小説
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忘れる
知っていたことや約束を忘れる。
ké véilses hémbro?
読み:ケー ヴェールセス ヘンブロ?
| ké | véils-es | hémbro? |
| <〜か> | 忘れる<〜し終えた>-<あなたが> | 恥じる心<対格> |
「恥を知る心を忘れてしまったのか。」
厚かましいふるまいを責める言い方。véil- は二重母音の語根なので、完了相は -s- を足して véils- になる。hémbro は重性なので、対格も主格と同じ形。
ké véilses fáron? na véilsim.
読み:ケー ヴェールセス ファーロン?ナ ヴェールシン。
| ké | véils-es | fáron? | na | véils-im. |
| <〜か> | 忘れる<〜し終えた>-<あなたが> | 荷<対格> | <〜ない> | 忘れる<〜し終えた>-<私が> |
「「荷を忘れてきたのか?」「忘れてない。」」
二人の発話。語根 véil- は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して véils- にする。はい・いいえで答える問いには、問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返して答える。2人称を使っているので、くだけた話し方か下向きの話し方。
mé véil grúndo! torélo nébro.
読み:メー ヴェール グルンド!トレーロ ネーブロ。
| mé | véil | grúndo! | tor-él-o | nébro. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 掛け<対格> | 来る-<〜だろう>-<(重いものが)> | 霧<主格> |
「掛けを忘れるなよ。もうすぐ霧が来るぞ。」
縁の市で商人どうしが交わす念押し。禁止は「mé+命令法」で、命令法2単はむき出しの語幹 véil。grúndo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形。後半は推量法で、主語の霧 nébro が重性なので語尾は -o。霧が来る前に精算する、という市の習わしを踏まえている。
na véilim grúndo, séulin.
読み:ナ ヴェーリン グルンド、セウリン。
| na | véil-im | grúndo, | séulin. |
| <〜ない> | 忘れる-<私が> | 負い目<対格> | 友 |
「その恩義は忘れないよ、友よ。」
同じ段の親しい相手への言い方。呼格は日常では使わないので、呼びかけの名詞を文の終わりに読点で区切って添える。grúndo は金銭の掛けだけでなく、人に負っている恩義も指す。
mé véil gleinó, endríña.
読み:メー ヴェール グレイノー、エンドリーニャ。
| mé | véil | gleinó, | endríña. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 護符<対格> | 子ども |
「護符を忘れるんじゃないよ、坊や。」
出かける子に親が言う、日常の禁止の言い方。禁止は「mé+命令法」で表す。日常では呼格を使わないので、呼びかけの語は読点で区切って文末に添える。
grómim. véilim þelán táses, séulin.
読み:グローミン。ヴェーリン セラーン ターセス、セウリン。
| grómim. | véil-im | þel-án | tás-es, | séulin. |
| すまない | 忘れる-<私が> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> | 友 |
「すまない、友よ。お前の名前を忘れてしまった。」
親しい相手への、くだけた謝罪。grómim は「私は重い」というのがもとの意味で、過ちを「自分が重くなった」ととらえる見方から来ている。呼びかけの séulin は、読点で区切って文の終わりに置く。
dáloro, véilsim fáron.
読み:ダーロロ、ヴェールシン ファーロン。
| dáloro, | véils-im | fáron. |
| ちくしょう | 忘れる<〜し終えた>-<私が> | 荷<対格> |
「ちくしょう、荷を忘れちまった。」
自分へのいらだちを表す悪態。véil- の語根は二重母音なので、完了相は -s- を足して véils- になる。fáron は重性なので、対格も主格と同じ形。都の人は、この語を口にすると言葉が下へ落ちると考えて避ける。
mé veilésa kloimár krévan fírnes.
読み:メー ヴェイレーサ クロイマール クレーヴァン フィルネス。
| mé | veil-és-a | kloimár | kréva-n | fírn-es. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 弟子<主格> | 練習-<対格> | 筆-<属格> |
「弟子は筆の練習を怠ってはならない。」
学び舎の心得書きの文体。当為法の文なので、否定には mé を使う。当為法の -és- が強勢をとるため、語根 véil- の強勢は消えて veilésa になる。何の練習かは、属格 fírnes を後ろに置いて krévan fírnes「筆の練習を」と示す。véil-「忘れる」をこのように使うと「おろそかにする」の意味になる。
lúin tóra saréna mélnes, mé véil virán!
読み:ルーイン トーラ サレーナ メルネス、メー ヴェール ヴィラーン!
| lúin | tór-a | saréna | méln-es, | mé | véil | vir-án! |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 本番<主格> | 詩-<属格> | <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 言葉-<対格> |
「詩合わせで正式の詠みの番が来たら、句を忘れるなよ。」
詩合わせの前に、目上の者が目下の者に言う励ましの言葉。saréna mélnes「詩の本番」は、勝ち負けの判定にかかる正式の詠みを指し、その前の下詠みと区別する。lúin 節では saréna が主語になり、軽性なので動詞は -a で受ける。禁止は mé +命令法の言い方で、2人称単数なので下向きの話し方になる。
na véilim lundán sé
読み:ナ ヴェーリン ルンダーン セー
| na | véil-im | lundá-n | sé |
| <〜ない> | 忘れる-<私が> | 節-<対格> | この<軽性> |
「私はこの節を忘れない。」
節・旋律という語義で、言葉を替えても歌えるものを指す。見出し語 lundá に単数対格が付いた lundán を使う。否定小辞 na は動詞の直前に置く。
mé véil puló só!
読み:メー ヴェール プロー ソー!
| mé | véil | puló | só |
| <禁止・願いの打ち消し> | 忘れる<命令法><あなたが> | 拍子<対格> | この<重性> |
「この拍子を忘れるな。」
作業歌や刻みの場で、拍が乱れそうになった仲間へかけるくだけた指示。禁止は mé +命令法 2人称で表す。命令法の 2人称は語幹 véil をそのまま使う。puló は目的語だが、重性単数では格語尾がつかず主格と同形になる。
na véilimor seiraldáran.
読み:ナ ヴェーリモル セイラルダーラン。
| na | véil-imor | seiraldár-an |
| <〜ない> | 忘れる-<我々が> | 待席-<対格> |
「我らは、待席の作法を忘れない。」
共同体で作法を守る言い方。na は直説法の否定。動詞語尾 -imor により 1 人称複数主語を明示し、主語代名詞は必要ない。seiraldár は「作法」として抽象用法で、対格 seiraldáran を取る。
流れ去る
古い言い方で、水やものが下手へ流れて消える。
véilo ílmo du dálor.
読み:ヴェーロ イルモ ドゥ ダーロル。
| véil-o | ílmo | du | dálor. |
| 流れ去る-<(重いものが)> | 水<主格> | 下手 | 下の国<対格> |
「水は下の国へ流れ去る。」
古い言い回しで、物事の移ろいを言う諺。「流れ去る」の意味では自動詞として使い、主語の ílmo(重性)に合わせて3単・重性の -o をとる。日常の会話では、この意味はほとんど使わない。
lúin véilso múrno, tóro nébro es orénos.
読み:ルーイン ヴェールソ ムルノ、トーロ ネーブロ エス オレーノス。
| lúin | véils-o | múrno, | tór-o | nébro | es | orén-os. |
| とき | 流れ去る<〜し終えた>-<(重いものが)> | 腐り氷<主格> | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> |
「腐り氷が流れ去ってしまうと、縁から霧が上がってくる。」
湖畔の村に伝わる季節の言い習わし。完了相の véils- で「すっかり流れ去った」ことを表す。múrno も nébro も重性なので、二つの動詞はどちらも -o をとる。lúin の節は主節の前に置く。
忘れることを表す。もとは「流れ去る」という意味で、記憶が川の下手へ流れていくものと考えられている。系譜の一瀬を忘れることは家の恥になるので、系譜読みに対して「お忘れになった」と言うのは強い無礼とされる。
完了語根 véils-。尊敬は au- と v- が融合して aubéil-、謙譲は dumbéil-。
古高原語 *véil- から(もとは「流れ去る」の意味)
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