付録 接辞・不規則形・略号の一覧

この付録には、本文で扱った接辞、不規則な形、逐語訳の略号を、引きやすいように一か所にまとめます。それぞれの働きと用法の詳しい説明は、各欄に挙げた章を見てください。

付録A 接辞一覧

A.1 一覧の見方

A.2 名詞の格と数の語尾

名詞の曲用の型と格の働きは第3章で扱います。形容詞と分詞の一致の語尾も、同じ形を使います(→ 第4章)。

形 グロス 呼び名 意味 異形態 強勢
-a NOM 主格 軽性a語幹名詞の単数主格。主語を表す。 語尾に強勢のある語では -á(virá, selvá)、語根に強勢のある語では無強勢の -a(ilána, plána, pélsa, lóna)。古い脱落の条件に当たっても、a が活用表のほぼすべての形に現れるので類推で復元された。軽性子音語幹(aldár, sílar)にはもともとこの語尾がない。重性o語幹では語幹末の -o がそのまま見える(nébro)。 語による
-an ACC 対格 直接目的語を表す。前置詞 an・du と組むと「〜へ」。分詞の一致では道のりの対格(何段・何瀬下りたか)にもなる。 a語幹で語尾に強勢のある語では -án(virán)。それ以外は無強勢の -an(plánan, aldáran, sélvanan, lisáran)。重性名詞には対格の語尾がなく、主格と同じ形になる(gandér, fáron, nébro)。 語による
-es GEN 属格 「〜の」。名詞の後ろに置く。前置詞 an・es と組むと「〜から」。 軽性:語尾に強勢のある語では -és(virés)、それ以外は -es(ilánes, aldáres)。重性:-os(gandéros, orénos, nébros)。 語による
-ei DAT 与格 受け手「〜に」、場所「〜で」。前置詞と組むと「〜の側で」。 軽性:語尾に強勢のある語では -éi(viréi)、それ以外は -ei(pélsei, aldárei)。重性:-oi(gandéroi, dúnoi)。 語による
-e VOC 呼格 呼びかけ「〜よ」。古い詩と、系譜を唱えるときにだけ残っている。 軽性:-e。重性:-o(fóndaro ráimaros!「ライマルの源よ」)。 なし
-au DU 双数 二つのもの、ひと組のものの主格と対格。数詞 dáu「二」に由来する。 軽性:-au(viráu, sílarau, viríñau)。重性:*-o-au から生まれた -ou(gandérou, aumárou)。崖道の言葉では、名詞は双数のまま、動詞と形容詞を複数で受ける。 語による
-aun DU.OBL 双数の属格・与格 双数の「〜の」「〜に」。二つは同じ形。 軽性:-aun(aldáraun)。重性:-oun(gandéroun)。双数の代名詞 dáun では、この語尾を重ねて dáunaun となる。崖道ではほとんど使わず、複数の -ar・-ail で代える。 語による
-ai PL.NOM 複数主格(軽性) 軽性名詞の複数主格「〜たちが」。 語尾に強勢のある語では -ái(virái)、それ以外は -ai(aldárai, kelárai, élai)。重性名詞では -ul を使う。 語による
-ais PL.ACC 複数対格(軽性) 軽性名詞の複数対格「〜たちを」。星を総称するときにも使う(ilánais)。 語尾に強勢のある語では -áis(viráis)、それ以外は -ais(ilánais, élais)。重性名詞では -ul を使う。 語による
-ul PL 複数主格・対格(重性) 重性名詞の複数主格と複数対格。二つは同じ形。逐語訳では、文の中での役割に応じて PL.NOM か PL.ACC と書く。 *-o-l から生まれた(語末の流音の前で o が u になった)。gandérul, þrénul, lóurul, nébrul, óul。少数の一音節の重性名詞は、母音交替で複数を作る(次の行)。綴りは〈-ol〉。 なし
ü(母音交替) PL 母音交替の複数 少数の一音節の重性名詞は、語根の母音 u・o を ü に変えて、複数の主格と対格を作る。ほかの複数の格は、母音を変えた語幹に規則どおりの語尾をつける。 dún「丘」→ dǘn、món「石」→ mǘn、kúr「谷」→ kǘr、búl「根」→ bǘl。dǘnur「丘々の」、dǘnuls「丘々に」。 語根に残る
-ar PL.GEN 複数属格 「〜らの」。百・千・量の名詞が数えるものを示すときも、この格を使う。 軽性:語尾に強勢のある語では -ár(virár)、それ以外は -ar(ilánar, aldárar)。重性:-ur(gandérur, báronur)。綴りは〈-or〉。 語による
-ail PL.DAT 複数与格 「〜らに」。 軽性:語尾に強勢のある語では -áil(viráil)、それ以外は -ail(ilánail)。重性:-uls(gandéruls)。語末の -ls は主に屈折語尾に現れる(ほかには élþ- の命令形 éls のような、語根末の子音の置き換えでできた形だけ)。綴りは〈-ols〉。 語による

形容詞・分詞の一致の語尾は、軽性なら軽性子音語幹(aldár の型)、重性なら重性子音語幹(gandér の型)と同じです。

軽性 重性
単 主/対/属/与 語尾なし/-an/-es/-ei 語尾なし/語尾なし/-os/-oi
双 主対/属与 -au/-aun -ou/-oun
複 主/対/属/与 -ai/-ais/-ar/-ail -ul/-ul/-ur/-uls

A.3 動詞の人称の語尾

人称の語尾は、法の接尾辞の後ろ(直説法では語根の直後)につきます(→ 第5章)。

形 グロス 呼び名 意味 異形態 強勢
-im 1SG 1人称単数 「私が」。直説法では法の接尾辞がなく、語根に直接つく。 推量法では -él- の l が落ちて -é-im になる(liséim)。 なし
-es 2SG 2人称単数 「あなたが」。目上の人には使わない。 無強勢(líses, liséles)。 なし
-a 3SG.LT 3人称単数・軽性 主語が軽性の3人称単数(人、息、星など)。 願望法と仮定法の後ろでは -e になる(lisénde, lisíre)。古い *-ia が縮んだ名残。 なし
-o 3SG.HV 3人称単数・重性 主語が重性の3人称単数(硬木、霧、荷など)。重性の代名詞 ó と同じ源。 どの法でも -o(dúlo, lisélo, liséndo, toríro)。 なし
-au DU 双数 動詞の双数。人称と性の区別はない。 直説法では無強勢(lísau)。命令法の双数 -áu とは、強勢の位置だけで区別される。 なし
-imor 1PL 1人称複数 「我々が」。聞き手を含むか含まないかは区別しない。 推量法では -é-imor になる(senéimor)。 なし
-ers 2PL 2人称複数 「あなたがたが」。 lísers, lisénders。 なし
-an 3PL 3人称複数 「彼らが」。 és-「いる」だけは不規則で、sán になる(直説法のみ)。 なし

A.4 法の接尾辞

法の接尾辞は、語根(敬語の接頭辞や使役 -íþ- がつけばその後ろ)と人称の語尾のあいだに入ります。直説法には接尾辞がありません(→ 第5章)。

形 グロス 呼び名 意味 異形態 強勢
(なし) — 直説法 言い切り。逐語訳には人称の語尾だけを書く。 — —
-él- PRSM 推量法 「〜だろう」。推し量り。未来のこと、確かでないこと、目上の人へのやわらかい問いに使う。 語根の強勢を奪う(liséla, gloiréla)。1人称の語尾 -im・-imor の前では l が落ちて -é- になる(liséim, senéimor)。 あり
-énd- OPT 願望法 「〜しますように」。願い。改まった場で、命令の代わりに使う。尊敬は au- や敬語の補充動詞で表し、願望法そのものは尊敬を表さない。 3人称単数・軽性では -énde となる。くだけた話し方では -énd とも発音される。小辞 ende は、この形が固まったもの。 あり
(語幹のみ) IMP.2SG 命令法・単数 一人への命令。語尾がなく、むき出しの語幹で言う(lís!「書け」)。 語末に置けない子音は調整される(vánd- → ván、rímb- → rím、dulíþ- → dulís、pák- → pá。→ 1.8.4)。 語根に残る
-áu IMP.2DU 命令法・双数 「二人で〜せよ」。下向きの話し方でだけ使う。 lisáu。直説法の双数 lísau とは、強勢の位置だけで区別される。 あり
-ir IMP.2PL 命令法・複数 「皆で〜せよ」。複数の相手への命令。 lísir。 なし
-és- DEB 当為法 「〜すべし」「〜せぬこと」。法典・碑文・詞に使う。主語を言わないときは一般の人が主語になり、軽性の形をとる。 3人称の形しかない(-ésa, -éso, -ésau, -ésan)。duliþésa。 あり
-ír- COND 仮定法 「もし〜なら」。仮定や条件を表す。詩でも好まれる。 3人称単数・軽性では -íre、重性では -íro になる(toríro)。 あり

A.5 相・分詞・副動詞

形 グロス 呼び名 意味 異形態 強勢
ei(母音交替) PFV 完了相 「〜し終えた」。事柄が完了していることを表す。語根の母音を変えて作り、語尾はどの法でも未完了と同じものを使う。状態を表す動詞では「〜するようになった」の意味になる。見出しの ei は、いちばん多い i → ei の型。 i → ei(lís- → léis-)、u → ou(dúl- → dóul-)、a → ai(mán- → máin-)、e → ee(kél- → kéel-)、o → oo(þór- → þóor-)、ü → eu(glǘn- → gléun-)。二重母音や長母音の語根には -s- を足す(áur- → áurs-)。補充形:és- → wéir-、gél- → váls-、tór- → táis-、vír- → þóul-、sén- → sóin-。 変わった母音の最初の字
-en PTCP 分詞 完了の語根ではなく、ふつうの語根につける。完了の意味をもち、自動詞では結果の状態(dúlen「下りた」)、他動詞では受け身(kélen「伐られた」)を表す。名詞の後ろに置き、その名詞の性・数・格に一致させる。短い関係節の代わりにもなる。 一致の語尾は、軽性が 単主なし・-an・-es・-ei・-au・-aun・-ai・-ais・-ar・-ail、重性が 単主対なし・-os・-oi・-ou・-oun・-ul・-ur・-uls(áuren, dúlenan)。 なし(語根に残る)
-in CVB 副動詞 「〜して」。動詞の語根につけて、文を飾る副動詞を作る。未完了の語根なら「〜しながら」(vándin)、完了の語根なら「〜し終えて」(léisin)。形は変わらず、主語は後ろの動詞と同じでなければならない。形容詞につけると副詞「〜く」になる(gléinin「清く」)。代名詞から副詞を作る -in(sérin「このように」)と同じもの。 変わらない。 なし(語根に残る)

A.6 敬語と否定の接頭辞

接頭辞は語の頭につきます。綴りでは次の語につなげて書き、尊敬の au- だけは結び字で書きます(→ 第2章、第8章)。

形 グロス 呼び名 意味 異形態 強勢
au- HON 尊敬 「お〜になる」「御〜」。話題の人の行い、持ち物、体の部分、その人を指す名詞を高める。aur-「昇る」に由来する。 母音の前では aur-、v-・w- の前では aub-(aubandénde)、h- の前では h が落ちる(auél-)。いる・行く・来る・言う・食べる・見るの六つは補充形を使う(aldán-, fléir-, glóir-, selvén-, nélis-, lúum-)。 なし
du- HUM 謙譲 「〜させていただく」。自分の行いを低める。dul-「下る」に由来する。 母音の前では dul-、v-・w- の前では dumb-(dumbánd-)。六つの動詞は補充形を使う(dóm-, drén-, dunér-, léun-, dúmar-, dúrel-)。 なし
na- NEG 性質の否定 「〜ぬ」。分詞と形容詞を否定する(nadúlen「下りぬ」、narímben「数えられていない」、nagléin「清からぬ」)。名詞を飾る形や、述語の形容詞の性質そのものを打ち消す。 母音で始まる語の前では n- になる(náuren「高からぬ」= n- + áuren)。 なし

A.7 派生の接辞

派生の働きと例は第9章で扱います。

形 グロス 呼び名 意味 異形態・例 強勢
-íþ- CAUS 使役 自動詞から「〜させる」「〜下ろす・上げる」という他動詞を作る(dulíþ-「下ろす」、auríþ-「上げる」、toríþ-「呼び寄せる」)。 命令形では語末の þ が s になる(dulís!)。 後ろに強勢をもつ接辞がなければあり(dulíþa/duliþésa/duliþándo)
-ár AG 行為者名詞 「〜する人」を表す、軽性の子音語幹名詞を作る。古い *-ára の母音が落ちた形(主格・対格にしか -a がなく、支えがなかったため)。 lisár「書記」、kelár「樵」、senár「目付」。母音が落ちたあと、軽性子音語幹にならって対格 -an を新しく作った(lisáran)。 あり
-á NMLZ もの名詞(軽性) 「〜するもの」のうち、軽いものを指す軽性a語幹名詞を作る。 aurá「縁鷲」、virá「言葉」。 あり
-ó NMLZ もの名詞(重性) 「〜するもの」のうち、重いものを指す重性o語幹名詞を作る。 duló「滝」。例外は古い語 vándo「秤」だけで、強勢が語根に残り、-o は無強勢。 あり
-ím ABST 抽象名詞 「〜の技」「〜さ」。行為・技・性質を表す、軽性の抽象名詞を作る。*-íma の母音が落ちた形。 lisím「書法」(lísim「私が書く」とは強勢の位置だけが違う)、aurím「高さ」。綴りは〈lisima〉。 あり
-ándo PLACE 場所名詞 「〜する所」を表す、重性o語幹名詞を作る。 duliþándo「降ろし場」、senándo「見張り台」。-íþ- の強勢も奪う。 あり
-íña DIM 指小 「小さな〜」。自分の言葉や持ち物に、へりくだって「拙い〜」の意味でつけることも多い。もとの語の性を保つ。名の語根につけて幼名を作る(silíña)。 軽性:-íña(viríña「小句」。a語幹として変化し、格語尾の前では viríñ- となる:viríñau)。重性:-íño(moníño「小石」。o語幹として変化する)。 あり
-ér- DENOM 名詞から動詞 名詞から「それを使って何かをする」という動詞を作る。 món → monér-「石を敷く」、virá → virér-「詩句を詠みかわす」。 あり

A.8 小辞

接辞ではなく独立した小さな語ですが、文法の働きをもつので、ここに挙げます。

形 グロス 呼び名 意味 異形態・注 強勢
na NEG 否定の小辞 「〜ない」。直説法・推量法・仮定法の文を否定する。動詞の直前に置く。 — なし
mé PROH 禁止の小辞 願望法・命令法・当為法の文を否定し、禁止を表す。 無強勢の na と違って強勢をもつ。 あり
ké Q 問いの小辞 「〜か」。文頭に置いて、はい・いいえで答える問いを作る。目上の人には使わず、推量法で尋ねる。 — あり
te REL 関係節の小辞 関係節を導く(→ 第7章)。 強勢がないので、指示詞 té「あの」と書き分ける。 なし
ré COMP 「〜と」の小辞 「〜と(言う・知る)」の節、目的の節を導く(→ 第7章)。 — あり
ende どうぞ 固まった小辞 「どうぞ」「頼む」。願望法の3人称単数の語尾 -énde が独立した決まり文句。市の取引言葉でよく使う。 運び人どうしでは énd。 —

付録B 不規則形一覧

本文で扱った不規則な形と例外を、品詞ごとにまとめます。多くは、歴史上の音の変化や、古い形が固まって残った名残です。

B.1 名詞

形 不規則な点 参照
母音交替の複数:dǘn「丘々」、mǘn「石々」、kǘr「谷々」、bǘl「根々」 複数の主格・対格を、語尾 -ul ではなく語根の母音を ü に変えて作る(dún, món, kúr, búl)。ほかの複数の格は、母音を変えた語幹に規則どおりの語尾をつける(dǘnur, dǘnuls) 第3章
vándo「秤」 派生の -ó はいつも強勢をもつのに、vándo だけは強勢が語根に残り、-o は無強勢。強勢をとる -ó が広まる前に固まった古い語 第3章、第9章
ilána「灯・星」 古い脱落の条件に当たるのに、語末の a まで読む。a が活用表のほぼすべての形に現れるので類推で復元され、星の司が祀りの唱えで古い発音を守ってきた。plána, lóna など a語幹の語も同じ 第1章、第2章
dálor「下の国」 古い脱落の条件に合わないのに、重性名詞の多くにならって語末の母音を落とした。綴りは〈dalora〉、属格は〈daloros〉=dáloros 第2章
lisáran の類(-ár・-ím の派生語) 古い母音が落ちて主格と対格が同じ形になったので、軽性子音語幹にならって対格 -an を新しく作った 第3章、第9章
伐られると一致だけが重性になる木:pélsa「脂の木」、lóna「柱の木」など 名詞の語尾は軽性のままで、受ける分詞・形容詞・指示詞・動詞・代名詞が重性になる(pélsei kélenoi)。紙(plána)と版の木は、伐ったあとも軽性のまま 第3章

B.2 数詞

形 不規則な点 参照
dáumbar「二十」 dáu「二」+ombár「十」の縮約形(*dáu-ombár)。ほかの十の位は téirombar「三十」のように規則どおり 第3章
ombára「十(そろった)」 古い脱落の前の形のまま、星座名 ombára ilánai「十の灯」の中にだけ残る。ふつうは ombár。綴りは同じ〈ombara〉で、読みが二つある 第2章、第3章
lími「五」 森の言葉だけに残る古い形。都では lím 第3章、第10章

B.3 代名詞と疑問詞

形 不規則な点 参照
dáun「(我ら・お前たち・あの)二人」 もとは数詞 dáu の属格・与格(*dáu-aun)が代名詞に転じ、主格・対格として使われるようになった 第4章
dáunaun dáun の属格・与格。双数の語尾 -aun をもう一度重ねる 第4章
pón「何を」 重性の名詞は主格と対格が同じ形なのに、疑問詞 pó「何」だけは対格 pón をもつ。pá「誰」・pán「誰を」にならった新しい形。前置詞の後ろでは古い形 pó のまま(an pó, du pó)。崖道や縁のくだけた言葉では pón を使わず、森の古い詞にも pón はない 第4章、第6章

B.4 動詞

形 不規則な点 参照
sán és-「いる」の3人称複数(*ésan ではない)。直説法だけの形で、願望法では規則どおり eséndan 第5章
-e(願望法・仮定法の3人称単数・軽性) -a ではなく -e になる(lisénde, lisíre)。古い *-ia が縮んだ名残。重性の -o は規則どおり 第5章
-é-(推量法の1人称) 1人称の語尾 -im・-imor の前で、-él- の l が落ちる(liséim, senéimor) 第5章
命令法2単の語幹の単純化 語末に置けない子音のつながりが削られる。nd → n(vánd- → ván!)、mb → m(rímb- → rím!)、þ → s(dulíþ- → dulís!) 第5章
ende「どうぞ・頼む」 願望法の3人称単数の語尾 -énde が、独立した小辞として固まったもの。運び人どうしでは énd 第5章、第10章
dóulin「もう」 dúl-「下る」の完了 dóul- に -in がついた「下り終えて」が、副詞として固まったもの 第5章、第7章
lúin「〜とき」 古い -in の形が小辞として固まったもの。lú-in の二音節で読む 第5章、第7章

補充の完了語根:よく使う五つの動詞は、完了の語根がまったく別の形になります。

意味 未完了の語根 完了の語根
いる・である és- wéir-
行く gél- váls-
来る tór- táis-
言う vír- þóul-
見る sén- sóin-

敬語の補充形:日常よく使う六つの動詞は、敬語にすると別の語に入れかわります。名詞では補充形を使わず、規則どおりに au- をつけます(ausenár「目付の方」)。

意味 ふつう 高める 低める
いる és- aldán-「おわす」 dóm-「控える」
行く gél- fléir-「お出ましになる」 drén-「参る」
来る tór- glóir-「お越しになる」 dunér-「参上する」
言う vír- selvén-「おっしゃる」(selvá「息」から) léun-「申す」
食べる mán- nélis-「召し上がる」 dúmar-「いただく」
見る sén- lúum-「ご覧になる」 dúrel-「拝見する」

接頭辞と語根の融合:尊敬の au- と謙譲の du- は、語根の頭の音によって形が変わります。歴史上の音の変化の名残です。

語根の頭 au- du-
母音 aur-(「昇る」aur- の古い形が顔を出す) dul-(「下る」dul- の古い形が顔を出す)
v-・w- aub-(au-vánd- → aubánd-「お量りになる」) dumb-(du-vánd- → dumbánd-「量らせていただく」)
h- h が落ちる(au-hél- → auél-) そのまま
それ以外 そのまま そのまま

付録C 略号一覧

C.1 略号

例文の逐語訳のもとになる略号です。画面の逐語訳では、これらの略号を < > で囲んだ日本語の呼び名に置き換えて示します(灯.NOM → 灯<主格>、丘-DAT → 丘-<与格>)。逐語訳の上にカーソルを置くと、もとの略号が出ます。

略号 意味 略号 意味
1・2・3 1・2・3人称 PRSM 推量法(〜だろう)
SG 単数 OPT 願望法(〜しますように)
DU 双数(二つ) IMP 命令法
PL 複数 DEB 当為法(〜すべし)
NOM 主格(〜が) COND 仮定法(もし〜なら)
ACC 対格(〜を/〜へ) PFV 完了相(〜し終えた)
GEN 属格(〜の/〜から) PTCP 分詞
DAT 与格(〜に/〜で) CVB 副動詞(〜して・〜しながら・〜し終えて)
VOC 呼格(〜よ) CAUS 使役(〜させる・〜下ろす)
DU.OBL 双数の属格・与格 HON 尊敬(高める)
LT 軽性 HUM 謙譲(低める)
HV 重性 NEG 否定(事柄)
AG 〜する人(行為者名詞) PROH 否定(働きかけ:〜するな)
NMLZ 〜するもの(もの名詞化) Q 問い
ABST 〜の技・〜さ(抽象名詞化) REL 関係節の小辞 te
PLACE 〜する所(場所名詞化) COMP 「〜と」の小辞 ré
DENOM 名詞から作った動詞 DIM 指小(小さな・拙い)
PRED 述語(「AはBだ」のB)

C.2 書き方の約束

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