小説
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月
天体の月。二つの月を双数で言う。
áurau dáu sílarau.
読み:アウラウ ダウ シーララウ。
| áur-au | dáu | sílar-au |
| 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「二つの月が昇る。」
dáu「二」の後ろの名詞は双数になる。双数の動詞は、人称も性も区別しない。月は星ではないので、数えても双数にしてもかまわない。
du dálor gandér, sílarau áurau.
読み:ドゥ ダーロル ガンデール、シーララウ アウラウ。
| du | dálor | gandér, | sílar-au | áur-au. |
| 下手 | 下の国<対格> | 硬木<主格> | 月-<双数> | 昇る-<双数> |
「硬木は下の国へ、二つの月は昇る。」
詩の一句で、十拍(du-dá-lor-gan-dér-sí-la-rau-áu-rau)。前半では動詞を落とし、後半では主語が動詞の前に出ている。会話の中でこの語順を聞くと、高原の人は「詩句の引用だ」とわかる。
áurau sílarau an ilánais.
読み:アウラウ シーララウ アン イラーナイス。
| áur-au | sílar-au | an | ilán-ais. |
| 昇る-<双数> | 月-<双数> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「二つの月が、星々のほうへ昇る。」
都の言葉。双数の主語には双数の動詞。
áuran sílarau an ilánais.
読み:アウラン シーララウ アン イラーナイス。
| áur-an | sílar-au | an | ilán-ais. |
| 昇る-<彼らが> | 月-<双数> | 上手 | 灯-<〜たちを> |
「二つの月が、星々のほうへ昇る。」
崖道の言葉。名詞は双数のまま、動詞は複数で受ける。
éso nébro an sílarail.
読み:エーソ ネーブロ アン シーラライル。
| és-o | nébro | an | sílar-ail. |
| いる-<(重いものが)> | 霧<主格> | 上手 | 月-<〜らに> |
「二つの月の上手(北側)に霧がある。」
前置詞の後ろの双数は、都でも複数の形で代える(双数の属格と与格は同じ形で、前置詞の意味が決まらないため)。
tóra éndra es sílaraun.
読み:トーラ エンドラ エス シーララウン。
| tór-a | éndra | es | sílar-aun. |
| 来る-<(軽いものが)> | 人<主格> | から | 月-<双数の〜の・〜に> |
「人が二つの月のほうから来る。」
es は属格としか組まないので、双数の属格のままでよい。
áuran slúun sílarar, na tóra lisár.
読み:アウラン スルーン シーララル、ナ トーラ リサール。
| áur-an | slúun | sílar-ar, | na | tór-a | lis-ár. |
| 昇る-<彼らが> | 数えきれぬ | 月-<〜らの> | <〜ない> | 来る-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> |
「数えきれぬほど月が昇ったが、書記は来ない。」
詩や改まった語りの言い方。slúun sílarar「千の月」は数えた結果ではなく、「数えきれないほど長い時が過ぎた」という意味の決まり文句。月は星ではないので、数の言い方をしても禁忌には当たらない。時制がないので、áuran は「昇った」とも訳せる。
ésa virá sílares sé gléin.
読み:エーサ ヴィラー シーラレス セー グレーン。
| és-a | virá | sílar-es | sé | gléin. |
| いる-<(軽いものが)> | 詩句<主格> | 月-<属格> | この<軽性> | 清い |
「この月の句は清い。」
詩の挨拶で返された句をほめる言い方。名詞句は「名詞–属格–指示詞」の順に並ぶ。指示詞 sé は格で形が変わらず、名詞句の終わりの目印になる。
sénimor sílarau es orénos.
読み:セーニモル シーララウ エス オレーノス。
| sén-imor | sílar-au | es | orén-os. |
| 見る-<我々が> | 月-<双数> | から | 縁-<属格> |
「縁から二つの月が見える。」
白月と赤月の二つを、双数でひと組として言う。月は星ではないので、双数にしても数えても禁忌にならない。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。
lúin tóro nébro, na sénimor sílaran.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル シーララン。
| lúin | tór-o | nébro, | na | sén-imor | sílar-an. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 見る-<我々が> | 月-<対格> |
「霧が来ると、月が見えなくなる。」
霧期の不安を言う文。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。主節は直説法なので、否定には na を使う。
séirim tásan, lúin áura sílar.
読み:セーリン ターサン、ルーイン アウラ シーラル。
| séir-im | tás-an, | lúin | áur-a | sílar. |
| 待つ-<私が> | <あなた>-<対格> | とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> |
「月が昇るころ、お前を待っている。」
同じ段の者どうしの、くだけた言い方。tás は②型の語尾で格変化し、対格は tásan になる。lúin は「〜とき」の節を導き、節の中も動詞で始まる。目上の人には tás を使わず、役職名などを3人称で言う。
áurau dáu sílarau, sénim dáun.
読み:アウラウ ダウ シーララウ、セーニン ダウン。
| áur-au | dáu | sílar-au, | sén-im | dáun. |
| 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> | 見る-<私が> | ふたつ |
「二つの月が昇る。私にはふたつとも見える。」
dáun は人だけでなく、そろいの二つのものも受ける。ここでは前の節の「二つの月」を受けて、目的語になっている。dáun は主格と対格が同じ形。月は星ではないので、数詞をつけても双数で受けてもかまわない。星をこの形で受けるのは禁忌にあたる。
lúin tóro nébro, na séno senó dáu sílarau.
読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーノ セノー ダウ シーララウ。
| lúin | tór-o | nébro, | na | sén-o | senó | dáu | sílar-au. |
| とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | <〜ない> | 見る-<(重いものが)> | 目<主格> | 二 | 月-<双数> |
「霧が来れば、目には二つの月も見えない。」
霧期の不安を言う、言い習わしのような文。senó は sén-「見る」に重性のもの名詞の接辞 -ó がついた語で、重性なので動詞は -o をとる。月は星ではないので、dáu「二」で数えて双数にしてよい。
ésa élvar þáil sórel, aurélau dáu sílarau.
読み:エーサ エルヴァル サイル ソーレル、アウレーラウ ダウ シーララウ。
| és-a | élvar | þáil | sórel, | aur-él-au | dáu | sílar-au. |
| いる-<(軽いものが)> | 天<主格> | 澄んだ | 今日 | 昇る-<〜だろう>-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「今日は天が澄んでいる。二つの月も昇るだろう。」
乾風期の晴れた日によく交わす言葉。述語の形容詞 þáil は軽性・単数・主格なので語尾がつかない。未来のことは推量法で言い、強勢は -él- に移る。dáu「二」の後ろの名詞は双数になり、双数の動詞は人称も性も区別しない。月は星ではないので、数えて双数にしてもかまわない。
dúla órel, áurau dáu sílarau.
読み:ドゥーラ オーレル、アウラウ ダウ シーララウ。
| dúl-a | órel, | áur-au | dáu | sílar-au. |
| 下る-<(軽いものが)> | 日<主格> | 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「日が沈み、二つの月が昇る。」
夕暮れを言う決まった言い方で、詩にもよく使われる。日の入りは dúl-「下る」で言う。órel は軽性なので dúla になる。月は星ではないので、dáu「二」と双数で言える。双数の動詞は人称も性も区別しない。
lúin hála húula, áura sílar.
読み:ルーイン ハーラ フーラ、アウラ シーラル。
| lúin | hál-a | húula, | áur-a | sílar |
| とき | 呼ぶ-<(軽いものが)> | ふくろう<主格> | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> |
「ふくろうが呼ぶと、月が昇る。」
ふくろうを夜と星読みの使いとみる考えにもとづく言い習わし。lúin の節は主節の前に置く。月 sílar も軽性なので、主節の動詞も軽性の -a をとる。
gélo nébro; sénimor dáu sílarau.
読み:ゲーロ ネーブロ、セーニモル ダウ シーララウ。
| gél-o | nébro; | sén-imor | dáu | sílar-au. |
| 去る-<(重いものが)> | 霧<主格> | 見る-<我々が> | 二 | 月-<双数> |
「霧が去った。二つの月が見える。」
霧期の途中で霧が晴れたときの、安堵の言葉。nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。月は星ではないので、数詞 dáu をつけて双数で言ってよい。
lúin áurau sílarau, fluunésa kumbór.
読み:ルーイン アウラウ シーララウ、フルーネーサ クンボール。
| lúin | áur-au | sílar-au, | fluun-és-a | kumbór. |
| とき | 昇る-<双数> | 月-<双数> | 清める-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 青銅<対格> |
「二つの月が昇るときには、青銅を清めるべし。」
作法書や詞に見られる当為法の文。強勢は -és- に移り、語根の ´ は消える。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。月は星ではないので双数で言える。二つの月が重なる夜は秩序が乱れる夜とされ、祀りの器を清める。
élþan elþái aursárar élvarei, áurau dáu sílarau.
読み:エルサン エルサイ アウルサーラル エルヴァレイ、アウラウ ダウ シーララウ。
| élþ-an | elþ-ái | aursár-ar | élvar-ei, | áur-au | dáu | sílar-au. |
| 灯る-<彼らが> | 火-<〜たちが> | 祖先-<〜らの> | 天-<与格> | 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「天に祖先たちの火が灯り、二つの月が昇る。」
詩の言い回し。星を祖先の炉の火と見る考え方から、星を「祖先たちの火」と言い換え、élþ-「灯る」を使っている。星を数えない言い方なので禁忌には当たらない。月は星ではないので、数詞 dáu をつけて双数で言える。
hóinau dáu sílarau élvarei.
読み:ホイナウ ダウ シーララウ エルヴァレイ。
| hóin-au | dáu | sílar-au | élvar-ei. |
| 巡ってくる-<双数> | 二 | 月-<双数> | 天-<与格> |
「二つの月が、また天に巡ってくる。」
天体が一巡りしてまた現れることに hóin- を使う。dáu「二」の後ろの名詞は双数になり、双数の動詞は人称も性も区別しない。場所は前置詞なしの与格で言う。
lúin hóina sílar, lísimor viráis aursárail.
読み:ルーイン ホイナ シーラル、リーシモル ヴィライス アウルサーライル。
| lúin | hóin-a | sílar, | lís-imor | vir-áis | aursár-ail. |
| とき | 巡ってくる-<(軽いものが)> | 月<主格> | 書く-<我々が> | 言葉-<〜たちを> | 祖先-<〜らに> |
「白月がまた巡ってくると、我々は祖先たちに言葉を書く。」
白月の満月の夜に祖先を祀る習わしを言う文。白月が一巡りしてまた満ちることに hóin- を使う。lúin の節は主節の前に置く。受け手の祖先たちは複数与格 -ail で示す。
lúin áura sílar, nóurimor aursárais.
読み:ルーイン アウラ シーラル、ノーリモル アウルサーライス。
| lúin | áur-a | sílar, | nóur-imor | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 思い慕う-<我々が> | 祖先-<〜たちを> |
「月が昇るとき、我々は祖先を偲ぶ。」
祖先祀りの場の言い方。白月は見守る祖先のまなざしの象徴とされ、満月の夜には祖先を祀る。
lúin sénan éndrai sílarau, gréman aursárar.
読み:ルーイン セーナン エンドライ シーララウ、グレーマン アウルサーラル。
| lúin | sén-an | éndr-ai | sílar-au, | grém-an | aursár-ar. |
| とき | 見る-<彼らが> | 人-<〜たちが> | 月-<双数> | 畏れる-<彼らが> | 祖先-<〜らの> |
「人は二つの月を仰ぐとき、祖先を畏れかしこむ。」
lúin の節は主節の前に置く。月は星ではないので双数で言える。後半の主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から前半と同じ人々だとわかる。畏れる対象は属格でとる。
sáilimor sílarei.
読み:サイリモル シーラレイ。
| sáil-imor | sílar-ei. |
| 喜ぶ-<我々が> | 月-<与格> |
「我らは月を喜ぶ。」
雨期の夜、雲の切れ間から月がのぞいたときの言い方。祖先が屋根の上から覗いているしるしとして喜ばれる。理由は与格で示す。
lúin áura sílar, ansénan aursárais.
読み:ルーイン アウラ シーラル、アンセーナン アウルサーライス。
| lúin | áur-a | sílar, | ansén-an | aursár-ais. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 思い出す-<彼らが> | 祖先-<〜たちを> |
「月が昇ると、人々は祖先を思い出す。」
祖先祀りの習わしを述べる文。月 sílar は軽性なので、動詞は3単・軽性の -a。主節の主語を言わない3人称複数 ansénan は、「人々は」という一般の主語を表す。
lúin áura sílar ál, sénimor dún.
読み:ルーイン アウラ シーラル アール、セーニモル ドゥーン。
| lúin | áur-a | sílar | ál, | sén-imor | dún. |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 明るい | 見る-<我々が> | 丘<対格> |
「明るい月が昇ると、我々には丘が見える。」
月明かりについて言うとき、ál は「明るい」の意味になる。月は軽性なので、動詞は -a をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。dún は重性なので、対格も主格と同じ形。
lúin ésa sílar dréum, na sénim póin.
読み:ルーイン エーサ シーラル ドレウン、ナ セーニン ポイン。
| lúin | és-a | sílar | dréum, | na | sén-im | póin. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 月<主格> | 暗い | <〜ない> | 見る-<私が> | 何か |
「月が暗いときは、何も見えない。」
光がなくて暗いことを言う文。月は軽性なので、繋辞は -a をとり、形容詞は語尾なしで一致する。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。
áurau dáu sílarau séurilau.
読み:アウラウ ダウ シーララウ セウリラウ。
| áur-au | dáu | sílar-au | séuril-au. |
| 昇る-<双数> | 二 | 月-<双数> | 美しい-<軽性・双数> |
「美しい二つの月が昇る。」
乾風期の澄んだ夜空をほめる言い方。dáu「二」の後ろで名詞は双数になり、形容詞も軽性・双数の -au で一致する。月は星ではないので、数えても双数にしてもかまわない。
sénim dáu sílarau séurilau.
読み:セーニン ダウ シーララウ セウリラウ。
| sén-im | dáu | sílar-au | séuril-au. |
| 見る-<私が> | 二 | 月-<双数> | 美しい-<軽性・双数> |
「美しい二つの月が見える。」
乾風期の澄んだ夜空を言う文。月は星ではないので、数詞 dáu を添えて双数で言ってかまわない。sílar「月」は軽性なので、形容詞も軽性・双数の séurilau で一致する。
ámbelai árnelai, sílarau áurau.
読み:アンベライ アルネライ、シーララウ アウラウ。
| ámbel-ai | árnel-ai, | sílar-au | áur-au. |
| 金色の-<軽性・〜ら(古い母音交替)・主格> | 木-<〜たちが> | 月-<双数> | 昇る-<双数> |
「金色なるは木々、昇りゆくは二つの月。」
詩の一句。前半は繋辞を落として形容詞を先に置く、格言・詩の語順。後半は主語が動詞の前に出ている。乾風期の初めに木々の葉が金色に変わり、澄んだ夜空に月が昇るさまを詠む。生えている木 árnel は軽性なので、複数主格は -ai。
lúin ésa élvar þáil, sénimor sílarau.
読み:ルーイン エーサ エルヴァル サイル、セーニモル シーララウ。
| lúin | és-a | élvar | þáil, | sén-imor | sílar-au. |
| とき | いる-<(軽いものが)> | 天<主格> | 晴れた | 見る-<我々が> | 月-<双数> |
「空が晴れると、我々には二つの月が見える。」
lúin で始まる時の節を主節の前に置いている。雲も霧もない空を言う用法で、乾風期の夜によく使う。月は星ではないので、双数で言ってよい。
ésa snélo élvares dréum, na sénimor sílaran.
読み:エーサ スネーロ エルヴァレス ドレウン、ナ セーニモル シーララン。
| és-a | snélo | élvar-es | dréum, | na | sén-imor | sílar-an. |
| いる-<(軽いものが)> | 天の屋根<主格> | 天-<属格> | 黒い | <〜ない> | 見る-<我々が> | 月-<対格> |
「天の屋根が黒く、月が見えない。」
snélo élvares「天の屋根」は高い雲を言う詩的な表現。名詞の形は重性の o語幹のままだが、雲は上に属するものなので一致は軽性になり、繋辞は ésa、述語の形容詞 dréum も軽性の形をとる。雨期の夜によく言う言い方。
lúin áura sílar, téndimor viráis.
読み:ルーイン アウラ シーラル、テンディモル ヴィライス。
| lúin | áur-a | sílar, | ténd-imor | vir-áis |
| とき | 昇る-<(軽いものが)> | 月<主格> | 句を編む-<我々が> | 言葉-<〜たちを> |
「月が昇ると、私たちは詩句を編む。」
月の出を題にして詩を作る習わしを言う文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。月 sílar は軽性の子音語幹なので、動詞は -a をとる。詩句 virá の複数対格は viráis。
lúin tóra nóra, sénimor dáu sílarau.
読み:ルーイン トーラ ノーラ、セーニモル ダウ シーララウ。
| lúin | tór-a | nóra, | sén-imor | dáu | sílar-au. |
| とき | 来る-<(軽いものが)> | 夜<主格> | 見る-<我々が> | 二 | 月-<双数> |
「夜が来れば、我々は二つの月を見る。」
乾風期の澄んだ夜を言う日常の文。nóra は軽性a語幹で、強勢は語根にあり、動詞は軽性の -a をとる。月は星ではないので、dáu「二」と双数 sílarau で数えてよい。
aursáre, sénim dáu sílarau!
読み:アウルサーレ、セーニン ダウ シーララウ!
| aursáre, | sén-im | dáu | sílar-au! |
| おお | 見る-<私が> | 二 | 月-<双数> |
「おお、二つの月が見える!」
乾風期の澄んだ夜空への感嘆。月は星ではないので、数詞 dáu と双数で言ってかまわない。aursáre は aursár「祖先」の呼格から来ており、祖先に呼びかける形で感嘆を表す。
vǘna sílar
読み:ヴューナ シーラル
| vǘn-a | sílar |
| 経つ-<(軽いものが)> | 月<主格> |
「月が経つ。」
日常会話での使用。主語の sílar が軽性単数なので、動詞は3人称単数・軽性の語尾 -a をとる。暦としてのひと月が流れる意。
vǘnau dáu sílarau
読み:ヴューナウ ダウ シーララウ
| vǘn-au | dáu | sílar-au |
| 経つ-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「二ヶ月が過ぎた。」
帳簿で期間の満了を示す使用。双数の動詞形で、dáu が双数名詞を要求し、動詞も双数で受ける。
senáurimor némor sílaran.
読み:セナウリモル ネーモル シーララン。
| senáur-imor | némor | sílar-an. |
| 見上げる-<我々が> | <我々・主格> | 月-<対格> |
「私たちは月を見上げる。」
日常の用法。夜空にある月をふと見上げる。一人称複数。月 sílar は軽性なので対格は -an。
frándau dáu sílarau.
読み:フランダウ ダウ シーララウ。
| fránd-au | dáu | sílar-au. |
| 並ぶ-<双数> | 二 | 月-<双数> |
「二つの月が並ぶ。」
自然な天体の列の言い表し。双数の主語に双数の動詞が対応する。整列行為ではなく、地平線近くで高さを揃えて見える状態を言う。
lúin áurau sílarau, gélau némor dáun du krambóra.
読み:ルーイン アウラウ シーララウ、ゲーラウ ネーモル ダウン ドゥ クランボーラ。
| lúin | áur-au | sílar-au, | gél-au | némor | dáun | du | krambóra. |
| とき | 昇る-<双数> | 月-<双数> | 行く-<双数> | <我々> | 二人 | 下手 | クランボーラ<対格> |
「二つの月が昇ると、我ら二人はクランボーラへ下っていく。」
道筋や季節を記す書物的な文。lúin 節は読点で主節と区切る。双数の動詞 áurau・gélau は人称を表さないが、主節の némor が加わって話し手を含む二人であることがわかる。du + 対格で下手・南方向への動きを示す。krambóra は固有名詞として、対格でも語尾が立たない。
éso þóvo sílares vóloi.
読み:エーソ ソーヴォ シーラレス ヴォーロイ。
| és-o | þóvo | sílar-es | vól-oi. |
| いる-<(重いものが)> | 影<主格> | 月-<属格> | 地面-DAT. |
「月の影が地面にある。」
書物・詩的な場面。þóvo が主語で重性なので、存在動詞 és- は 3人称単数・重性の語尾 -o で受ける。þóvo sílares は「名詞+属格」の名詞句で「月の影」。vóloi は vól の与格で、「地面に」と裸の与格で場所を表す。
wála sílar dórel
読み:ワーラ シーラル ドーレル
| wál-a | sílar | dórel |
| 変わる-<(軽いものが)> | 月<主格> | 明日 |
「明日、月が替わる。」
暦の月が次の月へ移る「替わる」の用法。主語の sílar は軽性なので、動詞は3人称単数軽性の -a をとる。時語の dórel は文末に置ける。
snelérau sílarau un fléurei
読み:スネレーラウ シーララウ ウン フレウレイ
| snelér-au | sílar-au | un | fléur-ei |
| 隠れる-<双数> | 月-<双数> | 中に | 雲-<与格> |
「二つの月が雲に隠れる。」
二つの月について自然に用いられる双数の文。月は星ではないので数えられ、双数にすることもできる。主語・動詞とも双数で一致している。
暦の月
白月の満ち欠けでめぐるひと月。
hóinim du sílarei sé.
読み:ホイニン ドゥ シーラレイ セー。
| hóin-im | du | sílar-ei | sé. |
| 帰る-<私が> | 下手 | 暦の月-<与格> | この<軽性> |
「この月が過ぎたら帰る。」
暦のひと月の意味で使った例。時間を川の流れとして捉えるので、du+与格「〜の下手で」が「〜の後に」の意味になる。
lísa ilanár sílaran ívelan sóndelei.
読み:リーサ イラナール シーララン イーヴェラン ソンデレイ。
| lís-a | ilanár | sílar-an | ível-an | sóndel-ei. |
| 書く-<(軽いものが)> | 星読み<主格> | 暦の月-<対格> | 新しい-<軽性・対格> | 書物-<与格> |
「星読みは新しい月を書物に書き記す。」
暦を司る星の司の記録の言い方。十の灯の昇る日がずれると、星読みが月を一つ足し、それを書き留める。形容詞 ível は sílaran に合わせて、軽性・単数・対格の -an で一致する。
空の月。白月と赤月の二つがある。月は星ではないので、数えても双数にしてもかまわず、二つの月はよく双数 sílarau で言う。白月は暦の基準で祖先のまなざしの象徴、赤月は潮を動かす「下の国の月」とされる。
軽性・子音語幹。対 sílaran、属 sílares、与 sílarei、双 sílarau、複 sílarai。
古高原語 *sílar から
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