þél-

品詞
動詞
意味
名乗る
辞書形
þéla
発音
[ˈθela]
読み
セーラ
分野
知覚・感情・思考・発話

意味

  1. 名乗る

    自分の名を言う。名前は対格で示す。

    duþélim sélvanan, an fóndaros ráimaros dúlenan dáumbar téir lóurul, dúlenan fáir þrénul.

    読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス ライマロス ドゥーレナン ダウンバル テール ロールル、ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

    du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osráimar-osdúl-en-andáumbartéirlóur-ul,dúl-en-anfáirþrén-ul
    <〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>二十三瀬-<〜たちを>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>四段-<〜たちを>

    「ライマルの源から二十三瀬下りた、四段下りの者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

    改まった場での名乗り。固有名も小文字で書く。分詞 dúlenan は二度とも、名前の sélvanan(軽性・単数・対格)に一致している。lóurul と þrénul は道のりの対格。瀬と段は語が違うので、どちらが世代でどちらが身分かがすぐにわかる。

    pán þéles? þélim sélvanan.

    読み:パーン セーレス?セーリン セルヴァナン。

    pánþél-es?þél-imsélvan-an.
    誰<対格>名乗る-<あなたが>名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>

    「「何と名乗る?」「セルヴァンと名乗る。」」

    二人の発話(問いと答え)。疑問詞の対格 pán を文頭に出している。名は軽性なので、目的語では対格 -an がつく。

    lís þelán táses séndoi!

    読み:リース セラーン ターセス センドイ!

    lísþel-ántás-essénd-oi!
    書く<命令法><あなたが>名前-<対格><あなた>-<属格>ここ-<与格>

    「「ここにお前の名を書け。」」

    下向きの命令。命令法の2人称単数はむき出しの語幹 lís。目上の人には使えず、目上には願望法3人称(aulisénde …)で頼む。名前を書くことは息を使わないので、名の禁忌には当たらない。

    pán þéla endríña sé?

    読み:パーン セーラ エンドリーニャ セー?

    pánþél-aendríñasé?
    誰<対格>名乗る-<(軽いものが)>子ども<主格>この<軽性>

    「この子は何と名乗っているのか。」

    þél- は名乗る名前を対格でとるので、名前を尋ねるときは疑問詞の対格 pán を文頭に出す。子どもは軽性。指示詞 sé は名詞の後ろに置く。目上の人には使わない問い方。

    lúin tóro nébro, na þéla torár þelán.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーラ トラール セラーン。

    lúintór-onébro,naþél-ator-árþel-án.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>名乗る-<(軽いものが)>来る-<〜する人>名前-<対格>

    「霧が来ると、客は名を名乗らない。」

    霧の中で名前を声に出すと下の国に聞かれる、という禁忌を述べた文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。直説法の否定には na を使う。

    lóima lourvirár þeláis an fóndaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アン フォンダロス。

    lóim-alourvirárþel-áisanfóndar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>上手源-<属格>

    「系譜読みは、始祖から一瀬ずつ名を唱えていく。」

    婚姻の取り決めや祖先祀りで、系譜読みが家系を唱える場面を述べる文。系譜を言うときは「an fóndaros(源から)」を前に置くのが改まった言い方。この an は、流れの上手(始祖)から下っていく向きを表す。

    fóndaro ráimaros, léunim þeláis aursárar.

    読み:フォンダロ ライマロス、レウニン セライス アウルサーラル。

    fóndar-oráimar-os,léun-imþel-áisaursár-ar.
    源-<〜よ>ライマル-<属格>申す-<私が>名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>

    「ライマルの源よ、祖先たちの名を申し上げます。」

    系譜読みが系譜を唱えはじめるときの決まった呼びかけ。呼格は日常では使わず、古い詩と系譜の唱えにだけ残っている。重性の fóndar は呼格で fóndaro になる。léun- は「言う」の謙譲の補充形で、祖先に対して自分を低めている。

    funeléra lisár þelán aldáres áurenes.

    読み:フネレーラ リサール セラーン アルダーレス アウレネス。

    funelér-alis-árþel-ánaldár-esáur-en-es.
    書き留める-<(軽いものが)>書く-<〜する人>名前-<対格>王の位-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

    「書記は、高き座の名を書き留める。」

    記録の場面の文。属格にすると、分詞も -es で一致して aldáres áurenes「高き座の」となる。王の名は口にできない場合でも、書くことは息を使わないので禁じられない。書くときは上げ書きにする。

    mé vír þelán aldáres te áursa!

    読み:メー ヴィール セラーン アルダーレス テ アウルサ!

    mévírþel-ánaldár-esteáurs-a!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>座-<属格><関係節>お昇りになる<〜し終えた>-<(軽いものが)>

    「お昇りになった座のお名を口にするな。」

    王の崩御から一年のあいだの禁忌を言う文。この間は座名も声に出さず、aldár te áursa「お昇りになった座」と言う。aldár áuren「高き座」の分詞ではなく、関係節に完了形を入れて区別している。関係節は文の終わりまで続く。

    dúla faronár es orénos. mé vír þelán éles!

    読み:ドゥーラ ファロナール エス オレーノス。メー ヴィール セラーン エーレス!

    dúl-afaronáresorén-os.mévírþel-ánél-es!
    下る-<(軽いものが)>運び人<主格>から縁-<属格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「運び人が縁から下りた(落ちて死んだ)。その名を口にするな。」

    崖から落ちて死ぬことは、いちばん恐れられる死である。そのため brúum-「落ちる」とは言わず、dúl-「下る」で遠回しに言う。高原語には時制がないので、dúla は文脈によって「下りた」の意味になる。死後一年は死者の名を口にしない禁忌があるので、すぐ後に禁止の文が続く。

    toríro nébro, mé vír þelán! ésa þelá selvá, fíndo dálor.

    読み:トリーロ ネーブロ、メー ヴィール セラーン!エーサ セラー セルヴァー、フィンド ダーロル。

    tor-ír-onébro,mévírþel-án!és-aþeláselvá,fínd-odálor.
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>いる-<(軽いものが)>名前<主格>息<主格>聞く-<(重いものが)>下の国<主格>

    「霧が来たら名を呼ぶな。名は息だ、下の国が聞きつける。」

    霧期の禁忌を子どもに教える言い方。口に出した名前を selvá「息」としてとらえている。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。dálor は重性なので、動詞 fínd- は重性の -o をとる。

    lúin tóro nébro, mé hál þelán!

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン!

    lúintór-onébro,méhálþel-án!
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

    「霧が来たら、名を呼ぶな。」

    親が子に言い聞かせる禁止の言い方。霧の中で名前を大声で呼ぶと、下の国にその名を聞かれ、名の主が下へ引かれるとされる。nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。禁止は「mé+命令法」で言う。霧の中で人を呼ぶときは、名前の代わりに té「そこの方」などを使う。

    lúin éso nébro, mé vírir þeláis.

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ヴィーリル セライス。

    lúinés-onébro,mévír-irþel-áis.
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<皆で〜せよ>名前-<〜たちを>

    「霧が出ているときは、名を呼んではならぬ。」

    霧の中で名前を呼ぶと下の国に聞かれるという禁忌を、年長者が若者たちに言い聞かせる言い方。vír- が名前を目的語にとると「名を呼ぶ・口にする」の意味になる。禁止は mé+命令法で、相手が複数なので命令法の2複 -ir を使う。lúin の節は主節の前に置く。

    na vírimor þelán aldáres áurenes.

    読み:ナ ヴィーリモル セラーン アルダーレス アウレネス。

    navír-imorþel-ánaldár-esáur-en-es.
    <〜ない>言う-<我々が>名前-<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

    「我々は高き座の御名を口にしない。」

    王の個人名は即位と崩御のときに一度ずつしか唱えないという決まりを述べた文。na は直説法の動詞の直前に置く。分詞 áuren は座 aldár に一致して、軽性の属格 -es をとる。書くことは息を使わないので、この禁忌には当たらない。

    lóima lourvirár þeláis an fóndaros ráimaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アン フォンダロス ライマロス。

    lóim-alourvirárþel-áisanfóndar-osráimar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み名前-<〜たちを>〜から源-<属格>ライマル-<属格>

    「系譜読みが、ライマルの源から名を唱えていく。」

    婚姻や祖先祀りで系譜を唱える場面の文。an+属格は「上手から」の出どころを表す。系譜は源から下へ流れるものなので、始祖からの起点は es ではなく an で言うのが改まった言い方になる。

    lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。

    lúintór-onébro,méhálþel-ánéndr-ar.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>人-<〜らの>

    「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」

    子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。

    lís þelán táses sérin.

    読み:リース セラーン ターセス セーリン。

    lísþel-ántás-essérin.
    書く<命令法><あなたが>名前-<対格><あなた>-<属格>このように

    「自分の名前を、こうやって書いてごらん。」

    師が手本を書いて見せながら、子どもに言う言い方。下向きなので命令法の2人称単数(むき出しの語幹)を使う。sérin は様子を表す語として、文の後ろのほうに置く。目的語に格語尾がついているので、市の取引言葉ではなく命令法だとわかる。

    lísa ínin lisárar þelán míres.

    読み:リーサ イーニン リサーラル セラーン ミーレス。

    lís-aíninlis-ár-arþel-ánmír-es.
    書く-<(軽いものが)>それぞれ<主格>書く-<〜する人>-<〜らの>名前-<対格>自分-<属格>

    「書記たちは、それぞれ自分の名を書く。」

    ínin は、どの集まりの「それぞれ」かを複数属格(lisárar)で後ろに示す。主語は一つずつに分けられているので、動詞は複数ではなく3人称単数・軽性の lísa になる。役所で証文に名を連ねる場面の言い方。

    mé vír þelán élaures!

    読み:メー ヴィール セラーン エーラウレス!

    mévírþel-ánélaur-es!
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>昇りゆく人-<属格>

    「亡くなった方の名を口にしてはならない。」

    喪中に、子どもや目下の者をたしなめる言い方。死後一年は生前の名を声に出せないので、死者は élaur「昇りゆく人」と呼ぶ。禁止は mé+命令法。名前を書くことは禁じられていない。

    lísa páin þelán míres sáindarei.

    読み:リーサ パイン セラーン ミーレス サインダレイ。

    lís-apáinþel-ánmír-essáindar-ei.
    書く-<(軽いものが)>誰か<主格>名前-<対格>自分-<属格>証文-<与格>

    「誰かが証文に自分の名を書いていった。」

    市の帳場で、書いた人のわからない書き込みを見つけたときの言い方。時制がないので、文脈によって「書いた」とも「書いている」とも訳せる。再帰代名詞 mír の属格 míres は主語の páin を指す。紙の証文 sáindar は軽性の子音語幹なので、与格は -ei になる。

    vóila lourvirár þeláis brélar sélvanes.

    読み:ヴォイラ ロウルヴィラール セライス ブレーラル セルヴァネス。

    vóil-alourvirárþel-áisbrél-arsélvan-es.
    読む-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>きょうだい-<〜らの>セルヴァン-<属格>

    「系譜読みが、セルヴァンのきょうだいたちの名を読み上げる。」

    婚姻の取り決めで、系譜の巻を読み交わす場面の文。名詞の後ろに属格を二つ重ねて、「名前・きょうだいたちの・セルヴァンの」の順に並べる。書かれた名前を読むことは禁忌に当たらない。

    lóima lourvirár þeláis aursárar an fóndaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル アン フォンダロス。

    lóim-alourvirárþel-áisaursár-aranfóndar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>上手源-<属格>

    「系譜読みは、源から祖先たちの名を唱えていく。」

    婚姻の取り決めや祖先祀りで、系譜を読み上げる場面を言う文。lourvirár は lóur「瀬」+vír-「言う」+-ár「〜する人」からできた語で、軽性の子音語幹。an+属格で「上手から」。系譜は源から一瀬ずつ下へ向かって唱えるので、起点を an fóndaros で示す。

    aulisénde aulourvirár þelán dulóures némes sáindarei.

    読み:アウリセンデ アウロウルヴィラール セラーン ドゥローレス ネーメス サインダレイ。

    au-lis-énd-eau-lourvirárþel-ándulóur-esném-essáindar-ei.
    <お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-系譜読み名前-<対格>瀬下-<属格><私>-<属格>証文-<与格>

    「系譜読みの方に、私の子の名を証文へお書きいただきたく存じます。」

    系譜読みは家の年長の女性で、発言力も強い。そのため頼みごとは上向きの話し方でする。命令法の代わりに願望法の3人称を使い、相手は尊敬の au- をつけた役名で呼ぶ。au- は l の前では形を変えない。sáindar は軽性の子音語幹で、与格は -ei になる。

    þelésa torár þelán senárei.

    読み:セレーサ トラール セラーン セナーレイ。

    þel-és-atorárþel-ánsenár-ei.
    名乗る-<〜すべし>-<(軽いものが)>来訪者<主格>名前-<対格>目付-<与格>

    「来訪者は目付に名を名乗るべし。」

    市や崖道の決まりを書いた札や碑の文体。当為法で、主語の torár を明示している。þél-「名乗る」は名乗る名を対格でとり、名乗る相手を与格で言う。

    lísa lisár þeláis houmárar.

    読み:リーサ リサール セライス ホウマーラル。

    lís-alis-árþel-áishoumár-ar.
    書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>名前-<〜たちを>世帯主-<〜らの>

    「書記は世帯主たちの名を書き記す。」

    税の取り立ての記録を述べる文。人は数えずに炉(世帯)を数えるので、役所の記録では世帯主の名を一つずつ書き並べる。名詞句は「名詞+属格」の順で、þeláis houmárar は「名・世帯主たちの」。

    rainíþa ólmar þeláis gandéros kelárail.

    読み:ライニーサ オルマル セライス ガンデーロス ケラーライル。

    rain-íþ-aólmarþel-áisgandér-oskel-ár-ail.
    知る-<〜させる>-<(軽いものが)>長老<主格>名前-<〜たちを>硬木-<属格>伐る-<〜する人>-<〜らに>

    「長老は樵たちに硬木の呼び名を教える。」

    村の暮らしを述べる文。硬木は、心材の色、沈み方、樹齢、伐ったあとの状態で何通りにも呼び分けられ、その呼び名は村の長老が受け継いで伝える。rainíþ-「教える」は ráin-「知る」に使役の -íþ- がついた形で、教わる人を与格、教える内容を対格でとる。

    toríro þúumo, mé hál þelán!

    読み:トリーロ スーモ、メー ハール セラーン!

    tor-ír-oþúumo,méhálþel-án!
    来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>濃霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

    「濃霧が来たら、名を呼ぶな。」

    霧の中で名前を大声で呼ぶと下の国に聞かれる、という禁忌を戒める言い方。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。þúumo は重性なので -o をとる。禁止は mé+命令法。þúumo は、ふつうの霧 nébro より濃く、隣の人も見えない霧を言う。

    duþélim sélvanan, an fóndaros móros ráimaros dúlenan téir lóurul.

    読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス モーロス ライマロス ドゥーレナン テール ロールル。

    du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osmór-osráimar-osdúl-en-antéirlóur-ul.
    <〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>偉大な-<重性・属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>三瀬-<〜たちを>

    「偉大なるライマルの源から三瀬下りた、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

    改まった場での名乗り。名詞句の中は「名詞–形容詞–属格」の順に並び、形容詞は重性の fóndar に合わせて属格 -os になる。mór を家や氏族に使うと、その勢いが大きいことを誇る言い方になる。目上の人自身を mór と言うことはしない。

    lóima lourvirár þeláis aursárar fóndelar.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル フォンデラル。

    lóim-alourvirárþel-áisaursár-arfóndel-ar.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>源に近い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・属格>

    「系譜読みは、源に近い祖先たちの名を唱える。」

    祖先祀りで系譜を唱える場面の文。系譜について fóndel と言うと、始祖から下った瀬の数が少ないことを表す。古い詩の言い方で、改まった響きがある。形容詞は aursár の複数属格に合わせて -ar になる。

    éira, na ansénim þelán éles.

    読み:エーラ、ナ アンセーニン セラーン エーレス。

    éira,naansén-imþel-ánél-es.
    ええと<〜ない>思い出す-<私が>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「ええと、あの人の名前が思い出せない。」

    日常のくだけた独り言。否定の na は動詞のすぐ前に置く。「誰の名前か」は属格の代名詞 éles で、名詞の後ろに置く。

    éso nébro. lúin hála páin þelán táses, mé glén!

    読み:エーソ ネーブロ。ルーイン ハーラ パイン セラーン ターセス、メー グレーン!

    és-onébro.lúinhál-apáinþel-ántás-es,méglén!
    いる-<(重いものが)>霧<主格>とき呼ぶ-<(軽いものが)>誰か<主格>名前-<対格><あなた>-<属格><禁止・願いの打ち消し>答える<命令法><あなたが>

    「霧が出ている。誰かがお前の名を呼んでも、答えてはいけない。」

    霧の禁忌について、親が子に言い聞かせる言葉。「霧がある」は繋辞 és- で言い、霧 nébro が重性なので語尾は -o。禁止は「mé+命令法」。

    ansóina lourvirár þeláis aursárar an fóndaros.

    読み:アンソイナ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル アン フォンダロス。

    ansóin-alourvirárþel-áisaursár-aranfóndar-os.
    覚えている<〜し終えた>-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>上手源-<属格>

    「「系譜読みは、源から続く祖先たちの名を覚えている。」」

    ansén- は「思い出す」のほか、「記憶にとどめている」という状態も表す。時制がないので、未完了の形のままで、いつも覚えているという意味になる。系譜読みの務めを説明する文。

    lísa lisár þelán aldáres áurenes þáiles sáindarei.

    読み:リーサ リサール セラーン アルダーレス アウレネス サイレス サインダレイ。

    lís-alis-árþel-ánaldár-esáur-en-esþáil-essáindar-ei.
    書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>名前-<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>澄み-<属格>証文-<与格>

    「書記は証文に「澄みの高き座」の名を書く。」

    座名「aldár áuren+称えの語の属格」で、名詞として使った þáil「澄み」が称えの語になっている。座名ごと属格で þelán にかかる。書き言葉では座名を記してよく、上げ書きにする。

    lísa lisár þelán némes un sáindarei.

    読み:リーサ リサール セラーン ネーメス ウン サインダレイ。

    lís-alis-árþel-ánném-esunsáindar-ei.
    書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>名前-<対格><私>-<属格>内に証文-<与格>

    「書記は証文の中に私の名を書く。」

    un+与格で「〜の内に」を表す。前置詞なしの与格でも場所は言えるが、un を添えると「その内側に」という意味がはっきりする。un には強勢がない。名前を書くことは息を使わないので、禁忌にならない。

    lúin éso nébro trúin, mé hál þelán!

    読み:ルーイン エーソ ネーブロ トルーイン、メー ハール セラーン!

    lúinés-onébrotrúin,méhálþel-án!
    ときいる-<(重いものが)>霧<主格>近い<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

    「霧が近いときは、名前を呼ぶな。」

    親が子に言い聞かせる、禁忌の言い方。霧の中で名を呼ぶと下の国に聞かれる、という信仰による。nébro「霧」は重性なので、繋辞は éiso になる。禁止は「mé+命令法」で言う。

    lóima lourvirár þeláis aursárar trúinar.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル トルーイナル。

    lóim-alourvirárþel-áisaursár-artrúin-ar.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>近しい-<〜らの>

    「系譜読みは、近しい祖先たちの名を唱える。」

    祖先を祀る場の文。trúin は、瀬の数が少ない(世代の近い)祖先を言っている。形容詞は修飾する aursárar(軽性・複数・属格)に一致して trúinar になる。名詞句の語順は「名詞–属格–形容詞」ではなく、「祖先-の・近しい-の」と属格の名詞の後ろに形容詞が続く。

    grómim. véilim þelán táses, séulin.

    読み:グローミン。ヴェーリン セラーン ターセス、セウリン。

    grómim.véil-imþel-ántás-es,séulin.
    すまない忘れる-<私が>名前-<対格><あなた>-<属格>友

    「すまない、友よ。お前の名前を忘れてしまった。」

    親しい相手への、くだけた謝罪。grómim は「私は重い」というのがもとの意味で、過ちを「自分が重くなった」ととらえる見方から来ている。呼びかけの séulin は、読点で区切って文の終わりに置く。

    hóu! mé hál þelán némes!

    読み:ホー!メー ハール セラーン ネーメス!

    hóu!méhálþel-ánném-es!
    おい<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格><私>-<属格>

    「おい!俺の名を呼ぶな!」

    霧の中で自分の名を呼ばれたときに、たしなめる言い方。禁止は「mé+命令法」。þelá は語尾に強勢のある軽性a語幹なので、対格は þelán になる。霧の中では hóu や té「そこの方」で呼びかけるのが決まりなので、hóu がそのまま禁忌を守った呼びかけになっている。

    éira, duþélim sélvanan.

    読み:エーラ、ドゥセーリン セルヴァナン。

    éira,du-þél-imsélvan-an.
    ええと<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>

    「ええと……セルヴァンと名乗らせていただきます。」

    改まった名乗りで言いよどんだ例。改まった場で éira をはさむのは、言葉が整っていないしるしとして嫌われ、教養が足りないと見られやすい。du- は謙譲の接頭辞、名乗る名前は対格に置く。

    ésa fírna tásei, lís þelán táses.

    読み:エーサ フィルナ ターセイ、リース セラーン ターセス。

    és-afírnatás-ei,lísþel-ántás-es.
    いる-<(軽いものが)>筆<主格><あなた>-<与格>書く<命令法><あなたが>名前-<対格><あなた>-<属格>

    「筆はあるだろう、自分の名を書いてごらん。」

    師や親が子どもに字を習わせるときの、下向きの言い方。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持ち主ではなく、持たれている fírna(軽性)に一致する。命令法の2人称単数は語幹そのまま(lís)。二つの節を接続詞なしで並べるので、あいだを読点で区切る。

    tílan þelán houmáres.

    読み:ティーラン セラーン ホウマーレス。

    tíl-anþel-ánhoumár-es.
    刻む-<彼らが>名前-<対格>家の主-<属格>

    「家の主の名を刻む。」

    鋳物師が青銅の器に持ち主の名を入れる習わしを述べた文。銘は鋳型に刻んでから鋳こむ。主語を言わない3人称複数で、「(鋳物師たちは)〜する」という一般的な事柄を表す。名前を書いたり刻んだりするのは息を使わないので、禁忌には当たらない。

    lúin háles þelán némes, þréelim.

    読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、スレーリン。

    lúinhál-esþel-ánném-es,þréel-im
    when呼ぶ-<あなたが>名前-<対格><私>-<属格>振り返る<〜し終えた>-<私が>

    「あなたが私の名を呼ぶと、私は振り向いた。」

    lúin 節では動詞が節頭に来る。主語は人称語尾に含み、所有は名詞 þelán の後ろに属格 ném-es を置く。主節の完了相 þréel- は動詞の完了形で、名詞の呼称ではない。

    selvatáula ólmar þelán sé.

    読み:セルヴァタウラ オルマル セラーン セー。

    selvatául-aólmarþel-ánsé
    聞き取る-<(軽いものが)>年長者<主格>名前-<対格>この<軽性>

    「年長者がこの名を聞き取る。」

    改まった名乗り・系譜の場面。名 þelá の対格 þelán に指示詞 sé を添える。主語 ólmar は人を指す軽性。

    duþélim sílanan

    読み:ドゥセーリン シーラナン

    du-þél-imsílan-an
    <〜させていただく>-名乗る-<私が>シラン-<対格>

    「シランと名乗らせていただきます。」

    成人儀礼や改まった自己紹介での名乗り。謙譲接頭辞 du- を付けた þél-「名乗る」で、自己の行いを低める。固有名 sílan は目的語として対格 -an を受ける。動詞の人称語尾 -im が一人称主語を示すため、主語代名詞は不要。

    duþélim sílanan gléinaros

    読み:ドゥセーリン シーラナン グレーナロス

    du-þél-imsílan-angléinar-os
    <〜させていただく>-名乗る-<私が>シラン-<対格>グレイナル-<属格>

    「グレイナル家のシランと名乗らせていただきます。」

    改まった名乗り。duþél- は þél-「名乗る」に謙譲の du- がついた形。個人名 sílan を対格 sílanan とし、家名 gléinar を属格 gléinaros で添える。人を指す個人名が主語になるときの動詞の一致は軽性になるが、家名そのものは重性の属格形をとる。

    lóima ólmar þelán ráimaros, duói lóima ólmar þelán gléinaros.

    読み:ロイマ オルマル セラーン ライマロス、ドゥオイ ロイマ オルマル セラーン グレーナロス。

    lóim-aólmarþel-ánráimar-os,duóilóim-aólmarþel-ángléinar-os.
    唱える-<(軽いものが)>年長者<主格>名前-<対格>ライマル-<属格>その次に唱える-<(軽いものが)>年長者<主格>名前-<対格>グレイナル-<属格>

    「年長者がライマルの名を唱え、その次に、グレイナルの名を唱える。」

    系譜の名を一瀬ずつ唱える儀礼の場面。duóiは名と名を結び、前の名を上手、次の名を下手に置く。名は属格で「〜の名」とする。主語は年長者。

    duþélim sélvanan, an fóndaros gléinaros dúlenan fáir þrénul.

    読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス グレーナロス ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

    du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osgléinar-osdúlen-anfáirþrén-ul.
    <〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>グレイナル-<属格>下りた-<対格>四段-<〜たちを>

    「グレイナルの源から四段下った者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

    改まった名乗り定型。duþél- は謙譲の「名乗らせていただく」で、名前を対格で受ける。dúlen-an は見出し語 dúlen に軽性対格単数の接辞 -an を付けた形で、sélvanan に一致して後置修飾する。þrénul は「何段下りたか」を表す道のりの対格。

    lúin háles þelán némes, nóumaurim.

    読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、ノーマウリン。

    lúinhál-esþel-ánném-es,nóumaur-im
    とき呼ぶ-<あなたが>名前-<対格><私>-<属格>照れる-<私が>

    「あなたが私の名前を呼ぶと、私は照れる。」

    日常会話。lúin節が主節に先行する。þelá「名前」の対格 þelán に、所有の属格 némes を後置して「私の名前」を作る。主節は1人称語尾 -im によって主語を省略できる。

    lúin na vírim þelán, núnim

    読み:ルーイン ナ ヴィーリン セラーン、ヌーニン

    lúinnavír-imþel-án,nún-im
    とき<〜ない>言う-<私が>名-<対格>目を閉じる-<私が>

    「その名を口にしないとき、私は目を閉じる。」

    弔いや深い悲しみの場面。亡き者の名を唱えない禁忌や、悼みの中で言葉を控える動作として núnim が用いられる。lúin は主節に先行する時の節を導く。

解説

自分の名を言う、名乗るという動詞。名前を対格の目的語にとる。改まった場では謙譲形 duþél- を使い、成名に流名、源からの瀬の数、身分の段を一息に添えて名乗る。名乗りは長いほど誇らしいとされる。下向きの問い pán þéles?「何と名乗る」にも使う。

文法

他動詞(名前を対格でとる)。直説法3単 þéla、1単 þélim、2単 þéles。完了語根 þéel-。謙譲 duþél-(duþélim「名乗らせていただく」)。

語源

古高原語 *þél- から

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