小説
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版の木
版木に使う、淡い黄色の材をもつ広葉樹。
ké ésa flaindél kélen sé káil?
読み:ケー エーサ フラインデール ケーレン セー カイル?
| ké | és-a | flaindél | kél-en | sé | káil? |
| <〜か> | いる-<(軽いものが)> | 版の木<主格> | 伐る-<〜した・〜された> | この<軽性> | 乾いた |
「この伐った版の木は乾いているか。」
版木の工房で交わされる、くだけた問い。版木は、伐ってから数年寝かせて乾かす。伐った木はふつう一致が重性に移るが、版の木は例外で、伐ったあとも軽性のままである。そのため、繋辞は ésa、分詞 kélen は軽性・単数・主格(語尾なし)、指示詞は軽性の sé になる。伐った脂の木なら kélenoi(重性)のように重性の形で一致するので、比べるとわかりやすい。
tilésa lisáis flaindélei, mé tilésa gandér.
読み:ティレーサ リサイス フラインデーレイ、メー ティレーサ ガンデール。
| til-és-a | lis-áis | flaindél-ei, | mé | til-és-a | gandér. |
| 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格>, | <禁止・願いの打ち消し> | 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> |
「字は版の木に彫るべし。硬木は彫らぬこと。」
彫り師の作法を説く教えの言葉で、法典や碑文と同じ当為法を使う。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の -a をとる。flaindél は軽性の子音語幹なので与格は -ei。後半の gandér は重性なので、主格と対格が同じ形のまま目的語になる。言葉は上へ昇るもので、版の木はそれを載せる木、硬木は下へ行く木なので彫らない、という考えを述べた文。
þóran planélai bróusai or flaindélail.
読み:ソーラン プラネーライ ブローサイ オル フラインデーライル。
| þór-an | planél-ai | bróus-ai | or | flaindél-ail. |
| 立つ-<彼らが> | 白樹皮の木-<〜たちが> | 多い-<〜たちが> | 日の出側 | 版の木-<〜らに> |
「版の木々の日の出側に、白樹皮の木がたくさん立っている。」
森の道案内や土地の説明に使う言い方。方角は絶対方位で言い、or+与格で「〜の日の出側に」を表す。生えている木は軽性なので、planél の複数主格は -ai になり、形容詞 bróus も軽性の複数主格 -ai で一致する。版の木も軽性なので、複数与格は -ail になる。
nóira flaindél.
読み:ノイラ フラインデール。
| nóir-a | flaindél. |
| 寝る-<(軽いものが)> | 版の木<主格> |
「版の木は寝かせてある。」
版木にする材を、数年乾かしている状態を言う。版の木は伐ったあとも軽性のままなので、動詞は軽性の -a をとる。ほかの伐った材なら、重性の -o で一致する。
tílim lisáis flaindélei náumei.
読み:ティーリン リサイス フラインデーレイ ナウメイ。
| tíl-im | lis-áis | flaindél-ei | náum-ei. |
| 彫る-<私が> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格> | 柔らかい-<軽性・与格> |
「柔らかな版の木に字を彫る。」
彫り師の仕事を言う文。版の木は伐って寝かせたあとも軽性のままなので、形容詞は軽性の与格 -ei で一致する。伐った脂の木なら重性の -oi で一致するので、その違いが比べどころになる。
éso gandér krán an flaindélei, na tílim gandér.
読み:エーソ ガンデール クラーン アン フラインデーレイ、ナ ティーリン ガンデール。
| és-o | gandér | krán | an | flaindél-ei, | na | tíl-im | gandér. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 硬い | 上手 | 版の木-<与格> | <〜ない> | 彫る-<私が> | 硬木<対格> |
「硬木は版の木より硬い。硬木は彫らない。」
彫り師の言葉。性質の程度がまさることは「an+与格」(〜の上手に)で言う。主語の gandér は重性なので、繋辞は és-o になり、形容詞 krán も重性・主格の形(語尾なし)になる。後半の gandér は目的語で、重性なので主格と同じ形。硬木を彫らないのは、硬すぎるからでもあり、禁忌だからでもある。
森の帯の北側の乾いた斜面に育つ広葉樹で、淡い黄色の材をもつ。木目が細かく均一で狂いにくく、水に浮く。都の木版の版木はこの木で作る。言葉を載せて上へ昇る木とされ、伐って寝かせたあとも軽性のまま一致する例外の語。沈む木である硬木 gandér と対になる。
軽性・子音語幹(②型)。対 flaindélan、属 flaindéles、複 flaindélai。伐った材も軽性で一致する。
fláin「軽い」+木の名に使われた古い語尾 *-déla。古い脱落で語末の母音が落ちた(綴り〈flaindela〉)。
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