小説
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グリュノーラ
旧道の、上から一つ目の岩棚。「氷の棚」。
glünóroi, brúna krailár fáron.
読み:グリュノーロイ、ブルーナ クライラール ファーロン。
| glünór-oi, | brún-a | krail-ár | fáron. |
| グリュノーラ-<与格> | 背負う-<(軽いものが)> | 手に持つ-<〜する人・主格> | 荷<対格> |
「グリュノーラでは、組の長が荷を背負う。」
glünóroi は *-óra をもつ古い場所名 glünóra の与格で、場面指定の場所として文頭に置ける。krailár は軽性の行為者名詞なので動詞は 3 単数軽性の -a で受ける。fáron は重性で主格と対格が同形だが、VSO の語順により目的語と読む。
glünóroi, glǘno lourílmo.
読み:グリュノーロイ、グリューノ ロウリルモ。
| glünór-oi, | glǘn-o | lourílmo. |
| グリュノーラ-<与格> | 凍る-<(重いものが)> | 滝<主格> |
「グリュノーラでは、滝が凍る。」
glünóroi は旧道上の岩棚名 glünóra の与格として、場面指定に使える。lourílmo は重性の滝なので動詞は重性 3 単数の -o で受ける。冷えた乾風期に滝のしぶきが棚に凍りつく自然状況を、短い直説法で述べている。
éso glünóra, salóur na éso fleuróra.
読み:エーソ グリュノーラ、サロール ナ エーソ フレウローラ。
| és-o | glünóra, | salóur | na | és-o | fleuróra. |
| いる-<(重いものが)> | グリュノーラ<主格> | しかし | <〜ない> | いる-<(重いものが)> | フレウローラ<主格> |
「グリュノーラはあるが、フレウローラはない。」
旧道の岩棚のうち、上部の glünóra は棚として残る一方、下部の fleuróra は崩落したことを、年代記・昔語りで対比する言い方。存在動詞 és- は主語の古地名に合わせ、重性の 3人称単数 -o をとる。逆接の salóur は「同じ瀬の外へ移る」ニュアンスを持つ。
旧道のいちばん上の岩棚。funelór の綱場から綱で荷を吊り下ろした最初の棚で、運び人はここで荷を受け取って背負った。岩には荷を受け止める留め具の跡が残る。崖の上から数十メートルほどで、綱が届く。白糸川の滝が崖の縁から落ちてすぐのわきにあり、しぶきがかかる。冷えた乾風期の年には、しぶきが凍って棚じゅうが氷に覆われ、旧道は半月ほど通れなくなった。今は上下のつづら折りが崩れて、棚だけが取り残されている。旧道の岩棚の名はどれも古い場所の接尾辞 *-óra を含む。荷担ぎ歌と funelór の年長者の言い方では語末の a まで言う。
固有名詞。重性(岩棚は地上の石なので)。綴りは〈glunora〉。 属 glünóros、与 glünóroi。
glünó「氷」+古い場所の接尾辞 *-óra。「氷の棚」。*-óra は地名にだけ残る(funelór と同じ)。
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