álmar

品詞
名詞
意味
白月
発音
[ˈalmar]
読み
アルマル
分野
自然・天体・天候・地形

意味

  1. 白月

    大きくゆっくり巡る月そのもの。sílar「月」の中でも、とくにこの月を指す名前。

    lúin áura álmar, émbelimor fóndar némores.

    読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル フォンダル ネーモレス。

    lúináur-aálmar,émbel-imorfóndarnémor-es.
    とき昇る-<(軽いものが)>白月<主格>祀る-<我々が>源<対格><我々>-<属格>

    「白月が昇ると、我々は我らの始祖を祀る。」

    白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを述べた文。fóndar は重性なので、目的語になっても主格と同じ形のまま。所有者を表す属格 némores は名詞の後ろに置く。lúin の節は主節の前に来る。

    dúla ilána an álmarei!

    読み:ドゥーラ イラーナ アン アルマレイ!

    dúl-ailánaanálmar-ei!
    下る-<(軽いものが)>星<主格>上手白月-<与格>

    「白月の上手で、星が流れた!」

    流れ星は「星が下りる」と言う。上から何かが下りてくるしるしとして警戒される。星の位置は指さずに、「an+与格」で白月との位置関係として言う。時制がないので、「流れる」とも「流れた」とも訳せる。

    áura ilána ráimaros an álmarei.

    読み:アウラ イラーナ ライマロス アン アルマレイ。

    áur-ailánaráimar-osanálmar-ei.
    昇る-<(軽いものが)>祖先の星<主格>ライマル-<属格>上手白月-<与格>

    「ライマルの星が、白月の上手に昇る。」

    祖先の星は、単数の ilána の後ろに祖先の名を属格で添えて呼ぶ(名前のある一つの星なので、単数で指してよい)。星の位置は指さずに、「an+与格」で白月との位置関係として言う。系譜読みや星読みが、夜の時刻や祖先の祀りについて語るときの言い方。

    lúin áura álmar, hóinimor.

    読み:ルーイン アウラ アルマル、ホイニモル。

    lúináur-aálmar,hóin-imor.
    とき昇る-<(軽いものが)>白月<主格>帰る-<我々が>

    「白月が昇ったら、帰ろう。」

    日常の時の言い方。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。月は軽性なので、動詞は -a をとる。時刻を月や星の昇りで言うのは、高原ではごくふつうのこと。

    éso nébro, na sénimor álmaran.

    読み:エーソ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン。

    és-onébro,nasén-imorálmar-an.
    いる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>白月-<対格>

    「霧が出ていて、我々には白月が見えない。」

    霧期の暮らしを語るときの言い方。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。霧が出ると、空と人とのあいだに下のものが割りこみ、祖先が下界を見守れなくなる。この文には、そうした不安がこもっている。

    ké sénes álmaran? sénim.

    読み:ケー セーネス アルマラン?セーニン。

    késén-esálmar-an?sén-im.
    <〜か>見る-<あなたが>白月-<対格>見る-<私が>

    「「白月が見えるか?」「見える。」」

    二人の発話。雨期に、雲の切れ間から白月がのぞいているかを尋ねる、家族や同輩どうしの問い。答えは問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返す。目上の人には ké を使わず、尊敬の補充形 lúum- を推量法にして尋ねる。

    lúin áura ilána an álmarei, laméra ilanár.

    読み:ルーイン アウラ イラーナ アン アルマレイ、ラメーラ イラナール。

    lúináur-ailánaanálmar-ei,lamér-ailanár.
    とき昇る-<(軽いものが)>灯<主格>上手白月-<与格>掌を差し上げる-<(軽いものが)>星読み<主格>

    「白月の上手に灯が昇ると、星読みは掌を差し上げる。」

    星の司の記録の文体。星の位置は、an álmarei「白月の上手に」のように、ほかの天体との関係で言う。指さす代わりに掌を差し上げて示す。名前のある一つの星は、単数の ilána で指せる。

    lúin áura álmar, émbelimor aursárais.

    読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル アウルサーライス。

    lúináur-aálmar,émbel-imoraursár-ais.
    とき昇る-<(軽いものが)>白月祀る-<我々が>祖先-<〜たちを>

    「白月が昇ると、私たちは祖先を祀る。」

    白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。aursár は人を指すので軽性の子音語幹で、複数対格は -ais。祖先は「数えない」ものなので、数詞をつけず複数でひとまとまりに言う。

    lúin áura álmar, émbelimor aursárais.

    読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベリモル アウルサーライス。

    lúináur-aálmar,émbel-imoraursár-ais.
    とき昇る-<(軽いものが)>白月<主格>祀る-<我々が>祖先-<〜たちを>

    「白月が昇ると、我々は祖先を祀る。」

    家々の祖先祀りを説明する文。白月は見守る祖先のまなざしの象徴とされ、満ちた夜に祖先を祀る。lúin の節は主節の前に置く。月は軽性なので、動詞は -a で受ける。

    gléin álmar, rús rúsil.

    読み:グレーン アルマル、ルース ルーシル。

    gléinálmar,rúsrúsil.
    清い白月<主格>赤い赤月<主格>

    「清きは白月、赤きは赤月。」

    二つの月を並べて対比する諺。諺では繋辞 és- を落とし、述語の形容詞を先に置くので、「名詞+形容詞」のふつうの語順とは逆になる。白月は秩序と祖先の象徴、赤月は落ち着きのない「下の国の月」とされ、その違いを含ませている。

    áurau álmar si rúsil.

    読み:アウラウ アルマル シ ルーシル。

    áur-auálmarsirúsil.
    昇る-<双数>白月<主格>と赤月<主格>

    「白月と赤月が昇る。」

    単数の名詞を si で二つ並べると、動詞は双数になる。双数の動詞は人称も性も区別しない。月は星ではないので、二つ並べて双数で受けても禁忌にはならない。二つの月が重なって見える夜は秩序の乱れる夜とされ、人々は出歩かない。

    áura álmar an dún.

    読み:アウラ アルマル アン ドゥーン。

    áur-aálmarandún.
    昇る-<(軽いものが)>白月<主格>上手丘<対格>

    「白月が丘の上手へ昇る。」

    年代記や暦の記事にあるような、直説法だけの簡潔な文。白月は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。an+対格で「上手へ」。重性の dún「丘」は、対格でも主格と同じ形になる。白月は暦の基準になる月で、祖先のまなざしの象徴とされる。

    dúla dulána an álmarei, émbela aldár áuren.

    読み:ドゥーラ ドゥラーナ アン アルマレイ、エンベラ アルダール アウレン。

    dúl-adulánaanálmar-ei,émbel-aaldáráur-en.
    下る-<(軽いものが)>流れ星<主格>上手白月-<与格>祀る-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>

    「白月の上手に流れ星が下る。高き座が祀りを行う。」

    年代記の流れ星の項の書き方。年代記は直説法の短い文を並べ、主節のあいだには区切りの印を打つ。星の位置は指さしの代わりに、an álmarei「白月の上手に」のように月との位置関係で示す。時制の語形はないので、過去の出来事でも直説法の形のままで書く。王は総称の aldár áuren「高き座」で書く。

    lúin áura álmar, ésa aurþelá aursáres lóimen.

    読み:ルーイン アウラ アルマル、エーサ アウルセラー アウルサーレス ロイメン。

    lúináur-aálmar,és-aaurþeláaursár-eslóim-en.
    とき昇る-<(軽いものが)>白月<主格>いる-<(軽いものが)>昇名<主格>祖先-<属格>唱える-<〜した・〜された>

    「白月が昇ると、祖先の昇名が唱えられる。」

    祖先祀りの場面。生前の名前は二度と声に出さないので、祖先を口にするときはかならず昇名を使う。時を表す lúin の節は、ふつう主節の前に置く。後半は「és-+主語+分詞」で、受け身にあたる意味を表している。

    lúin sénim álmaran, nóurim tásan.

    読み:ルーイン セーニン アルマラン、ノーリン ターサン。

    lúinsén-imálmar-an,nóur-imtás-an.
    とき見る-<私が>白月-<対格>思い慕う-<私が><あなた>-<対格>

    「白月を見るたびに、あなたを想う。」

    人を対格にとると「思い慕う」の意味になる。手紙や詩によく出る言い方。2人称の tás は、親しい間柄でだけ使う。

    lúin áura álmar, embeléimor aursárais.

    読み:ルーイン アウラ アルマル、エンベレーモル アウルサーライス。

    lúináur-aálmar,embel-é-imoraursár-ais.
    とき昇る-<(軽いものが)>白月<主格>祀る-<〜だろう>-<我々が>祖先-<〜たちを>

    「白月が昇ったら、我々は祖先を祀ろう。」

    満月の夜に祖先を祀る習わしについての、家の中の会話。lúin の節は主節の前に置く。推量法の -él- は、1人称の語尾 -imor の前で l が落ちて -é- になる。強勢が接尾辞に移るので、語根の ´ は消える。

    ésa rúsil vel álmarei.

    読み:エーサ ルーシル ヴェル アルマレイ。

    és-arúsilvelálmar-ei.
    いる-<(軽いものが)>赤月<主格>日の入り側白月-<与格>

    「赤月は白月の日の入り側にある。」

    夜空での月の位置関係を述べる文。月は星ではないので数えてもよいが、指ささずに方向語で言い表すのが礼儀とされる。rúsil は軽性なので、繋辞は és-a になる。

    lúin áura álmar or dún, émbelan ólmarai aursárais.

    読み:ルーイン アウラ アルマル オル ドゥーン、エンベラン オルマライ アウルサーライス。

    lúináur-aálmarordún,émbel-anólmar-aiaursár-ais.
    とき昇る-<(軽いものが)>白月<主格>日の出側丘<対格>祀る-<彼らが>年長者-<〜たちが>祖先-<〜たちを>

    「白月が丘の日の出側に昇ると、年長者たちは祖先を祀る。」

    天体の位置を言う決まった言い方。星や月は指さしてはいけないので、よく知られた目印と方向の前置詞で位置を示す。or+対格で「〜の日の出側へ」を表す。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。

    áura álmar es órunes.

    読み:アウラ アルマル エス オールネス。

    áur-aálmaresórun-es.
    昇る-<(軽いものが)>白月<主格>から東-<属格>

    「白月は東から昇る。」

    órun を方角そのものを表す名詞として使い、es+属格で「東から」を表している。前置詞の or は、この語から生まれた。álmar は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。

    áura álmar an méndalan élvares.

    読み:アウラ アルマル アン メンダラン エルヴァレス。

    áur-aálmaranméndal-anélvar-es.
    昇る-<(軽いものが)>白月<主格>上手まん中-<対格>天-<属格>

    「「白月が天のまん中へと昇っていく。」」

    天体の位置を、まわりのものとの関係で言う言い方。月は星ではないので、こうして名指しして言ってよい。méndal は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

    lúin tóro nébro, na sénimor álmaran un élvarei.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン ウン エルヴァレイ。

    lúintór-onébro,nasén-imorálmar-anunélvar-ei.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>白月-<対格>内に天-<与格>

    「霧が来ると、天の内に白月が見えなくなる。」

    霧期を言う文。un+与格で、天という広がりの内側にあることを表す。霧は下から割りこむ帳なので、天にあるものが見えなくなる。

    káula álmar sé.

    読み:カウラ アルマル セー。

    kául-aálmarsé.
    満ちる-<(軽いものが)>白月<主格>この<軽性>

    「この白月が満ちる(満月となる)。」

    暦や儀礼の読み上げ向き。月について kául- は輪の欠けがなくなることを表す。álmar は軽性子音語幹、指示詞 sé は軽性。

  2. ひと月

    白月の満ち欠けの一巡り。暦の月の単位で、上・中・下の三つの十日に分ける。

    plúin hoinéles? du álmarei sé.

    読み:プルーイン ホイネーレス?ドゥ アルマレイ セー。

    plúinhoin-él-es?duálmar-eisé.
    いつ帰る-<〜だろう>-<あなたが>下手ひと月-<与格>この<軽性>

    「「いつ帰るつもりだ。」「この月が明けたら。」」

    二人の発話。未来の予定は推量法で尋ねる。答えは動詞を省いた前置詞句だけで言う。時間は川の流れとみるので、du+与格「〜の下手で」は「〜の後に」の意味になる。du álmarei sé は「この月の後に」、つまり翌月のこと。

    hoinéim un dáu álmaraun.

    読み:ホイネーン ウン ダウ アルマラウン。

    hoin-é-imundáuálmar-aun.
    帰る-<〜だろう>-<私が>内二ひと月-<双数の〜の・〜に>

    「ふた月のうちには帰るだろう。」

    旅立つ者が日数の見込みを言う文。暦の月は白月の満ち欠けの一巡りで数える。dáu「二」の後ろの名詞は双数になり、un「〜の内に」と組むので双数の属格・与格 -aun をとる。推量法の -él- は、1人称の語尾の前で l が落ちて -é- になる。

    mé rimbésa rúsilan, rimbésa álmaran.

    読み:メー リンベーサ ルーシラン、リンベーサ アルマラン。

    mérimb-és-arúsil-an,rimb-és-aálmar-an.
    <禁止・願いの打ち消し>数える-<〜すべし>-<(軽いものが)>赤月の巡り-<対格>数える-<〜すべし>-<(軽いものが)>ひと月-<対格>

    「赤月の巡りで日を数えぬこと、白月の月で数えること。」

    都の年長者が、崖道帰りの若者などをたしなめるときに使う、戒めの決まった言い方。当為法で主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の形をとる。禁止の前半は mé で否定する。赤月で日を数えるのは、都では田舎くさい、下の国に染まった習慣とされる。

解説

二つの月のうち、大きくゆっくり巡る月(約二十九日)。暦の基準になる月で、変わらない秩序や法、祖先のまなざしの象徴とされる。満月の夜には祖先を祀る。星ではないので、数詞や双数をつけても禁忌にならない。星の位置を言うときの基準にもなる(an álmarei「白月の上手に」)。白月の一巡りは、そのまま暦の「ひと月」を指す。

文法

軽性・子音語幹(②型)。対 álmaran、属 álmares、与 álmarei。

語源

古高原語 *álmara「白く巡るもの」から。*-a は古い脱落で消えた。*ál-「白い」は、ほかに白い石英の古い呼び名に残るとされる。

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