小説
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森
祖先の住む、生きた木々の土地としての森。森の民の言い方に由来する。
ésa dravéna gléin
読み:エーサ ドラヴェーナ グレーン
| és-a | dravéna | gléin |
| いる-<(軽いものが)> | 森<主格> | 清い |
「森は清い。」
森の民が森を軽性として受けた文。dravéna は軽性 a 語幹の名詞として活用し、存在動詞は軽性の単数3人称 -a で受ける。形容詞 gléin は主格単数では語尾を取らない。同じ意味を都の人が言う場合、存在動詞を重性の一致で受けることもある。
氏族の谷
森の民の言葉で、自分の氏族が代々住んできた谷筋の森を指す。「わが森」は、そのまま「わが氏族の地」の意味になる。
gélim un dravénan némes
読み:ゲーリン ウン ドラヴェーナン ネーメス
| gél-im | un | dravén-an | ném-es |
| 行く-<私が> | 内に | 氏族の谷-<対格> | <私>-<属格> |
「私はわが森の中へ行く。」
森の氏族の用法で、dravéna は単に木々の土地ではなく、氏族が代々住んできた谷筋そのものを指す。dravénan némes は「私の森」であり、そのまま「私の氏族の地・わが谷」を意味する。前置詞 un と対格は「〜の中へ」を表す。
ésa dravéna sé kerél némores
読み:エーサ ドラヴェーナ セー ケレール ネーモレス
| és-a | dravéna | sé | kerél | némor-es |
| いる-<(軽いものが)> | 氏族の谷<主格> | この<軽性> | 谷<主格> | <我々>-<属格> |
「この森は我らの谷だ。」
氏族の谷を名指す用法の文。森の氏族の言葉では、dravéna は kerél「谷」と同義として「氏族の谷筋そのもの」を指す。存在動詞は主語 dravéna に合わせて軽性。述語名詞 kerél は主格のままで置かれ、指示語 sé は名詞の後ろに置く。系譜の語りや改まった自己紹介で、わが土地としての森を言う定型になる。
森の氏族の言葉から都の言葉に入った「森」の語。森の民にとって、森は祖先の住む生きたもので、氏族の谷そのものである。そのため森の民はこの語を軽性で受ける。都の人は、森を土地とみて重性の一致で受けることが少なくない。どちらの性で受けるかで、話し手の出自や森への態度がわかる。都の人が森の民の前でこの語を重性で受けると、相手の祖先を地に沈めるような、やや無礼な響きになる。森の司の名は brándal dravénes、王の森は dravéna aldáres áurenes。森の帯は síndra dravénes で、森の巫の詞や降ろし場の碑文に近い言葉づかいである。都では、親しみや素朴さを込めて森を言うときに使う。
軽性・a語幹。単数:dravéna(主)、dravénan(対)、dravénes(属)、dravénei(与)。双数:dravénau(主・対)、dravénaun(属・与)。複数:dravénai(主)、dravénais(対)、dravénar(属)、dravénail(与)。都の言葉では、一致を重性にする話し手もいる(名詞の語形は軽性のまま)。
森の言葉の dravéna から入った語で、古高原語 *dravéna にさかのぼる。都の言葉の古い語末母音の脱落にしたがえば、*dravén になったはずである。森の言葉ではこの脱落が及ばなかったので、母音の残った形のまま、統一のあとに都の言葉へ取り入れられた。語末の -a が残っていることが、森の言葉からの借用であることのしるしになる。
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