小説
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下の風
崖下から這い上がる湿った悪い風。
tóro duléumo es orénos, esélo nébro dórel.
読み:トーロ ドゥレウモ エス オレーノス、エセーロ ネーブロ ドーレル。
| tór-o | duléumo | es | orén-os, | es-él-o | nébro | dórel. |
| 来る-<(重いものが)> | 下の風<主格> | から | 縁-<属格> | いる-<〜だろう>-<(重いものが)> | 霧<主格> | 明日 |
「縁から下の風が来ている。明日は霧が出るだろう。」
空模様を読む日常の文。duléumo は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。後半は存在の文を推量法にしたもので、確かでない明日のことは推量法で言う。霧 nébro も重性なので、esélo の語尾は -o になる。下の風は崖下から這い上がる湿った風で、霧と病を運ぶものとされる。
lúin tóro duléumo, mé gélir du orén.
読み:ルーイン トーロ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。
| lúin | tór-o | duléumo, | mé | gél-ir | du | orén. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 下の風<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<皆で〜せよ> | 下手 | 縁<対格> |
「下の風が吹いてきたら、皆、縁のほうへ行ってはならん。」
年長者が子どもたちに言い聞かせるような禁止の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節は「mé+命令法・2人称複数(-ir)」で、目下の者への下向きの話し方になる。du+対格で「下手へ」。下の風が来る方向へ行けば、湿った重い空気に引かれると考えられている。
gléin anléuma, gróm duléumo.
読み:グレーン アンレウマ、グローン ドゥレウモ。
| gléin | anléuma, | gróm | duléumo. |
| 清い | 上の風<主格> | 重い | 下の風<主格> |
「清きは上の風、重きは下の風。」
諺の形の文。諺や詩では繋辞 és- を落とし、述語の形容詞を先に置く。ふつうの名詞句は「名詞+形容詞」の順なので、形容詞で始まる文はそれだけで格言だとわかる。gléin は軽性の anléuma に、gróm は重性の duléumo に一致しているが、どちらも単数・主格なので語尾はつかない。上から来る風と下から来る風の良し悪しを対にして言う。
lúin grúuno duléumo, mé gélir du orén.
読み:ルーイン グルーノ ドゥレウモ、メー ゲーリル ドゥ オレーン。
| lúin | grúun-o | duléumo, | mé | gél-ir | du | orén. |
| とき | うなる-<(重いものが)> | 下の風<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<皆で〜せよ> | 下手 | 縁<対格> |
「下の風がうなるときは、皆、縁のほうへ行くな。」
崖の上の番人や運び人の間での戒め。duléumo「下の風」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。軽性の léuma「風」なら grúuna になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。禁止は「mé+命令法・複数」。
tóro duléumo múr es orénos.
読み:トーロ ドゥレウモ ムール エス オレーノス。
| tór-o | duléumo | múr | es | orén-os. |
| 来る-<(重いものが)> | 下の風<主格> | 濁った | から | 縁-<属格> |
「縁から濁った下の風が上がってくる。」
霧期の前に交わされる天気の話。duléumo「下の風」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o、形容詞は語尾なしの形をとる。崖の下から来る湿った風は、病を運ぶ濁ったものとされる。
tóro duléumo húmel es dúroros.
読み:トーロ ドゥレウモ フーメル エス ドゥーロロス。
| tór-o | duléumo | húmel | es | dúror-os. |
| 来る-<(重いものが)> | 下の風<主格> | 湿った | から | 下手・南-<属格> |
「南から湿った下の風が這い上がってくる。」
霧期の前ぶれを言う文。duléumo は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとり、形容詞 húmel も重性・主格の形(語尾なし)になる。下から来る風は病を運ぶ重いものとされる。
glünlúin, éso duléumo frél
読み:グリュンルーイン、エーソ ドゥレウモ フレール
| glünlúin, | és-o | duléumo | frél |
| 凍りの頃 | いる-<(重いものが)> | 下の風<主格> | 寒い |
「凍りの頃は、下の風が寒い。」
glünlúinは動詞の前に置かれる場面の枠。duléumoは重性語として重性の語形エソで受ける。frélは固体化や凍結の含みを持たず、冷気に触れる感覚を指す。
seiméndo duléumo.
読み:セイメンド ドゥレウモ。
| seim-énd-o | duléumo. |
| 静まる-<〜しますように>-<(重いものが)> | 下の風<主格> |
「下の風が収まりますように。」
重性名詞 duléumo を主語にとる儀礼的な願い。願望法三人称単数・重性 -o を使う。語尾 -énd- が強勢を取り、語根側の強勢は立たない。
éso duléumo múel
読み:エーソ ドゥレウモ ムーエル
| és-o | duléumo | múel |
| いる-<(重いものが)> | 下の風<主格> | 遅い |
「下の風は遅い。」
風の高さで区別する場面。上の風が速いという対比を前提に、下の風の遅さを述べる。下の風を表す語は重性として扱う。形容詞述語は存在動詞+主語+形容詞の形になり、重性単数の形容詞は無語尾。
不穏な気配
下から立ちのぼる悪い噂や病の気配の比喩。
fíndim duléumo gráis es dáloros.
読み:フィンディン ドゥレウモ グライス エス ダーロロス。
| fínd-im | duléumo | gráis | es | dálor-os. |
| 聞く-<私が> | 不穏な気配<対格> | 悪い | から | 下の国-<属格> |
「下の国のほうから、よからぬ気配が聞こえてくる。」
比喩の意味の用例で、病のはやりや悪い噂が崖下から伝わってくることを言う。duléumo は重性なので、主格と対格が同じ形になり、動詞のすぐ後ろの語順で目的語だとわかる。形容詞 gráis も重性・単数・対格に一致するので語尾はつかない。風の「気配」を聞きとるという言い方なので、fínd-「聞く」と組むことが多い。
léunim ré tóro duléumo es faronárar, ausenár.
読み:レウニン レー トーロ ドゥレウモ エス ファロナーラル、アウセナール。
| léun-im | ré | tór-o | duléumo | es | faron-ár-ar, | au-sen-ár. |
| 申す-<私が> | <〜と(節)> | 来る-<(重いものが)> | 不穏な気配<主格> | から | 荷-<〜する人>-<〜らの> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> |
「目付殿、運び人たちのあいだから不穏な気配が立ちのぼっていると申し上げます。」
役人に報告する改まった文。léun- は「言う」の謙譲の補充形。「〜と」の節は ré で導き、主節の後ろに置く。呼びかけは呼格を使わず、役職名を文の終わりに読点で区切って添える。ここでの duléumo は風そのものではなく、身分の低い者たちのあいだに広がる不満や噂を指す。下から上がってくる悪いものとして言い表す比喩である。
霧期に崖の下から這い上がってくる湿った重い風。病を運び、霧を連れてくる悪い風とされる。ほかの風の語と違って重性に属し、重い湿り気を帯びたものとして扱われる。比喩として、下から立つ悪い噂や不穏な気配を言う。
glünlúin, múno duléumo un trǘlmo.
読み:グリュンルーイン、ムーノ ドゥレウモ ウン トリュルモ。
| glünlúin, | mún-o | duléumo | un | trǘlmo. |
| 凍りの頃, | 入る-<(重いものが)> | 下風<主格> | 中に | 裂け目<対格> |
「凍りの頃、下の風が裂け目の中へ通ってくる。」
意味2。凍りの頃の備忘のような記述調。下の風は重性なので、動詞は3人称単数・重性の語尾をとる。un+対格で、風が裂け目の内へ通る通路を示す。重性o語幹のtrǘlmoは主格と対格が同形だが、unが対格を要求する。
glünlúin, gíro duléumo klér már.
読み:グリュンルーイン、ギーロ ドゥレウモ クレール マール。
| glünlúin, | gír-o | duléumo | klér | már |
| 凍りの頃 | 刺す-<(重いものが)> | 下風<主格> | 冷たい | 手<対格> |
「凍りの頃、冷たい下風が手を刺す。」
凍りの頃の冷気による刺すような感覚。凍りの頃を場面の枠として文頭に置く。 klér が主語 duléumo を修飾する。冷気が主語の言い方は、改まった場でも自然。
重性・o語幹(④型)。属 duléumos、与 duléumoi。謙譲の接頭辞 du- を名詞につけた形ではない点に注意。
前置詞 du「下手」+ léuma「風」。下から来る重いものとして、語尾が重性の -o に改められた。
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