荷担ぎ歌「岩棚の数え歌」

dulénde fláinin

旧道を下りた運び人が歌った荷担ぎ歌。上から順に岩棚の名を数え、無事に着いた棚ごとに dulénde fláinin「軽く下りよ」を返す。足を踏みしめるような、ゆっくりした拍子で歌い、歌い手は一つ数えるごとに片手を一段下げる。旧道が使われなくなった今は、今の崖道の運び人はこの歌を歌わず、フネロールの年長者だけが覚えている。

棚の名はどれも、地名にだけ残る古い場所の接尾辞 *-óra を含む(上から glünó「氷」、krámbo「崖山羊」、sírna「霜」、duló「滝」、fléura「雲」)。一つ目の glünóra は、町の綱場から綱で荷を吊り下ろした棚で、崖の上から綱が届く近さにある。そこから下は三日の下りで、三つ目の sirnóra と四つ目の dulóra は、三日の下りで夜を明かす棚だった。約四百年前の雨期の終わりに、下の二つの棚(dulóra と fleuróra)が一度に崩れ落ち、直されなかった。

図は、旧道を横から見た断面(高さは誇張)。地図(高原の地図)では、フネロールの南の「旧道(崩れた岩棚)」の破線にあたる。

荷担ぎ歌「岩棚の数え歌」

もとの歌(棚が五つあったころ)

五つの棚のすべてに dulénde fláinin を返す。dulénde は崖道を下りていく人に向ける別れの言葉で、fláinin「軽く」を添えて「重く(落ちて)ではなく、軽く(歩いて)下りよ」という願いをこめる。

ín, glünóra. dulénde fláinin.

読み:イーン、グリュノーラ。ドゥレンデ フライニン。

ín,glünóra.duléndefláin-in.
一氷の棚<主格>道中ご無事で軽い-<〜して・〜く>

「一つ、氷の棚。軽く下りよ。」

数詞は名詞の前に置くが、この歌では数を先に言って読点で切り、棚の名を続ける。数え歌の決まった形。一つ目の棚は、綱場から綱で荷を下ろした棚。

dáu, krambóra. dulénde fláinin.

読み:ダウ、クランボーラ。ドゥレンデ フライニン。

dáu,krambóra.duléndefláin-in.
二崖山羊の棚<主格>道中ご無事で軽い-<〜して・〜く>

「二つ、崖山羊の棚。軽く下りよ。」

téir, sirnóra. dulénde fláinin.

読み:テール、シルノーラ。ドゥレンデ フライニン。

téir,sirnóra.duléndefláin-in.
三霜の棚<主格>道中ご無事で軽い-<〜して・〜く>

「三つ、霜の棚。軽く下りよ。」

fáir, dulóra. dulénde fláinin.

読み:ファイル、ドゥローラ。ドゥレンデ フライニン。

fáir,dulóra.duléndefláin-in.
四滝の棚<主格>道中ご無事で軽い-<〜して・〜く>

「四つ、滝の棚。軽く下りよ。」

lím, fleuróra. dulénde fláinin.

読み:リーン、フレウローラ。ドゥレンデ フライニン。

lím,fleuróra.duléndefláin-in.
五雲の棚<主格>道中ご無事で軽い-<〜して・〜く>

「五つ、雲の棚。軽く下りよ。」

今の歌い方

崩れた四つ目と五つ目の棚では、決まり文句を返さず、ひと息おいて brúumo「崩れ落ちた」と言う。崩れた棚の名を歌から外さずに残すのは、道を覚えておくためだと言われる。物語では、第4話で倉の老人がこの形で歌い、第7話でこの二つの棚が崩れていることが、旧道は抜け道にならないという証言になる。

ín, glünóra. dulénde fláinin.

読み:イーン、グリュノーラ。ドゥレンデ フライニン。

ín,glünóra.duléndefláin-in.
一氷の棚<主格>道中ご無事で軽い-<〜して・〜く>

「一つ、氷の棚。軽く下りよ。」

dáu, krambóra. dulénde fláinin.

読み:ダウ、クランボーラ。ドゥレンデ フライニン。

dáu,krambóra.duléndefláin-in.
二崖山羊の棚<主格>道中ご無事で軽い-<〜して・〜く>

「二つ、崖山羊の棚。軽く下りよ。」

téir, sirnóra. dulénde fláinin.

読み:テール、シルノーラ。ドゥレンデ フライニン。

téir,sirnóra.duléndefláin-in.
三霜の棚<主格>道中ご無事で軽い-<〜して・〜く>

「三つ、霜の棚。軽く下りよ。」

fáir, dulóra.

読み:ファイル、ドゥローラ。

fáir,dulóra.
四滝の棚<主格>

「四つ、滝の棚。」

brúumo.

読み:ブルーモ。

brúum-o.
落ちる-<(重いものが)>

「(棚は)崩れ落ちた。」

崩れた棚には dulénde fláinin を返さず、brúumo と言う。人の落下を brúum- で言うのは避けられるが、崩れた棚についてだけは歌の決まりとしてこう言う。重性の -o は、棚が石(重いもの)だから。

lím, fleuróra.

読み:リーン、フレウローラ。

lím,fleuróra.
五雲の棚<主格>

「五つ、雲の棚。」

brúumo.

読み:ブルーモ。

brúum-o.
落ちる-<(重いものが)>

「(棚は)崩れ落ちた。」

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