小説
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硬木
水に沈む重い広葉樹そのもの。生えている木も含めて重性で受ける。
dúlo gandér du dálor.
読み:ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル。
| dúl-o | gandér | du | dálor |
| 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 下手 | 下の国<対格> |
「硬木が下の国へ下りていく。」
VSO の基本の文。直説法には法の印がないので、語根に人称の語尾が直接つく。主語の gandér は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」。dálor も重性なので、主格と対格が同じ形になる。
dulíþan kelárai slúun báronur gandérur.
読み:ドゥリーサン ケラーライ スルーン バーロヌル ガンデールル。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | slúun | báron-ur | gandér-ur |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 千 | 本-<〜らの> | 硬木-<〜らの> |
「樵たちが硬木千本を下ろす。」
slúun「千」は名詞として働き、量の名詞 báron「本」を複数属格でとる。その báron がさらに硬木を複数属格でとるので、属格が二つ続く。直説法では、-íþ- が自分で強勢をとる。
dúlo gandér kélen kelárar só du orén.
読み:ドゥーロ ガンデール ケーレン ケラーラル ソー ドゥ オレーン。
| dúl-o | gandér | kél-en | kel-ár-ar | só | du | orén. |
| 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 伐る-<〜した・〜された> | 伐る-<〜する人>-<〜らの> | この<重性> | 下手 | 縁<対格> |
「樵たちが伐ったこの硬木が、縁へ下りていく。」
名詞句の並び順は「名詞–分詞–属格–指示詞」。分詞は重性・単数・主格なので一致の語尾がない。分詞の後ろの属格 kelárar は「樵たちによって」の意味。関係節がないので、重性の指示詞 só が名詞句の終わりの目印になり、du orén は主節にかかる。
dúlo du dálor gandér te kéelan kelárai.
読み:ドゥーロ ドゥ ダーロル ガンデール テ ケーラン ケラーライ。
| dúl-o | du | dálor | gandér | te | kéel-an | kel-ár-ai. |
| 下る-<(重いものが)> | 下手 | 下の国<対格> | 硬木<主格> | <関係節> | 伐る<〜し終えた>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> |
「樵たちが伐り終えた硬木が、下の国へ下りていく。」
関係節は名詞の後ろに無強勢の te を置き、すぐ後ろに動詞を続ける。目的語が抜けた穴は空けたままにする。関係節は文の終わり(か読点)まで続くので、du dálor を主節にかけるために、関係節つきの重い主語を文末に回している。dúlo gandér te kéelan kelárai du dálor と言うと、du dálor は関係節の中に入ってしまう。gandér は重性だが、関係節を導くのは te のままで、tó にはならない(tó なら「あの硬木」)。
lúin áuran ombára ilánai, dulíþan kelárai gandér.
読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。
| lúin | áur-an | ombára | ilán-ai, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér. |
| とき | 昇る-<彼らが> | 十 | 灯-<〜たちが> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「十の灯が昇ると、樵たちは硬木を下ろす。」
「〜とき」の節は lúin で始め、ふつう主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は星座の名前で、古い形の「十」が固まって残ったもの。星を数えているわけではない。
du dálor gandér, sílarau áurau.
読み:ドゥ ダーロル ガンデール、シーララウ アウラウ。
| du | dálor | gandér, | sílar-au | áur-au. |
| 下手 | 下の国<対格> | 硬木<主格> | 月-<双数> | 昇る-<双数> |
「硬木は下の国へ、二つの月は昇る。」
詩の一句で、十拍(du-dá-lor-gan-dér-sí-la-rau-áu-rau)。前半では動詞を落とし、後半では主語が動詞の前に出ている。会話の中でこの語順を聞くと、高原の人は「詩句の引用だ」とわかる。
pón dulíþo gandér?
読み:ポーン ドゥリーソ ガンデール?
| pón | dul-íþ-o | gandér? |
| 何<対格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | 硬木<主格> |
「硬木は何を下ろすのか。」
目的語を尋ねる問い。重性の名詞どうしでも、疑問詞の対格 pón で、残った gandér が主語だとわかる。
pó dulíþo gandér?
読み:ポー ドゥリーソ ガンデール?
| pó | dul-íþ-o | gandér? |
| 何<主格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | 硬木<対格> |
「何が硬木を下ろすのか。」
主語を尋ねる問い。疑問詞が主格 pó なので、残った gandér は目的語になる。くだけた言葉では、この形が「硬木は何を下ろすのか」の意味にもなりうる。
gandér dulíþo ó.
読み:ガンデール ドゥリーソ オー。
| gandér | dul-íþ-o | ó. |
| 硬木<対格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・主格> |
「硬木をこそ、それが下ろす。」
前に出した gandér が目的語の枠を埋めているので、後ろの ó は主語の枠にある。単独の ó が主語になる例。
gandér dulíþo óo.
読み:ガンデール ドゥリーソ オー。
| gandér | dul-íþ-o | óo. |
| 硬木<主格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・NOM+ACC> |
「硬木こそが、それを下ろす。」
縁の言葉。主語の枠の再述の ó と、目的語の枠の ó が続くので、一語に縮めて óo と言う。都の人は ó ó と並べるのを嫌い、目的語を名詞で言い直す。
sénim gandér te dulíþo ílmo.
読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ イルモ。
| sén-im | gandér | te | dul-íþ-o | ílmo. |
| 見る-<私が> | 硬木<対格> | <関係節> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | 水<主格> |
「私は、水が下ろす硬木を見る。」
関係節の要は前に出した語と同じ扱いで、既定では目的語の枠を埋める。残った ílmo が主語。
sénim gandér te dulíþo ó ílmo.
読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーソ オー イルモ。
| sén-im | gandér | te | dul-íþ-o | ó | ílmo. |
| 見る-<私が> | 硬木<対格> | <関係節> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・主格> | 水<対格> |
「私は、水を下ろす硬木を見る。」
要が主格と対格が同じ形の語で、関係節の主語のときは、主語の枠に再述の ó を残す。
dulíþo ó gandér ílmo te séna senár.
読み:ドゥリーソ オー ガンデール イルモ テ セーナ セナール。
| dul-íþ-o | ó | gandér | ílmo | te | sén-a | sen-ár. |
| 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・主格> | 硬木<対格> | 水<主格> | <関係節> | 見る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> |
「目付が見る水が、硬木を下ろす。」
都の言葉。関係節つきの主語を後ろへ回し、目的語が主格と対格が同じ形の語なので、空いた主語の枠に ó を残す。
sénim gandér te dulíþa éndra.
読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーサ エンドラ。
| sén-im | gandér | te | dul-íþ-a | éndra. |
| 見る-<私が> | 硬木<対格> | <関係節> | 下る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 人<主格> |
「私は、人が下ろす硬木を見る。」
関係節の動詞の -a(軽性)が主語は人だと示すので、重性の要は目的語とわかる。
gandér te sénim, dulíþo ílmo.
読み:ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ イルモ。
| gandér | te | sén-im, | dul-íþ-o | ílmo. |
| 硬木<対格> | <関係節> | 見る-<私が> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | 水<主格> |
「私が見た硬木を、水が下ろす。」
主題の前置き。読点つきで前に出した名詞句も、他動詞の文では既定で目的語の枠を埋める。
gandér te sénim, dulíþo ó ílmo.
読み:ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ オー イルモ。
| gandér | te | sén-im, | dul-íþ-o | ó | ílmo. |
| 硬木<主格> | <関係節> | 見る-<私が> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・主格> | 水<対格> |
「私が見た硬木が、水を下ろす。」
主題の前置きが主語のときは、主語の枠に再述の ó を残す。
ké gandér te sénim, dulíþo ílmo?
読み:ケー ガンデール テ セーニン、ドゥリーソ イルモ?
| ké | gandér | te | sén-im, | dul-íþ-o | ílmo? |
| <〜か> | 硬木<対格> | <関係節> | 見る-<私が> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | 水<主格> |
「私が見た硬木を、水が下ろすのか。」
ké は主題の前置きより前、文のいちばん前に置く。
dulíþin vúurimor gandér.
読み:ドゥリーシン ヴーリモル ガンデール。
| dul-íþ-in | vúur-imor | gandér. |
| 下る-<〜させる>-<〜して・〜く> | 届く-<我々が> | 硬木<対格> |
「我々は硬木を下ろせる。」
副動詞+vúur-「届く」で、状況が許して「できる」。人称の語尾は vúur- につき、前の動詞の目的語 gandér は後ろに置く。
na dulíþin vúuro fúnel gandér du dálor.
読み:ナ ドゥリーシン ヴーロ フーネル ガンデール ドゥ ダーロル。
| na | dul-íþ-in | vúur-o | fúnel | gandér | du | dálor. |
| <〜ない> | 下る-<〜させる>-<〜して・〜く> | 届く-<(重いものが)> | 綱<主格> | 硬木<対格> | 下手 | 下の国<対格> |
「綱は硬木を下の国まで下ろせない。」
否定の na は副動詞の前に置き、二つの動詞をまとめて打ち消す。綱の長さが届かない、という可能の否定。
lísim gandér kélen kelárar.
読み:リーシン ガンデール ケーレン ケラーラル。
| lís-im | gandér | kél-en | kel-ár-ar. |
| 記録する-<私が> | 硬木<対格> | 伐る-<〜した・〜された> | 伐る-<〜する人>-<〜らの> |
「樵たちが伐った硬木を(帳簿に)記録する。」
市の帳付けの文。分詞 kélen は名詞の後ろに置き、その後ろの属格 kelárar は「樵たちによって」の意味になる。gandér は重性なので、対格でも語尾がつかない。
kélan kelárai téir gandérul.
読み:ケーラン ケラーライ テール ガンデールル。
| kél-an | kel-ár-ai | téir | gandér-ul. |
| 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 三 | 硬木-<〜たちを> |
「樵たちが硬木を三本伐る。」
伐り出しのようすを言う文。会話では量の名詞 báron(本)を省き、数詞の後ろの名詞をそのまま複数にする。重性名詞は複数でも主格と対格が同じ -ul になる。時制がないので、「伐った」とも訳せる。
mé kelésa gandér an loiméi.
読み:メー ケレーサ ガンデール アン ロイメー。
| mé | kel-és-a | gandér | an | loim-éi. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 伐る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> | 上手 | 詞-<与格> |
「詞を唱える前に、硬木を伐らぬこと。」
降ろし場の碑や森の司の定めに見える、当為法の禁止。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、軽性の形 -a をとる。an+与格は時間の「〜の前に」。生えている硬木も重性なので、対格は主格と同じ gandér になる。
ké sénes gandér tó? éso ó fóndel.
読み:ケー セーネス ガンデール トー?エーソ オー フォンデル。
| ké | sén-es | gandér | tó? | és-o | ó | fóndel. |
| <〜か> | 見る-<あなたが> | 硬木<対格> | あの<重性> | いる-<(重いものが)> | <3人称単数・重性> | 古い |
「あの硬木が見えるか?あれは由緒ある古木だ。」
樵が森で若い者に話しかける言い方。生えている木はふつう軽性だが、硬木だけは生えていても重性で受けるので、指示詞は重性の tó、代名詞も重性の ó、繋辞も重性の éso になる。fóndel は、由緒があって尊い「古い」。
dulíþan slúun kelárar gandér du orén.
読み:ドゥリーサン スルーン ケラーラル ガンデール ドゥ オレーン。
| dul-íþ-an | slúun | kel-ár-ar | gandér | du | orén. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 数えきれぬ | 伐る-<〜する人>-<〜らの> | 硬木<対格> | 下手 | 縁<対格> |
「数えきれぬほどの樵が、硬木を縁へ下ろす。」
誇張をこめた語りの言い方。この slúun は実際の数ではなく、「数えきれないほど多い」の意味。「slúun+複数属格」が主語になると、動詞は3人称複数で受ける。gandér と orén は重性なので、対格は主格と同じ形になる。du+対格で「下手へ」。
lúin lóima ráuvan loimán, kéla kelár gandér.
読み:ルーイン ロイマ ラウヴァン ロイマーン、ケーラ ケラール ガンデール。
| lúin | lóim-a | ráuvan | loim-án, | kél-a | kel-ár | gandér. |
| とき | 唱える-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> | 伐る-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | 硬木<対格> |
「森の巫が詞を唱えると、樵は硬木を伐る。」
硬木を伐る作法を述べた文。「〜するとき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。kelár「樵」は kél- に「〜する人」の -ár がついた語。硬木は重性なので、主格と対格が同じ形 gandér になる。詞を唱えずに伐ることは禁忌とされる。
keléimor gandér dórel.
読み:ケレーモル ガンデール ドーレル。
| kel-é-imor | gandér | dórel. |
| 伐る-<〜だろう>-<我々が> | 硬木<対格> | 明日 |
「明日は硬木を伐ることになるだろう。」
樵どうしの日常会話。時制がないので、未来のことは推量法で言う。1人称の語尾 -imor の前では、推量法の -él- の l が落ちて -é- になる。強勢は推量法の接尾辞に移り、語根の ´ は消える。
éso gandér só gróm.
読み:エーソ ガンデール ソー グローン。
| és-o | gandér | só | gróm. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | 重い |
「この硬木は重い。」
主語の gandér が重性なので、繋辞は éso、指示詞は só になる。ほかのものについて「重い」と言うとけなす響きになりがちだが、硬木の重さは「下へ行く」という成就のしるしなので、樵や森の司は誇りをこめてこう言う。
éso gandér gróm an kelárei.
読み:エーソ ガンデール グローン アン ケラーレイ。
| és-o | gandér | gróm | an | kel-ár-ei. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 重い | 〜よりまさって | 伐る-<〜する人>-<与格> |
「硬木は樵よりも重い。」
比較は an+与格「〜の上手に」で言い、性質の程度がまさることを表す。重さのような下向きの性質を an で比べると、ふつうは皮肉に響く。ただし硬木の重さは「下へ行く」成就のしるしなので、樵や森の司はこの言い方を誇らしげに使う。主語 gandér が重性なので、繋辞は -o をとる。
éso gandér fláin du kelárei.
読み:エーソ ガンデール フライン ドゥ ケラーレイ。
| és-o | gandér | fláin | du | kel-ár-ei. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 軽い | 〜より劣って | 伐る-<〜する人>-<与格> |
「硬木は軽さでは樵に及ばない(樵より重い)。」
du+与格で、性質の程度が劣ることを表す。下向きの性質を an で比べると皮肉に響くので、改まった話し方では反対の軽い性質を du で比べて言い換える。意味は gróm an kelárei と同じになる。
éso gandér só gróm an gandéruls.
読み:エーソ ガンデール ソー グローン アン ガンデールルス。
| és-o | gandér | só | gróm | an | gandér-uls. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | 重い | 上手 | 硬木-<〜らに> |
「この硬木は、硬木のなかでもいちばん重い。」
最上級は「an+同じ仲間の複数与格」で言う。下向きの性質を an で比べると皮肉に聞こえやすいが、硬木にとって重さは成就のしるしなので、樵や森の司はこの言い方を誇らしげに使う。
kéla kelár gandér, dulíþa ó du orén.
読み:ケーラ ケラール ガンデール、ドゥリーサ オー ドゥ オレーン。
| kél-a | kel-ár | gandér, | dul-íþ-a | ó | du | orén. |
| 伐る-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人> | 硬木<対格> | 下る-<〜させる>-<(軽いものが)> | それ<対格> | 下手 | 縁<対格> |
「樵は硬木を伐り、それを縁へ下ろす。」
前の節に出た重性名詞 gandér を、代名詞 ó で受けている。ó は重性なので、主格と対格が同じ形になる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ樵が主語だとわかる。
pél éso gandér?
読み:ペール エーソ ガンデール?
| pél | és-o | gandér? |
| どれ | いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> |
「どれが硬木だ?」
積まれた丸太の中から硬木を見分けさせる問い。繋辞の文で、主語は gandér、pél は述語にあたり、疑問詞なので文頭に出る。繋辞は主語の gandér に一致して重性の -o をとる。
meirésa orenvandár gandér térin lísen sáindarei.
読み:メイレーサ オレンヴァンダール ガンデール テーリン リーセン サインダレイ。
| meir-és-a | orenvandár | gandér | térin | lís-en | sáindar-ei. |
| 与える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | 硬木<対格> | そのとおりに | 書く-<〜した・〜された> | 証文-<与格> |
「縁商人は、証文に書かれたとおりに硬木を渡すべし。」
証文の取り決めの一文。当為法で書かれている。「térin lísen」に与格の sáindarei を添えると、「証文に書かれたとおりに」の意味になる。縁商人は段の外の者だが、文法上は人として軽性で受ける。
pómbar gandérul dulíþan kelárai?
読み:ポンバル ガンデールル ドゥリーサン ケラーライ?
| pómbar | gandér-ul | dul-íþ-an | kel-ár-ai? |
| いくつ | 硬木-<〜たちを> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> |
「樵たちは硬木を何本下ろすのか。」
降ろし場での問い。帳簿では量の名詞 báron「本」を入れるが、会話では省くことが多い。pómbar は名詞の前に置き、名詞は複数にする。疑問の名詞句は目的語として文頭に出るので、gandérul は複数対格。
plúin dulíþan kelárai gandér?
読み:プルーイン ドゥリーサン ケラーライ ガンデール?
| plúin | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér? |
| いつ | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「樵たちはいつ硬木を下ろすのか。」
疑問詞 plúin は、ほかの疑問詞と同じく動詞の前に置く。plúin は格変化しない。時制がないので、過去のことにも先のことにも使える。答えはふつう、lúin 節(「十の灯が昇ると」など)か、an nébroi「霧の前に」のような時を表す句で返す。
dulíþan kelárai gandér du dálor selúin.
読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル セルーイン。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | du | dálor | selúin. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 下手 | 下の国<対格> | 今の世 |
「今の世、樵たちは硬木を下の国へ下ろしている。」
年代記の記事の書きぶり。昔(統一の前)と比べて、今の王の世のならわしを述べている。直説法には時制がないので、selúin が時代を区切る働きをする。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
vánda senár lím gandérul.
読み:ヴァンダ セナール リーン ガンデールル。
| vánd-a | sen-ár | lím | gandér-ul. |
| 量る-<(軽いものが)> | 見る-<〜する人> | 五 | 硬木-<〜たちを> |
「目付が硬木を五本量る。」
降ろし場での会話。lím の後ろなので名詞は複数になり、重性の gandér は複数対格 -ul をとる。話し言葉なので量の名詞 báron を省いている。森の言葉では lími とも言う。
dulíþan slúumbar kelárar gandér.
読み:ドゥリーサン スルーンバル ケラーラル ガンデール。
| dul-íþ-an | slúumbar | kel-ár-ar | gandér. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 一万 | 伐る-<〜する人>-<〜らの> | 硬木<対格> |
「一万人の樵が硬木を下ろす。」
伐り出しの規模を誇張まじりに言う文。目上の人は数えないが、働き手は人数で数えてよいので、kelár「樵」を複数属格でとれる。slúumbar kelárar 全体が主語なので、動詞は3人称複数になる。
lúin kélan kelárai gandér, loimésa ráuvan loimán téir fréimais.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、ロイメーサ ラウヴァン ロイマーン テール フレーマイス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | loim-és-a | ráuvan | loim-án | téir | fréim-ais. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> | 三 | 度回-<〜たちを> |
「樵たちが硬木を伐るときは、森の巫が詞を三度唱えるべし。」
降ろし場の碑に刻まれるような、儀礼の作法を定める当為法の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節では主語を言っているので、それに一致して3人称単数・軽性になる。強勢は当為法の -és- に移り、語根の ´ は消える。三度は téir fréimais(複数対格)。
vrína endríña gandér, na vrína éndran.
読み:ヴリーナ エンドリーニャ ガンデール、ナ ヴリーナ エンドラン。
| vrín-a | endríña | gandér, | na | vrín-a | éndr-an. |
| またぐ-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 硬木<対格> | <〜ない> | またぐ-<(軽いものが)> | 人-<対格> |
「子どもは硬木はまたいでも、人はまたがない。」
物をまたぐのはかまわないが、人をまたぐのは禁忌だという対比。動詞は主語の endríña(軽性)に一致して -a をとる。gandér は重性なので、対格に語尾がつかない。
séna dubrél némes gandér.
読み:セーナ ドゥブレール ネーメス ガンデール。
| sén-a | dubrél | ném-es | gandér. |
| 見る-<(軽いものが)> | 弟・妹 | <私>-<属格> | 硬木<対格> |
「私の弟(妹)が硬木を見ている。」
家の中で使うふつうの文。dubrél は人を指すので軽性の子音語幹になり、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。持ち主の ném「私」は属格にして名詞の後ろに置く。gandér は重性なので、対格でも語尾がつかない。dubrél は弟と妹を区別しない。
áura éndra, dúlo gandér.
読み:アウラ エンドラ、ドゥーロ ガンデール。
| áur-a | éndra, | dúl-o | gandér. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 人<主格> | 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> |
「人は昇り、硬木は下る。」
教えの書にある、人と物の違いを説く一句。人は軽性なので、動詞は -a をとる。硬木は重性なので、動詞は -o をとる。二つの文の動詞の語尾の違いに、「軽いものは上へ、重いものは下へ」という世界観が表れている。
rainíþa ólmar þeláis gandéros kelárail.
読み:ライニーサ オルマル セライス ガンデーロス ケラーライル。
| rain-íþ-a | ólmar | þel-áis | gandér-os | kel-ár-ail. |
| 知る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 長老<主格> | 名前-<〜たちを> | 硬木-<属格> | 伐る-<〜する人>-<〜らに> |
「長老は樵たちに硬木の呼び名を教える。」
村の暮らしを述べる文。硬木は、心材の色、沈み方、樹齢、伐ったあとの状態で何通りにも呼び分けられ、その呼び名は村の長老が受け継いで伝える。rainíþ-「教える」は ráin-「知る」に使役の -íþ- がついた形で、教わる人を与格、教える内容を対格でとる。
faronéra gúrnal té gandér si fáron.
読み:ファロネーラ グルナル テー ガンデール シ ファーロン。
| faronér-a | gúrnal | té | gandér | si | fáron. |
| 担ぐ-<(軽いものが)> | 力の強いもの<主格> | あの<軽性> | 硬木<対格> | と | 荷<対格> |
「あの力持ちは、硬木も荷もいっしょに担ぐ。」
運び人どうしで、大げさにほめたり冷やかしたりするときの言い方。gúrnal té の té は強勢のある指示詞で、後ろに動詞が来ないので、関係節の te ではない。si で目的語を二つ並べている。
tilésa lisáis flaindélei, mé tilésa gandér.
読み:ティレーサ リサイス フラインデーレイ、メー ティレーサ ガンデール。
| til-és-a | lis-áis | flaindél-ei, | mé | til-és-a | gandér. |
| 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> | 版の木-<与格>, | <禁止・願いの打ち消し> | 彫る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> |
「字は版の木に彫るべし。硬木は彫らぬこと。」
彫り師の作法を説く教えの言葉で、法典や碑文と同じ当為法を使う。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の -a をとる。flaindél は軽性の子音語幹なので与格は -ei。後半の gandér は重性なので、主格と対格が同じ形のまま目的語になる。言葉は上へ昇るもので、版の木はそれを載せる木、硬木は下へ行く木なので彫らない、という考えを述べた文。
nóiro gandér kélen.
読み:ノイロ ガンデール ケーレン。
| nóir-o | gandér | kél-en. |
| 寝る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 伐る-<〜した・〜された> |
「伐った硬木は寝かせてある。」
樵や森の司の検め役が、材の状態を言うときの文。硬木は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。分詞 kélen は重性・単数・主格なので、一致の語尾はつかない。
mé þráun gandér, kelár.
読み:メー スラウン ガンデール、ケラール。
| mé | þráun | gandér, | kel-ár. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げる<命令法><あなたが> | 硬木<対格> | 伐る-<〜する人> |
「硬木を投げるな、樵よ。」
下向きの禁止。「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数はむき出しの語幹 þráun になる。呼びかけは呼格を使わず、役職を文の終わりに読点で区切って添える。硬木は儀式を経て扱う木なので、乱暴に扱うことが戒められる。
ráina ólmar loimán gandéros.
読み:ライナ オルマル ロイマーン ガンデーロス。
| ráin-a | ólmar | loim-án | gandér-os. |
| 心得ている-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 詞-<対格> | 硬木-<属格> |
「年長者は硬木の詞を心得ている。」
硬木を伐るときに唱える詞のような、身につけた知識について言う。属格 gandéros は名詞の後ろに置く。
dróuma ráuvan es gandéros kélenos.
読み:ドローマ ラウヴァン エス ガンデーロス ケーレノス。
| dróum-a | ráuvan | es | gandér-os | kél-en-os. |
| 悼む-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | から | 硬木-<属格> | 伐る-<〜した・〜された>-<重性・属格> |
「森の巫は、伐られた硬木を悼む。」
硬木を伐るときに、上へ伸びてきた木をねぎらう詞の場面。分詞 kélen は gandér(重性)の属格に一致して -os をとる。
éso gandér só sáun.
読み:エーソ ガンデール ソー サウン。
| és-o | gandér | só | sáun. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | 良い |
「この硬木は良質だ。」
森の司の検め役が、丸太の等級を確かめて言う言い方。形容詞が述語になるときも主語に一致する。gandér は重性なので、繋辞は és-o、重性の指示詞は só になり、sáun は重性・単数・主格の形(語尾なし)をとる。
éso gandér só mór an gandéruls.
読み:エーソ ガンデール ソー モール アン ガンデールルス。
| és-o | gandér | só | mór | an | gandér-uls. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | 大きい | 上手 | 硬木-<〜らに> |
「この硬木は、硬木の中でいちばん大きい。」
「いちばん〜」は、an に同じ仲間の複数与格を続けて言う。森の司の検め役や樵が、丸太を見比べるときの言い方。
lúin kélan kelárai gandér, lóima ráuvan loimán.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、ロイマ ラウヴァン ロイマーン。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | lóim-a | ráuvan | loim-án. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 唱える-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> |
「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫が詞を唱える。」
硬木を伐るときの儀礼を説明する文。loimá「詞」は lóim- に -á「〜するもの」がついた派生語で、動詞の目的語に同じ語根の名詞をとっている。
éso gandér klér.
読み:エーソ ガンデール クレール。
| és-o | gandér | klér. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 冷たい |
「硬木は冷たい。」
手で触れた冷たさを言う文。主語の gandér は重性なので、繋辞は -o をとる。述語の形容詞は重性・単数・主格で一致し、語尾はつかない。
dulíþan kelárai téir gandérul dréumul.
読み:ドゥリーサン ケラーライ テール ガンデールル ドレウムル。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | téir | gandér-ul | dréum-ul. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 三 | 硬木-<〜たちを> | 黒い-<重性・〜ら(古い母音交替)・対格> |
「樵たちは黒い硬木を三本下ろす。」
心材の黒い硬木を言う文。会話なので、量の名詞を省いている。三より上の数の後ろでは名詞が複数になり、形容詞も重性・複数・対格の -ul で一致する。
dúlo gandér káil du ílmo.
読み:ドゥーロ ガンデール カイル ドゥ イルモ。
| dúl-o | gandér | káil | du | ílmo. |
| 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 乾いた | 下手 | 水<対格> |
「乾かした硬木でも水の底へ沈む。」
硬木の性質を言う、樵や森の司の言い方。káil は乾かし終えた材についても使う。du+対格で「下手へ」、つまり水の中へ沈むことを表す。硬木が「下へ行きたがる木」とされるのは、この性質のためである。
éso gandér só rúgal.
読み:エーソ ガンデール ソー ルーガル。
| és-o | gandér | só | rúgal. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | 粗い |
「この硬木は手ざわりが粗い。」
材木の表面の様子を言う、日常の文。gandér「硬木」は重性なので、繋辞は -o の形(éso)、指示詞は重性の só になる。述語の形容詞 rúgal は重性・単数・主格の形で、語尾がつかない。
éso gandér krán an flaindélei, na tílim gandér.
読み:エーソ ガンデール クラーン アン フラインデーレイ、ナ ティーリン ガンデール。
| és-o | gandér | krán | an | flaindél-ei, | na | tíl-im | gandér. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 硬い | 上手 | 版の木-<与格> | <〜ない> | 彫る-<私が> | 硬木<対格> |
「硬木は版の木より硬い。硬木は彫らない。」
彫り師の言葉。性質の程度がまさることは「an+与格」(〜の上手に)で言う。主語の gandér は重性なので、繋辞は és-o になり、形容詞 krán も重性・主格の形(語尾なし)になる。後半の gandér は目的語で、重性なので主格と同じ形。硬木を彫らないのは、硬すぎるからでもあり、禁忌だからでもある。
glüníro fúnel, mé duliþésa gandér.
読み:グリュニーロ フーネル、メー ドゥリセーサ ガンデール。
| glün-ír-o | fúnel, | mé | dul-iþ-és-a | gandér. |
| 凍る-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 綱<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> |
「綱が凍ったなら、硬木を下ろさぬこと。」
降ろし場の決まりを書いた碑文の文体。条件の節は接続詞なしに、動詞を仮定法にするだけで作る。綱は重性なので仮定法の語尾は -íro。後半は当為法の禁止で、主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の形をとる。凍りの頃に吊り下ろしが止まるのは、この決まりによる。
dúlo trúndo gandéros du dálor.
読み:ドゥーロ トルンド ガンデーロス ドゥ ダーロル。
| dúl-o | trúndo | gandér-os | du | dálor |
| 下る-<(重いものが)> | 杭<主格> | 硬木-<属格> | 下手 | 下の国<対格> |
「硬木の杭が下の国へ下りていく。」
trúndo は重性o語幹の名詞。材料は属格で後ろに添えて trúndo gandéros「硬木の杭」と言う。硬木の杭が崖の下へ下りるのは、木が向かうべき場所へ帰ることだとされている。
lúin dúlo gandér du dálor, drénimor du kéndor orénos.
読み:ルーイン ドゥーロ ガンデール ドゥ ダーロル、ドレーニモル ドゥ ケンドル オレーノス。
| lúin | dúl-o | gandér | du | dálor, | drén-imor | du | kéndor | orén-os. |
| とき | 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 下手 | 下の国<対格> | 参る-<我々が> | 下手 | 縁の市<対格> | 縁-<属格> |
「硬木が下の国へ下りるころ、私どもは縁の市へ下って参ります。」
崖道の商人が目上の人に、最初の下ろしのころに市へ出ることを告げる言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。縁の市は崖の麓にあるので、かならず du で言う。lúin の節は主節の前に置く。
sén símbo gandéros só!
読み:セーン シンボ ガンデーロス ソー!
| sén | símbo | gandér-os | só! |
| 見る<命令法><あなたが> | 焼印<対格> | 硬木-<属格> | この<重性> |
「この硬木の焼印を見ろ。」
下向きの命令。森の司の検め役が、運び人や樵に向かって言うような言い方。硬木の丸太には木札を結べないので、木口に焼印を押す。並び順は「名詞–属格–指示詞」。
lúin kélan kelárai gandér, áura aurvirá ráuvanes.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ アウルヴィラー ラウヴァネス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | áur-a | aurvirá | ráuvan-es. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 祈り<主格> | 森の巫-<属格> |
「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫の祈りが昇る。」
硬木を伐るときの儀式を述べる文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。属格 ráuvanes は名詞の後ろに置く。
lúin kélan kelárai gandér, áura loimá ráuvanes.
読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ ロイマー ラウヴァネス。
| lúin | kél-an | kel-ár-ai | gandér, | áur-a | loimá | ráuvan-es. |
| とき | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 昇る-<(軽いものが)> | 詞<主格> | 森の巫-<属格> |
「樵たちが硬木を伐るときには、森の巫の詞が立ちのぼる。」
硬木を伐る作法を述べた文。詞は息なので、煙のように上へ昇るものとされ、動詞 áur-「昇る」の主語になる。loimá は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。硬木 gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
dulíþan kelárai gandér an órunei.
読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール アン オールネイ。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | an | órun-ei. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 上手 | 日の出-<与格> |
「樵たちは日の出の前に硬木を下ろす。」
時の前後を、川の上手・下手として言う文。an+与格は「〜の上手で」で、「〜の前に」を表す。「日の出の後に」なら du órunei と言う。órun は軽性の子音語幹で、与格は -ei になる。
tóra tráimel ível, dulíþan kelárai gandér.
読み:トーラ トライメル イーヴェル、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。
| tór-a | tráimel | ível, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér. |
| 来る-<(軽いものが)> | 年<主格> | 新しい | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「新しい年が来て、樵たちは硬木を下ろす。」
暦と仕事の流れを説明する文。年は乾風期の初めに始まり、硬木の最初の下ろしもこの時期に行われる。tráimel は軽性の子音語幹で、形容詞 ível はその後ろに置いて一致させる。主節は二つ並んでいるので、あいだに読点を打つ。
dulíþan kelárai dáumbar gandérul tráimelei sé.
読み:ドゥリーサン ケラーライ ダウンバル ガンデールル トライメレイ セー。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | dáumbar | gandér-ul | tráimel-ei | sé. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 二十 | 硬木-<〜たちを> | 年-<与格> | この<軽性> |
「この年、樵たちは硬木を二十本下ろした。」
年代記や森の司の記録に見られる書き方。「この年に」は、与格 tráimelei に指示詞 sé を添えて言う。九十九までの数詞は名詞の前に置き、三以上なら名詞を複数にする。重性の複数対格は -ul になる。
dúlo gandér es méndales du dálor.
読み:ドゥーロ ガンデール エス メンダレス ドゥ ダーロル。
| dúl-o | gandér | es | méndal-es | du | dálor. |
| 下る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | から | 中の世界-<属格> | 下手 | 下の国<対格> |
「「硬木は中の世界を離れ、下の国へと下りていく。」」
最初の下ろしの作法を語る文。硬木が下の国の杭になることを、木の「成就」とみる考え方を映している。
lúin ésa kailálva, dulíþan kelárai gandér du dálor.
読み:ルーイン エーサ カイラルヴァ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル。
| lúin | és-a | kailálva, | dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | du | dálor |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 乾風期<主格> | 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 下手 | 下の国<対格> |
「乾風期のあいだ、樵たちは硬木を下の国へ下ろす。」
乾風期が硬木の伐り出しと吊り下ろしの季節であることを述べた文。gandér と dálor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。
kélan kelárai gandér þailúinei.
読み:ケーラン ケラーライ ガンデール サイルーイネイ。
| kél-an | kel-ár-ai | gandér | þailúin-ei. |
| 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 硬木<対格> | 澄みの頃-<与格> |
「澄みの頃には、樵たちが硬木を伐る。」
森の村で、一年の仕事の段取りを話すときの言い方。時を表す þailúin は前置詞をつけず、与格だけで「〜の頃に」を表す。軽性の子音語幹なので与格は -ei になる。硬木の伐り出しが始まる時期であることをよく表す文。
mé duliþésa gandér glünlúinei.
読み:メー ドゥリセーサ ガンデール グリュンルーイネイ。
| mé | dul-iþ-és-a | gandér | glünlúin-ei. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 硬木<対格> | 凍りの頃-<与格> |
「凍りの頃には、硬木を下ろさぬこと。」
降ろし場の決まりを述べる、碑文や触れ書きの文体。当為法なので mé で否定し、主語を言わずに一般の人を主語にしている(軽性の形)。凍りの頃は綱が凍って危ないので、吊り下ろしが止まる。
nés! na méirim gandér só.
読み:ネース!ナ メーリン ガンデール ソー。
| nés! | na | méir-im | gandér | só. |
| いや・だめだ | <〜ない> | 与える-<私が> | 硬木<対格> | この<重性> |
「だめだ!この硬木はやれない。」
値の折り合いがつかないときに、売り手が申し出をはねつける言い方。nés を独立して先に叫び、そのあとに na で否定した文を続けて念を押す。na は動詞の直前に置く。市の外でこの語を使うと、ぶっきらぼうで下品に響く。
vóila faronár símbo gandéros, na vóila lisáis.
読み:ヴォイラ ファロナール シンボ ガンデーロス、ナ ヴォイラ リサイス。
| vóil-a | faron-ár | símbo | gandér-os, | na | vóil-a | lis-áis. |
| 見分ける-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | 印<対格> | 硬木-<属格> | <〜ない> | 読む-<(軽いものが)> | 字-<〜たちを> |
「運び人は硬木の焼印は見分けるが、字は読めない。」
同じ vóil- が、前半では焼印の形を見分ける意味で、後半では文字を読む意味で使われている。丸太の木口の焼印は何百本にも同じ形で押されているので、文字を知らない者もその形を覚える。
na ésa pandá brólen es gandéros.
読み:ナ エーサ パンダー ブローレン エス ガンデーロス。
| na | és-a | pandá | bról-en | es | gandér-os. |
| <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 版木<主格> | 作る-<〜した・〜された> | から | 硬木-<属格> |
「版木は硬木では作られない。」
硬木は「下へ行きたがる木」なので、上へ昇る言葉を刻む版には使わない、という禁忌を述べた文。受け身は「és-+主語+分詞」で言う。es+属格は、材料の出どころを表す。na は動詞の直前に置く。
mé tíl gandér!
読み:メー ティール ガンデール!
| mé | tíl | gandér! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 彫る<命令法><あなたが> | 硬木<対格> |
「硬木を彫るな。」
硬木に文字を彫ることを禁じる言い方で、年長者が若い者を戒めるときに使う。禁止は「mé+命令法」で言う。tíl- は語末に削られる子音のつながりがないので、命令形も tíl のまま。重性名詞 gandér は、主格と対格が同じ形になる。
sarénei, loimésa ráuvan loimán gandéroi.
読み:サレーネイ、ロイメーサ ラウヴァン ロイマーン ガンデーロイ。
| sarén-ei, | loim-és-a | ráuvan | loim-án | gandér-oi. |
| 本番-<与格> | 唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 詞-<対格> | 硬木-<与格> |
「本番には、森の巫が硬木に向かって詞を唱えるべし。」
伐り出しの作法を書き記した文で、碑文や作法書の当為法。主語の ráuvan は人なので、当為法は軽性の -ésa になる。強勢は -és- に移るので、語根 lóim- の強勢は消える。下詠みや練習で詞を唱えても数に入らず、木の前で唱える本番の詞だけが儀式として成り立つ、という含みがある。
orveléimim gandér un kórvino.
読み:オルヴェレーミン ガンデール ウン コルヴィノ。
| orveléim-im | gandér | un | kórvino. |
| 並べ替える-<私が> | 硬木<対格> | 内に | 移動倉<対格> |
「私は硬木を移動倉の中に並べる。」
市や硬木検め場での日常会話。orveléim-「並べ替える」で品を移動倉に並べる。un kórvino は「移動倉の中に」。
pó dulíþo ó gandér marfúneloi?
読み:ポー ドゥリーソ オー ガンデール マルフーネロイ?
| pó | dul-íþ-o | ó | gandér | marfúnel-oi? |
| 何<主格> | 下る-<〜させる>-<(重いものが)> | <3人称単数・重性・主格> | 硬木<対格> | 綱臂-<与格>? |
「綱臂で、硬木を(何が)下ろすのだ?」
崖道のくだけた話し方での問い。pónを使わないため、主語を尋ねる場合は主語の枠に再述のóを残す(統語論1.2節「前に出した語の読み方」)。póは主格。marfúneloiは場所の与格(重性③型DAT -oi)。降ろし場の仕組みを尋ねる文で、綱臂の役割を問う。
krúnan faronárai gandér.
読み:クルーナン ファロナーライ ガンデール。
| krún-an | faronár-ai | gandér. |
| 支える-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 硬木<対格> |
「運び人たちが硬木を支えている。」
降ろし場や荷場での共同作業を示す文。複数人が体重をかけて硬木の重みに耐えている。硬木は重性名詞で、対格語尾はつかないが、VSO語順により目的語とわかる。主語が複数なので動詞は3PLを用いる。
snémba kelár gandér só.
読み:スネンバ ケラール ガンデール ソー。
| snémb-a | kel-ár | gandér | só. |
| こする-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | 硬木<対格> | この<重性> |
「樵がこの硬木を指先で確かめるようにこする。」
森や木口の場面。主語 kelár は人を指す軽性なので、動詞は3人称単数軽性 -a をとる。硬木 gandér は重性で、単数の直接目的語は主格と同じ形のまま。指示詞 só は重性名詞句を閉じる。
krasíþa faronár gandér.
読み:クラシーサ ファロナール ガンデール。
| kras-íþ-a | faronár | gandér |
| 割る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 硬木<対格> |
「運び人が硬木を劈く。」
楔や刃で筋に沿って開くように割る意の例。主語 faronár は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。対象 gandér は重性で、対格の語尾はつかない。
anórel, bláimo gandér.
読み:アノーレル、ブライモ ガンデール。
| anórel, | bláim-o | gandér. |
| 昨日 | 曲がる<〜し終えた>-<(重いものが)> | 硬木<主格> |
「昨日、硬木が曲がった。」
年代記風の書物の文。時制を表す語形はない。完了語根 bláim- と時の語 anórel が過去の読みを取り出す。主語 gandér は重性子音語幹名詞の単数主格なので、動詞は 3 単・重の -o をとる。
þrándim gandér só.
読み:スランディン ガンデール ソー。
| þránd-im | gandér | só |
| 打つ-<私が> | 硬木<対格> | この<重性> |
「私はこの硬木を打つ。」
日常の作業。動詞は1人称単数。硬木は重性名詞で、単数対格は主格と同形。
éso gandér só nalóun.
読み:エーソ ガンデール ソー ナローン。
| és-o | gandér | só | na-lóun. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | <〜ない>-長い |
「この硬木は短い。」
木市や検めで、硬木の材木としての実長が長くないことを言う意味1。重性名詞 gandér に合わせ、繋辞 éso、指示詞 só。重性単数主格では形容詞に語尾がつかず nalóun のまま。
éso esfóndos gandér gróm.
読み:エーソ エスフォンドス ガンデール グローン。
| és-o | esfóndos | gandér | gróm. |
| いる-<(重いものが)> | 元来 | 硬木<主格> | 重い |
「硬木は、元来、重い。」
肯定文用法。硬木が重いのは一時的な性質ではなく、はじめからそうであるという言い方。語順は動詞・esfóndos・主語・述語形容詞。
éso gandér euléren es lónes.
読み:エーソ ガンデール エウレーレン エス ローネス。
| és-o | gandér | euléren | es | lón-es. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | 違う | から | 柱の木-<属格・単数> |
「硬木は柱の木とは違う。」
物の種類や材質の違いを比べる中立的な用法。比べる相手は es+属格で示す。gandérは重性で、euléren は重性単数の形。lónaは軽性で属格単数は lónes。
vrún fúnel gandéroi, ende.
読み:ヴルーン フーネル ガンデーロイ、エンデ。
| vrún | fúnel | gandér-oi, | ende. |
| 巻く<命令法><あなたが> | 綱<対格> | 硬木-<与格> | どうぞ |
「硬木に綱を巻きつけてくれ、どうぞ。」
作業場での依頼文。vrún は命令法2人称。fúnel は重性の直接目的語で無標識。gandér-oi は巻きつける先を示す与格。ende は取引言葉として命令文後に置かれる。
tóro gandér es ráuvos.
読み:トーロ ガンデール エス ラウヴォス。
| tór-o | gandér | es | ráuv-os. |
| 来る-<(重いものが)> | 硬木<主格> | から | 森の帯-<属格> |
「硬木は森の帯から出てくる。」
交易・帳簿の場面。es+属格で「〜から」。地域としての森の帯を、硬木の供給元として指す。
éso gandér só krásen.
読み:エーソ ガンデール ソー クラーセン。
| és-o | gandér | só | krás-en. |
| いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | 割れあり-<〜した・〜された> |
「この硬木には割れがある。」
検めや会話で、材木に割れがあることを述べる文。主語 gandér と指示詞 só が重性、分詞 krásen が重性単数の述語として機能する。帳簿や荷札では品名に krásen を添えて「割れあり」と記す。
lísim plíndo só ré éso gandér só krásen.
読み:リーシン プリンド ソー レー エーソ ガンデール ソー クラーセン。
| lís-im | plíndo | só | ré | és-o | gandér | só | krás-en. |
| 書く-<私が> | 札<対格> | この<重性> | <〜と(節)> | いる-<(重いものが)> | 硬木<主格> | この<重性> | 割れあり-<〜した・〜された> |
「私はこの荷札に、この硬木には割れがある、と書き込む。」
帳簿や荷札に、硬木に割れがあることを書き記す場面。主文は第一人称の lísim で、目的語 plíndo só のあとに ré で内容節を置く。内容節は éso gandér só krásen で、krásen が「割れあり」の検めの語として述語になる。
éso filduló gandéroun snóil
読み:エーソ フィルドゥロー ガンデーロウン スノイル
| és-o | filduló | gandér-oun | snóil |
| いる-<(重いものが)> | 刻み通路<主格> | 硬木-<双数・属格> | 狭い |
「二つの硬木のはめ込みは狭い。」
書物・技術記録風。重性子音語幹 gandér の双数属格は gandéroun。主語は filduló で、述語の形容詞 snóil は主語に一致し、重性単数主格では語尾を付けない。
krám-o filduló gandéros
読み:クラーモ フィルドゥロー ガンデーロス
| krám-o | filduló | gandér-os |
| 砕ける-<(重いものが)> | 刻み通路<主格> | 硬木-<属格> |
「硬木のはめ込みが砕ける。」
点検・事故記録。filduló は重性単数主格。属格 gandéros は「硬木の」で、はめ込みの材料・帰属を示す。krám- は自動詞。
杭材・硬木の丸太
伐り出されて焼印を押され、崖の下へ下ろされる材。帳簿や荷札では品名としてこの語を書く。
sén gandér só, ende.
読み:セーン ガンデール ソー、エンデ。
| sén | gandér | só, | ende. |
| 見る<命令法><あなたが> | 杭材 | この<重性> | どうぞ |
「この丸太、検めてくれ、頼む。」
縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹で、格語尾は落ちる。文末に ende を添える。市は段に乗らない場なので、命令法と同じ形でも無礼にはならない。指示詞は性で形が変わるだけなので、取引言葉でも重性の só が残る。
dulíþan kelárai gandér es orénos.
読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール エス オレーノス。
| dul-íþ-an | kel-ár-ai | gandér | es | orén-os. |
| 下る-<〜させる>-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 杭材<対格> | から | 縁-<属格> |
「樵たちは縁から硬木の丸太を下ろす。」
乾風期の吊り下ろしを述べる文。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。動詞のすぐ後ろの kelárai が主語で、その次の gandér が目的語。ここでは数を言わずに、伐り出された材をひとまとまりとして言っている。帳簿で数を書くときは、かならず量の名詞 báron「本」を添える。
森の帯の南の湿った谷にだけ育つ広葉樹で、乾かしても水に沈む「沈む木」。干潟の杭に使う材として、高原でいちばん大事な輸出品。生えていても重性に入る唯一の木で、「下へ行きたがる木」とされる。統一以後は王の森の木で、儀式なしに伐ることは禁じられている。言葉を沈めてしまうので、文字を彫ったり版木にしたりしてはいけない。
重性・子音語幹。主格・対格 gandér、属 gandéros、与 gandéroi、双 gandérou、複主対 gandérul、複属 gandérur、複与 gandéruls。綴りは〈gandera〉。数えるときは量の名詞 báron「本」を使う。
古高原語 *gandéra。主格の飾りの母音 -a が古い脱落で落ちた。脱落より前の形が干潟語に借りられ、鼻音が落ちて gadera になった。森の言葉には gandéra の形が残る。
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