ó

品詞
代名詞
意味
それ(重)
発音
[ˈo]
読み
オー
分野
代名詞・指示詞・疑問詞

意味

  1. それ(重)

    重性の名詞が指すもの(硬木・荷・石・霧など)を受ける3人称代名詞。

    ké sénes nébro? sénim ó.

    読み:ケー セーネス ネーブロ?セーニン オー。

    késén-esnébro?sén-imó.
    <〜か>見る-<あなたが>霧<対格>見る-<私が>それ<対格>

    「「霧が見えるか?」「ああ、見える。」」

    霧期に、縁の肩の見張りどうしで交わす問答。霧 nébro は重性なので、受ける代名詞も重性の ó になる。答えでは動詞 sén- を1人称に変えて繰り返し、目的語を ó で受ける。霧を指して軽性の él を使うことはない。

    kéla kelár gandér, dulíþa ó du orén.

    読み:ケーラ ケラール ガンデール、ドゥリーサ オー ドゥ オレーン。

    kél-akel-árgandér,dul-íþ-aóduorén.
    伐る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>硬木<対格>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>それ<対格>下手縁<対格>

    「樵は硬木を伐り、それを縁へ下ろす。」

    前の節に出た重性名詞 gandér を、代名詞 ó で受けている。ó は重性なので、主格と対格が同じ形になる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ樵が主語だとわかる。

  2. あいつ(侮蔑)

    人を重性で受けて、相手を「下へ沈んだ者」として貶める言い方。強い侮辱になる。

    tóro ó es dáloros.

    読み:トーロ オー エス ダーロロス。

    tór-oóesdálor-os.
    来る-<(重いものが)>あいつ<主格>から下の国-<属格>

    「あいつ、下の国から来やがった。」

    人を重性の代名詞 ó で指し、動詞も重性の -o で一致させた、強い侮蔑の言い方。崖道の運び人などが陰口で使う。主語の代名詞をわざわざ言うのも、相手を突き放す響きを強める。ふつうに言うなら tóra él… と軽性で受ける。

    ké tóro ó es dáloros?

    読み:ケー トーロ オー エス ダーロロス?

    kétór-oóesdálor-os?
    <〜か>来る-<(重いものが)>あいつ<主格>から下の国-<属格>

    「あいつ、下の国から来やがったのか?」

    人を重性の代名詞 ó で指し、動詞も重性の -o で受けた、さげすみの問い。ふつう人は軽性の él で受ける。人を重性で指すのは、相手を「下へ沈んだ者」として扱うことになるので、本人に聞こえれば争いのもとになる。陰口で干潟の人を指すときによく使われる。

解説

3人称単数・重性の人称代名詞。石・金属・硬木・荷・霧・泥など、重性の名詞が指すものを受ける。主語は動詞の語尾 -o でわかるのでふつう言わず、目的語・属格・与格で使うことが多い。人をこの代名詞で受けるのは強い侮辱で、「泥の者」「重い者」扱いになる。陰口や罵りで、干潟の人や憎い相手をわざと ó と呼ぶことがある。3人称の目的語は省かないので、文中に単独で出てくる ó は目的語である。他動詞の文で重性の主語を動詞の前に出したときは、空いた主語の位置に ó を残す(再述の ó:ílmo dulíþo ó fáron「水こそが荷を下ろす」)。縁の言葉では、主語の位置の ó と目的語の位置の ó が続くと、一語に縮めて óo と言う。

そのほかの用例

dúlo gandér du dálor.

読み:ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル。

dúl-ogandérdudálor
下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>

「硬木が下の国へ下りていく。」

VSO の基本の文。直説法には法の印がないので、語根に人称の語尾が直接つく。主語の gandér は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」。dálor も重性なので、主格と対格が同じ形になる。

mé duliþésa fáron es orénos.

読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

médul-iþ-és-afáronesorén-os
<禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

「縁から荷を落とさぬこと。」

度量衡の碑の一句。当為法の文は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移り、-íþ- の強勢は消える。

duþélim sélvanan, an fóndaros ráimaros dúlenan dáumbar téir lóurul, dúlenan fáir þrénul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス ライマロス ドゥーレナン ダウンバル テール ロールル、ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osráimar-osdúl-en-andáumbartéirlóur-ul,dúl-en-anfáirþrén-ul
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>二十三瀬-<〜たちを>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>四段-<〜たちを>

「ライマルの源から二十三瀬下りた、四段下りの者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった場での名乗り。固有名も小文字で書く。分詞 dúlenan は二度とも、名前の sélvanan(軽性・単数・対格)に一致している。lóurul と þrénul は道のりの対格。瀬と段は語が違うので、どちらが世代でどちらが身分かがすぐにわかる。

gloiréla aulisár es orénos?

読み:グロイレーラ アウリサール エス オレーノス?

gloir-él-aau-lis-áresorén-os
お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>から縁-<属格>

「書記の方は縁からお越しになったのでしょうか。」

目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る形にする。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。強勢が -él- に移るので、語根の ´ は消える。

toríro nébro es orénos, na senéimor ilánais.

読み:トリーロ ネーブロ エス オレーノス、ナ セネーモル イラーナイス。

tor-ír-onébroesorén-os,nasen-é-imorilán-ais
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格><〜ない>見る-<〜だろう>-<我々が>灯-<〜たちを>

「縁から霧が上がってくれば、我々には星が見えなくなるだろう。」

霧 nébro は重性o語幹なので、仮定法の動詞も重性の -o をとる。帰結の部分は推量法で、na で否定している。1人称の語尾の前では、推量法の -él- の l が落ちて -é- になる。

dúlo gandér kélen kelárar só du orén.

読み:ドゥーロ ガンデール ケーレン ケラーラル ソー ドゥ オレーン。

dúl-ogandérkél-enkel-ár-arsóduorén.
下る-<(重いものが)>硬木<主格>伐る-<〜した・〜された>伐る-<〜する人>-<〜らの>この<重性>下手縁<対格>

「樵たちが伐ったこの硬木が、縁へ下りていく。」

名詞句の並び順は「名詞–分詞–属格–指示詞」。分詞は重性・単数・主格なので一致の語尾がない。分詞の後ろの属格 kelárar は「樵たちによって」の意味。関係節がないので、重性の指示詞 só が名詞句の終わりの目印になり、du orén は主節にかかる。

ké éso tambór tásei? na éso tambór némei.

読み:ケー エーソ タンボール ターセイ?ナ エーソ タンボール ネーメイ。

kéés-otambórtás-ei?naés-otambórném-ei.
<〜か>いる-<(重いものが)>雑穀<主格><あなた>-<与格><〜ない>いる-<(重いものが)>雑穀<主格><私>-<与格>

「「お前、雑穀はあるか?」「私には雑穀はない。」」

二人の発話。所有は「持つ」という動詞ではなく、「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持ち主ではなく、持たれている物 tambór(重性)に一致する。はい・いいえで答える問いは、文のいちばん前の ké で作る。答えは動詞を繰り返すが、動詞が物に一致しているので人称は変わらず、「はい」なら éso、「いいえ」なら na éso となる。ké máines?「食べたか」→ máinim「食べた」のような、人称を変える答え方と比べてほしい。

dúlo du dálor gandér te kéelan kelárai.

読み:ドゥーロ ドゥ ダーロル ガンデール テ ケーラン ケラーライ。

dúl-odudálorgandértekéel-ankel-ár-ai.
下る-<(重いものが)>下手下の国<対格>硬木<主格><関係節>伐る<〜し終えた>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

「樵たちが伐り終えた硬木が、下の国へ下りていく。」

関係節は名詞の後ろに無強勢の te を置き、すぐ後ろに動詞を続ける。目的語が抜けた穴は空けたままにする。関係節は文の終わり(か読点)まで続くので、du dálor を主節にかけるために、関係節つきの重い主語を文末に回している。dúlo gandér te kéelan kelárai du dálor と言うと、du dálor は関係節の中に入ってしまう。gandér は重性だが、関係節を導くのは te のままで、tó にはならない(tó なら「あの硬木」)。

selvéna ausenár ré mé duliþésa fáron es orénos.

読み:セルヴェーナ アウセナール レー メー ドゥリセーサ ファーロン エス オレーノス。

selvén-aau-sen-árrémédul-iþ-és-afáronesorén-os.
おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

「目付殿は、「縁から荷を落とさぬこと」とおっしゃる。」

ré は「〜と」の節を導き、その節は主節の後ろに置く。ré の後ろの節は、元の文の法を保つ。ここでは度量衡の碑の一句 mé duliþésa fáron es orénos を、当為法のまま引用している。目付が碑の前で揉め事を裁くときの言い方。

duliþíre kelár fáron es orénos, toriþéla dálor.

読み:ドゥリシーレ ケラール ファーロン エス オレーノス、トリセーラ ダーロル。

dul-iþ-ír-ekel-árfáronesorén-os,tor-iþ-él-adálor.
下る-<〜させる>-<もし〜なら>-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>荷<対格>から縁-<属格>来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>下の国<対格>

「樵が縁から荷を落とせば、下の国を呼び寄せることになろう。」

条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作り、主節の前に置く。帰結の節は推量法。後半では主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。崖から物を落としてはいけない、という禁忌の説明。

tóra sélvan ráimaros es dáloros.

読み:トーラ セルヴァン ライマロス エス ダーロロス。

tór-asélvanráimar-osesdálor-os.
来る-<(軽いものが)>セルヴァン<主格>ライマル-<属格>から下の国-<属格>

「ライマル家のセルヴァンが下の国から来た。」

名+家名の属格のフルネーム。名は人なので動詞は軽性の -a で受け、家名は源の名なので重性の属格 -os になる。

pón dulíþo gandér?

読み:ポーン ドゥリーソ ガンデール?

póndul-íþ-ogandér?
何<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>硬木<主格>

「硬木は何を下ろすのか。」

目的語を尋ねる問い。重性の名詞どうしでも、疑問詞の対格 pón で、残った gandér が主語だとわかる。

pó dulíþo gandér?

読み:ポー ドゥリーソ ガンデール?

pódul-íþ-ogandér?
何<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>硬木<対格>

「何が硬木を下ろすのか。」

主語を尋ねる問い。疑問詞が主格 pó なので、残った gandér は目的語になる。くだけた言葉では、この形が「硬木は何を下ろすのか」の意味にもなりうる。

na éso nébro fléura.

読み:ナ エーソ ネーブロ フレウラ。

naés-onébrofléura.
<〜ない>いる-<(重いものが)>霧<主格>雲

「霧は雲ではない。」

述語の名詞は自分の性・主格のまま置く。動詞は主語の霧に合わせて重性の -o。

fáron dulíþo ílmo.

読み:ファーロン ドゥリーソ イルモ。

fárondul-íþ-oílmo.
荷<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

「荷をこそ、水が下ろす。」

他動詞の文で前に出した重性の名詞は、既定で目的語として読む。主語の位置にいる ílmo が主語。

ílmo dulíþo ó fáron.

読み:イルモ ドゥリーソ オー ファーロン。

ílmodul-íþ-oófáron.
水<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>荷<対格>

「水こそが、荷を下ろす。」

前に出した重性の名詞が主語のときは、空いた主語の位置に再述の ó を残す。ó があるので、fáron は目的語に決まる。

dulíþo ó.

読み:ドゥリーソ オー。

dul-íþ-oó.
下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・対格>

「(それが)それを下ろす。」

3人称の目的語は省かないので、単独の ó は目的語。主語は動詞の語尾 -o でわかるので言わない。

ó dúlo.

読み:オー ドゥーロ。

ódúl-o.
<3人称単数・重性・主格>下る-<(重いものが)>

「ほかでもなく、それが下りていく。」

自動詞の文には目的語がないので、前に出した ó は主語として読む。

gandér dulíþo ó.

読み:ガンデール ドゥリーソ オー。

gandérdul-íþ-oó.
硬木<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>

「硬木をこそ、それが下ろす。」

前に出した gandér が目的語の枠を埋めているので、後ろの ó は主語の枠にある。単独の ó が主語になる例。

gandér dulíþo óo.

読み:ガンデール ドゥリーソ オー。

gandérdul-íþ-oóo.
硬木<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・NOM+ACC>

「硬木こそが、それを下ろす。」

縁の言葉。主語の枠の再述の ó と、目的語の枠の ó が続くので、一語に縮めて óo と言う。都の人は ó ó と並べるのを嫌い、目的語を名詞で言い直す。

léisa lisár plánan, duói dúlo fáron du orén.

読み:レーサ リサール プラーナン、ドゥオイ ドゥーロ ファーロン ドゥ オレーン。

léis-alis-árplán-an,duóidúl-ofáronduorén.
書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>それから下る-<(重いものが)>荷<主格>下手縁<対格>

「書記が帳簿を書き終え、それから荷が縁へ下りていく。」

duói「それの下手で」は、出来事の順序をはっきりさせる。

áura selvá, salóur dúlo ílmo.

読み:アウラ セルヴァー、サロール ドゥーロ イルモ。

áur-aselvá,salóurdúl-oílmo.
昇る-<(軽いものが)>息<主格>しかし下る-<(重いものが)>水<主格>

「息は昇る。しかし、水は下る。」

salóur「瀬の外に」は逆接。強勢があり、後ろに短い切れ目が入る。

éso nébro an orénoi, esós na sénimor ilánais.

読み:エーソ ネーブロ アン オレーノイ、エソース ナ セーニモル イラーナイス。

és-onébroanorén-oi,esósnasén-imorilán-ais.
いる-<(重いものが)>霧<主格>上手縁-<与格>だから<〜ない>見る-<我々が>灯-<〜たちを>

「縁の上手に霧がある。だから、我々には星が見えない。」

esós「それから(それゆえ)」は理由と結果。es pós「なぜ」と対になる。

éso fáron gróm némei.

読み:エーソ ファーロン グローン ネーメイ。

és-ofárongrómném-ei.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<与格>

「私には重い荷がある。」

és- の文に裸の与格があるので、存在・所有の文として読み、gróm は荷を飾る。

éso fáron gróm só némei.

読み:エーソ ファーロン グローン ソー ネーメイ。

és-ofárongrómsóném-ei.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重いこの<重性><私>-<与格>

「私には、この重い荷がある。」

指示詞 só が名詞句を閉じるので、gróm が名詞句の中にあることがはっきりする。

éso sáko némei un kórvoi.

読み:エーソ サーコ ネーメイ ウン コルヴォイ。

és-osákoném-eiunkórv-oi.
いる-<(重いものが)>塩<主格><私>-<与格>内に倉-<与格>

「私には倉の中に塩がある。」

持ち主は裸の与格、場所は前置詞+与格。語順は「主語→与格→前置詞句」。

éso fáron némes gróm.

読み:エーソ ファーロン ネーメス グローン。

és-ofáronném-esgróm.
いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<属格>重い

「私の荷は重い。」

形容詞が属格より後ろにあるので、名詞句の外にある述語と読む。

éso fáron gróm némes só.

読み:エーソ ファーロン グローン ネーメス ソー。

és-ofárongrómném-essó.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重い<私>-<属格>この<重性>

「この、私の重い荷がある。」

名詞・形容詞・属格・指示詞の順の名詞句。指示詞で閉じているので、gróm は名詞を飾る。

éso fáron gróm un méndalei.

読み:エーソ ファーロン グローン ウン メンダレイ。

és-ofárongrómunméndal-ei.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重い内に中-<与格>

「重い荷がある(この世にある)。」

場所を言わない存在文には un méndalei「中の世界に」を添える。くだけた言葉では séndoi「ここに」で代える。

éso ílmo klér un kórvoi.

読み:エーソ イルモ クレール ウン コルヴォイ。

és-oílmoklérunkórv-oi.
いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい内に倉-<与格>

「倉の中に冷たい水がある。」

前置詞つきの与格も、動詞の後ろにあれば存在の文と読む。

un kórvoi, éso ílmo klér.

読み:ウン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール。

unkórv-oi,és-oílmoklér.
内に倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい

「倉の中では、水は冷たい。」

場所を動詞の前に出すと、述語の形容詞の文になる(場所を対比の前置きとして出した形)。

éso ílmo klér an kórvoi.

読み:エーソ イルモ クレール アン コルヴォイ。

és-oílmoklérankórv-oi.
いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい上手倉-<与格>

「水は倉より冷たい。」

述語の形容詞のすぐ後ろの an+与格は、比較として読む。

an kórvoi, éso ílmo klér.

読み:アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール。

ankórv-oi,és-oílmoklér.
上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい

「倉の北側では、水は冷たい。」

比較でない場所の an+与格は、動詞の前に出す。

tóra éndra un kórvos.

読み:トーラ エンドラ ウン コルヴォス。

tór-aéndraunkórv-os.
来る-<(軽いものが)>人<主格>内に倉-<属格>

「人が倉の中から来る。」

un+属格で「〜の中から」。

an kórvoi, pó éso?

読み:アン コルヴォイ、ポー エーソ?

ankórv-oi,póés-o?
上手倉-<与格>何<主格>いる-<(重いものが)>

「倉の北側には、何があるか。」

場面の枠(場所)は疑問詞より前に置き、後ろに読点(短い切れ目)を入れる。

ké an kórvoi, éso ílmo klér?

読み:ケー アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール?

kéankórv-oi,és-oílmoklér?
<〜か>上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい

「倉の北側では、水は冷たいか。」

ké は文のいちばん前、そのあとに場面の枠が来る。

éso ílmo klér ín an kórvoi.

読み:エーソ イルモ クレール イーン アン コルヴォイ。

és-oílmoklérínankórv-oi.
いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい一上手倉-<与格>

「倉の北側に、冷たい水がある。」

ín「一」を名詞句の終わりに置いて、不定の名詞句を閉じる。閉じたあとの an+与格は比較ではなく場所。

éso ín fáron gróm ín an kórvoi.

読み:エーソ イーン ファーロン グローン イーン アン コルヴォイ。

és-oínfárongrómínankórv-oi.
いる-<(重いものが)>一荷<主格>重い一上手倉-<与格>

「倉の北側に、重い荷が一つある。」

名詞の前の ín は数の「一つの」、名詞句の終わりの ín は不定の「ある」。二つ並べてよい。

ké an kórvoi, éso ílmo klér? éso.

読み:ケー アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール?エーソ。

kéankórv-oi,és-oílmoklér?és-o.
<〜か>上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たいいる-<(重いものが)>

「「倉の北側では、水は冷たいか」「冷たい」」

答えの形では、場面の枠も問いに出た語として省ける。

an nébros, na tóra orenvandár.

読み:アン ネーブロス、ナ トーラ オレンヴァンダール。

annébr-os,natór-aorenvandár.
上手霧-<属格><〜ない>来る-<(軽いものが)>縁商人<主格>

「霧の季節が来て以来、縁商人は来ない。」

an+属格「〜の上手から」は、時の名詞では「〜以来」。時の句は場面の枠に置く。

wéiro sáko némei, duói méirim ó endríñei.

読み:ウェーロ サーコ ネーメイ、ドゥオイ メーリン オー エンドリーニェイ。

wéir-osákoném-ei,duóiméir-imóendríñ-ei.
いる<〜し終えた>-<(重いものが)>塩<主格><私>-<与格>それから与える-<私が><3人称単数・重性・対格>子ども-<与格>

「私は塩を手に入れ、それから子どもにそれをやる。」

所有の文の文法上の主語は塩なので、-in ではつなげず duói を使う。

éso nébro an sílarail.

読み:エーソ ネーブロ アン シーラライル。

és-onébroansílar-ail.
いる-<(重いものが)>霧<主格>上手月-<〜らに>

「二つの月の上手(北側)に霧がある。」

前置詞の後ろの双数は、都でも複数の形で代える(双数の属格と与格は同じ形で、前置詞の意味が決まらないため)。

éso dún náuren.

読み:エーソ ドゥーン ナウレン。

és-odúnn-áur-en.
いる-<(重いものが)>丘<主格><〜ない>-昇る-<〜した・〜された>

「丘は高からぬ(低い)。」

na- は母音の前で n- になる。

na éso ílmo nagléin.

読み:ナ エーソ イルモ ナグレーン。

naés-oílmona-gléin.
<〜ない>いる-<(重いものが)>水<主格><〜ない>-清い

「水は清からぬものではない(悪くない水だ)。」

二重否定。目上の人の持ち物や行いを、直接ほめずに控えめに評価する言い方。

sénim gandér te dulíþo ílmo.

読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ イルモ。

sén-imgandértedul-íþ-oílmo.
見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

「私は、水が下ろす硬木を見る。」

関係節の要は前に出した語と同じ扱いで、既定では目的語の枠を埋める。残った ílmo が主語。

sénim gandér te dulíþo ó ílmo.

読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ オー イルモ。

sén-imgandértedul-íþ-oóílmo.
見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>水<対格>

「私は、水を下ろす硬木を見る。」

要が主格と対格が同じ形の語で、関係節の主語のときは、主語の枠に再述の ó を残す。

dulíþo ó gandér ílmo te séna senár.

読み:ドゥリーソ オー ガンデール イルモ テ セーナ セナール。

dul-íþ-oógandérílmotesén-asen-ár.
下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>硬木<対格>水<主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

「目付が見る水が、硬木を下ろす。」

都の言葉。関係節つきの主語を後ろへ回し、目的語が主格と対格が同じ形の語なので、空いた主語の枠に ó を残す。

gandér te sénim, dulíþo ílmo.

読み:ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ イルモ。

gandértesén-im,dul-íþ-oílmo.
硬木<対格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

「私が見た硬木を、水が下ろす。」

主題の前置き。読点つきで前に出した名詞句も、他動詞の文では既定で目的語の枠を埋める。

gandér te sénim, dulíþo ó ílmo.

読み:ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ オー イルモ。

gandértesén-im,dul-íþ-oóílmo.
硬木<主格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>水<対格>

「私が見た硬木が、水を下ろす。」

主題の前置きが主語のときは、主語の枠に再述の ó を残す。

ké gandér te sénim, dulíþo ílmo?

読み:ケー ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ イルモ?

kégandértesén-im,dul-íþ-oílmo?
<〜か>硬木<対格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

「私が見た硬木を、水が下ろすのか。」

ké は主題の前置きより前、文のいちばん前に置く。

na dulíþin vúuro fúnel gandér du dálor.

読み:ナ ドゥリーシン ヴーロ フーネル ガンデール ドゥ ダーロル。

nadul-íþ-invúur-ofúnelgandérdudálor.
<〜ない>下る-<〜させる>-<〜して・〜く>届く-<(重いものが)>綱<主格>硬木<対格>下手下の国<対格>

「綱は硬木を下の国まで下ろせない。」

否定の na は副動詞の前に置き、二つの動詞をまとめて打ち消す。綱の長さが届かない、という可能の否定。

lúin fléira aldár áuren es dúnos, snéiman éndrai.

読み:ルーイン フレーラ アルダール アウレン エス ドゥーノス、スネーマン エンドライ。

lúinfléir-aaldáráur-enesdún-os,snéim-anéndr-ai.
ときお出ましになる-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>から王の丘-<属格>身をかがめる-<彼らが>人-<〜たちが>

「高き座が王の丘からお出ましになると、人々は身をかがめる。」

都での王の行幸を言う文。単に dún と言っても、文脈から湖都の北の、王の居所がある丘を指す。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。lúin の時の節は主節の前に置く。

dúlan kelárai es dúnos.

読み:ドゥーラン ケラーライ エス ドゥーノス。

dúl-ankel-ár-aiesdún-os.
下る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>から丘-<属格>

「樵たちが丘から下りてくる。」

es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。主語の kelárai は軽性の複数(kél-「伐る」+-ár「〜する人」)なので、動詞は3人称複数の -an をとる。dún の属格は重性の -os になる。

sénim orén es dúnos.

読み:セーニン オレーン エス ドゥーノス。

sén-imorénesdún-os.
見る-<私が>縁<対格>から丘-<属格>

「丘から縁を見下ろす。」

主語は動詞の語尾 -im でわかるので言わない。orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。丘の上から南の縁の方を見る、という高原の縦の地理らしい文。

lúin tóro nébro, na þéla torár þelán.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーラ トラール セラーン。

lúintór-onébro,naþél-ator-árþel-án.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>名乗る-<(軽いものが)>来る-<〜する人>名前-<対格>

「霧が来ると、客は名を名乗らない。」

霧の中で名前を声に出すと下の国に聞かれる、という禁忌を述べた文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。直説法の否定には na を使う。

dúlo ílmo es fóndaros du dálor.

読み:ドゥーロ イルモ エス フォンダロス ドゥ ダーロル。

dúl-oílmoesfóndar-osdudálor.
下る-<(重いものが)>水<主格>から源-<属格>下手下の国<対格>

「水は源から下の国へと下っていく。」

水は泉で生まれ、段を下るごとに重くなって、最後は崖の下に沈む。この見方を言い表す、教えや詩でよく使われる言い回し。ílmo(水)は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格は、方向を問わない「〜から」。

lóima lourvirár þeláis an fóndaros.

読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アン フォンダロス。

lóim-alourvirárþel-áisanfóndar-os.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>上手源-<属格>

「系譜読みは、始祖から一瀬ずつ名を唱えていく。」

婚姻の取り決めや祖先祀りで、系譜読みが家系を唱える場面を述べる文。系譜を言うときは「an fóndaros(源から)」を前に置くのが改まった言い方。この an は、流れの上手(始祖)から下っていく向きを表す。

ké éses an fóndaros ráimaros? ésim.

読み:ケー エーセス アン フォンダロス ライマロス?エーシン。

kéés-esanfóndar-osráimar-os?és-im.
<〜か>いる-<あなたが>上手源-<属格>ライマル-<属格>いる-<私が>

「「お前はライマルの源の流れか?」「そうだ。」」

二人の発話。同じ段か目下の相手に、どの家系の者かを尋ねている。ké と2人称を使っているので、目上の人には使えない。高原語には「はい」にあたる語がないので、動詞を1人称に言い換えて ésim と答える。氏族の名 ráimar は重性で、属格 ráimaros の形で fóndar の後ろに置く。

fóndaro ráimaros, léunim þeláis aursárar.

読み:フォンダロ ライマロス、レウニン セライス アウルサーラル。

fóndar-oráimar-os,léun-imþel-áisaursár-ar.
源-<〜よ>ライマル-<属格>申す-<私が>名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>

「ライマルの源よ、祖先たちの名を申し上げます。」

系譜読みが系譜を唱えはじめるときの決まった呼びかけ。呼格は日常では使わず、古い詩と系譜の唱えにだけ残っている。重性の fóndar は呼格で fóndaro になる。léun- は「言う」の謙譲の補充形で、祖先に対して自分を低めている。

ésa sélvan dúlen dáumbar lóurul an fóndaros ráimaros.

読み:エーサ セルヴァン ドゥーレン ダウンバル ロールル アン フォンダロス ライマロス。

és-asélvandúl-endáumbarlóur-ulanfóndar-osráimar-os.
いる-<(軽いものが)>セルヴァン<主格>下る-<〜した・〜された>二十瀬-<〜たちを>上手源-<属格>ライマル-<属格>

「セルヴァンは、ライマルの源から二十瀬下った者である。」

ある人の世代を、第三者として述べる改まった文。序数を使わず、「分詞 dúlen+数詞+瀬の複数対格(道のりの対格)」で言う。分詞は主語 sélvan(軽性・単数・主格)に一致するので、語尾がつかない。瀬の数が多いのは誉れとされる。

ké éso fóndar só gléin? éso gléin.

読み:ケー エーソ フォンダル ソー グレーン?エーソ グレーン。

kéés-ofóndarsógléin?és-ogléin.
<〜か>いる-<(重いものが)>源<主格>この<重性>清いいる-<(重いものが)>清い

「「この泉は清いか?」「清い。」」

二人の発話。はい・いいえで答える問いは、文のいちばん前に ké を置いて作る。fóndar は重性なので、繋辞は éso になる。述語の形容詞 gléin は重性・単数・主格に一致するが、この形には語尾がつかない。高原語には「はい」にあたる語がないので、答えでは問いの動詞をそのまま繰り返す。

dúlimor es orénos du dálor.

読み:ドゥーリモル エス オレーノス ドゥ ダーロル。

dúl-imoresorén-osdudálor.
下る-<我々が>から縁-<属格>下手下の国<対格>

「我々は縁から下の国へ下りる。」

崖道の商人や運び人が、乾風期に市へ下りるときの言い方。出どころは「es+属格」、行き先は「du+対格」で言う。主語は動詞の語尾 -imor でわかるので、代名詞は言わない。

mé þraunésa póin es orénos.

読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。

méþraun-és-apóinesorén-os.
<禁止・願いの打ち消し>投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)>何か<対格>から崖の際-<属格>

「崖の際から何も投げ落とさぬこと。」

碑文や法の文体。当為法は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移る(þraunésa)。崖から物を投げ落とすのは、下の国を呼び寄せる行いとして禁じられている。

toríro nébro, na elþéla ilána faronáres.

読み:トリーロ ネーブロ、ナ エルセーラ イラーナ ファロナーレス。

tor-ír-onébro,naelþ-él-ailánafaron-ár-es.
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>燃える-<〜だろう>-<(軽いものが)>灯<主格>荷-<〜する人>-<属格>

「霧が上がってくれば、運び人の灯もともらなくなるだろう。」

崖道でよく聞かれる嘆き。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。帰結の節は推量法で、否定の na を動詞の直前に置く。ilána は「夜にともる明かり」の意味で、属格の faronáres「運び人の」が後ろからかかる。

áura ilána ráimaros an álmarei.

読み:アウラ イラーナ ライマロス アン アルマレイ。

áur-ailánaráimar-osanálmar-ei.
昇る-<(軽いものが)>祖先の星<主格>ライマル-<属格>上手白月-<与格>

「ライマルの星が、白月の上手に昇る。」

祖先の星は、単数の ilána の後ろに祖先の名を属格で添えて呼ぶ(名前のある一つの星なので、単数で指してよい)。星の位置は指さずに、「an+与格」で白月との位置関係として言う。系譜読みや星読みが、夜の時刻や祖先の祀りについて語るときの言い方。

tóro nébro an orén.

読み:トーロ ネーブロ アン オレーン。

tór-onébroanorén.
来る-<(重いものが)>霧<主格>上手縁<対格>

「霧が縁へ這い上がってくる。」

霧期の始まりを言う文。nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「an+対格」で「上手へ」。orén は重性子音語幹なので、対格は主格と同じ形になる。霧は下の国から崖を上ってくる「下の国の息」とされる。

dúlo ílmo es þéulos du orén.

読み:ドゥーロ イルモ エス セウロス ドゥ オレーン。

dúl-oílmoesþéul-osduorén.
下る-<(重いものが)>水<主格>から湧き水-<属格>下手縁<対格>

「水は湧き水から縁へと下っていく。」

水の流れを言う、ごくふつうの言い切りの文。ílmo「水」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格で出どころを、du+対格で行き先を表す。高原の人の考えでは、水は源から生まれて下へ流れていくものなので、この文は自然を述べた文であると同時に、世界観の決まり文句でもある。

ké sénes gandér tó? éso ó fóndel.

読み:ケー セーネス ガンデール トー?エーソ オー フォンデル。

késén-esgandértó?és-oófóndel.
<〜か>見る-<あなたが>硬木<対格>あの<重性>いる-<(重いものが)><3人称単数・重性>古い

「あの硬木が見えるか?あれは由緒ある古木だ。」

樵が森で若い者に話しかける言い方。生えている木はふつう軽性だが、硬木だけは生えていても重性で受けるので、指示詞は重性の tó、代名詞も重性の ó、繋辞も重性の éso になる。fóndel は、由緒があって尊い「古い」。

tóro sáko es dáloros.

読み:トーロ サーコ エス ダーロロス。

tór-osákoesdálor-os.
来る-<(重いものが)>塩<主格>から下の国-<属格>

「塩は下の国から来る。」

日常の言い切りの文。塩は干潟から借りた語で、重性に入るので、動詞は重性の -o をとる。塩は「下からの恵み」と呼ばれ、ありがたさと少しの後ろめたさをもって語られる。

na þílim virán dáloros.

読み:ナ シーリン ヴィラーン ダーロロス。

naþíl-imvir-ándálor-os.
<〜ない>分かる-<私が>言葉-<対格>下の国-<属格>

「下の国の言葉は分からん。」

都の人が干潟語について言う、くだけたひとこと。virán dáloros「下の国の言葉」は、「泥の言葉」ほどあからさまな蔑みではないが、距離を置いた言い方。属格は名詞の後ろに置く。

toríro nébro, mé dúl es orénos!

読み:トリーロ ネーブロ、メー ドゥール エス オレーノス!

tor-ír-onébro,médúlesorén-os!
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>下る<命令法><あなたが>から縁-<属格>

「霧が来たら、縁から下りるな!」

崖道の上り口で目下の者に言う、下向きの禁止。前半は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけの条件節で、霧 nébro は重性なので語尾は -o。後半は「mé+命令法の2人称単数(むき出しの語幹 dúl)」の形。霧期に崖道を下りるのは危ないうえ、霧は「下の国の息」として恐れられているので、よく聞く戒めである。

lúin tóro nébro, dúlan orenvandárai du dálor.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラン オレンヴァンダーライ ドゥ ダーロル。

lúintór-onébro,dúl-anorenvandár-aidudálor.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>南へ行く-<彼らが>縁商人-<〜たちが>下手下の国<対格>

「霧が来るころ、縁商人たちは下(干潟)へ帰っていく。」

dúl- は、北が「上」の国では、そのまま「南へ行く・干潟へ行く」の意味になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。縁商人は軽性の人なので、複数主格は -ai になる。霧が崖を上りはじめると縁の市が閉じることを述べた文。

dúla faronár es orénos. mé vír þelán éles!

読み:ドゥーラ ファロナール エス オレーノス。メー ヴィール セラーン エーレス!

dúl-afaronáresorén-os.mévírþel-ánél-es!
下る-<(軽いものが)>運び人<主格>から縁-<属格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

「運び人が縁から下りた(落ちて死んだ)。その名を口にするな。」

崖から落ちて死ぬことは、いちばん恐れられる死である。そのため brúum-「落ちる」とは言わず、dúl-「下る」で遠回しに言う。高原語には時制がないので、dúla は文脈によって「下りた」の意味になる。死後一年は死者の名を口にしない禁忌があるので、すぐ後に禁止の文が続く。

dulíþan kelárai gandér es orénos.

読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール エス オレーノス。

dul-íþ-ankel-ár-aigandéresorén-os.
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>杭材<対格>から縁-<属格>

「樵たちは縁から硬木の丸太を下ろす。」

乾風期の吊り下ろしを述べる文。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。動詞のすぐ後ろの kelárai が主語で、その次の gandér が目的語。ここでは数を言わずに、伐り出された材をひとまとまりとして言っている。帳簿で数を書くときは、かならず量の名詞 báron「本」を添える。

dúlo gromó du dálor, áura selvá.

読み:ドゥーロ グロモー ドゥ ダーロル、アウラ セルヴァー。

dúl-ogromódudálor,áur-aselvá.
下る-<(重いものが)>体<主格>下手地の底<対格>昇る-<(軽いものが)>息<主格>

「体は地の底へ沈み、息は昇る。」

弔いのときに森の巫や系譜読みが唱える句。重性の gromó「体」と軽性の selvá「息」が、動詞の語尾 -o/-a でも対になっている。dálor はここでは干潟ではなく、上・中・下の三層の「下」、重いものが沈んでいく地の底を指す。

toríro nébro, mé vír þelán! ésa þelá selvá, fíndo dálor.

読み:トリーロ ネーブロ、メー ヴィール セラーン!エーサ セラー セルヴァー、フィンド ダーロル。

tor-ír-onébro,mévírþel-án!és-aþeláselvá,fínd-odálor.
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>いる-<(軽いものが)>名前<主格>息<主格>聞く-<(重いものが)>下の国<主格>

「霧が来たら名を呼ぶな。名は息だ、下の国が聞きつける。」

霧期の禁忌を子どもに教える言い方。口に出した名前を selvá「息」としてとらえている。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。dálor は重性なので、動詞 fínd- は重性の -o をとる。

lúin brúuma éndra es orénos, dúlau gromó si selvá.

読み:ルーイン ブルーマ エンドラ エス オレーノス、ドゥーラウ グロモー シ セルヴァー。

lúinbrúum-aéndraesorén-os,dúl-augromósiselvá.
とき落ちる-<(軽いものが)>人<主格>から縁-<属格>下る-<双数>体<主格>と魂<主格>

「人が縁から落ちると、体も魂もともに下へ引かれていく。」

崖から落ちて死ぬことが恐れられる理由を述べる、教えの文。単数の名詞を si で二つ並べたので、動詞は双数の dúlau になり、性を区別しない。重い体と軽い魂がそろって下るのは、高原の考えではいちばん不吉なことである。

brúumo ílmo es lóuros du lóur.

読み:ブルーモ イルモ エス ローロス ドゥ ロール。

brúum-oílmoeslóur-osdulóur.
落ちる-<(重いものが)>水<主格>から瀬-<属格>下手瀬<対格>

「水は瀬から瀬へと落ちていく。」

川の流れを言い表す文。es+属格で「〜から」、du+対格で「下手の〜へ」を表す。lóur は重性なので、対格は主格と同じ形になる。川の水が段を下るごとに落ちていくという見方は、系譜を瀬で数える考え方のもとになっている。

lóima lourvirár lóurul némores an fóndaros.

読み:ロイマ ロウルヴィラール ロールル ネーモレス アン フォンダロス。

lóim-alourvirárlóur-ulnémor-esanfóndar-os.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>瀬-<〜たちを><我々>-<属格>上手源-<属格>

「系譜読みは、源からの我らの世代を唱える。」

婚姻や祖先祀りの場で、家の系譜読みが系譜を唱えるようすを言う文。an+属格は「上手から」の意味になり、an fóndaros で「源から」。世代を言うときは、このように源を起点にする。系譜読みは年長の女性で、軽性なので動詞は -a をとる。

dúlim dáumbar téir lóurul an fóndaros ráimaros.

読み:ドゥーリン ダウンバル テール ロールル アン フォンダロス ライマロス。

dúl-imdáumbartéirlóur-ulanfóndar-osráimar-os.
下る-<私が>二十三世代-<〜たちを>上手源-<属格>ライマル-<属格>

「私はライマルの源から二十三瀬下った者だ。」

自分の世代を言う、ふつうの話し方の文。改まった名乗りでは謙譲の動詞と分詞 dúlenan を使うが、ここでは直説法の動詞 dúlim を使う。lóurul は道のりの対格で、「何世代下ったか」を表す。身分の段 þrén と語が違うので、世代の話だとすぐにわかる。

dúlimor þrénul dúnos.

読み:ドゥーリモル スレーヌル ドゥーノス。

dúl-imorþrén-uldún-os.
下る-<我々が>段-<〜たちを>丘-<属格>

「我々は丘の石段を下りる。」

þrénul は、どこを下りるかを表す道のりの対格。dún「丘」の属格 dúnos を、名詞の後ろに置いている。坂や石段を下りるときは目下の者が先を歩き、上るときは目上の者が先を歩く。

glóira aurél es orénos.

読み:グロイラ アウレール エス オレーノス。

glóir-aaurélesorén-os.
お越しになる-<(軽いものが)>あの方<主格>から縁-<属格>

「あの方は縁からお越しになる。」

目上の人が来ることを、第三者に伝える文。glóir- は tór-「来る」の尊敬の補充形で、au- をつけた形は使わない。主語の aurél「あの方」は人なので、軽性の -a をとる。

éso lóur só gléin.

読み:エーソ ロール ソー グレーン。

és-olóursógléin.
いる-<(重いものが)>瀬<主格>この<重性>清い

「この瀬は清い。」

川辺や漁の場面のくだけた文。「AはBだ」の文も繋辞 és- で始める。lóur「瀬」は重性なので、繋辞は -o をとり、指示詞は só を使う。述語の形容詞 gléin は、重性・単数・主格の形で語尾がつかない。

éso þrén nadúlen aldárei áurenei.

読み:エーソ スレーン ナドゥーレン アルダーレイ アウレネイ。

és-oþrénna-dúl-enaldár-eiáur-en-ei.
いる-<(重いものが)>段<主格><〜ない>-下る-<〜した・〜された>座-<与格>昇る-<〜した・〜された>-<与格>

「下りぬ段は高き座のものである。」

宮廷の語りや詩で、王の身分を言う改まった文。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物 þrén(重性)に一致して -o をとる。分詞 nadúlen「下りぬ」は、重性・単数・主格の þrén に一致しているので語尾がつかない。áurenei は、軽性の与格 aldárei に一致した形。王の段は数を使わず、「下りぬ段」とだけ言う。

éso pélsa kélen némei.

読み:エーソ ペルサ ケーレン ネーメイ。

és-opélsakél-enném-ei.
いる-<(重いものが)>脂の木の材・荷札<主格>伐る-<〜した・〜された><私>-<与格>

「私には荷札(伐った脂の木の札)がある。」

荷札にする脂の木の薄板を言う文。所有は「ある+持ち主の与格」で言う。名詞は軽性の語形 pélsa のままだが、伐った材なので、繋辞は重性の -o をとり、分詞 kélen も重性で一致する。名詞の語尾とまわりの語の性が食い違うのが、この意味の特徴である。

brúumo pélsa es fáronos.

読み:ブルーモ ペルサ エス ファーロノス。

brúum-opélsaesfáron-os.
落ちる-<(重いものが)>脂の木の材・荷札<主格>から荷-<属格>

「荷札が荷から落ちた。」

荷札を主語にした文。名詞は軽性の語形 pélsa のままだが、伐った材を指すので、動詞は3人称単数・重性の -o で一致する。立ち木なら同じ動詞でも brúuma になる。

sénimor sílarau es orénos.

読み:セーニモル シーララウ エス オレーノス。

sén-imorsílar-auesorén-os.
見る-<我々が>月-<双数>から縁-<属格>

「縁から二つの月が見える。」

白月と赤月の二つを、双数でひと組として言う。月は星ではないので、双数にしても数えても禁忌にならない。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

lúin tóro nébro, na sénimor sílaran.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル シーララン。

lúintór-onébro,nasén-imorsílar-an.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>月-<対格>

「霧が来ると、月が見えなくなる。」

霧期の不安を言う文。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。主節は直説法なので、否定には na を使う。

tóro nébro es orénos.

読み:トーロ ネーブロ エス オレーノス。

tór-onébroesorén-os.
来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

「縁から霧が来る。」

霧期の始まりを告げる言い方。主語の nébro「霧」が重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es は属格と組んで、方向を問わない「〜から」を表す。

léunim ré tóro nébro es orénos, ausenár.

読み:レウニン レー トーロ ネーブロ エス オレーノス、アウセナール。

léun-imrétór-onébroesorén-os,au-sen-ár.
申す-<私が><〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「目付殿、縁から霧が来ると申し上げます。」

目下の者が目上の人に知らせを伝える改まった言い方。léun- は「言う」の謙譲の補充形で、du- をつけた規則形は使わない。ré の後ろの節は、元の文の法(ここでは直説法)を保つ。呼びかけは呼格を使わず、役職名に au- をつけて、読点で区切って文末に添える。

éso nébro, na sénimor álmaran.

読み:エーソ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン。

és-onébro,nasén-imorálmar-an.
いる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>白月-<対格>

「霧が出ていて、我々には白月が見えない。」

霧期の暮らしを語るときの言い方。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。霧が出ると、空と人とのあいだに下のものが割りこみ、祖先が下界を見守れなくなる。この文には、そうした不安がこもっている。

lúin tóro nébro, mé hál þelán!

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン!

lúintór-onébro,méhálþel-án!
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

「霧が来たら、名を呼ぶな。」

親が子に言い聞かせる禁止の言い方。霧の中で名前を大声で呼ぶと、下の国にその名を聞かれ、名の主が下へ引かれるとされる。nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。禁止は「mé+命令法」で言う。霧の中で人を呼ぶときは、名前の代わりに té「そこの方」などを使う。

lúin na tóro nébro, méirim grúndo.

読み:ルーイン ナ トーロ ネーブロ、メーリン グルンド。

lúinnatór-onébro,méir-imgrúndo.
とき<〜ない>来る-<(重いものが)>霧期<主格>与える-<私が>掛け<対格>

「霧期が来ないうちに、掛けを払います。」

縁の市での、精算の約束の言葉。霧の中で結んだ約束は重んじられないので、精算はかならず霧期の前に済ませる。同じことを市では、決まり文句の an nébroi「霧の前に(期限までに)」で言うことが多い。

lúin éso nébro, mé þondésa þondán.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。

lúinés-onébro,méþond-és-aþond-án.
ときいる-<(重いものが)>霧期<主格><禁止・願いの打ち消し>誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)>誓い-<対格>

「霧期のあいだは、誓いを立てぬこと。」

法典や碑文に見られる、当為法を使った禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、動詞は軽性の形をとる。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効とされる。その信仰を定めとして書いた文。

ké éso fáron tásei? na éso.

読み:ケー エーソ ファーロン ターセイ?ナ エーソ。

kéés-ofárontás-ei?naés-o.
<〜か>いる-<(重いものが)>荷<主格><あなた>-<与格><〜ない>いる-<(重いものが)>

「「お前、荷はあるか?」「いや、ない。」」

所有の問いと否定の答え。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持ち主ではなく、持たれている物 fáron(重性)に一致する。そのため答えでも人称は変わらず、na éiso となる。

ké éso tambór tásei? na éso.

読み:ケー エーソ タンボール ターセイ?ナ エーソ。

kéés-otambórtás-ei?naés-o.
<〜か>いる-<(重いものが)>雑穀<主格><あなた>-<与格><〜ない>いる-<(重いものが)>

「「お前、雑穀はあるか?」「ない。」」

二人の発話。高原語には「はい」「いいえ」にあたる語がないので、問いの動詞を繰り返して答え、否定なら na をつける。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物 tambór(重性)に一致する。そのため答えでも人称は変わらず、「ある」なら éso、「ない」なら na éso となる。

vírim ré torélo nébro dórel.

読み:ヴィーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。

vír-imrétor-él-onébrodórel.
言う-<私が><〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

「明日は霧が来るだろう、と私は言っておく。」

ré は「〜と」の節を導き、主節の後ろに置く。ré の後ろの節は推量法のまま保たれる。主語の霧 nébro が重性なので、動詞の語尾は -o。

lúin éso nébro, mé vírir þeláis.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ヴィーリル セライス。

lúinés-onébro,mévír-irþel-áis.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<皆で〜せよ>名前-<〜たちを>

「霧が出ているときは、名を呼んではならぬ。」

霧の中で名前を呼ぶと下の国に聞かれるという禁忌を、年長者が若者たちに言い聞かせる言い方。vír- が名前を目的語にとると「名を呼ぶ・口にする」の意味になる。禁止は mé+命令法で、相手が複数なので命令法の2複 -ir を使う。lúin の節は主節の前に置く。

éso gandér só gróm.

読み:エーソ ガンデール ソー グローン。

és-ogandérsógróm.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>重い

「この硬木は重い。」

主語の gandér が重性なので、繋辞は éso、指示詞は só になる。ほかのものについて「重い」と言うとけなす響きになりがちだが、硬木の重さは「下へ行く」という成就のしるしなので、樵や森の司は誇りをこめてこう言う。

lóima lourvirár þeláis an fóndaros ráimaros.

読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アン フォンダロス ライマロス。

lóim-alourvirárþel-áisanfóndar-osráimar-os.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み名前-<〜たちを>〜から源-<属格>ライマル-<属格>

「系譜読みが、ライマルの源から名を唱えていく。」

婚姻や祖先祀りで系譜を唱える場面の文。an+属格は「上手から」の出どころを表す。系譜は源から下へ流れるものなので、始祖からの起点は es ではなく an で言うのが改まった言い方になる。

mé þraunésa póin es orénos.

読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。

méþraun-és-apóinesorén-os.
<禁止・願いの打ち消し>投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)>何か<対格>〜から縁-<属格>

「縁から物を投げ落とさぬこと。」

碑文に刻まれる型の禁止の文。当為法の -és- が強勢をとるので、語根 þráun- の強勢は消える。崖の縁から物を投げ落とすことは、決められた降ろし場の作法の外では禁忌とされる。

méirim grúndo tásei an duliþímei fáronos.

読み:メーリン グルンド ターセイ アン ドゥリシーメイ ファーロノス。

méir-imgrúndotás-eiandul-iþ-ím-eifáron-os.
与える-<私が>掛け<対格><あなた>-<与格>〜の前に下る-<〜させる>-<〜の技・〜さ>-<与格>荷-<属格>

「掛けは、荷を下ろす前にお前に払う。」

縁の市での約束の言い方。時間は川の流れにたとえられ、早いほうが上手なので、an+与格が「〜の前に」の意味になる。duliþímei は dulíþ-「下ろす」に -ím「〜すること」がついた名詞の与格で、強勢は -ím に移る。同じ組み立ての決まり文句に an nébroi「霧の前に(=期限までに)」がある。

éso gandér gróm an kelárei.

読み:エーソ ガンデール グローン アン ケラーレイ。

és-ogandérgrómankel-ár-ei.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>重い〜よりまさって伐る-<〜する人>-<与格>

「硬木は樵よりも重い。」

比較は an+与格「〜の上手に」で言い、性質の程度がまさることを表す。重さのような下向きの性質を an で比べると、ふつうは皮肉に響く。ただし硬木の重さは「下へ行く」成就のしるしなので、樵や森の司はこの言い方を誇らしげに使う。主語 gandér が重性なので、繋辞は -o をとる。

éso gandér fláin du kelárei.

読み:エーソ ガンデール フライン ドゥ ケラーレイ。

és-ogandérfláindukel-ár-ei.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>軽い〜より劣って伐る-<〜する人>-<与格>

「硬木は軽さでは樵に及ばない(樵より重い)。」

du+与格で、性質の程度が劣ることを表す。下向きの性質を an で比べると皮肉に響くので、改まった話し方では反対の軽い性質を du で比べて言い換える。意味は gróm an kelárei と同じになる。

na gélimor an dún es fáronos.

読み:ナ ゲーリモル アン ドゥーン エス ファーロノス。

nagél-imorandúnesfáron-os.
<〜ない>行く-<我々が>上手へ・上手で丘<対格>〜のゆえに荷-<属格>

「荷があるので、我々は丘へは上がらない。」

es+属格で理由を表す。高原語では理由を「出どころ」と考えるので、es+属格は「〜から」とも「〜のゆえに」とも読め、どちらの意味かは文脈で決まる。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。

éso þéul gléin.

読み:エーソ セウル グレーン。

és-oþéulgléin.
いる-<(重いものが)>湧き水<主格>清い

「湧き水は清い。」

「AはBだ」の文で、繋辞 és- を文頭に置く。地を流れる水は重性なので、繋辞は -o をとり、形容詞は重性・主格の形(語尾なし)になる。

éso fáron só gróm.

読み:エーソ ファーロン ソー グローン。

és-ofáronsógróm.
いる-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>重い

「この荷は重い。」

運び人がよく口にする日常の文。荷は重性なので、繋辞は -o、指示詞は重性の só になる。指示詞が名詞句の終わりの目印になり、その後ろの gróm が述語だとわかる。

éso gandér só gróm an gandéruls.

読み:エーソ ガンデール ソー グローン アン ガンデールルス。

és-ogandérsógrómangandér-uls.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>重い上手硬木-<〜らに>

「この硬木は、硬木のなかでもいちばん重い。」

最上級は「an+同じ仲間の複数与格」で言う。下向きの性質を an で比べると皮肉に聞こえやすいが、硬木にとって重さは成就のしるしなので、樵や森の司はこの言い方を誇らしげに使う。

éso fáron némes fláin.

読み:エーソ ファーロン ネーメス フライン。

és-ofáronném-esfláin.
いる-<(重いものが)>荷<主格>私-<属格>軽い

「私の荷は軽い。」

「AはBだ」の文で、繋辞 és- を文頭に置いている。荷 fáron は重性なので、繋辞は -o をとる。形容詞 fláin は重性・主格の形で、語尾はつかない。

dúlo lóna kélen du orén.

読み:ドゥーロ ローナ ケーレン ドゥ オレーン。

dúl-olónakél-enduorén.
下る-<(重いものが)>柱材<主格>伐る-<〜した・〜された>下手縁<対格>

「伐った柱材が縁へ下りていく。」

名詞の lóna は軽性の語形のままだが、伐られた材なので、動詞は重性の -o で一致する。分詞 kélen も重性・主格の形で、語尾はつかない。du+対格で「下手へ」。

éso lóna só krán.

読み:エーソ ローナ ソー クラーン。

és-olónasókrán.
いる-<(重いものが)>柱材<主格>この<重性>硬い

「この柱材は硬い。」

材木を検めるときの言い方。名詞は軽性の語形 lóna のままだが、繋辞は重性の -o、指示詞は重性の só になり、形容詞も重性の形をとる。立ち木について言う þóra lóna áuren(軽性)と比べるとよい。

nóurim ré éso fáron só gróm.

読み:ノーリン レー エーソ ファーロン ソー グローン。

nóur-imréés-ofáronsógróm.
思う-<私が>といる-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>重い

「この荷は重いと思う。」

運び人が荷を担ぐ前に言うような日常の文。思った内容の節も ré で導く。節の主語 fáron は重性なので、繋辞は éso、指示詞は só になる。

léimim fáron séndoi ré luuménde ausenár ó.

読み:レーミン ファーロン センドイ レー ルーメンデ アウセナール オー。

léim-imfáronsénd-oiréluum-énd-eau-sen-áró.
置く-<私が>荷<対格>ここ-<与格>ようにご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人><3人称単数・重性>

「「目付殿がご覧になれるよう、荷をここに置きます。」」

縁の市で荷を検めてもらうときの言い方。ré と願望法を組み合わせると目的を表す。ここでの願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしい」という意味を表す。ó は荷を受ける重性の代名詞で、主格と対格が同じ形。

lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。

lúintór-onébro,méhálþel-ánéndr-ar.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>人-<〜らの>

「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」

子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。

na éso tambór némorei.

読み:ナ エーソ タンボール ネーモレイ。

naés-otambórnémor-ei.
<〜ない>いる-<(重いものが)>雑穀<主格>我々-<与格>

「我々には雑穀がない。」

所有の言い方。「持つ」という動詞はなく、持ち主を与格 némorei で表す。動詞は持ち主ではなく、持たれている物 tambór(重性)に一致するので、3人称単数・重性の éso になる。凶作の年や倉が空になったときに、村でふつうに聞かれる言い方。

ké tórau dáun es orénos?

読み:ケー トーラウ ダウン エス オレーノス?

kétór-audáunesorén-os?
<〜か>来る-<双数>二人から縁-<属格>

「お前たち二人は、縁から来たのか。」

双数の動詞 tórau は人称を区別しないので、dáun を添えて「二人が」をはっきりさせている。dáun も人称を区別しないので、「われら二人」「お前たち二人」「あの二人」のどれにあたるかは場面で決まる。ké を使った問いなので、目下か同じ段の相手に向けた言い方になる。

éso dún tó lóuvan, éso dún só trúin.

読み:エーソ ドゥーン トー ローヴァン、エーソ ドゥーン ソー トルーイン。

és-odúntólóuvan,és-odúnsótrúin.
いる-<(重いものが)>丘<主格>あの<重性>遠いいる-<(重いものが)>丘<主格>この<重性>近い

「あの丘は遠く、この丘は近い。」

重性の指示詞 tó「あの」と só「この」を並べた対比の文。繋辞 és- は主語 dún(重性)に一致して éso になる。述語の形容詞は重性・単数・主格なので、語尾がつかない。道案内でよく使われる形の文。

dúlo fáron némores du orén.

読み:ドゥーロ ファーロン ネーモレス ドゥ オレーン。

dúl-ofáronnémor-esduorén.
下る-<(重いものが)>荷<主格>我々-<属格>下手縁<対格>

「我々の荷は縁へ下りていく。」

属格 némores「我々の」は名詞 fáron の後ろに置く。荷 fáron は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。崖道の商人どうしが、荷の段取りを確かめるときの言い方。némor は聞き手を含む場合も含まない場合も同じ形で、どちらなのかは文脈で決まる。

ké tóres es orénos? tórim.

読み:ケー トーレス エス オレーノス?トーリン。

kétór-esesorén-os?tór-im.
<〜か>来る-<あなたが>から縁-<属格>来る-<私が>

「「縁から来たのか?」「来た。」」

二人の発話。ké は文のいちばん前に置いて、はい・いいえで答える問いを作る。時制がないので、過去のことでも同じ形で言う。「はい」にあたる語がないので、答えるときは問いの動詞を自分の人称(1人称単数)に変えて繰り返す。目上の人には ké を使わず、推量法で尋ねる。

pél éso gandér?

読み:ペール エーソ ガンデール?

pélés-ogandér?
どれいる-<(重いものが)>硬木<主格>

「どれが硬木だ?」

積まれた丸太の中から硬木を見分けさせる問い。繋辞の文で、主語は gandér、pél は述語にあたり、疑問詞なので文頭に出る。繋辞は主語の gandér に一致して重性の -o をとる。

lóima lourvirár ráun míres es fóndaros.

読み:ロイマ ロウルヴィラール ラウン ミーレス エス フォンダロス。

lóim-alourvirárráunmír-esesfóndar-os.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>流れ<対格>自分-<属格>から源-<属格>

「系譜読みは、源から自分の流れを唱える。」

祖先祀りや婚姻の場で、系譜を読み上げる様子を述べた文。属格の míres を名詞の後ろに置き、「主語自身の」という意味を表す。ráun「流れ(家系)」は重性なので、対格も主格と同じ形になる。éles と言うと、ほかの人の流れを唱えることになる。

ké dúlo fáron du séndo?

読み:ケー ドゥーロ ファーロン ドゥ センド?

kédúl-ofáronduséndo?
<〜か>下る-<(重いものが)>荷<主格>下手ここ<対格>

「荷はここへ下りてくるのか。」

店先で荷の行き先を確かめる、くだけた問い。séndo は重性o語幹の名詞として変化し、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「(下手の)ここへ」を表す。動詞は主語の fáron(重性)に一致して dúlo になる。答えは dúlo(来る)か na dúlo(来ない)。

tóra faronár an séndo es orénos.

読み:トーラ ファロナール アン センド エス オレーノス。

tór-afaronáranséndoesorén-os.
来る-<(軽いものが)>運び人<主格>上手ここ<対格>から縁-<属格>

「運び人が縁からここへ上ってくる。」

道筋を言う文。行き先は an+対格で「上手のここへ」と、高さを決めて言う。出どころは、方向を問わない es に属格を組み合わせて言う。時制がないので「上ってくる」とも「上ってきた」とも訳せる。

na lúuman aursárai séndo, lúin tóro nébro es orénos.

読み:ナ ルーマン アウルサーライ センド、ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス。

nalúum-anaursár-aiséndo,lúintór-onébroesorén-os.
<〜ない>ご覧になる-<彼らが>祖先-<〜たちが>この世<対格>とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

「縁から霧が上がってくるとき、祖先はこの世をご覧にならない。」

霧期を恐れる理由を語る言い方。ここでの séndo は話し手のいる場所ではなく、上(天)と下(干潟・地の底)のあいだにある、人の生きる「中の世界」を指す。祖先には「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。祖先は数えないので、複数はひとまとまりの「方々」の意味になる。

ké éso póin tásei?

読み:ケー エーソ ポイン ターセイ?

kéés-opóintás-ei?
<〜か>いる-<(重いものが)>何か<主格><あなた>-<与格>

「何か持っているか。」

所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持たれている物 póin(重性)に一致するので éso になる。2人称 tás を使っているので、下向きか、ごく親しい相手への問い。

lúin tóro nébro, hóinimor telúin.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイニモル テルーイン。

lúintór-onébro,hóin-imortelúin.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>帰る-<我々が>その時

「霧が来たら、その時に我々は帰る。」

市を閉じる時期を話す日常の会話。lúin の節で示した時を、主節の telúin がもう一度指している。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。telúin は、これから先の時にも過ぎた時にも使える。

tóran faronárai es orénos telúin.

読み:トーラン ファロナーライ エス オレーノス テルーイン。

tór-anfaron-ár-aiesorén-ostelúin.
来る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>その時

「その時、運び人たちが縁から上がってきた。」

昔語りや出来事の報告で、すでに話に出た時を指す言い方。動詞には時制がないので、過去のことだとわかるのは telúin と文脈による。faronár は fáron「荷」に -ár「〜する人」がついた語。

dúlau dáun an ín fóndaros.

読み:ドゥーラウ ダウン アン イーン フォンダロス。

dúl-audáunanínfóndar-os.
下る-<双数>二人上手同じ源-<属格>

「二人は同じ源から流れ下っている(同じ流れの者だ)。」

系譜読みが婚姻や相続の場で使う言い方。ín は「一つの」から転じて「同じ」の意味になる。an+属格で「上手から」。主語が双数の代名詞 dáun なので、動詞も双数になる。

tóran sóur faronárai es orénos.

読み:トーラン ソール ファロナーライ エス オレーノス。

tór-ansóurfaron-ár-aiesorén-os.
来る-<彼らが>六荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

「運び人が六人、縁から上がってくる。」

運び人のような目下の者や働き手は、数詞で数えてかまわない。目上の人は数えず、ひとまとまりの複数で言う。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる。

tóran pómbarin faronárai es orénos.

読み:トーラン ポンバリン ファロナーライ エス オレーノス。

tór-anpómbarinfaronár-aiesorén-os.
来る-<彼らが>いくつか運び人-<〜たちが>から縁-<属格>

「縁から運び人が何人か上がってくる。」

pómbarin は数詞と同じく名詞の前に置き、後ろの名詞は複数にする。運び人は働き手なので数えてよい。目上の人には、はっきりしない数であっても pómbarin は使えない。その場合は fléiran ausenárai「目付の方々がお出ましになる」のように、ひとまとまりの複数で言う。

éso már sélvanes séuril.

読み:エーソ マール セルヴァネス セウリル。

és-omársélvan-esséuril.
いる-<(重いものが)>手跡<主格>セルヴァン-<属格>美しい

「セルヴァンの手跡は美しい。」

手跡の意味でも már は重性のままで、繋辞は -o をとる。書き手は属格で後ろに示す。書きぶりや字の美しさが身分と教養の証になるので、人の手跡をほめるのは改まった賛辞になる。

ké éso senó téndoi?

読み:ケー エーソ セノー テンドイ?

kéés-osenóténd-oi?
<〜か>いる-<(重いものが)>見張り<主格>あそこ-<与格>

「「あそこに見張りはいるか。」」

はい・いいえで答える問いなので、文のいちばん前に ké を置く。存在の文で、動詞は重性の senó に一致して éso になる。答えは動詞を繰り返して、「はい」なら éso、「いいえ」なら na éso と言う。崖道の上り口で番の有無を確かめるときの、くだけた問い。

éso tambór némes snír.

読み:エーソ タンボール ネーメス スニール。

és-otambórném-essnír.
いる-<(重いものが)>雑穀<主格><私>-<属格>少ない

「私の雑穀は少ない。」

「AはBだ」の文で、繋辞 és- を先頭に置いている。主語 tambór némes「私の雑穀」は重性なので、繋辞は -o をとる。述語の snír は重性・単数・主格で、一致の語尾がつかない。税の取り立ての前後に、蓄えが乏しいことを言う言い方。

lúin glǘno véinor, tóran faronárai snírai séndo.

読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ファロナーライ スニーライ センド。

lúinglǘn-ovéinor,tór-anfaronár-aisnír-aiséndo.
とき凍る-<(重いものが)>湖<主格>来る-<彼らが>運び人-<〜たちが>少ない-<〜たちが>ここ

「湖が凍るころには、ここへ来る運び人は少なくなる。」

lúin の節は主節の前に置く。湖 véinor は地の上の水なので重性で、動詞は -o をとる。主節の主語 faronárai は軽性・複数・主格で、snírai はそれに一致する。運び人のような働き手は数えてよいので、snír で多い少ないを言ってもかまわない。凍りの頃の崖道を言う文。

méir déral tambóros némei.

読み:メール デーラル タンボーロス ネーメイ。

méirdéraltambór-osném-ei.
与える<命令法><あなたが>半分<対格>雑穀-<属格><私>-<与格>

「雑穀の半分を私にくれ。」

下向きの命令。déral は重性の子音語幹名詞なので、対格は主格と同じ形。何の半分かは属格(tambóros)で後ろに示す。語順は動詞–目的語–与格(受け手)の順。

dulíþan kelárai déral fáronos sórel.

読み:ドゥリーサン ケラーライ デーラル ファーロノス ソーレル。

dul-íþ-ankel-ár-aidéralfáron-ossórel.
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>半分<対格>荷-<属格>今日

「今日、樵たちは荷の半分を下ろす。」

何の半分かは属格(fáronos)で後ろに示す。dulíþ- は dúl-「下る」の使役で「下ろす」。直説法なので -íþ- が強勢をとる。sórel のような時の語は文末に置く。降ろし場で、その日の吊り下ろしの段取りを言う文。

ké éso már táses só?

読み:ケー エーソ マール ターセス ソー?

kéés-omártás-essó?
<〜か>いる-<(重いものが)>手跡<主格><あなた>-<属格>この<重性>

「「この手跡はお前のものか。」」

はい・いいえの問いで、ké を文のいちばん前に置く。már は重性なので、指示詞は重性の só、繋辞は -o。手紙や証文の筆跡が誰のものか確かめるときの、下向きの問い。目上の人には ké を使わず、推量法で尋ねる。

lúin tóro nébro, na séno senó dáu sílarau.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーノ セノー ダウ シーララウ。

lúintór-onébro,nasén-osenódáusílar-au.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<(重いものが)>目<主格>二月-<双数>

「霧が来れば、目には二つの月も見えない。」

霧期の不安を言う、言い習わしのような文。senó は sén-「見る」に重性のもの名詞の接辞 -ó がついた語で、重性なので動詞は -o をとる。月は星ではないので、dáu「二」で数えて双数にしてよい。

na sénim sáindaran sé, éso senó némes múr.

読み:ナ セーニン サインダラン セー、エーソ セノー ネーメス ムール。

nasén-imsáindar-ansé,és-osenóném-esmúr.
<〜ない>見る-<私が>証文-<対格>この<軽性>いる-<(重いものが)>目<主格><私>-<属格>濁った

「この証文は見えぬ。私の目はかすんでいる。」

年長の者が細かい字を読めないときの言い方。主節二つを接続詞なしで並べるので、あいだに区切りを入れる。senó は重性なので、繋辞は -o をとり、述語の múr「濁った」にも語尾がつかない。目がよく見えないことを、水と同じ「濁る」で言っている。

mé vír virán rúgalan, éso hóum!

読み:メー ヴィール ヴィラーン ルーガラン、エーソ ホーン!

mévírvir-ánrúgal-an,és-ohóum!
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>言葉-<対格>粗い-<軽性・対格>いる-<(重いものが)>炉<主格>

「粗い言葉を言うな。炉の前だぞ。」

家の中で、親が子をたしなめる言い方。炉の前で粗野な言葉を口にしてはいけない、という禁忌を表す。禁止は「mé+命令法」で言う。後半の éso hóum は「炉がある(のだ)」で、場所を示さない存在文。hóum は重性なので、繋辞は -o をとる。

dróuma ólmar ré éso nébro bróus sórel.

読み:ドローマ オルマル レー エーソ ネーブロ ブロース ソーレル。

dróum-aólmarréés-onébrobróussórel.
嘆く-<(軽いものが)>年長者<主格><〜と(節)>いる-<(重いものが)>霧<主格>多い今日

「今日は霧が多い、と年長者は嘆く。」

ré で始まる「〜と」の節を、主節の後ろに置いた文。霧 nébro は重性なので、繋辞は -o をとる。形容詞 bróus は重性・単数・主格なので、語尾がつかない。ここでは量が多いことを表す。

na ráumim sórel, éso tról némes gráis.

読み:ナ ラウミン ソーレル、エーソ トロール ネーメス グライス。

naráum-imsórel,és-otrólném-esgráis.
<〜ない>歩く-<私が>今日いる-<(重いものが)>足<主格><私>-<属格>悪い

「今日は歩けない。足が悪いんだ。」

日常会話の文。高原語には「〜できる」を表す専用の形がないので、直説法の否定で「歩かない・歩けない」の両方を表す。tról は重性の子音語幹名詞で、主格と対格が同じ形。

fléira ausenár du tról orénos.

読み:フレーラ アウセナール ドゥ トロール オレーノス。

fléir-aau-sen-árdutrólorén-os.
お出ましになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手麓<対格>縁-<属格>

「目付殿は縁の麓へお出ましになる。」

tról orénos「縁の麓」は、崖の下、縁の市の立つあたりを指す。du+対格で「下手へ」。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。

éso gromó némes gróm, nóirim.

読み:エーソ グロモー ネーメス グローン、ノイリン。

és-ogromóném-esgróm,nóir-im.
いる-<(重いものが)>体<主格><私>-<属格>重い眠る-<私が>

「体が重い。もう寝るよ。」

疲れたときのくだけた言い方。体は重性の名詞で、繋辞も重性の -o をとる。「体が重い」は、肉体を重いものと見る世界観とも重なる。時制がないので、nóirim は文脈によって「これから寝る」の意味になる。

méira houmár tambór faronárei, ré eséndo gromó éles krán.

読み:メーラ ホウマール タンボール ファロナーレイ、レー エセンド グロモー エーレス クラーン。

méir-ahoumártambórfaronár-ei,rées-énd-ogromóél-eskrán.
与える-<(軽いものが)>家の主<主格>雑穀<対格>運び人-<与格><〜と(節)>いる-<〜しますように>-<(重いものが)>体<主格><3人称単数・軽性>-<属格>硬い

「家の主は、体が丈夫であるようにと、運び人に雑穀を与える。」

「ré+願望法」で目的を表す文。ここでの願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしいこと」を表す。主語の gromó は重性なので、願望法の語尾は -o になる。

lúin na glénim, dúlo nóumo némes.

読み:ルーイン ナ グレーニン、ドゥーロ ノーモ ネーメス。

lúinnaglén-im,dúl-onóumoném-es.
とき<〜ない>答える-<私が>下る-<(重いものが)>体面<主格><私>-<属格>

「答えられなければ、私の面目が潰れる。」

nóumo dúlo「顔が下りる」は面目を失うという慣用句。敬意や名誉を高さで表す考え方から来ている。詩合わせや問答で返しができないときなどに使う。

dúlan faronárai du múndo orénos.

読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ムンド オレーノス。

dúl-anfaronár-aidumúndoorén-os.
下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手出口<対格>縁-<属格>

「運び人たちは縁の口へ下りていく。」

múndo orénos「縁の口」は、崖道が崖の麓に開く下の口を指す。縁の市はここに立つ。du+対格で「下手へ」。属格の orénos は名詞の後ろに置く。

mé leimésa fáron un múndo orénos.

読み:メー レイメーサ ファーロン ウン ムンド オレーノス。

méleim-és-afáronunmúndoorén-os.
<禁止・願いの打ち消し>置く-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>内に出口<対格>縁-<属格>

「縁の口の中へ荷を置かぬこと。」

市の決まりを刻んだ碑文の文体。道の口をふさがないための決まり。当為法は mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形をとる。強勢は当為法の -és- に移る。un+対格で「〜の中へ」。

éso fíndo némes klér.

読み:エーソ フィンド ネーメス クレール。

és-ofíndoném-esklér.
いる-<(重いものが)>耳<主格><私>-<属格>冷たい

「耳が冷たい。」

凍りの頃によく聞く、くだけた言い方。「AはBだ」の文も繋辞 és- を先頭に置く。fíndo は体の部分なので重性で、繋辞は重性の -o をとる。述語の形容詞 klér は重性・単数・主格なので語尾がない。

dúlimor du tról orénos.

読み:ドゥーリモル ドゥ トロール オレーノス。

dúl-imordutrólorén-os.
下る-<我々が>下手麓<対格>縁-<属格>

「我々は縁の麓へ下りる。」

崖道を下りるときの言い方。tról は崖や山の麓のほか、立っている木や柱など高いものの根もとにも使う。du+対格で「下手へ」。tról は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

élþo gromó, áura selvá.

読み:エルソ グロモー、アウラ セルヴァー。

élþ-ogromó,áur-aselvá.
燃える-<(重いものが)>亡骸<主格>昇る-<(軽いものが)>息<主格>

「亡骸は燃え、息は昇る。」

火葬を語る弔いの言い回し。重性の亡骸と軽性の息を並べ、動詞の語尾 -o と -a で、下へ残るものと上へ行くものを対比している。火葬は村の北側の高い場所で行う。

toríro nébro, na sénimor nóumo séulines.

読み:トリーロ ネーブロ、ナ セーニモル ノーモ セウリネス。

tor-ír-onébro,nasén-imornóumoséulin-es.
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>顔<対格>友-<属格>

「霧が上がってくれば、友の顔も見えない。」

霧期の不安を語る言い方。霧の中では名前を呼べないうえに、顔も見分けられない。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。霧 nébro は重性なので、仮定法の動詞も重性の -o をとる。

brúumo frúm es fréunos táses.

読み:ブルーモ フルーン エス フレウノス ターセス。

brúum-ofrúmesfréun-ostás-es.
落ちる-<(重いものが)>血<主格>から額-<属格><あなた>-<属格>

「お前の額から血が垂れているぞ。」

けがを知らせるくだけた文。主語の frúm「血」が重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格で「〜から」を表す。時制の語形がないので、「垂れた」とも「垂れている」とも読める。

maníres þérno, elþélo bélo táses.

読み:マニーレス セルノ、エルセーロ ベーロ ターセス。

man-ír-esþérno,elþ-él-obélotás-es.
食べる-<もし〜なら>-<あなたが>毒きのこ<対格>燃える-<〜だろう>-<(重いものが)>腹<主格><あなた>-<属格>

「毒きのこを食べたら、腹が焼けるぞ。」

条件の節には接続詞を使わず、仮定法 maníres だけで「もし〜なら」を表す。帰結の節は推量法で、主語の bélo が重性なので -o をとる。雨期にきのこを採るときの戒めの言い方。

toriþélo bélo gróm dálor.

読み:トリセーロ ベーロ グローン ダーロル。

tor-iþ-él-obélogrómdálor.
来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(重いものが)>欲<主格>重い下の国<対格>

「重い腹は下の国を呼び寄せる。」

欲深さを戒める諺。bélo gróm「重い腹」は食い意地や欲深さを表す決まった言い方で、重いものは下へ沈むという信仰にもとづく。gróm は重性・単数・主格に一致するので、語尾がつかない。

táula ráuvan gleinó es drálos faronáres.

読み:タウラ ラウヴァン グレイノー エス ドラーロス ファロナーレス。

tául-aráuvangleinóesdrál-osfaronár-es.
取る-<(軽いものが)>森の巫<主格>護符<対格>から首-<属格>運び人-<属格>

「森の巫が、運び人の首から護符を外す。」

まじないの場面の文。es+属格で「〜から」を表す。首 drál は体の部分なので重性で、属格は -os。gleinó は重性o語幹で、主格と対格が同じ形になる。

brúumo ílmo es drálos só.

読み:ブルーモ イルモ エス ドラーロス ソー。

brúum-oílmoesdrál-ossó.
落ちる-<(重いものが)>水<主格>から器の首-<属格>この<重性>

「この(甕の)口もとから水がこぼれる。」

drál は、甕や瓶の細くくびれた口もとも指す。重性の指示詞 só は格変化せず、名詞句の終わりに置く。主語の ílmo「水」は重性なので、動詞は -o をとる。

dulíþa faronár fáron es rúunos.

読み:ドゥリーサ ファロナール ファーロン エス ルーノス。

dul-íþ-afaronárfáronesrúun-os.
下る-<〜させる>-<(軽いものが)>運び人<主格>荷<対格>から背-<属格>

「運び人が背から荷を下ろす。」

崖道の運び人の仕事を述べた文。rúun は重性の子音語幹で、属格は rúunos。es+属格で「〜から」を表す。使役の dulíþ-「下ろす」は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。

éso bélo némes gróm.

読み:エーソ ベーロ ネーメス グローン。

és-obéloném-esgróm.
いる-<(重いものが)>腹<主格><私>-<属格>重い

「腹が重い(食べすぎた)。」

日常の言い方。bélo は体の部分なので重性o語幹で、繋辞も重性の -o(éso)をとる。述語の形容詞 gróm も、重性の主語に一致する。

sén bélo gróm tó, máno tambór némores!

読み:セーン ベーロ グローン トー、マーノ タンボール ネーモレス!

sénbélogrómtó,mán-otambórnémor-es!
見る<命令法><あなたが>欲<対格>重いあの<重性>食べる-<(重いものが)>雑穀<対格><我々>-<属格>

「あの欲張りを見ろ、俺たちの雑穀を食ってやがる!」

人を bélo gróm(重い欲)と呼ぶ陰口で、指示詞も動詞も重性の形(tó、máno)で受けている。人を重性の一致で受けるのは侮辱なので、強いあざけりの響きがある。主節を二つ並べているので、あいだに区切りを入れる。

léunim virán brésos némes.

読み:レウニン ヴィラーン ブレーソス ネーメス。

léun-imvir-ánbrés-osném-es.
申す-<私が>言葉-<対格>胸の内-<属格><私>-<属格>

「胸の内の言葉を申し上げます。」

改まった場で本心を打ち明けるときの前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。属格が二つ続き、virán brésos némes で「私の胸の内の言葉」になる。

dúlo frúm es fréunos.

読み:ドゥーロ フルーン エス フレウノス。

dúl-ofrúmesfréun-os.
下る-<(重いものが)>血<主格>から額-<属格>

「額から血が流れ落ちている。」

怪我をした者を見て言う文。frúm は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。液体が流れ落ちることも dúl-「下る」で言う。es+属格で「〜から」。

flúunim frúm es máros.

読み:フルーニン フルーン エス マーロス。

flúun-imfrúmesmár-os.
洗う-<私が>血<対格>から手-<属格>

「手から血を洗い流す。」

狩りで獲物をさばいたあとなどの日常の言い方。重性の frúm は対格も主格と同じ形。洗い落とす元の場所は es+属格で示す。

glǘno brés némes.

読み:グリューノ ブレース ネーメス。

glǘn-obrésném-es.
凍る-<(重いものが)>胸<主格><私>-<属格>

「胸まで冷えこむ。」

凍りの頃の嘆き。brés は体の部分なので重性で、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。持ち主は名詞の後ろに属格 némes で置く。glǘn- は湖が凍るときにも使う動詞で、体が冷えこむことも言う。

lúin tóro nébro, éso brés némes gróm.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ ブレース ネーメス グローン。

lúintór-onébro,és-obrésném-esgróm.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(重いものが)>胸<主格><私>-<属格>重い

「霧が来ると、胸が重くなる。」

霧期の不調を語る文。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro も胸 brés も重性なので、どちらの動詞も -o をとる。述語の形容詞 gróm は重性・主格で語尾がつかない。霧は病を運ぶ「下の国の息」とされる。

pón nóuro brés táses?

読み:ポーン ノーロ ブレース ターセス?

pónnóur-obréstás-es?
何<対格>思う-<(重いものが)>胸の内<主格><あなた>-<属格>

「お前は胸の内で何を思っている?(直訳:お前の胸は何を思っている)」

親しい者か目下の者への問い。2人称 tás を使うので、下向きかくだけた話し方になる。疑問詞を文頭に出す問いには ké をつけない。胸を主語にして思いのありかを言う言い方で、動詞は重性の brés に一致して -o をとる。息が宿る場所として、胸は思いのありかとされる。

glǘno ómbo némes.

読み:グリューノ オンボ ネーメス。

glǘn-oómboném-es.
凍る-<(重いものが)>指<主格><私>-<属格>

「指がかじかむ。」

凍りの頃によく聞く嘆き。ómbo は重性o語幹で、主格は語幹末の -o が見えた形。主語が重性の単数なので、動詞は -o をとる。glǘn- は湖が凍るときにも使う動詞で、指が冷えてこわばることも言う。

éso ómbo lisáres fláin.

読み:エーソ オンボ リサーレス フライン。

és-oómbolis-ár-esfláin.
いる-<(重いものが)>指<主格>書く-<〜する人>-<属格>軽い

「書記の指は軽やかだ。」

書法の上手な人をほめる言い方。指は体の部分なので重性で、繋辞も述語の形容詞も重性の形になる。重いはずの体の部分が「軽い」と言われるところに、ほめる響きがある。

ké glǘno klóno táses? glǘno.

読み:ケー グリューノ クローノ ターセス?グリューノ。

kéglǘn-oklónotás-es?glǘn-o.
<〜か>凍る-<(重いものが)>膝<主格><あなた>-<属格>凍る-<(重いものが)>

「「膝が冷えるか?」「冷える。」」

二人の発話。家の中で、年長の者を気づかう日常のやりとり。はい・いいえで答える問いは文頭の ké で作り、答えは動詞を繰り返す。動詞は重性の klóno に一致しているので、答えでも人称は変わらず glǘno のまま。

ombéra senár faronáran ré dulíþa fáron es orénos.

読み:オンベーラ セナール ファロナーラン レー ドゥリーサ ファーロン エス オレーノス。

ombér-asenárfaronár-anrédul-íþ-afáronesorén-os.
名指しする-<(軽いものが)>目付<主格>運び人-<対格><〜と(節)>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

「目付は、縁から荷を落としたと運び人を名指しで咎める。」

人を名指しして咎める意味。ré の後ろの節で、何を咎めたかを言う。縁の市の目付が揉め事を裁く場面の言い方。

sén lámo, ende. éso sáko gléin.

読み:セーン ラーモ、エンデ。エーソ サーコ グレーン。

sénlámo,ende.és-osákogléin.
見る<命令法><あなたが>掌<対格>どうぞいる-<(重いものが)>塩<主格>清い

「掌を見てくれ、頼む。塩は清いぞ。」

縁の市の取引言葉。むき出しの語幹 sén に ende を添える。lámo は重性o語幹の名詞なので、対格も主格と同じ形になる。sáko「塩」は干潟から借りた重性名詞なので、繋辞は重性の éso になり、gléin も重性・主格の形(語尾なし)をとる。掌に塩をひとつまみ載せて見せるのは、品を確かめさせるときのしぐさ。

pón kráilo lámo táses?

読み:ポーン クライロ ラーモ ターセス?

pónkráil-olámotás-es?
何<対格>手に持つ-<(重いものが)>掌<主格><あなた>-<属格>

「お前の掌は何を握っているんだ?」

疑問詞 pó(重性)は、対格でも主格と同じ形で、動詞の前に出る。主語の lámo「掌」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。2人称の代名詞の属格 táses を使っているので、下向きか、くだけた場での問い。

lóima lourvirár ráun némores an fóndaros.

読み:ロイマ ロウルヴィラール ラウン ネーモレス アン フォンダロス。

lóim-alourvirárráunném-or-esanfóndar-os.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>流れ<対格>1-<〜ら(古い母音交替)>-<属格>上手源-<属格>

「系譜読みが、我々の流れを源から唱える。」

祖先祀りや婚姻の場で、系譜読みが家系を一瀬ずつ唱えることを言う文。ráun は重性の子音語幹なので、主格と対格が同じ形になる。an+属格は「上手から」で、源から下へたどる向きを表す。

ké éses es ráunos ráimaros? ésim.

読み:ケー エーセス エス ラウノス ライマロス?エーシン。

kéés-esesráun-osráimar-os?és-im.
<〜か>いる-<あなたが>から流れ-<属格>ライマル-<属格>いる-<私が>

「「お前はライマルの流れの者か?」「そうだ。」」

二人の発話。「〜の流れの者である」を、és-+es+流れの属格で「〜の流れから出ている」と言う。答えには「はい」にあたる語を使わない。動詞を自分の人称(1人称単数 ésim)に変えて繰り返す。2人称と ké を使っているので、同じ段か下の者への問いになる。

dúlo ráun dúlen du dálor anlúin.

読み:ドゥーロ ラウン ドゥーレン ドゥ ダーロル アンルーイン。

dúl-oráundúl-endudáloranlúin.
下る-<(重いものが)>水の落ちた流れ<主格>下る-<〜した・〜された>下手下の国<対格>昔

「昔、水の落ちた流れが下の国へと下りていった。」

約千二百年前の冷害で崖を下りた人々(干潟でいう縁の民)を、年代記や語りで遠回しに言う書き方。ráun dúlen は決まった言い回しで、分詞は規則どおり語根に -en をつけた形。ráun は重性なので、動詞も重性の -o で一致する。人を直接言わずに重性の名詞で言うところに、恥と悲しみがこもる。

dróuma ólmar es ráunos dúlenos.

読み:ドローマ オルマル エス ラウノス ドゥーレノス。

dróum-aólmaresráun-osdúl-en-os.
嘆く-<(軽いものが)>年長者<主格>から水の落ちた流れ-<属格>下る-<〜した・〜された>-<重性・属格>

「「年長者は、水の落ちた流れのことを嘆く。」」

村や家の会話での言い方。崖を下りた人々を正面から「下りた者たち」とは言わず、この婉曲表現を目的語にしている。重性の名詞と分詞は、対格でも語尾がつかない。

lóima lourvirár þeláis aursárar an fóndaros.

読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル アン フォンダロス。

lóim-alourvirárþel-áisaursár-aranfóndar-os.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>上手源-<属格>

「系譜読みは、源から祖先たちの名を唱えていく。」

婚姻の取り決めや祖先祀りで、系譜を読み上げる場面を言う文。lourvirár は lóur「瀬」+vír-「言う」+-ár「〜する人」からできた語で、軽性の子音語幹。an+属格で「上手から」。系譜は源から一瀬ずつ下へ向かって唱えるので、起点を an fóndaros で示す。

tóra dórin té es orénos.

読み:トーラ ドーリン テー エス オレーノス。

tór-adórintéesorén-os.
来る-<(軽いものが)>男<主格>あの<軽性>から縁-<属格>

「あの男が縁のほうから来る。」

dórin は軽性の子音語幹なので、指示詞は軽性の té になる。目下か同じ段の相手について言う、ふつうの言い方である。目上の人をこの語で指すと無礼になり、役職名に au- をつけて言う。

áura aurá an gráun orénos.

読み:アウラ アウラー アン グラウン オレーノス。

áur-aauráangráunorén-os.
昇る-<(軽いものが)>縁鷲<主格>上手上端<対格>縁-<属格>

「縁鷲が崖のてっぺんへ昇っていく。」

gráun はここでは、崖のいちばん上の端を指す。「an+対格」で「上手へ」の意味になる。áura「昇る」と aurá「縁鷲」は、強勢の位置だけで区別される。重性の gráun は、対格でも語尾がつかない。

toréndes an gráun dúnos, séirim tásan.

読み:トレンデス アン グラウン ドゥーノス、セーリン ターサン。

tor-énd-esangráundún-os,séir-imtás-an.
来る-<〜しますように>-<あなたが>上手上端<対格>丘-<属格>待つ-<私が><あなた>-<対格>

「丘のてっぺんまで来てくれないか。待っているから。」

同じ段の者どうしの約束の言い方。同じ段の相手なので、命令法ではなく願望法の2人称を使う。gráun に丘 dún の属格を添えて、「丘のてっぺん」と言う。坂の多い都では、待ち合わせの場所によく使われる言い方である。

áura éndra, dúlo gandér.

読み:アウラ エンドラ、ドゥーロ ガンデール。

áur-aéndra,dúl-ogandér.
昇る-<(軽いものが)>人<主格>下る-<(重いものが)>硬木<主格>

「人は昇り、硬木は下る。」

教えの書にある、人と物の違いを説く一句。人は軽性なので、動詞は -a をとる。硬木は重性なので、動詞は -o をとる。二つの文の動詞の語尾の違いに、「軽いものは上へ、重いものは下へ」という世界観が表れている。

víra éndra ré tóro nébro es dáloros.

読み:ヴィーラ エンドラ レー トーロ ネーブロ エス ダーロロス。

vír-aéndrarétór-onébroesdálor-os.
言う-<(軽いものが)>世間の人<主格><〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>から下の国-<属格>

「世の人は、霧は下の国から来ると言う。」

言い伝えを紹介するときの決まった言い方。éndra を、特定の誰かではない主語として使うと、「世の人」「人は」という意味になる。ré の後ろの節では、主語の霧 nébro が重性なので、動詞は -o をとる。

selvána aurólmar ré torélo nébro.

読み:セルヴァーナ アウロルマル レー トレーロ ネーブロ。

selván-aaur-ólmarrétor-él-onébro.
おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-長老<〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>

「長老の方は、霧が来るだろうとおっしゃる。」

敬われる長老の言葉を人に伝える言い方。尊敬の接頭辞 au- は母音の前で aur- になる(au-+ólmar → aurólmar)。selván- は「言う」の尊敬の補充形。ré の後ろの節は元の法を保ち、ここでは推量法。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。

na éso þrén naþrenárei.

読み:ナ エーソ スレーン ナスレナーレイ。

naés-oþrénnaþrenár-ei.
<〜ない>いる-<(重いものが)>段<主格>段の外の者-<与格>

「段の外の者には段がない。」

宮廷の礼法家がよく口にする言い方。「持つ」の動詞がないので、所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持ち主ではなく、持たれている物 þrén(重性)に一致する。段の外の者をどう迎えるかが、いつも議論になることを踏まえた言い回し。

meirésan houmárai meiró tambóros brándalei.

読み:メイレーサン ホウマーライ メイロー タンボーロス ブランダレイ。

meir-és-anhoumár-aimeirótambór-osbrándal-ei.
与える-<〜すべし>-<彼らが>世帯主-<〜たちが>税<対格>雑穀-<属格>司-<与格>

「世帯主は、雑穀の税を司に納めるべし。」

法典の条文の文体。当為法 -és- で「〜すべし」を表す。強勢が接尾辞に移るので、語根 méir- の ´ は消える。受け手の司は与格 -ei で表す。

rainíþa ólmar þeláis gandéros kelárail.

読み:ライニーサ オルマル セライス ガンデーロス ケラーライル。

rain-íþ-aólmarþel-áisgandér-oskel-ár-ail.
知る-<〜させる>-<(軽いものが)>長老<主格>名前-<〜たちを>硬木-<属格>伐る-<〜する人>-<〜らに>

「長老は樵たちに硬木の呼び名を教える。」

村の暮らしを述べる文。硬木は、心材の色、沈み方、樹齢、伐ったあとの状態で何通りにも呼び分けられ、その呼び名は村の長老が受け継いで伝える。rainíþ-「教える」は ráin-「知る」に使役の -íþ- がついた形で、教わる人を与格、教える内容を対格でとる。

tóro dalorár tó es orénos.

読み:トーロ ダロラール トー エス オレーノス。

tór-odalorártóesorén-os.
来る-<(重いものが)>泥の者<主格>あの<重性>から縁-<属格>

「あの泥の者が縁から上がってくるぞ。」

陰口やからかいの言い方。dalorár そのものは軽性の語形のままだが、動詞を重性の -o(tóro)で、指示詞を重性の tó で受けている。人を重性で一致させることで、相手を石や泥のような「重いもの」として見下す。軽性で受ける tóra dalorár té なら、ただの「あの下の国の者が来る」になる。

éso dalorár só gróm.

読み:エーソ ダロラール ソー グローン。

és-odalorársógróm.
いる-<(重いものが)>泥の者<主格>この<重性>重い

「この泥の者は重い(粗野な奴だ)。」

あからさまな侮辱。繋辞 éso と指示詞 só が重性の一致になっていて、述語の gróm「重い」も重性・単数・主格の形(語尾なし)で受けている。人について「重い」と言うと、粗野で上へ昇れない者という意味になる。改まった場では口にしない。

tóran téir faronárai es orénos.

読み:トーラン テール ファロナーライ エス オレーノス。

tór-antéirfaronár-aiesorén-os.
来る-<彼らが>三運び人-<〜たちが>から縁-<属格>

「縁から運び人が三人上がってくる。」

運び人のような働き手は、数詞で人数を数えてよい。目上の人を数えるのは失礼なので、このような言い方はしない。三以上の数詞の後ろでは名詞が複数になる。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

tóro fáron du dáu rúsilaun.

読み:トーロ ファーロン ドゥ ダウ ルーシラウン。

tór-ofárondudáurúsil-aun.
来る-<(重いものが)>荷<主格>下手二赤月の巡り-<双数の〜の・〜に>

「「荷は赤月ふた巡りのあとに上がってくる。」」

崖道の商人や運び人が使う日数の言い方。干潟との取引のために、赤月の一巡り(約七日半)を単位にして日を数える。崖道の言葉では双数が衰えているので、dáu の後ろでも双数ではなく複数与格 -ail を使っている。都の言葉なら du dáu rúsilaun になる。くだけた発音では tóro は tór になる。

glǘno véinor sórel.

読み:グリューノ ヴェーノル ソーレル。

glǘn-ovéinorsórel.
凍る-<(重いものが)>湖<主格>今日

「今日、湖が凍った。」

凍りの頃の日常会話。年代記の「湖が凍った日」の記事も、同じ型の短い直説法の文で書く。高原語には時制がないので、直説法の glǘno は「凍る」とも「凍った」とも訳せる。過去のことだとわかるのは、時を表す語 sórel のおかげである。湖 véinor は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

glünélo ílmo véinoros.

読み:グリュネーロ イルモ ヴェーノロス。

glün-él-oílmovéinor-os.
凍る-<〜だろう>-<(重いものが)>水<主格>湖-<属格>

「湖の水は凍るだろう。」

天気の見通しを言う言い方。時制がないので、これから起こることは推量法で言う。強勢は推量法の -él- に移る。名詞句は「名詞–属格」の順に並ぶ。

éso glünó véinoros krán.

読み:エーソ グリュノー ヴェーノロス クラーン。

és-oglünóvéinor-oskrán.
いる-<(重いものが)>氷<主格>湖-<属格>硬い

「湖の氷は硬い。」

「AはBだ」の文は、繋辞 és- を先頭に置き、「繋辞–主語–述語」の順に並べる。glünó は氷一般を指す重性o語幹の名詞で、強勢は語尾にある。主語が重性なので、繋辞は -o をとる。厚さで呼び分けるときは、glüníño・tráumo・múrno を使う。

táulimor glünó es véinoros.

読み:タウリモル グリュノー エス ヴェーノロス。

tául-imorglünóesvéinor-os.
取る-<我々が>氷<対格>から湖-<属格>

「我々は湖から氷を切り出す。」

凍りの頃に、湖の氷を切り出して蓄えることを言う。es + 属格で、方向を問わない「〜から」を表す。glünó は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

lúin éso nébro, ésa þondá glüníño.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、エーサ ソンダー グリュニーニョ。

lúinés-onébro,és-aþondáglüníño.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(軽いものが)>誓い<主格>危うい足場

「霧の出ているときの誓いなど、薄氷のようなものだ。」

諺めいた言い方。霧期に立てた誓いは祖先に届かず、無効とされる。そのことを、いつ割れるかわからない薄氷にたとえている。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主語 þondá は軽性なので、繋辞は -a をとる。述語の名詞 glüníño は主語の性に合わせない。

ké éso glünó véinoros tráumo?

読み:ケー エーソ グリュノー ヴェーノロス トラウモ?

kéés-oglünóvéinor-ostráumo?
<〜か>いる-<(重いものが)>氷<主格>湖-<属格>渡り氷

「湖の氷は、もう荷車が渡れるほどか。」

凍りの頃に、湖畔の村でよく交わされる問い。はい・いいえで答える問いは、文頭の ké で作る。tráumo は述語の名詞。答えは動詞を繰り返し、「はい」は éso、「いいえ」は na éso と言う。

ráuman faronárai tráumoi véinoros.

読み:ラウマン ファロナーライ トラウモイ ヴェーノロス。

ráum-anfaronár-aitráum-oivéinor-os.
歩く-<彼らが>運び人-<〜たちが>渡り氷-<与格>湖-<属格>

「「運び人たちが、湖の厚い氷の上を歩いて渡る。」」

湖が厚く凍ると、氷の上が道にも市にもなる。tráumo は道のりの対格。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。

éso glünó véinoros múrno, mé ráumir!

読み:エーソ グリュノー ヴェーノロス ムルノ、メー ラウミル!

és-oglünóvéinor-osmúrno,méráum-ir!
いる-<(重いものが)>氷<主格>湖-<属格>腐り氷<禁止・願いの打ち消し>歩く-<皆で〜せよ>

「湖の氷は腐っている、皆、乗るな!」

霧期に湖畔の村で交わされる警告。前半は繋辞の文で、múrno は述語の名詞。後半は複数の相手への禁止で、mé + 命令法・複数 -ir を使う。主節を接続詞なしで二つ並べるので、間に区切りを入れる。

lúin tóro nébro, éso glünó véinoros múrno.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ グリュノー ヴェーノロス ムルノ。

lúintór-onébro,és-oglünóvéinor-osmúrno.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(重いものが)>氷<主格>湖-<属格>腐り氷

「霧が来ると、湖の氷は腐り氷になる。」

季節の移り変わりを言う、教えさとすような文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、動詞 tór- は -o をとる。名詞句は「名詞–属格」の順に並ぶ(glünó véinoros「湖の氷」)。

éso þéul só gléin.

読み:エーソ セウル ソー グレーン。

és-oþéulsógléin.
いる-<(重いものが)>湧き水<主格>この<重性>清い

「この湧き水は清い。」

繋辞 éis- を先頭に置いた「AはBだ」の文。þéul は重性なので、繋辞は -o、指示詞は重性の só になる。述語の形容詞 gléin は、重性・主格の形(語尾なし)で一致している。泉の水が清いことは、日常でもよく話題にされる。

éso fóndar ráimaros þéul ráunos némes.

読み:エーソ フォンダル ライマロス セウル ラウノス ネーメス。

és-ofóndarráimar-osþéulráun-osném-es.
いる-<(重いものが)>源<主格>ライマル-<属格>清い始まり<主格>流れ-<属格><私>-<属格>

「ライマルの源こそ、我が流れの清き始まりである。」

系譜読みが家系を唱えるときの言い方。系譜を川の流れにたとえ、始祖を「まだ濁っていない湧き水」と言い表している。主語の fóndar が重性なので、繋辞は -o をとる。þéul はここでは比喩の意味で、名詞の述語になっている。

éso séimo véinoros þáil.

読み:エーソ セーモ ヴェーノロス サイル。

és-oséimovéinor-osþáil.
いる-<(重いものが)>静み水<主格>湖-<属格>澄んだ

「湖の静み水は澄んでいる。」

湖や淵の静かな水を言う描写の文。séimo は、走り水 rúndo や湧き水 þéul と区別して使う。重性なので、繋辞は -o をとり、形容詞 þáil は語尾なしの形で一致している。

dúlo rúndo du véinor.

読み:ドゥーロ ルンド ドゥ ヴェーノル。

dúl-orúndoduvéinor.
下る-<(重いものが)>走り水<主格>下手湖<対格>

「走り水が湖へ流れ下る。」

北の高みから下りてきた沢が、湖盆の湖に注ぐようすを言う。走り水 rúndo も湖 véinor も重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」を表す。véinor は重性の子音語幹なので、対格にも語尾がつかない。

fléira aldár áuren es véinoros.

読み:フレーラ アルダール アウレン エス ヴェーノロス。

fléir-aaldáráur-enesvéinor-os.
お出ましになる-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>から湖-<属格>

「高き座が湖からお出ましになる。」

王の動きを言う、改まった言い方。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。座 aldár は人を指すので軽性で、動詞は -a をとる。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。重性の véinor は、属格が -os になる。

nílim ílmo véinoros.

読み:ニーリン イルモ ヴェーノロス。

níl-imílmovéinor-os.
飲む-<私が>水<対格>湖-<属格>

「私は湖の水を飲む。」

日常の言い方。主語は動詞の語尾 -im でわかるので言わない。地の上の水がどこの水かは、属格で言う。空から降る水は、地の水 ílmo とは別の語 réina「雨」で言う。

táulimor þéul es fóndaros.

読み:タウリモル セウル エス フォンダロス。

tául-imorþéulesfóndar-os.
取る-<我々が>湧き水<対格>から源-<属格>

「我々は源から湧き水を汲む。」

村の日常の言い方。「水を汲む」は tául-「取る」で言う。þéul は重性の子音語幹で、対格にも語尾がつかない。湧き出る泉の水は、いちばん澄んだ水とされる。

lúin brúuma réina, éso rúndo múr.

読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーソ ルンド ムール。

lúinbrúum-aréina,és-orúndomúr.
とき落ちる-<(軽いものが)>雨<主格>いる-<(重いものが)>走り水<主格>濁った

「雨が降ると、走り水は濁る。」

lúin で始まる「〜とき」の節を、主節の前に置いた文。雨 réina は軽性で、地を走る水 rúndo は重性なので、二つの節で動詞の語尾が -a と -o に分かれる。雨期に谷の流れが増水して濁るようすを言う。

na dúlo séimo.

読み:ナ ドゥーロ セーモ。

nadúl-oséimo.
<〜ない>下る-<(重いものが)>静み水<主格>

「静み水は流れ下らない。」

湖の静かな水が、谷を走る水と違って流れ下らないことを言う。直説法の文なので、na で否定する。séimo は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

tóra fléura dréum es orénos.

読み:トーラ フレウラ ドレウン エス オレーノス。

tór-afléuradréumesorén-os.
来る-<(軽いものが)>雲<主格>黒いから縁-<属格>

「縁のほうから黒い雲がやって来る。」

雨期の初めに、雨が近いことを知らせる言い方。雲は上に属するものなので軽性で、動詞は -a をとる。形容詞 dréum は軽性・主格の形なので語尾がない。同じように下から来るものでも、霧 nébro は重性なので、動詞は tóro になる。

an élvares réina, es dáloros sáko.

読み:アン エルヴァレス レーナ、エス ダーロロス サーコ。

anélvar-esréina,esdálor-ossáko.
上手天-<属格>上からの恵み<主格>から下の国-<属格>塩<主格>

「上からは雨の恵み、下からは塩。」

動詞のない諺。天からの恵み(軽性の réina)と、下の国から来る塩(重性の sáko)を対にしている。塩をありがたがりながらも少し後ろめたく思う、という気持ちを表す。an+属格は「上手から」の意味になる。

lúin brúuma sírna, glǘno véinor.

読み:ルーイン ブルーマ シルナ、グリューノ ヴェーノル。

lúinbrúum-asírna,glǘn-ovéinor.
とき落ちる-<(軽いものが)>霜<主格>凍る-<(重いものが)>湖<主格>

「霜が降りるようになると、湖が凍る。」

湖畔の村で季節の移り変わりを言う決まった言い方。従属節の主語 sírna は軽性なので動詞は -a をとり、主節の主語 véinor(地の上の水)は重性なので動詞は -o をとる。性の対比が、一つの文の中に出ている。

tóro duléumo es orénos, esélo nébro dórel.

読み:トーロ ドゥレウモ エス オレーノス、エセーロ ネーブロ ドーレル。

tór-oduléumoesorén-os,es-él-onébrodórel.
来る-<(重いものが)>下の風<主格>から縁-<属格>いる-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

「縁から下の風が来ている。明日は霧が出るだろう。」

空模様を読む日常の文。duléumo は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。後半は存在の文を推量法にしたもので、確かでない明日のことは推量法で言う。霧 nébro も重性なので、esélo の語尾は -o になる。下の風は崖下から這い上がる湿った風で、霧と病を運ぶものとされる。

lúin tóro duléumo, mé gélir du orén.

読み:ルーイン トーロ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。

lúintór-oduléumo,mégél-irduorén.
とき来る-<(重いものが)>下の風<主格><禁止・願いの打ち消し>行く-<皆で〜せよ>下手縁<対格>

「下の風が吹いてきたら、皆、縁のほうへ行ってはならん。」

年長者が子どもたちに言い聞かせるような禁止の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節は「mé+命令法・2人称複数(-ir)」で、目下の者への下向きの話し方になる。du+対格で「下手へ」。下の風が来る方向へ行けば、湿った重い空気に引かれると考えられている。

fíndim duléumo gráis es dáloros.

読み:フィンディン ドゥレウモ グライス エス ダーロロス。

fínd-imduléumográisesdálor-os.
聞く-<私が>不穏な気配<対格>悪いから下の国-<属格>

「下の国のほうから、よからぬ気配が聞こえてくる。」

比喩の意味の用例で、病のはやりや悪い噂が崖下から伝わってくることを言う。duléumo は重性なので、主格と対格が同じ形になり、動詞のすぐ後ろの語順で目的語だとわかる。形容詞 gráis も重性・単数・対格に一致するので語尾はつかない。風の「気配」を聞きとるという言い方なので、fínd-「聞く」と組むことが多い。

léunim ré tóro duléumo es faronárar, ausenár.

読み:レウニン レー トーロ ドゥレウモ エス ファロナーラル、アウセナール。

léun-imrétór-oduléumoesfaron-ár-ar,au-sen-ár.
申す-<私が><〜と(節)>来る-<(重いものが)>不穏な気配<主格>から荷-<〜する人>-<〜らの><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「目付殿、運び人たちのあいだから不穏な気配が立ちのぼっていると申し上げます。」

役人に報告する改まった文。léun- は「言う」の謙譲の補充形。「〜と」の節は ré で導き、主節の後ろに置く。呼びかけは呼格を使わず、役職名を文の終わりに読点で区切って添える。ここでの duléumo は風そのものではなく、身分の低い者たちのあいだに広がる不満や噂を指す。下から上がってくる悪いものとして言い表す比喩である。

es pós tóra léuma? es orénos tóra.

読み:エス ポース トーラ レウマ?エス オレーノス トーラ。

espóstór-aléuma?esorén-ostór-a.
から何<属格>来る-<(軽いものが)>風<主格>から縁-<属格>来る-<(軽いものが)>

「「風はどこから来ている?」「縁のほうから来ている。」」

二人の発話(問いと答え)。疑問詞を含む前置詞句 es pós を動詞の前に出している。es pós は「どこから」と「なぜ」の両方を表すが、ここでは風の出どころを尋ねている。答えに「はい・いいえ」は使わず、動詞 tóra を繰り返す。縁から来る風は崖下からの風なので、答えを聞いた人は湿った下の風(duléumo)を思い浮かべる。

dúla anléuma es þráinos, ésa élvar þáil.

読み:ドゥーラ アンレウマ エス スライノス、エーサ エルヴァル サイル。

dúl-aanléumaesþráin-os,és-aélvarþáil.
下る-<(軽いものが)>上の風<主格>から峰-<属格>いる-<(軽いものが)>天<主格>澄んだ

「上の風が峰から下りてきて、空が澄みわたっている。」

乾風期の初めのころの空模様を言う文。接続詞を使わずに主節を二つ並べ、あいだを区切りの印(読点)で区切っている。anléuma は北の高みから下りてくる風なので、動詞は「昇る」ではなく dúl-「下る」を使う。þráin「峰」は石の峰なので重性で、属格は -os になる。anléuma は清く良い風とされ、この風が吹くと星読みの季節が来る。

áura aurléuma es orénos, auríþa nébro an élvaran.

読み:アウラ アウルレウマ エス オレーノス、アウリーサ ネーブロ アン エルヴァラン。

áur-aaurléumaesorén-os,aur-íþ-anébroanélvar-an.
昇る-<(軽いものが)>昇る風<主格>から縁-<属格>昇る-<〜させる>-<(軽いものが)>霧<対格>上手天-<対格>

「昇る風は縁から昇り、霧を天へと持ち上げる。」

雨期の天気のしくみを説明する、書物風の文。an+対格で「上手へ」、つまり天のほうへ向かうことを表す。霧は昇る風に天まで引き上げられると、上に属する清い雲に変わると考えられている。地を這う霧(重性)が自分から雲になるわけではなく、昇る風に引き上げられて初めて雲になる、という見方である。

éso kreinándo aursárar þráinuls.

読み:エーソ クレイナンド アウルサーラル スライヌルス。

és-okreinándoaursár-arþráin-uls.
いる-<(重いものが)>納骨所<主格>祖先-<〜らの>峰-<〜らに>

「祖先たちの納骨所は北の高みにある。」

複数形 þráinul(ここでは与格 þráinuls)は、峰々の連なる北の山地全体を地名のように指す。納骨所 kreinándo は重性の o 語幹なので、動詞は -o で一致する。骨を谷底や崖下に埋めず、天に近い高みに納めるという葬送の慣習を述べた文。

éso þúumo séndoi, na sénim tásan.

読み:エーソ スーモ センドイ、ナ セーニン ターサン。

és-oþúumosénd-oi,nasén-imtás-an.
いる-<(重いものが)>濃霧<主格>ここ-<与格><〜ない>見る-<私が><あなた>-<対格>

「「ここは濃霧だ。お前が見えない。」」

霧期に、すぐそばの相手に話しかける日常の言い方。þúumo は重性なので、存在の動詞は éso になる。読点で区切って主節を二つ並べている。後半は直説法なので na で否定する。2人称の tás を使っているので、同輩か目下の相手への話し方になる。

éso þráin tó áuren.

読み:エーソ スライン トー アウレン。

és-oþráintóáur-en.
いる-<(重いものが)>峰<主格>あの<重性>昇る-<〜した・〜された>

「あの峰は高い。」

一年じゅう雪の消えない峰を見上げて言う日常の文。「AはBだ」の文も繋辞 és- を先頭に置く。þráin は重性なので、繋辞は -o、指示詞は重性の tó になる。述語の分詞 áuren は重性・単数・主格なので一致の語尾がつかない。

toríro þúumo, mé hál þelán!

読み:トリーロ スーモ、メー ハール セラーン!

tor-ír-oþúumo,méhálþel-án!
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>濃霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

「濃霧が来たら、名を呼ぶな。」

霧の中で名前を大声で呼ぶと下の国に聞かれる、という禁忌を戒める言い方。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。þúumo は重性なので -o をとる。禁止は mé+命令法。þúumo は、ふつうの霧 nébro より濃く、隣の人も見えない霧を言う。

hél órelei, éso nébro klér.

読み:ヘール オーレレイ、エーソ ネーブロ クレール。

hélórel-ei,és-onébroklér.
座る<命令法><あなたが>日の光-<与格>いる-<(重いものが)>霧<主格>冷たい

「日なたに座れ。霧が冷たい。」

家族や目下の者への、くだけた気づかいの言葉。órel の与格 órelei は「日の当たる所で」、つまり日なたの意味になる。hél- の命令法2人称単数は語幹そのままの形。後半の主語 nébro は重性なので、繋辞は éso になり、述語の形容詞 klér は一致の語尾をとらない。

dúlo krámbo es orénos, na brúumo.

読み:ドゥーロ クランボ エス オレーノス、ナ ブルーモ。

dúl-okrámboesorén-os,nabrúum-o.
下る-<(重いものが)>崖山羊<主格>から縁-<属格><〜ない>落ちる-<(重いものが)>

「崖山羊は縁から下りても、落ちはしない。」

崖道でよく言われる言い回し。主語 krámbo が重性なので、二つの動詞はどちらも3人称単数・重性の -o をとる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ崖山羊が主語だとわかる。

ésa méula némei, éso nímbo némei.

読み:エーサ メウラ ネーメイ、エーソ ニンボ ネーメイ。

és-améulaném-ei,és-onímboném-ei.
いる-<(軽いものが)>毛山羊<主格><私>-<与格>いる-<(重いものが)>乳<主格><私>-<与格>

「私には毛山羊がいる。だから乳もある。」

所有を「ある+持ち主の与格」で言う文を、接続詞なしで二つ並べている。動詞は持ち主ではなく、持たれている物に一致する。軽性の méula を受けると ésa、重性の nímbo を受けると éso になる。

lúin glǘno véinor, tóran dráunai du véinor.

読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ドラウナイ ドゥ ヴェーノル。

lúinglǘn-ovéinor,tór-andráun-aiduvéinor.
とき凍る-<(重いものが)>湖<主格>来る-<彼らが>狼-<〜たちが>下手湖<対格>

「湖が凍ると、狼たちが湖へ下りてくる。」

湖畔の村で凍りの頃について言う文。lúin の節は主節の前に置く。dráun は軽性の子音語幹で、複数主格は dráunai。du+対格で「下手へ」。véinor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

lúin tóro nébro, na þónda fíñel.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ ソンダ フィーニェル。

lúintór-onébro,naþónd-afíñel.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>誓う-<(軽いものが)>用心深い者<主格>

「霧が来たら、用心深い者は誓わない。」

霧の中で結んだ約束は重んじられない、という考えを踏まえた諺。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。主語の fíñel は特定の人ではなく、「用心深い者は誰でも」という一般の人を指す。

táulim frélo es véinoros sórel.

読み:タウリン フレーロ エス ヴェーノロス ソーレル。

tául-imfréloesvéinor-ossórel
取る-<私が>湖の魚<対格>から湖-<属格>今日

「今日、湖で魚を獲った。」

湖畔の村の日常の言い方。時制はないので、「獲った」か「獲る」かは文脈で決まる。es+属格で「湖から」。時を表す sórel は文末に置く。高原で frélo と言えば、多くは冷たい湖にすむ鱒に似た魚を指す。

áura aurá es orénos.

読み:アウラ アウラー エス オレーノス。

áur-aauráesorén-os
昇る-<(軽いものが)>縁鷲<主格>から縁-<属格>

「縁鷲が縁から昇っていく。」

VSO の基本の文。動詞 áura「昇る」と名詞 aurá「縁鷲」は綴りが同じで、強勢の位置だけが違う。aurá は「昇る」に -á「〜するもの」がついてできた語で、もとは「昇るもの」の意味。鳥は軽性なので、動詞も軽性の -a をとる。日本語話者は強勢を音の高さとして聞くので、この二つの語を聞き分けにくい。

éso árnel kélen gróm.

読み:エーソ アルネル ケーレン グローン。

és-oárnelkél-engróm.
いる-<(重いものが)>木<主格>伐る-<〜した・〜された>重い

「伐った木は重い。」

材木を主語にした繋辞文。根を断たれた木はもう昇らないものとされるので、繋辞は重性の éso をとる。分詞 kélen と形容詞 gróm も重性・単数・主格の形で、語尾はつかない。

dúlo búl árneles du dálor.

読み:ドゥーロ ブール アルネレス ドゥ ダーロル。

dúl-obúlárnel-esdudálor.
下る-<(重いものが)>根<主格>木-<属格>下手下の国<対格>

「木の根は下の国へ向かって下りていく。」

búl は重性の名詞なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。複数にすると母音交替で bǘl になる。根は下へ、梢は上へ伸びるという世界観を述べた文で、森の巫が木を語るときによく出る言い方。

élþo fóurel, éso aurándo gléin.

読み:エルソ フォーレル、エーソ アウランド グレーン。

élþ-ofóurel,és-oaurándogléin.
燃える-<(重いものが)>香の木<主格>いる-<(重いものが)>社<主格>清い

「香の木がくすぶり、社は清らかである。」

香として焚かれる香の木は伐られた材なので、動詞は重性の -o で一致する。社 aurándo も重性なので、繋辞は éso になり、形容詞 gléin は重性・主格の形(語尾なし)になる。香の煙は上へ昇るものとして、祀りに欠かせない。

brúumo bóula es árneles.

読み:ブルーモ ボーラ エス アルネレス。

brúum-obóulaesárnel-es.
落ちる-<(重いものが)>どんぐり<主格>から木-<属格>

「どんぐりが木から落ちる。」

村の日常の描写。名詞 bóula は軽性a語幹の形のままだが、木から離れた実はもう昇らないものなので、動詞は重性の -o で一致する。名詞の形と一致が「ちぐはぐ」になる例。es+属格で「〜から」を表す。

lúin na éso tambór némorei, éso bóula kúulen tambór némores.

読み:ルーイン ナ エーソ タンボール ネーモレイ、エーソ ボーラ クーレン タンボール ネーモレス。

lúinnaés-otambórnémor-ei,és-obóulakúul-entambórnémor-es.
とき<〜ない>いる-<(重いものが)>雑穀<主格><我々>-<与格>,いる-<(重いものが)>どんぐり<主格>煮る-<〜した・〜された>雑穀<主格><我々>-<属格>

「雑穀がないときには、煮たどんぐりが我々の雑穀になる。」

凶作の年の暮らしを語る文。どんぐりは飢えの年の食べ物でもある。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物の tambór(重性)に一致する。lúin の節の中では、na が動詞の直前に来る。落ちた実を煮たどんぐりは重性で扱うので、繋辞は éso、分詞 kúulen は重性・単数・主格の形(語尾なし)になる。

lúin tóro nébro, éso drúmo húmel.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ ドルーモ フーメル。

lúintór-onébro,és-odrúmohúmel.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>,いる-<(重いものが)>苔<主格>湿った

「霧が来ると、苔は湿る。」

季節による苔の様子を述べる、説明の文。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。苔は地面や石を覆うもので重性に属するので、繋辞も重性の éso になる。述語の形容詞 húmel も、重性・単数・主格の形(語尾なし)で一致する。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

nílo drúmo ílmo.

読み:ニーロ ドルーモ イルモ。

níl-odrúmoílmo.
吸いこむ-<(重いものが)>苔<主格>水<対格>

「苔が水を吸いこむ。」

「吸いこむ」の意味では、主語はふつう重性の名詞になり、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。ílmo「水」も重性なので、主格と対格が同じ形になる。VSO の語順で、動詞のすぐ後ろが主語、その次が目的語と決まる。家のすき間を苔で埋める理由を説明するときの言い方。

nílo lóna kélen ílmo.

読み:ニーロ ローナ ケーレン イルモ。

níl-olónakél-enílmo.
吸いこむ-<(重いものが)>柱の木<主格>伐る-<〜した・〜された>水<対格>

「伐った柱の木は水を吸いこむ。」

lóna は名詞としては軽性a語幹の形のままだが、伐られた材なので、分詞 kélen も動詞 nílo も重性で一致する。名詞の語尾は軽性で、まわりの語は重性という組み合わせになる。樵や大工が、材を乾かして寝かせる理由を言うときの文。

nóiro gandér kélen.

読み:ノイロ ガンデール ケーレン。

nóir-ogandérkél-en.
寝る-<(重いものが)>硬木<主格>伐る-<〜した・〜された>

「伐った硬木は寝かせてある。」

樵や森の司の検め役が、材の状態を言うときの文。硬木は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。分詞 kélen は重性・単数・主格なので、一致の語尾はつかない。

na éso þérno. éso sóumbo, kuuléimor ó sórel.

読み:ナ エーソ セルノ。エーソ ソーンボ、クーレーモル オー ソーレル。

naés-oþérno.és-osóumbo,kuul-é-imorósórel.
<〜ない>いる-<(重いものが)>毒きのこ<主格>いる-<(重いものが)>食べられるきのこ<主格>煮る-<〜だろう>-<我々が><3人称単数・重性>今日

「毒きのこではない。食べられるきのこだ。今日煮よう。」

採ってきたきのこを確かめたときの答え。þérno「毒きのこ」と対比されると、sóumbo は「食べられるきのこ」を指す。主語は言わず、繋辞 és- の重性の語尾 -o で「それは」を表す。推量法の -él- は1人称の語尾の前で l が落ちる(kuuléimor)。

na ráinim ré éso sóumbo. mé mán ó!

読み:ナ ライニン レー エーソ ソーンボ。メー マーン オー!

naráin-imréés-osóumbo.mémánó!
<〜ない>知る-<私が><〜と(節)>いる-<(重いものが)>食べられるきのこ<主格><禁止・願いの打ち消し>食べる<命令法><あなたが><3人称単数・重性>

「食べられるきのこかどうか、わからない。食べるな!」

年長者が目下の者に注意するときの言い方。ré で「〜と」の節を導く。禁止は「mé+命令法」で言い、mán- の2人称単数命令形はむき出しの語幹 mán。重性の代名詞 ó は主格と対格が同じ形。

ké éso sóumbo só þérno?

読み:ケー エーソ ソーンボ ソー セルノ?

kéés-osóumbosóþérno?
<〜か>いる-<(重いものが)>きのこ<主格>この<重性>毒きのこ<主格>

「このきのこは毒きのこか?」

はい・いいえで答える問いは、文のいちばん前に ké を置いて作る。sóumbo も þérno も重性o語幹なので、指示詞は重性の só、繋辞は重性の éso になる。答えは動詞を繰り返して、éso(そうだ)、na éso(違う)と言う。

éso lúdro þérno nourés.

読み:エーソ ルードロ セルノ ノウレース。

és-olúdroþérnonour-és.
いる-<(重いものが)>嘘<主格>陰で害する者<主格>心-<属格>

「嘘は、心を蝕む毒きのこである。」

教えの書や戒めの言葉に見られる比喩の言い方。見た目は無害でも内側から人を害する言葉を þérno にたとえる。lúdro「嘘」は重性なので、繋辞は éso。nourés は nourá「心」の属格。

gélo nébro; sénimor dáu sílarau.

読み:ゲーロ ネーブロ、セーニモル ダウ シーララウ。

gél-onébro;sén-imordáusílar-au.
去る-<(重いものが)>霧<主格>見る-<我々が>二月-<双数>

「霧が去った。二つの月が見える。」

霧期の途中で霧が晴れたときの、安堵の言葉。nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。月は星ではないので、数詞 dáu をつけて双数で言ってよい。

drénim es orénos, ré luuménde ausenár sáindaran sé.

読み:ドレーニン エス オレーノス、レー ルーメンデ アウセナール サインダラン セー。

drén-imesorén-os,réluum-énd-eau-sen-ársáindar-ansé.
伺う-<私が>から縁-<属格><〜と(節)>ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格>この<軽性>

「目付殿にこの証文をご覧いただきたく、縁から伺いました。」

役所に用事で出向き、来た目的を述べるときの決まった言い方。時制の形がないので、drénim は「伺う」とも「伺った」とも訳せる。目的を表す ré の節では願望法を使う。その中でも、目上の人は職名に au- をつけた3人称で主語にし、「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。

faronerélan faronárai sáko es orénos dórel.

読み:ファロネレーラン ファロナーライ サーコ エス オレーノス ドーレル。

faroner-él-anfaron-ár-aisákoesorén-osdórel.
運ぶ-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>塩<対格>から縁-<属格>明日

「明日、運び人たちが縁から塩を運んでくるだろう。」

これから先のことは推量法 -él- で言う。強勢は -él- に移り、-ér- の ´ は消える。3人称複数の語尾 -an は性を区別しない。塩 sáko は干潟から来る重性の名詞で、上げ荷の代表である。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

þóro kéumo te léimsa brándal.

読み:ソーロ ケウモ テ レーンサ ブランダル。

þór-okéumoteléims-abrándal.
立つ-<(重いものが)>碑<主格><関係節>据える<〜し終えた>-<(軽いものが)>司<主格>

「司が据えた碑が立っている。」

石の碑 kéumo は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。関係節は無強勢の te の後ろに動詞を続けて作り、抜けた目的語の位置は空けたままにする。関係節の主語 brándal は人なので、動詞は軽性の -a になる。

þóro lóna kélen só.

読み:ソーロ ローナ ケーレン ソー。

þór-olónakél-ensó.
立つ-<(重いものが)>柱の木<主格>伐る-<〜した・〜された>この<重性>

「この、伐った柱の木の柱が立っている。」

lóna「柱の木」は、名詞としては軽性a語幹の語形のままである。けれども伐られて材になっているので、動詞は重性の þóro、分詞 kélen も重性・主格の形(語尾なし)、指示詞も重性の só で一致する。生えている木なら þóra lóna sé となる。

lúin tóro nébro, ráuman faronárai du orén.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ラウマン ファロナーライ ドゥ オレーン。

lúintór-onébro,ráum-anfaron-ár-aiduorén.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「霧が来ると、運び人たちは縁のほうへ歩いていく。」

lúin の節を主節の前に置いている。霧 nébro は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。行き先は du+対格「下手へ」で言う。高原語の移動の言い方では、上るのか下るのかをかならず言い分ける。

brúumo frélo es máros némes.

読み:ブルーモ フレーロ エス マーロス ネーメス。

brúum-ofréloesmár-osném-es.
落ちる-<(重いものが)>魚<主格>から手-<属格><私>-<属格>

「魚が私の手から落ちた。」

日常の文。frélo「魚」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。már「手」も重性で、属格は -os。es+属格で「〜から」。所有者の属格 némes は名詞の後ろに置く。

bruumíro fáron es orénos, droumélan faronárai.

読み:ブルーミーロ ファーロン エス オレーノス、ドロウメーラン ファロナーライ。

bruum-ír-ofáronesorén-os,droum-él-anfaron-ár-ai.
落ちる-<もし〜なら>-<(重いものが)>荷<主格>から縁-<属格>嘆く-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>

「縁から荷が落ちれば、運び人たちは嘆くだろう。」

条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の -ír- が強勢をとるので、語根の ´ は消えて bruumíro になる。崖から物が落ちることは忌まれるので、崖道の人々は口にするのを嫌う言い方でもある。

mé þraunésa póin es orénos.

読み:メー スラウネーサ ポイン エス オレーノス。

méþraun-és-apóinesorén-os.
<禁止・願いの打ち消し>投げ捨てる-<〜すべし>-<(軽いものが)>何か<対格>から縁-<属格>

「縁から何ものも投げ捨てぬこと。」

碑文や決まりごとの文体。当為法 -és- で「〜すべし」、mé で否定して禁止になる。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、崖について þráun- を使うと、この「投げ捨てる」の意味になる。

lúin tóro nébro, hóinan faronárai es orénos.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイナン ファロナーライ エス オレーノス。

lúintór-onébro,hóin-anfaron-ár-aiesorén-os.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>帰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

「霧が来ると、運び人たちは縁から帰っていく。」

縁の市の季節の終わりを言う文。nébro「霧」は重性なので、tóro は重性の -o をとる。市は霧の前に閉じるので、崖道の人々は霧を合図に故郷へ帰る。

na géla þelíña es hóumos.

読み:ナ ゲーラ セリーニャ エス ホーモス。

nagél-aþelíñaeshóum-os.
<〜ない>行く-<(軽いものが)>幼名<主格>から炉-<属格>

「幼名は炉の外へは出ない(家の外では使わない)。」

礼法を述べる言い方。幼名は家の中だけで使う名なので、家の外の者がそれを口にするのは無作法とされる。炉は家そのものを表す。目上の者が目下の者を幼名で呼ぶと、親しみにも見下しにもなる。

ráina ólmar loimán gandéros.

読み:ライナ オルマル ロイマーン ガンデーロス。

ráin-aólmarloim-ángandér-os.
心得ている-<(軽いものが)>年長者<主格>詞-<対格>硬木-<属格>

「年長者は硬木の詞を心得ている。」

硬木を伐るときに唱える詞のような、身につけた知識について言う。属格 gandéros は名詞の後ろに置く。

lúin glǘno véinor, þílo ílmo véinoros.

読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、シーロ イルモ ヴェーノロス。

lúinglǘn-ovéinor,þíl-oílmovéinor-os.
とき凍る-<(重いものが)>湖<主格>澄む-<(重いものが)>水<主格>湖-<属格>

「湖が凍るころ、湖の水は底まで澄む。」

湖畔で言われる古い言い方。lúin の節は主節の前に置く。「澄む」の意味では自動詞として使い、目的語をとらない。

þílo séimo, glóumo rúndo.

読み:シーロ セーモ、グローモ ルンド。

þíl-oséimo,glóum-orúndo.
澄む-<(重いものが)>静み水<主格>濁る-<(重いものが)>走り水<主格>

「静み水は澄み、走り水は濁る。」

諺。落ち着いた心は澄み、急ぐ心は乱れる、という戒めとして引かれる。þíl- の「澄む」と対にして使う。

nóurim ré torélo nébro dórel.

読み:ノーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。

nóur-imrétor-él-onébrodórel.
思う-<私が><〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

「明日は霧が来ると思う。」

ré の節で思う内容を示す。確かでない未来なので、節の中は推量法にしている。霧は重性なので -o。

þílo þéul, áura selvá.

読み:シーロ セウル、アウラ セルヴァー。

þíl-oþéul,áur-aselvá.
澄む-<(重いものが)>湧き水<主格>昇る-<(軽いものが)>息

「湧き水は澄み、息は昇る。」

詩の言い方。水は重性なので動詞は -o、息は軽性なので -a で受ける。重性と軽性の対を並べた句。

glóumo rúndo du dálor.

読み:グローモ ルンド ドゥ ダーロル。

glóum-orúndodudálor.
濁る-<(重いものが)>走り水<主格>下手下の国<対格>

「走り水は下の国へ向かって濁っていく。」

水は下へ流れるほど濁って重くなる、という見方を表す古い言い方。水は重性なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。

mé grém dáloros!

読み:メー グレーン ダーロロス!

mégrémdálor-os!
<禁止・願いの打ち消し>恐れる<命令法><あなたが>下の国-<属格>

「下の国をこわがるな。」

禁止は mé+命令法で言う。命令法の2人称単数は語幹そのまま。下向きの話し方で、崖道の年長者が若い者を励ますときなどに使う。

dróuma faronár es fáronos grómos.

読み:ドローマ ファロナール エス ファーロノス グローモス。

dróum-afaronáresfáron-osgróm-os.
嘆く-<(軽いものが)>運び人<主格>から荷-<属格>重い-<重性・属格>

「運び人は荷が重いと嘆く。」

嘆きの対象は es+属格で示す。形容詞 gróm は、fáron(重性)の属格に一致して -os をとる。崖道の運び人のぼやき。

dróuman kelárai es meirós.

読み:ドローマン ケラーライ エス メイロース。

dróum-ankel-ár-aiesmeir-ós.
嘆く-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>から税-<属格>

「樵たちは税を嘆いている。」

日常の不満を言う文。meiró は語尾に強勢のある重性o語幹で、属格は -ós。

dróuma ráuvan es gandéros kélenos.

読み:ドローマ ラウヴァン エス ガンデーロス ケーレノス。

dróum-aráuvanesgandér-oskél-en-os.
悼む-<(軽いものが)>森の巫<主格>から硬木-<属格>伐る-<〜した・〜された>-<重性・属格>

「森の巫は、伐られた硬木を悼む。」

硬木を伐るときに、上へ伸びてきた木をねぎらう詞の場面。分詞 kélen は gandér(重性)の属格に一致して -os をとる。

ké na éso hémbro tásei?

読み:ケー ナ エーソ ヘンブロ ターセイ?

kénaés-ohémbrotás-ei?
<〜か><〜ない>いる-<(重いものが)>恥<主格><あなた>-<与格>

「お前には恥というものがないのか。」

たしなめる下向きの問い。ké は文のいちばん前、na は動詞の直前に置く。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物 hémbro(重性)に一致して éso になる。

þúnda senár lúdro vándos.

読み:スンダ セナール ルードロ ヴァンドス。

þúnd-asen-árlúdrovánd-os.
裁く-<(軽いものが)>見る-<〜する人>偽り<対格>秤-<属格>

「市の目付は秤の偽りを裁く。」

縁の市で、秤の不正のような揉め事を言うときの言い方。lúdro は口にした嘘だけでなく、秤や印のごまかしにも使う。属格 vándos「秤の」は名詞の後ろに置く。vándo「秤」は強勢が語根にある例外的な o語幹名詞。

lúin grúuno duléumo, mé gélir du orén.

読み:ルーイン グルーノ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。

lúingrúun-oduléumo,mégél-irduorén.
ときうなる-<(重いものが)>下の風<主格><禁止・願いの打ち消し>行く-<皆で〜せよ>下手縁<対格>

「下の風がうなるときは、皆、縁のほうへ行くな。」

崖の上の番人や運び人の間での戒め。duléumo「下の風」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。軽性の léuma「風」なら grúuna になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。禁止は「mé+命令法・複数」。

lúin éso nébro, mé þondésa þondán.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。

lúinés-onébro,méþond-és-aþond-án.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)>誓い-<対格>

「霧が出ているときには、誓いを立てぬこと。」

言い伝えや法典に出てくる禁止の言い方。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効だ、という信仰を表している。前半は lúin「〜とき」の節で、主語の霧 nébro が重性なので、繋辞は és-o になる。後半は当為法の文で、mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移るので、語根の ´ は消える。目的語の þondá「誓い」は、þónd- に -á がついた派生名詞。

áura tíula kumbóros an élvaran.

読み:アウラ ティーウラ クンボーロス アン エルヴァラン。

áur-atíulakumbór-osanélvar-an.
昇る-<(軽いものが)>音<主格>青銅-<属格>上手天-<対格>

「青銅の音は天へ昇る。」

祭祀や鈴の護符について言う決まり文句。音は「上へ昇る軽いもの」なので tíula は軽性で、動詞も -a をとる。青銅 kumbór は重性なので、属格は -os になる。an+対格で「上手へ」。

éso gandér só sáun.

読み:エーソ ガンデール ソー サウン。

és-ogandérsósáun.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>良い

「この硬木は良質だ。」

森の司の検め役が、丸太の等級を確かめて言う言い方。形容詞が述語になるときも主語に一致する。gandér は重性なので、繋辞は és-o、重性の指示詞は só になり、sáun は重性・単数・主格の形(語尾なし)をとる。

éso tambór só gráis.

読み:エーソ タンボール ソー グライス。

és-otambórsógráis.
いる-<(重いものが)>雑穀<主格>この<重性>悪い

「この雑穀は質が悪い。」

市で品質に文句をつけるときの言い方。「AはBだ」の文は繋辞 éis- で始める。主語の tambór が重性なので、繋辞は -o になる。述語の形容詞も重性・単数・主格の形をとり、語尾はつかない。

éso gandér só mór an gandéruls.

読み:エーソ ガンデール ソー モール アン ガンデールルス。

és-ogandérsómórangandér-uls.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>大きい上手硬木-<〜らに>

「この硬木は、硬木の中でいちばん大きい。」

「いちばん〜」は、an に同じ仲間の複数与格を続けて言う。森の司の検め役や樵が、丸太を見比べるときの言い方。

duþélim sélvanan, an fóndaros móros ráimaros dúlenan téir lóurul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス モーロス ライマロス ドゥーレナン テール ロールル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osmór-osráimar-osdúl-en-antéirlóur-ul.
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>偉大な-<重性・属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>三瀬-<〜たちを>

「偉大なるライマルの源から三瀬下りた、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった場での名乗り。名詞句の中は「名詞–形容詞–属格」の順に並び、形容詞は重性の fóndar に合わせて属格 -os になる。mór を家や氏族に使うと、その勢いが大きいことを誇る言い方になる。目上の人自身を mór と言うことはしない。

éso kéumo só fóndel.

読み:エーソ ケウモ ソー フォンデル。

és-okéumosófóndel.
いる-<(重いものが)>碑<主格>この<重性>古い

「この碑は古い、由緒のあるものだ。」

碑は石なので重性で、繋辞も -o になる。fóndel は「長く続いて由緒がある」という、ほめる含みのある「古い」である。ただ古びて傷んでいることを言うときは trúum を使う。

éso nébro só gráis, na lísimor sáindaran.

読み:エーソ ネーブロ ソー グライス、ナ リーシモル サインダラン。

és-onébrosógráis,nalís-imorsáindar-an.
いる-<(重いものが)>霧<主格>この<重性>不吉な<〜ない>書く-<我々が>証文-<対格>

「この霧は縁起が悪い。我々は証文を書かない。」

霧期には大事な契約を結ばないという習わしを、兆しの言い方で述べている。霧 nébro は重性なので、繋辞は -o をとり、指示詞は só になる。重性・単数・主格の形容詞には語尾がつかない。主節が二つ並ぶので、あいだを読点で区切る。

víra kelár ré éso nébro tó gráis.

読み:ヴィーラ ケラール レー エーソ ネーブロ トー グライス。

vír-akel-árréés-onébrotógráis.
言う-<(軽いものが)>伐る-<〜する人><〜と(節)>いる-<(重いものが)>霧<主格>あの<重性>不吉な

「樵は、あの霧は不吉だと言う。」

人から聞いた兆しを伝える言い方。ré の節の中も、動詞で始まる語順を保つ。tó は重性の指示詞「あの」。

véilo ílmo du dálor.

読み:ヴェーロ イルモ ドゥ ダーロル。

véil-oílmodudálor.
流れ去る-<(重いものが)>水<主格>下手下の国<対格>

「水は下の国へ流れ去る。」

古い言い回しで、物事の移ろいを言う諺。「流れ去る」の意味では自動詞として使い、主語の ílmo(重性)に合わせて3単・重性の -o をとる。日常の会話では、この意味はほとんど使わない。

lúin véilso múrno, tóro nébro es orénos.

読み:ルーイン ヴェールソ ムルノ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。

lúinvéils-omúrno,tór-onébroesorén-os.
とき流れ去る<〜し終えた>-<(重いものが)>腐り氷<主格>来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

「腐り氷が流れ去ってしまうと、縁から霧が上がってくる。」

湖畔の村に伝わる季節の言い習わし。完了相の véils- で「すっかり流れ去った」ことを表す。múrno も nébro も重性なので、二つの動詞はどちらも -o をとる。lúin の節は主節の前に置く。

povéra endríña ólmarei ré es pós tóro nébro.

読み:ポヴェーラ エンドリーニャ オルマレイ レー エス ポース トーロ ネーブロ。

povér-aendríñaólmar-eiréespóstór-onébro.
問う-<(軽いものが)>子ども<主格>年長者-<与格><〜と(節)>から何<属格>来る-<(重いものが)>霧<主格>

「子どもは年長者に、霧はなぜ来るのかと尋ねる。」

尋ねる相手は与格で示し、尋ねる内容は ré の節で言う。es pós は「どこから」と「なぜ」の両方の意味になる。ré の節の中でも、疑問詞は動詞の前に出る。

lóima lourvirár lóurul an fóndaros ráimaros.

読み:ロイマ ロウルヴィラール ロールル アン フォンダロス ライマロス。

lóim-alourvirárlóur-ulanfóndar-osráimar-os.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>瀬-<〜たちを>上手源-<属格>ライマル-<属格>

「系譜読みが、ライマルの源から一瀬ずつ系譜を唱える。」

婚姻の取り決めの場面。lóurul は重性の複数対格で、唱える世代の連なりを目的語にしている。系譜は十拍の韻律に乗せて唱える。

mé véil grúndo! torélo nébro.

読み:メー ヴェール グルンド!トレーロ ネーブロ。

mévéilgrúndo!tor-él-onébro.
<禁止・願いの打ち消し>忘れる<命令法><あなたが>掛け<対格>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>

「掛けを忘れるなよ。もうすぐ霧が来るぞ。」

縁の市で商人どうしが交わす念押し。禁止は「mé+命令法」で、命令法2単はむき出しの語幹 véil。grúndo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形。後半は推量法で、主語の霧 nébro が重性なので語尾は -o。霧が来る前に精算する、という市の習わしを踏まえている。

poverésa senár fáronul te dúlan es orénos.

読み:ポヴェレーサ セナール ファーロヌル テ ドゥーラン エス オレーノス。

pover-és-asen-árfáron-ultedúl-anesorén-os.
取り調べる-<〜すべし>-<(軽いものが)>見る-<〜する人>荷-<〜たちを><関係節>下る-<彼らが>から縁-<属格>

「目付は、縁から下りてくる荷を検めるべし。」

市の決まりを記した碑文の文体。当為法の -és- が強勢をとるので、語根の強勢は消える。主語の senár(軽性)を明示しているので、動詞は3単・軽性。fáronul は重性の複数対格で、関係節 te dúlan es orénos がこれを修飾する。

éso nébro. lúin hála páin þelán táses, mé glén!

読み:エーソ ネーブロ。ルーイン ハーラ パイン セラーン ターセス、メー グレーン!

és-onébro.lúinhál-apáinþel-ántás-es,méglén!
いる-<(重いものが)>霧<主格>とき呼ぶ-<(軽いものが)>誰か<主格>名前-<対格><あなた>-<属格><禁止・願いの打ち消し>答える<命令法><あなたが>

「霧が出ている。誰かがお前の名を呼んでも、答えてはいけない。」

霧の禁忌について、親が子に言い聞かせる言葉。「霧がある」は繋辞 és- で言い、霧 nébro が重性なので語尾は -o。禁止は「mé+命令法」。

ansóina lourvirár þeláis aursárar an fóndaros.

読み:アンソイナ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル アン フォンダロス。

ansóin-alourvirárþel-áisaursár-aranfóndar-os.
覚えている<〜し終えた>-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>上手源-<属格>

「「系譜読みは、源から続く祖先たちの名を覚えている。」」

ansén- は「思い出す」のほか、「記憶にとどめている」という状態も表す。時制がないので、未完了の形のままで、いつも覚えているという意味になる。系譜読みの務めを説明する文。

nílim ílmo klér es þéulos.

読み:ニーリン イルモ クレール エス セウロス。

níl-imílmokléresþéul-os.
飲む-<私が>水<対格>冷たいから湧き水-<属格>

「私は湧き水の冷たい水を飲む。」

日常の文。地上を流れる水 ílmo は重性なので、主格と対格が同じ形になり、形容詞も語尾がつかない。es+属格で「〜から」と出どころを表す。

éso gandér klér.

読み:エーソ ガンデール クレール。

és-ogandérklér.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>冷たい

「硬木は冷たい。」

手で触れた冷たさを言う文。主語の gandér は重性なので、繋辞は -o をとる。述語の形容詞は重性・単数・主格で一致し、語尾はつかない。

éso hóum fóum némei.

読み:エーソ ホーン フォーン ネーメイ。

és-ohóumfóumném-ei.
いる-<(重いものが)>炉<主格>暖かい<私>-<与格>

「私のところには暖かい炉がある。」

所有の言い方で、「ある+持ち主の与格」の形。動詞は、持たれている炉 hóum(重性)に一致して -o をとる。形容詞も重性・主格なので、語尾はつかない。

tóro duléumo múr es orénos.

読み:トーロ ドゥレウモ ムール エス オレーノス。

tór-oduléumomúresorén-os.
来る-<(重いものが)>下の風<主格>濁ったから縁-<属格>

「縁から濁った下の風が上がってくる。」

霧期の前に交わされる天気の話。duléumo「下の風」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o、形容詞は語尾なしの形をとる。崖の下から来る湿った風は、病を運ぶ濁ったものとされる。

dúlo gandér káil du ílmo.

読み:ドゥーロ ガンデール カイル ドゥ イルモ。

dúl-ogandérkáilduílmo.
下る-<(重いものが)>硬木<主格>乾いた下手水<対格>

「乾かした硬木でも水の底へ沈む。」

硬木の性質を言う、樵や森の司の言い方。káil は乾かし終えた材についても使う。du+対格で「下手へ」、つまり水の中へ沈むことを表す。硬木が「下へ行きたがる木」とされるのは、この性質のためである。

ké éso tambór káil?

読み:ケー エーソ タンボール カイル?

kéés-otambórkáil?
<〜か>いる-<(重いものが)>雑穀<主格>乾いた

「雑穀は乾いているか。」

乾風期の前半、干した雑穀の穂を脱穀する前に確かめるときの問い。「AはBだ」の文なので、繋辞 és- を文頭に置く。tambór は重性なので、繋辞は -o の形、述語の形容詞は語尾のない káil になる。

éso gandér só rúgal.

読み:エーソ ガンデール ソー ルーガル。

és-ogandérsórúgal.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>粗い

「この硬木は手ざわりが粗い。」

材木の表面の様子を言う、日常の文。gandér「硬木」は重性なので、繋辞は -o の形(éso)、指示詞は重性の só になる。述語の形容詞 rúgal は重性・単数・主格の形で、語尾がつかない。

ké éso glünó krán? éso.

読み:ケー エーソ グリュノー クラーン?エーソ。

kéés-oglünókrán?és-o.
<〜か>いる-<(重いものが)>氷<主格>硬いいる-<(重いものが)>

「「氷は硬いか?」「硬い。」」

凍った湖に乗る前に交わす日常の問答。glünó「氷」は重性なので、繋辞は3人称単数・重性の éiso になる。述語の krán は重性・主格に一致するが、この形には語尾がつかない。答えは「はい」の代わりに動詞を繰り返す。

éso kailó ível náum.

読み:エーソ カイロー イーヴェル ナウン。

és-okailóívelnáum.
いる-<(重いものが)>乾酪<主格>新しい柔らかい

「できたての乾酪は柔らかい。」

食べ物の手ざわりを言う日常の文。kailó「乾酪」は重性なので、修飾語の ível も述語の náum も重性・主格の形(語尾なし)になる。名詞句は「名詞–形容詞」の順で、述語はその後ろに来る。

tóro sáko es dáloros.

読み:トーロ サーコ エス ダーロロス。

tór-osákoesdálor-os.
来る-<(重いものが)>塩<主格>から下の国-<属格>

「塩は下の国から来る。」

sáko は干潟から借りた語で、重性o語幹に属する。そのため動詞は3人称単数・重性の tóro になる。塩は「下からの恵み」と呼ばれ、ありがたさと少しの後ろめたさをもって語られる。

ésa lúsa tambóros némei.

読み:エーサ ルーサ タンボーロス ネーメイ。

és-alúsatambór-osném-ei.
いる-<(軽いものが)>粥<主格>雑穀-<属格><私>-<与格>

「私には雑穀の粥がある。」

台所での日常の文。所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持たれている物 lúsa(軽性)に一致して -a になる。材料は属格 tambóros で後ろに添える。tambór は重性なので、属格は -os になる。

na esíro fáron, na eséla lúsa faronárei.

読み:ナ エシーロ ファーロン、ナ エセーラ ルーサ ファロナーレイ。

naes-ír-ofáron,naes-él-alúsafaronár-ei.
<〜ない>いる-<もし〜なら>-<(重いものが)>荷<主格><〜ない>いる-<〜だろう>-<(軽いものが)>日々の糧<主格>運び人-<与格>

「荷がなければ、運び人に日々の糧はなかろう。」

崖道の暮らしを言う、決まった言い方。条件の部分は、接続詞を使わずに仮定法だけで作る。荷 fáron が重性なので、動詞は -o をとる。帰結の部分は推量法で、lúsa(軽性)に一致して -a になる。lúsa は「食い扶持」の意味。

éso gandér krán an flaindélei, na tílim gandér.

読み:エーソ ガンデール クラーン アン フラインデーレイ、ナ ティーリン ガンデール。

és-ogandérkránanflaindél-ei,natíl-imgandér.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>硬い上手版の木-<与格><〜ない>彫る-<私が>硬木<対格>

「硬木は版の木より硬い。硬木は彫らない。」

彫り師の言葉。性質の程度がまさることは「an+与格」(〜の上手に)で言う。主語の gandér は重性なので、繋辞は és-o になり、形容詞 krán も重性・主格の形(語尾なし)になる。後半の gandér は目的語で、重性なので主格と同じ形。硬木を彫らないのは、硬すぎるからでもあり、禁忌だからでもある。

lúin tóro nébro, élþa kéira.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エルサ ケーラ。

lúintór-onébro,élþ-akéira.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>燃える-<(軽いものが)>蝋燭<主格>

「霧が来ると、蝋燭がともる。」

霧期の暮らしを述べる文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。蝋燭 kéira は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。lúin の節は主節の前に置く。

brúumo frúm rús es máros némes.

読み:ブルーモ フルーン ルース エス マーロス ネーメス。

brúum-ofrúmrúsesmár-osném-es.
落ちる-<(重いものが)>血<主格>赤いから手-<属格><私>-<属格>

「私の手から赤い血が落ちる。」

血 frúm は体に属するものなので重性。動詞は3人称単数・重性の -o をとり、形容詞 rús は重性の主格なので語尾がつかない。樵が手を切ったときのような日常の一言。

éso ílmo véinoros véril.

読み:エーソ イルモ ヴェーノロス ヴェーリル。

és-oílmovéinor-osvéril.
いる-<(重いものが)>水<主格>湖-<属格>青緑の

「湖の水は青緑だ。」

「AはBだ」の繋辞文。名詞句の中の形容詞は属格より前に来るので、属格 véinoros の後ろにある véril は修飾語ではなく述語と読む。湖の水は地上の水なので重性。

tóro nébro kéum es orénos.

読み:トーロ ネーブロ ケウン エス オレーノス。

tór-onébrokéumesorén-os.
来る-<(重いものが)>霧<主格>灰色のから縁-<属格>

「縁から灰色の霧が上がってくる。」

霧 nébro は下に属するものなので重性で、動詞は -o、形容詞は語尾なしになる。霧期の始まりを告げる言い方で、縁の市が閉じる合図にもなる。

éso þéul só þáil.

読み:エーソ セウル ソー サイル。

és-oþéulsóþáil.
いる-<(重いものが)>湧き水<主格>この<重性>澄んだ

「この湧き水は澄んでいる。」

地を流れる水は重性なので、繋辞は éiso、指示詞は só になる。水の濁りのなさを言う、いちばん基本の用法。

néulimor þáilan élvares, grémimor nébros.

読み:ネウリモル サイラン エルヴァレス、グレーミモル ネーブロス。

néul-imorþáil-anélvar-es,grém-imornébr-os.
好む-<我々が>澄み-<対格>天-<属格>恐れる-<我々が>霧-<属格>

「「我々は空の澄みを好み、霧を恐れる。」」

þáil を名詞として使い、軽性の対格 -an をつけている。二つの主節を読点で区切って並べた文。澄んだ空と霧を、上と下の対として語る高原らしい言い方。

éso drúmo véril árnelei.

読み:エーソ ドルーモ ヴェーリル アルネレイ。

és-odrúmovérilárnel-ei.
いる-<(重いものが)>苔<主格>青緑の木-<与格>

「木に青緑の苔が生えている。」

存在の文で、「éis-+主語+場所の与格」の形。苔 drúmo は重性o語幹なので、動詞は重性の éiso、形容詞は重性の主格(語尾なし)になる。生えている木 árnel は軽性なので、与格は -ei。高原語では青と緑を一語で言うので、苔の色も湖の色も véril で表す。

þóro kéumo kéum an árnelei.

読み:ソーロ ケウモ ケウン アン アルネレイ。

þór-okéumokéumanárnel-ei.
立つ-<(重いものが)>碑<主格>灰色の上手木-<与格>

「木の上手(北側)に灰色の碑が立っている。」

碑は灰色の硬い石で作られる。an+与格で「〜の上手の側で」、つまり北側を表す。kéumo「碑」と kéum「灰色の」は音が似ているが別の語で、碑は重性o語幹。

éso lóur só þáil, an þráinos tóro.

読み:エーソ ロール ソー サイル、アン スライノス トーロ。

és-olóursóþáil,anþráin-ostór-o.
いる-<(重いものが)>瀬<主格>この<重性>澄んだ上手峰-<属格>来る-<(重いものが)>

「この瀬は澄んでいる。峰の方から流れてくる水だ。」

水の澄み方を言う用法。瀬 lóur は重性なので、繋辞は éiso、形容詞は重性の主格(語尾なし)。重性の指示詞 só が主語の名詞句の終わりを示す。後半は an+属格で「上手から」を表し、主語は前半と同じ瀬。北の高みから来る水ほど清いとされる。

kráila kelár tálmo kumbóros.

読み:クライラ ケラール タルモ クンボーロス。

kráil-akel-ártálmokumbór-os.
手に持つ-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>斧<対格>青銅-<属格>

「樵は青銅の斧を手に持つ。」

tálmo は重性o語幹の名詞で、主格と対格が同じ形になる。この文で tálmo が目的語だとわかるのは、VSO の語順による。材料を表す属格 kumbóros は名詞の後ろに置く。主語の kelár は人なので軽性で、動詞は -a をとる。

ké éso tálmo tásei?

読み:ケー エーソ タルモ ターセイ?

kéés-otálmotás-ei?
<〜か>いる-<(重いものが)>斧<主格><あなた>-<与格>

「お前、斧は持っているか。」

森の村などで使うくだけた問い。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物 tálmo(重性)に一致して éso になる。答えは「はい」なら éso、「いいえ」なら na éso で、動詞の人称は変わらない。

éso kumbór krán.

読み:エーソ クンボール クラーン。

és-okumbórkrán.
いる-<(重いものが)>青銅<主格>硬い

「青銅は硬い。」

繋辞の文で、és- を文頭に置く。kumbór は金属なので重性で、繋辞は -o、述語の形容詞 krán は重性・単数・主格の形(語尾なし)になる。素材としての青銅を総称して言っている。

lúin tóro nébro, kúulan ólmarai.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、クーラン オルマライ。

lúintór-onébro,kúul-anólmar-ai.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>煮出す-<彼らが>年長者-<〜たちが>

「霧が来るころになると、年長者たちは(影の木の葉を)煮出す。」

霧の季節に葉を煮出して茶にする習わしを述べた文。煮出す物は文脈でわかるので、言っていない。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、節の動詞は -o をとる。

glóira aurél bóralos áurenos.

読み:グロイラ アウレール ボーラロス アウレノス。

glóir-aaurélbóral-osáur-en-os.
お越しになる-<(軽いものが)>あの方館-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<重性・属格>

「高き館の方がお越しになる。」

目上の人の個人名は口にしないので、住んでいる館で遠回しに言う。bóral は重性なので、分詞 áuren も重性の属格 -os で一致する。動詞は人を受けるので軽性の -a をとる。丘の上にある家ほど身分が高いので、áuren「高き」を添えると大家の館の意味になる。

bróla houmár snélo ível bóralos.

読み:ブローラ ホウマール スネーロ イーヴェル ボーラロス。

bról-ahoum-ársnéloívelbóral-os.
作る-<(軽いものが)>炉-<〜する人>屋根<対格>新しい家-<属格>

「家の主が家の屋根を新しく葺く。」

snélo は重性の o語幹名詞(nébro と同じ型)で、主格と対格が同じ形。名詞句は「名詞–形容詞–属格」の順で、形容詞 ível は重性・対格なので語尾がつかない。高原の屋根は傾きが急で、板か黒い薄石で葺く。

glüníro fúnel, mé duliþésa gandér.

読み:グリュニーロ フーネル、メー ドゥリセーサ ガンデール。

glün-ír-ofúnel,médul-iþ-és-agandér.
凍る-<もし〜なら>-<(重いものが)>綱<主格><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>硬木<対格>

「綱が凍ったなら、硬木を下ろさぬこと。」

降ろし場の決まりを書いた碑文の文体。条件の節は接続詞なしに、動詞を仮定法にするだけで作る。綱は重性なので仮定法の語尾は -íro。後半は当為法の禁止で、主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。凍りの頃に吊り下ろしが止まるのは、この決まりによる。

glóira ausenár es aubóralos.

読み:グロイラ アウセナール エス アウボーラロス。

glóir-aau-sen-áresau-bóral-os.
お越しになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>から<お〜になる・御〜>-館-<属格>

「目付殿が御館からお越しになる。」

目上の人の住まいなので bóral に au- をつけて「御館」とする(b- の前では接頭辞はそのままの形)。es+属格で「〜から」。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。身分の高い人は住まいで言い表すことが多く、「丘の上の館の方」のように館そのものがその人を指す言い方にもなる。

bróla kelár snélo bóralos.

読み:ブローラ ケラール スネーロ ボーラロス。

bról-akel-ársnélobóral-os.
作る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>屋根<対格>家-<属格>

「樵が家の屋根を葺く。」

snélo は重性の o語幹名詞で、主格と対格が同じ形。属格 bóralos は名詞の後ろに置いて「家の」を表す。高原の家の屋根は傾きが急で、板か黒い薄石で葺く。

ké éso reinándo tásei? éso.

読み:ケー エーソ レイナンド ターセイ?エーソ。

kéés-oreinándotás-ei?és-o.
<〜か>いる-<(重いものが)>雨水甕<主格><あなた>-<与格>いる-<(重いものが)>

「「お前のところに雨水甕はあるか?」「ある。」」

二人の発話。reinándo は「雨水を受ける所」を表す、場所の接尾辞 -ándo をもつ重性の o語幹名詞なので、繋辞は éso になる。所有は「és-+物+持ち主の与格」で言う。はい・いいえの語がないので、問いの動詞を繰り返して答える。

brúumo reinándo bóralos só.

読み:ブルーモ レイナンド ボーラロス ソー。

brúum-oreinándobóral-ossó.
落ちる-<(重いものが)>樋<主格>家-<属格>この<重性>

「この家の樋が落ちた。」

reinándo は甕も樋も表す。軒から落ちるものとして言われていれば、樋の意味だとわかる。重性なので動詞は -o をとる。時制がないので、文脈によって「落ちる」とも「落ちた」とも訳せる。

bróla kelár reinándo bóralos só.

読み:ブローラ ケラール レイナンド ボーラロス ソー。

bról-akel-árreinándobóral-ossó.
作る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>樋<対格>家-<属格>この<重性>

「樵がこの家の樋を作る。」

重性の reinándo は主格と対格が同じ形なので、VSO の語順で目的語だとわかる。名詞句の並びは「名詞–属格–指示詞」で、指示詞 só は中心の名詞 reinándo(重性)に合わせる。樋は軒に渡して雨水を甕へ導く。

éso pelsó kúulen dréum.

読み:エーソ ペルソー クーレン ドレウン。

és-opelsókúul-endréum
いる-<(重いものが)>ピッチ<主格>煮る-<〜した・〜された>黒い

「煮つめた樹脂、つまりピッチは黒い。」

pelsó は、樹脂を煮つめて作る目止め用のピッチも指す。区別したいときは、分詞 kúulen「煮られた」を後ろに添える。他動詞の分詞は受け身の意味になる。

dúlo trúndo gandéros du dálor.

読み:ドゥーロ トルンド ガンデーロス ドゥ ダーロル。

dúl-otrúndogandér-osdudálor
下る-<(重いものが)>杭<主格>硬木-<属格>下手下の国<対格>

「硬木の杭が下の国へ下りていく。」

trúndo は重性o語幹の名詞。材料は属格で後ろに添えて trúndo gandéros「硬木の杭」と言う。硬木の杭が崖の下へ下りるのは、木が向かうべき場所へ帰ることだとされている。

lúin éso nébro, ténda ambrél.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、テンダ アンブレール。

lúinés-onébro,ténd-aambrél
ときいる-<(重いものが)>霧<主格>織る-<(軽いものが)>姉<主格>

「霧が出ているあいだ、姉は機を織る。」

霧期には外仕事が減り、家の中で機を織る。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。霧 nébro は重性なので繋辞は -o をとり、姉 ambrél は人なので軽性で、織る動詞は -a をとる。ここでは目的語を言わず、「機を織る」という行い自体を表している。

éso kórvo némei, na éso tambór.

読み:エーソ コルヴォ ネーメイ、ナ エーソ タンボール。

és-okórvoném-ei,naés-otambór
いる-<(重いものが)>倉<主格><私>-<与格><〜ない>いる-<(重いものが)>雑穀<主格>

「倉はあるが、雑穀がない。」

凶作の年の嘆き。高原語には「持つ」という動詞がないので、所有は「és- + 物 + 持ち主の与格」で言う。kórvo は重性o語幹で、主格と対格が同じ形になる。動詞は持たれている物(倉、雑穀)に一致して -o をとる。

táulo kórvo meiró.

読み:タウロ コルヴォ メイロー。

tául-okórvomeiró
取る-<(重いものが)>倉の司<主格>税<対格>

「倉の司が税を取り立てる。」

kórvo は、雑穀の税と倉、度量衡を受け持つ「倉の司」を略して言うことがある。役所であって人ではないので重性のまま一致させ、動詞は -o をとる。乾風期の前半に、干し上げた雑穀から税を取る。

dúlo pelsó du orén.

読み:ドゥーロ ペルソー ドゥ オレーン。

dúl-opelsóduorén
下る-<(重いものが)>樹脂<主格>下手縁<対格>

「樹脂が縁へと下りていく。」

乾風期に、下ろし荷として樹脂が崖の下へ運ばれることを言う文。樹脂は重性なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。orén も重性なので、対格は主格と同じ形になる。

dúlo trúndo du dálor.

読み:ドゥーロ トルンド ドゥ ダーロル。

dúl-otrúndodudálor
下る-<(重いものが)>杭<主格>下手下の国<対格>

「杭が下の国へ下りていく。」

杭は干潟の泥に打ちこまれるために、崖の下へ下ろされる。trúndo は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。du+対格で「下手へ」。下の国 dálor も重性で、対格は主格と同じ形になる。

vándo kórvo tambór.

読み:ヴァンド コルヴォ タンボール。

vánd-okórvotambór
量る-<(重いものが)>倉の司<主格>雑穀<対格>

「倉の司が雑穀を量る。」

役所としての倉の司が主語の文。主語が重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる(vánda ではなく vándo)。雑穀 tambór も重性で主格と対格が同じ形なので、動詞のすぐ後ろが主語、その次が目的語という VSO の語順で役割が決まる。乾風期の前半に税の雑穀を量って取り立てる場面の言い方。

ké tóres es kéndoros? tórim.

読み:ケー トーレス エス ケンドロス?トーリン。

kétór-eseskéndor-os?tór-im.
<〜か>来る-<あなたが>から市-<属格>来る-<私が>

「「市から来たのか?」「来た。」」

二人の発話。同じ段どうしか、目上から目下へのくだけた問いで、はい・いいえを問う ké を文のいちばん前に置く。高原語には「はい」がないので、答えは動詞を自分の人称にして繰り返す。重性の kéndor の属格は -os になる。

élþa elþá hóumos.

読み:エルサ エルサー ホーモス。

élþ-aelþáhóum-os.
燃える-<(軽いものが)>火<主格>炉-<属格>

「炉の火が燃えている。」

家の炉を言う、ごくふつうの文。動詞 élþa(語根に強勢)と名詞 elþá(語尾に強勢)は、強勢の位置だけが違う。火は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。hóum「炉」は重性なので、属格は -os になる。

vandésa grúndo kéndoros orénos.

読み:ヴァンデーサ グルンド ケンドロス オレーノス。

vand-és-agrúndokéndor-osorén-os.
量る-<〜すべし>-<(軽いものが)>掛け<対格>縁の市-<属格>縁-<属格>

「縁の市の掛けは、量って(精算して)おくべし。」

度量衡の碑に刻まれた市の決まりを思わせる、当為法の文。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。kéndor orénos で「縁の市」を表し、ここでは grúndo「掛け」にかかる属格になっている。

lúin dúlo gandér du dálor, drénimor du kéndor orénos.

読み:ルーイン ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル、ドレーニモル ドゥ ケンドル オレーノス。

lúindúl-ogandérdudálor,drén-imordukéndororén-os.
とき下る-<(重いものが)>硬木<主格>下手下の国<対格>参る-<我々が>下手縁の市<対格>縁-<属格>

「硬木が下の国へ下りるころ、私どもは縁の市へ下って参ります。」

崖道の商人が目上の人に、最初の下ろしのころに市へ出ることを告げる言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。縁の市は崖の麓にあるので、かならず du で言う。lúin の節は主節の前に置く。

þundésa senár grúndo kéndoros orénos.

読み:スンデーサ セナール グルンド ケンドロス オレーノス。

þund-és-asenárgrúndokéndor-osorén-os.
裁く-<〜すべし>-<(軽いものが)>目付<主格>掛け<対格>縁の市-<属格>縁-<属格>

「目付は縁の市の掛け(の揉め事)を裁くべし。」

碑文の文体の当為法。碑文や法典では、役職を au- をつけずに一般の名として書く。senár は軽性なので、当為法の動詞も軽性の -a をとる。

sénan senárai nébro orénos.

読み:セーナン セナーライ ネーブロ オレーノス。

sén-ansenár-ainébroorén-os.
見る-<彼らが>番人-<〜たちが>霧<対格>縁-<属格>

「番人たちは縁の霧を見張っている。」

縁の肩の番人を言う文。この意味では九段下りの者を指すので、au- をつけた高め形にはしない。番人は人なので複数で言ってよく、複数主格は -ai になる。nébro は重性で、対格は主格と同じ形。

lísa lisár dulfáron kéndoros orénos.

読み:リーサ リサール ドゥルファーロン ケンドロス オレーノス。

lís-alisárdulfáronkéndor-osorén-os.
書く-<(軽いものが)>帳付け<主格>下ろし荷<対格>縁の市-<属格>縁-<属格>

「帳付けが縁の市の下ろし荷を書きつける。」

商家や市で帳簿をつける者を言う文。帳簿の見開きの片側には下ろし荷を、もう片側には上げ荷を書く。dulfáron は重性で、対格は主格と同じ形。

sén símbo gandéros só!

読み:セーン シンボ ガンデーロス ソー!

sénsímbogandér-ossó!
見る<命令法><あなたが>焼印<対格>硬木-<属格>この<重性>

「この硬木の焼印を見ろ。」

下向きの命令。森の司の検め役が、運び人や樵に向かって言うような言い方。硬木の丸太には木札を結べないので、木口に焼印を押す。並び順は「名詞–属格–指示詞」。

lúin tóro nébro, mé leimésa símbo sáindarei.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー レイメーサ シンボ サインダレイ。

lúintór-onébro,méleim-és-asímbosáindar-ei.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>置く-<〜すべし>-<(軽いものが)>印<対格>証文-<与格>

「霧が来たら、証文に印を押さぬこと。」

法典や碑文に見られる当為法の禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移り、語根の ´ は消える。前半は lúin「〜とき」の節で、霧 nébro は重性なので動詞は -o をとる。霧の中で結んだ約束は「霧の約束」として重んじられない、という禁忌を表している。

toríro nébro, na eséla meirtaulá gléin.

読み:トリーロ ネーブロ、ナ エセーラ メイルタウラー グレーン。

tor-ír-onébro,naes-él-ameirtaulágléin.
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>いる-<〜だろう>-<(軽いものが)>取引<主格>清い

「霧が来てから結んだ取引は、清いものとはされまい。」

条件の節は接続詞を使わず、仮定法だけで作る。霧 nébro は重性なので -o をとる。帰結の節は推量法で、na で否定する。主語の meirtaulá は軽性なので -a をとる。霧の中で結んだ約束は重んじられないので、精算は霧の前に済ませる。

lúin tóro nébro es orénos, kráilim gleinó.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、クライリン グレイノー。

lúintór-onébroesorén-os,kráil-imgleinó.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>手に持つ-<私が>護符<対格>

「縁から霧が上がってくると、私は護符を握りしめる。」

霧期の暮らしを語る文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。gleinó は重性の o語幹で、主格と対格が同じ形になる。

vóila senár férmalais kéumos.

読み:ヴォイラ セナール フェルマライス ケウモス。

vóil-asen-árférmal-aiskéum-os.
読む-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>法の条-<〜たちを>碑-<属格>

「目付は碑に刻まれた条々を読み上げる。」

縁の市で揉め事を裁く前に、目付が度量衡の碑の条々を読み上げる場面の文。複数形の férmalais は、一つひとつの決まりを並べた「条々」を指す。属格 kéumos は名詞の後ろに置く。

lúin éso nébro, na áura þondá, na fíndan aursárai élan.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ アウラ ソンダー、ナ フィンダン アウルサーライ エーラン。

lúinés-onébro,naáur-aþondá,nafínd-anaursár-aiél-an.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>昇る-<(軽いものが)>誓い<主格><〜ない>聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが><3人称単数・軽性>-<対格>

「霧が出ているときには、誓いは昇らない。祖先にはそれが聞こえない。」

霧の夜に立てた誓いは無効だという教えを述べる文。霧 nébro は重性なので éso、þondá は軽性なので動詞は -a で一致する。後半では、その誓いを軽性の代名詞の対格 élan で受けている。

lúin éso nébro, na ésa þondá gléin.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ エーサ ソンダー グレーン。

lúinés-onébro,naés-aþondágléin.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>いる-<(軽いものが)>約束<主格>清い

「霧の出ているときの約束は、清い約束ではない(当てにならない)。」

霧期に結んだ約束は重んじられないことを言う、日常の言い方。lúin の節は主節の前に置く。後半は繋辞の文で、na で否定する。þondá は軽性なので、繋辞は -a で一致する。

pórin eséla tróval séndos?

読み:ポーリン エセーラ トローヴァル センドス?

pórines-él-atróvalsénd-os?
どのようにいる-<〜だろう>-<(軽いものが)>しきたり<主格>ここ-<属格>

「「こちらのしきたりは、どのようなものでございましょうか。」」

よその土地の年長者に、儀式のやり方を尋ねる言い方。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る形にする。疑問詞 pórin は動詞の前に出る。推量法の -él- が強勢をとるので、és- は eséla になる。

na vírimor sárvo, lísimor ó.

読み:ナ ヴィーリモル サルヴォ、リーシモル オー。

navír-imorsárvo,lís-imoró.
<〜ない>言う-<我々が>禁じられた名<対格>書く-<我々が><3人称単数・重性>

「禁じられた名は口にしない。書き記すだけだ。」

名前の禁忌について説明する文。名前は息の形そのものとされるので、口にしてはならないが、書くのは息を使わないので禁じられない。sárvo はここで、王の名や喪中の死者の名を遠回しに指している。sárvo が重性なので、受ける代名詞も重性の ó になる。

ké ésa loimá kéumos só ráuvanes?

読み:ケー エーサ ロイマー ケウモス ソー ラウヴァネス?

kéés-aloimákéum-ossóráuvan-es?
<〜か>いる-<(軽いものが)>碑の詞<主格>碑-<属格>この<重性>森の巫-<属格>

「この碑の詞は、森の巫のものか?」

古い碑の前で交わす問い。降ろし場の碑のように、森の巫の詞をそのまま刻んだ碑がある。名詞句の終わりの指示詞 só は重性の形なので、軽性の loimá ではなく、重性の kéumo(碑)にかかる。そのため「この碑の」と読む。答えは動詞を繰り返して ésa、または na ésa と言う。

ésa loimá kéumos só trálen sóndelei.

読み:エーサ ロイマー ケウモス ソー トラーレン ソンデレイ。

és-aloimákéum-ossótrál-ensóndel-ei.
いる-<(軽いものが)>碑の詞<主格>碑-<属格>この<重性>写す-<〜した・〜された>書物-<与格>

「この碑の詞は、書物に書き写されている。」

受け身の専用の形はないので、「és-+主語+分詞」で結果の状態を言う。石に刻んだ言葉はその場に据えておくものとされ、書き写して書物に残すのは書の司の役目である。指示詞 só が主語の名詞句の終わりを示し、分詞 trálen はそのあとの述語になる。与格 sóndelei は写す先を表す。

lúin tóro nébro, mé virésa éndran. éso sárvo.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ヴィレーサ エンドラン。エーソ サルヴォ。

lúintór-onébro,mévir-és-aéndr-an.és-osárvo.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<〜すべし>-<(軽いものが)>人-<対格>いる-<(重いものが)>禁忌<主格>

「霧が来たら、人の名を呼ばぬこと。これは禁忌である。」

季節の言い習わし。霧の中で名前を呼ぶと、下の国にその名前を聞かれるとされる。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。当為法は mé で否定し、主語を言わないときは一般の人が主語になるので、軽性の形をとる。vír-「言う」は人の対格をとると「名を呼ぶ」の意味になる。最後の文は、存在の és- と重性の sárvo で「禁忌である」と言う。

lúin glóira aurilanár es dúnos, dulísimor plánan.

読み:ルーイン グロイラ アウリラナール エス ドゥーノス、ドゥリーシモル プラーナン。

lúinglóir-aaur-ilanáresdún-os,du-lís-imorplán-an.
ときお越しになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-星読み<主格>から丘-<属格><〜させていただく>-書く-<我々が>帳簿-<対格>

「星読みの方が丘からお越しになるときは、我々が帳簿を書かせていただきます。」

目下の者が星読みについて話す改まった文。星読みは四段下りの役人なので、au- をつけて高める。au- は母音の前で aur- になるので、au-ilanár は aurilanár になる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。主節は謙譲の接頭辞 du- で自分たちの行いを低めている(du-lís-imor)。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

vándan lisárai meiró tambóros.

読み:ヴァンダン リサーライ メイロー タンボーロス。

vánd-anlis-ár-aimeirótambór-os.
量る-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>税<対格>雑穀-<属格>

「書記たちが雑穀の税を量る。」

乾風期の前半、倉の司が雑穀の税を取り立てる場面の文。meiró は méir-「与える」に重いものを表す -ó がついた語で、もとは「差し出されるもの」の意味。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。何の税かは、属格を後ろに置いて表す。

duméiran kelárai meiró pelsós aldárei áurenei.

読み:ドゥメーラン ケラーライ メイロー ペルソース アルダーレイ アウレネイ。

du-méir-ankel-ár-aimeirópels-ósaldár-eiáur-en-ei.
<〜させていただく>-与える-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>貢ぎ物<対格>樹脂-<属格>座-<与格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格>

「樵たちは、高き座に樹脂の貢ぎ物を献上する。」

森の氏族が王に産物を納めることを述べる文。差し出す側を低める謙譲の du- を動詞につけ、受け手の「高き座」は与格で表す。分詞 áurenei は aldárei(軽性・単数・与格)に一致する。同じ meiró でも、受け手が王なら「貢ぎ物」、倉なら「税」と訳し分ける。

lúuma aldár áuren meiró kumbóros.

読み:ルーマ アルダール アウレン メイロー クンボーロス。

lúum-aaldáráur-enmeirókumbór-os.
ご覧になる-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>貢ぎ物<対格>青銅-<属格>

「高き座は青銅の貢ぎ物をご覧になった。」

年代記のような書き言葉の文。lúum- は「見る」の尊敬の補充形。時制がないので「ご覧になる」とも「ご覧になった」とも読める。書き言葉では aldár áuren を上げ書きにする。

sénim órunan es dúnos.

読み:セーニン オールナン エス ドゥーノス。

sén-imórun-anesdún-os.
見る-<私が>東-<対格>から丘-<属格>

「私は丘の上から東を眺める。」

órun を、方角や東の土地を指す目的語として使った文。軽性名詞なので、対格は -an になる。órun「日の出・東」と órel「日・太陽」は似た響きなので、日本語話者は聞き違えやすい。

tóro nébro or dún.

読み:トーロ ネーブロ オル ドゥーン。

tór-onébroordún.
来る-<(重いものが)>霧<主格>日の出側丘<対格>

「霧が丘の日の出側へやって来る。」

ものの動きを方角で言う文。or+対格で、目印になるものの日の出側(東側)へ向かうことを表す。or は órun「日の出」から来た語で、強勢がなく、次の語に寄りかかって発音される。主語の nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。

torélo nébro es orénos dulúin.

読み:トレーロ ネーブロ エス オレーノス ドゥルーイン。

tor-él-onébroesorén-osdulúin.
来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>のち

「のちに、縁から霧が上がってくるだろう。」

乾風期の終わりの、季節の移り変わりを言う文。霧 nébro は重性なので、推量法の動詞も3人称単数・重性の -o をとる(torélo)。副詞の dulúin は動詞の前に出さず、文末に置く。

tóro duléumo húmel es dúroros.

読み:トーロ ドゥレウモ フーメル エス ドゥーロロス。

tór-oduléumohúmelesdúror-os.
来る-<(重いものが)>下の風<主格>湿ったから下手・南-<属格>

「南から湿った下の風が這い上がってくる。」

霧期の前ぶれを言う文。duléumo は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとり、形容詞 húmel も重性・主格の形(語尾なし)になる。下から来る風は病を運ぶ重いものとされる。

na tóro nébro es ánores.

読み:ナ トーロ ネーブロ エス アーノレス。

natór-onébroesánor-es.
<〜ない>来る-<(重いものが)>霧<主格>から上手・北-<属格>

「霧は北から来ることはない。」

ánor は軽性の子音語幹として変化する(属格 ánores)。霧は下の国の息で、崖の下(南)から這い上がってくるものとされるので、北(上手)から来ることはない。主語の nébro は重性なので、動詞は -o をとる。

dúlo gandér es méndales du dálor.

読み:ドゥーロ ガンデール エス メンダレス ドゥ ダーロル。

dúl-ogandéresméndal-esdudálor.
下る-<(重いものが)>硬木<主格>から中の世界-<属格>下手下の国<対格>

「「硬木は中の世界を離れ、下の国へと下りていく。」」

最初の下ろしの作法を語る文。硬木が下の国の杭になることを、木の「成就」とみる考え方を映している。

dúlan faronárai es méndales orénos.

読み:ドゥーラン ファロナーライ エス メンダレス オレーノス。

dúl-anfaronár-aiesméndal-esorén-os.
下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>からまん中-<属格>縁-<属格>

「「運び人たちは縁のまん中から下りていく。」」

崖道の主な道筋が、長川の峡谷に沿って縁のまん中を通っていることを言う。「〜のまん中から」は、es+méndal の属格に、全体を表す名詞の属格を続けて言うので、属格が二つ続く。

lúin tóro nébro, na sénimor álmaran un élvarei.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン ウン エルヴァレイ。

lúintór-onébro,nasén-imorálmar-anunélvar-ei.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>白月-<対格>内に天-<与格>

「霧が来ると、天の内に白月が見えなくなる。」

霧期を言う文。un+与格で、天という広がりの内側にあることを表す。霧は下から割りこむ帳なので、天にあるものが見えなくなる。

tóra faronár un dáloros.

読み:トーラ ファロナール ウン ダーロロス。

tór-afaronárundálor-os.
来る-<(軽いものが)>運び人<主格>中へ・中から下の国-<属格>

「運び人が下の国の奥から上がってくる。」

un+属格で「〜の中から」を表す。方向を問わない es+属格と違い、包まれた内側から出てくることを言う。

ké éso orén trúin? éso trúin.

読み:ケー エーソ オレーン トルーイン?エーソ トルーイン。

kéés-ooréntrúin?és-otrúin.
<〜か>いる-<(重いものが)>縁<主格>近いいる-<(重いものが)>近い

「「縁は近いか。」「近い。」」

二人のやりとりで、道を尋ねる日常の問いと答え。orén は重性なので、繋辞は -o をとり、述語の trúin も重性・主格の形(語尾なし)になる。高原語には「はい」がなく、答えるときは動詞と述語をくり返す。

lúin éso nébro trúin, mé hál þelán!

読み:ルーイン エーソ ネーブロ トルーイン、メー ハール セラーン!

lúinés-onébrotrúin,méhálþel-án!
ときいる-<(重いものが)>霧<主格>近い<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

「霧が近いときは、名前を呼ぶな。」

親が子に言い聞かせる、禁忌の言い方。霧の中で名を呼ぶと下の国に聞かれる、という信仰による。nébro「霧」は重性なので、繋辞は éiso になる。禁止は「mé+命令法」で言う。

na sénimor dálor, éso lóuvan.

読み:ナ セーニモル ダーロル、エーソ ローヴァン。

nasén-imordálor,és-olóuvan.
<〜ない>見る-<我々が>下の国<対格>いる-<(重いものが)>遠い

「下の国は我々には見えない。遠いのだ。」

縁の肩で崖下を見下ろしながら言う文。後半は主語を言っていないが、動詞の重性の語尾 -o から、主語は dálor だとわかる。重性の dálor は、主格も対格も同じ形になる。

tóra torár es dáloros lóuvanos.

読み:トーラ トラール エス ダーロロス ローヴァノス。

tór-atoráresdálor-oslóuvan-os.
来る-<(軽いものが)>客<主格>から下の国-<属格>遠い-<重性・属格>

「遠い下の国から客が来た。」

日常の知らせ。es+属格で「〜から」を表す。形容詞 lóuvan は、名詞の後ろで dáloros(重性・単数・属格)に一致して lóuvanos になる。時制の語形がないので、「来た」とも「来る」とも訳せる。

tórim es orénos anórelei.

読み:トーリン エス オレーノス アノーレレイ。

tór-imesorén-osanórel-ei.
来る-<私が>から縁-<属格>昨日-<与格>

「昨日、縁から来た。」

自分のことを言う日常の文。anórel は an「上手」と órel「日」からできた語で、時の流れの上手にある日、つまり「前の日」を表す。時を表す与格 anórelei で「昨日に」となり、文の後ろのほうに置かれる。

éso nebrálvo trúin, lísir sáindarais.

読み:エーソ ネブラルヴォ トルーイン、リーシル サインダライス。

és-onebrálvotrúin,lís-irsáindar-ais.
いる-<(重いものが)>霧期<主格>近しい書く-<皆で〜せよ>証文-<〜たちを>

「霧期が近い。証文を書いておけ。」

縁の市で、乾風期の終わりに商人たちが言い合う文。trúin は時間の近さを表す。nebrálvo は重性o語幹なので、繋辞は -o になる。霧の約束は重んじられないので、霧期の前に証文を済ませておけ、という含みがある。

na tóro nébro, éso nebrálvo lóuvan.

読み:ナ トーロ ネーブロ、エーソ ネブラルヴォ ローヴァン。

natór-onébro,és-onebrálvolóuvan.
<〜ない>来る-<(重いものが)>霧<主格>いる-<(重いものが)>霧期<主格>隔たった

「霧は来ない。霧期はまだ遠い。」

乾風期の縁の肩での会話。lóuvan は時間の隔たりを表す。nébro と nebrálvo は下から湧く霧にかかわる語なので重性で、動詞も重性の -o をとる。

tóro nebrálvo. ké éso gleinó tásei?

読み:トーロ ネブラルヴォ。ケー エーソ グレイノー ターセイ?

tór-onebrálvo.kéés-ogleinótás-ei?
来る-<(重いものが)>霧期<主格><〜か>いる-<(重いものが)>護符<主格><あなた>-<与格>

「霧期が来る。お前、護符は持っているか?」

家族や親しい者どうしの日常会話。nebrálvo は重性なので、動詞は重性の -o(tóro)で一致する。季節名のうち、重性の一致をとるのはこの語だけである。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物 gleinó(重性)に一致する。

dúla álva: tóra reinálva, tóra kailálva, tóro nebrálvo.

読み:ドゥーラ アルヴァ:トーラ レイナルヴァ、トーラ カイラルヴァ、トーロ ネブラルヴォ。

dúl-aálva:tór-areinálva,tór-akailálva,tór-onebrálvo
下る-<(軽いものが)>季節<主格>来る-<(軽いものが)>雨期<主格>来る-<(軽いものが)>乾風期<主格>来る-<(重いものが)>霧期<主格>

「季節は流れ下る。雨期が来て、乾風期が来て、霧期が来る。」

暦の書や子どもへの教えに出てくる文。時間を川の流れとみるので、季節がめぐることを dúl-「下る」で言う。雨期と乾風期は軽性なので動詞は -a をとるが、霧期 nebrálvo だけは霧と同じ重性なので、動詞が -o(tóro)になる。

lúin éso nebrálvo, mé lisésa sáindaran.

読み:ルーイン エーソ ネブラルヴォ、メー リセーサ サインダラン。

lúinés-onebrálvo,mélis-és-asáindar-an
ときいる-<(重いものが)>霧期<主格><禁止・願いの打ち消し>書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>証文-<対格>

「霧期のあいだは、証文を書かぬこと。」

市の決まりや法典の文体。nebrálvo は霧と同じく重性o語幹なので、「霧期である間」の és- は重性の -o(éso)をとる。主節は当為法なので mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形 lisésa をとる。

lúin tóro nébro es orénos, grómim.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、グローミン。

lúintór-onébroesorén-os,grómim.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>体が重い

「縁から霧が上がってくると、体がだるくなる。」

霧期には病が流行り、体が重くなると言われる。それを言うときの決まった言い方。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

nagróm. éso fáron fláin.

読み:ナグローン。エーソ ファーロン フライン。

nagróm.és-ofáronfláin.
どういたしましている-<(重いものが)>荷<主格>軽い

「どういたしまして。荷は軽かったよ。」

荷を担いでもらった礼への返事。「重くない」の nagróm に「荷は軽い」と重ねて、相手の気づかいを打ち消している。荷 fáron は重性なので、繋辞は -o、述語の形容詞 fláin は重性・主格の形(語尾なし)になる。

póso? sáko es dáloros.

読み:ポーソ?サーコ エス ダーロロス。

póso?sákoesdálor-os.
これは何だ塩<主格>から下の国-<属格>

「これは何だ? 下の国から来た塩だよ。」

二人の発話。市で品物を手に取って尋ね、相手が名詞句だけで答えている。póso は疑問詞 pó「何」と重性の指示詞 só「この」が縮まってできた定型の問いで、一語として扱う。品物はたいてい重性なので só の形で固まった。答えは動詞を省いた名詞句だけ。

póþul? tóro nébro es orénos?

読み:ポースル?トーロ ネーブロ エス オレーノス?

póþul?tór-onébroesorén-os?
なんだって(意外)来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

「なんだって? 縁から霧が上がってくるだと?」

思いがけない知らせに驚いて、相手の文をそのまま問いの調子で繰り返している。nébro「霧」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。霧が来ると市は閉じ、精算は霧の前に済ませなければならないので、霧の知らせは商人にとって一大事である。

faronér fáron só, ende. nés, éso ó gróm.

読み:ファロネール ファーロン ソー、エンデ。ネース、エーソ オー グローン。

faronérfáronsó,ende.nés,és-oógróm.
担ぐ<命令法><あなたが>荷<対格>この<重性>どうぞいや・だめだいる-<(重いものが)><3人称単数・重性>重い

「「この荷を担いでくれ、頼む。」「いや、そいつは重い。」」

縁の市で、運び人が荷の担ぎを断るやりとり。nés は市の取引言葉の短い断りの返事で、都の改まった言葉では使わない。断ったあとに理由を添えることが多い。繋辞の文は「éis-+主語+述語」の順で、重性の代名詞 ó を受けて動詞は -o、形容詞 gróm も重性・主格の形になる。

ké éso sáko tásei? nés.

読み:ケー エーソ サーコ ターセイ?ネース。

kéés-osákotás-ei?nés.
<〜か>いる-<(重いものが)>塩<主格><あなた>-<与格>ない(品切れ)

「「塩はあるか?」「ない。」」

市で品物の有無を尋ねられて、品切れだと答える言い方。所有は「持つ」という動詞を使わず、「ある+持ち主の与格」で言う。改まった言葉なら na éiso と動詞を繰り返して答えるところを、取引言葉では nés の一語ですませる。sáko は干潟から借りた語で重性。

ké tóres es orénos? éun, tórim.

読み:ケー トーレス エス オレーノス?エウン、トーリン。

kétór-esesorén-os?éun,tór-im.
<〜か>来る-<あなたが>から縁-<属格>うん来る-<私が>

「「縁から来たのか?」「うん、来た。」」

森や崖道のくだけたやりとり。高原語には「はい」がなく、ふつうは動詞を自分の人称に変えて繰り返して答えるが、くだけた場では éun を先に言い、そのあとに動詞を添えることが多い。時制がないので tóres は「来る」とも「来た」とも訳せる。目上の人には使わない。

ái, tóro nébro es orénos.

読み:アイ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。

ái,tór-onébroesorén-os.
おや来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

「おや、縁から霧が上がってくる。」

思いがけないことに気づいたときの軽い声。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。霧期の初めによく聞かれる言い方。

aursáre! brúumsa faronár es orénos.

読み:アウルサーレ!ブルーンサ ファロナール エス オレーノス。

aursáre!brúums-afaron-áresorén-os.
ああ落ちる<〜し終えた>-<(軽いものが)>荷-<〜する人>から縁-<属格>

「ああ、ご先祖よ、運び人が縁から落ちてしまった。」

凶事を聞いたときの言い方。崖から落ちて死ぬことは、魂が下へ引かれるとして最も恐れられる死に方で、このような知らせには aursáre を添えることが多い。brúum- の語根は長母音なので、完了相は -s- を足して brúums- になる。

dáloro! brúumso fáron.

読み:ダーロロ!ブルーンソ ファーロン。

dáloro!brúums-ofáron.
ちくしょう落ちる<〜し終えた>-<(重いものが)>荷<主格>

「ちくしょう!荷が落ちやがった。」

dálor「下の国」の重性呼格から来た卑語。「下の国よ」と呼ぶことが悪態になる。崖道の運び人の言葉に多く、炉の前や目上の人の前では口にしてはならない。fáron は重性なので、動詞は -o をとる。

vóila faronár símbo gandéros, na vóila lisáis.

読み:ヴォイラ ファロナール シンボ ガンデーロス、ナ ヴォイラ リサイス。

vóil-afaron-ársímbogandér-os,navóil-alis-áis.
見分ける-<(軽いものが)>荷-<〜する人>印<対格>硬木-<属格><〜ない>読む-<(軽いものが)>字-<〜たちを>

「運び人は硬木の焼印は見分けるが、字は読めない。」

同じ vóil- が、前半では焼印の形を見分ける意味で、後半では文字を読む意味で使われている。丸太の木口の焼印は何百本にも同じ形で押されているので、文字を知らない者もその形を覚える。

aursáre! tóro nébro es orénos.

読み:アウルサーレ!トーロ ネーブロ エス オレーノス。

aursáre!tór-onébroesorén-os.
ああ来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

「ああ、ご先祖よ!縁から霧が上がってくる。」

霧期の初めの不安の声。霧は「下の国の息」で、祖先と人とのあいだに割りこむものとされる。nébro は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

lúin tóro nébro, dúla lisá du dálor.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラ リサー ドゥ ダーロル。

lúintór-onébro,dúl-alisádudálor.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>下る-<(軽いものが)>字<主格>下手下の国<対格>

「「霧が来ると、字は下の国へ流れ落ちる。」」

霧の中で書いた字は墨がにじんで下へ流れる、という言い伝えを述べた文。霧期に大事な書きものを避ける理由になる。霧 nébro は重性なので動詞は -o、字 lisá は軽性なので -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

lúin tóro nébro, na trálan lisárai sóndelais.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ トラーラン リサーライ ソンデライス。

lúintór-onébro,natrál-anlis-ár-aisóndel-ais.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>写す-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>書物-<〜たちを>

「霧が来ると、書記たちは書物を写さない。」

霧の中で書いた字は下へ流れるとされるので、霧期には書物の書き写しを避ける(書物を写すのは雨期の仕事)。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。sóndel は巻物も綴じ本も含めた書物全般を指す。

ésa traimlisá véinoros trúum.

読み:エーサ トラインリサー ヴェーノロス トルーン。

és-atraimlisávéinor-ostrúum.
いる-<(軽いものが)>年ごとの記録<主格>湖-<属格>古びた

「湖畔の年ごとの記録は古びている。」

統一より前に湖畔の都市が残した年ごとの記録を指す用法。こうした記録の断片をつなぎ合わせたものが「前の書」になる。名詞句は「名詞–属格」の順に並び、述語の形容詞 trúum は軽性・主格の形をとる。

dúla lourlisá an fóndaros ráimaros dáumbar téir lóurul.

読み:ドゥーラ ロウルリサー アン フォンダロス ライマロス ダウンバル テール ロールル。

dúl-alourlisáanfóndar-osráimar-osdáumbartéirlóur-ul.
下る-<(軽いものが)>系譜の巻<主格>上手源-<属格>ライマル-<属格>二十三瀬-<〜たちを>

「系譜の巻は、ライマルの源から二十三瀬を下っていく。」

系譜の巻に書かれた流れが、源から一瀬ずつ下っていくことを言う文。系譜読みが唱えはじめるときの言い方でもある。an+属格で「上手から」。lóurul は道のりの対格で、自動詞 dul- もこの格をとれる。巻は紙なので軽性で、動詞は -a をとる。

lúin éso nébro, na ésa lourlisá trálen.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ エーサ ロウルリサー トラーレン。

lúinés-onébro,naés-alourlisátrál-en.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>いる-<(軽いものが)>系譜の巻<主格>写す-<〜した・〜された>

「霧の出ているあいだは、系譜の巻を写さない。」

霧期の書きものの慣わしを言う文。霧の中で書いた字は、墨がにじんで下へ流れるとされる。lúin の節では、動詞が重性の霧 nébro に一致して -o をとる。主節は「éis-+主語+分詞」で結果の状態を言う、受け身にあたる形で、na で否定している。

tóra fléila es orénos.

読み:トーラ フレーラ エス オレーノス。

tór-afléilaesorén-os.
来る-<(軽いものが)>手紙<主格>から縁-<属格>

「縁から手紙が届いた。」

ふだんの報せの言い方。手紙は紙に書かれ、言葉を載せて昇るものなので軽性で、動詞は -a をとる。時制がないので、「届く」とも「届いた」とも訳せる。es+属格は、方向を問わない「〜から」。

tóra es orénos faronár te faronéra fáron.

読み:トーラ エス オレーノス ファロナール テ ファロネーラ ファーロン。

tór-aesorén-osfaron-ártefaron-ér-afáron.
来る-<(軽いものが)>から縁-<属格>荷-<〜する人><関係節>荷-<〜でする>-<(軽いものが)>荷<対格>

「荷を担いだ運び人が、縁から上がってくる。」

崖道や縁の市でよく聞く、見たままを言う文。関係節の主語にあたる部分(運び人)は空けておく。関係節は文の終わりか読点まで続く。そのため、関係節のついた重い主語を文末に回し、前置詞句 es orénos を主語より前に出している。主語の後ろに es orénos を置くと、関係節の中の語と受けとられてしまう。

na éso ó ombríl, ésa virá rúgal.

読み:ナ エーソ オー オンブリール、エーサ ヴィラー ルーガル。

naés-oóombríl,és-avirárúgal.
<〜ない>いる-<(重いものが)>それ<重性>十拍の句<主格>いる-<(軽いものが)>言葉<主格>粗い

「それは十拍の句ではない。粗い言葉だ。」

詩合わせで、拍の数や重さの並びが定型から外れた句を退けるときの言い方。読み上げられた句を重性の代名詞 ó で受け、繋辞も重性の éso にしている。後半の virá は軽性なので、繋辞は ésa になる。主節を二つ並べるので、あいだに区切りを入れる。

na ésa pandá brólen es gandéros.

読み:ナ エーサ パンダー ブローレン エス ガンデーロス。

naés-apandábról-enesgandér-os.
<〜ない>いる-<(軽いものが)>版木<主格>作る-<〜した・〜された>から硬木-<属格>

「版木は硬木では作られない。」

硬木は「下へ行きたがる木」なので、上へ昇る言葉を刻む版には使わない、という禁忌を述べた文。受け身は「és-+主語+分詞」で言う。es+属格は、材料の出どころを表す。na は動詞の直前に置く。

éso kéumo dúnos fóndel.

読み:エーソ ケウモ ドゥーノス フォンデル。

és-okéumodún-osfóndel.
いる-<(重いものが)>碑<主格>丘-<属格>古い

「丘の碑は由緒あるものだ。」

王の丘の統一の碑のような、古い碑について述べた文。「AはBだ」の文も、繋辞 és- で始める。主語の kéumo が重性なので、繋辞は éso、述語の形容詞 fóndel は重性・単数・主格の形(語尾なし)になる。dúnos は「丘の」という属格。

éso glünó só krán.

読み:エーソ グリュノー ソー クラーン。

és-oglünósókrán.
である-<(重いものが)>氷<主格>この<重性>硬い

「この氷は硬い。」

繋辞の文で、「éis-+主語+述語」の順に並ぶ。主語の glünó が重性なので、繋辞は -o、指示詞は só になる。凍りの頃に、氷に乗れるかどうかを確かめるときの言い方。

ké éso sáko tásei?

読み:ケー エーソ サーコ ターセイ?

kéés-osákotás-ei?
<〜か>ある-<(重いものが)>塩<主格><あなた>-<与格>

「お前、塩はあるか?」

所有は持ち主の与格で表す。動詞は持ち主ではなく、持たれている塩 sáko(重性)に一致する。答えは動詞を繰り返して、「はい」なら éiso、「いいえ」なら na éiso と言う。

selvéna aurél ré tóro nébro.

読み:セルヴェーナ アウレール レー トーロ ネーブロ。

selvén-aaurélrétór-onébro.
おっしゃる-<(軽いものが)>あの方<〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>

「あの方は、霧が来るとおっしゃる。」

selvén- は「言う」の尊敬の補充形。言った内容は ré の節で主節の後ろに置き、その節も動詞で始める。節の中の動詞は、霧 nébro に合わせて重性の -o になる。

éso fáron senárei.

読み:エーソ ファーロン セナーレイ。

és-ofáronsen-ár-ei.
いる-<(重いものが)>荷<主格>見る-<〜する人>-<与格>

「目付には荷がある。」

所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持ち主ではなく、持たれている物 fáron(重性)に一致して -o をとる。

ké éso só fírna? na éso. na éso só póin sal árnelei.

読み:ケー エーソ ソー フィルナ?ナ エーソ。ナ エーソ ソー ポイン サル アルネレイ。

kéés-osófírna?naés-o.naés-osópóinsalárnel-ei.
<〜か>いる-<(重いものが)>この<重性>筆<〜ない>いる-<(重いものが)><〜ない>いる-<(重いものが)>この<重性>何か外木-<与格>

「「これはペン(書く道具)ですか?」 「いいえ。これはただの木の棒です」」

直訳は「これは筆か?」「(筆では)ない。これは木の外の何ものでもない」。辞書の語だけで訳せたので、仮置きの語はありません。既存の用例と照らし合わせましたが、食い違いは見つからなかったので、元の訳のまま返します。 1. 「ペン」:辞書の fírna(筆)を使いました。「書く道具」の意味にちょうど合います。 2. 「これ」:指示詞 só を単独で「これ」として使いました(定型句 póso「これは何だ」と同じ使い方)。重性の só にしたのは、指している物が伐った木の切れ端だからです。伐った木は荷札と同じく重性で受けます(既存の sén gandér só と同じ)。繋辞も só に合わせて重性の éso にしました。述語の fírna は軽性の名詞ですが、述語の名詞は自分の性・主格のまま置くので、形は変えていません(既存の na éso nébro fléura と同じ組み立て)。 3. 問いの形:目上かどうか分からない相手へのふつうの問いとして、文頭に ké を置きました(既存の ké éso fóndar só gléin? と同じ形)。目上の人に聞くなら、ké を使わず推量法で尋ねます。 4. 「いいえ」:高原語には「はい」「いいえ」にあたる語がありません。そこで問いの動詞を繰り返して na をつけ、na éso としました。動詞は物に一致しているので、人称は変わりません(既存の「na éso tambór némei」と同じ)。 5. 「ただの木の棒」は言い換えました。「棒」にあたる語はないので、árnel(木・材木)で「木切れ」の意味にしました。「ただの」にあたる語もないので、na … póin sal árnelei「木の外の何ものでもない」と否定で言い換えました。前置詞 sal(〜の外に)がとる格は決まっていません。ほかの前置詞が「その場にあること」を与格で言うのにならって、与格にしました。 6. 性の決め方:árnel は生えている木と同じ軽性の子音語幹とみて、与格を -ei にしました。名詞の形は伐っても軽性のままで、一致だけが重性になります。póin(何か)は疑問詞 pó にならって重性とし、主語 só と同じく、繋辞は重性の éso にしました。

na rainiþíre kréva ó, na ráina éndra ó sarénei.

読み:ナ ライニシーレ クレーヴァ オー、ナ ライナ エンドラ オー サレーネイ。

narainiþ-ír-ekrévaó,naráin-aéndraósarén-ei.
<〜ない>教える-<もし〜なら>-<(軽いものが)>練習<主格><3人称単数・重性・対格><〜ない>知る-<(軽いものが)>人<主格><3人称単数・重性・対格>本番-<与格>

「練習でできないことは、本番でもできない。」

【既存の用例との照合】既存の用例と比べて、次の点が一致していることを確かめました。 - kréva「練習」は語根に強勢のあるa語幹です(対格は kréva-n)。ここでは主格のまま主語に使っています。 - 「教える」は使役形 rainíþ- です(rainiþ-énd-e、rain-íþ-a と同じ語)。 - 否定の na は動詞の直前に置きます。 - 仮定法の節は主節の前に置き、接続詞は使いません(toríro nébro…, na senéimor… と同じ型)。 - 目的語の ó は 3SG.HV.ACC とグロスします。 直すべき食い違いはなかったので、訳は変えていません。 【言い換え】辞書には「できる」にあたる語がありません。そこで ráin-「知る・心得ている」で言い換えました。後半は「人は本番でそれを心得ていない」になります。前半は同じ動詞の使役形 rainíþ-「教える(=知らせる)」を使い、「練習が身につけさせないなら」としました。こうすると、「練習で身につかないものは、本番でも身につかない」という元の意味が保てます。 【構文】仮定法の3人称単数・軽性は -íre です。強勢が -ír- に移るので、-íþ- の強勢は消えます(rainiþíre)。 【一致】 - 前半の主語 kréva は軽性a語幹なので、語尾は -e(仮定法・軽性)になります。 - 後半の主語 éndra「人」は、一般の人を指します。前半とは主語が違うので、省かずに言いました。人なので軽性で、語尾は -a です。 【目的語】目的語の枠は空けられません。どちらの節にも、重性の代名詞 ó(対格)「それ(しなければならない事柄)」を置きました。受け手の「人に」は、言わなくても文が成り立つので省いています。 【法】帰結の節は格言で、一般に成り立つことを言っています。そのため推量法ではなく、直説法で言い切りました。 【「でも」】「も」にあたる小辞は辞書にありません。同じ動詞(ráin-/rainíþ-)と同じ代名詞 ó を前後に並べた対句にして、「同じく〜ない」の響きを出しました。

mé þráun fáron es orénos, murár!

読み:メー スラウン ファーロン エス オレーノス、ムラール!

méþráunfáronesorén-os,mur-ár!
<禁止・願いの打ち消し>投げる<命令法><あなたが>荷<対格>から縁-<属格>濁った-<〜する人>

「縁から荷を投げるな、このぼんくら!」

崖の上の降ろし場や崖道で、年長の者が目下の者をどなりつけるときの言い方。禁止は「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数は語幹のまま(þráun)。murár は呼びかけなので、文の終わりに読点で区切って主格のまま添える。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、ここではただの不注意ではなく、「下の国を呼び寄せかねない愚かさ」をとがめる響きがある。

þeultáula endríña ílmo es þéulos.

読み:セウルタウラ エンドリーニャ イルモ エス セウロス。

þeultául-aendríñaílmoesþéul-os.
汲む-<(軽いものが)>子ども<主格>水<対格>から湧水-<属格>

「子どもが湧水から水を汲む。」

日常の動作を記述する文。主語は人(軽性)なので動詞は軽性の単数語尾 -a をとる。目的語の ílmo(水)は重性だが、動詞は主語と一致するため形は変わらない。出所を表す前置詞 es に属格 þéulos を組み、「湧水から」という起点を示す。

þeultáulim ílmo es þéulos selúin.

読み:セウルタウリン イルモ エス セウロス セルーイン。

þeultául-imílmoesþéul-osselúin.
汲む-<私が>水<対格>から湧水-<属格>今

「私は今、湧水から水を汲んでいる。」

1人称単数の直説法。話し手が自ら動作を行う日常の場面。selúin(今)は時の副詞として節の末尾に置かれる。複合動詞だが文法上は単一語として -im を直接とるため、縁の町の取引言葉や初学者の会話でも活用形が明確で伝達しやすい。

éso aurbúl un hóumoi.

読み:エーソ アウルブール ウン ホーモイ。

és-oaurbúlunhóum-oi
いる-<(重いものが)>薪<主格>内に炉-<与格>

「炉に薪がある。」

家庭の日常で、祀りや火起こしの準備として炉(hóum)の中に薪を備えていることを確認する文。存在文の標準形(és-+主語+前置詞+与格)。aurbúl は重性なので動詞は -o をとる。un+与格で「〜の中に」。fálno(世俗的な「薪」)ではなく aurbúl を使うのは、この炉の火が単なる暖房ではなく、息を天へ送るための火として扱われる場面であるから。

éso fáron só kórvino só.

読み:エーソ ファーロン ソー コルヴィノ ソー。

és-ofáronsókórvinosó.
いる-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>受け入れられるべきもの<主格>この<重性>

「この荷は、受け入れられるべきものだ。」

比喩的用法。「運搬桶」が「倉に納めるべき品・運ぶべき責任」を指す。コピュラ文で述語の名詞は自分の性・主格のまま。fáron は重性なので指示詞 só。

mé þraunésa dulilmó es orénos.

読み:メー スラウネーサ ドゥリルモー エス オレーノス。

méþraun-és-adulilmóesorén-os.
<禁止・願いの打ち消し>投げる-<〜すべし>-<(軽いものが)>下汲み桶<対格>から縁-GEN.

「縁から桶を落とさぬこと。」

崖道の碑文・禁忌の文。当為法は主語を言わないので一般の「人」(軽性)が主語になり、動詞は軽性の -a。mé(働きかけの否定)で当為法を否定。重性の目的語は主格・対格が同じ形(dulilmó)。es+属格で「〜から」。度量衡の碑の「縁から荷を落とさぬこと」と同じ構造。

ké éso dulilmó un kórvoi?

読み:ケー エーソ ドゥリルモー ウン コルヴォイ?

kéés-odulilmóunkórv-oi?
<〜か>いる-<(重いものが)>水汲み桶<主格>内に倉-<与格>?

「倉の中に汲み桶はあるか。」

存在の問い。動詞は持たれている物(汲み桶、重性)に一致して -o。un+与格で「〜の中で」。答えは éso(ある)または na éso(ない)で、人称は変わらない(所有・存在の動詞は物に一致するため)。

un kórvoi, éso dulilmó klér.

読み:ウン コルヴォイ、エーソ ドゥリルモー クレール。

unkórv-oi,és-odulilmóklér.
内に倉-<与格>,いる-<(重いものが)>水汲み桶<主格>冷たい

「倉の中では、汲み桶が冷たい。」

述語の形容詞の文(és-+主語+述語)。場所を動詞の前に出すと場面の枠として機能し、存在の文にはならない(統語論4.1)。動詞は主語の汲み桶(重性)に一致して -o。凍りの頃に井戸や谷の湧き水を汲んで倉に置いた桶が冷たい。

tóro dulilmó klér an fóndaros.

読み:トーロ ドゥリルモー クレール アン フォンダロス。

tór-odulilmókléranfóndar-os.
来る-<(重いものが)>水汲み桶<主格>冷たい上手源-GEN.

「冷たい汲み桶が源から(戻って)来る。」

名詞句 dulilmó klér(冷たい汲み桶)が主語。an+属格(「上手から・上流から」)で出どころを表す。tór-「来る」は自動詞なので目的語の枠がない。凍りの頃に、源のそばに置いていた汲み桶が冷たいまま持ち帰ってくる様子。

éso houmíño aldáres áurenes món ál.

読み:エーソ ホウミーニョ アルダーレス アウレネス モーン アール。

és-ohoumíñoaldár-esáur-en-esmónál.
いる-<(重いものが)>椀<主格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>石<主格>白い

「高き座の椀は白い石(の器)である。」

宮廷の器の記述。aldár áuren(高き座)の属格が椀の持ち主をなす。述語の名詞句 món ál は自分の性・主格のまま置かれ、主語に一致しない。白い石英(聖なる石)を素材とする王の器の記述。

dúlo houmíño es aldáres áurenes.

読み:ドゥーロ ホウミーニョ エス アルダーレス アウレネス。

dúl-ohoumíñoesaldár-esáur-en-es.
下りる-<(重いものが)>椀<主格>から座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

「高き座から、(恵みの)椀が下りてくる。」

詩的用法。houmíño は器そのものではなく、高き座から下される食物(恵み)を器の形で指す。es+属格の「〜から(出どころ)」は運動動詞の論項なので、動詞の後ろに置く(統語論1.2節、基本語順:動詞…主語 目的語 [与格] [前置詞句])。重性名詞 houmíño が主語なので動詞は -o。

kráilo marfúnel fúnel.

読み:クライロ マルフーネル フーネル。

kráil-omarfúnelfúnel.
手に持つ-<(重いものが)>綱臂<主格>綱<対格>

「綱臂が綱を支えている。」

崖道のくだけた話し方。降ろし場で作業の前に、綱臂と綱の関係を運び人が確認しながら言う文。VSOの基本語順(動詞–主語–目的語)。marfúnelは重性子音語幹(③型)なので、3人称単数の動詞は-o。fúnelも重性③型なので、対格は主格と同じ形(語尾なし)。

pó dulíþo ó gandér marfúneloi?

読み:ポー ドゥリーソ オー ガンデール マルフーネロイ?

pódul-íþ-oógandérmarfúnel-oi?
何<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>硬木<対格>綱臂-<与格>?

「綱臂で、硬木を(何が)下ろすのだ?」

崖道のくだけた話し方での問い。pónを使わないため、主語を尋ねる場合は主語の枠に再述のóを残す(統語論1.2節「前に出した語の読み方」)。póは主格。marfúneloiは場所の与格(重性③型DAT -oi)。降ろし場の仕組みを尋ねる文で、綱臂の役割を問う。

séna senár séulo tambóros só un plíndoi.

読み:セーナ セナール セウロ タンボーロス ソー ウン プリンドイ。

sén-asen-árséulotambór-ossóunplínd-oi.
見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>配分<対格>雑穀-<属格>この<重性>内に札-<与格>

「目付が、この札に書かれた雑穀の配分を見る。」

縁の市の公式な場面。市の目付(senár)が、脂の木の薄板で作った札(plíndo)に書かれた与え分を確認する。重性の対格は主格と同形なので、動詞直後の senár が主語、次の séulo が目的語と語順で決まる。指示詞 só で名詞句を閉じ、その後に前置詞句 un plíndoi が続く。

éso séulo tambóros só hóumoi.

読み:エーソ セウロ タンボーロス ソー ホーモイ。

és-oséulotambór-ossóhóum-oi.
いる-<(重いものが)>配分<主格>雑穀-<属格>この<重性>炉-<与格>

「この雑穀の配分は、炉の前にある。」

炉ばたでの日常の場面。倉から与えられた雑穀の与え分が炉の前にある状態を示す。重性o語幹の séulo は主格と対格が同形。裸の与格で場所「炉のところに」を表す。

krélo tambór un kórvoi.

読み:クレーロ タンボール ウン コルヴォイ。

krél-otambórunkórv-oi
足りる-<(重いものが)>雑穀<主格>内に倉-<与格>

「倉の中の雑穀は足りている。」

倉や貯蔵所で在庫の充足を確認する日常の言い方。主語の tambór「雑穀」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。un+与格で「倉の中に」。くだけた言葉では krél tambór un kórv-oi とも言うが、語末の -o が落ちた形(krél)でも、文脈から「足りている」と読み取れる。

krélo sáko an nébroi.

読み:クレーロ サーコ アン ネーブロイ。

krél-osákoannébr-oi
足りる-<(重いものが)>塩<主格>上手霧-<与格>

「塩は霧の前に足りている。」

縁の市や倉の司の帳場で、塩の在庫が霧期(季節の変わり目)まで十分かを確認する改まった言い方。an+与格の時読みで「〜の前に」。an nébroi「霧の前に」は市の決まり文句で、「期限までに」の意味も帯びる。主語の sáko「塩」は重性o語幹なので、動詞は -o。干潟から来る塩はすべて重性に入る。

ombrélo bóral só.

読み:オンブレーロ ボーラル ソー。

ombrél-obóralsó.
足りる-<(重いものが)>家<主格>この<重性>

「この家は、すべてがそろっている。」

比喩的な意味。家計・備え・役割のすべてが欠けなく整っていることを指す。bóral は重性子音語幹。só は重性の指示詞で名詞句を閉じる。改まった場で家柄を称える言い方。

ombrélo fáron, duói dúlimor du dulándo.

読み:オンブレーロ ファーロン、ドゥオイ ドゥーリモル ドゥ ドゥランド。

ombrél-ofáron,duóidúl-imordudulándo.
足りる-<(重いものが)>荷<主格>それから下る-<我々が>下手ドゥランド<対格>

「荷はそろってる。じゃあ、ドゥランドまで下ろう。」

運び人のくだけた言葉。duói「それから」は出来事の順序。dúl-imor「下る-1PL」は崖道の言葉で双数の代わりに複数で受ける形。くだけた話し方では語末の母音が落ち ombrélo → ombrél となる(語末が子音の dúl-imor は脱落しない)。

éso fálno káil

読み:エーソ ファルノ カイル

és-ofálnokáil
いる-<(重いものが)>薪<主格>乾いた

「薪は乾いている。」

冬支度の実用的な句。述語形容文で、重性主語 fálno に繋辞 éso が対応する。形容詞 káil は単数主格で無標識。

kráilim krailó kórvos.

読み:クライリン クライロー コルヴォス。

kráil-imkrail-ókórv-os
手に持つ-<私が>手に持つ-<〜するもの(重)・重性・対格>倉-<属格>

「私は倉の取っ手を持つ。」

動詞kráil-の1人称単数形。主語代名詞は一致語尾で省略し、対格の目的語として名詞句krailó kórvosを受ける。属格kórv-osは接尾辞-osを使う。

kráiso krailó kórvos.

読み:クライソ クライロー コルヴォス。

kráis-okrail-ókórv-os
割れる<〜し終えた>-<(重いものが)>手に持つ-<〜するもの(重)・重性・主格>倉-<属格>

「倉の取っ手が割れた。」

自動詞krás-の完了語根kráis-に重性単数主語krailóに対する一致語尾-oがつき、kráisoとなる。時制語形はないが完了相のため、文脈によっては現在結果的「割れている」とも取る。属格kórv-osは接尾辞-osを使う。

éso houmbrúndo un kórvoi.

読み:エーソ ホウンブルンド ウン コルヴォイ。

és-ohoumbrúndounkórv-oi.
いる-<(重いものが)>寄り合い<主格>内に倉-<与格>

「「倉の中に、寄り合いがある。」」

存在文。重性o語幹の単数主格は houmbrúndo そのまま。un+与格は「〜の中で」。

krúelo krélvo.

読み:クルーエロ クレルヴォ。

krúel-okrélvo
動く-<(重いものが)>鉤<主格>

「鉤が揺れている。」

壁や枠に取り付けた鉤などが、固定点を中心に小刻みに動く状態。道具の微細な揺れを述べる。

vróelo fáron un kórvoi.

読み:ヴローエロ ファーロン ウン コルヴォイ。

vróel-ofáronunkórv-oi.
ずれる-<(重いものが)>荷<主格>内に倉-<与格>

「倉の中で荷がずれている。」

un+与格で「〜の中で」。荷は重性なので動詞は3人称単数・重性の語尾を取る。

glünlúin, éso duléumo frél

読み:グリュンルーイン、エーソ ドゥレウモ フレール

glünlúin,és-oduléumofrél
凍りの頃いる-<(重いものが)>下の風<主格>寒い

「凍りの頃は、下の風が寒い。」

glünlúinは動詞の前に置かれる場面の枠。duléumoは重性語として重性の語形エソで受ける。frélは固体化や凍結の含みを持たず、冷気に触れる感覚を指す。

éso gromó némes frél

読み:エーソ グロモー ネーメス フレール

és-ogromóném-esfrél
いる-<(重いものが)>体<主格><私>-<属格>寒い

「私の体は寒い。」

gromóは重性の体。主語の名詞句はgromó némesで、属格は名詞の後ろに置く。述語のfrélは名詞句の後に置かれる。

éso áurmo só sáun.

読み:エーソ アウルモ ソー サウン。

és-oáurmosósáun.
be-<(重いものが)>smell<主格>this<重性>good

「この匂いはいい。」

日常会話で、身近にある匂いの良否を述べる文。主語名詞句 áurmo só は重性 o 語幹で、動詞 éso はこれに一致して 3 人称単数・重性の語尾 -o をとる。述語形容詞 sáun は重性単数主格の無語尾形。

áuro áurmo gráis es orénos.

読み:アウロ アウルモ グライス エス オレーノス。

áur-oáurmográisesorén-os.
rise-<(重いものが)>smell<主格>badfromedge-GEN.

「縁から悪い匂いが立ち上る。」

書物や年代記的な記述。主語名詞句 áurmo gráis は「名詞+形容詞」の順。動詞 áur- は重性の主語 áurmo に一致して語尾 -o をとる。es + 属格の orénos は「縁から」を表す出処の前置詞句。

éso vríndo só gléin.

読み:エーソ ヴリンド ソー グレーン。

és-ovríndosógléin.
いる-<(重いものが)>敷居<主格>この<重性>清い

「この敷居は清い。」

書物や儀礼の場向けの説明文。存在・繋辞の és- を動詞として動詞文に組み立てる。vríndo は主格で、重性o語幹では主格と対格が同形。述語の形容詞 gléin は主語 vríndo に一致するが、重性単数主格では語尾が現れない。

éun duloréno ílmo es orénos

読み:エウン ドゥロレーノ イルモ エス オレーノス

éundulorén-oílmoesorén-os
うんこぼれる-<(重いものが)>水<主格>から縁-<属格>

「「うん、水が縁からこぼれる。」」

日常会話で、手元の液体が縁を越えて落ちるのを指す短い発話。複合語 dulorén- は「下る」と「縁」から、液体が縁を越えて下へ行く意を表す。

anórel duloréno ílmo es orénos kórvos

読み:アノーレル ドゥロレーノ イルモ エス オレーノス コルヴォス

anóreldulorén-oílmoesorén-oskórv-os
昨日こぼれる-<(重いものが)>水<主格>から縁-<属格>倉-<属格>

「「昨日、倉の縁から水がこぼれた。」」

書物・帳簿的な記述。文法上の時制がないため、時を表す語 anórel を伴い、現在形で過去の出来事を記す。es の後に「縁」の属格があり、その後に置かれた「倉」の属格が縁の所属を示す。

þréulo krúndo un orénoi

読み:スレウロ クルンド ウン オレーノイ

þréul-okrúndounorén-oi
積もる-<(重いものが)>泥<主格>内に縁-<与格>

「縁に泥が積もっている。」

重性の名詞 krúndo「泥」が主語なので、動詞は 3 人称単数重性 -o をとる。un+与格で場所を示す。縁 orén の与格は orén-oi。

éso houméro só némei.

読み:エーソ ホウメーロ ソー ネーメイ。

és-ohoumérosóném-ei.
いる-<(重いものが)>袋<主格>この<重性><私>-<与格>

「私にはこの袋がある。」

日常会話の所有文。houméro は重性o語幹の単数で、主格と対格が同形。存在動詞 éso は、形態素としては és-o と分け、主語 houméro に一致して重性の語尾 -o をとる。持ち主は裸の与格で示す。

sén houméro sákos, ende.

読み:セーン ホウメーロ サーコス、エンデ。

sénhoumérosák-os,ende.
見る<命令法><あなたが>袋<対格>塩-<属格>どうぞ

「塩の袋を見てくれ、頼む。」

道具や荷を扱う場での短い依頼。houméro は対格も主格と同形。後置の sák-os は内容を表す属格で、「塩を入れた袋・塩用の袋」のように中身の質を強調する言い方になる。ende は縁の市で使われる決まり文句。

klonéro klóno só.

読み:クロネーロ クローノ ソー。

klonér-oklónosó.
膝が抜けてよろける-<(重いものが)>膝<主格>この<重性>

「この膝が抜けてよろけた。」

書物のような簡潔な文。体の部位を主語に取る用法で、完全に倒れるのではなく、一瞬だけ膝が抜けて踏ん張れる状態を指す。

lúin þrílo már, mé vandésa fáron.

読み:ルーイン スリーロ マール、メー ヴァンデーサ ファーロン。

lúinþríl-omár,mévand-és-afáron.
とき震える-<(重いものが)>手<主格><禁止・願いの打ち消し>量る-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>

「手が震えるときは、荷を量ってはならない。」

帳場や作法書に見る規則。時節 lúin 節は主節の前に置ける。手のみが一時的に震える(意味2)。主節は主語を言わない当為法なので軽性形 vandésa。

glǘno bormúndo kórvos.

読み:グリューノ ボルムンド コルヴォス。

glǘn-obormúndokórv-os.
凍る-<(重いものが)>開口部<主格>倉-<属格>

「倉の出入口が凍っている。」

実務・書物の簡潔な文。bormúndo を家以外の囲われた空間の開口部に拡張している。主語名詞句の中心語 bormúndo が重性o語幹単数なので、動詞は3SG.HV。

ké éso kúulo fóum?

読み:ケー エーソ クーロ フォーン?

kéés-okúulofóum?
<〜か>いる-<(重いものが)>鍋<主格>暖かい

「「鍋は暖かいのか。」」

日常会話での尋ね。主語 kúulo は重性o語幹なので、存在・描写の動詞 éso は3人称単数・重。形容詞 fóum は単数主格で無標。

lísa lisár símbo monþóros.

読み:リーサ リサール シンボ モンソーロス。

lís-alis-ársímbomonþór-os
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>印<対格>壁-<属格>

「書記は壁の印を書く。」

記録・帳簿向き。目的語的名詞句「壁の印」は、中心語 símbo の後ろに属格 monþóros を置く。monþór の単数属格は monþóros。

glünlúin, éso súm múl un hóumoi.

読み:グリュンルーイン、エーソ スーン ムール ウン ホーモイ。

glünlúin,és-osúmmúlunhóum-oi.
凍りの頃,いる-<(重いものが)>煤<主格>厚い内炉-<与格>

「凍りの頃には、炉の中に厚い煤がある。」

季節の記録文。glünlúin は時の語として動詞の前に置き、読点で区切る。存在文の動詞 és- は主語 súm が重性なので3人称単数重性語尾 -o をとる。形容詞 múl も重性単数主格で無標。un hóumoi は前置詞 un と炉の与格。

éso trélmo só, téir trélmul.

読み:エーソ トレルモ ソー、テール トレルムル。

és-otrélmosó,téirtrélm-ul.
いる-<(重いものが)>棚<主格>この<重性>三棚-<〜たちが>

「この棚は三段ある。」

意味2。多段棚の高さとしての trélmo を数える例。主語 trélmo は単数、述語名詞 téir trélmul は複数主格。用例では主語に原形 trélmo を立てる。

na veunkrúnim, na éso fáron némei.

読み:ナ ヴェウンクルーニン、ナ エーソ ファーロン ネーメイ。

naveunkrún-im,naés-ofáronném-ei.
<〜ない>負担を負う-<私が><〜ない>いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<与格>

「私は背負わない。私には荷がない。」

改まった場での婉曲な断り。直説法の否定は動詞の直前に na を置く。すくめりの動作を伴い、「私には荷がない=背負うものではない」と距離を置く。

éso nórlo só náum.

読み:エーソ ノルロ ソー ナウン。

és-onórlosónáum.
いる-<(重いものが)>寝床<主格>この<重性>柔らかい

「この寝床は柔らかい。」

日常の判断文。主語の nórlo が重性なので、存在・繋辞 éso は -o。述語形容詞 náum は主語に一致し、重性・単数・主格では語尾がない。指示詞 só は名詞句を閉じる。

raunérimor ráun ráimaros.

読み:ラウネーリモル ラウン ライマロス。

raunér-imorráunráimar-os.
従う-<我々が>流れ<対格>ライマル-<属格>

「私たちはライマルの流れ(家系)に従う。」

意味2の書物・系譜の唱え。抽象的な流れや家系を追う用法。目的語 ráun は重性語幹とされ、対格に語尾が付かない。属格 ráimaros は家名「ライマル」の属格。1人称複数動詞では人称が語尾に出、主語代名詞は省ける。

éso unlóur þróvo fóum

読み:エーソ ウンロール スローヴォ フォーン

és-ounlóurþróvofóum
いる-<(重いものが)>まだ熾火<主格>暖かい

「熾火はまだ暖かい。」

日常の会話文。存在・状態の文は「és-+主語+述語形容詞」の順。副詞 unlóur は動詞の直後に置く。熾火を重性o語幹名詞として扱い、動詞は3人称単数重性の -o をとる。

éso louríño mór némei.

読み:エーソ ロウリーニョ モール ネーメイ。

és-olouríñomórném-ei.
いる-<(重いものが)>皺<主格>深い<私>-DAT.

「私には深い皺がある。」

日常会話。存在文で、持ち主を裸の与格 némei で示す。対象 louríño は重性単数なので存在動詞は és-o。形容詞 mór は、この比喩では皺の深さを含む。

funeléra lisár ré éso louríño rúndel ín an orénoi.

読み:フネレーラ リサール レー エーソ ロウリーニョ ルンデル イーン アン オレーノイ。

funelér-alis-árréés-olouríñorúndelínanorén-oi.
書き留める-<(軽いものが)>書く-<〜する人><〜と(節)>いる-<(重いものが)>小瀬<主格>速い一上手縁-<与格>

「書記は「縁の上手に速い小瀬がある」と書き留める。」

書物・記録の場面。ré の後の引用節は存在文。存在文で an orénoi を場所として置くため、名詞句を不定の閉じ ín で閉じてから前置詞句を置く。この閉じがないと、形容詞のすぐ後ろの an+与格は比較として読まれる。形容詞 rúndel は名詞の後ろに置く。

éso waró gróm

読み:エーソ ワロー グローン

és-owarógróm
いる-<(重いものが)>水がめ<主格>重い

「水がめは重い。」

家庭で器の重さを言う日常文。waróは重性o語幹の名詞で、主語は重性単数。述語の形容詞grómは主語に一致し、重性主格の語尾はつかない。

un kórvoi, éso unlóur vrúndo só húmel.

読み:ウン コルヴォイ、エーソ ウンロール ヴルンド ソー フーメル。

unkórv-oi,és-ounlóurvrúndosóhúmel.
内倉-<与格>,いる-<(重いものが)>まだ束<主格>この<重性>湿った

「倉の中では、この束はまだ湿っている。」

場面の枠に前置詞句を置いた状態文。見出し語 vrúndo は単数主格のまま使う。

seiméndo duléumo.

読み:セイメンド ドゥレウモ。

seim-énd-oduléumo.
静まる-<〜しますように>-<(重いものが)>下の風<主格>

「下の風が収まりますように。」

重性名詞 duléumo を主語にとる儀礼的な願い。願望法三人称単数・重性 -o を使う。語尾 -énd- が強勢を取り、語根側の強勢は立たない。

ké vélo grél?

読み:ケー ヴェーロ グレール?

kévél-ogrél?
<〜か>渇く-<(重いものが)>のど<主格>

「喉が渇いているか。」

くだけた日常の問い。のどは肉体の部分なので重性で、動詞は3人称単数・重性の語尾をとる。

krúelo unlóur dulglüno só.

読み:クルーエロ ウンロール ドゥルグリュノ ソー。

krúel-ounlóurdulglünosó.
動く-<(重いものが)>まだつらら<主格>この<重性>

「「まだ、このつららは揺れている。」」

凍りの頃の日常の言葉。重性o語幹の単数主格で、指示詞 só を後ろに添えている。副詞 unlóur は動詞の直後に置く。

un drúnoroi, glǘno þreílo.

読み:ウン ドルーノロイ、グリューノ スレイロ。

undrúnor-oi,glǘn-oþreílo.
内に崖道-<与格>凍る-<(重いものが)>しぶき<主格>

「崖道では、しぶきが凍る。」

凍りの頃の日常用法。un+与格で「〜の中で」という場面の枠を作る。þreílo は重性 o 語幹で、単数主格は citation form を保つ。

un lóuroi, púlo þreílo nóumo.

読み:ウン ローロイ、プーロ スレイロ ノーモ。

unlóur-oi,púl-oþreílonóumo.
内に瀬-<与格>軽く叩く-<(重いものが)>濺ぎ<主格>顔<対格>

「瀬の中では、濺ぎが顔を叩く。」

意味2の用法。早瀬のそばで身体にかかる範囲の水飛沫を表す。púl- は他動詞で、主語 þreílo に合わせて3人称単数・重性の語尾 -o をとる。

géla vándar es snáuros só du orén.

読み:ゲーラ ヴァンダル エス スナウロス ソー ドゥ オレーン。

gél-avándaressnáur-ossóduorén.
行く-<(軽いものが)>商人<主格>から町-<属格>この<重性>下手縁<対格>

「商人はこの町を下って縁へ行く。」

移動の動詞 gél- に、起点の es+属格、下向きの方向の du+対格を続ける。商人は人なので動詞の一致は軽性 -a。snáur の属格は重性 -os。du orén は「下手へ、縁へ」の定型句。

éso þúlo húmel

読み:エーソ スーロ フーメル

és-oþúlohúmel
いる-<(重いものが)>鼻<主格>湿った

「鼻は湿っている。」

医の言葉や書物の地の文のような、状態を述べる文。動詞の後ろに裸の与格がないため存在文ではなく状態述語として読む。þúlo は重性なので存在・繋辞 éso は重性3単 -o をとる。改まった文書では婉曲表現に言い換えることがあるが、医の言葉では直接 þúlo を使う。

snémbo már virán.

読み:スネンボ マール ヴィラーン。

snémb-omárvir-án.
なぞる-<(重いものが)>手<主格>言葉-<対格>

「手が、言葉の上をなぞる。」

詩的用法。主語 már は体の部分なので重性であり、動詞は3人称単数重性 -o をとる。目的語 virán は抽象的な「言葉」だが、書かれた言葉の表面を指先で触る意に転じた用法。

éso tendándo véun.

読み:エーソ テンダンド ヴェウン。

és-otendándovéun.
いる-<(重いものが)>織り機<主格>空

「「織り機は空だ。」」

機に布も経糸も掛かっていない状態を述べる文。形容詞 véun は重性単数では語尾を取らない。空の機という言い方は、織り手がいない・手が止まっているという家の様子を暗示する表現としても好まれる。

un kórvoi, éso tendándo.

読み:ウン コルヴォイ、エーソ テンダンド。

unkórv-oi,és-otendándo.
内に倉-<与格>いる-<(重いものが)>織る所<主格>

「「倉の中に織る所がある。」」

un kórv-oi は「倉の中で」。ここでは tendándo を機具そのものとしてではなく、機を据えた場所・織場として指す意味で使う。動詞 éso は主語 tendándo に合わせて重性の形になる。

éso þúlno mónos klér.

読み:エーソ スルノ モーノス クレール。

és-oþúlnomón-osklér.
いる-<(重いものが)>床<主格>石-<属格>冷たい

「石の床は冷たい。」

日常の会話。重性子音語幹 món の属格単数は mónos。名詞句では中心語 þúlno の後ろに属格を置いて「石の床」と言い表す。述語形容詞 klér は名詞句の後に置かれる。

éso kórviño un kórvoi.

読み:エーソ コルヴィニョ ウン コルヴォイ。

és-okórviñounkórv-oi.
いる-<(重いものが)>箱(小倉)<主格>内倉-<与格>

「箱が倉の中にある。」

所在表現。存在文で所在を un+与格で示す。

éso bélo krém

読み:エーソ ベーロ クレーン

és-obélokrém
いる-<(重いものが)>腹<主格>痛い

「腹は痛い。」

書物や記録で身体状態を記すような、存在動詞を添えた陳述。くだけた場では動詞を立てない bélo krém になる。腹の痛みは空腹を含む。

ké éso krénmo tásei?

読み:ケー エーソ クレンモ ターセイ?

kéés-okrénmotás-ei?
<〜か>いる-<(重いものが)>環<主格><あなた>-<与格>

「あなたに環はあるか。」

日常の尋ね。所有や存在は「ある」+持ち主の与格で表す。krénmo は重性o語幹で、主格と対格が同形。éso は主語 krénmo に一致して重性単数の語尾 -o。

þrúno ílmo orén.

読み:スルーノ イルモ オレーン。

þrún-oílmoorén.
削る-<(重いものが)>水<主格>縁<対格>

「水が縁を削る。」

自然の作用。主語 ílmo は重性なので動詞は3人称単数重性をとる。orén は重性の対格。

éso món þrúnen.

読み:エーソ モーン スルーネン。

és-omónþrún-en.
いる-<(重いものが)>石<主格>表面を整える-<〜した・〜された>

「石は表面を整えられて平らになっている。」

仕上げの結果状態。存在+分詞で受け身に相当する。主語 món は重性なので、分詞 þrúnen に主格接語はつかない。

klélo dulíño só

読み:クレーロ ドゥリーニョ ソー

klél-odulíñosó
走る-<(重いものが)>小滝<主格>この<重性>

「この小滝は流れている」

書物や見聞録の地の文。主語が重性o語幹の単数のため、動詞は3人称単数重性語尾 -o をとる。指示詞 só は主語名詞句に後置。動詞 klél- は水流に使う「走る」。

éso dulíño némes múl

読み:エーソ ドゥリーニョ ネーメス ムール

és-odulíñoném-esmúl
いる-<(重いものが)>ひげ<主格><私>-<属格>厚い

「私のひげは厚い」

顔の毛の直接呼称 dulsóila に対して、下へ流れ落ちる水のイメージを持つ婉曲呼称。存在・繋辞 éso は重性の主語に一致する。持ち主は属格 némes で表す。述語形容詞 múl は主語の重性単数に一致し、主格では無語尾。日常会話や書簡で、自分のひげを述べる場面に使える。

vrúelo fáron.

読み:ヴルーエロ ファーロン。

vrúel-ofáron.
懸かる-<(重いものが)>荷<主格>

「荷が懸かる。」

綱場で荷が輪や鉤に捕まり、宙に浮いて動かない状態を述べる基本的な自動詞用法。主語 fáron は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。

lúin léimim fáron, kruntiúlo marfúnel.

読み:ルーイン レーミン ファーロン、クルンティウーロ マルフーネル。

lúinléim-imfáron,kruntiúl-omarfúnel.
とき置く-<私が>荷<対格>支えが軋む-<(重いものが)>腕木<主格>

「「荷を置くと、腕木が軋む。」」

荷を受け止めるときの通常の作動音を示す日常表現。kruntiúl-の自然な主語は腕木・綱・橋脚などの支えで、ここではmarfúnelが重性・単数の主語。

lúin kruntiúlo marfúnel, þalíþa funelár fáron.

読み:ルーイン クルンティウーロ マルフーネル、サリーサ フネラール ファーロン。

lúinkruntiúl-omarfúnel,þal-íþ-afunelárfáron.
とき支えが軋む-<(重いものが)>腕木<主格>止まる-<〜させる>-<(軽いものが)>綱番<主格>荷<対格>

「「腕木が軋むと、綱番は荷を止める。」」

現場の定型的操作。þal-「止まる」に使役接尾辞-íþ-が付いたþalíþ-「止める」を用いる。主語funelárは軽性・単数、目的語fáronは重性・単数で対格が主格と同形。

sléna endríña es snóivos.

読み:スレーナ エンドリーニャ エス スノイヴォス。

slén-aendríñaessnóiv-os
顔を出す-<(軽いものが)>子<主格>から窓-<属格>

「子どもが窓から顔を出す。」

家庭や遊びの場での日常的な文。slén- は自動詞で、主語 endríña は主格のまま。出所は es+属格で表す。主語 endríña は文法上軽性なので、動詞は軽性3人称単数の語尾になる。

ái, mombrúumo brés némes.

読み:アイ、モンブルーモ ブレース ネーメス。

ái,mombrúum-obrésném-es.
おや,石落ちる-<(重いものが)>胸<主格><私>-<属格>

「おや、胸がすっとした(ほっとした)。」

くだけた日常の独白・短い応答。主語は「私の胸」。体の部分名詞は文法上重性なので、動詞は3人称単数・重性の-oで受ける。直接「安堵した」と言わず、身体から重みが落ちる感覚として述べる婉曲表現。改まった場では使わない。

na mombrúumo unlóur brés toráres.

読み:ナ モンブルーモ ウンロール ブレース トラーレス。

namombrúum-ounlóurbréstorár-es.
<〜ない>石落ちる-<(重いものが)>まだ胸<主格>客-<属格>

「客の胸はまだすっとしない(心配が残り、ほっとしていない)。」

長い懸念がまだ解けていないことを言う、くだけた観察・愚痴。否定のnaは動詞の前に置き、unlóur「まだ」は動詞の直後に置く。主語「客の胸」が重性なので動詞は3人称単数・重性の-oで受ける。

þrélo bélo

読み:スレーロ ベーロ

þrél-obélo
腹が空く-<(重いものが)>腹<主格>

「腹が空いている。」

空腹を体の部位として述べる言い方。腹 bélo は重性o語幹なので、動詞は重性の3人称単数 þrélo をとる。人の主語と同じ意味になる日常句。

houmþálo némei.

読み:ホウンサーロ ネーメイ。

houm-þál-oném-ei.
炉-止まる-<(重いものが)>私-<与格>

「炉が冷えます(=私は腹が空く)。」

家庭生活での婉曲な日常表現。houmþál- は「炉」を語中に取り込み、経験者・持ち主は与格で示す。取り込まれた炉は重性なので、動詞は重性3人称単数接尾辞 -o をとる。

houmþálo dóulin némei.

読み:ホウンサーロ ドーリン ネーメイ。

houmþál-odóulinném-ei.
炉が冷える-<(重いものが)>もう私-<与格>

「炉が冷えました(=私はもう腹が空きました)。」

食事を始める頃に使える定型。houmþál- は houm「炉」+þál-「止まる」の複合動詞として一語で受け、炉が止まって食事の支度が整った/腹が空いた合図を表す。相の副詞 dóulin は動詞の直後に置く。

na þálo síndo.

読み:ナ サーロ シンド。

naþál-osíndo
<〜ない>止まる-<(重いものが)>涙<主格>

「涙が止まらない。」

感情の高まりを述べる日常の文。þál-「止まる」は自動詞なので、主語síndoに語形を合わせる。síndoは重性主語なので、動詞は3人称単数・重性の-oとなる。事実の否定なので小辞naを使う。

þálo seníño só, endríña.

読み:サーロ セニーニョ ソー、エンドリーニャ。

þál-oseníñosóendríña
止まる-<(重いものが)>涙(婉曲・指小)<主格>この<重性>子

「「涙が止まりますよ、子ども。」」

子守唄で幼い子どもに語りかける場面。涙を直接大きな語で言わず、seníño として小さく言い表している。呼びかけの語は名詞のままで、日常では呼格の語尾を使わない。

éso préndo snóil.

読み:エーソ プレンド スノイル。

és-opréndosnóil.
いる-<(重いものが)>路地<主格>狭い

「路地は狭い。」

描写の場面。繋辞 éso は主語の重性と一致する。形容詞 snóil は名詞の後に置かれ、重性単数主格では接辞を添えない。

ái! senkráno senó némes.

読み:アイ!センクラーノ セノー ネーメス。

ái!senkrán-osenóném-es.
おや!目が止まる-<(重いものが)>目<主格><私>-<属格>

「おや!私の目が、思わず見開かれた。」

驚きの感嘆詞 ái を添えた日常の言い方。身体部位の所有は名詞に属格代名詞を後接する。主語が単数の目なので、動詞は重性3SG.HV。両目を指す文脈では双数の主語形も取りうる。

lóima kelár loimán, senkráno senó keláres.

読み:ロイマ ケラール ロイマーン、センクラーノ セノー ケラーレス。

lóim-akel-árloim-án,senkrán-osenókel-ár-es.
唱える-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>詞-<対格>,目が止まる-<(重いものが)>目<主格>伐る-<〜する人>-<属格>

「樵が詞を唱えると、樵の目は思わず見開かれた。」

儀礼の詞を唱える場面を想定した文。森の言葉ではこの語が通常の言い方として使われ、宮廷では「目が硬くなる」という語感が粗野に響くため、婉曲的な言い方に置き換えることがある。loimán は loimá「詞」の対格。

ké vráno snóimo némes

読み:ケー ヴラーノ スノイモ ネーメス

kévrán-osnóimoném-es
<〜か>硬直する-<(重いものが)>肩<主格><私>-<属格>

「私の肩はこわばっていますか。」

日常の体の訴え。身体部分を示すsnóimoは重性として、動詞は3人称単数重性の-oで受ける。所有は、主格の身体名詞の後ろに1人称属格を置く。

þalíþa andaulóura elþán hóumos.

読み:サリーサ アンダウローラ エルサーン ホーモス。

þal-íþ-aandaulóuraelþ-ánhóum-os.
止まる-<〜させる>-<(軽いものが)>祖母<主格>火-<対格>炉-<属格>

「祖母は炉の火を消す。」

家庭の日常。人間は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。elþá は軽性a語幹で単数対格 elþán。名詞句 elþán hóumos は「炉の火」。

aurénde selvá es grélos.

読み:アウレンデ セルヴァー エス グレーロス。

aur-énd-eselváesgrél-os.
昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>息<主格>からのど-<属格>

「息がのどから昇りますように。」

声・息・言葉が上へ昇るという信仰に基づく祝祷文。aur- の願望法軽性3人称単数は軽性の主語 selvá に一致する。前置詞 es に重性名詞 grél の属格 grélos をとり、出所「のどから」を表す。

ké éso grél táses klér?

読み:ケー エーソ グレール ターセス クレール?

kéés-ogréltás-esklér?
<〜か>いる-<(重いものが)>のど<主格><あなた>-<属格>冷たい

「あなたののどは冷たいですか。」

日常会話で身体の状態を尋ねる文。grél は身体部位としては重性の名詞とみなす。所有は名詞に属格 tás-es を後置する。述語形容詞 klér は重性単数の主格で無標識。

fléla þóuma es snélos

読み:フレーラ ソーマ エス スネーロス

flél-aþóumaessnél-os
漏れる-<(軽いものが)>煙<主格>から屋根-<属格>

「屋根から煙が漏れている。」

日常の描写。þóuma「煙」は軽性で、動詞は軽性の-aをとる。snélo「屋根」は重性o語幹の属格snélos。屋根の継ぎ目などからの漏れを暗示する。

flélau selvá si tíula es múndos snálenos

読み:フレーラウ セルヴァー シ ティーウラ エス ムンドス スナーレノス

flél-auselvásitíulaesmúnd-ossnál-en-os
漏れる-<双数>息<主格>と音<主格>から口-<属格>閉じる-<〜した・〜された>-<属格>

「閉じた口から息と音が漏れている。」

口を閉じたままで、意に反して息や音がわずかに漏れる場面。selvá「息」とtíula「音・声」の二単数主語をsiで並べ、動詞を双数-auにする。出所はes+属格の名詞句で、中心名詞múndos「口」の後に、重性・単数・属格に一致する分詞snálenos「閉じた」が続く。snál-en-osは動詞根snál-+PTCP+GENとして切る。

sénim krélan hóumos.

読み:セーニン クレーラン ホーモス。

sén-imkréla-nhóum-os.
見る-<私が>向かい-<対格>炉-<属格>

「炉の向かいが見える。」

kréla を直接目的語に取る名詞用法。中心名詞 kréla の対格 krélan の後ろに、参照点の炉の属格 hóumos を置く。

ésa kréla hóumos mór.

読み:エーサ クレーラ ホーモス モール。

és-akrélahóum-osmór.
いる-<(軽いものが)>向かい<主格>炉-<属格>広い

「炉の向かいは広い。」

kréla を主語に使う名詞用法。軽性名詞なので状態の動詞は -a。参照点の炉の属格 hóumos は中心名詞 kréla の後ろに置く。mór は空間について「広い」の意味に使う。

tróuno món es dúnos.

読み:トローノ モーン エス ドゥーノス。

tróun-omónesdún-os.
転がる<〜し終えた>-<(重いものが)>石<主格>から丘-<属格>

「石が丘から転がった。」

記録文のような平叙。完了相は u の語根 trún- が ou に変わる。es+属格で「〜から」を表し、出どころを示す。

trúno fáron sáunin un kéndoroi.

読み:トルーノ ファーロン サウニン ウン ケンドロイ。

trún-ofáronsáun-inunkéndor-oi.
転がる-<(重いものが)>荷<主格>良い-<〜して・〜く>内に市-<与格>

「荷が市の中でうまく回る。」

市や取引の場で、商いが順調に進むことを「荷がうまく転がる」と言って表す。形容詞 sáun に -in をつけて「よく・うまく」の意の副詞を作る。un+与格で「〜の中で」。

éso vól sálen.

読み:エーソ ヴォール サーレン。

és-ovólsál-en
いる-<(重いものが)>地面<主格>ならす-<〜した・〜された>

「地面は平らだ。」

述語形容文。繋辞 és- を文頭に置き、主語 vól の述語として sálen を後に置く。主語が重性なので、繋辞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。

na krélo tanó só.

読み:ナ クレーロ タノー ソー。

nakrél-otanósó
<〜ない>足りる-<(重いものが)>弦<主格>この<重性>

「この弦は張りが足りない。」

弓や楽器の点検で、張りが足りないと述べる言い方。主語tanóは重性o語幹なので、krél-「足りる」は3人称単数・重性の-oを用いる。tanóは弦そのものの張力・緊張に焦点を当てる語として使われる。

na buléro búl só.

読み:ナ ブレーロ ブール ソー。

nabulér-obúlsó.
<〜ない>絡まる-<(重いものが)>根<主格>この<重性>

「この根は、からみ合わない。」

否定小辞 na は動詞の直前に置く。主語 búl「根」は重性なので、動詞は3人称単数重性 -o を受ける。根・糸がからみ合う原義。

bríno filó só.

読み:ブリーノ フィロー ソー。

brín-ofilósó
ほつれる-<(重いものが)>縫い目<主格>この<重性>

「この縫い目がほどけた。」

日常会話。修理前の状態。brín は自動詞で、糸筋が布面からほつれる意。filó は「ほどけた糸筋」の対象として使える。

ké éso þám tásei?

読み:ケー エーソ サーン ターセイ?

kéés-oþámtás-ei?
<〜か>いる-<(重いものが)>釘<主格><あなた>-<与格>

「釘はあるか。」

日常の所有の問い。þám は重性名詞なので存在動詞は3単重性 éso になる。所有は「持つ」という動詞ではなく、被所有物の存在と持ち主の与格で表す。目上には ké を使わない。

mé duliþésa ruunkréinul es drúnoros.

読み:メー ドゥリセーサ ルーンクレーヌル エス ドルーノロス。

médul-iþ-és-aruunkréin-ulesdrúnor-os.
<禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>背負い枠-<〜たちを>から崖道-<属格>

「崖道から背負い枠を落としてはならない。」

記録や法文で使う当為法。主語を言わない当為法は、軽性の単数形になる。背負い枠の複数直接目的語は、重性名詞の複数語尾 -ul を受けた ruunkréinul となる。ここでは、荷そのものの墜落ではなく、運び人の道具である背負い枠を崖道から落としていけないという規則として書かれている。

tóra þúmva es orénos.

読み:トーラ スンヴァ エス オレーノス。

tór-aþúmvaesorén-os.
来る-<(軽いものが)>口笛<主格>から縁-<属格>

「「縁から口笛が聞こえてきた。」」

主語を音として軽性とみなし、動詞は tór-a をとる。es は出所を表し、後ろに属格を伴う。

frunéndes búl fúnelos, ende.

読み:フルネンデス ブール フーネロス、エンデ。

frun-énd-esbúlfúnel-os,ende.
芯直す-<〜しますように>-<あなたが>芯<対格>綱-<属格>どうぞ

「綱の芯を直してくれませんか、頼む。」

同じ段の相手に頼む願望法。búl は「根」の語で、ここでは綱の芯・筋を指す用法。fúnelos は綱の属格。

hoinénde, faronár! éso bóral fóum.

読み:ホイネンデ、ファロナール!エーソ ボーラル フォーン。

hoin-énd-e,faronár!és-obóralfóum.
帰る-<〜しますように>-<(軽いものが)>,運び人<主格>!いる-<(重いものが)>家<主格>暖かい

「「おかえり、運び人。家は暖かい。」」

遠役や崖道から帰った運び人を出迎える場面。hoinénde のあとに、戻った者の居場所としての家が今も暖かいことを述べる。bóral は重性なので存在動詞は éso。形容詞は主格無標で名詞に後置する。

éso kranó maranlóuros krán.

読み:エーソ クラノー マランローロス クラーン。

és-okranómaranlóur-oskrán.
いる-<(重いものが)>爪<主格>親指-<属格>硬い

「親指の爪は硬い。」

身体描写・書物的な文。名詞句は「名詞+属格」の順で、kranó maranlóuros「親指の爪」とする。maranlóurは重性の単数属格maranlóurosとなる。

éso kranó krán.

読み:エーソ クラノー クラーン。

és-okranókrán
いる-<(重いものが)>爪<主格>硬い

「爪が硬い。」

身体の状態を述べる日常の叙述。存在・繋辞ésoが文頭。主語kranóが重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性-o。形容詞kránは重性単数主格で無標。

sénim kranó krunós.

読み:セーニン クラノー クルノース。

sén-imkranókrun-ós
見る-<私が>硬い先<対格>棒-<属格>

「棒の硬い先を見ている。」

道具・木材の手入れ確認。kranóは身体語から器物の硬い縁・先端へ転じた用法。名詞句は「中心名詞+属格」で、対象を示す。krunóの属格は重性o語幹の-os。

salmúnau dáun es kórvos.

読み:サルムーナウ ダウン エス コルヴォス。

salmún-audáuneskórv-os.
出る-<双数>二人<主格>から倉-<属格>

「二人は倉から出ていく。」

社会・記録向けの文。双数の主語を表す dáun は省かず、双数の動詞語尾 -au をとる。es+属格で、内側の場所から離れる出発点を示す。倉のような囲われた場から外へ移る動きを表し、意味2の用法に合う。

tául ruunó fáronos!

読み:タウル ルーノー ファーロノス!

táulruunófáron-os
取る<命令法><あなたが>後ろ<対格>荷-<属格>

「「荷の後部を持て。」」

担ぎ荷の荷口と反対側の後端を指す用法。命令法では直接目的語の格標示がつかない。

ké éso ruunó táses klér?

読み:ケー エーソ ルーノー ターセス クレール?

kéés-oruunótás-esklér
<〜か>be-<(重いものが)>後ろ<主格><あなた>-<属格>冷たい

「「あなたの背(後ろ側)は冷たいか。」」

人体の背面、背中から尻にかけての背面を表す用法。所有は名詞の後ろに属格の代名詞を置く。

ké éso ráuvo glóur?

読み:ケー エーソ ラウヴォ グロール?

kéés-oráuvoglóur?
<〜か>いる-<(重いものが)>森<主格>緑

「森は緑か。」

日常の会話文。疑問は文頭の ké で作る。繋辞 éso は主語 ráuvo が重性・単数なので -o をとる。述語形容詞 glóur は主語の性・数・格に一致し、重性・単数・主格では無標で現れる。この文では、森の通常の緑色を尋ねる意味で使われている。

sórel, éso ráuvo glóur.

読み:ソーレル、エーソ ラウヴォ グロール。

sórel,és-oráuvoglóur.
今日,いる-<(重いものが)>森<主格>緑

「今日は、森は緑だ。」

書物や年代記のような簡潔な記述。時詞 sórel を動詞の前に置いた場面の枠。主文は繋辞 éso に主語 ráuvo、述語形容詞 glóur が続く。glóur はここでは、葉や樹冠がもつ色としての緑を述べる。

tóra faronár es drúnoros.

読み:トーラ ファロナール エス ドルーノロス。

tór-afaron-áresdrúnor-os.
来る-<(軽いものが)>荷-<〜する人>から崖道-<属格>

「運び人が崖道から来る。」

縁の市へ荷を上げる場面。esは方向を問わない「〜から」で、重性名詞drúnorの属格drúnorosと組む。faronárは人なので動詞は軽性3単-a。

kláno plíndo húmel krúloi

読み:クラーノ プリンド フーメル クルーロイ

klán-oplíndohúmelkrúl-oi
貼りつく-<(重いものが)>荷札<主格>湿った壁-<与格>

「湿った荷札が壁に貼りつく。」

主語 plíndo は HV(荷札は材木由来のため重性)。貼りついた先は与格 krúl-oi で示す。húmel は単数主格で無表示。意図的な貼り付けではなく、湿気が原因で紙・木札などが表面から離れなくなった場面。

kláno súm plánei

読み:クラーノ スーン プラーネイ

klán-osúmplán-ei
こびりつく-<(重いものが)>煤<主格>帳簿-<与格>

「煤が帳簿にこびりつく。」

súm「煤」は HV の不可名詞として扱う。貼りついた先 plána「帳簿」は LT の a語幹で、与格は plán-ei。書物・帳簿の管理に関わる場面。払い落としがむずかしい煤のつき方。

éso fáron só navánden

読み:エーソ ファーロン ソー ナヴァンデン

és-ofáronsóna-vánd-en
いる-<(重いものが)>荷<主格>この<重性><〜ない>-量る-<〜した・〜された>

「この荷は取るに足らぬ。」

縁の市で品物を値踏みする日常の場面。形容詞は主語の重性単数主格と一致し、語尾を添えない。実際の品物に直接向けると切り捨てが強い。

éso króndel só gróm.

読み:エーソ クロンデル ソー グローン。

és-okróndelsógróm
いる-<(重いものが)>石の定め<主格>この<重性>重い

「この石の定めの効力はこの場で重い。」

日常の縁や倉で、石を据えて立てた場規則の効力を口に出す言い方。króndel は石そのものを規則の本体とみなす語として重性子音語幹。指示詞 só は重性単数で名詞句を閉じ、gróm はその外で述語形容詞として主語に一致する。

klúno món un drúmoi.

読み:クルーノ モーン ウン ドルーモイ。

klún-omónundrúm-oi.
埋もれる-<(重いものが)>石<主格>内に苔-<与格>

「石は苔に埋もれている。」

日常。主語は埋もれる対象。un+与格で「〜の中に」を示し、苔を覆い層として述べる。mónは重性子音語幹で、主格単数は無標。

klúno gólvo un krúndoi.

読み:クルーノ ゴルヴォ ウン クルンドイ。

klún-ogólvounkrúnd-oi.
埋もれる-<(重いものが)>旧道<主格>内に泥-<与格>

「旧道は泥に埋もれている。」

記録文。主語はgólvo「旧道」。泥の中に沈んで、道の痕跡が取り出せなくなっている状態を示す。主語が重性o語幹なので動詞は-oで受け取る。

tóro brinó fúnelos.

読み:トーロ ブリノー フーネロス。

tór-obrinófúnel-os.
来る-<(重いものが)>ほつれ<主格>綱-<属格>

「綱のほつれが生じる。」

作業場や崖道で、綱の端からほつれが出ることを言う日常会話。動詞 tóro は主語 brinó が重性なので 3 単重性 -o になる。

ké éso brinó símbos?

読み:ケー エーソ ブリノー シンボス?

kéés-obrinósímb-os?
<〜か>いる-<(重いものが)>摩耗<主格>印-<属格>

「印の摩耗があるか。」

帳簿・荷札・目印などの刻み・印が摩耗して薄れるかどうかを問う、市や帳場での言い方。ké を文頭に置いてはい・いいえの問いを作る。

éso brinó kráunes.

読み:エーソ ブリノー クラウネス。

és-obrinókráun-es.
いる-<(重いものが)>風化<主格>露岩-<属格>

「露岩の風化がある。」

自然の露岩や切り石について、状態を述べる日常・記録の言い方。存在文で、重性o語幹名詞 brinó を主語にとる。kráun は軽性子音語幹で、単数属格は -es。

dúlo fróumo.

読み:ドゥーロ フローモ。

dúl-ofróumo
下る-<(重いものが)>荷車<主格>

「荷車は下りていく。」

fróumo を主語に取る文。fróumo は重性o語幹の単数主格。動詞 dúlo は重性の単数主語に一致する。

éso dreumó só gróm

読み:エーソ ドレウモー ソー グローン

és-odreumósógróm
いる-<(重いものが)>炭<主格>この<重性>重い

「この炭は重い(上質の黒炭だ)。」

日常で質を評するときの文。存在・繋辞の és- が3人称単数・重性の -o を取り、主語 dreumó に合わせる。dreumó só は「この炭」。形容詞 gróm は動詞句の述語として働き、重性の主格形をとる。ここでの重さは単なる物理的な重みではなく、火力が安定した良質な黒炭のしるしとして言うことがある。

éso munándo húmel

読み:エーソ ムナンド フーメル

és-omunándohúmel
いる-<(重いものが)>土間<主格>湿った

「土間は湿っている。」

書物・描写。存在文は és-+主語+述語。munándo は重性o語幹で、動詞は重性単数 -o。

lúin fǘro ílmo, kúulimor tambór.

読み:ルーイン フューロ イルモ、クーリモル タンボール。

lúinfǘr-oílmo,kúul-imortambór
とき沸く-<(重いものが)>水<主格>煮る-<我々が>雑穀<対格>

「水が沸くと、我らは雑穀を煮る。」

日常の炊事。時間節を lúin で導き、主節を続ける。主語「我ら」は動詞語尾に含み、名詞では繰り返さない。重性名詞 tambór の対格は主格と同形。

éso unlóur nímbo míil.

読み:エーソ ウンロール ニンボ ミール。

és-ounlóurnímbomíil.
いる-<(重いものが)>まだ乳<主格>ほのかな

「乳はまだ、ほのかな甘みがある。」

味見の場面。unlóur「まだ」を伴い、甘みが完全に立ち上がらず、わずかに感じられる程度を表す。

ké éso filplén tásei?

読み:ケー エーソ フィルプレーン ターセイ?

kéés-ofilpléntás-ei?
<〜か>存在-<(重いものが)>数え盤<主格><あなた>-<与格>

「あなたには数え盤があるか。」

帳場や市での日常会話。所有は存在動詞と与格で表し、持たれるもの filplén が主語になって動詞に一致する。filplén は重性子音語幹として扱う。

éso fildúror lóun

読み:エーソ フィルドゥーロル ローン

és-ofildúrorlóun
存在-<(重いものが)>列<主格>長い

「列は長い。」

整列用の線に沿って並んだものの並びの長さ。存在の動詞és-oを入れて名詞述語文にする。

éso fildúror snóil

読み:エーソ フィルドゥーロル スノイル

és-ofildúrorsnóil
存在-<(重いものが)>下がり線<主格>狭い

「下がり線は狭い。」

地面や石段に引かれた整列用の目印線そのものの幅。

krúelo vrunó

読み:クルーエロ ヴルノー

krúel-ovrunó
動く-<(重いものが)>巻き胴<主格>

「巻き胴が動いている。」

降ろし場で巻き胴が動き始めることを告げる文。重性o語幹の名詞 vrunó を主語に受け、動詞は重性の3人称単数語尾 -o をとる。時制や相は語形には表れない。

na éso vrunó þúumo

読み:ナ エーソ ヴルノー スーモ

naés-ovrunóþúumo
<〜ない>いる-<(重いものが)>巻き胴<主格>車輪<主格>

「巻き胴は車輪ではない。」

作法書や技術書で、巻き胴と車輪の違いを区別する定義文。否定の繋辞文では否定の語 na を文頭に置き、動詞は語根 és と3人称単数重性の語尾 -o に分けて分析する。主語 vrunó と述語名詞 þúumo は主格で置く。

éso snulvéumo klér.

読み:エーソ スヌルヴェウモ クレール。

és-osnulvéumoklér.
存在-<(重いものが)>穴風<主格>冷たい

「穴風が冷たい。」

日常の室内で、壁や窓の穴から入る風が冷たいと述べる文。述語形容文は繋辞 éso を文頭に置き、主語 snulvéumo を重性単数で受ける。

éso snulvéumo snóil.

読み:エーソ スヌルヴェウモ スノイル。

és-osnulvéumosnóil.
存在-<(重いものが)>風穴<主格>狭い

「風抜けが狭い。」

小屋や寝床の検めで、風の通るすき間そのものが狭いと言う場面。風の通り道そのものを指す用法。

anórel, bláimo gandér.

読み:アノーレル、ブライモ ガンデール。

anórel,bláim-ogandér.
昨日曲がる<〜し終えた>-<(重いものが)>硬木<主格>

「昨日、硬木が曲がった。」

年代記風の書物の文。時制を表す語形はない。完了語根 bláim- と時の語 anórel が過去の読みを取り出す。主語 gandér は重性子音語幹名詞の単数主格なので、動詞は 3 単・重の -o をとる。

ké éso þéumo húmel?

読み:ケー エーソ セウモ フーメル?

kéés-oþéumohúmel?
<〜か>いる-<(重いものが)>肩掛け<主格>湿った

「肩掛けは湿っているか。」

ké は文頭に置くはい/いいえの問いの小辞。éso は重性単数の主語 þéumo に一致する。述語形容詞 húmel は重性単数の無標識形。衣類や道具の状態を確認する場面。

þóro húlmo.

読み:ソーロ フルモ。

þór-ohúlmo.
立つ-<(重いものが)>柵<主格>

「柵が立っている。」

叙述文。柵は重性名詞なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。

éso auró némei.

読み:エーソ アウロー ネーメイ。

és-oauróném-ei.
いる-<(重いものが)>薬<主格><私>-<与格>

「私には薬がある。」

日常の所有の言い方。持つを表す動詞は使わず、存在動詞 és- と持ち主の与格で表す。主語の auró は重性 o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o で一致する。

éso snuló némei.

読み:エーソ スヌロー ネーメイ。

és-osnulóném-ei
いる-<(重いものが)>たこ<主格><私>-<与格>

「私にはたこがある。」

存在・所有を表す日常文。身体にできた痕も、持ち主を裸の与格で置いて表す。snuló は重性o語幹で、単数主格と対格は同型。

ké kranéro kranó?

読み:ケー クラネーロ クラノー?

kékranér-okranó?
<〜か>伸びる-<(重いものが)>爪<主格>

「爪が伸びているか。」

日常会話で、爪が伸びていないか確かめる問い。爪の語 kranó が重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。はい・いいえの問いには ké を文頭に置き、答えでは kranéro を繰り返す。

éso heló némes krém.

読み:エーソ ヘロー ネーメス クレーン。

és-ohelóném-eskrém.
居る-<(重いものが)>尻<主格><私>-<属格>痛い

「私の尻は痛い。」

日常の身体感覚を直接述べる文。heló は重性o語幹の単数で、主格と対格は同形。所有は名詞に属格 némes を後置し、krém は名詞句の外にある述語形容詞として主語に一致する。

lúin héla éndra, éso heló klér.

読み:ルーイン ヘーラ エンドラ、エーソ ヘロー クレール。

lúinhél-aéndra,és-ohelóklér.
とき座る-<(軽いものが)>人<主格>居る-<(重いものが)>尻<主格>冷たい

「人が座ると、尻は冷たい。」

暮らしの心得や書物のような場面を想定した文。lúin で「〜とき」節を導き、節内も動詞を先頭に置いた VSO とする。heló は重性単数の主語で、klér はそれに一致して単数主格形のまま。

na éso þrón némei

読み:ナ エーソ スローン ネーメイ

naés-oþrónném-ei
<〜ない>いる-<(重いものが)>矢<主格>私-<与格>

「私には矢がない。」

日常会話。存在・所有は「存在動詞+主語+持ち主の与格」の形で言う。持たれている þrón が重性なので、存在動詞は3人称単数・重性の éso をとる。否定は直説法なので na を使う。

vándim prámbo vóoros.

読み:ヴァンディン プランボ ヴォーロス。

vánd-imprámbovóor-os.
量る-<私が>値<対格>紫染め-<属格>

「私は紫染めの値を量る。」

帳簿・会計での用法。prámbo「値」を数えるものを属格 vóoros で示す。紫染料や紫布などの取引品としての意味。

houmsálo

読み:ホウンサーロ

houmsál-o
腹が鳴る-<(重いものが)>

「腹が鳴る」

炉ばたで、自分の空腹を体の音ではなく炉の仕業として笑い合う婉曲表現。主語の bélo「腹」は言わず、動詞は腹の重性に合わせて3単重性の -o をとる。

na houmsálo hóum só

読み:ナ ホウンサーロ ホーン ソー

nahoumsál-ohóumsó
<〜ない>炉が鳴る-<(重いものが)>炉<主格>この<重性>

「この炉は鳴らない」

炉そのものが低く鳴るという字義用法。houm「炉」を主語として明示している。指示詞 só は重性名詞 hóum に合わせる。

éso frumó némes gráis.

読み:エーソ フルモー ネーメス グライス。

és-ofrumóném-esgráis.
いる-<(重いものが)>傷<主格><私>-<属格>悪い

「私の傷は悪い。」

日常の自己申告。名詞句「frumó némes(私の傷)」が主語で、存在・繋辞の語根 és- に3人称単数・重性の語尾 -o が付いて éso になる。形容詞 gráis は重性単数主格では無標識のまま置かれる。

tóro tauló

読み:トーロ タウロー

tór-otauló
来る-<(重いものが)>獲物<主格>

「獲物が入ってくる。」

主語が重性の tauló なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。時制の語形はなく、直説法で単に出来事を言い切る。市や宿の帳場では、獲物が持ち込まれた事実を短く言う定型として使える。

ván snór fáronos, ende.

読み:ヴァーン スノール ファーロノス、エンデ。

vánsnórfáron-os,ende.
量る<命令法><あなたが>幅荷-<属格>どうぞ

「荷の幅を量ってくれ、頼む。」

荷検めや取引きでの日常的な依頼。snórは測られる寸法そのものとして直接の目的語に取る。重性名詞のため、対格は主格と形が同じ。

éso snór só snóil.

読み:エーソ スノール ソー スノイル。

és-osnórsósnóil.
存在-<(重いものが)>範囲この<重性>狭い

「この範囲は狭い。」

日常会話で、実物の寸法ではなく、許容範囲・扱いの幅など抽象的な広がりとして使う例。指示詞sóは範囲を指す名詞句の末尾を閉じる。

mé þráun krailílmo es orénos.

読み:メー スラウン クライリルモ エス オレーノス。

méþráunkrailílmoesorén-os
<禁止・願いの打ち消し>投げる<命令法><あなたが>水袋<対格>から縁-<属格>

「縁から水袋を投げ落とすな。」

縁の縁から物を投げ落とすことを禁じる作法・禁忌の場面。禁止は mé に命令法を続ける。動詞 þráun-「投げる」の2人称単数命令法は語幹のまま þráun。出どころは前置詞 es と属格で表す。

éso berunglǘn só þáun.

読み:エーソ ベルングリューン ソー サウン。

és-oberunglǘnsóþáun.
いる-<(重いものが)>道氷<主格>この<重性>薄い

「この道氷は薄い。」

日常の観察。指示詞 só が名詞句を閉じ、形容詞 þáun が名詞句の外に出ているので、存在文ではなく「この道氷は薄い」という述語文として読む。重性名詞 berunglǘn の単数では形容詞に特別な語尾がつかない。歩行面に張った脆い薄氷(意味2)として、割れやすい性質を述べる。

éso monkrún só gróm

読み:エーソ モンクルーン ソー グローン

és-omonkrúnsógróm
存在-<(重いものが)>土台<主格>この<重性>重い

「この土台は重い。」

日常会話。重性子音語幹の monkrún を主語に立て、述語の形容詞 gróm を後に置く。指示詞は重性の só を用いる。

éso ílmo só síval

読み:エーソ イルモ ソー シーヴァル

és-oílmosósíval
いる-<(重いものが)>水<主格>この<重性>青い

「この水は青い。」

日常会話で、湖や沢の水の色を指して言う文。指示詞 só は重性名詞 ílmo に添う。与格・場所がないので存在文ではなく繋辞文として読む。述語形容詞 síval は重性単数主格で無語尾。緑がかった青緑や緑とは別の青を示す。

þarnéro ílmo an orénoi.

読み:サルネーロ イルモ アン オレーノイ。

þarnér-oílmoanorén-oi.
行き止まる-<(重いものが)>水<主格>上手縁-<与格>

「水は縁で行き止まりになる。」

流れが端に着いてこれ以上先へ進めなくなる意。水 ílmo は重性なので動詞は 3 人称単数・重性の -o。場所 an orén-oi は「縁の側で」。

sláuro unlóur eelþó.

読み:スラウロ ウンロール エールソー。

sláur-ounlóureelþó
残る-<(重いものが)>まだ灰<主格>

「灰がまだ残っている。」

日常の観察文。灰が自然に留まっていることを表す非意志の自動詞。誰かが意図的に残したという含みはない。「まだ」は動詞の直後に置かれる。

na sláuro vúumo.

読み:ナ スラウロ ヴーモ。

nasláur-ovúumo
<〜ない>残る-<(重いものが)>味<主格>

「味が残っていない。」

日常会話で、食事や飲み物の後に後味が残っていないことを言う。高原語には時制語形がないため、直説法で現在の事実として述べる。

króiro nébro orénoi.

読み:クロイロ ネーブロ オレーノイ。

króir-onébroorén-oi.
近づく-<(重いものが)>霧<主格>縁-<与格>

「霧が縁へ近づいてくる。」

意味1。近づき先は裸の与格で取る。主語 nébro は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。縁付近で霧が迫るさまを言う日常の文。

éso þurán káil némei

読み:エーソ スラーン カイル ネーメイ

és-oþuránkáilném-ei
いる-<(重いものが)>唇<主格>乾いた<私>-<与格>

「私には唇が乾いている。」

日常的な身体の状態を言う文。þurán は上唇・下唇を含む口まわりの肉縁をひと続きの部位として指すため、ここでの単数は唇全体を指す。重性名詞で、存在文の持ち主は与格 ném-ei に置く。述語の káil は主語に一致して重性単数の形をとる。

na víro þurán lúdro

読み:ナ ヴィーロ スラーン ルードロ

navír-oþuránlúdro
<〜ない>言う-<(重いものが)>唇<主格>嘘<対格>

「唇は嘘を言わない。」

法や書物の文章に立てそうな、倫理的な格言。na による直説法の否定。þurán も lúdro も重性で、名詞の単数では主格と対格が同形なため、VSO語順が主語と目的語を分ける。

brúumo krǘmo endríñes

読み:ブルーモ クリューモ エンドリーニェス

brúum-okrǘmoendríñ-es
落ちる-<(重いものが)>歯<主格>子-<属格>

「子どもの歯が抜けた。」

子どもの乳歯が抜けた場面。brúumo は主語 krǘmo が重性なので3人称単数・重性語尾-oで受ける。所有者 endríñ-es は名詞krǘmoの後ろに属格を置く。

áuro kravó éles

読み:アウロ クラヴォー エーレス

áur-okravóél-es
昇る-<(重いものが)>顎<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「彼の顎が上がった。」

怒りや威勢を示す仕草の文。nóumo「顔」や drál「首」では曖昧になりやすい顎の線の動きを、kravó を主語にして áur-「昇る」型仕草語で直接表す。重性主語なので動詞は3人称単数・重性の -o に一致する。所有の属格 él-es は名詞の後。

krúno kravó múndo si grél

読み:クルーノ クラヴォー ムンド シ グレール

krún-okravómúndosigrél
支える-<(重いものが)>顎<主格>口<対格>と喉<対格>

「顎は口と喉を支える。」

書物の解剖的記述の場面。kravó は主語でも重性なので動詞は3人称単数・重性の -o に一致する。múndo と grél も重性で、単数の直接目的語は無標。目的語を si で並べても、動詞の数は主語のみに一致する。

kráiso dóulin snaló.

読み:クライソ ドーリン スナロー。

kráis-odóulinsnaló.
割れる<〜し終えた>-<(重いものが)>既にかさぶた<主格>

「かさぶたはもう割れている。」

肯定文で dóulin と組んで完了の意味を表すときは、未完了語幹 krás- ではなく完了語幹 kráis- を使う。重性の主語 snaló に一致して、語尾に3単数重性 -o がつく。dóulin は動詞の直後に置く「もう」。「時制を表す語形がないため、変化の完了は完了語幹と相の副詞で示す」という手当て書・現場観察文らしい簡潔な描写。

éso méldo slém.

読み:エーソ メルド スレーン。

és-oméldoslém.
<である>-<(重いものが)>蜜<主格>甘ったるい

「蜜は甘ったるい。」

書物・品評のような記述文。場所を示さない存在文ではなく、主語 méldo に述語形容詞 slém が対応する。重性名詞なので éso。slém は主格単数無標。

éso þórum sáun.

読み:エーソ ソールン サウン。

és-oþórumsáun.
いる-<(重いものが)>火加減<主格>良い

「この火加減は、ちょうどよい。」

暖房や煮炊きの最中に、熾火と炎のあいだの加減を肯定する日常の言い方。主語 þórum が重性なので、繋辞 éso を用いる。述語形容詞 sáun は重性単数主格で語尾をもたない。

éso slóimo aldáres ormároi.

読み:エーソ スロイモ アルダーレス オルマーロイ。

és-oslóimoaldár-esormár-oi
いる-<(重いものが)>隣<主格>座-<属格>左-<与格>

「席の隣は左にある。」

儀礼・座席に関する表現。名詞句 slóimo aldáres は「席の隣(の席)」を示し、属格 aldáres が slóimo を限定する。述語の与格 ormároi が位置を示し、動詞は主語 slóimo に一致する。

krála snǘra kórvos tambór.

読み:クラーラ スニューラ コルヴォス タンボール。

král-asnǘrakórv-ostambór
かじる-<(軽いものが)>鼠<主格>倉-<属格>雑穀<対格>

「倉の鼠が雑穀をかじる。」

場所を示す属格 kórvos を名詞に添え、家屋や倉に出入りする害獣としての意味を作る。主語が単数なので動詞は -a。

káulo dóulin kórvo.

読み:カウロ ドーリン コルヴォ。

kául-odóulinkórvo.
満ちる-<(重いものが)>もう倉<主格>

「倉はもう満ちている。」

帳簿や記録にありそうな文。dóulin は動詞直後に置かれる相の副詞。kórvo は重性o語幹。

káulo bélo.

読み:カウロ ベーロ。

kául-obélo.
満ちる-<(重いものが)>腹<主格>

「腹が満たされる(腹が減らない)。」

身体語。bélo は重性o語幹。空腹や物足りなさが収まった状態を、受動の語形ではなく「腹が満ちる」形で言う。

éso fáron bulkráilen funelíños.

読み:エーソ ファーロン ブルクライレン フネリーニョス。

és-ofáronbulkráil-enfunelíñ-os
いる-<(重いものが)>荷<主格>くくる-<〜した・〜された>留め紐-<属格>

「荷は留め紐でくくられている。」

荷札や帳簿の注記のような書文。繋辞と分詞が荷と重性で一致し、手段を表す名詞は分詞に属格で付く。

éso trǘlmo snóil.

読み:エーソ トリュルモ スノイル。

és-otrǘlmosnóil
いる-<(重いものが)>裂け目<主格>狭い

「裂け目は狭い。」

意味1。石壁・板壁・家屋のあいだに開いた細い割れ目を指す基本義。凍りの頃の住居点検などの日常語として、幅の狭さを述べる言い回し。述語の形容詞は重性名詞の単数主格では無語尾となる。

glünlúin, múno duléumo un trǘlmo.

読み:グリュンルーイン、ムーノ ドゥレウモ ウン トリュルモ。

glünlúin,mún-oduléumountrǘlmo.
凍りの頃,入る-<(重いものが)>下風<主格>中に裂け目<対格>

「凍りの頃、下の風が裂け目の中へ通ってくる。」

意味2。凍りの頃の備忘のような記述調。下の風は重性なので、動詞は3人称単数・重性の語尾をとる。un+対格で、風が裂け目の内へ通る通路を示す。重性o語幹のtrǘlmoは主格と対格が同形だが、unが対格を要求する。

mé duliþésa fáron es kráumos só

読み:メー ドゥリセーサ ファーロン エス クラウモス ソー

médul-iþ-és-afároneskráum-ossó
<禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>から露岩-<属格>この<重性>

「この崖壁から荷を落とすな。」

碑文や市の禁令のような改まった禁止表現。当為法が無主語のまま使われている。es+属格で「〜から」。ここでの kráum は、崩れやすい崖壁・崖縁を指している。

éso glünó glünáur.

読み:エーソ グリュノー グリュナウル。

és-oglünóglünáur.
いる-<(重いものが)>氷<主格>眩しい

「氷が眩しい。」

凍りの頃の記述的な一文。繋辞ésoは重性o語幹のglünóに一致する。述語形容詞glünáurは単数主格で基本形のまま置かれる。意味1の用法。

éso krailmón klér.

読み:エーソ クライルモーン クレール。

és-okrailmónklér
いる-<(重いものが)>石垣<主格>冷たい

「石垣は冷たい。」

重性子音語幹名詞の単数主格。存在・状態を表す繋辞 éso は主語 krailmón に一致して重性単数 -o をとる。

éso krailmón fóndel.

読み:エーソ クライルモーン フォンデル。

és-okrailmónfóndel
いる-<(重いものが)>手石積み<主格>古い

「手石積みは由緒ある。」

krailmón を組構え・組方そのものとして述べる用法。形容詞 fóndel は、単に物が古いというより、作法としての由緒を指してかかる。

glímo ílmo es monkréinos.

読み:グリーモ イルモ エス モンクレーノス。

glím-oílmoesmonkréin-os.
滲む-<(重いものが)>水<主格>から切れ目-<属格>

「切れ目から水が滲み出る。」

記録文のような、淡々とした直説法。es+属格は出所「〜から」。monkréin の単数属格は monkréinos。

ké éso unlóur gólvo só?

読み:ケー エーソ ウンロール ゴルヴォ ソー?

kéés-ounlóurgólvosó
<〜か>いる-<(重いものが)>まだ旧道<主格>この<重性>

「この旧道は、まだありますか。」

場面:日常会話。存在の動詞が重性主語に一致して3人称単数重性のésoになっている。疑問小辞kéは文頭に置き、副詞unlóurは動詞の直後、主語の前に置く。gólvo sóは重性o語幹の単数主格名詞句。

króiro plondó!

読み:クロイロ プロンドー!

króir-oplondó!
近づく-<(重いものが)>崖崩れ<主格>

「崖崩れが近づいている。」

日常的な警告。主語 plondó は重性o語幹の単数なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o を取る。主語の代名詞は省略される。

krílo dóulin plondó orén.

読み:クリーロ ドーリン プロンドー オレーン。

kríl-odóulinplondóorén.
離す-<(重いものが)>もう道を絶つ崩落<主格>縁<対格>

「道を絶つ崩落は、もう崖縁を断った。」

年代記・報告のような書面的文。VSOで動詞の直後に相の副詞 dóulin を置く。kríl は他動詞、orén を対格で受ける。重性名詞のため対格は無標識。plondó は単なる落石ではなく、往来を断つ崩落を名指す。

glímo ílmo un plánan.

読み:グリーモ イルモ ウン プラーナン。

glím-oílmounplán-an.
滲む-<(重いものが)>水<主格>内に帳簿-<対格>

「水が帳簿の中へ滲む。」

書き物の場で、水分が帳簿の中へ移る動作を中立的に述べる日常の文。主語の ílmo は地を流れる水として重性なので、動詞は 3人称単数・重性の -o をとる。un+対格は「〜の中へ」。

dúlo lourílmo du dálor.

読み:ドゥーロ ロウリルモ ドゥ ダーロル。

dúl-olourílmodudálor.
下る-<(重いものが)>滝<主格>下手下の国<対格>

「滝が下の国へ下りていく。」

地図・川筋・書物的な語り。lourílmo を流れの一部としてとらえ、その流れが川筋に沿って下流へ向かう様子を表す。重性主語なので動詞語尾は -o。du+対格で「下手へ」。

éso gandér só nalóun.

読み:エーソ ガンデール ソー ナローン。

és-ogandérsóna-lóun.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性><〜ない>-長い

「この硬木は短い。」

木市や検めで、硬木の材木としての実長が長くないことを言う意味1。重性名詞 gandér に合わせ、繋辞 éso、指示詞 só。重性単数主格では形容詞に語尾がつかず nalóun のまま。

éso lóur só nalóun.

読み:エーソ ロール ソー ナローン。

és-olóursóna-lóun.
いる-<(重いものが)>瀬<主格>この<重性><〜ない>-長い

「この瀬は短い。」

瀬は川が一段落ちてから次の落ちまでのひと続き。距離・行程が長くなく近接している意味3。重性名詞 lóur に合わせ éso・só。重性単数主格では nalóun のまま。

ké dunþrémo klóno táses?

読み:ケー ドゥンスレーモ クローノ ターセス?

kédunþrém-oklónotás-es?
<〜か>腫れる-<(重いものが)>膝<主格><あなた>-<属格>

「あなたの膝は腫れていますか。」

日常会話。はい/いいえの問いは ké を文頭に置く。対等・下向きの表現で、目上の人には ké と直接の質問は使わない。所有者は 2人称単数属格 táses。

marwéino vandó só.

読み:マルウェーノ ヴァンドー ソー。

marwéin-ovandósó.
使い古される-<(重いものが)>分銅<主格>この<重性>

「この分銅は使い古されている。」

日常の市・帳場。青銅の分銅は重性o語幹。よく手に取られて、手の動きに添うようになってきた道具について言う。

marwéino fúnel só némei.

読み:マルウェーノ フーネル ソー ネーメイ。

marwéin-ofúnelsóném-ei.
手になじむ-<(重いものが)>綱<主格>この<重性><私>-<与格>

「この綱は、私には手に馴染んでいる。」

日常の会話。与格némeiは経験者・使用者を表す。fúnel「綱」は重性。

anórel, salglǘno prúumo.

読み:アノーレル、サルグリューノ プルーモ。

anórel,salglǘn-oprúumo.
昨日溶ける-<(重いものが)>解け残った水たまり<主格>

「昨日、解け残った水たまりが溶けた。」

記録文。anórel が時を示し、動詞自体に時制語尾はない。salglǘn- は薄氷や解けかけの溶けることを指し、prúumo と組むと解け残りの水たまりの文脈になる。

anórel, kráiso dóulin tórvo mór.

読み:アノーレル、クライソ ドーリン トルヴォ モール。

anórel,kráis-odóulintórvomór
昨日割れる<〜し終えた>-<(重いものが)>もう梁<主格>大きい<主格>

「昨日、大きな梁がもう割れた。」

肯定の「もう」dóulin は完了相の動詞と組むため、割れる krás- の完了語根 kráis- を用いて kráiso とする。場面の枠 anórel を文頭に置き、相の副詞 dóulin は動詞の直後、主語の前に置く。

wéro ílmo du tórvo.

読み:ウェーロ イルモ ドゥ トルヴォ。

wér-oílmodutórvo
滴る-<(重いものが)>水<主格>下手梁<対格>

「梁に水が滴る。」

動詞 wér- は重性の主語 ílmo に一致して 3人称単数重性語尾 -o をとる。水が落ちていく着点は、方向の前置詞 du と重性 o語幹 tórvo の単数対格で示す。重性 o語幹では単数主格と対格が同形で、見出し形 tórvo のまま対格に使える。

éso unó só klér.

読み:エーソ ウノー ソー クレール。

és-ounósóklér
いる-<(重いものが)>裏<主格>この<重性>冷たい

「この裏は冷たい。」

物や衣の背面を表す用法。表へ向けていない面を unó といい、重性名詞 unó に重性の指示詞 só を後置する。

gíro sáko frumó.

読み:ギーロ サーコ フルモー。

gír-osákofrumó
刺す-<(重いものが)>塩<主格>傷<対格>

「塩が傷を刺す。」

塩を傷口に当てたときのような、突然の鋭い痛みを表す日常的な用例。 sáko と frumó は重性で、動詞は3人称単数・重性の -o を受ける。重性名詞では対格語尾が見えず、語順 VSO で目的語が示される。

glünlúin, gíro duléumo klér már.

読み:グリュンルーイン、ギーロ ドゥレウモ クレール マール。

glünlúin,gír-oduléumoklérmár
凍りの頃刺す-<(重いものが)>下風<主格>冷たい手<対格>

「凍りの頃、冷たい下風が手を刺す。」

凍りの頃の冷気による刺すような感覚。凍りの頃を場面の枠として文頭に置く。 klér が主語 duléumo を修飾する。冷気が主語の言い方は、改まった場でも自然。

gíro glünó brés.

読み:ギーロ グリュノー ブレース。

gír-oglünóbrés
刺す-<(重いものが)>氷<主格>胸<対格>

「氷が胸を刺す。」

氷そのものが胸を刺す物理的な感じ、あるいは冷たい氷によるずきりと刺す感覚。身体部位 brés は重性で、目的語も形を変えない。

éso samonþóvo klónoi némes.

読み:エーソ サモンソーヴォ クローノイ ネーメス。

és-osamonþóvoklón-oiném-es.
いる-<(重いものが)>あざ<主格>膝-<与格><私>-<属格>

「私の膝にあざがある。」

日常会話で用いられる存在文。体部位を与格に置き、持ち主を属格代名詞で後置する。samonþóvo は皮膚を破っていない痕を中性に指す語で、開いた傷には使わない。

snáulo baló.

読み:スナウロ バロー。

snául-obaló
生える-<(重いものが)>草<主格>

「草が生える。」

道端や石間での自然描写。動詞が文頭に立つ基本語順。baló は単数主格で baló のまま。動詞は重性単数の語尾 -o をとる。栽培穀物ではなく、一般の低い草本を指す。

éso ombamór krém

読み:エーソ オンバモール クレーン

és-oombamórkrém
いる-<(重いものが)>中指<主格>痛い

「中指が痛い。」

「Aは〜い」の文は動詞 és- を用い、順序は és-+主語+述語。重性主語 ombamór に応じて 3SG.HV 形 éso を使う。

na éso ombamór lóun

読み:ナ エーソ オンバモール ローン

naés-oombamórlóun
<〜ない>いる-<(重いものが)>中指<主格>長い

「中指は長くはない。」

na は動詞の直前に置き、重性主語 ombamór に応じて éso を使う。

na pláinim es nébros.

読み:ナ プライニン エス ネーブロス。

napláin-imesnébr-os
<〜ない>気づく-<私が>から霧-<属格>

「私は霧に気づかなかった。」

独立した完了相語尾 -s は立てない。時制を表す語形がないため、未完了の直説法の否定でも文脈によって過去の出来事を表す。pláin は es+属格を伴う。nébro の属格は nébros。

éso brespáumo klér.

読み:エーソ ブレスパウモ クレール。

és-obrespáumoklér.
存在-<(重いものが)>肺<主格>冷たい

「肺は冷たい。」

brespáumo は重性o語幹の名詞で、主格単数では見出し形 brespáumo をそのまま一形態素として用いる。存在動詞 éso は主語の重性に一致する。

éso brespáumo gróm.

読み:エーソ ブレスパウモ グローン。

és-obrespáumogróm.
存在-<(重いものが)>肺<主格>重い

「肺は重い。」

brespáumo は重性o語幹で、主格単数が見出し形そのまま。述語形容詞 gróm も重性名詞と対応する形になる。

vrunþála líura fúnel te bríno.

読み:ヴルンサーラ リーウラ フーネル テ ブリーノ。

vrunþál-alíurafúneltebrín-o.
結ぶ-<(軽いものが)>女<主格>綱<対格><関係節>ほつれる-<(重いものが)>

「女は、ほつれかけている綱を結び直す。」

ほどけ止めにする意味。関係節 te bríno は fúnel を修飾し、抜けた主語の位置は空けたままにする。関係節の動詞は修飾される名詞に一致し、fúnel が重性なので brín- に -o が付く。

éso dulþárno málunos húmel.

読み:エーソ ドゥルサルノ マールノス フーメル。

és-odulþárnomálun-oshúmel
いる-<(重いものが)>下縁<主格>敷物-<属格>湿った

「敷物の下縁は湿っている。」

書物・記録の文。覆い・帳・敷物など、下に垂れた終わり際の辺を指す「下縁」義。名詞句 dulþárno málunos は「下縁+敷物の属格」で、「敷物の下縁」。述語形容詞 húmel は、所有を示す málunos ではなく、主要部 dulþárno に一致している。

wéro ílmo gléin es reinándos.

読み:ウェーロ イルモ グレーン エス レイナンドス。

wér-oílmogléinesreinánd-os.
滴る-<(重いものが)>水<主格>清いから雨水甕-<属格>

「甕からの清い水がぽつぽつと落ちる。」

祭祀や家屋の書で使われる、雨水甕からの澄んだ水に関する文。主語は重性の水で、動詞は3人称単数・重性。wér- は連続的な流れではなく、点々と離れる滴に用いる。

na wéro unlóur ílmo só.

読み:ナ ウェーロ ウンロール イルモ ソー。

nawér-ounlóurílmosó.
<〜ない>滴る-<(重いものが)>まだ水<主格>この<重性>

「この水はまだぽつぽつと落ちていない。」

状態確認での日常的な否定。否定小辞 na は直説法の前に置き、まだを表す unlóur は動詞の直後、主語の前に置く。

huenéra þóuma es kórvos.

読み:フエネーラ ソーマ エス コルヴォス。

huenér-aþóumaeskórv-os.
抜ける-<(軽いものが)>煙<主格>から倉-<属格>

「倉から、細く煙が抜けていく。」

日常。倉の隙間や入り口から、細い煙が静かに抜ける描写。主語 þóuma は軽性なので動詞は -a で受ける。源は es + 属格で表す。勢いよく吹き出す煙には使わない。

ké éso fenlapúl séndoi?

読み:ケー エーソ フェンラプール センドイ?

kéés-ofenlapúlsénd-oi?
<〜か>いる-<(重いものが)>蒸し枝<主格>ここ-<与格>

「ここに蒸し枝があるか。」

汗蒸し小屋や道具場で、蒸し枝の有無を尋ねる口語的な文。存在の動詞 és- は、主語 fenlapúl が重性なので語尾が -o で受け取る。séndoi は séndo「ここ」の与格形。

éso lúuko séndoi.

読み:エーソ ルーコ センドイ。

és-olúukosénd-oi.
いる-<(重いものが)>熱石<主格>ここ-<与格>

「ここに熱石がある。」

肯定の存在文。lúuko は主格として引用形そのものを用いる。

ké éso lúuko séndoi?

読み:ケー エーソ ルーコ センドイ?

kéés-olúukosénd-oi?
<〜か>いる-<(重いものが)>熱石<主格>ここ-<与格>

「ここに熱石があるのか。」

存在文のはい/いいえの問い。ké は文頭に置く。

sórel, glǘno þaimfúnel.

読み:ソーレル、グリューノ サインフーネル。

sórel,glǘn-oþaimfúnel.
今日凍る-<(重いものが)>井戸綱<主格>

「今日、井戸綱が凍る。」

日常の井戸場での観察。場面の枠に今日の語を置いている。自動詞 glǘn- の主語が重性名詞 þaimfúnel なので、3人称単数・重性の語尾 -o がつく。

wéiro monáur un plánei.

読み:ウェーロ モナウル ウン プラーネイ。

wéir-omonáurunplán-ei.
いる<〜し終えた>-<(重いものが)>繰り上がり<主格>内に帳簿-<与格>

「帳簿に繰り上がりが生じた。」

帳簿の書きつけや教示文のような、記述的でやや改まった言い方。wéir- は és- の完了相で、「〜があるようになった」「〜が生じた」という成立の含みをもつ。un は与格と組んで「〜の中に」。plána は軽性 a 語幹・語根強勢型なので、与格単数は plán-ei となり、綴りは plánei となる。

éso kailsámon só káil.

読み:エーソ カイルサーモン ソー カイル。

és-okailsámonsókáil.
いる-<(重いものが)>革<主格>この<重性>乾いた

「この革は乾いている。」

作業場での確認。存在・繋辞ésoは主語に一致し、重性には-oが付く。述語の形容詞は主語に一致し、重性単数主格では語尾がつかない。

éso fleló só fláin

読み:エーソ フレロー ソー フライン

és-oflelósófláin
いる-<(重いものが)>素焼き<主格>この<重性>軽い

「この素焼きは軽い。」

日常で釉をかけない土器を評す文。fleló は仕上げの性質を指す語だが、仕上げを施した器をまとめて指す名詞としても働く。重性o語幹名詞として扱われ、指示詞は重性の só を取る。

flélo fleló rúgal só

読み:フレーロ フレロー ルーガル ソー

flél-oflelórúgalsó
漏れる-<(重いものが)>素焼き<主格>粗いこの<重性>

「この粗い素焼きは漏れる。」

吸い込みの強い土器の等級を指す用法。名詞句は「名詞 fleló+形容詞 rúgal+指示詞 só」の順で、指示詞 só が名詞句の重性を示す。主語は重性o語幹なので動詞は 3人称単数・重性。

ké krélo houmkreló só?

読み:ケー クレーロ ホウンクレロー ソー?

kékrél-ohoumkrelósó?
<〜か>足りる-<(重いものが)>家分<主格>この<重性>

「この家分は足りるか。」

日常のやり取り。yes-no 疑問は ké を文頭に置く。主語の houmkreló は重性o語幹の単数で、動詞 krél- は 3人称単数・重性語尾 -o を受ける。指示詞 só は名詞句に後置し、格変化しない。

éso unlóur houmkreló só un kórvoi.

読み:エーソ ウンロール ホウンクレロー ソー ウン コルヴォイ。

és-ounlóurhoumkrelósóunkórv-oi.
いる-<(重いものが)>まだ家分<主格>この<重性>内に倉-<与格>

「倉にはまだこの家分がある。」

備蓄を確かめる場面。存在文の動詞 és- は主語に一致し、houmkreló が重性o語幹の単数主格なので -o を受ける。相の副詞 unlóur は動詞の直後、主語の前に置く。un kórvoi は前置詞 un と与格の組み合わせで「倉の中で」。

éso flóndo só sárvo

読み:エーソ フロンド ソー サルヴォ

és-oflóndosósárvo
いる-<(重いものが)>岩間道<主格>この<重性>禁忌<主格>

「この岩間道は禁忌である」

名詞述語文。動詞の直後の flóndo só が主語、末尾の sárvo が述語名詞。述語名詞は主語に一致せず、名詞としての主格の形のまま置く。儀礼や法文で、その通路が人の通行・使用の禁じられた所であることを告げる言い方。

éso món só pármo.

読み:エーソ モーン ソー パルモ。

és-omónsópármo.
いる-<(重いものが)>石<主格>この<重性>道印<主格>

「この石は道印だ。」

物を同定する文。繋辞 és- が主語 món「石」に一致して -o をとり、述語名詞 pármo は主格のまま後ろに置く。指示詞 só は名詞 món を受ける。

mirkrílim tambór némes es kórvos.

読み:ミルクリーリン タンボール ネーメス エス コルヴォス。

mirkríl-imtambórném-eseskórv-os.
自分の分を切り出す-<私が>雑穀<対格><私>-<属格>から倉-<属格>

「私は倉から自分の分の雑穀を切り出す。」

共同の物から自らの取り分を区別する意味。es+属格で切り出す元を示す。共同の倉のような蓄えからの分前の場として自然。所有の属格は名詞の後ろに置く。

éso gúur fúnelos húmel.

読み:エーソ グール フーネロス フーメル。

és-ogúurfúnel-oshúmel.
いる-<(重いものが)>末端<主格>綱-<属格>湿った

「綱の先は湿っている。」

動物の尾からの転義。細く突き出た本体の末端を指す用法で、日常語として定着している。所有は後ろ属格。fúnel「綱」の末端を「尾」と呼ぶ。

éso món só gáil.

読み:エーソ モーン ソー ガイル。

és-omónsógáil
いる-<(重いものが)>石<主格>これ<重性>広い

「この石(板石)は広い。」

建築・帳簿の記述で、床面や敷石に使う板石の面の広さを評す表現。物の体積ではなく、人が置く・通うための面の広さを言う。述語形容詞は主語に一致して重性単数の無標識形。

na éso báwal só sáindar.

読み:ナ エーソ バーワル ソー サインダル。

naés-obáwalsósáindar.
<〜ない>いる-<(重いものが)>身振り<主格>この<重性>証文<主格>

「この身振りは証文ではない。」

商いや契約の場面で、声に出した言葉や書きものではなく、作法語としての身振りに効力がないことを言う表現。主語 báwal が重性なので動詞 éso は重性の -o を受ける。述語名詞 sáindar は自身の性を保ち、主格のまま置く。

éso pálvo némes krém.

読み:エーソ パルヴォ ネーメス クレーン。

és-opálvoném-eskrém
いる-<(重いものが)>踵<主格><私>-<属格>痛い

「私の踵は痛い。」

日常会話。踵は重性o語幹の単数で、主格と対格が同形。存在・繋辞 éso は主語の重性単数に一致して -o をとる。所有者は名詞の後ろに1人称単数属格を置く。述語形容詞 krém は重性単数の主語に対して語尾を変えない。

górno dún nébroi.

読み:ゴルノ ドゥーン ネーブロイ。

górn-odúnnébr-oi
消える-<(重いものが)>丘<主格>霧-<与格>

「丘は霧の中に消える。」

霧によって丘の輪郭が薄れ、視界から失われる、意図を含まない自動詞の用法。主語 dún は重性子音語幹なので、動詞は重性単数の górn-o をとる。霧の中の場所は前置詞なしの与格 nébr-oi で表す。霧の中で遠景が消える描写には、澄みが薄れて輪郭が湿り気に溶かされるような不吉な含みが出ることがある。

monþálo rúndo, sérin.

読み:モンサーロ ルンド、セーリン。

monþál-orúndo,sérin.
石固まる-<(重いものが)>走り水<主格>このように

「流れが、こんなふうに固まって止まる。」

流れていものが表層の膜や板状の静止に変わったことを、眼前の水面を指して示すような表現。rúndo「走り水」は重性なので動詞は -o で受ける。

snelíþa anlóur endríñan es nébros.

読み:スネリーサ アンロール エンドリーニャン エス ネーブロス。

snelíþ-aanlóurendríñ-anesnébr-os.
隠す-<(軽いものが)>親<主格>子-<対格>から霧-<属格>

「親が霧から子どもを隠す。」

家族・養育の場面。人避けだけでなく、害から守るため対象を覆い隠す意で使う。`es`+属格は、害・視線・原因からの起点を表す。

éso gromsámon só þáun.

読み:エーソ グロンサーモン ソー サウン。

és-ogromsámonsóþáun
いる-<(重いものが)>肌<主格>この<重性>薄い

「この肌は薄い。」

日常語。人の体をおおう薄い皮を指す語で、獣の皮・革とは区別される。名詞句を指示詞 só で閉じ、その後ろの þáun が述語形容詞となる。

lúin éso nébro húmel, éso gromsámon klér.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ フーメル、エーソ グロンサーモン クレール。

lúinés-onébrohúmel,és-ogromsámonklér
ときいる-<(重いものが)>霧<主格>湿った,いる-<(重いものが)>皮膚感<主格>冷たい

「霧が湿ると、肌触りは冷たい。」

霧期の触れ感。この文では皮膚表面で受ける感じの意味であり、gloss 上は「皮膚感」と出す。gromsámon も nébro も重性なので、いずれも 3単・重性の éso で受ける。

tóra sílan gléinaros

読み:トーラ シーラン グレーナロス

tór-asílangléinar-os
来る-<(軽いものが)>シラン<主格>グレイナル-<属格>

「グレイナル家のシランが来る。」

日常の来訪・用件の報告。「名+家名の属格」のフルネーム表現。家名 gléinar は源の名として重性名詞として変化し、単数属格 gléinaros を取る。主語は人名 sílan であるため、動詞 tór- は軽性の -a を受ける。

duþélim sílanan gléinaros

読み:ドゥセーリン シーラナン グレーナロス

du-þél-imsílan-angléinar-os
<〜させていただく>-名乗る-<私が>シラン-<対格>グレイナル-<属格>

「グレイナル家のシランと名乗らせていただきます。」

改まった名乗り。duþél- は þél-「名乗る」に謙譲の du- がついた形。個人名 sílan を対格 sílanan とし、家名 gléinar を属格 gléinaros で添える。人を指す個人名が主語になるときの動詞の一致は軽性になるが、家名そのものは重性の属格形をとる。

éso análor fóndel

読み:エーソ アナーロル フォンデル

és-oanálorfóndel
いる-<(重いものが)>上手の国<主格>古い

「上手の国は由緒ある。」

王国そのものを主語にする言い方。重性の国名なので動詞は 3人称単数・重性の -o で受ける。fóndel は「古い(由緒ある)」の意。

éso análor þáil

読み:エーソ アナーロル サイル

és-oanálorþáil
いる-<(重いものが)>高原<主格>澄んだ

「高原は澄んでいる。」

崖の上の土地そのものを主語にする言い方。乾風期の澄んだ空気や天候を指す。重性の名詞に重性の繋辞 éso が対応する。

tóra ólmar es amfóndaros

読み:トーラ オルマル エス アンフォンダロス

tór-aólmaresamfóndar-os
来る-<(軽いものが)>年長者<主格>から上手の源-<属格>

「年長者がアンフォンダルから来た。」

国名が属格 amfóndaros をとる例。es+属格で「〜から」を示し、国を出自・源として述べる。年長者をさす ólmar は軽性の人名詞なので、動詞は軽性一致 tóra を受ける。系譜や由緒を述べる改まった場向き。

tóro louvrúndo es amfóndaros

読み:トーロ ロウヴルンド エス アンフォンダロス

tór-olouvrúndoesamfóndar-os
来る-<(重いものが)>長川<主格>から上手の源-<属格>

「長川はアンフォンダルから流れてくる。」

地理的な「上手の源」の北の高み・湖盆一帯を指す例。固有名詞 louvrúndo を主語に取り、重性一致 tóro。es+属格が水源を表す。詩や帳簿で、川を源から述べる定型。

þróumo árnel.

読み:スローモ アルネル。

þróum-oárnel.
死ぬ<〜し終えた>-<(重いものが)>木<主格>

「木が枯れた。」

木が枯れたという文。立ち枯れてもはや昇らないものとして、動詞は重性の一致 -o をとる。

þróumo dórin tó.

読み:スローモ ドーリン トー。

þróum-odórintó.
死ぬ<〜し終えた>-<(重いものが)>男<主格>あの<重性>

「あの男はくたばった。」

人に対して þrúm- をわざと使う荒い陰口。人を重性の一致で受けるのと同じ種類の罵倒で、魂が昇らずに沈んだという含みがある。

glǘno leimó só.

読み:グリューノ レイモー ソー。

glǘn-oleimósó.
凍る-<(重いものが)>遺体<主格>この<重性>

「この遺体は凍っている。」

凍りの頃の実用的な場面。 leimó は重性o語幹なので、主語を受け取る動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。指示詞 só も重性で、中心名詞 leimó に一致する。

tóra faronár es funelóros.

読み:トーラ ファロナール エス フネローロス。

tór-afaronáresfunelór-os.
来る-<(軽いものが)>運び人<主格>からフネロール-<属格>

「フネロールから運び人が来る。」

記録・帳簿的な文。出どころを示す前置句 es 属格。地名 funelór は重性子音語幹として扱い、属格語尾 -os を付ける。主語 faronár は人を指すため軽性で、動詞は軽性の 3人称単数語尾 -a を取る。

anórel, tóro fáron du meulvéinor.

読み:アノーレル、トーロ ファーロン ドゥ メウルヴェーノル。

anórel,tór-ofárondumeulvéinor.
昨日来る-<(重いものが)>荷<主格>下手メウルヴェイノル<対格>

「昨日、荷がメウルヴェイノルへ来た。」

年代記や帳簿のような記録文。時節語 anórel を場面の枠に置いている。主語 fáron が重性なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o を取る。

éso mérvo só ulvenkeréla.

読み:エーソ メルヴォ ソー ウルヴェンケレーラ。

és-omérvosóulvenkeréla
いる-<(重いものが)>村<主格>この<重性>狼の谷の村<主格>

「この村はウルヴェンケレーラです。」

固有名詞を述語名詞に取った系辞文。動詞 és- は主語 mérvo に一致して重性の形になる。述語名詞 ulvenkeréla は主格のまま置く。

glünóroi, glǘno lourílmo.

読み:グリュノーロイ、グリューノ ロウリルモ。

glünór-oi,glǘn-olourílmo.
グリュノーラ-<与格>凍る-<(重いものが)>滝<主格>

「グリュノーラでは、滝が凍る。」

glünóroi は旧道上の岩棚名 glünóra の与格として、場面指定に使える。lourílmo は重性の滝なので動詞は重性 3 単数の -o で受ける。冷えた乾風期に滝のしぶきが棚に凍りつく自然状況を、短い直説法で述べている。

ké tóra faronár sé es dulóros?

読み:ケー トーラ ファロナール セー エス ドゥローロス?

kétór-afaron-árséesdulór-os?
<〜か>来る-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>この<軽性>からドゥローラ-<属格>

「この運び人は、ドゥローラから来たのか。」

道場や宿での確認の文。疑問小辞 ké は文頭に置く。faron-ár は「荷に携わる人」の意。固有名詞 dulóra は重性o語幹の名詞として扱い、es の後に属格 dulóros をとる。指示詞 sé は faronár を修飾する軽性形。

éso glünóra, salóur na éso fleuróra.

読み:エーソ グリュノーラ、サロール ナ エーソ フレウローラ。

és-oglünóra,salóurnaés-ofleuróra.
いる-<(重いものが)>グリュノーラ<主格>しかし<〜ない>いる-<(重いものが)>フレウローラ<主格>

「グリュノーラはあるが、フレウローラはない。」

旧道の岩棚のうち、上部の glünóra は棚として残る一方、下部の fleuróra は崩落したことを、年代記・昔語りで対比する言い方。存在動詞 és- は主語の古地名に合わせ、重性の 3人称単数 -o をとる。逆接の salóur は「同じ瀬の外へ移る」ニュアンスを持つ。

na éso þíndel sárvo.

読み:ナ エーソ シンデル サルヴォ。

naés-oþíndelsárvo.
<〜ない>いる-<(重いものが)>星盤<主格>禁忌<主格>

「星盤は禁忌ではない。」

作法書や儀礼の説明で用いる名詞述語文。否定の直説法は na を動詞の前に置く。動詞 és- は主語 þíndel の重性単数に合わせて -o を取り、述語名詞 sárvo は主格のまま後に置く。

glǘno traumbél

読み:グリューノ トラウンベール

glǘn-otraumbél
凍る-<(重いものが)>橋<主格>

「橋が凍る。」

glǘn- が「凍る」の自動詞である。主語の traumbél が重性なので、動詞は3人称単数重性の語尾 -o をとる。時制標示はない。

éso louvrúndo mór.

読み:エーソ ロウヴルンド モール。

és-olouvrúndomór.
存在-<(重いものが)>長川<主格>大きい

「長川は大きい。」

日常の景観描写。重性o語幹の louvrúndo は単数主格で語末の -o を残す。述語の形容詞 mór は主語と性・数・格を一致させ、重性単数主格では語尾がつかない。

dúlo louvrúndo lóurul análoros.

読み:ドゥーロ ロウヴルンド ロールル アナーロロス。

dúl-olouvrúndolóur-ulanálor-os.
下る-<(重いものが)>長川<主格>瀬-<〜たちを>上手の国-<属格>

「長川は、上手の国の瀬を流れ下る。」

宮廷詩で王国の流れを詠む表現。lóur は「川瀬」と「世代」を兼ね、lóurul は重性名詞の複数対格で、流れ下る道のり・世代を表す。louvrúndo を王国そのものの流れとして詠む。

dúlo alfilrúndo du orén.

読み:ドゥーロ アルフィルルンド ドゥ オレーン。

dúl-oalfilrúndoduorén.
下る-<(重いものが)>白糸川<主格>下手縁<対格>

「白糸川は縁へ下る。」

VSOの基本語順。河川名 alfilrúndo は地上の水なので重性o語幹で、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ/縁へ」。地誌や帳簿の定型のような地文。

na þálo alfilrúndo némores.

読み:ナ サーロ アルフィルルンド ネーモレス。

naþál-oalfilrúndonémor-es.
<〜ない>止まる-<(重いものが)>細く絶えぬ流れ<主格><我々>-<属格>

「私たちの細く絶えぬ流れは止まらない。」

詩語としての alfilrúndo。河川名を「細く絶えぬ流れ」として、家系のように細く続くものを詠む用法。némores は1人称複数属格で「私たちの」。直説法否定。

lúnda faronár lundáis aurándos

読み:ルンダ ファロナール ルンダイス アウランドス

lúnd-afaronárlund-áisauránd-os
歌う-<(軽いものが)>運び人<主格>歌-<〜たちを>社-<属格>

「運び人が社の歌を歌う。」

社で歌われる歌の場面。faronár は単数の主語で、動詞は軽性単数一致 -a をとる。aurándo は重性o語幹名詞で、属格は -os。

glǘno lárno.

読み:グリューノ ラルノ。

glǘn-olárno.
凍る-<(重いものが)>岸<主格>

「岸が凍る。」

lárno は主語として現れる。重性o語幹名詞の単数主格は引用形 lárno そのまま。主語が重性なので動詞は 3人称単数・重性の -o をとる。

vólim plánan þailvéinoros

読み:ヴォーリン プラーナン サイルヴェーノロス

vól-implán-anþailvéinor-os
読む-<私が>帳簿-<対格>都-<属格>

「都の帳簿を読む。」

帳簿・帳場での場面。名詞句は中心語 plána の対格 plánan のあとに属格 þailvéinoros を置いて、「都の〜」を作る。þailvéinor を直接の目的語としてではなく、修飾語として属格にする点に注意。

vándo þailvéinor prámbo só

読み:ヴァンド サイルヴェーノル プランボ ソー

vánd-oþailvéinorprámbosó
量る-<(重いものが)>都<主格>値<対格>この<重性>

「都はこの値を決める。」

市・帳場での場面。prámbo は値を重さで表す語であり、vánd-「量る」がこの値を計って定める意味に転じて使う。þailvéinor は都側・当局を指す換喩。指示詞 só は名詞 prámbo と性のみで一致し、格には変化しない。

na éso esfóndos vóor un análoroi.

読み:ナ エーソ エスフォンドス ヴォール ウン アナーロロイ。

naés-oesfóndosvóorunanálor-oi.
<〜ない>いる-<(重いものが)>そもそも紫<主格>中に上手の国-<与格>

「上手の国には、そもそも紫がない。」

書物・交易説明向きの存在否定文。vóorは干潟から来た語として重性扱いで、動詞はéso。un análor-oiは「上手の国の中に」。esfóndosは品切れではなく、この国では原理的に生じないという含みを与える。

éso esfóndos gandér gróm.

読み:エーソ エスフォンドス ガンデール グローン。

és-oesfóndosgandérgróm.
いる-<(重いものが)>元来硬木<主格>重い

「硬木は、元来、重い。」

肯定文用法。硬木が重いのは一時的な性質ではなく、はじめからそうであるという言い方。語順は動詞・esfóndos・主語・述語形容詞。

tóra fleuréla gléinaros.

読み:トーラ フレウレーラ グレーナロス。

tór-afleurélagléinar-os
来る-<(軽いものが)>フレウレラ<主格>グレイナル-<属格>

「グレイナル家のフレウレラが来る。」

記録・系譜的な文。フルネームは名の後に家名の属格を置く。家名 gléinar は重性で、属格は -os となる。動詞は中心となる人名 fleuréla に一致して、軽性の -a をとる。

éso fúnel só lóun fáir daumárul.

読み:エーソ フーネル ソー ローン ファイル ダウマールル。

és-ofúnelsólóunfáirdaumár-ul
いる-<(重いものが)>綱<主格>この<重性>長い四腕-<〜ら(古い母音交替)>

「この綱は四腕長い。」

長さの単位としての用法。存在動詞 éso で主語 fúnel を受け、形容詞 lóun に単位句 fáir daumárul を続ける。数詞 fáir に伴う単位名詞は複数形。

éso daumár némes mór.

読み:エーソ ダウマール ネーメス モール。

és-odaumárném-esmór
いる-<(重いものが)>両腕の幅<主格><私>-<属格>大きい

「私の両腕幅は大きい。」

単位としてではなく、両腕を広げた幅そのものを表す用法。所有者は名詞の後ろの属格 ném-es で示す。daumár は重性名詞として éso を受ける。

ké fíndes halán es nébros

読み:ケー フィンデス ハラーン エス ネーブロス

kéfínd-eshalá-nesnébr-os
<〜か>聞く-<あなたが>呼び-<対格>から霧-<属格>

「霧の中から呼びを聞くか。」

日常で声の聞こえを尋ねる文。呼び声を fínd-「聞く」の直接目的語に取る。halá に単数対格 -n が接して halán となる。前置詞 es は方向を問わない出所を表し、属格と組む。

vándim ín rimbó tambóros.

読み:ヴァンディン イーン リンボー タンボーロス。

vánd-imínrimbótambór-os.
量る-<私が>一枡<対格>雑穀-GEN.

「雑穀を枡一枡、量る。」

日常の計量の場面。数量の単位として rimbó を用いる。不定の数量詞 ín は名詞の前に置き、測られた物は部分属格 tambóros で表す。

éso þóvo sílares vóloi.

読み:エーソ ソーヴォ シーラレス ヴォーロイ。

és-oþóvosílar-esvól-oi.
いる-<(重いものが)>影<主格>月-<属格>地面-DAT.

「月の影が地面にある。」

書物・詩的な場面。þóvo が主語で重性なので、存在動詞 és- は 3人称単数・重性の語尾 -o で受ける。þóvo sílares は「名詞+属格」の名詞句で「月の影」。vóloi は vól の与格で、「地面に」と裸の与格で場所を表す。

vrúelo dulmón só.

読み:ヴルーエロ ドゥルモーン ソー。

vrúel-odulmónsó.
懸かる-<(重いものが)>下げ振り<主格>この<重性>

「この下げ振りが下がっている。」

作業場で道具の働きを述べる文。重性o語幹の名詞が主語なので、動詞は3人称単数重性-oで一致する。名詞句は名詞+重性指示詞の順。

éso ílmo klér un dulúnoi.

読み:エーソ イルモ クレール ウン ドゥルーノイ。

és-oílmoklérundulún-oi.
いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい内に底-<与格>

「底のほうに冷たい水がある。」

器物や空間の底を日常の所在文で述べる例。un は与格と組んで「〜の中で/側に」を示し、dulún の与格は重性語幹に -oi が付いた形。

kráil plúrno sákos só!

読み:クライル プルルノ サーコス ソー!

kráilplúrnosák-ossó!
手に持つ<命令法>小袋<対格>塩-<属格>この<重性>

「この塩袋を手に持て。」

kráil は命令法・二人称単数の語幹形。plúrno は重性 o 語幹で、単数主格と単数対格が同形。指示詞 só は格変化せず重性を示すのみ。名詞の後ろに置かれた属格 sák-os は内容を表す「塩の」。

éso plúrno némes snír.

読み:エーソ プルルノ ネーメス スニール。

és-oplúrnoném-essnír.
いる-<(重いものが)>小袋<主格><私>-<属格>少ない

「わが懐中は乏しい。」

書物の格言調。plúrno は「懐中・随身の備え」を指す。存在の文で、名詞句 plúrno ném-es が主語、snír が述語になる。

múndula dórin nímbo es kúrmos.

読み:ムンドゥラ ドーリン ニンボ エス クルモス。

múndul-adórinnímboeskúrm-os.
注ぐ-<(軽いものが)>男<主格>乳<対格>から壺-<属格>

「男が壺から乳を注ぐ。」

大きな器からの注ぎ。es+属格 kúrm-os で出所を表す。この意味では、大きな器から小器へ少量を慎重に移す含意がある。

éso sélmo faronáres snír.

読み:エーソ セルモ ファロナーレス スニール。

és-osélmofaronár-essnír.
いる-<(重いものが)>汗<主格>運び人-<属格>少ない

「運び人の汗が少ない。」

書物の描写のような文。主語 sélmo が重性なので繋辞は-3SG.HV。属格 faronáres は faronár+-es。形容詞 snír が属格より後ろにあるため名詞句の外に出た述語と読み、「運び人の汗は少ない」とする。汗の量を記述する文。

táulim manó es krunþrénos só.

読み:タウリン マノー エス クルンスレーノス ソー。

tául-immanóeskrunþrén-ossó.
取る-<私が>椀<対格>から棚-<属格>この<重性>

「私はこの棚から椀を取る。」

日常の家事の文。tául-「取る」は他動詞で、目的語 manó を取る。es は属格と組んで「〜から」を表す。krunþrén は重性子音語幹で、単数属格は krunþrénos。指示詞 só は名詞句の最後に置く。

þóro krunþrén só un kórvoi.

読み:ソーロ クルンスレーン ソー ウン コルヴォイ。

þór-okrunþrénsóunkórv-oi.
立つ-<(重いものが)>棚<主格>この<重性>内に倉-<与格>

「この棚は倉に立っている。」

倉や家での物の配置を表す文。krunþrén は重性子音語幹の主格で無語尾。動詞 þór- は重性主語に合わせて3人称単数重性語尾 -o をとる。un+与格 kórvoi は「〜の中に」という静的な場所を示す。

ké éso ílmo só sakonén?

読み:ケー エーソ イルモ ソー サコネーン?

kéés-oílmosósakonén
<〜か>いる-<(重いものが)>水<主格>この<重性>しょっぱい

「この水はしょっぱいか。」

井戸端や台所で、味を確かめる日常の問い。重性名詞述語文で、主語名詞句は ílmo só、述語形容詞 sakonén を後に置く。はい/いいえの疑問は文頭 ké で作る。

éso dún só ául

読み:エーソ ドゥーン ソー アウル

és-odúnsóául
いる-<(重いものが)>丘<主格>この<重性>高い

「この丘は高い。」

ふだんの会話で使われる文。重性名詞 dún を指示詞 só までで主語とし、述語形容詞 ául をその後ろに置く。指示詞を先行させ、形容詞を名詞句内の修飾語ではなく述語として読む語順。

éso prámbo só ául

読み:エーソ プランボ ソー アウル

és-oprámbosóául
いる-<(重いものが)>値<主格>この<重性>高い

「この値は高い。」

縁の市で値について話す文。prámbo は「値」で、重性として扱う。指示詞 só を主語に立て、述語形容詞 ául を後ろに置く。

éso sáko só téir fáronul.

読み:エーソ サーコ ソー テール ファーロヌル。

és-osákosótéirfáron-ul.
いる-<(重いものが)>塩<主格>この<重性>三担ぎ-<〜たちが>

「この塩は三担ぎある。」

重量単位としての用法。物の重さを担ぎ数で表す日常の言い方。一担ぎは約三十キログラム。数詞は単位名詞の前に置き、三以上の数詞には重性名詞 fáron の複数形 fáronul を取る。主語 sáko は単数のため、動詞は3人称単数・重性の -o を受ける。

rímbim lím márul fúnelos.

読み:リンビン リーン マールル フーネロス。

rímb-imlímmár-ulfúnel-os.
数える-<私が>五手(長さの単位)-<〜たちを>綱-<属格>

「綱の五手分を数える。」

帳簿・記録での数量の言い方。数詞+単位 márul+対象の属格 fúnelos という定型で、「五手分の綱」を表す。単位としての már は重性の名詞として働く。

ké éso fúnel só ín ómbo?

読み:ケー エーソ フーネル ソー イーン オンボ?

kéés-ofúnelsóínómbo?
<〜か>いる-<(重いものが)>綱<主格>この<重性>一指<主格>

「この綱は、一指(の太さ)あるか。」

市での日常会話。長さ・幅を単位「指」で表す用法。存在・名詞述語文の主語 fúnel が重性単数なので、動詞 és- は重性 3 人称単数 -o をとる。単数の主格 ómbo は、語を切らずに一つの形態素として示す。

vrunkrílim fúnel fáronos

読み:ヴルンクリーリン フーネル ファーロノス

vrunkríl-imfúnelfáron-os
ほどく-<私が>綱<対格>荷-<属格>

「私は荷の綱を解く。」

一人称単数は語尾 -im が主語を表すので代名詞は省略する。名詞句は中心語 fúnel に属格 fáronos を後置する。荷の縄をほどく行為。

na tóro unlóur nebroþaló.

読み:ナ トーロ ウンロール ネブロサロー。

natór-ounlóurnebroþaló.
<〜ない>来る-<(重いものが)>まだ霧明け<主格>

「霧明けは、まだ来ていない。」

日常の会話で、霧期を終わらせる区切りがまだ来ていないことを言う文。nebroþalóは重性名詞で、主語になると動詞は3人称単数重性の-oで受ける。unlóurは否定の直説法と組んで「まだ〜していない」を表す。nebroþalóは霧が少し晴れる一時的現象ではなく、霧が下から這い上がらなくなる季節の区切りを指す。

sórel, táiso nebroauró.

読み:ソーレル、タイソ ネブロアウロー。

sórel,táis-onebroauró
今日来る<〜し終えた>-<(重いものが)>霧上げ<主格>

「今日、霧上げがやってきた(霧の季節が終わった)。」

日常の報告。tór- の完了語根 táis- で、現在に影響のある出来事を表す。季節語としての第二義。

auríþo nebroauró nébro an élvaran.

読み:アウリーソ ネブロアウロー ネーブロ アン エルヴァラン。

aur-íþ-onebroaurónébroanélvar-an
昇る-<〜させる>-<(重いものが)>霧上げ<主格>霧<対格>上手天-<対格>

「霧上げが霧を天へ持ち上げる。」

儀礼・詩の語り。nebroauró を自然現象の行為者として重性単数主格で使う。nébro の対格は主格と同形。方向は an+対格。

éso sindrasímbo krúmoi némes.

読み:エーソ シンドラシンボ クルーモイ ネーメス。

és-osindrasímbokrúm-oiném-es.
いる-<(重いものが)>役札<主格>腰-<与格><私>-<属格>

「私には腰に役札がある。」

日常文。存在の文は動詞és-が主語に一致し、重性o語幹のsindrasímboは単数名詞。身体部位に属するものを示すときは、与格の身体部位krúm-oiに、属格の人称代名詞ném-esを後置する。腰に役札を下げていて、現在役にあることを示す場面。

éso sindrasímbo símbo aldáres.

読み:エーソ シンドラシンボ シンボ アルダーレス。

és-osindrasímbosímboaldár-es.
いる-<(重いものが)>役札<主格>印<主格>座-<属格>

「役札は座の印である。」

書物や帳場での定義文。繋辞és-による述語名詞文で、述語名詞は自分の格と性を保つ。名詞+属格の順で「座の印」を作り、役札が座(役)を象徴するしるしであることを説明する。

éso mardrál némes klér.

読み:エーソ マルドラール ネーメス クレール。

és-omardrálném-esklér.
いる-<(重いものが)>手首<主格><私>-<属格>冷たい

「私の手首は冷たい。」

日常会話で身体の状態を述べる文。éso(és-o)は存在・述語の動詞 és-「いる」に 3 人称単数・重性の語尾 -o がついた形。主語名詞句「mardrál némes(私の手首)」が重性なので、動詞は 3 人称単数・重性になる。属格 ném-es は名詞の後ろに置かれ、述語の形容詞 klér は名詞句の外に置かれる。

éso unlóur þrén fandáres slóura.

読み:エーソ ウンロール スレーン ファンダーレス スローラ。

és-ounlóurþrénfandár-esslóura.
いる-<(重いものが)>まだ段<主格>新入り-<属格>空欄<主格>

「新入りの身分は、まだ空欄扱いである。」

空欄の転義。身分・扱いが未確定である状態を指す。主語 þrén が重性なので存在動詞は -o、述語名詞 slóura は軽性の主格のまま。

lóima ólmar þelán ráimaros, duói lóima ólmar þelán gléinaros.

読み:ロイマ オルマル セラーン ライマロス、ドゥオイ ロイマ オルマル セラーン グレーナロス。

lóim-aólmarþel-ánráimar-os,duóilóim-aólmarþel-ángléinar-os.
唱える-<(軽いものが)>年長者<主格>名前-<対格>ライマル-<属格>その次に唱える-<(軽いものが)>年長者<主格>名前-<対格>グレイナル-<属格>

「年長者がライマルの名を唱え、その次に、グレイナルの名を唱える。」

系譜の名を一瀬ずつ唱える儀礼の場面。duóiは名と名を結び、前の名を上手、次の名を下手に置く。名は属格で「〜の名」とする。主語は年長者。

éso fáron némei, salóur na ésa faronár.

読み:エーソ ファーロン ネーメイ、サロール ナ エーサ ファロナール。

és-ofáronném-ei,salóurnaés-afaron-ár.
いる-<(重いものが)>荷<主格><私>-<与格>ところが<〜ない>いる-<(軽いものが)>荷-<〜する人・主格>

「荷はある。ところが、運び人がいない。」

市でのやりとり。荷があるのに、それを担ぎ上げる運び人がいない、商いとして当然の取り合いが成り立たない展開を示す。「ところが」の用法。fáron は重性なので存在動詞 éso、faronár は人を指す軽性なので存在動詞 és-a。faron-ár は fáron「荷」+-ár「〜する人」。salóur は後文の頭、否定の na より前に置く。

éso sáko némei, salóur na éso vandó.

読み:エーソ サーコ ネーメイ、サロール ナ エーソ ヴァンドー。

és-osákoném-ei,salóurnaés-ovandó.
いる-<(重いものが)>塩<主格><私>-<与格>ところが<〜ない>いる-<(重いものが)>分銅<主格>

「塩はある。ところが、分銅がない。」

市や倉での計測・取引の場面。塩があるのに、重さを確かめる基準としての青銅の分銅がない。sáko, vandó は重性なので存在動詞 éso。salóur は後文の頭、na より前に置く。

éso fáron gróm, esós éso tromsnór nalóun.

読み:エーソ ファーロン グローン、エソース エーソ トロンスノール ナローン。

és-ofárongróm,esósés-otromsnórnalóun.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重い,だからいる-<(重いものが)>歩幅<主格>短い

「荷が重いので、歩幅は短い。」

荷場での日常の言い方。荷の重さを見積もる場で、足から足の間隔が短くなることを言う。身分の「段」ではなく、歩幅を意味するtromsnórの直義。

éso tromsnór só póilma faronáres.

読み:エーソ トロンスノール ソー ポイルマ ファロナーレス。

és-otromsnórsópóilmafaronár-es.
いる-<(重いものが)>歩みの癖<主格>この<重性>仕草<主格>運び人-GEN.

「この歩みの癖は、運び人の所作だ。」

書物語や解説でtromsnórの比喩用法を言い換える文。述語名詞póilmaは自分の性・主格のまま置かれる。tromsnór第二の義「歩みの癖」を明示する。

ké tóres es dáloros, orvél tóres es orénos?

読み:ケー トーレス エス ダーロロス、オルヴェール トーレス エス オレーノス?

kétór-esesdálor-os,orvéltór-esesorén-os?
<〜か>来る-<あなたが>から下国-<属格>,OR来る-<あなたが>から縁-<属格>?

「下の国から来たのか、それとも縁から来たのか。」

道中や再会で相手の出所を二者択一で問う日常句。kéは最初の節にのみ置き、orvélは二つ目の節の頭に置く。2人称は動詞語尾に現れるため、主語代名詞は繰り返さない。

éso velmár éles fóum

読み:エーソ ヴェルマール エーレス フォーン

és-ovelmárél-esfóum
いる-<(重いものが)>右<主格><3人称単数・軽性>-<属格>暖かい

「彼の右手は暖かい。」

主語の velmár は重性単数主格。体部分の所属を示す属格 éles は後に置き、被修飾名詞は主格のまま。

éso velmár núl an ormároi

読み:エーソ ヴェルマール ヌール アン オルマーロイ

és-ovelmárnúlanormár-oi
いる-<(重いものが)>右<主格>低い上手左-<与格>

「右側は左より低い。」

宮廷の左右の作法を説明する文。比較は述語形容詞の後に an+与格。núl は位階的に一段低い低さを含む。

éso frumó gáuloi némes.

読み:エーソ フルモー ガウロイ ネーメス。

és-ofrumógául-oiném-es.
いる-<(重いものが)>傷<主格>脛-<与格><私>-<属格>

「私の脛に傷がある。」

日常の身体に関する文。gáulは重性の身体名詞で、体部に傷・不調があることを言う際、体部に与格単数、所有者をその直後に属格で添える。存在の動詞és-は主語であるfrumó(傷)の重性単数に一致し、gáuloiは主語ではない。

un drúnoroi, þráilo gául só.

読み:ウン ドルーノロイ、スライロ ガウル ソー。

undrúnor-oi,þráil-ogáulsó.
内に崖道-<与格>しびれる-<(重いものが)>脛<主格>この<重性>

「崖道では、この脛がしびれる。」

崖道をun+与格で動詞前の場面に置き、身体の状態を言う日常文。gáulは重性単数主語として動詞þráil-を重性の語尾-oで受け取る。指示詞sóは名詞句の末尾に置かれ、格ではなく性で形を選ぶ。

ké éso kumborhóum pír?

読み:ケー エーソ クンボルホーン ピール?

kéés-okumborhóumpír?
<〜か>いる-<(重いものが)>クンボルホウム<主格>小さい

「クンボルホウムは小さいですか。」

日常で、町の大きさについて尋ねる文。繋辞 éso は主語 kumborhóum の重性に一致して -o を受ける。固有名詞は主格無標で、述語形容詞 pír も重性単数主格の無標形。

vóilim plíndo es kumborhóumos.

読み:ヴォイリン プリンド エス クンボルホーモス。

vóil-implíndoeskumborhóum-os
読む-<私が>荷札<対格>からクンボルホウム-<属格>

「私はクンボルホウムからの荷札を読む。」

帳場や市での読み上げの場面。es「〜から」+属格で、荷札 plíndo の産地・送り元を示す。固有名詞 kumborhóum は重性語として属格 -os を受ける。plíndo は重性単数で、対格は主格と同形の無標。

éso filduló tén.

読み:エーソ フィルドゥロー テーン。

és-ofildulótén.
いる-<(重いものが)>刻み通路<主格>浅い

「刻み通路は浅い。」

作業記録のような場面。主語 filduló は重性・単数・主格で、述語形容詞 tén は重性単数主格で無語尾。

éso trǘlmo tén.

読み:エーソ トリュルモ テーン。

és-otrǘlmotén.
いる-<(重いものが)>裂け目<主格>浅い

「裂け目は浅い。」

書物の記述のような場面。主語 trǘlmo は重性・単数・主格、述語形容詞 tén は無語尾。定着がないため、一般的事柄としても読める。

ké éso snúlvo tén?

読み:ケー エーソ スヌルヴォ テーン?

kéés-osnúlvotén?
<〜か>いる-<(重いものが)>穴<主格>浅い

「穴は浅いのか。」

日常会話での問い。ké が文頭に立つ。主語 snúlvo は重性・単数・主格、述語形容詞 tén は無語尾。穴について底がすぐ近くにあることを尋ねる。

éso ilmándo bún.

読み:エーソ イルマンド ブーン。

és-oilmándobún.
いる-<(重いものが)>井戸<主格>深い

「井戸は深い。」

日常で井戸の深さを述べる言い切り。主語 ilmándo は場所名詞接尾辞 -ándo をもつ重性o語幹で、存在・繋辞の és- はこれに一致して重性単数の -o をとる。述語形容詞 bún は重性単数主格では無標。

ké éso ílmo bún?

読み:ケー エーソ イルモ ブーン?

kéés-oílmobún?
<〜か>いる-<(重いものが)>水<主格>深い

「水は深いか。」

水場の深さを確かめる日常的な問い。はい/いいえの問いは文頭の小辞 ké で作る。地面を流れる水 ílmo は重性o語幹で、存在・繋辞は -o に一致する。形容詞 bún は無標の重性単数主格形。

éso nébro bún.

読み:エーソ ネーブロ ブーン。

és-onébrobún.
いる-<(重いものが)>霧<主格>深い

「霧が深い。」

暦文・儀礼文のような簡潔な事実記述。nébro は重性o語幹で、存在・繋辞は -o に一致する。霧の奥行きは、天を経ず下から湧くものとして警戒されるため、人ではなく状況だけを述べる言い切りが使われる。

ké éso helándo un méndalei?

読み:ケー エーソ ヘランド ウン メンダレイ?

kéés-ohelándounméndal-ei?
<〜か>いる-<(重いものが)>休み場<主格>内に中-<与格>

「休み場はありますか。」

日常会話での問い。存在・繋辞の és- が重性名詞 helándo を主語として受けるため、動詞は 3 人称単数・重性の éso。helándo は主格単数。存在文で場所も持ち主も言わない場合は un méndalei「この世に」を添える。

ké prénda líura némes ráun gléinaros?

読み:ケー プレンダ リーウラ ネーメス ラウン グレーナロス?

képrénd-alíuraném-esráungléinar-os?
<〜か>移る-<(軽いものが)>女<主格><私>-<属格>流れ<対格>グレイナル-<属格>

「娘はグレイナルの流れへ嫁いだのか。」

日常の会話を想定した是非問い。意味2では、家系を「流れ」と言い、結婚して配偶者側の家系へ入ることを prénd- で表す。目的語として置く「流れ」は移り先を示す道のりの対格で、家系名は属格で名詞句に後続する。

prénda líura ráun bréles es ráunos ráimaros.

読み:プレンダ リーウラ ラウン ブレーレス エス ラウノス ライマロス。

prénd-alíuraráunbrél-esesráun-osráimar-os.
移る-<(軽いものが)>女<主格>流れ<対格>兄弟-<属格>から流れ-<属格>ライマル-<属格>

「その女はライマルの流れから離れて、きょうだいの流れへ移った。」

記録文・儀式の文を想定する。意味2は離縁して元の家の流れへ戻る場合にも使う。行き先となる家系の流れを直接目的語に置き、離れていく家系を es と属格で表す。前置詞句では頭名詞「流れ」も属格になる。

þuláura naþelár, áuro nóumo éles

読み:スラウラ ナセラール、アウロ ノーモ エーレス

þuláur-anaþelár,áur-onóumoél-es
得意がる-<(軽いものが)>若者<主格>,上がる-<(重いものが)>顔<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「青年は得意がっており、顔が上がっている。」

得意がりを述べる文に、顔が上がった様子を無接続で添える常套句。主語の若者に動詞が軽性一致し、顔は体の部分で重性なので áur- が重性一致する。顔一面に得意が表れた意。

éso reinplén ín un kórv-oi.

読み:エーソ レインプレーン イーン ウン コルヴォイ。

és-oreinplénínunkórv-oi
いる-<(重いものが)>雨よけ<主格>一内に倉-<与格>

「倉の中に雨よけがある。」

存在文。不定の閉じínを名詞句の終わりに置いている。存在する対象の雨よけが重性なので、繋辞は3人称単数・重性。倉の中に仕舞っているものを数える場面の書きつけにも使える。

éso gandér euléren es lónes.

読み:エーソ ガンデール エウレーレン エス ローネス。

és-ogandéreuléreneslón-es.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>違うから柱の木-<属格・単数>

「硬木は柱の木とは違う。」

物の種類や材質の違いを比べる中立的な用法。比べる相手は es+属格で示す。gandérは重性で、euléren は重性単数の形。lónaは軽性で属格単数は lónes。

éso nébro só wáim.

読み:エーソ ネーブロ ソー ワイン。

és-onébrosówáim
いる-<(重いものが)>霧<主格>この<重性>侮れない

「この霧は侮れない。」

警告的な判断文。指示詞 só を後置した重性単数の主語 nébro に対して、述語形容詞 wáim は主格単数無語尾となる。

éso tambór wáim un kórvoi.

読み:エーソ タンボール ワイン ウン コルヴォイ。

és-otambórwáimunkórv-oi
いる-<(重いものが)>雑穀<主格>相当の内に倉-<与格>

「倉に相当の雑穀がある。」

存在文。重性単数の tambór に形容詞 wáim が主格単数で後続し、場所 un kórvoi がそれに続く。

ké éso puló só sélen?

読み:ケー エーソ プロー ソー セーレン?

kéés-opulósósélen
<〜か>いる-<(重いものが)>拍<主格>この<重性>正しい

「この拍は正しいですか。」

帳簿や数えの記録で、刻んだ拍に狂いがないか確かめるやり取り。はい・いいえで答える問いは文頭に ké を置く。主語 puló が重性なので、繋辞 és- は 3人称単数・重性の éso になる。指示詞 só が重性の名詞句を閉じ、その後の sélen が述語形容詞として立つ。

frándo puló só.

読み:フランド プロー ソー。

fránd-opulósó
並ぶ-<(重いものが)>拍子<主格>この<重性>

「この拍子は揃っている。」

荷担ぎ歌や運び人の列で、足音や打点が乱れず続いている場面。意味 2 の「拍子」では、軽い打点が揃ったまとまりを単数 puló で受ける。動詞 fránd- は主語に一致して 3人称単数・重性の frándo を取る。語根末の nd は母音で始まる語尾の前では脱落しない。

lísa lisár mirkrilíman kórvos.

読み:リーサ リサール ミルクリリーマン コルヴォス。

lís-alis-ármirkril-ím-ankórv-os.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>分ける-<〜の技・〜さ>-<対格>倉-<属格>

「書記が倉の持ち場割りを書きつける。」

記録・帳場の場面。名詞句は中心語 mirkrilíman の後ろに属格 kórvos を置き、「倉の分ける配分=持ち場割り」とする。lisár は lís-「書く」に行為者接尾辞 -ár を付けた語。mirkrilím は対格 mirkrilíman で直接目的語になる。

ké éso mérvo só lárno?

読み:ケー エーソ メルヴォ ソー ラルノ?

kéés-omérvosólárno?
<〜か>いる-<(重いものが)>村<主格>この<重性>湖畔<主格>

「この村は湖畔の集落か。」

名詞述文による尋ね。lárno は水際そのものではなく、湖畔の低い土地・集落を指す用法。述語名詞は主語に一致せず、主格のまま置く。

éso vandó krán.

読み:エーソ ヴァンドー クラーン。

és-ovandókrán.
いる-<(重いものが)>青銅の重り<主格>硬い

「青銅の重りは硬い。」

事物の性質を述べる記述文。主語 vandó が重性o語幹の単数なので、繋辞 éso は -o にとり、述語形容詞 krán は主語に一致して単数の形(語尾なし)で置く。物体としての青銅の重りについて述べる文である。

éso eelþó só nagléin.

読み:エーソ エールソー ソー ナグレーン。

és-oeelþósóna-gléin.
いる-<(重いものが)>灰汁<単数><主格>この<重性><〜ない>-清い

「この灰汁は濁っている。」

日常会話で、洗い水としての灰汁の状態を述べる文。主語が重性なので、存在・繋辞の動詞は3単重性の-oで受ける。名詞の直後に重性指示詞sóを置く。nagléinはgléin「清い」に否定接頭辞na-を付けた形容詞で、ここでは灰汁が澄んでいないことを「清からぬ」と述べている。

trolþálo tról só.

読み:トロルサーロ トロール ソー。

trolþál-otrólsó.
踏ん張る-<(重いものが)>足<主格>この<重性>

「この足が踏ん張っている。」

足 tról は体の部分として重性扱いになる。主語 tról に対して動詞は 3人称単数・重性の語尾 -o を受ける。指示詞 só も重性。

lúin krúelo fáron, trolþála faronár.

読み:ルーイン クルーエロ ファーロン、トロルサーラ ファロナール。

lúinkrúel-ofáron,trolþál-afaron-ár.
とき動く-<(重いものが)>荷<主格>踏ん張る-<(軽いものが)>荷-<〜する人>

「荷が揺れると、運び人が踏ん張る。」

lúin で導く時節も動詞が節の先頭。荷 fáron は重性なので krúelo。主語 faronár は人を表す語で軽性なので、動詞は 3人称単数・軽性の -a を受ける。

próso fáron néman, esós trolþálim.

読み:プローソ ファーロン ネーマン、エソース トロルサーリン。

prós-ofáronném-an,esóstrolþál-im.
押す-<(重いものが)>荷<主格><私>-<対格>だから踏ん張る-<私が>

「荷が私を押すので、私は踏ん張る。」

荷は重性なので prós- は 3人称単数・重性の -o を受ける。一人称代名詞の対格は néman と書き、形態素境界は ném-an と書く。esós は直前の出来事を理由として後続の節を導く。荷の力を受け止める意味では、圧力に耐える場そのものが想定される。

þáimim ílmo es ilmándos.

読み:サイミン イルモ エス イルマンドス。

þáim-imílmoesilmánd-os
汲む-<私が>水<対格>から井戸-<属格>

「私は井戸から水を汲む。」

日常の井戸仕事の文。þáim-「汲む」の目的語 ílmo は重性o語幹のため、単数対格も ílmo のまま。es は前置詞で、属格 ilmándos と組んで「井戸から」を表す。

glǘno ílmo un ilmándoi.

読み:グリューノ イルモ ウン イルマンドイ。

glǘn-oílmounilmánd-oi
凍る-<(重いものが)>水<主格>内に井戸-<与格>

「井戸の中で、水が凍る。」

季節の観察・記録向きの文。un は前置詞で、与格 ilmándoi と組んで「井戸の中で」を表す。主語 ílmo は重性o語幹なので、動詞の一致は重性3人称単数 -o になる。

sórel, éso dulilmó gróm némei.

読み:ソーレル、エーソ ドゥリルモー グローン ネーメイ。

sórel,és-odulilmógrómném-ei.
今日いる-<(重いものが)>下からの恵み<主格>重い<私>-<与格>

「今日は、私には重い下からの恵みがある。」

日常のつぶやき。動詞の後ろに裸の与格があるので存在・所有の文。「gróm」は与格より前にあるので主語名詞を修飾する。「dulilmó」は蓋無しの器そのものではなく、下から届く重く有難いものを指す詩語的用法。

éso krailó ível kumbóros só.

読み:エーソ クライロー イーヴェル クンボーロス ソー。

és-okrailóívelkumbór-ossó.
いる-<(重いものが)>持ち部<主格>新しい青銅-<属格>この<重性>

「ここに、この新しい青銅の持ち部がある。」

日常の道具の場面。存在の文 éso は、重性の主語 krailó に一致する。krailó は重性o語幹の単数主格で、対格も同じ形。形容詞 ível(新しい)と材料を示す属格 kumbór-os を伴い、重性の指示詞 só が名詞句を閉じる。意味2では、単なる取っ手ではなく、正式な持ち部を示す語として用いられる。

vróelo fúnel só.

読み:ヴローエロ フーネル ソー。

vróel-ofúnelsó
揺れる-<(重いものが)>綱<主格>この<重性>

「この綱が小刻みに揺れている。」

戸口や納屋に吊した綱が、固定点の周りでわずかに揺れる日常の場面。vróel- の意味3は、荷が大きく位置をずらす動きではなく、定まった物を中心として小刻みに傾く動きを表す。指示詞 só は重性名詞 fúnel に一致する。

éso snívo selvapúl.

読み:エーソ スニーヴォ セルヴァプール。

és-osnívoselvapúl.
いる-<(重いものが)>羽<主格>くすぐったい

「羽はくすぐったい。」

羽根など、細く軽いものが皮膚にかすかに触れる場面で使う。単数主語の述語形容詞は、軽重ともに無語尾になる。

glǘno senosnívo.

読み:グリューノ セノスニーヴォ。

glǘn-osenosnívo.
凍る-<(重いものが)>睫毛<主格>

「睫毛が凍る。」

書物・自然観察の短文。睫毛を肉体の一部として重性に取り、動詞は重性3人称単数 -o で受ける。時制のない現在・習慣的な文で、凍りの頃の描写に使える。

lúin tór-o nébro es orénos, gúma tíula.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス、グーマ ティーウラ。

lúintór-onébroesorén-os,gúm-atíula
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>くぐもる-<(軽いものが)>音<主格>

「縁から霧が上がってくると、音がくぐもる。」

縁や崖道の日常語としての場面。主節・従属節ともに動詞を先頭にする。霧 nébro は重性なので、来るの動詞は3人称単数・重性の -o になる。es は属格と組んで「〜から」。

éso soilkrélvo só krélvo.

読み:エーソ ソイルクレルヴォ ソー クレルヴォ。

és-osoilkrélvosókrélvo.
いる-<(重いものが)>髪鉤<主格>この<重性>鉤<主格>

「この髪鉤は鉤の形である。」

書の記述のような定義的な文。soilkrélvoを髪鉤として受け、述語名詞krélvoで鉤としての形を説明する。指示詞sóは重性。

pléuro lirkrunó.

読み:プレウロ リルクルノー。

pléur-olirkrunó.
役立つ-<(重いものが)>糸巻き<主格>

「糸巻きは役に立つ。」

織り場や道具作りの場での、道具の効用についての日常的な文。主語 lirkrunó は重性o語幹の単数主格で、動詞 pléur- に重性の語尾 -o が付く。sense 1 の「糸巻き」として読む。

éso lirkrunó un kórvoi.

読み:エーソ リルクルノー ウン コルヴォイ。

és-olirkrunóunkórv-oi.
いる-<(重いものが)>糸巻き<主格>内に倉-<与格>

「倉の中に、糸巻きの小棒がある。」

倉の帳簿や在庫の記録向きの文。un kórv-oi で「倉の中で」。この文脈では lirkrunó を sense 2 の「糸巻き用の小棒」として取る。

éso nébro ráuvoi.

読み:エーソ ネーブロ ラウヴォイ。

és-onébroráuv-oi.
いる-<(重いものが)>霧<主格>森の帯-<与格>

「森の帯に霧がある。」

日常の天候についての話。存在文の場所を裸の与格 ráuvoi で表す。「森の帯」という地域を指す用法。

tóro gandér es ráuvos.

読み:トーロ ガンデール エス ラウヴォス。

tór-ogandéresráuv-os.
来る-<(重いものが)>硬木<主格>から森の帯-<属格>

「硬木は森の帯から出てくる。」

交易・帳簿の場面。es+属格で「〜から」。地域としての森の帯を、硬木の供給元として指す。

grúuno ráuvo.

読み:グルーノ ラウヴォ。

grúun-oráuvo.
怒る-<(重いものが)>森の氏族<主格>

「森の氏族が怒っている。」

炉ばたでの日常会話。森そのものではなく、森の氏族・領分を換喩で指す。集団を単数として扱う。

un pǘlmoi glünvráno drólmo

読み:ウン ピュルモイ グリュンヴラーノ ドロルモ

unpǘlm-oiglünvrán-odrólmo
内に草鞋-<与格>かじかむ-<(重いものが)>趾<主格>

「草鞋の中では趾先がかじかむ。」

日常会話向けの文。草鞋の中で趾先が冷えて感覚がなくなることを言う。drólmo は重性名詞で、五本の趾をひとまとまりとして扱う場合は主格単数とする。動詞 glünvrán- は重性単数の主語を受けて -o。un + 与格 pǘlmoi で「草鞋の中で」。

éso dóulin sáko némei

読み:エーソ ドーリン サーコ ネーメイ

és-odóulinsákoném-ei
いる-<(重いものが)>もう塩<主格><私>-<与格>

「私にはもう塩がある。」

所有を「いる+持ち主の与格」で表す未完了の存在文。dóulin は動詞の直後、主語の前に置かれ、持ち物がある状態がすでに続いていることを表す。日常の台所や帳場でよく用いられる語調。

na éso dóulin fáron un kórvoi

読み:ナ エーソ ドーリン ファーロン ウン コルヴォイ

naés-odóulinfáronunkórv-oi
<〜ない>いる-<(重いものが)>もはや荷<主格>内に倉-<与格>

「倉の中にはもはや荷がない。」

na と dóulin が組む否定の存在文。na は動詞の前に置かれ、dóulin は「その事柄のところを時の流れが通り過ぎた」という取り返しのかからない含みを添える。un+与格 kórvoi で倉の中の場所を示す。帳場・倉の記録などで用いられる語調。

na éso dóulin múrno un méndalei

読み:ナ エーソ ドーリン ムルノ ウン メンダレイ

naés-odóulinmúrnounméndal-ei
<〜ない>いる-<(重いものが)>もはや腐り氷<主格>内に中-<与格>

「腐り氷はもはやこの世にない。」

場所を特定しない不在文には un méndalei を添える。重性の自然名詞 múrno を主語に取り、na+未完了の存在文+dóulin で「かつてあったが今はもうない」を表す。季節の終わりや消失を告げる、やや書面語的な語調。

éso unlóur ílmo un kórvoi.

読み:エーソ ウンロール イルモ ウン コルヴォイ。

és-ounlóurílmounkórv-oi.
いる-<(重いものが)>まだ水<主格>内に倉-DAT.

「倉の中には、まだ水がある。」

肯定の存在文で、ある状態がまだ続いていることを表す。否定の小辞 na は伴わない。存在・所有の文では、動詞は持ち主ではなく持たれている物 ílmo に一致する。

gǘla senár sáindaran es kórvos.

読み:ギューラ セナール サインダラン エス コルヴォス。

gǘl-asen-ársáindar-aneskórv-os
取り出す-<(軽いものが)>見る-<〜する人>証文-<対格>から倉-<属格>

「目付は証文を倉から取り出す。」

市の帳場での検め。主語 senár は人で軽性なので、動詞は3人称単数軽性 -a。sáindaran は軽性子音語幹の対格。es は属格を支配し「〜から」。kórvos は kórvo の属格で、倉から出す出所を示す。gǘl- は単に外へ出すだけでなく、中身を出して並べ広げるまでを指す。

gǘl sáko es kúrmos, ende.

読み:ギュール サーコ エス クルモス、エンデ。

gǘlsákoeskúrm-os,ende
取り出す<命令法><あなたが>塩<対格>から壺-<属格>どうぞ

「壺から塩を取り出してくれ、頼む。」

家庭・倉での日常的な依頼。命令法2人称は語幹のむき出し gǘl。sáko は重性o語幹で、対格も無標。es kúrmos は壺からの出所。ende は願望語尾が固まった「どうぞ」。日常では目的語が容器から出して並べるまでを含み、塩を量るための下準備を言う。

éso prámbo viréi sé.

読み:エーソ プランボ ヴィレー セー。

és-oprámbovir-éisé
いる-<(重いものが)>値打ち<主格>言葉-<与格>この<軽性>

「この言葉には値打ちがある。」

prámbo の語義 2「値打ち」。存在文に与格を組み合わせた「〜には値打ちがある」の言い方。prámbo は重性なので動詞は éso となる。virá の与格 viréi の後に指示詞を添えて「この言葉」とする。

na éso prámbo torárei sé.

読み:ナ エーソ プランボ トラーレイ セー。

naés-oprámbotorár-eisé
<〜ない>いる-<(重いものが)>値打ち<主格>客-<与格>この<軽性>

「この客には値打ちがない。」

torár の与格 torárei に指示詞 sé を添える。torár は軽性。人をこの形にすると「この人は値打ちがない」という当てこすりになる。

éso fáron gróm salván.

読み:エーソ ファーロン グローン サルヴァーン。

és-ofárongrómsalván.
いる-<(重いものが)>荷<主格>重い〜すぎる

「荷は重すぎる。」

日常の言い回し。不変化の小辞 salván を形容詞 gróm の後ろに置く。重性単数主格では形容詞に格語尾がつかず、salván も変わらない。

éso fáron vánden salván.

読み:エーソ ファーロン ヴァンデン サルヴァーン。

és-ofáronvánd-ensalván.
いる-<(重いものが)>荷<主格>量る-<〜した・〜された>秤を越えて

「荷は規定の分銅を越えて量られている。」

市の目付や倉の司の記録的な言い方。vánden salván で「量り越されている」。原句 sal vándoi を縮めた度量衡の感覚が残る。

éso bérun só snóil.

読み:エーソ ベールン ソー スノイル。

és-obérunsósnóil
いる-<(重いものが)>道<主格>この<重性>狭い

「この道は狭い。」

存在・述語形容の文。指示詞 só が名詞句 bérun só を閉じ、述語形容詞 snóil がその後ろに続く。主語 bérun は重性単数で、述語形容詞も重性単数形(無接語)になる。

éso bérun só fóndel.

読み:エーソ ベールン ソー フォンデル。

és-obérunsófóndel
いる-<(重いものが)>谷の道<主格>この<重性>古い

「この谷の道は古い。」

氏族の谷の道を指す用法。述語形容詞 fóndel は「由緒ある古い」の意。指示詞 só が名詞句を閉じた後ろに述語形容詞が来る。

éso bérun slúun daumárur.

読み:エーソ ベールン スルーン ダウマールル。

és-obérunslúundaumár-ur
いる-<(重いものが)>道(単位)<主格>千腕-<〜らの>

「道(長さの単位)は千腕である。」

長さ単位としての用法。slúun は名詞として働き、数える対象を複数属格で受ける。daumár は重性で、複数属格は daumárur。

hoinkráilim fáron es máros ós.

読み:ホインクライリン ファーロン エス マーロス オース。

hoinkráil-imfáronesmár-osós
手受け-<私が>荷<対格>から手-<属格><3人称単数・重性・属格>

「私は彼の手の荷を受け取る。」

日常の実務的な場面。手受け義で荷を目的語に取る。es が支配する属格句で出所を表す。所属は possessum と possessors を属格で示す。3人称重性単数属格の代名詞は語全体の形 ós として扱い、ó-s と分割しない。

lúin glǘno glünó, krása lóna.

読み:ルーイン グリューノ グリュノー、クラーサ ローナ。

lúinglǘn-oglünó,krás-alóna.
とき凍る-<(重いものが)>氷<主格>ひびが入る-<(軽いものが)>柱の木<主格>

「氷が凍ると、柱の木にひびが入る。」

凍りの頃に立ち木が寒さで縦に裂けることを言う。副文は lúin に導かれ、動詞が主語に先立つ。主文も VSO で krása lóna とする。lóna は軽性なので、動詞は軽性の krása をとる。割れきって粉になる意味ではなく、裂け目が入る意味。

kráso món só.

読み:クラーソ モーン ソー。

krás-omónsó.
ひびが入る-<(重いものが)>石<主格>この<重性>

「この石にひびが入った。」

石が層に沿って割れ目が入った文。món は重性なので、動詞は重性の kráso をとる。粉々に砕けた意味ではなく、割れ目が入った意味。

éso gandér só krásen.

読み:エーソ ガンデール ソー クラーセン。

és-ogandérsókrás-en.
いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>割れあり-<〜した・〜された>

「この硬木には割れがある。」

検めや会話で、材木に割れがあることを述べる文。主語 gandér と指示詞 só が重性、分詞 krásen が重性単数の述語として機能する。帳簿や荷札では品名に krásen を添えて「割れあり」と記す。

lísim plíndo só ré éso gandér só krásen.

読み:リーシン プリンド ソー レー エーソ ガンデール ソー クラーセン。

lís-implíndosóréés-ogandérsókrás-en.
書く-<私が>札<対格>この<重性><〜と(節)>いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>割れあり-<〜した・〜された>

「私はこの荷札に、この硬木には割れがある、と書き込む。」

帳簿や荷札に、硬木に割れがあることを書き記す場面。主文は第一人称の lísim で、目的語 plíndo só のあとに ré で内容節を置く。内容節は éso gandér só krásen で、krásen が「割れあり」の検めの語として述語になる。

éso raumvirá tó gróm.

読み:エーソ ラウンヴィラー トー グローン。

és-oraumvirátógróm.
いる-<(重いものが)>噂<主格>あの<重性>重い

「あの陰口は、品がなくて重い。」

日常の炉ばたで、特定の中傷を断じる言い方。語そのものは本来軽性だが、指示詞 tó・動詞 éso・形容詞 gróm をわざと重性で受け、「下へ落ちる言葉」「泥の言葉」として蔑む。語形 raumvirá は元の軽性の形のまま。

un nébroi, éso raumvirá tó múr.

読み:ウン ネーブロイ、エーソ ラウンヴィラー トー ムール。

unnébr-oi,és-oraumvirátómúr.
内に霧-<与格>いる-<(重いものが)>噂<主格>あの<重性>濁った

「霧の中では、あの陰口は濁っている。」

霧期を背景にした日常的な評。un nébroi は「霧の中」と場を限定する。重性一致により、霧が下の国から湧くものとされる含みが重なり、múr は内容の根も葉なさにも転じている。

sáilo mérvo só.

読み:サイロ メルヴォ ソー。

sáil-omérvosó.
喜ぶ-<(重いものが)>村の人々<主格>この<重性>

「この村の人々は喜んでいる。」

mérvo は村そのものではなく、村の住人をひとまとまりの集合として指す用法。動詞は文法上は重性の単数で受けるが、住人が人であることを強く意識する話者は軽性の形を使うこともある。指示詞 só は grammatical に重性名詞句を閉じる。

lóimo mérvo lourlisán.

読み:ロイモ メルヴォ ロウルリサーン。

lóim-omérvolourlis-án.
唱える-<(重いものが)>村の人々<主格>系譜の巻-ACC.

「村の人々は系譜の巻を唱える。」

系譜や儀礼を記す文脈でも、mérvo は村の住人全体を指す語として使える。動詞は grammatical に重性の単数で受ける。語順は動詞—主語—目的語。

fíndim virán mérvos.

読み:フィンディン ヴィラーン メルヴォス。

fínd-imvir-ánmérv-os.
聞く-<私が>言葉-<対格>田舎-<属格>

「私は田舎の言葉が聞こえる。」

名詞に後置された属格 mérvos は「田舎の」。日常では単に都の外、とくに湖盆の村由来であることを示すだけだが、改まった場で人やその言葉・持ち物に対して使うと、田舎くさいという見下した含みを持つ。

klambíres ó dáu mónoun táses, táules ó.

読み:クランビーレス オー ダウ モーノウン ターセス、タウレス オー。

klamb-ír-esódáumón-ountás-es,tául-esó
挟む-<もし〜なら>-<あなたが><3人称単数・重性・対格>二石-<双数・与格><あなた・所有>-<属格>取る-<あなたが><3人称単数・重性・対格>

「自分の石二つでそれを挟めば、それを取れる。」

星盤の用語。盤の石は重性で、目的語は ó と受ける。押さえる自分の石二つは与格双数 món-oun、所有は名詞句末尾の tás-es。盤上の石は星と呼ばず、重性の名詞として扱う。

houméran endríñai si torárai ó

読み:ホウメーラン エンドリーニャイ シ トラーライ オー

houmér-anendríñ-aisitorár-aió
囲む-<彼らが>子ども-<〜たちが>と客-<〜たちが><3人称単数・重性・対格>

「子どもたちと客たちは、炉を囲んで炉ばたに集う。」

本来は目的語 hóum「炉」を伴う他動詞用法。目的語を省略しないため、3人称重性の対格 ó を残す。

éso slóvo só un fildúroroi.

読み:エーソ スローヴォ ソー ウン フィルドゥーロロイ。

és-oslóvosóunfildúror-oi
存在-<(重いものが)>一人枠<主格>この<重性>内列-<与格>

「この一人枠は列の中にある。」

配置列の中で一人が占める区画を指す意味。slóvo は重性単数の主格で、指示詞 só が性一致する。un fildúroroi は「列の中に」という配置域を示す。

dórel, éso unlóur slóvo torárei.

読み:ドーレル、エーソ ウンロール スローヴォ トラーレイ。

dórel,és-ounlóurslóvotorár-ei
明日存在-<(重いものが)>まだ取り置き分<主格>客-<与格>

「明日の分も、客の取り置き分がまだある。」

予定者分を示す文。場面の枠として dórel を前に置き、主節では unlóur が動詞の直後に残置を添える。éso は és-o、slóvo は重性単数の主格。

káulo kúrmo só un aurándoi.

読み:カウロ クルモ ソー ウン アウランドイ。

kául-okúrmosóunauránd-oi
満ちる-<(重いものが)>大壺<主格>この<重性>内社-<与格>

「この大壺は社の中で満ちている。」

祭祀で、社のうちに置かれた大壺が満ちていることを述べる言い方。動詞は自動詞「満ちる」で、重性 o 語幹の主語に一致する。

éso kúrmo véun só un kórvoi.

読み:エーソ クルモ ヴェウン ソー ウン コルヴォイ。

és-okúrmovéunsóunkórv-oi
存在-<(重いものが)>大壺<主格>空のこの<重性>内倉-<与格>

「この空の大壺は倉の中にある。」

倉庫での所在確認に使う日常の表現。大壺そのものを指す用法で、量としての用法ではない。形容詞は名詞句内で大壺を修飾し、指示詞が名詞句を閉じる。

ké éso kálmo tásei?

読み:ケー エーソ カルモ ターセイ?

kéés-okálmotás-ei?
<〜か>いる-<(重いものが)>粟の粒<主格><あなた>-<与格>

「粟の粒があるか?」

日常会話での所持・存在の問い。存在・所有は és-+与格で表す。kálmo は脱穀した粟の実を指す用法で、重性o語幹の単数として éso と一致する。

ké éso gáir tásei

読み:ケー エーソ ガイル ターセイ

kéés-ogáirtás-ei
<〜か>いる-<(重いものが)>錐<主格><あなた>-<与格>

「お前、錐はあるか。」

所有・存在の疑問文。持ち主は与格で示し、存在する物は主格として扱う。動詞は存在する物に一致する。名詞 gáir は主格と対格が同形の語として扱う。

gél-o ílmo un filduló

読み:ゲーロ イルモ ウン フィルドゥロー

gél-oílmounfilduló
行く-<(重いものが)>水<主格>内に刻み通路<対格>

「水は刻み通路へ流れる。」

日常の作業場面。un+対格は「〜の中へ」を示す。重性o語幹の対格は主格と同形なので、形態上は無変化だが、前置詞と語順によって対格になる。

éso filduló gandéroun snóil

読み:エーソ フィルドゥロー ガンデーロウン スノイル

és-ofildulógandér-ounsnóil
いる-<(重いものが)>刻み通路<主格>硬木-<双数・属格>狭い

「二つの硬木のはめ込みは狭い。」

書物・技術記録風。重性子音語幹 gandér の双数属格は gandéroun。主語は filduló で、述語の形容詞 snóil は主語に一致し、重性単数主格では語尾を付けない。

krám-o filduló gandéros

読み:クラーモ フィルドゥロー ガンデーロス

krám-ofildulógandér-os
砕ける-<(重いものが)>刻み通路<主格>硬木-<属格>

「硬木のはめ込みが砕ける。」

点検・事故記録。filduló は重性単数主格。属格 gandéros は「硬木の」で、はめ込みの材料・帰属を示す。krám- は自動詞。

gláko fáron un trǘlmoi

読み:グラーコ ファーロン ウン トリュルモイ

glák-ofáronuntrǘlm-oi
一点で止まる-<(重いものが)>荷<主格>内に裂け目-<与格>

「荷が裂け目の中で一点で止まる。」

VSO。un+与格で「〜の中で」。主語 fáron は重性なので動詞は 3人称単数・重性の gláko を取る。

gláko dulfáron króunoi

読み:グラーコ ドゥルファーロン クローノイ

glák-odulfáronkróun-oi
一点で止まる-<(重いものが)>下ろし荷<主格>折れ目-<与格>

「下ろし荷が折れ目で一点だけ止まる。」

VSO。króun は重性子音語幹として与格 króunoi に取る。glák- は進行を一時止める動きを表す。

félo krúndo ílmo.

読み:フェーロ クルンド イルモ。

fél-okrúndoílmo
潮を引き戻す-<(重いものが)>泥<主格>水<対格>

「潮泥が水を引く(潮が引く)。」

干潟語原義の「潮を引き戻す」に対応する言い方。krúndo は「泥」だが、fél と組むと潮が引き込む泥を指し、潮が引く意になる。krúndo・ílmo とも重性で、動詞は 3 人称単数・重性 -o。宮廷では使われないが、縁の肩や縁では潮の動きを語る語として残る。

múndauro múndo némes.

読み:ムンダウロ ムンド ネーメス。

múndaur-omúndoném-es.
口がわずかに開く-<(重いものが)>口<主格><私>-<属格>

「私の口がわずかに開く。」

笑いには至らず、口角が上がって口がわずかに開く表情の変化のみを表す。身体部位を主語にとり、所有者は名詞句の後に属格で置く。主語の口が重性なので、動詞は3人称単数・重性の語尾 -o を受ける。自分自身の顔の変化について述べる場面。

éso pláuvo un kórvoi.

読み:エーソ プラウヴォ ウン コルヴォイ。

és-opláuvounkórv-oi.
いる-<(重いものが)>静けさ<主格>内に倉-<与格>

「倉の中には静けさがある。」

存在文。主語 pláuvo は重性単数なので存在動詞は éso を受ける。場所を示す un は与格を組み、「〜の中に」という所在を表す。

éso unlóur sáko un beilíñoi éles.

読み:エーソ ウンロール サーコ ウン ベイリーニョイ エーレス。

és-ounlóursákounbeilíñ-oiél-es
いる-<(重いものが)>まだ塩<主格>内に懐-<与格><3人称単数・軽性>-<属格>

「彼の懐には、まだ塩がある。」

くだけた日常会話。beilíño は「懐」の比喩用法で、物理的な腰袋そのものというより、身につけている少々の備えを表す。un +与格で「〜の中に」。所有者は名詞の後ろの属格 él-es で示す。unlóur は動詞の直後に置く。

éso prámbo só núl

読み:エーソ プランボ ソー ヌール

és-oprámbosónúl
いる-<(重いものが)>値<主格>この<重性>低い

「この値は低い。」

prámbo「値・価値」は重性名詞で、指示詞も重性の só を取る。só が主語名詞句を閉じ、その後の núl は述語形容詞になる。重性単数の述語形容詞は無語尾。値という程度・量基準より下にあることを示し、道徳的な貶意はない。

éso prámbo fáronos só núl

読み:エーソ プランボ ファーロノス ソー ヌール

és-oprámbofáron-ossónúl
いる-<(重いものが)>値<主格>荷-<属格>この<重性>低い

「この荷の値は低い。」

prámbo fáronos で「荷の値」。fáronos は fáron の重性単数属格。指示詞 só が名詞句を閉じ、その後の núl は述語形容詞として主語に一致する。ここでは値という程度の低さを表す。

éso dún dúlen.

読み:エーソ ドゥーン ドゥーレン。

és-odúndúlen
いる-<(重いものが)>丘<主格>低い

「丘は低い。」

存在文を兼ねた述語文。主語 dún は重性なので、繋辞は 3単数・重性の -o。述語形容詞 dúlen は主格単数で無語尾。

duþélim sélvanan, an fóndaros gléinaros dúlenan fáir þrénul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス グレーナロス ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osgléinar-osdúlen-anfáirþrén-ul.
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>グレイナル-<属格>下りた-<対格>四段-<〜たちを>

「グレイナルの源から四段下った者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった名乗り定型。duþél- は謙譲の「名乗らせていただく」で、名前を対格で受ける。dúlen-an は見出し語 dúlen に軽性対格単数の接辞 -an を付けた形で、sélvanan に一致して後置修飾する。þrénul は「何段下りたか」を表す道のりの対格。

un kórvoi éso glimó.

読み:ウン コルヴォイ エーソ グリモー。

unkórv-oiés-oglimó.
内に倉-<与格>いる-<(重いものが)>滲み・染み<主格>

「倉に、滲み・染みがある。」

日常の告げ。倉の中で、布や紙に生じた湿り・色移りの痕に気づいて言う言い方。glímó は重性語として、存在動詞 éis- の3人称単数・重性形 éso に主語として一致する。

sórel, þréulo eelþó múlin.

読み:ソーレル、スレウロ エールソー ムーリン。

sórel,þréul-oeelþómúl-in.
今日,着く-<(重いものが)>灰<主格>厚い-CVB.

「今日は灰が厚く着いている。」

日常の観察文。今日sórel。完了を表す語尾 s は立てず、未完了の直説法で、現在に至る結果の状態を述べる。灰は重性なので動詞は重性の3人称単数語尾-oをとる。

klonéro fáron só faronáran.

読み:クロネーロ ファーロン ソー ファロナーラン。

klon-ér-ofáronsófaron-ár-an.
膝-<〜でする>-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>荷-<〜する人>-<対格>

「荷が運び人の膝を抜く(運び人をよろめかせる)。」

市や道での日常で使える他動詞用法。主語「荷」が重性なので動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。目的語「運び人」は軽性子音語幹名詞の対格 -an をとる。

þrílo gromó só un aurándoi.

読み:スリーロ グロモー ソー ウン アウランドイ。

þríl-ogromósóunauránd-oi.
震える-<(重いものが)>体<主格>この<重性>内に社-<与格>

「この体は、社の中で震えている。」

儀礼・書面的な描写。主語は gromó só「この体」で、重性名詞句。un は「〜の中」で、与格と組むと場所を表す。aurándo の与格は aurándoi。全身の震えを内発的事象として述べている。

na þrílo gromó némes.

読み:ナ スリーロ グロモー ネーメス。

naþríl-ogromóném-es.
<〜ない>震える-<(重いものが)>体<主格><私>-<属格>

「私(の体)は震えていない。」

日常の否定応答。主語は体全体を表す重性の gromó で、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。身体部位の領有者は名詞の後ろに属格で置き、1人称単数属格は ném-es と分節される。na は否定・推量・仮定法の前。この語は内発的な震えで、外力で揺れる krúel- とは区別される。

aursáre, kreinéro gromó nébroi.

読み:アウルサーレ、クレイネーロ グロモー ネーブロイ。

aursáre,kreinér-ogromónébr-oi.
おお震える(骨が鳴る)-<(重いものが)>体<主格>霧-<与格>

「ああ、ご先祖よ、霧の中で体が骨まで震える。」

古い歌や詞の一節のような語調。aursáre はご先祖への嘆き。VSO の語順で動詞が先に立ち、主語 gromó と場所の与格 nébroi が後に続く。宮廷ではやや下向きの語だが、古い詞では骨の震えを直接言う。

éso fándo húmel.

読み:エーソ ファンド フーメル。

és-ofándohúmel
いる-<(重いものが)>戸口<主格>湿った

「戸口が湿っている。」

雨期や霧期などの生活の観察。存在の文で、主語 fándo が重性なので動詞は 3人称単数・重性の -o。述語の形容詞 húmel は名詞に一致して主格のまま。

éso snúlvo un kórvoi.

読み:エーソ スヌルヴォ ウン コルヴォイ。

és-osnúlvounkórv-oi.
いる-<(重いものが)>穴<主格>内に倉-<与格>

「倉の中に穴がある。」

日常の存在文。snúlvo は重性名詞で、存在動詞 és- は主語に一致して 3人称単数重性語尾 -o をとる。場所表現は un「〜の中」+与格。snúlvo は材質が欠けた「穴」の形状を指し、出入りの機能は含まない。

éso snúlvo tó pír.

読み:エーソ スヌルヴォ トー ピール。

és-osnúlvotópír.
いる-<(重いものが)>穴<主格>あの<重性>小さい

「あの穴は小さい。」

記録や注記のように、既知の穴を指示して寸法を述べる文。指示詞 tó は重性名詞 snúlvo を指示する。述語形容詞 pír は主語に一致し、重性単数では基辞のまま。

éso snúlvo bún orénoi.

読み:エーソ スヌルヴォ ブーン オレーノイ。

és-osnúlvobúnorén-oi.
いる-<(重いものが)>窪み<主格>深い縁-<与格>

「縁には深い窪みがある。」

地形や書物の記述のような存在文。名詞句内では名詞に形容詞が後続する。縁 orén は重性子音語幹で、与格は orén-oi。存在動詞 éso は主語 snúlvo に一致する。

éso krunþrén só húmel.

読み:エーソ クルンスレーン ソー フーメル。

és-okrunþrénsóhúmel
いる-<(重いものが)>物の置かれる段<主格>この<重性>湿った

「この棚は湿っている。」

家の中で物や食品の状態を見るときの文。存在・繋辞の és- を動詞として立て、主語の後に述語の形容詞を置く。重性名詞・単数主格では述語形容詞 húmel に語尾がつかない。指示詞 só は重性名詞に添えられる。

táulim kúrmo es krunþrénos.

読み:タウリン クルモ エス クルンスレーノス。

tául-imkúrmoeskrunþrén-os
取る-<私が>壺<対格>から物の置かれる段-<属格>

「私は棚から壺を取る。」

日常の炉辺での用事。前置詞 es に重性名詞の属格 -os を伴って「〜から」を表す。krunþrén は台そのものよりも、物の置される段の高さの面を指す。動詞 tául- の目的語は kúrmo で、属格句は文の後ろに置かれている。

éso snelíño kumbóros só kórvoi.

読み:エーソ スネリーニョ クンボーロス ソー コルヴォイ。

és-osnelíñokumbór-ossókórv-oi.
いる-<(重いものが)>蓋<主格>青銅-<属格>この<重性>倉-<与格>

「この青銅の蓋が倉にある。」

存在・在庫を記す場面のような文。青銅製の蓋を指すため、指示詞は重性の só、存在動詞も重性の éso になる。名詞句は「蓋+材料の属格+指示詞」の語順。

sénim líran nébros.

読み:セーニン リーラン ネーブロス。

sén-imlír-annébr-os.
見る-<私が>糸-<対格>霧-<属格>

「私は霧の細い筋を見る。」

líra を比喩的に「細い一本の筋」として使う文。名詞句では頭部名詞が格標志(対格 -an)を受け、その後に属格 nébros が置かれる。「霧の細い筋」は、霧の切れ目のように細い線を糸にたとえた言い方。

wéiro dóulin nórlo éles véun, na hóina

読み:ウェーロ ドーリン ノルロ エーレス ヴェウン、ナ ホイナ

wéir-odóulinnórloél-esvéun,nahóin-a
いる<〜し終えた>-<(重いものが)>もう寝所<主格><3人称単数・軽性>-<属格>空,<〜ない>帰る-<(軽いものが)>

「彼の寝所はもう空だ。彼は帰らない。」

日常の会話で、人の帰る場所・安らぎの場として nórlo を比喩的に用いる。後節の主語は動詞の軽性語尾から推定される。

éso dulsúm kumbóroi

読み:エーソ ドゥルスーン クンボーロイ

és-odulsúmkumbór-oi
いる-<(重いものが)>錆<主格>青銅-<与格>

「青銅に錆がある。」

存在文。所在は裸与格 kumbóroi で示す。dulsúm は金属に沈殿する重いものとして重性名詞扱いになり、存在動詞は -o で受ける。語域は中性で、日常の検査にも記録にも使える。

kráilim dulsúm kumbóros só

読み:クライリン ドゥルスーン クンボーロス ソー

kráil-imdulsúmkumbór-ossó
手に持つ-<私が>錆<対格>青銅-<属格>この<重性>

「この青銅の錆を手に取る。」

目的語の dulsúm は重性単数で対格無標識。指示詞 só は中心名詞 dulsúm に一致し、名詞句の末尾に置く。属格 kumbóros は材料・由来を示す。

þréulo dulsúm

読み:スレウロ ドゥルスーン

þréul-odulsúm
積もる-<(重いものが)>錆<主格>

「錆が積もる。」

錆が層として形成されていく過程を表す現象用法。主語 dulsúm に合わせて動詞は 3 人称単数・重性の -o をとる。

krémero krénmo krélvoi

読み:クレーメロ クレンモ クレルヴォイ

krémer-okrénmokrélv-oi
環に掛かる-<(重いものが)>環<主格>鉤-<与格>

「輪が鉤に掛かっている。」

krémer-の自動詞用法で、輪や鉤に捕まって懸かっている状態を表す。krénmoが重性主語なので、動詞は3人称単数・重性の-oをとりkrémeroとなる。掛かり先は与格で示す。

lúin dúlo funelfáron, krémero krénmo fúneloi

読み:ルーイン ドゥーロ フネルファーロン、クレーメロ クレンモ フーネロイ

lúindúl-ofunelfáron,krémer-okrénmofúnel-oi
とき下る-<(重いものが)>綱荷<主格>,環に掛かる-<(重いものが)>環<主格>綱-<与格>

「綱荷が下りるとき、輪は綱に掛かっている。」

手順書的な文。lúin「〜とき」の節は主節の前に置く。主語のkrénmoが重性なので、動詞はkrémero。掛かり先の綱は与格fúneloi。

houmkrúelo mérvo só.

読み:ホウンクルーエロ メルヴォ ソー。

houmkrúel-omérvosó
ざわめく-<(重いものが)>村<主格>この<重性>

「この村がざわめいている。」

単数の集団名詞 mérvo「村」を主語に取る用法。炉ばたや広場に集まった人々を、村という一つの単位として受ける。重性o語幹の単数主格 mérvo に対して、動詞は重性単数語尾 -o で一致する。指示詞 só は重性名詞句の後に置く。

houmkrúelo houmbrúndo só.

読み:ホウンクルーエロ ホウンブルンド ソー。

houmkrúel-ohoumbrúndosó
ざわめく-<(重いものが)>寄り合い<主格>この<重性>

「この寄り合いがざわめいている。」

houmbrúndo「寄り合い」は炉ばたに集まった場そのもの、または集まりの総称として使える。これも単数の集団名詞として重性o語幹に扱い、動詞は -o で一致する。見知らぬ者や予期せぬ話が出たとき、集まりの内で声の層が低く揺れる様子を表す。

houmkrúelo mérvo, duói houmkrúelo houmbrúndo.

読み:ホウンクルーエロ メルヴォ、ドゥオイ ホウンクルーエロ ホウンブルンド。

houmkrúel-omérvo,duóihoumkrúel-ohoumbrúndo
ざわつく-<(重いものが)>村<主格>それからざわつく-<(重いものが)>寄り合い<主格>

「村がざわつき、それから寄り合いがざわつく。」

duói「それから」で出来事の順序を示し、ざわつきが村から寄り合いへと及んでいく感覚を出す。書き言葉や年代記風に、同じ動詞を繰り返して広がりや厚みを表すことができる。節は主節として duói の前に区切りの読点を打つ。

éso snúlvo krénos pír.

読み:エーソ スヌルヴォ クレーノス ピール。

és-osnúlvokrén-ospír.
いる-<(重いものが)>穴<主格>天井-<属格>小さい

「天井の穴は小さい。」

存在文。中心語 snúlvo「穴」に属格 krén-os「天井の」を後置する。snúlvo は天井の一部としての穴、とくに煙口を指す。家屋の観察や修理の話題に使う日常語。

éso krén núl.

読み:エーソ クレーン ヌール。

és-okrénnúl.
いる-<(重いものが)>天井<主格>低い

「天井は低い。」

形容詞述語文。重性単数主格では形容詞は無語尾。krén が室内から見上げる頭上の面を指す基本用法。

na éso krén snélo.

読み:ナ エーソ クレーン スネーロ。

naés-okrénsnélo.
<〜ない>いる-<(重いものが)>天井<主格>屋根<主格>

「天井は屋根ではない。」

名詞述語文。述語名詞 snélo は主格のまま。家屋の構造を説明する場面で、外を覆う屋根と室内の天井を区別する言い方。

un bóraloi, éso krén ául an þúlnoi.

読み:ウン ボーラロイ、エーソ クレーン アウル アン スルノイ。

unbóral-oi,és-okrénáulanþúln-oi.
中に家-<与格>いる-<(重いものが)>天井<主格>高い上手床-<与格>

「家の中で、天井は床より上にある。」

un+与格が場面の枠を作る。形容詞 ául に続く an+与格は比較で、家屋の構造上、天井が床より上にあることを示す。構造を説明する文脈向きの文。

snála endríña snúlvo aurselvándos

読み:スナーラ エンドリーニャ スヌルヴォ アウルセルヴァンドス

snál-aendríñasnúlvoaurselvánd-os
閉じる-<(軽いものが)>子ども<主格>穴<対格>天井-<属格>

「子どもは天井の穴を閉じる。」

生活場面で、snúlvo「穴」を aurselvándo の属格が修飾する。aurselvándo が穴を含む頭上全面を指すことを示す。主語 endríña は人なので、動詞は軽性3人称単数の -a をとる。属格単数形は aurselvánd-os。

na éso aurselvándo krúl

読み:ナ エーソ アウルセルヴァンド クルール

naés-oaurselvándokrúl
<〜ない>いる-<(重いものが)>息の通路<主格>壁

「息の通路は壁ではない。」

信仰・詩文の比喩用法。壁 krúl や床 þúlno を「息を止めるもの」とする対比の中で、aurselvándo を「息を通すもの」として述べる。否定 copula は na + és-。主語が重性なので動詞は -o。述語名詞 krúl は名詞としての性を保ち、無標示で置く。

sórel, þréelo bélo.

読み:ソーレル、スレーロ ベーロ。

sórel,þréel-obélo.
今日腹が空いた<〜し終えた>-<(重いものが)>腹<主格>

「今日、腹が空いた。」

完了相 þréel- を用いた、食時を示す日常の言い回し。主語を bélo に取り、体の部分を表す bélo が重性であるため、動詞は 3 単数重性の -o で一致する。時間詞 sórel は場面の枠として文頭に置き、読点で区切る。

dúlo seníño ném-es.

読み:ドゥーロ セニーニョ ネーメス。

dúl-oseníñoném-es
下る-<(重いものが)>拙い涙<主格><私>-<属格>

「私の拙い涙が流れます。」

自分の涙をへりくだり、それが下りていくとする書き言葉・独白。主語が重性o語幹の単数なので、動詞は3人称単数・重性。所有は名詞の後ろに1人称属格を置く。

éso duléumo múel

読み:エーソ ドゥレウモ ムーエル

és-oduléumomúel
いる-<(重いものが)>下の風<主格>遅い

「下の風は遅い。」

風の高さで区別する場面。上の風が速いという対比を前提に、下の風の遅さを述べる。下の風を表す語は重性として扱う。形容詞述語は存在動詞+主語+形容詞の形になり、重性単数の形容詞は無語尾。

éso puló só múel

読み:エーソ プロー ソー ムーエル

és-opulósómúel
いる-<(重いものが)>拍<主格>この<重性>遅い

「この拍は遅い。」

歌・詩・誦唱の韻律を論じる場での言い方。puló は一拍を指す。この sense では、拍が単に「のろい」だけでなく、一拍が重く沈むことを述べる。指示詞 só は重性の形。形容詞は主格単数では無語尾。

lísa lisár ré éso puló tó múel

読み:リーサ リサール レー エーソ プロー トー ムーエル

lís-alis-árréés-opulótómúel
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人><〜と(節)>いる-<(重いものが)>拍<主格>あの<重性>遅い

「書記は、あの拍は遅いと書いている。」

書物・手習い・韻律論の場面。補文は ré で導し、元の文の法と語形をそのまま保つ。引用節の中でも形容詞述語は存在動詞+主語+形容詞の形になる。あの.HV は重性の指示詞 tó。

síl-a endríña derván es máros.

読み:シーラ エンドリーニャ デルヴァーン エス マーロス。

síl-aendríñaderv-ánesmár-os
払う(弾いて落とす)-<(軽いものが)>子ども<主格>粉-<対格>から手-<属格>

「子どもが手から粉を払う。」

dervá「粉」を目的語に取り、手についた粉を軽く弾いて落とす日常の動作。síl- は klén-「拭く」とはちがい、表面に軽く当てて粒子を飛ばす意。es+属格は払い落とす出所を示す。

síl-a ráuvan elþíñan es máros.

読み:シーラ ラウヴァン エルシーニャン エス マーロス。

síl-aráuvanelþíñ-anesmár-os
払う(弾いて落とす)-<(軽いものが)>巫<主格>火の粉-<対格>から手-<属格>

「森の巫が手から火の粉を払う。」

elþíña「火の粉」を目的語とする。炉仕事や儀礼のあと、手についていた小さな火の粉を軽く弾いて落とす場面。拭くのではなく、何回か軽く叩いて外へ落とす動作である。

gléla endríña lúsan es kúulos.

読み:グレーラ エンドリーニャ ルーサン エス クーロス。

glél-aendríñalús-aneskúul-os
よそう-<(軽いものが)>子ども<主格>粥-<対格>から鍋-<属格>

「子どもが鍋から粥をよそう。」

日常の記述文。gléla は 3人称単数・軽性の直説法で、主語 endríña は人なので軽性。出所は前置詞句 es kúulos(kúulo の単数属格)で表す。glél は社会的な配給や抽象的な「与える」ではなく、匙で食物を別の器に移す動作そのものを指す。

éso nóumo kéumos trém

読み:エーソ ノーモ ケウモス トレーン

és-onóumokéum-ostrém
いる-<(重いものが)>顔<主格>碑-<属格>平ら

「碑の面は平らだ。」

書物・碑文の説明として、物事の表面を「面」で表す言い方。nóumo を碑・板・壁などの「面」に使う。名詞句は「名詞+属格」の順。動詞は主語 nóumo に一致し、重性単数主格の trém は語尾をもたない。

éso vól trém

読み:エーソ ヴォール トレーン

és-ovóltrém
いる-<(重いものが)>地面<主格>平ら

「地面は平らだ。」

日常で、地面がなだらかに開けていることを述べる文。特定の面の平らさではなく、広い範囲の平坦さを表す用法。vól は重性として扱われ、形容詞は重性単数主格で無標になる。

éso ílmo só trém

読み:エーソ イルモ ソー トレーン

és-oílmosótrém
いる-<(重いものが)>水<主格>この<重性>平ら

「この水は平らだ。」

湖や池の水面が静まって起伏がないことを言う、日常向けの文。ílmo は重性の水を表し、指示詞 só を伴う。この文では不可名詞的な水そのものを主語にしているため、動詞は重性単数、trém も無標。

bríno térno, duói na snámim.

読み:ブリーノ テルノ、ドゥオイ ナ スナーミン。

brín-otérno,duóinasnám-im
ほつれる-<(重いものが)>弦<主格>それから<〜ない>射る-<私が>

「弦がほつれ、それからは射らない。」

普通文はVSOなので、動詞 brín- に -o がついた bríno を前に出し、主語 térno を後ろに置く。duói は継起の接続小辞で、二文目の頭に来る。na が否定小辞として動詞に前接し、主語の「私」は語尾 -im で示される。

tiuléro térno.

読み:ティウレーロ テルノ。

tiulér-otérno.
音を立てる-<(重いものが)>弦<主格>

「弦が音を立てる。」

普通文はVSO。動詞 tiulér-o を文頭に置き、主語 térno を後ろに置く。重性o語幹の単数主語には、動詞の3人称単数重性語尾 -o が対応する。

kréuno ílmo un dulún

読み:クレウノ イルモ ウン ドゥルーン

kréun-oílmoundulún
沈む-<(重いものが)>水<主格>中に底<対格>

「水が底へ沈む。」

物理的な「沈む」の文。前置詞 un に名詞の対格を続けて「〜の中へ」「〜へ」を表す。水は重性なので、動詞は重性の3人称単数語尾 -o をとる。字義的な「深いほうへ沈む」として、夜の比喩から独立して用いる例。

kréuno rúndo un snúlvo

読み:クレウノ ルンド ウン スヌルヴォ

kréun-orúndounsnúlvo
沈む-<(重いものが)>走り水<主格>中に穴<対格>

「走り水が穴の中へ沈む。」

自然描写・地形記述の文。rúndo は「走り水」を表し、重性 o 語幹の名詞として扱われる。un + 対格で穴の中への方向を示す。kréun- の物理的意味「深いほうへ沈む」の用例。

kréimo plíndo dulfáron faronárei.

読み:クレーモ プリンド ドゥルファーロン ファロナーレイ。

kréim-oplíndodulfáronfaronár-ei.
述べる-<(重いものが)>荷札<主格>下ろし荷<対格>運び人-<与格>

「荷札は運び人に下ろし荷について述べている。」

縁の市での荷札の叙述的用法。木製の荷札は重性なので、動詞は重性の語形をとる。荷札に書かれた内容を、荷札自身を主語として述べる。

éso mélvo nébroi.

読み:エーソ メルヴォ ネーブロイ。

és-omélvonébr-oi
いる-<(重いものが)>戸<主格>霧-<与格>

「霧の中に戸がある。」

所在を示す存在文。存在の és- が重性主語 mélvo に一致し、裸与格 nébr-oi が「霧の中に」という場所を表す。

un kórvoi éso mélvo léimen.

読み:ウン コルヴォイ エーソ メルヴォ レーメン。

unkórv-oiés-omélvoléim-en
中に倉-<与格>いる-<(重いものが)>板戸<主格>置く-<〜した・〜された>

「板戸は倉に置かれている。」

物の所在や在庫を記す陳述文。述語受動の結果状態に場所を添えるため、前置詞句を動詞の前に出す。存在・状態を表す文では éso が主語の mélvo に一致し、他動詞 léim- の分詞 léimen が「置かれた」という結果の状態を作る。前置詞 un は与格と組んで「〜の中に」を表す。

éso kloníño némes krém.

読み:エーソ クロニーニョ ネーメス クレーン。

és-okloníñoném-eskrém.
いる-<(重いものが)>肘<主格><私>-<属格>痛い

「私の肘は痛い。」

日常の体の状態。身体部位の所属は名詞の後ろの属格で表す。形容詞 krém は主語句の後に述語として置かれる。重性名詞の単数主格は無語尾。

ké éso kloníño táses krém?

読み:ケー エーソ クロニーニョ ターセス クレーン?

kéés-okloníñotás-eskrém?
<〜か>いる-<(重いものが)>肘<主格><あなた>-<属格>痛い

「あなたの肘は痛いか。」

日常の問いかけ。ké を文頭に置く下向きの問い。身体部位の所属は属格 táses で表す。

kráso kloníño sáves só.

読み:クラーソ クロニーニョ サーヴェス ソー。

krás-okloníñosáv-essó.
割れる-<(重いものが)>小さな継ぎ目<主格>匙-<属格>この<重性>

「匙のこの小さな継ぎ目が割れた。」

日常の道具について。器の曲がった継ぎ部を kloníño で呼ぶ拡張。sáves は sáva の属格で、語根に強勢を保つ。指示詞 só は中心名詞 kloníño(重性)に一致し、名詞句の末尾に置かれる。

houmsíla endríña eelþó hóumos

読み:ホウンシーラ エンドリーニャ エールソー ホーモス

houmsíl-aendríñaeelþóhóum-os
炉の灰を払う-<(軽いものが)>子<主格>灰<対格>炉-<属格>

「子どもが炉の灰を払う。」

字義の「炉の灰を払う」の用例。eelþó は重性 o 語幹と考えられ、単数の対格は無標で主格と同形。hóumos は hóum の属格で「炉の」。日常の炉の手入れを示す文。

houmsíl eelþó hóumos

読み:ホウンシール エールソー ホーモス

houmsíleelþóhóum-os
炉の灰を払う<命令法><あなたが>灰<対格>炉-<属格>

「炉の灰を払え。」

命令法 2 人称単数の語幹形 houmsíl を用いた、くだけた指示。家庭や弟子への日常的な声かけ。重性 o 語幹 eelþó は対格が無標のまま。

éso krúmo némes gróm.

読み:エーソ クルーモ ネーメス グローン。

és-okrúmoném-esgróm.
いる-<(重いものが)>腰<主格><私>-<属格>重い

「私の腰は重い。」

日常の体訴。krúmo は肉体の部位として重性語であり、存在文の動詞 éso- は重性の語尾 -o を受ける。所有者は名詞句内の属格 ném-es で表し、述語 gróm はその後に置かれる。

krúno snóimo fúnelos fáron.

読み:クルーノ スノイモ フーネロス ファーロン。

krún-osnóimofúnel-osfáron
支える-<(重いものが)>荷受け<主格>綱-<属格>荷<対格>

「綱の荷受けが荷を支える。」

《荷受け》は荷や綱が乗る受け部を指す用法。《綱》の単数属格を後置し、受け部が誰・何のものであるかを示す。主語は重性で、動詞語尾は HV。

bríno snóimo ráses.

読み:ブリーノ スノイモ ラーセス。

brín-osnóimorás-es
ほつれる-<(重いものが)>肩ぐち<主格>衣-<属格>

「衣の肩ぐちがほつれている。」

《肩ぐち》は衣の肩部の縫い目・開きを指す用法。《衣》の単数属格を名詞に後置して、物の一部を示す。主語節は重性で、動詞語尾は HV。

éso fáron snóimoi fúnelos.

読み:エーソ ファーロン スノイモイ フーネロス。

és-ofáronsnóim-oifúnel-os
いる-<(重いものが)>荷<主格>荷受け-<与格>綱-<属格>

「綱の荷受けに荷が乗っている。」

存在文。《荷》が主語で、与格《荷受け》が所在を示す。o語幹の与格は語尾 -oi で表す。《荷受け》に《綱》の属格が後置し、綱が乗る受け部であることを明示する。

éso nébro snóimoi orénos.

読み:エーソ ネーブロ スノイモイ オレーノス。

és-onébrosnóim-oiorén-os
いる-<(重いものが)>霧<主格>物肩-<与格>縁-<属格>

「縁の物肩に霧がかかっている。」

《物肩》は崖や丘・屋根など、上の面と下の面の境にある張り出した部分を表す。縁の属格を後置して、霧が所在する物肩を示す。o語幹の与格は語尾 -oi で表す。

éso fáron snóimoi kórvos.

読み:エーソ ファーロン スノイモイ コルヴォス。

és-ofáronsnóim-oikórv-os
いる-<(重いものが)>荷<主格>物肩-<与格>倉-<属格>

「倉の物肩に荷がある。」

《倉》の単数属格を後置し、倉の張り出した肩部に荷があるという実務的な所在を示す。存在の主語《荷》は重性。o語幹の与格は語尾 -oi で表す。

éso sámon só un kórvoi.

読み:エーソ サーモン ソー ウン コルヴォイ。

és-osámonsóunkórv-oi.
いる-<(重いものが)>生皮<主格>この<重性>内に倉-<与格>

「倉の中に、この生皮がある。」

未加工の生皮を倉に仕込んでおく場の所在を言う日常文。身体や未加工の材料としての sámon は重性で扱う。

éso þéum lísen.

読み:エーソ セウン リーセン。

és-oþéumlís-en.
いる-<(重いものが)>色づき<主格>書く-<〜した・〜された>

「色づきは書き留められている。」

記録・帳簿の文。存在・状態を表す éso は主語 þéumo が重性なので3人称単数・重性語尾 -o。分詞 lísen は重性単数主格で無標。þéumo は þéum-o と分離する。

éso ráuvo glóur.

読み:エーソ ラウヴォ グロール。

és-oráuvoglóur.
いる-<(重いものが)>森<主格>緑に茂る

「森は緑に茂っている。」

形容詞述語文は存在動詞és-で始め、「és-+主語+述語形容詞」の語順をとる。森は重性なので、動詞は3人称単数・重性の-oを受ける。

ké ráuman faronárai drúnoroi es orénos du kéndor?

読み:ケー ラウマン ファロナーライ ドルーノロイ エス オレーノス ドゥ ケンドル?

kéráum-anfaron-ár-aidrúnor-oiesorén-osdukéndor?
<〜か>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>縁の石段道-<与格>から縁-<属格>下手市<対格>

「運び人たちは、縁の石段道を、縁から市まで歩いているのか。」

日常の問いかけ。faronárai は faronár の複数。drúnor は重性子音語幹として与格単数 drúnoroi を取る。 ráum-「歩く」は道・経路を裸の与格で取るため un は用いない。 es orénos du kéndor が両端を指定することで、縁の石段道をひと続きの区間として指す用法を示す。

ván þárno fúnelos, ende!

読み:ヴァーン サルノ フーネロス、エンデ!

vánþárnofúnel-os,ende!
量る<命令法><あなたが>端<対格>綱-<属格>どうぞ

「綱の端を量ってくれ、頼む。」

日常の作業・市の場面での命令文。þárno は重性o語幹であり、単数の主格・対格は無標識の þárno と同型である。命令法では vánd- の語末子音連結が単純化して ván となる。所有主 fúnelos は重性属格で、物の所有を示す。

éso þárno pímes rúgal.

読み:エーソ サルノ ピーメス ルーガル。

és-oþárnopím-esrúgal.
いる-<(重いものが)>端<主格>紙-<属格>粗い

「紙の端は粗い。」

存在動詞 éso は主語 þárno に合わせて重性単数の形をとる。pímes は語幹 pím- に属格 -es が接した形。述語形容詞 rúgal は主語 þárno に一致し、重性単数主格では語尾がつかない。

vándim þárnou fúnelos.

読み:ヴァンディン サルノウ フーネロス。

vánd-imþárn-oufúnel-os.
量る-<私が>端-<双数・対格>綱-<属格>

「私は綱の両端を量っている。」

þárn-ou は語幹 þárn- に重性o語幹の双数主格・対格 -ou が接した形で、グロスも 端-DU.ACC と二形態素に対応させる。fúnelos は属格。

文法

重性。単数:主・対 ó、属 ós、与 ói。複数:主・対 óul、属 óur、与 óuls(名詞の -ul・-ur・-uls と同じ作り)。双数は人称なしの dáun を使う。

語源

古高原語の重性の指示語 *o「あの重いもの」から。動詞の3人称単数・重性の語尾 -o、重性名詞の古い接辞 *-o- と同じ源とされる。

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