てを組み合わせて言います。

意味 組み立て 例
譲歩(〜しても) 仮定法の節 + 帰結の頭に salóur「しかし」 toríre réina, salóur dulíþimor fáron.「雨が降っても、荷を下ろす」
例外の条件(〜しない限り) na + 仮定法の節 na toríre réina, dulíþimor fáron.「雨が降らない限り、荷を下ろす」
否定の目的(〜しないように) ré mé + 願望法 ré mé trupéndo fúnel「綱が切れないように」
程度による結果(〜すぎて…) salván「〜すぎる」の文 + esós「だから」 éso fáron gróm salván, esós na dulíþin vúurimor ó.「荷が重すぎて下ろせない」

toríre réina, salóur dulíþimor fáron.

読み:トリーレ レーナ、サロール ドゥリーシモル ファーロン。

tor-ír-eréina,salóurdul-íþ-imorfáron.
来る-<もし〜なら>-<(軽いものが)>雨<主格>しかし下る-<〜させる>-<我々が>荷<対格>

「雨が降っても、我々は荷を下ろす。」

na toríre réina, dulíþimor fáron.

読み:ナ トリーレ レーナ、ドゥリーシモル ファーロン。

nator-ír-eréina,dul-íþ-imorfáron.
<〜ない>来る-<もし〜なら>-<(軽いものが)>雨<主格>下る-<〜させる>-<我々が>荷<対格>

「雨が降らない限り、我々は荷を下ろす。」

dulíþimor fáronul ínin, ré mé trupéndo fúnel.

読み:ドゥリーシモル ファーロヌル イーニン、レー メー トルペンド フーネル。

dul-íþ-imorfáron-ulínin,rémétrup-énd-ofúnel.
下る-<〜させる>-<我々が>荷-<〜たちを>それぞれ<〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>切れる-<〜しますように>-<(重いものが)>綱<主格>

「綱が切れないように、我々は荷を一つずつ下ろす。」

éso fáron gróm salván, esós na dulíþin vúurimor ó.

読み:エーソ ファーロン グローン サルヴァーン、エソース ナ ドゥリーシン ヴーリモル オー。

és-ofárongrómsalván,esósnadul-íþ-invúur-imoró.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重いすぎるだから<〜ない>下る-<〜させる>-<〜して・〜く>届く-<我々が><3人称単数・重性・対格>

「荷が重すぎて、我々には下ろせない。」

7.9 何を根拠に言うか(出典)

高原語の推量法は「どれくらい確かか」を言いますが、「何を根拠に知っているか」は、法ではなく、文に添える句で言います。

根拠 言い方 例
自分で見た・確かに知っている 何も添えずに言い切る doulíþan faronárai fáron.「運び人たちは荷を下ろした」
人から聞いた vír-「言う」+ ré の節 víra faronár ré doulíþim fáron.「運び人の話では、荷を下ろした」
帳簿・証文に書いてある 場面の枠に es plánes「帳簿から」 es plánes, doulíþan faronárai fáron.「帳簿によれば、運び人たちは荷を下ろした」
跡や様子から推した 場面の枠に es tromós「跡から」+推量法 es tromós, douliþélan faronárai fáron.「跡からすると、運び人たちは荷を下ろしたらしい」

víra faronár ré doulíþim fáron.

読み:ヴィーラ ファロナール レー ドウリーシン ファーロン。

vír-afaronárrédoul-íþ-imfáron.
言う-<(軽いものが)>運び人<主格><〜と(節)>下る<〜し終えた>-<〜させる>-<私が>荷<対格>

「運び人の話では、(運び人は)荷を下ろした。」

es plánes, doulíþan faronárai fáron.

読み:エス プラーネス、ドウリーサン ファロナーライ ファーロン。

esplán-es,doul-íþ-anfaronár-aifáron.
から帳簿-<属格>下る<〜し終えた>-<〜させる>-<彼らが>運び人-<〜たちが>荷<対格>

「帳簿によれば、運び人たちは荷を下ろした。」

es tromós, douliþélan faronárai fáron.

読み:エス トロモース、ドウリセーラン ファロナーライ ファーロン。

estrom-ós,doul-iþ-él-anfaronár-aifáron.
から足跡-<属格>下る<〜し終えた>-<〜させる>-<〜だろう>-<彼らが>運び人-<〜たちが>荷<対格>

「跡からすると、運び人たちは荷を下ろしたらしい。」

どの根拠を重く見るか。 根拠の強さの順は、話す人の立場で違います。

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