小説
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煮る
水で煮る、炊く。
kúula kelár tambór.
読み:クーラ ケラール タンボール。
| kúul-a | kel-ár | tambór. |
| 煮る-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | 雑穀<対格> |
「樵が雑穀を煮ている。」
日常の文。時制がないので「煮る」とも「煮ている」とも訳せる。tambór は重性の子音語幹名詞で、主格と対格が同じ形になる。主語と目的語は VSO の語順で見分ける。主語の kelár は人なので軽性で、動詞は -a をとる。綴りは〈tamboro〉で、古い脱落の前の形を残している。
kúulim kréinul hérvanes.
読み:クーリン クレーヌル ヘルヴァネス。
| kúul-im | kréin-ul | hérvan-es. |
| 煮る-<私が> | 骨-<〜たちを> | 大鹿-<属格> |
「大鹿の骨を煮る。」
台所の言葉。骨を煮出して汁をとる。kréin は重性の子音語幹で、複数対格は主格と同じ -ul。属格 hérvanes は名詞の後ろに置く。
kúula anlóur téir lóurul némes tambór.
読み:クーラ アンロール テール ロールル ネーメス タンボール。
| kúul-a | anlóur | téir | lóur-ul | ném-es | tambór. |
| 煮る-<(軽いものが)> | 上の世代の血族<主格> | 三 | 瀬-<〜たちを> | <私>-<属格> | 雑穀<対格> |
「私の曾祖母(曾祖父)が雑穀を煮ている。」
「三瀬上」で曾祖父母を言う。三以上の数詞の後ろなので、瀬は複数の lóurul になる。どれだけ隔たっているかを表す道のりの対格の句が名詞のすぐ後ろに来て、そのあとに属格が続く。男女は区別しない。
kúula líura té tambór.
読み:クーラ リーウラ テー タンボール。
| kúul-a | líura | té | tambór. |
| 煮る-<(軽いものが)> | 女<主格> | あの<軽性> | 雑穀<対格> |
「あの女の人が雑穀を煮ている。」
líura は軽性の a 語幹の名詞で、語根に強勢がある。指示詞 té は名詞の後ろに置く。tambór は重性なので、対格に語尾がつかない。時制がないので、「煮ている」とも「煮た」とも訳せる。
lúin na éso tambór némorei, éso bóula kúulen tambór némores.
読み:ルーイン ナ エーソ タンボール ネーモレイ、エーソ ボーラ クーレン タンボール ネーモレス。
| lúin | na | és-o | tambór | némor-ei, | és-o | bóula | kúul-en | tambór | némor-es. |
| とき | <〜ない> | いる-<(重いものが)> | 雑穀<主格> | <我々>-<与格>, | いる-<(重いものが)> | どんぐり<主格> | 煮る-<〜した・〜された> | 雑穀<主格> | <我々>-<属格> |
「雑穀がないときには、煮たどんぐりが我々の雑穀になる。」
凶作の年の暮らしを語る文。どんぐりは飢えの年の食べ物でもある。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持たれている物の tambór(重性)に一致する。lúin の節の中では、na が動詞の直前に来る。落ちた実を煮たどんぐりは重性で扱うので、繋辞は éso、分詞 kúulen は重性・単数・主格の形(語尾なし)になる。
na éso þérno. éso sóumbo, kuuléimor ó sórel.
読み:ナ エーソ セルノ。エーソ ソーンボ、クーレーモル オー ソーレル。
| na | és-o | þérno. | és-o | sóumbo, | kuul-é-imor | ó | sórel. |
| <〜ない> | いる-<(重いものが)> | 毒きのこ<主格> | いる-<(重いものが)> | 食べられるきのこ<主格> | 煮る-<〜だろう>-<我々が> | <3人称単数・重性> | 今日 |
「毒きのこではない。食べられるきのこだ。今日煮よう。」
採ってきたきのこを確かめたときの答え。þérno「毒きのこ」と対比されると、sóumbo は「食べられるきのこ」を指す。主語は言わず、繋辞 és- の重性の語尾 -o で「それは」を表す。推量法の -él- は1人称の語尾の前で l が落ちる(kuuléimor)。
kúula líura tambór, bróla muró.
読み:クーラ リーウラ タンボール、ブローラ ムロー。
| kúul-a | líura | tambór, | bról-a | muró. |
| 煮る-<(軽いものが)> | 女<主格> | 雑穀<対格> | 作る-<(軽いものが)> | 濁り酒<対格> |
「女は雑穀を煮て、濁り酒を作る。」
濁り酒の作り方を言う文。後半では主語を言わず、動詞の語尾から前半と同じ女が主語だとわかる。時制がないので、習慣としての営みを表す。
kúulim nímbo si tambór.
読み:クーリン ニンボ シ タンボール。
| kúul-im | nímbo | si | tambór. |
| 煮る-<私が> | 乳<対格> | と | 雑穀<対格> |
「乳と雑穀を煮る。」
家で煮炊きするときの言い方。乳と雑穀を合わせて煮た粥は、湖盆の村でふだんから食べられている。どちらも重性なので、対格は主格と同じ形になる。主語は動詞の語尾 -im でわかるので言わない。
ké kúulses tambór? kúulsim.
読み:ケー クールセス タンボール?クールシン。
| ké | kúuls-es | tambór? | kúuls-im. |
| <〜か> | 煮る<〜し終えた>-<あなたが> | 雑穀<対格> | 煮る<〜し終えた>-<私が> |
「「雑穀はもう炊いたか?」「炊いたよ。」」
二人の発話。kúul- は長母音の語根なので、完了相は語根の後ろに -s- を足して kúuls- になる。「はい」にあたる語がないので、問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返して答える。
kúulim tambór.
読み:クーリン タンボール。
| kúul-im | tambór. |
| 煮る-<私が> | 雑穀<対格> |
「雑穀を煮ている(粥を炊いている)。」
主食の雑穀を煮て粥にする、日常の言い方。直説法の語尾には強勢がないので、強勢は長母音の語根 kúul- に残る。tambór は重性なので、対格は主格と同じ形になる。時制がないので、「煮る」とも「煮た」とも訳せる。
éso pelsó kúulen dréum.
読み:エーソ ペルソー クーレン ドレウン。
| és-o | pelsó | kúul-en | dréum |
| いる-<(重いものが)> | ピッチ<主格> | 煮る-<〜した・〜された> | 黒い |
「煮つめた樹脂、つまりピッチは黒い。」
pelsó は、樹脂を煮つめて作る目止め用のピッチも指す。区別したいときは、分詞 kúulen「煮られた」を後ろに添える。他動詞の分詞は受け身の意味になる。
élþa elþá, kúula houmár tambór.
読み:エルサ エルサー、クーラ ホウマール タンボール。
| élþ-a | elþá, | kúul-a | houmár | tambór. |
| 燃える-<(軽いものが)> | 火<主格> | 煮る-<(軽いものが)> | 家の主<主格> | 雑穀<対格> |
「火が燃え、家の主が雑穀を煮ている。」
日々の炊事を言う文。主節を二つ、接続詞なしで読点で区切って並べている。どちらの節も VSO で、動詞が先に来る。tambór は重性なので、対格は主格と同じ形。
lúin fǘro ílmo, kúulimor tambór.
読み:ルーイン フューロ イルモ、クーリモル タンボール。
| lúin | fǘr-o | ílmo, | kúul-imor | tambór |
| とき | 沸く-<(重いものが)> | 水<主格> | 煮る-<我々が> | 雑穀<対格> |
「水が沸くと、我らは雑穀を煮る。」
日常の炊事。時間節を lúin で導き、主節を続ける。主語「我ら」は動詞語尾に含み、名詞では繰り返さない。重性名詞 tambór の対格は主格と同形。
煮出す
茶の葉や樹皮を煮て汁をとる。
lúin tóro nébro, kúulan ólmarai.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、クーラン オルマライ。
| lúin | tór-o | nébro, | kúul-an | ólmar-ai. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 煮出す-<彼らが> | 年長者-<〜たちが> |
「霧が来るころになると、年長者たちは(影の木の葉を)煮出す。」
霧の季節に葉を煮出して茶にする習わしを述べた文。煮出す物は文脈でわかるので、言っていない。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、節の動詞は -o をとる。
dukúulim autorárei.
読み:ドゥクーリン アウトラーレイ。
| du-kúul-im | au-tor-ár-ei. |
| <〜させていただく>-煮出す-<私が> | <お〜になる・御〜>-来る-<〜する人>-<与格> |
「お客様に、お茶を煮出して差し上げます。」
客をもてなすときの改まった言い方。謙譲の du- で自分の行いを低め、与格の受け手 torár「来る人」には au- をつけて高めている。煮出す物は場面でわかるので、言っていない。du- には強勢がないので、強勢は語根 kúul- に残る。
鍋で煮る、炊く。粥を炊く、茶の葉を煮出す、きのこを煮るなど、水を使う加熱を広く言う。熱した石の上で焼くことには使わない。
gléla endríña lúsan es kúulos.
読み:グレーラ エンドリーニャ ルーサン エス クーロス。
| glél-a | endríña | lús-an | es | kúul-os |
| よそう-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 粥-<対格> | から | 鍋-<属格> |
「子どもが鍋から粥をよそう。」
日常の記述文。gléla は 3人称単数・軽性の直説法で、主語 endríña は人なので軽性。出所は前置詞句 es kúulos(kúulo の単数属格)で表す。glél は社会的な配給や抽象的な「与える」ではなく、匙で食物を別の器に移す動作そのものを指す。
他動詞。直説3単 kúula/kúulo。完了語根 kúuls-(長母音の語根なので -s- を足す)。命令 kúul!
古高原語 *kúul- から
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