ílmo

品詞
名詞
意味
水
発音
[ˈilmo]
読み
イルモ
分野
自然・天体・天候・地形

意味

  1. 水

    地の上の水、飲み水・使い水。雨水とは区別する。

    fáron dulíþo ílmo.

    読み:ファーロン ドゥリーソ イルモ。

    fárondul-íþ-oílmo.
    荷<対格>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「荷をこそ、水が下ろす。」

    他動詞の文で前に出した重性の名詞は、既定で目的語として読む。主語の位置にいる ílmo が主語。

    ílmo dulíþo ó fáron.

    読み:イルモ ドゥリーソ オー ファーロン。

    ílmodul-íþ-oófáron.
    水<主格>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>荷<対格>

    「水こそが、荷を下ろす。」

    前に出した重性の名詞が主語のときは、空いた主語の位置に再述の ó を残す。ó があるので、fáron は目的語に決まる。

    áura selvá, salóur dúlo ílmo.

    読み:アウラ セルヴァー、サロール ドゥーロ イルモ。

    áur-aselvá,salóurdúl-oílmo.
    昇る-<(軽いものが)>息<主格>しかし下る-<(重いものが)>水<主格>

    「息は昇る。しかし、水は下る。」

    salóur「瀬の外に」は逆接。強勢があり、後ろに短い切れ目が入る。

    éso ílmo klér un kórvoi.

    読み:エーソ イルモ クレール ウン コルヴォイ。

    és-oílmoklérunkórv-oi.
    いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい内に倉-<与格>

    「倉の中に冷たい水がある。」

    前置詞つきの与格も、動詞の後ろにあれば存在の文と読む。

    un kórvoi, éso ílmo klér.

    読み:ウン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール。

    unkórv-oi,és-oílmoklér.
    内に倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい

    「倉の中では、水は冷たい。」

    場所を動詞の前に出すと、述語の形容詞の文になる(場所を対比の前置きとして出した形)。

    éso ílmo klér an kórvoi.

    読み:エーソ イルモ クレール アン コルヴォイ。

    és-oílmoklérankórv-oi.
    いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい上手倉-<与格>

    「水は倉より冷たい。」

    述語の形容詞のすぐ後ろの an+与格は、比較として読む。

    an kórvoi, éso ílmo klér.

    読み:アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール。

    ankórv-oi,és-oílmoklér.
    上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい

    「倉の北側では、水は冷たい。」

    比較でない場所の an+与格は、動詞の前に出す。

    ké an kórvoi, éso ílmo klér?

    読み:ケー アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール?

    kéankórv-oi,és-oílmoklér?
    <〜か>上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい

    「倉の北側では、水は冷たいか。」

    ké は文のいちばん前、そのあとに場面の枠が来る。

    éso ílmo klér ín an kórvoi.

    読み:エーソ イルモ クレール イーン アン コルヴォイ。

    és-oílmoklérínankórv-oi.
    いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい一上手倉-<与格>

    「倉の北側に、冷たい水がある。」

    ín「一」を名詞句の終わりに置いて、不定の名詞句を閉じる。閉じたあとの an+与格は比較ではなく場所。

    ké an kórvoi, éso ílmo klér? éso.

    読み:ケー アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール?エーソ。

    kéankórv-oi,és-oílmoklér?és-o.
    <〜か>上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たいいる-<(重いものが)>

    「「倉の北側では、水は冷たいか」「冷たい」」

    答えの形では、場面の枠も問いに出た語として省ける。

    na éso ílmo nagléin.

    読み:ナ エーソ イルモ ナグレーン。

    naés-oílmona-gléin.
    <〜ない>いる-<(重いものが)>水<主格><〜ない>-清い

    「水は清からぬものではない(悪くない水だ)。」

    二重否定。目上の人の持ち物や行いを、直接ほめずに控えめに評価する言い方。

    sénim gandér te dulíþo ílmo.

    読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ イルモ。

    sén-imgandértedul-íþ-oílmo.
    見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「私は、水が下ろす硬木を見る。」

    関係節の要は前に出した語と同じ扱いで、既定では目的語の枠を埋める。残った ílmo が主語。

    sénim gandér te dulíþo ó ílmo.

    読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ オー イルモ。

    sén-imgandértedul-íþ-oóílmo.
    見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>水<対格>

    「私は、水を下ろす硬木を見る。」

    要が主格と対格が同じ形の語で、関係節の主語のときは、主語の枠に再述の ó を残す。

    dulíþo ó gandér ílmo te séna senár.

    読み:ドゥリーソ オー ガンデール イルモ テ セーナ セナール。

    dul-íþ-oógandérílmotesén-asen-ár.
    下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>硬木<対格>水<主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

    「目付が見る水が、硬木を下ろす。」

    都の言葉。関係節つきの主語を後ろへ回し、目的語が主格と対格が同じ形の語なので、空いた主語の枠に ó を残す。

    gandér te sénim, dulíþo ílmo.

    読み:ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ イルモ。

    gandértesén-im,dul-íþ-oílmo.
    硬木<対格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「私が見た硬木を、水が下ろす。」

    主題の前置き。読点つきで前に出した名詞句も、他動詞の文では既定で目的語の枠を埋める。

    gandér te sénim, dulíþo ó ílmo.

    読み:ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ オー イルモ。

    gandértesén-im,dul-íþ-oóílmo.
    硬木<主格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)><3人称単数・重性・主格>水<対格>

    「私が見た硬木が、水を下ろす。」

    主題の前置きが主語のときは、主語の枠に再述の ó を残す。

    ké gandér te sénim, dulíþo ílmo?

    読み:ケー ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ イルモ?

    kégandértesén-im,dul-íþ-oílmo?
    <〜か>硬木<対格><関係節>見る-<私が>下る-<〜させる>-<(重いものが)>水<主格>

    「私が見た硬木を、水が下ろすのか。」

    ké は主題の前置きより前、文のいちばん前に置く。

    dúlo ílmo es fóndaros du dálor.

    読み:ドゥーロ イルモ エス フォンダロス ドゥ ダーロル。

    dúl-oílmoesfóndar-osdudálor.
    下る-<(重いものが)>水<主格>から源-<属格>下手下の国<対格>

    「水は源から下の国へと下っていく。」

    水は泉で生まれ、段を下るごとに重くなって、最後は崖の下に沈む。この見方を言い表す、教えや詩でよく使われる言い回し。ílmo(水)は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格は、方向を問わない「〜から」。

    dúlo ílmo es þéulos du orén.

    読み:ドゥーロ イルモ エス セウロス ドゥ オレーン。

    dúl-oílmoesþéul-osduorén.
    下る-<(重いものが)>水<主格>から湧き水-<属格>下手縁<対格>

    「水は湧き水から縁へと下っていく。」

    水の流れを言う、ごくふつうの言い切りの文。ílmo「水」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格で出どころを、du+対格で行き先を表す。高原の人の考えでは、水は源から生まれて下へ流れていくものなので、この文は自然を述べた文であると同時に、世界観の決まり文句でもある。

    brúumo ílmo es lóuros du lóur.

    読み:ブルーモ イルモ エス ローロス ドゥ ロール。

    brúum-oílmoeslóur-osdulóur.
    落ちる-<(重いものが)>水<主格>から瀬-<属格>下手瀬<対格>

    「水は瀬から瀬へと落ちていく。」

    川の流れを言い表す文。es+属格で「〜から」、du+対格で「下手の〜へ」を表す。lóur は重性なので、対格は主格と同じ形になる。川の水が段を下るごとに落ちていくという見方は、系譜を瀬で数える考え方のもとになっている。

    níla torár ílmo gléin.

    読み:ニーラ トラール イルモ グレーン。

    níl-atorárílmogléin.
    飲む-<(軽いものが)>客<主格>水<対格>清い

    「客は清い水を飲む。」

    VSO の基本の文。ílmo は重性o語幹で主格と対格が同じ形なので、形容詞も重性・対格の形(語尾なし)になる。客に清い水を出すのは、もてなしの場面でよく使う言い方。

    brúumo ílmo es drálos só.

    読み:ブルーモ イルモ エス ドラーロス ソー。

    brúum-oílmoesdrál-ossó.
    落ちる-<(重いものが)>水<主格>から器の首-<属格>この<重性>

    「この(甕の)口もとから水がこぼれる。」

    drál は、甕や瓶の細くくびれた口もとも指す。重性の指示詞 só は格変化せず、名詞句の終わりに置く。主語の ílmo「水」は重性なので、動詞は -o をとる。

    glünélo ílmo véinoros.

    読み:グリュネーロ イルモ ヴェーノロス。

    glün-él-oílmovéinor-os.
    凍る-<〜だろう>-<(重いものが)>水<主格>湖-<属格>

    「湖の水は凍るだろう。」

    天気の見通しを言う言い方。時制がないので、これから起こることは推量法で言う。強勢は推量法の -él- に移る。名詞句は「名詞–属格」の順に並ぶ。

    raumíre endríña glüníñoi, bruuméla du ílmo.

    読み:ラウミーレ エンドリーニャ グリュニーニョイ、ブルーメーラ ドゥ イルモ。

    raum-ír-eendríñaglüníñ-oi,bruum-él-aduílmo.
    歩く-<もし〜なら>-<(軽いものが)>子ども<主格>薄氷-<与格>落ちる-<〜だろう>-<(軽いものが)>下手水<対格>

    「「子どもが薄氷の上を歩けば、水に落ちるだろう。」」

    凍りの頃の事故を戒める文。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作り、帰結の節は推量法で言う。水に落ちることは「下へ引かれる」恐ろしい出来事とされるので、du + 対格「下手へ」を使う。主語は人なので、動詞は軽性の形をとる。

    meiréndes ílmo némei.

    読み:メイレンデス イルモ ネーメイ。

    meir-énd-esílmoném-ei.
    与える-<〜しますように>-<あなたが>水<対格><私>-<与格>

    「水を一杯くれないか。」

    同じ段の相手に、願望法の2人称でものを頼む「並び」の言い方。願望法の接尾辞 -énd- に強勢が移るので、語根の ´ は消える。ílmo は重性のo語幹で、主格と対格が同じ形になる。飲み水や使い水を指すふつうの語で、雨水を指すときには使わない。

    nílim ílmo véinoros.

    読み:ニーリン イルモ ヴェーノロス。

    níl-imílmovéinor-os.
    飲む-<私が>水<対格>湖-<属格>

    「私は湖の水を飲む。」

    日常の言い方。主語は動詞の語尾 -im でわかるので言わない。地の上の水がどこの水かは、属格で言う。空から降る水は、地の水 ílmo とは別の語 réina「雨」で言う。

    mé níl ílmo múr!

    読み:メー ニール イルモ ムール!

    ménílílmomúr!
    <禁止・願いの打ち消し>飲む<命令法><あなたが>水<対格>濁った

    「濁った水を飲むな!」

    禁止は「mé+命令法」。形容詞 múr は名詞の後ろに置き、重性・単数・対格の ílmo に一致するが、語尾はつかない。濁った水は重く病を運ぶものとされ、とくに霧期によく言われる戒め。

    nílo drúmo ílmo.

    読み:ニーロ ドルーモ イルモ。

    níl-odrúmoílmo.
    吸いこむ-<(重いものが)>苔<主格>水<対格>

    「苔が水を吸いこむ。」

    「吸いこむ」の意味では、主語はふつう重性の名詞になり、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。ílmo「水」も重性なので、主格と対格が同じ形になる。VSO の語順で、動詞のすぐ後ろが主語、その次が目的語と決まる。家のすき間を苔で埋める理由を説明するときの言い方。

    nílo lóna kélen ílmo.

    読み:ニーロ ローナ ケーレン イルモ。

    níl-olónakél-enílmo.
    吸いこむ-<(重いものが)>柱の木<主格>伐る-<〜した・〜された>水<対格>

    「伐った柱の木は水を吸いこむ。」

    lóna は名詞としては軽性a語幹の形のままだが、伐られた材なので、分詞 kélen も動詞 nílo も重性で一致する。名詞の語尾は軽性で、まわりの語は重性という組み合わせになる。樵や大工が、材を乾かして寝かせる理由を言うときの文。

    lúin glǘno véinor, þílo ílmo véinoros.

    読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、シーロ イルモ ヴェーノロス。

    lúinglǘn-ovéinor,þíl-oílmovéinor-os.
    とき凍る-<(重いものが)>湖<主格>澄む-<(重いものが)>水<主格>湖-<属格>

    「湖が凍るころ、湖の水は底まで澄む。」

    湖畔で言われる古い言い方。lúin の節は主節の前に置く。「澄む」の意味では自動詞として使い、目的語をとらない。

    véilo ílmo du dálor.

    読み:ヴェーロ イルモ ドゥ ダーロル。

    véil-oílmodudálor.
    流れ去る-<(重いものが)>水<主格>下手下の国<対格>

    「水は下の国へ流れ去る。」

    古い言い回しで、物事の移ろいを言う諺。「流れ去る」の意味では自動詞として使い、主語の ílmo(重性)に合わせて3単・重性の -o をとる。日常の会話では、この意味はほとんど使わない。

    nílim ílmo klér es þéulos.

    読み:ニーリン イルモ クレール エス セウロス。

    níl-imílmokléresþéul-os.
    飲む-<私が>水<対格>冷たいから湧き水-<属格>

    「私は湧き水の冷たい水を飲む。」

    日常の文。地上を流れる水 ílmo は重性なので、主格と対格が同じ形になり、形容詞も語尾がつかない。es+属格で「〜から」と出どころを表す。

    mé níl ílmo múr!

    読み:メー ニール イルモ ムール!

    ménílílmomúr!
    <禁止・願いの打ち消し>飲む<命令法><あなたが>水<対格>濁った

    「濁った水を飲むな。」

    親が子どもに言う日常の禁止。mé+命令法で禁止を表す。ílmo「水」は重性o語幹なので、対格も ílmo のまま。形容詞 múr も重性・単数・対格で一致し、語尾はつかない。

    dúlo gandér káil du ílmo.

    読み:ドゥーロ ガンデール カイル ドゥ イルモ。

    dúl-ogandérkáilduílmo.
    下る-<(重いものが)>硬木<主格>乾いた下手水<対格>

    「乾かした硬木でも水の底へ沈む。」

    硬木の性質を言う、樵や森の司の言い方。káil は乾かし終えた材についても使う。du+対格で「下手へ」、つまり水の中へ沈むことを表す。硬木が「下へ行きたがる木」とされるのは、この性質のためである。

    éso ílmo véinoros véril.

    読み:エーソ イルモ ヴェーノロス ヴェーリル。

    és-oílmovéinor-osvéril.
    いる-<(重いものが)>水<主格>湖-<属格>青緑の

    「湖の水は青緑だ。」

    「AはBだ」の繋辞文。名詞句の中の形容詞は属格より前に来るので、属格 véinoros の後ろにある véril は修飾語ではなく述語と読む。湖の水は地上の水なので重性。

    fláinim. nílim ílmo.

    読み:フライニン。ニーリン イルモ。

    fláinim.níl-imílmo.
    助かる飲む-<私が>水<対格>

    「助かる。水を飲むよ。」

    崖道で、仲間から水を差し出されたときの返事。fláinim は「私は軽い」というのがもとの意味で、くだけた礼の言葉として使う。同じ段の者どうしや、目下の者に対して使い、目上の人には使わない。

    selúin þáima endríña ílmo.

    読み:セルーイン サイマ エンドリーニャ イルモ。

    selúinþáim-aendríñaílmo.
    今汲む-<(軽いものが)>子供<主格>水<対格>

    「今、子供が水を汲む。」

    日常会話や家事の場面を表す。þáim-は地下水源から桶を用いて往復して引き上げる動作を指し、直接掬う動作とは区別される。VSO語順に従い動詞が文頭に置かれ、selúinは時の枠として前に出る。

    þeultáula endríña ílmo es þéulos.

    読み:セウルタウラ エンドリーニャ イルモ エス セウロス。

    þeultául-aendríñaílmoesþéul-os.
    汲む-<(軽いものが)>子ども<主格>水<対格>から湧水-<属格>

    「子どもが湧水から水を汲む。」

    日常の動作を記述する文。主語は人(軽性)なので動詞は軽性の単数語尾 -a をとる。目的語の ílmo(水)は重性だが、動詞は主語と一致するため形は変わらない。出所を表す前置詞 es に属格 þéulos を組み、「湧水から」という起点を示す。

    þeultáulim ílmo es þéulos selúin.

    読み:セウルタウリン イルモ エス セウロス セルーイン。

    þeultául-imílmoesþéul-osselúin.
    汲む-<私が>水<対格>から湧水-<属格>今

    「私は今、湧水から水を汲んでいる。」

    1人称単数の直説法。話し手が自ら動作を行う日常の場面。selúin(今)は時の副詞として節の末尾に置かれる。複合動詞だが文法上は単一語として -im を直接とるため、縁の町の取引言葉や初学者の会話でも活用形が明確で伝達しやすい。

    éun duloréno ílmo es orénos

    読み:エウン ドゥロレーノ イルモ エス オレーノス

    éundulorén-oílmoesorén-os
    うんこぼれる-<(重いものが)>水<主格>から縁-<属格>

    「「うん、水が縁からこぼれる。」」

    日常会話で、手元の液体が縁を越えて落ちるのを指す短い発話。複合語 dulorén- は「下る」と「縁」から、液体が縁を越えて下へ行く意を表す。

    anórel duloréno ílmo es orénos kórvos

    読み:アノーレル ドゥロレーノ イルモ エス オレーノス コルヴォス

    anóreldulorén-oílmoesorén-oskórv-os
    昨日こぼれる-<(重いものが)>水<主格>から縁-<属格>倉-<属格>

    「「昨日、倉の縁から水がこぼれた。」」

    書物・帳簿的な記述。文法上の時制がないため、時を表す語 anórel を伴い、現在形で過去の出来事を記す。es の後に「縁」の属格があり、その後に置かれた「倉」の属格が縁の所属を示す。

    mé vól ílmo du þúlno!

    読み:メー ヴォール イルモ ドゥ スルノ!

    mévólílmoduþúlno
    <禁止・願いの打ち消し>注ぐ<命令法><あなたが>水<対格>下手床<対格>

    「床へ水を注ぐな。」

    家屋や倉でよく使われる禁令。mé は命令法を打ち消す。vól は語根のみで2人称単数の命令法を表す。注ぎ向かう先は du+対格で「下手へ」を表し、重性o語幹 þúlno の対格単数は主格と同形 þúlno となる。

    þrúno ílmo orén.

    読み:スルーノ イルモ オレーン。

    þrún-oílmoorén.
    削る-<(重いものが)>水<主格>縁<対格>

    「水が縁を削る。」

    自然の作用。主語 ílmo は重性なので動詞は3人称単数重性をとる。orén は重性の対格。

    nárim velíman nílin ílmo

    読み:ナーリン ヴェリーマン ニーリン イルモ

    nár-imvel-ím-anníl-inílmo
    しのぐ-<私が>渇く-<〜の技・〜さ>-<対格>飲む-<〜して・〜く>水<対格>

    「私は水を飲んで渇きをしのぐ。」

    日常会話で、喉の渇きを完全に止めるまでではないが、水を含んで取り急ぎやりすごす動作を示す。velím は véli- の語根 vel- に抽象名詞化の -ím をつけた軽性名詞で、対格単数は -an。副動詞 nílin は主語が後ろの動詞と同一であることを示す。ílmo は重性名詞で、対格単数は同形。

    lúin fǘro ílmo, kúulimor tambór.

    読み:ルーイン フューロ イルモ、クーリモル タンボール。

    lúinfǘr-oílmo,kúul-imortambór
    とき沸く-<(重いものが)>水<主格>煮る-<我々が>雑穀<対格>

    「水が沸くと、我らは雑穀を煮る。」

    日常の炊事。時間節を lúin で導き、主節を続ける。主語「我ら」は動詞語尾に含み、名詞では繰り返さない。重性名詞 tambór の対格は主格と同形。

    fǘrau ílmo si nímbo.

    読み:フューラウ イルモ シ ニンボ。

    fǘr-auílmosinímbo
    沸く-<双数>水<主格>と乳<主格>

    「水と乳が沸く。」

    日常。単数の名詞を si で二つ並べたので、動詞は双数。双数の動詞は人称・性を区別しない。

    éso ílmo só síval

    読み:エーソ イルモ ソー シーヴァル

    és-oílmosósíval
    いる-<(重いものが)>水<主格>この<重性>青い

    「この水は青い。」

    日常会話で、湖や沢の水の色を指して言う文。指示詞 só は重性名詞 ílmo に添う。与格・場所がないので存在文ではなく繋辞文として読む。述語形容詞 síval は重性単数主格で無語尾。緑がかった青緑や緑とは別の青を示す。

    þarnéro ílmo an orénoi.

    読み:サルネーロ イルモ アン オレーノイ。

    þarnér-oílmoanorén-oi.
    行き止まる-<(重いものが)>水<主格>上手縁-<与格>

    「水は縁で行き止まりになる。」

    流れが端に着いてこれ以上先へ進めなくなる意。水 ílmo は重性なので動詞は 3 人称単数・重性の -o。場所 an orén-oi は「縁の側で」。

    glímo ílmo es monkréinos.

    読み:グリーモ イルモ エス モンクレーノス。

    glím-oílmoesmonkréin-os.
    滲む-<(重いものが)>水<主格>から切れ目-<属格>

    「切れ目から水が滲み出る。」

    記録文のような、淡々とした直説法。es+属格は出所「〜から」。monkréin の単数属格は monkréinos。

    glímo ílmo un plánan.

    読み:グリーモ イルモ ウン プラーナン。

    glím-oílmounplán-an.
    滲む-<(重いものが)>水<主格>内に帳簿-<対格>

    「水が帳簿の中へ滲む。」

    書き物の場で、水分が帳簿の中へ移る動作を中立的に述べる日常の文。主語の ílmo は地を流れる水として重性なので、動詞は 3人称単数・重性の -o をとる。un+対格は「〜の中へ」。

    wéro ílmo du tórvo.

    読み:ウェーロ イルモ ドゥ トルヴォ。

    wér-oílmodutórvo
    滴る-<(重いものが)>水<主格>下手梁<対格>

    「梁に水が滴る。」

    動詞 wér- は重性の主語 ílmo に一致して 3人称単数重性語尾 -o をとる。水が落ちていく着点は、方向の前置詞 du と重性 o語幹 tórvo の単数対格で示す。重性 o語幹では単数主格と対格が同形で、見出し形 tórvo のまま対格に使える。

    wéro ílmo gléin es reinándos.

    読み:ウェーロ イルモ グレーン エス レイナンドス。

    wér-oílmogléinesreinánd-os.
    滴る-<(重いものが)>水<主格>清いから雨水甕-<属格>

    「甕からの清い水がぽつぽつと落ちる。」

    祭祀や家屋の書で使われる、雨水甕からの澄んだ水に関する文。主語は重性の水で、動詞は3人称単数・重性。wér- は連続的な流れではなく、点々と離れる滴に用いる。

    na wéro unlóur ílmo só.

    読み:ナ ウェーロ ウンロール イルモ ソー。

    nawér-ounlóurílmosó.
    <〜ない>滴る-<(重いものが)>まだ水<主格>この<重性>

    「この水はまだぽつぽつと落ちていない。」

    状態確認での日常的な否定。否定小辞 na は直説法の前に置き、まだを表す unlóur は動詞の直後、主語の前に置く。

    kráilin þaimfúnel, þáimim ílmo.

    読み:クライリン サインフーネル、サイミン イルモ。

    kráil-inþaimfúnel,þáim-imílmo.
    持つ-<〜して・〜く>汲み綱<対格>汲む-<私が>水<対格>

    「汲み綱を手に持ちながら、私は水を汲む。」

    水を汲み上げる道具としての使用場面。副動詞 kráilin と後ろの動詞 þáimim の主語は同じ一人称。þáimim ílmo は「汲む-1SG 水(重性の対格)」で、汲み綱は「手に持つ」句として前に置いている。

    nílim ílmo þulklér.

    読み:ニーリン イルモ スルクレール。

    níl-imílmoþulklér.
    飲む-<私が>水<対格>ぬるい

    「ぬるい水を飲む。」

    飲み物としての水の温度を言う日常文。目的語 ílmo は重性単数対格で、重性名詞は主格と対格が同形である。修飾の þulklér も重性単数対格に対応するが、この形では語尾不加。

    kámim snélan un ílmoi.

    読み:カーミン スネーラン ウン イルモイ。

    kám-imsnél-anunílm-oi
    浸す-<私が>布-<対格>中に水-<与格>

    「私は布を水に浸しています。」

    日常の家事の文。主語は動詞の語尾からわかるため省略できる。un は「〜の中に」の場所を表し、与格をとる。

    káma líura snélan káilan un ílmoi.

    読み:カーマ リーウラ スネーラン カイラン ウン イルモイ。

    kám-alíurasnél-ankáil-anunílm-oi
    浸す-<(軽いものが)>女<主格>布-<対格>乾いた-<対格>中に水-<与格>

    「その女は、乾いた布を水に浸して扱いやすく戻す。」

    「乾いた布」という文脈で、単に浸すのではなく元に戻す意味が出る。主語が軽性の女であるため、動詞は軽性の語尾 -a をとる。

    éso ílmo klér un dulúnoi.

    読み:エーソ イルモ クレール ウン ドゥルーノイ。

    és-oílmoklérundulún-oi.
    いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい内に底-<与格>

    「底のほうに冷たい水がある。」

    器物や空間の底を日常の所在文で述べる例。un は与格と組んで「〜の中で/側に」を示し、dulún の与格は重性語幹に -oi が付いた形。

    vúl ílmo, ende.

    読み:ヴール イルモ、エンデ。

    vúlílmo,ende.
    注ぐ<命令法><あなたが>水<対格>どうぞ

    「水を注いで、頼む。」

    縁の市などのくだけた取引言葉では、敬語や格語尾を省き、むき出しの語幹 vúl を使う。 ende は願望形の決まり文句。

    múndula ólmar ílmo gléin.

    読み:ムンドゥラ オルマル イルモ グレーン。

    múndul-aólmarílmogléin.
    注ぐ-<(軽いものが)>年長者<主格>水<対格>清い

    「年長者が清い水を注ぐ。」

    祭祀や書物の文脈で使える言い方。名詞 ílmo は重性で、後置の形容詞 gléin は重性単数の無標語尾。器の口を下げて上から来る水を扱う動作として自然な文。

    ké éso ílmo só sakonén?

    読み:ケー エーソ イルモ ソー サコネーン?

    kéés-oílmosósakonén
    <〜か>いる-<(重いものが)>水<主格>この<重性>しょっぱい

    「この水はしょっぱいか。」

    井戸端や台所で、味を確かめる日常の問い。重性名詞述語文で、主語名詞句は ílmo só、述語形容詞 sakonén を後に置く。はい/いいえの疑問は文頭 ké で作る。

    ké éso ílmo bún?

    読み:ケー エーソ イルモ ブーン?

    kéés-oílmobún?
    <〜か>いる-<(重いものが)>水<主格>深い

    「水は深いか。」

    水場の深さを確かめる日常的な問い。はい/いいえの問いは文頭の小辞 ké で作る。地面を流れる水 ílmo は重性o語幹で、存在・繋辞は -o に一致する。形容詞 bún は無標の重性単数主格形。

    þáimim ílmo es ilmándos.

    読み:サイミン イルモ エス イルマンドス。

    þáim-imílmoesilmánd-os
    汲む-<私が>水<対格>から井戸-<属格>

    「私は井戸から水を汲む。」

    日常の井戸仕事の文。þáim-「汲む」の目的語 ílmo は重性o語幹のため、単数対格も ílmo のまま。es は前置詞で、属格 ilmándos と組んで「井戸から」を表す。

    glǘno ílmo un ilmándoi.

    読み:グリューノ イルモ ウン イルマンドイ。

    glǘn-oílmounilmánd-oi
    凍る-<(重いものが)>水<主格>内に井戸-<与格>

    「井戸の中で、水が凍る。」

    季節の観察・記録向きの文。un は前置詞で、与格 ilmándoi と組んで「井戸の中で」を表す。主語 ílmo は重性o語幹なので、動詞の一致は重性3人称単数 -o になる。

    flínim ílmo klér.

    読み:フリーニン イルモ クレール。

    flín-imílmoklér.
    嫌う-<私が>水<対格>冷たい

    「冷たい水は嫌いだ。」

    炉ばたや食事の場で、冷たい水のように口当たりを拒む日常的な言い方。flín-は感情の語だが、構文は通常の他動詞で、経験者は動詞の人称語尾に示し、対象は対格にとる。重性単数のílmoは主格と対格が同形で、対格語尾は形態素として分けない。形容詞klérは名詞の後位に置かれ、重性単数の主格・対格では無標識となる。

    éso unlóur ílmo un kórvoi.

    読み:エーソ ウンロール イルモ ウン コルヴォイ。

    és-ounlóurílmounkórv-oi.
    いる-<(重いものが)>まだ水<主格>内に倉-DAT.

    「倉の中には、まだ水がある。」

    肯定の存在文で、ある状態がまだ続いていることを表す。否定の小辞 na は伴わない。存在・所有の文では、動詞は持ち主ではなく持たれている物 ílmo に一致する。

    gél-o ílmo un filduló

    読み:ゲーロ イルモ ウン フィルドゥロー

    gél-oílmounfilduló
    行く-<(重いものが)>水<主格>内に刻み通路<対格>

    「水は刻み通路へ流れる。」

    日常の作業場面。un+対格は「〜の中へ」を示す。重性o語幹の対格は主格と同形なので、形態上は無変化だが、前置詞と語順によって対格になる。

    tína endríña ílmoi kléroi.

    読み:ティーナ エンドリーニャ イルモイ クレーロイ。

    tín-aendríñaílm-oiklér-oi
    慣れる-<(軽いものが)>子ども<主格>水-<単数・与格>冷たい-<単数・与格>

    「子どもは冷たい水に慣れる。」

    日常場面。tín- は主観的な順応を表し、対象には与格を用いる。重性o語幹 ílmo の単数与格は ílm-oi で、形容詞 klér も重性単数与格 klér-oi で一致する。物や道具が使い込まれて手になじむ意味には使わない。

    félo krúndo ílmo.

    読み:フェーロ クルンド イルモ。

    fél-okrúndoílmo
    潮を引き戻す-<(重いものが)>泥<主格>水<対格>

    「潮泥が水を引く(潮が引く)。」

    干潟語原義の「潮を引き戻す」に対応する言い方。krúndo は「泥」だが、fél と組むと潮が引き込む泥を指し、潮が引く意になる。krúndo・ílmo とも重性で、動詞は 3 人称単数・重性 -o。宮廷では使われないが、縁の肩や縁では潮の動きを語る語として残る。

    éso ílmo só trém

    読み:エーソ イルモ ソー トレーン

    és-oílmosótrém
    いる-<(重いものが)>水<主格>この<重性>平ら

    「この水は平らだ。」

    湖や池の水面が静まって起伏がないことを言う、日常向けの文。ílmo は重性の水を表し、指示詞 só を伴う。この文では不可名詞的な水そのものを主語にしているため、動詞は重性単数、trém も無標。

    kréuno ílmo un dulún

    読み:クレウノ イルモ ウン ドゥルーン

    kréun-oílmoundulún
    沈む-<(重いものが)>水<主格>中に底<対格>

    「水が底へ沈む。」

    物理的な「沈む」の文。前置詞 un に名詞の対格を続けて「〜の中へ」「〜へ」を表す。水は重性なので、動詞は重性の3人称単数語尾 -o をとる。字義的な「深いほうへ沈む」として、夜の比喩から独立して用いる例。

解説

地の上にある水の総称。川、湖、泉の水など、空から降る雨とは区別される「下へ流れていくもの」で、重性に属する。高原では水を動きの段階で呼び分け、湧く水は þéul、走る水は rúndo、静まった水は séimo、落ちる水は duló(滝)と言う。ílmo はそれらをまとめて言うときや、飲み水・使い水を言うときに使う。

文法

重性・o語幹(④型)。属 ílmos、与 ílmoi。物質名詞としてふつう単数。

語源

古高原語 *ílmo から。重性の古い接辞 *-o- が語幹末に残った語。

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