小説
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湖
高原の湖。湖盆に並ぶ湖の一つひとつを指す。
lúin glǘno véinor, tóran faronárai snírai séndo.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ファロナーライ スニーライ センド。
| lúin | glǘn-o | véinor, | tór-an | faronár-ai | snír-ai | séndo. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 来る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 少ない-<〜たちが> | ここ |
「湖が凍るころには、ここへ来る運び人は少なくなる。」
lúin の節は主節の前に置く。湖 véinor は地の上の水なので重性で、動詞は -o をとる。主節の主語 faronárai は軽性・複数・主格で、snírai はそれに一致する。運び人のような働き手は数えてよいので、snír で多い少ないを言ってもかまわない。凍りの頃の崖道を言う文。
glǘno véinor sórel.
読み:グリューノ ヴェーノル ソーレル。
| glǘn-o | véinor | sórel. |
| 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 今日 |
「今日、湖が凍った。」
凍りの頃の日常会話。年代記の「湖が凍った日」の記事も、同じ型の短い直説法の文で書く。高原語には時制がないので、直説法の glǘno は「凍る」とも「凍った」とも訳せる。過去のことだとわかるのは、時を表す語 sórel のおかげである。湖 véinor は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。
glünélo ílmo véinoros.
読み:グリュネーロ イルモ ヴェーノロス。
| glün-él-o | ílmo | véinor-os. |
| 凍る-<〜だろう>-<(重いものが)> | 水<主格> | 湖-<属格> |
「湖の水は凍るだろう。」
天気の見通しを言う言い方。時制がないので、これから起こることは推量法で言う。強勢は推量法の -él- に移る。名詞句は「名詞–属格」の順に並ぶ。
éso glünó véinoros krán.
読み:エーソ グリュノー ヴェーノロス クラーン。
| és-o | glünó | véinor-os | krán. |
| いる-<(重いものが)> | 氷<主格> | 湖-<属格> | 硬い |
「湖の氷は硬い。」
「AはBだ」の文は、繋辞 és- を先頭に置き、「繋辞–主語–述語」の順に並べる。glünó は氷一般を指す重性o語幹の名詞で、強勢は語尾にある。主語が重性なので、繋辞は -o をとる。厚さで呼び分けるときは、glüníño・tráumo・múrno を使う。
táulimor glünó es véinoros.
読み:タウリモル グリュノー エス ヴェーノロス。
| tául-imor | glünó | es | véinor-os. |
| 取る-<我々が> | 氷<対格> | から | 湖-<属格> |
「我々は湖から氷を切り出す。」
凍りの頃に、湖の氷を切り出して蓄えることを言う。es + 属格で、方向を問わない「〜から」を表す。glünó は重性なので、対格は主格と同じ形になる。
ké éso glünó véinoros tráumo?
読み:ケー エーソ グリュノー ヴェーノロス トラウモ?
| ké | és-o | glünó | véinor-os | tráumo? |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | 氷<主格> | 湖-<属格> | 渡り氷 |
「湖の氷は、もう荷車が渡れるほどか。」
凍りの頃に、湖畔の村でよく交わされる問い。はい・いいえで答える問いは、文頭の ké で作る。tráumo は述語の名詞。答えは動詞を繰り返し、「はい」は éso、「いいえ」は na éso と言う。
ráuman faronárai tráumoi véinoros.
読み:ラウマン ファロナーライ トラウモイ ヴェーノロス。
| ráum-an | faronár-ai | tráum-oi | véinor-os. |
| 歩く-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 渡り氷-<与格> | 湖-<属格> |
「「運び人たちが、湖の厚い氷の上を歩いて渡る。」」
湖が厚く凍ると、氷の上が道にも市にもなる。tráumo は道のりの対格。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。
éso glünó véinoros múrno, mé ráumir!
読み:エーソ グリュノー ヴェーノロス ムルノ、メー ラウミル!
| és-o | glünó | véinor-os | múrno, | mé | ráum-ir! |
| いる-<(重いものが)> | 氷<主格> | 湖-<属格> | 腐り氷 | <禁止・願いの打ち消し> | 歩く-<皆で〜せよ> |
「湖の氷は腐っている、皆、乗るな!」
霧期に湖畔の村で交わされる警告。前半は繋辞の文で、múrno は述語の名詞。後半は複数の相手への禁止で、mé + 命令法・複数 -ir を使う。主節を接続詞なしで二つ並べるので、間に区切りを入れる。
lúin tóro nébro, éso glünó véinoros múrno.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、エーソ グリュノー ヴェーノロス ムルノ。
| lúin | tór-o | nébro, | és-o | glünó | véinor-os | múrno. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | いる-<(重いものが)> | 氷<主格> | 湖-<属格> | 腐り氷 |
「霧が来ると、湖の氷は腐り氷になる。」
季節の移り変わりを言う、教えさとすような文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、動詞 tór- は -o をとる。名詞句は「名詞–属格」の順に並ぶ(glünó véinoros「湖の氷」)。
éso séimo véinoros þáil.
読み:エーソ セーモ ヴェーノロス サイル。
| és-o | séimo | véinor-os | þáil. |
| いる-<(重いものが)> | 静み水<主格> | 湖-<属格> | 澄んだ |
「湖の静み水は澄んでいる。」
湖や淵の静かな水を言う描写の文。séimo は、走り水 rúndo や湧き水 þéul と区別して使う。重性なので、繋辞は -o をとり、形容詞 þáil は語尾なしの形で一致している。
dúlo rúndo du véinor.
読み:ドゥーロ ルンド ドゥ ヴェーノル。
| dúl-o | rúndo | du | véinor. |
| 下る-<(重いものが)> | 走り水<主格> | 下手 | 湖<対格> |
「走り水が湖へ流れ下る。」
北の高みから下りてきた沢が、湖盆の湖に注ぐようすを言う。走り水 rúndo も湖 véinor も重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。du+対格で「下手へ」を表す。véinor は重性の子音語幹なので、対格にも語尾がつかない。
fléira aldár áuren es véinoros.
読み:フレーラ アルダール アウレン エス ヴェーノロス。
| fléir-a | aldár | áur-en | es | véinor-os. |
| お出ましになる-<(軽いものが)> | 座<主格> | 昇る-<〜した・〜された> | から | 湖-<属格> |
「高き座が湖からお出ましになる。」
王の動きを言う、改まった言い方。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。座 aldár は人を指すので軽性で、動詞は -a をとる。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。重性の véinor は、属格が -os になる。
nílim ílmo véinoros.
読み:ニーリン イルモ ヴェーノロス。
| níl-im | ílmo | véinor-os. |
| 飲む-<私が> | 水<対格> | 湖-<属格> |
「私は湖の水を飲む。」
日常の言い方。主語は動詞の語尾 -im でわかるので言わない。地の上の水がどこの水かは、属格で言う。空から降る水は、地の水 ílmo とは別の語 réina「雨」で言う。
lúin brúuma sírna, glǘno véinor.
読み:ルーイン ブルーマ シルナ、グリューノ ヴェーノル。
| lúin | brúum-a | sírna, | glǘn-o | véinor. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 霜<主格> | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> |
「霜が降りるようになると、湖が凍る。」
湖畔の村で季節の移り変わりを言う決まった言い方。従属節の主語 sírna は軽性なので動詞は -a をとり、主節の主語 véinor(地の上の水)は重性なので動詞は -o をとる。性の対比が、一つの文の中に出ている。
lúin glǘno véinor, tóran dráunai du véinor.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ドラウナイ ドゥ ヴェーノル。
| lúin | glǘn-o | véinor, | tór-an | dráun-ai | du | véinor. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 来る-<彼らが> | 狼-<〜たちが> | 下手 | 湖<対格> |
「湖が凍ると、狼たちが湖へ下りてくる。」
湖畔の村で凍りの頃について言う文。lúin の節は主節の前に置く。dráun は軽性の子音語幹で、複数主格は dráunai。du+対格で「下手へ」。véinor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。
mé gélir du véinor, ésa gúrnal téndoi.
読み:メー ゲーリル ドゥ ヴェーノル、エーサ グルナル テンドイ。
| mé | gél-ir | du | véinor, | és-a | gúrnal | ténd-oi. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<皆で〜せよ> | 下手 | 湖<対格> | いる-<(軽いものが)> | 熊<主格> | あそこ-<与格> |
「「湖へ下りていくな。あそこには熊がいる。」」
森の村の年長者が若者たちに言う注意。禁止は「mé+命令法」で言い、相手が複数なので命令法の -ir を使う。後ろの節は存在文で、主語の gúrnal が軽性・単数なので ésa になる。
táulim frélo es véinoros sórel.
読み:タウリン フレーロ エス ヴェーノロス ソーレル。
| tául-im | frélo | es | véinor-os | sórel |
| 取る-<私が> | 湖の魚<対格> | から | 湖-<属格> | 今日 |
「今日、湖で魚を獲った。」
湖畔の村の日常の言い方。時制はないので、「獲った」か「獲る」かは文脈で決まる。es+属格で「湖から」。時を表す sórel は文末に置く。高原で frélo と言えば、多くは冷たい湖にすむ鱒に似た魚を指す。
gélan kelárai or véinor dórel.
読み:ゲーラン ケラーライ オル ヴェーノル ドーレル。
| gél-an | kel-ár-ai | or | véinor | dórel. |
| 行く-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 日の出側 | 湖<対格> | 明日 |
「明日、樵たちは日の出側の湖へ行く。」
時制の語形はないので、未来のことでも直説法で言い切れる。確かでなければ推量法 geléla などを使う。東西の移動は or(日の出側)・vel(日の入り側)+対格で表す。véinor は重性で、対格でも形が変わらない。
lúin glǘno véinor, þílo ílmo véinoros.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、シーロ イルモ ヴェーノロス。
| lúin | glǘn-o | véinor, | þíl-o | ílmo | véinor-os. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 澄む-<(重いものが)> | 水<主格> | 湖-<属格> |
「湖が凍るころ、湖の水は底まで澄む。」
湖畔で言われる古い言い方。lúin の節は主節の前に置く。「澄む」の意味では自動詞として使い、目的語をとらない。
éso ílmo véinoros véril.
読み:エーソ イルモ ヴェーノロス ヴェーリル。
| és-o | ílmo | véinor-os | véril. |
| いる-<(重いものが)> | 水<主格> | 湖-<属格> | 青緑の |
「湖の水は青緑だ。」
「AはBだ」の繋辞文。名詞句の中の形容詞は属格より前に来るので、属格 véinoros の後ろにある véril は修飾語ではなく述語と読む。湖の水は地上の水なので重性。
ésa traimlisá véinoros trúum.
読み:エーサ トラインリサー ヴェーノロス トルーン。
| és-a | traimlisá | véinor-os | trúum. |
| いる-<(軽いものが)> | 年ごとの記録<主格> | 湖-<属格> | 古びた |
「湖畔の年ごとの記録は古びている。」
統一より前に湖畔の都市が残した年ごとの記録を指す用法。こうした記録の断片をつなぎ合わせたものが「前の書」になる。名詞句は「名詞–属格」の順に並び、述語の形容詞 trúum は軽性・主格の形をとる。
高原の湖。湖盆には大小の湖が東西に鎖のように並び、三つのつながりに分かれている。地の上の静かな水をたたえたものなので重性に属する。都の湖である大湖、日の出側の「朝の湖」、日の入り側の「夕の湖」なども、この語に修飾語を添えて呼ぶ。凍りの頃には凍り、氷の上で漁や遊びが行われる。
重性・子音語幹(③型)。主・対 véinor、属 véinoros、与 véinoroi、複 véinorul。
古高原語 *véinora から。主格の *-a は古い脱落で消えた。綴りは〈veinora〉。
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