an

品詞
前置詞
意味
上手
発音
[an]
読み
アン
分野
時間・空間・方向

意味

  1. 上手へ・上手で

    北・高みの方向。an ilánais「星々へ」、an dúnoi「丘の上に」。

    áura selvá an ilánais.

    読み:アウラ セルヴァー アン イラーナイス。

    áur-aselváanilán-ais
    昇る-<(軽いものが)>息<主格>上手灯-<〜たちを>

    「息は星々のもとへ昇る。」

    selvá は軽性a語幹なので、動詞は軽性の -a をとる。星を数を問わずに総称しているので、複数対格の ilánais を使う。

    aldána aldár áuren an dúnoi.

    読み:アルダーナ アルダール アウレン アン ドゥーノイ。

    aldán-aaldáráur-enandún-oi
    おわす-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>上手丘-<与格>

    「高き座は丘の上におわします。」

    aldán- は「いる」の尊敬の補充形。áuren は軽性・単数・主格の分詞で、一致の語尾はつかない。an+与格で「上手の側で」。

    ésa lóna áuren an pélsei.

    読み:エーサ ローナ アウレン アン ペルセイ。

    és-alónaáur-enanpéls-ei.
    いる-<(軽いものが)>柱の木<主格>昇る-<〜した・〜された>上手脂の木-<与格>

    「柱の木は脂の木より高い。」

    性質の程度がまさるときは「an+与格」(〜の上手に)、劣るときは「du+与格」で比べる。「いちばん高い」は an lónail「柱の木々の上手に」と言う。立っている木なので軽性。下向きの性質(「より重い」)も規則どおり an で言うが、皮肉に響く(本文8節)。

    aurénde selvá! an ilánais.

    読み:アウレンデ セルヴァー!アン イラーナイス。

    aur-énd-eselvá!anilán-ais.
    昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>息<主格>上手灯-<〜たちを>

    「「ごきげんよう(あなたの息が昇りますように)。」「星々へ。」」

    二人の発話(挨拶と返し)。会ったときと別れるときの挨拶。返しは、動詞を省いた前置詞句だけで答える。語尾 -énde が、市で聞く ende と同じ響きなので、尋はここで二つのつながりに気づくかもしれない。

    éso nébro an orénoi, esós na sénimor ilánais.

    読み:エーソ ネーブロ アン オレーノイ、エソース ナ セーニモル イラーナイス。

    és-onébroanorén-oi,esósnasén-imorilán-ais.
    いる-<(重いものが)>霧<主格>上手縁-<与格>だから<〜ない>見る-<我々が>灯-<〜たちを>

    「縁の上手に霧がある。だから、我々には星が見えない。」

    esós「それから(それゆえ)」は理由と結果。es pós「なぜ」と対になる。

    éso ílmo klér an kórvoi.

    読み:エーソ イルモ クレール アン コルヴォイ。

    és-oílmoklérankórv-oi.
    いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい上手倉-<与格>

    「水は倉より冷たい。」

    述語の形容詞のすぐ後ろの an+与格は、比較として読む。

    an kórvoi, éso ílmo klér.

    読み:アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール。

    ankórv-oi,és-oílmoklér.
    上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい

    「倉の北側では、水は冷たい。」

    比較でない場所の an+与格は、動詞の前に出す。

    dúlim an dún.

    読み:ドゥーリン アン ドゥーン。

    dúl-imandún.
    下る-<私が>上手丘<対格>

    「私は丘の北側へ下る。」

    都の言い方。an はいつも北を指すので、北へ下る斜面でも an を使う。森や縁の人は、その場の高さで du dún と言う。

    an kórvoi, pó éso?

    読み:アン コルヴォイ、ポー エーソ?

    ankórv-oi,póés-o?
    上手倉-<与格>何<主格>いる-<(重いものが)>

    「倉の北側には、何があるか。」

    場面の枠(場所)は疑問詞より前に置き、後ろに読点(短い切れ目)を入れる。

    ké an kórvoi, éso ílmo klér?

    読み:ケー アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール?

    kéankórv-oi,és-oílmoklér?
    <〜か>上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい

    「倉の北側では、水は冷たいか。」

    ké は文のいちばん前、そのあとに場面の枠が来る。

    éso ílmo klér ín an kórvoi.

    読み:エーソ イルモ クレール イーン アン コルヴォイ。

    és-oílmoklérínankórv-oi.
    いる-<(重いものが)>水<主格>冷たい一上手倉-<与格>

    「倉の北側に、冷たい水がある。」

    ín「一」を名詞句の終わりに置いて、不定の名詞句を閉じる。閉じたあとの an+与格は比較ではなく場所。

    sán fáronul grómul ín an kórvoi.

    読み:サーン ファーロヌル グロームル イーン アン コルヴォイ。

    sánfáron-ulgróm-ulínankórv-oi.
    いる<彼らが>荷-<〜たちが>重い-<〜たちが>一上手倉-<与格>

    「倉の北側に、重い荷がいくつかある。」

    名詞句の終わりの ín は、複数の名詞句にも使える不定の目印。

    éso ín fáron gróm ín an kórvoi.

    読み:エーソ イーン ファーロン グローン イーン アン コルヴォイ。

    és-oínfárongrómínankórv-oi.
    いる-<(重いものが)>一荷<主格>重い一上手倉-<与格>

    「倉の北側に、重い荷が一つある。」

    名詞の前の ín は数の「一つの」、名詞句の終わりの ín は不定の「ある」。二つ並べてよい。

    ké an kórvoi, éso ílmo klér? éso.

    読み:ケー アン コルヴォイ、エーソ イルモ クレール?エーソ。

    kéankórv-oi,és-oílmoklér?és-o.
    <〜か>上手倉-<与格>いる-<(重いものが)>水<主格>冷たいいる-<(重いものが)>

    「「倉の北側では、水は冷たいか」「冷たい」」

    答えの形では、場面の枠も問いに出た語として省ける。

    an nébros, na tóra orenvandár.

    読み:アン ネーブロス、ナ トーラ オレンヴァンダール。

    annébr-os,natór-aorenvandár.
    上手霧-<属格><〜ない>来る-<(軽いものが)>縁商人<主格>

    「霧の季節が来て以来、縁商人は来ない。」

    an+属格「〜の上手から」は、時の名詞では「〜以来」。時の句は場面の枠に置く。

    anórel, an kórvoi, léisin sáindaran, méira lisár élan senárei.

    読み:アノーレル、アン コルヴォイ、レーシン サインダラン、メーラ リサール エーラン セナーレイ。

    anórel,ankórv-oi,léis-insáindar-an,méir-alis-árél-ansen-ár-ei.
    昨日上手倉-<与格>書く<〜し終えた>-<〜して・〜く>証文-<対格>与える-<(軽いものが)>書く-<〜する人><3人称単数・軽性>-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

    「昨日、倉の北側で、証文を書き終えて、書記はそれを目付に渡した。」

    場面の枠は「時 → 場所 → -in の句」の順。それぞれ読点で区切る。「それを」は軽性の証文を受けるので élan。

    áurau sílarau an ilánais.

    読み:アウラウ シーララウ アン イラーナイス。

    áur-ausílar-auanilán-ais.
    昇る-<双数>月-<双数>上手灯-<〜たちを>

    「二つの月が、星々のほうへ昇る。」

    都の言葉。双数の主語には双数の動詞。

    éso nébro an sílarail.

    読み:エーソ ネーブロ アン シーラライル。

    és-onébroansílar-ail.
    いる-<(重いものが)>霧<主格>上手月-<〜らに>

    「二つの月の上手(北側)に霧がある。」

    前置詞の後ろの双数は、都でも複数の形で代える(双数の属格と与格は同じ形で、前置詞の意味が決まらないため)。

    drénim an dún sórel.

    読み:ドレーニン アン ドゥーン ソーレル。

    drén-imandúnsórel.
    参る-<私が>上手王の丘<対格>今日

    「今日、王の丘へ参ります。」

    an+対格で「上手へ」。王の丘へ行くときは、行き先の主が高い方なので、「行く」の謙譲の補充形 drén-「参る」を使う。重性名詞なので、対格は主格と同じ形 dún。

    lóima lourvirár þeláis an fóndaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アン フォンダロス。

    lóim-alourvirárþel-áisanfóndar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>上手源-<属格>

    「系譜読みは、始祖から一瀬ずつ名を唱えていく。」

    婚姻の取り決めや祖先祀りで、系譜読みが家系を唱える場面を述べる文。系譜を言うときは「an fóndaros(源から)」を前に置くのが改まった言い方。この an は、流れの上手(始祖)から下っていく向きを表す。

    ké éses an fóndaros ráimaros? ésim.

    読み:ケー エーセス アン フォンダロス ライマロス?エーシン。

    kéés-esanfóndar-osráimar-os?és-im.
    <〜か>いる-<あなたが>上手源-<属格>ライマル-<属格>いる-<私が>

    「「お前はライマルの源の流れか?」「そうだ。」」

    二人の発話。同じ段か目下の相手に、どの家系の者かを尋ねている。ké と2人称を使っているので、目上の人には使えない。高原語には「はい」にあたる語がないので、動詞を1人称に言い換えて ésim と答える。氏族の名 ráimar は重性で、属格 ráimaros の形で fóndar の後ろに置く。

    ésa sélvan dúlen dáumbar lóurul an fóndaros ráimaros.

    読み:エーサ セルヴァン ドゥーレン ダウンバル ロールル アン フォンダロス ライマロス。

    és-asélvandúl-endáumbarlóur-ulanfóndar-osráimar-os.
    いる-<(軽いものが)>セルヴァン<主格>下る-<〜した・〜された>二十瀬-<〜たちを>上手源-<属格>ライマル-<属格>

    「セルヴァンは、ライマルの源から二十瀬下った者である。」

    ある人の世代を、第三者として述べる改まった文。序数を使わず、「分詞 dúlen+数詞+瀬の複数対格(道のりの対格)」で言う。分詞は主語 sélvan(軽性・単数・主格)に一致するので、語尾がつかない。瀬の数が多いのは誉れとされる。

    dúla ilána an álmarei!

    読み:ドゥーラ イラーナ アン アルマレイ!

    dúl-ailánaanálmar-ei!
    下る-<(軽いものが)>星<主格>上手白月-<与格>

    「白月の上手で、星が流れた!」

    流れ星は「星が下りる」と言う。上から何かが下りてくるしるしとして警戒される。星の位置は指さずに、「an+与格」で白月との位置関係として言う。時制がないので、「流れる」とも「流れた」とも訳せる。

    áura ilána ráimaros an álmarei.

    読み:アウラ イラーナ ライマロス アン アルマレイ。

    áur-ailánaráimar-osanálmar-ei.
    昇る-<(軽いものが)>祖先の星<主格>ライマル-<属格>上手白月-<与格>

    「ライマルの星が、白月の上手に昇る。」

    祖先の星は、単数の ilána の後ろに祖先の名を属格で添えて呼ぶ(名前のある一つの星なので、単数で指してよい)。星の位置は指さずに、「an+与格」で白月との位置関係として言う。系譜読みや星読みが、夜の時刻や祖先の祀りについて語るときの言い方。

    tóro nébro an orén.

    読み:トーロ ネーブロ アン オレーン。

    tór-onébroanorén.
    来る-<(重いものが)>霧<主格>上手縁<対格>

    「霧が縁へ這い上がってくる。」

    霧期の始まりを言う文。nébro「霧」は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「an+対格」で「上手へ」。orén は重性子音語幹なので、対格は主格と同じ形になる。霧は下の国から崖を上ってくる「下の国の息」とされる。

    mé kelésa gandér an loiméi.

    読み:メー ケレーサ ガンデール アン ロイメー。

    mékel-és-agandéranloim-éi.
    <禁止・願いの打ち消し>伐る-<〜すべし>-<(軽いものが)>硬木<対格>上手詞-<与格>

    「詞を唱える前に、硬木を伐らぬこと。」

    降ろし場の碑や森の司の定めに見える、当為法の禁止。主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、軽性の形 -a をとる。an+与格は時間の「〜の前に」。生えている硬木も重性なので、対格は主格と同じ gandér になる。

    sén! áura aurá an élvaran.

    読み:セーン!アウラ アウラー アン エルヴァラン。

    sén!áur-aauráanélvar-an.
    見る<命令法><あなたが>昇る-<(軽いものが)>縁鷲<主格>上手天-<対格>

    「見ろ、縁鷲が天へ昇っていく。」

    縁の肩で、崖からの吹き上げに乗る鷲を見て言う言葉。áura「昇る」と aurá「縁鷲(もとは昇るもの)」は、強勢の位置だけが違う。日本語話者には同じに聞こえやすい。

    lóima lourvirár lóurul némores an fóndaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール ロールル ネーモレス アン フォンダロス。

    lóim-alourvirárlóur-ulnémor-esanfóndar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>瀬-<〜たちを><我々>-<属格>上手源-<属格>

    「系譜読みは、源からの我らの世代を唱える。」

    婚姻や祖先祀りの場で、家の系譜読みが系譜を唱えるようすを言う文。an+属格は「上手から」の意味になり、an fóndaros で「源から」。世代を言うときは、このように源を起点にする。系譜読みは年長の女性で、軽性なので動詞は -a をとる。

    dúlim dáumbar téir lóurul an fóndaros ráimaros.

    読み:ドゥーリン ダウンバル テール ロールル アン フォンダロス ライマロス。

    dúl-imdáumbartéirlóur-ulanfóndar-osráimar-os.
    下る-<私が>二十三世代-<〜たちを>上手源-<属格>ライマル-<属格>

    「私はライマルの源から二十三瀬下った者だ。」

    自分の世代を言う、ふつうの話し方の文。改まった名乗りでは謙譲の動詞と分詞 dúlenan を使うが、ここでは直説法の動詞 dúlim を使う。lóurul は道のりの対格で、「何世代下ったか」を表す。身分の段 þrén と語が違うので、世代の話だとすぐにわかる。

    gélimor an dún sórel.

    読み:ゲーリモル アン ドゥーン ソーレル。

    gél-imorandúnsórel.
    行く-<我々が>上手へ・上手で丘<対格>今日

    「今日、我々は丘へ上がる。」

    an+対格で、上手(北・高み)への移動を表す。gél-「行く」自体は上下を言わないので、方向は前置詞で決まる。dún は重性なので、対格は主格と同じ形。an は強勢をもたず、次の語に寄りかかって発音される。

    mé hél an aulisárei!

    読み:メー ヘール アン アウリサーレイ!

    méhélanau-lis-ár-ei!
    <禁止・願いの打ち消し>座る<命令法><あなたが>上手へ・上手で<お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

    「書記の方の上手の側に座るな。」

    作法を教えるときの禁止。an+与格で「〜の上手の側で」という場所を表す。炉や座敷の北側(上手)は上座なので、目上の人より上手に座るのは無礼にあたる。禁止は mé+命令法で言う。

    na gélimor an dún es fáronos.

    読み:ナ ゲーリモル アン ドゥーン エス ファーロノス。

    nagél-imorandúnesfáron-os.
    <〜ない>行く-<我々が>上手へ・上手で丘<対格>〜のゆえに荷-<属格>

    「荷があるので、我々は丘へは上がらない。」

    es+属格で理由を表す。高原語では理由を「出どころ」と考えるので、es+属格は「〜から」とも「〜のゆえに」とも読め、どちらの意味かは文脈で決まる。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。

    éso gandér só gróm an gandéruls.

    読み:エーソ ガンデール ソー グローン アン ガンデールルス。

    és-ogandérsógrómangandér-uls.
    いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>重い上手硬木-<〜らに>

    「この硬木は、硬木のなかでもいちばん重い。」

    最上級は「an+同じ仲間の複数与格」で言う。下向きの性質を an で比べると皮肉に聞こえやすいが、硬木にとって重さは成就のしるしなので、樵や森の司はこの言い方を誇らしげに使う。

    an pó fleiréla aurél?

    読み:アン ポー フレイレーラ アウレール?

    anpófleir-él-aaurél?
    上手どこ<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)>あの方

    「あの方は、上手のどちらへお出ましになるのでしょうか。」

    目上の人の行き先を尋ねる、上向きの問い。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、an pó「上手のどこへ」と前置詞句ごと文頭に出す。ké は使わず、推量法で推し量る形にする。fléir- は「行く」の尊敬の補充形で、強勢は推量法の -él- に移る。

    fléira aurél an dún.

    読み:フレーラ アウレール アン ドゥーン。

    fléir-aaurélandún.
    お出ましになる-<(軽いものが)>あの方<主格>上手丘<対格>

    「あの方は丘の上へお出ましになる。」

    目上の人の行き先を、同じ段の聞き手に伝える日常の文。aurél は él に尊敬の au- がついた語で、母音の前なので aur- の形になる。動詞にも「行く」の尊敬の補充形 fléir- を使い、主語と動詞の両方で相手を高めている。動詞は3人称単数・軽性。dún は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

    tóra faronár an séndo es orénos.

    読み:トーラ ファロナール アン センド エス オレーノス。

    tór-afaronáranséndoesorén-os.
    来る-<(軽いものが)>運び人<主格>上手ここ<対格>から縁-<属格>

    「運び人が縁からここへ上ってくる。」

    道筋を言う文。行き先は an+対格で「上手のここへ」と、高さを決めて言う。出どころは、方向を問わない es に属格を組み合わせて言う。時制がないので「上ってくる」とも「上ってきた」とも訳せる。

    tór an téndo, faronár.

    読み:トール アン テンド、ファロナール。

    tóranténdo,faronár.
    来る<命令法><あなたが>上手あそこ<対格>運び人

    「あそこへ上って来い、運び人。」

    下向きの命令。命令法2人称単数は、語幹をそのまま使う。行き先は an+対格で「上手のあそこへ」と言う。相手への呼びかけには呼格を使わず、役職名を文末に読点で区切って添える。

    dúlau dáun an ín fóndaros.

    読み:ドゥーラウ ダウン アン イーン フォンダロス。

    dúl-audáunanínfóndar-os.
    下る-<双数>二人上手同じ源-<属格>

    「二人は同じ源から流れ下っている(同じ流れの者だ)。」

    系譜読みが婚姻や相続の場で使う言い方。ín は「一つの」から転じて「同じ」の意味になる。an+属格で「上手から」。主語が双数の代名詞 dáun なので、動詞も双数になる。

    léim senó an orén!

    読み:レーン セノー アン オレーン!

    léimsenóanorén!
    置く<命令法><あなたが>見張り<対格>上手縁<対格>

    「縁の上手へ見張りを置け。」

    崖の縁の番について言う下向きの命令。見張りの意味の senó は、人そのものではなく「見張る役目」として扱うので、重性のままで使う。見張る人個人を指すときは senár を使うのがふつうである。an+対格は「〜の上手へ」。

    auelénde torár an hóum.

    読み:アウエレンデ トラール アン ホーン。

    au-el-énd-etoráranhóum.
    <お〜になる・御〜>-座る-<〜しますように>-<(軽いものが)>客<主格>上手炉<対格>

    「お客人には、炉の上手へお座りいただきたく存じます。」

    家の主が客を上座へ招く、改まった言い方。炉の北側(上手)が一段高い上座なので、an+対格の an hóum「炉の上手へ」で上座を指す。hóum は重性なので、対格も主格と同じ形になる。尊敬の接頭辞 au- が h で始まる語根につくと、h が落ちる(au-hél- → auél-)。目上の客には2人称を使わず、願望法の3人称で頼む。

    lúin áura ilána an álmarei, laméra ilanár.

    読み:ルーイン アウラ イラーナ アン アルマレイ、ラメーラ イラナール。

    lúináur-ailánaanálmar-ei,lamér-ailanár.
    とき昇る-<(軽いものが)>灯<主格>上手白月-<与格>掌を差し上げる-<(軽いものが)>星読み<主格>

    「白月の上手に灯が昇ると、星読みは掌を差し上げる。」

    星の司の記録の文体。星の位置は、an álmarei「白月の上手に」のように、ほかの天体との関係で言う。指さす代わりに掌を差し上げて示す。名前のある一つの星は、単数の ilána で指せる。

    lóima lourvirár ráun némores an fóndaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール ラウン ネーモレス アン フォンダロス。

    lóim-alourvirárráunném-or-esanfóndar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>流れ<対格>1-<〜ら(古い母音交替)>-<属格>上手源-<属格>

    「系譜読みが、我々の流れを源から唱える。」

    祖先祀りや婚姻の場で、系譜読みが家系を一瀬ずつ唱えることを言う文。ráun は重性の子音語幹なので、主格と対格が同じ形になる。an+属格は「上手から」で、源から下へたどる向きを表す。

    lóima lourvirár þeláis aursárar an fóndaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル アン フォンダロス。

    lóim-alourvirárþel-áisaursár-aranfóndar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>上手源-<属格>

    「系譜読みは、源から祖先たちの名を唱えていく。」

    婚姻の取り決めや祖先祀りで、系譜を読み上げる場面を言う文。lourvirár は lóur「瀬」+vír-「言う」+-ár「〜する人」からできた語で、軽性の子音語幹。an+属格で「上手から」。系譜は源から一瀬ずつ下へ向かって唱えるので、起点を an fóndaros で示す。

    áura aurá an gráun orénos.

    読み:アウラ アウラー アン グラウン オレーノス。

    áur-aauráangráunorén-os.
    昇る-<(軽いものが)>縁鷲<主格>上手上端<対格>縁-<属格>

    「縁鷲が崖のてっぺんへ昇っていく。」

    gráun はここでは、崖のいちばん上の端を指す。「an+対格」で「上手へ」の意味になる。áura「昇る」と aurá「縁鷲」は、強勢の位置だけで区別される。重性の gráun は、対格でも語尾がつかない。

    toréndes an gráun dúnos, séirim tásan.

    読み:トレンデス アン グラウン ドゥーノス、セーリン ターサン。

    tor-énd-esangráundún-os,séir-imtás-an.
    来る-<〜しますように>-<あなたが>上手上端<対格>丘-<属格>待つ-<私が><あなた>-<対格>

    「丘のてっぺんまで来てくれないか。待っているから。」

    同じ段の者どうしの約束の言い方。同じ段の相手なので、命令法ではなく願望法の2人称を使う。gráun に丘 dún の属格を添えて、「丘のてっぺん」と言う。坂の多い都では、待ち合わせの場所によく使われる言い方である。

    lúin áura endríña an þráin, léuna aursárail.

    読み:ルーイン アウラ エンドリーニャ アン スライン、レウナ アウルサーライル。

    lúináur-aendríñaanþráin,léun-aaursár-ail.
    とき昇る-<(軽いものが)>未成年の者<主格>上手峰<対格>申す-<(軽いものが)>祖先-<〜らに>

    「未成年の者は峰に登ると、祖先に言葉を申し上げる。」

    成人の儀の次第を述べる書き言葉の文。主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から、lúin の節と同じ者が主語だとわかる。祖先に向けた言葉なので、謙譲の補充形 léun- を使う。この儀を終えると成名が与えられ、endríña ではなくなる。

    mé mán an ólmarei!

    読み:メー マーン アン オルマレイ!

    mémánanólmar-ei!
    <禁止・願いの打ち消し>食べる<命令法><あなたが>上手年長者-<与格>

    「年長者より先に食べるな。」

    食事のとき、親が子どもをたしなめる言い方。年長の者、段の高い者が先に箸をつけるのが作法である。禁止は mé+命令法。an+与格は、時の上では「〜の前に」の意味になる。

    lúin ráumimor an dún, ráuma ólmar an némorei.

    読み:ルーイン ラウミモル アン ドゥーン、ラウマ オルマル アン ネーモレイ。

    lúinráum-imorandún,ráum-aólmarannémor-ei.
    とき歩く-<我々が>上手丘<対格>歩く-<(軽いものが)>年長者<主格>上手<我々>-<与格>

    「丘を上るときは、年長者が我々の上手を歩く。」

    坂道の作法を説明する文。坂を上るときは目上の者が先(上の位置)を歩き、下るときは目下の者が先を歩く。lúin の節は主節の前に置く。an+対格の an dún は「丘の上手へ」、an+与格の an némorei は「我々の上手の側で」。

    hoinéndes an dún, séulin.

    読み:ホイネンデス アン ドゥーン、セウリン。

    hoin-énd-esandún,séulin.
    帰る-<〜しますように>-<あなたが>上手丘<対格>友

    「丘の上へ帰ってくれよ、友よ。」

    同じ段の友に向けた「並び」の依頼。並びの話し方では、命令法ではなく願望法の2人称を使う。an+対格で「上手へ」。dún は重性なので、対格も主格と同じ形。日常では呼格を使わず、呼びかけの名詞を文末に読点で区切って添える。

    áura álmar an dún.

    読み:アウラ アルマル アン ドゥーン。

    áur-aálmarandún.
    昇る-<(軽いものが)>白月<主格>上手丘<対格>

    「白月が丘の上手へ昇る。」

    年代記や暦の記事にあるような、直説法だけの簡潔な文。白月は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。an+対格で「上手へ」。重性の dún「丘」は、対格でも主格と同じ形になる。白月は暦の基準になる月で、祖先のまなざしの象徴とされる。

    áura aurá an élvaran.

    読み:アウラ アウラー アン エルヴァラン。

    áur-aauráanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>縁鷲<主格>上手天-<対格>

    「縁鷲が天へ昇っていく。」

    崖から吹き上がる風に乗って鷲が昇るのを見たときの、ごく日常的な言い方。élvar は軽性の子音語幹(aldár と同じ型)で、an+対格で「天へ」の意味になる。

    aurénde selvá élaures an élvaran.

    読み:アウレンデ セルヴァー エーラウレス アン エルヴァラン。

    aur-énd-eselváélaur-esanélvar-an.
    昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>息<主格>昇りゆく人-<属格>上手天-<対格>

    「昇りゆく人の息が、天へ昇りますように。」

    火葬の場で唱える送りの詞の一句。死後一年は名前を口にしないので、死者は élaur「昇りゆく人」と言い表す。願望法の3人称単数・軽性の語尾は -e になる。an+対格で「上手へ」。

    hóina selvá an élvaran, an aursárais.

    読み:ホイナ セルヴァー アン エルヴァラン、アン アウルサーライス。

    hóin-aselváanélvar-an,anaursár-ais.
    帰る-<(軽いものが)>息<主格>上手天-<対格>上手祖先-<〜たちを>

    「息は天へ、祖先たちのもとへ帰っていく。」

    死と魂についての教えを説く書物によく出る文。前置詞句を二つ並べて、天と祖先が同じ場所であることを示している。魂が天へ行くことを、「行く」ではなく hóin-「帰る」で言うのが決まった言い方である。

    an éndrail snélo, du aursárail fléura.

    読み:アン エンドライル スネーロ、ドゥ アウルサーライル フレウラ。

    anéndr-ailsnélo,duaursár-ailfléura.
    上手人-<〜らに>屋根<主格>下手祖先-<〜らに>天の屋根<主格>

    「人の上には家の屋根、祖先の下には天の屋根。」

    雨期の詩合わせでよく引かれる、動詞のない詩句。an と du、家の屋根(重性の snélo)と天の屋根(軽性の fléura)を対にしている。人は家の屋根の下に、祖先は天の屋根の上にいる、という縦の並びを詠んでいる。

    an élvares réina, es dáloros sáko.

    読み:アン エルヴァレス レーナ、エス ダーロロス サーコ。

    anélvar-esréina,esdálor-ossáko.
    上手天-<属格>上からの恵み<主格>から下の国-<属格>塩<主格>

    「上からは雨の恵み、下からは塩。」

    動詞のない諺。天からの恵み(軽性の réina)と、下の国から来る塩(重性の sáko)を対にしている。塩をありがたがりながらも少し後ろめたく思う、という気持ちを表す。an+属格は「上手から」の意味になる。

    áura aurléuma es orénos, auríþa nébro an élvaran.

    読み:アウラ アウルレウマ エス オレーノス、アウリーサ ネーブロ アン エルヴァラン。

    áur-aaurléumaesorén-os,aur-íþ-anébroanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>昇る風<主格>から縁-<属格>昇る-<〜させる>-<(軽いものが)>霧<対格>上手天-<対格>

    「昇る風は縁から昇り、霧を天へと持ち上げる。」

    雨期の天気のしくみを説明する、書物風の文。an+対格で「上手へ」、つまり天のほうへ向かうことを表す。霧は昇る風に天まで引き上げられると、上に属する清い雲に変わると考えられている。地を這う霧(重性)が自分から雲になるわけではなく、昇る風に引き上げられて初めて雲になる、という見方である。

    dúla dulána an álmarei, émbela aldár áuren.

    読み:ドゥーラ ドゥラーナ アン アルマレイ、エンベラ アルダール アウレン。

    dúl-adulánaanálmar-ei,émbel-aaldáráur-en.
    下る-<(軽いものが)>流れ星<主格>上手白月-<与格>祀る-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>

    「白月の上手に流れ星が下る。高き座が祀りを行う。」

    年代記の流れ星の項の書き方。年代記は直説法の短い文を並べ、主節のあいだには区切りの印を打つ。星の位置は指さしの代わりに、an álmarei「白月の上手に」のように月との位置関係で示す。時制の語形はないので、過去の出来事でも直説法の形のままで書く。王は総称の aldár áuren「高き座」で書く。

    ráumimor an þráin dórel.

    読み:ラウミモル アン スライン ドーレル。

    ráum-imoranþráindórel.
    歩く-<我々が>上手峰<対格>明日

    「明日、我々は峰へ登る。」

    高原語の移動の表現では、上るか下るかをかならず言い分ける。峰へ行くときは an+対格「上手へ」を使う。þráin は重性の子音語幹なので、対格は主格と同じ形になる。時制がないので、未来のことは dórel「明日」で示す。

    fléira aldár áuren an þráinul.

    読み:フレーラ アルダール アウレン アン スライヌル。

    fléir-aaldáráur-enanþráin-ul.
    お出ましになる-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>上手峰-<〜たちを>

    「高き座が北の高みへお出ましになる。」

    王家の聖地や納骨所のある北の高みへの行幸を言う文。峰の複数 þráinul が「北の高み(峰々の連なり)」を表す。an+対格で「上手へ」。重性の複数は主格も対格も -ul。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。

    áura hervíña an dún.

    読み:アウラ ヘルヴィーニャ アン ドゥーン。

    áur-ahervíñaandún.
    昇る-<(軽いものが)>小鹿<主格>上手丘<対格>

    「小鹿が丘を駆け上がっていく。」

    森の村の日常の文。hervíña は hérvan「大鹿」に指小辞 -íña がついた軽性の a 語幹で、森の民が狩る小型の鹿を広く指す。獣は軽性なので、動詞は -a をとる。an+対格で「上手へ」。dún は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

    ái, ésa tókal an lónei sé.

    読み:アイ、エーサ トーカル アン ローネイ セー。

    ái,és-atókalanlón-eisé
    おやいる-<(軽いものが)>きつつき<主格>上手柱の木-<与格>この<軽性>

    「おや、この柱の木の上のほうにきつつきがいる。」

    森の中でふと口にするひとこと。「〜がいる」は「és-+主語+場所」の形で言う。an+与格は「〜の上手で」という意味で、ここでは木の上のほうの位置を表す。生えている柱の木は軽性なので、与格の語尾は -ei、指示詞は軽性の sé になる。指示詞は格によって形が変わらない。きつつきは、木の中が空洞か詰まっているかを知る鳥とされている。

    áura árnel an élvaran.

    読み:アウラ アルネル アン エルヴァラン。

    áur-aárnelanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>木<主格>上手天-<対格>

    「木は天へ向かって伸びる。」

    生えている木は上へ伸びるものなので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。木が下と上をつなぐ、という考え方を表す格言風の文。an+対格で「上手へ」。

    mé hél an ólmarei!

    読み:メー ヘール アン オルマレイ!

    méhélanólmar-ei!
    <禁止・願いの打ち消し>座る<命令法><あなたが>上手年長者-<与格>

    「年長者より上手に座るな。」

    子どもや目下の者をたしなめるときの禁止の言い方で、mé+命令法の形。an+与格は「〜の上手で」を表す。目上の人より高いところ、北側の座に座るのは無礼とされる。

    héla lisár an kelárei.

    読み:ヘーラ リサール アン ケラーレイ。

    hél-alis-árankel-ár-ei.
    座る-<(軽いものが)>書く-<〜する人>上手伐る-<〜する人>-<与格>

    「書記は樵の上手に座る。」

    an+与格で「〜の上手(北側)で」。家でも宮廷でも北側の高い座が上座なので、段の高い書記(四段下り)が樵(八段下り)の上手に座る。

    drenéim an kórvo dórel, ré duliséndim sáindaran.

    読み:ドレネーン アン コルヴォ ドーレル、レー ドゥリセンディン サインダラン。

    dren-é-imankórvodórel,rédu-lis-énd-imsáindar-an.
    伺う-<〜だろう>-<私が>上手倉<対格>明日<〜と(節)><〜させていただく>-書く-<〜しますように>-<私が>証文-<対格>

    「明日、証文を書かせていただくため、倉へ伺うつもりでございます。」

    改まった手紙で、訪ねることを予告する言い方。推量法の -él- は1人称単数の語尾の前で l が落ちて -é- になり、drenéim「伺うつもりでございます」となる。目的は「ré+願望法」で表し、謙譲の du- も添える。

    dufaronérim aufáron aulisáres an dún.

    読み:ドゥファロネーリン アウファーロン アウリサーレス アン ドゥーン。

    du-faronér-imau-fáronau-lis-ár-esandún.
    <〜させていただく>-運ぶ-<私が><お〜になる・御〜>-荷<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>上手丘<対格>

    「「書記の方のお荷物を、丘の上まで運ばせていただきます。」」

    自分の行いを謙譲の接頭辞 du- で低め、荷の持ち主を au- のついた属格 aulisáres で高めている。f- の前の du- は形が変わらない。an+対格は「上手へ」で、湖都の坂道では丘の上へ向かうことを表す。

    mé þór an aulisárei!

    読み:メー ソール アン アウリサーレイ!

    méþóranau-lis-ár-ei!
    <禁止・願いの打ち消し>立つ<命令法><あなたが>上手<お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

    「書記の方より高い所に立ってはならぬ。」

    禁止は mé+命令法で言う。an+与格は文字どおりには「〜の上手に」で、ここでは目上の人より高い位置を指す。目上の人より高い所に立つのは禁忌であり、子どもや目下の者へのしつけの言葉としてよく使われる。

    lúin élþa virá lísen, áura an élvaran.

    読み:ルーイン エルサ ヴィラー リーセン、アウラ アン エルヴァラン。

    lúinélþ-avirálís-en,áur-aanélvar-an.
    とき燃える-<(軽いものが)>言葉<主格>書く-<〜した・〜された>昇る-<(軽いものが)>上手天-<対格>

    「書かれた言葉は燃えると、天へ昇っていく。」

    願いごとを書いた紙を燃やして祖先に届ける習わしを言う、儀礼の場の文。lísen は virá(軽性・単数・主格)に一致する分詞で、一致の語尾はつかない。後半の主語は省かれているが、動詞の語尾から前半と同じ「言葉」だとわかる。lúin の節は主節の前に置き、an+対格で「上手へ」と言う。

    áura tíula kumbóros an élvaran.

    読み:アウラ ティーウラ クンボーロス アン エルヴァラン。

    áur-atíulakumbór-osanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>音<主格>青銅-<属格>上手天-<対格>

    「青銅の音は天へ昇る。」

    祭祀や鈴の護符について言う決まり文句。音は「上へ昇る軽いもの」なので tíula は軽性で、動詞も -a をとる。青銅 kumbór は重性なので、属格は -os になる。an+対格で「上手へ」。

    éso gandér só mór an gandéruls.

    読み:エーソ ガンデール ソー モール アン ガンデールルス。

    és-ogandérsómórangandér-uls.
    いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>大きい上手硬木-<〜らに>

    「この硬木は、硬木の中でいちばん大きい。」

    「いちばん〜」は、an に同じ仲間の複数与格を続けて言う。森の司の検め役や樵が、丸太を見比べるときの言い方。

    lóima lourvirár lóurul an fóndaros ráimaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール ロールル アン フォンダロス ライマロス。

    lóim-alourvirárlóur-ulanfóndar-osráimar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>瀬-<〜たちを>上手源-<属格>ライマル-<属格>

    「系譜読みが、ライマルの源から一瀬ずつ系譜を唱える。」

    婚姻の取り決めの場面。lóurul は重性の複数対格で、唱える世代の連なりを目的語にしている。系譜は十拍の韻律に乗せて唱える。

    ansóina lourvirár þeláis aursárar an fóndaros.

    読み:アンソイナ ロウルヴィラール セライス アウルサーラル アン フォンダロス。

    ansóin-alourvirárþel-áisaursár-aranfóndar-os.
    覚えている<〜し終えた>-<(軽いものが)>系譜読み<主格>名前-<〜たちを>祖先-<〜らの>上手源-<属格>

    「「系譜読みは、源から続く祖先たちの名を覚えている。」」

    ansén- は「思い出す」のほか、「記憶にとどめている」という状態も表す。時制がないので、未完了の形のままで、いつも覚えているという意味になる。系譜読みの務めを説明する文。

    éso gandér krán an flaindélei, na tílim gandér.

    読み:エーソ ガンデール クラーン アン フラインデーレイ、ナ ティーリン ガンデール。

    és-ogandérkránanflaindél-ei,natíl-imgandér.
    いる-<(重いものが)>硬木<主格>硬い上手版の木-<与格><〜ない>彫る-<私が>硬木<対格>

    「硬木は版の木より硬い。硬木は彫らない。」

    彫り師の言葉。性質の程度がまさることは「an+与格」(〜の上手に)で言う。主語の gandér は重性なので、繋辞は és-o になり、形容詞 krán も重性・主格の形(語尾なし)になる。後半の gandér は目的語で、重性なので主格と同じ形。硬木を彫らないのは、硬すぎるからでもあり、禁忌だからでもある。

    þóro kéumo kéum an árnelei.

    読み:ソーロ ケウモ ケウン アン アルネレイ。

    þór-okéumokéumanárnel-ei.
    立つ-<(重いものが)>碑<主格>灰色の上手木-<与格>

    「木の上手(北側)に灰色の碑が立っている。」

    碑は灰色の硬い石で作られる。an+与格で「〜の上手の側で」、つまり北側を表す。kéumo「碑」と kéum「灰色の」は音が似ているが別の語で、碑は重性o語幹。

    éso lóur só þáil, an þráinos tóro.

    読み:エーソ ロール ソー サイル、アン スライノス トーロ。

    és-olóursóþáil,anþráin-ostór-o.
    いる-<(重いものが)>瀬<主格>この<重性>澄んだ上手峰-<属格>来る-<(重いものが)>

    「この瀬は澄んでいる。峰の方から流れてくる水だ。」

    水の澄み方を言う用法。瀬 lóur は重性なので、繋辞は éiso、形容詞は重性の主格(語尾なし)。重性の指示詞 só が主語の名詞句の終わりを示す。後半は an+属格で「上手から」を表し、主語は前半と同じ瀬。北の高みから来る水ほど清いとされる。

    áura elþá aursáres an élvaran.

    読み:アウラ エルサー アウルサーレス アン エルヴァラン。

    áur-aelþáaursár-esanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>火<主格>祖先-<属格>上手天-<対格>

    「祖先の火(星)が天へ昇っていく。」

    詩の一句。星を、昇っていった祖先の炉の火とみて elþá と言う。一つの祖先の火を指しているので単数で、数詞はつけない。an+対格で「上手へ」。

    drénim an brándalan.

    読み:ドレーニン アン ブランダラン。

    drén-imanbrándal-an.
    参る-<私が>上手司-<対格>

    「(丘の上手の)司のもとへ参ります。」

    改まった場の、へりくだった言い方。「行く」の謙譲の補充形 drén- を使う。都の役所は丘の上手にあるので、an+対格「上手へ」で言う。

    áura aurvirá an aursárais.

    読み:アウラ アウルヴィラー アン アウルサーライス。

    áur-aaurviráanaursár-ais.
    昇る-<(軽いものが)>祈り<主格>上手祖先-<〜たちを>

    「祈りは祖先のもとへ昇る。」

    祈りについての決まった言い方で、葬送や祭祀の場で唱える。aurvirá は言葉に属するので軽性になり、動詞は軽性の -a をとる。an+対格で「上手へ」。

    élþa aurvirá, áura virá an aursárais.

    読み:エルサ アウルヴィラー、アウラ ヴィラー アン アウルサーライス。

    élþ-aaurvirá,áur-aviráanaursár-ais.
    燃える-<(軽いものが)>祈りの紙<主格>昇る-<(軽いものが)>言葉<主格>上手祖先-<〜たちを>

    「祈りの紙が燃え、その言葉は祖先のもとへ昇っていく。」

    願いを書いた紙を燃やす習わしを述べる文。紙は言葉を載せて昇るものなので軽性で、動詞は軽性の -a をとる。動詞で始まる節を二つ、読点で区切って並べている。

    léima ráuvan gleinó an dún.

    読み:レーマ ラウヴァン グレイノー アン ドゥーン。

    léim-aráuvangleinóandún.
    置く-<(軽いものが)>森の巫<主格>境石<対格>上手丘<対格>

    「森の巫が、丘の上手へ境石を据える。」

    境を定める儀式を述べる文。an+対格で「上手へ」。重性の dún は、対格も主格と同じ形になる。

    léimimor kréinul an kreinándo.

    読み:レーミモル クレーヌル アン クレイナンド。

    léim-imorkréin-ulankreinándo.
    置く-<我々が>骨-<〜たちを>上手納骨所<対格>

    「我らは骨を上の納骨所へ納める。」

    火葬のあと、骨を氏族の納骨所に収めるときの言い方。kreinándo は kréin「骨」に場所名詞の -ándo がついた重性の o 語幹で、主格と対格が同じ形になる。納骨所は北の高みや丘の上にあるので、an+対格「上手へ」で言う。骨は谷底や崖の下には決して埋めない。

    áura þondá némes an élvaran.

    読み:アウラ ソンダー ネーメス アン エルヴァラン。

    áur-aþondáném-esanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>誓い<主格><私>-<属格>上手天-<対格>

    「私の誓いは天へ昇る。」

    星の見える晴れた夜に、改まった誓いを立てるときの言葉。誓いは息なので軽いもので、上へ昇って祖先に届くと考えられている。þondá は軽性なので、動詞は -a で一致する。

    áura hóurna an élvaran, sáilimor.

    読み:アウラ ホールナ アン エルヴァラン、サイリモル。

    áur-ahóurnaanélvar-an,sáil-imor.
    昇る-<(軽いものが)>送りの煙<主格>上手天-<対格>喜ぶ-<我々が>

    「送りの煙が天へ昇っていく。我らは喜ぶ。」

    火葬に立ち会う人々の言葉。煙がまっすぐ高く昇るほど、魂がよく昇ったとされる。煙は軽いものなので、動詞は軽性の -a で一致する。

    lúin gélim an kreinándo, áura mélna némes an aursárais.

    読み:ルーイン ゲーリン アン クレイナンド、アウラ メルナ ネーメス アン アウルサーライス。

    lúingél-imankreinándo,áur-amélnaném-esanaursár-ais.
    とき行く-<私が>上手納骨所<対格>昇る-<(軽いものが)>詩<主格><私>-<属格>上手祖先-<〜たちを>

    「納骨所へ上るときには、私の詩が祖先の方々のもとへ昇っていく。」

    成人の儀や祖先祀りで聖地に登る人の言葉。移動の動詞 gél- には方向の前置詞をかならず添えるので、an「上手へ」で上りの道だとわかる。詩は息なので軽く、祖先への捧げものとして上へ昇る。祖先は複数対格 -ais で表す。

    drénimor an aurándo sórel.

    読み:ドレーニモル アン アウランド ソーレル。

    drén-imoranaurándosórel.
    参る-<我々が>上手社<対格>今日

    「今日、私たちは社へお参りする。」

    日常会話の文。社はふつう丘の上や村の北側の高い場所に建っているので、行き先には「上手へ」の an+対格を使う。aurándo は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。drén-「参る」は gél-「行く」の謙譲の補充形で、祖先のいる場所へ行くことを低めて言う。

    drénimor an ánoran ré embeléndimor aursárais.

    読み:ドレーニモル アン アーノラン レー エンベレンディモル アウルサーライス。

    drén-imoranánor-anréembel-énd-imoraursár-ais.
    参る-<我々が>上手上手・北-<対格><〜と(節)>祀る-<〜しますように>-<我々が>祖先-<〜たちを>

    「我々は、祖先を祀るために北の高みへ参る。」

    北の高みの納骨所へ向かうときの言い方。drén- は「行く」の謙譲の補充形で、聖地に向かう行いを低めて言う。ré+願望法で目的を表す。an ánoran は「上手の北の地へ」で、前置詞と名詞が同じ方向を重ねて表している。

    vándir fáron an vélunei!

    読み:ヴァンディル ファーロン アン ヴェールネイ!

    vánd-irfáronanvélun-ei!
    量る-<皆で〜せよ>荷<対格>上手日の入り-<与格>

    「日が沈む前に荷を量れ。」

    縁の市で、働き手たちに指図する命令(命令法の2人称複数)。時間は川の流れとして言い表すので、an+与格「日の入りの上手で」が「日の入りの前に」という意味になる。

    áura selvá es méndales an élvaran.

    読み:アウラ セルヴァー エス メンダレス アン エルヴァラン。

    áur-aselváesméndal-esanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>息<主格>から中の世界-<属格>上手天-<対格>

    「「息は中の世界から天へと昇る。」」

    弔いの詞や祈りによく出る一句。méndal は重性の子音語幹として変化する(属格 méndalos)。人の住む高原を、天と下の国にはさまれた層として言う。

    áura álmar an méndalan élvares.

    読み:アウラ アルマル アン メンダラン エルヴァレス。

    áur-aálmaranméndal-anélvar-es.
    昇る-<(軽いものが)>白月<主格>上手まん中-<対格>天-<属格>

    「「白月が天のまん中へと昇っていく。」」

    天体の位置を、まわりのものとの関係で言う言い方。月は星ではないので、こうして名指しして言ってよい。méndal は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

    ésa nóra, áura ilanár an dún.

    読み:エーサ ノーラ、アウラ イラナール アン ドゥーン。

    és-anóra,áur-ailanárandún.
    いる-<(軽いものが)>夜分<主格>昇る-<(軽いものが)>星読み<主格>上手丘<対格>

    「夜分となり、星読みが丘の上へ昇った。」

    年代記に見られる、直説法の短い文を並べた記事の書きぶり。時制がないので、文脈から過去と読む。an+対格で「上手へ」。dún は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

    dulénde fláin! hóin an glünlúinei.

    読み:ドゥレンデ フライン!ホイン アン グリュンルーイネイ。

    duléndefláin!hóinanglünlúin-ei.
    道中ご無事で軽い帰る<命令法><あなたが>上手凍りの頃-<与格>

    「道中ご無事で。凍りの頃の前に帰ってこいよ。」

    縁の市へ下りる家族を見送るときの、くだけた言い方。後半は命令法2人称単数(むき出しの語幹)で、目下や身内への言い方になる。an+与格「〜の上手で」は時間では「〜の前に」を表す。凍りの頃には崖道が凍るので、その前に帰れという意味。

    snéimim. drénim an dún.

    読み:スネーミン。ドレーニン アン ドゥーン。

    snéimim.drén-imandún.
    前を失礼します参る-<私が>上手丘<対格>

    「前を失礼いたします。丘の上へ参ります。」

    坂道や石段で、人の前を横切ったり追い越したりするときの言い方。高原では目上の人より上の位置を歩くことが嫌われるので、上り坂で前に出るときにはとくに欠かせない。an+対格で「上手へ」。dún は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

    ésa traimlisá áuren an sóndelail.

    読み:エーサ トラインリサー アウレン アン ソンデライル。

    és-atraimlisááur-enansóndel-ail.
    いる-<(軽いものが)>年代記<主格>昇る-<〜した・〜された>上手書物-<〜らに>

    「年代記はあらゆる書物の中でいちばん尊い。」

    「いちばん〜」は「an+同じ仲間の複数与格」で言う(直訳は「書物たちの上手に高い」)。書かれた言葉を重んじる王国で、年代記が書物の頂に置かれていることを表す。

    aurénde mélna an aursárais.

    読み:アウレンデ メルナ アン アウルサーライス。

    aur-énd-emélnaanaursár-ais
    昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>詩<主格>上手祖先-<〜たちを>

    「この詩が、ご先祖様がたのもとへ昇りますように。」

    崖道から都へ帰った人などが、祖先に詩を捧げるときの言葉。主語 mélna は軽性なので、願望法の3人称単数は -e になる。an+対格で「上手へ」。

    ké géles an kloimándo sórel? gélim.

    読み:ケー ゲーレス アン クロイマンド ソーレル?ゲーリン。

    kégél-esankloimándosórel?gél-im.
    <〜か>行く-<あなたが>上手学び舎<対格>今日行く-<私が>

    「「今日は学び舎へ行くの?」「行くよ。」」

    家族のあいだの日常のやりとり。はい・いいえの問いは文頭の ké で作り、答えは「はい」の語を使わず、動詞を自分の人称に変えて繰り返す。行き先はかならず方向の前置詞をつけて言う(an+対格「上手の〜へ」)。kloimándo は重性o語幹で、主格と対格が同じ形。

    dúla lourlisá an fóndaros ráimaros dáumbar téir lóurul.

    読み:ドゥーラ ロウルリサー アン フォンダロス ライマロス ダウンバル テール ロールル。

    dúl-alourlisáanfóndar-osráimar-osdáumbartéirlóur-ul.
    下る-<(軽いものが)>系譜の巻<主格>上手源-<属格>ライマル-<属格>二十三瀬-<〜たちを>

    「系譜の巻は、ライマルの源から二十三瀬を下っていく。」

    系譜の巻に書かれた流れが、源から一瀬ずつ下っていくことを言う文。系譜読みが唱えはじめるときの言い方でもある。an+属格で「上手から」。lóurul は道のりの対格で、自動詞 dul- もこの格をとれる。巻は紙なので軽性で、動詞は -a をとる。

    mé gelésa naþrenár an kéumo.

    読み:メー ゲレーサ ナスレナール アン ケウモ。

    mégel-és-anaþrenárankéumo.
    <禁止・願いの打ち消し>行く-<〜すべし>-<(軽いものが)>段の外の者<主格>上手境の石<対格>

    「段の外の者は、境の石より上手へ行かぬこと。」

    社の境などに据えた石の決まりを、当為法で記した文。当為法の -és- は強勢をもつので、語根の強勢が移って gelésa になる。an+対格で「上手へ」を表す。重性の kéumo は、対格も主格と同じ形。

    sarénei, áura virá an ilánais.

    読み:サレーネイ、アウラ ヴィラー アン イラーナイス。

    sarén-ei,áur-aviráanilán-ais.
    本番-<与格>昇る-<(軽いものが)>言葉<主格>上手灯-<〜たちを>

    「本番では、言葉は星々のもとへ昇る。」

    日常で、練習とは違う本番の重みを言い聞かせるときの言い回し。練習の言葉は数に入らないが、本番の言葉は息となって祖先に届く、という考え方を表す。与格 sarénei を場面の枠に置き、読点で区切る。主語の virá は軽性なので、動詞は -a で受ける。

    drelésa aurbúl un aurándoi, ré aurénde selvá an ilánais.

    読み:ドレレーサ アウルブール ウン アウランドイ、レー アウレンデ セルヴァー アン イラーナイス。

    drel-és-aaurbúlunauránd-oi,réaur-énd-eselváanilán-ais
    焚く-<〜すべし>-<(軽いものが)>薪<対格>内に社-<与格><〜と(節)>昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>息<主格>上手灯-<〜たちを>

    「社は薪を焚くべし。息が星々のもとへ昇りますように。」

    社の碑文や祀りの手引書に刻まれる当為法の文。主語を言わないので「人は」の意味になり、軽性の形をとる(当為法・3SG.LT)。ré+願望法で目的(祈り)を示す。aurándo「社」は重性o語幹で与格 -oi。度量衡の碑の mé duliþésa… と同じく、法定的・規範的な文書に当為法が用いられる例。

    drélim aurbúl si aurénde selvá an ilánais.

    読み:ドレーリン アウルブール シ アウレンデ セルヴァー アン イラーナイス。

    drél-imaurbúlsiaur-énd-eselváanilán-ais
    焚く-<私が>薪<対格>と昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>息<主格>上手灯-<〜たちを>

    「薪を焚く。息が星々のもとへ昇りますように。」

    祀りの場で、炉に薪を焚いて祖先に祈りを届ける場面。drél-「焚く」は他動詞で、1人称単数は drélim(drél-im)。aurbúl(重性・子音語幹)が目的語。si は読点を伴わず、二つの文を同じ高さに並べる(統語論9.2節)。二つめの文は願望法で祈りの形にする。an ilánais は「星々のもとへ」で、挨拶の定型 aurénde selvá! ― an ilánais. と同じ前置詞句。星は数を言わず総称の複数 ilánai を用いる。

    kórvino an kórvo, fáron du orén.

    読み:コルヴィノ アン コルヴォ、ファーロン ドゥ オレーン。

    kórvinoankórvo,fáronduorén.
    受け入れられるべきもの<主格>上手倉<対格>荷<主格>下手縁<対格>

    「受け入れられるべきものは倉の上手へ、荷は縁の下手へ。」

    詩の語順(動詞を落とし、主語を動詞の前に出す)。an+対格「上手へ」、du+対格「下手へ」。比喩的に「納まるべきもの」と「運ばれるべきもの」の対比。

    tóro dulilmó klér an fóndaros.

    読み:トーロ ドゥリルモー クレール アン フォンダロス。

    tór-odulilmókléranfóndar-os.
    来る-<(重いものが)>水汲み桶<主格>冷たい上手源-GEN.

    「冷たい汲み桶が源から(戻って)来る。」

    名詞句 dulilmó klér(冷たい汲み桶)が主語。an+属格(「上手から・上流から」)で出どころを表す。tór-「来る」は自動詞なので目的語の枠がない。凍りの頃に、源のそばに置いていた汲み桶が冷たいまま持ち帰ってくる様子。

    krélo sáko an nébroi.

    読み:クレーロ サーコ アン ネーブロイ。

    krél-osákoannébr-oi
    足りる-<(重いものが)>塩<主格>上手霧-<与格>

    「塩は霧の前に足りている。」

    縁の市や倉の司の帳場で、塩の在庫が霧期(季節の変わり目)まで十分かを確認する改まった言い方。an+与格の時読みで「〜の前に」。an nébroi「霧の前に」は市の決まり文句で、「期限までに」の意味も帯びる。主語の sáko「塩」は重性o語幹なので、動詞は -o。干潟から来る塩はすべて重性に入る。

    ombréla meirtaulá an nébroi.

    読み:オンブレーラ メイルタウラー アン ネーブロイ。

    ombrél-ameirtauláannébr-oi.
    足りる-<(軽いものが)>取引<主格>上手霧-<与格>

    「取引は霧の前に済んでいる。」

    縁の市の精算が完了したとき、市の目付が告げる宣告。an nébroi は時の読み(「霧の前に」)で、縁の市の決まり文句「期限までに」に当たる。meirtaulá「取引」は軽性a語幹なので動詞は軽性の3単 -a。改まった場での正式な一言で、ふだんの会話ではやや硬く聞こえる。

    funeléra lisár ré éso louríño rúndel ín an orénoi.

    読み:フネレーラ リサール レー エーソ ロウリーニョ ルンデル イーン アン オレーノイ。

    funelér-alis-árréés-olouríñorúndelínanorén-oi.
    書き留める-<(軽いものが)>書く-<〜する人><〜と(節)>いる-<(重いものが)>小瀬<主格>速い一上手縁-<与格>

    「書記は「縁の上手に速い小瀬がある」と書き留める。」

    書物・記録の場面。ré の後の引用節は存在文。存在文で an orénoi を場所として置くため、名詞句を不定の閉じ ín で閉じてから前置詞句を置く。この閉じがないと、形容詞のすぐ後ろの an+与格は比較として読まれる。形容詞 rúndel は名詞の後ろに置く。

    mé bresdulésa an aldáran.

    読み:メー ブレスドゥレーサ アン アルダーラン。

    mébresdul-és-aanaldár-an.
    <禁止・願いの打ち消し>胸を下げる-<〜すべし>-<(軽いものが)>上手座-<対格>

    「高き座へ向かって胸を下げてはならない。」

    礼法・書物の定型。主語を置かず、当為法で一般の行いを禁じる。否定に mé を使う。an aldár-an は方向の前置詞句で、aldár「座」に対格 -an がついた形。動詞 bresdul-「胸を下げる」を使うことで、単に近づくのではなく、高座に無遠慮に寄るのを戒める表現になる。

    þarnéro ílmo an orénoi.

    読み:サルネーロ イルモ アン オレーノイ。

    þarnér-oílmoanorén-oi.
    行き止まる-<(重いものが)>水<主格>上手縁-<与格>

    「水は縁で行き止まりになる。」

    流れが端に着いてこれ以上先へ進めなくなる意。水 ílmo は重性なので動詞は 3 人称単数・重性の -o。場所 an orén-oi は「縁の側で」。

    marléuma ráuvan an aurándo.

    読み:マルレウマ ラウヴァン アン アウランド。

    marléum-aráuvananaurándo
    手を振る-<(軽いものが)>森の巫<主格>上手社<対格>

    「森の巫は社へ向かって手を振る。」

    儀礼の場面。主語 ráuvan は軽性。前置詞 an に社 aurándo を対格で受け、「上手(北)の社へ」という方向を表す。aurándo は -ando 系の場所名詞で、重性o語幹、単数対格は主格と同じ形。

    ké éso prúumo an orénoi? na éso.

    読み:ケー エーソ プルーモ アン オレーノイ?ナ エーソ。

    kéé-soprúumoanorén-oi?naé-so.
    <〜か>存在-<(重いものが)>水たまり<主格>上手縁-<与格><〜ない>存在-<(重いものが)>

    「「縁の上手に水たまりがあるか。」「ない。」」

    日常会話。an と与格 orénoi が場所を示す。prúumo は重性o語幹で、単数主格は辞書形のままとする。存在文への否定応答は éso を繰り返す。

    aurénde þóuma an þoumsnúlvo.

    読み:アウレンデ ソーマ アン ソウンスヌルヴォ。

    aur-énd-eþóumaanþoumsnúlvo.
    昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>煙<主格>上手煙穴<対格>

    「煙が煙穴のほうへ上がりますように。」

    炉の火を整える際に唱える、儀礼的な煙穴向け表現。前置詞 an は上手への方向を表し、対格名詞をともなう。þóuma「煙」は上へ昇るものとして軽性に扱い、願望法の 3 人称単数軽性語尾 -e をとる。

    aurénde anaurím an aldáran áurenan

    読み:アウレンデ アナウリーン アン アルダーラン アウレナン

    aur-énd-eanaurímanaldár-anáur-en-an
    昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>高き座の秩序<主格>上手座-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<対格>

    「高き座の秩序が高き座の方へ高まりますように。」

    儀礼・祈りの文。願望法 aurénde で高き座の秩序の向上を願う。an aldáran は「高き座へ」という方向。形容詞 áurenan も名詞 aldáran に一致する対格。

    þrála endríña an klivó.

    読み:スラーラ エンドリーニャ アン クリヴォー。

    þrál-aendríñaanklivó.
    登る-<(軽いものが)>子ども<主格>上手斜面<対格>

    「子どもが斜面を登っていく。」

    日常の場面。þrál-は足で地面を踏んで上る物理的な上昇を表す。主語は人であるため軽性で、動詞は3人称単数軽性の-aで一致する。方向のanは上方向・北方向を示し、後続の斜面を対格で受ける。

    þrála dórin an dún.

    読み:スラーラ ドーリン アン ドゥーン。

    þrál-adórinandún.
    登る-<(軽いものが)>男<主格>上手丘<対格>

    「男が丘へ登っていく。」

    日常の移動の場面。dún「丘」へ向かう上り方を表す。anは単に丘の位置を言うだけでなく、上方・上手方面へ向かう方向性を与える。人を指す主語には動詞が軽性-aで一致する。

    vrunkríla éndra fúnel an nébroi

    読み:ヴルンクリーラ エンドラ フーネル アン ネーブロイ

    vrunkríl-aéndrafúnelannébr-oi
    ほどく-<(軽いものが)>人<主格>綱<対格>上手霧-<与格>

    「人は霧の前に綱をほどく。」

    主語 éndra は軽性単数なので動詞は3人称単数軽性の語尾 -a をとる。前置句 an nébroi は「霧の前に」という時間の句。

    áura aurselvá an élvaran.

    読み:アウラ アウルセルヴァー アン エルヴァラン。

    áur-aaurselváanélvar-an.
    昇る-<(軽いものが)>高原語(詩語)<主格>上手天-<対格>

    「高原語(詩語)は天へ向かって昇る。」

    儀礼や詩の一行。意味1では aurselvá を、高原語そのものを詩語として指す名に使う。主語は軽性a語幹の無標主格で、動詞 áur- は軽性の3人称単数 -a をとる。an élvaran は方向句で、an と組んだ élvar の対格 élvaran が「天へ」を示す。

    auríþo nebroauró nébro an élvaran.

    読み:アウリーソ ネブロアウロー ネーブロ アン エルヴァラン。

    aur-íþ-onebroaurónébroanélvar-an
    昇る-<〜させる>-<(重いものが)>霧上げ<主格>霧<対格>上手天-<対格>

    「霧上げが霧を天へ持ち上げる。」

    儀礼・詩の語り。nebroauró を自然現象の行為者として重性単数主格で使う。nébro の対格は主格と同形。方向は an+対格。

    éso velmár núl an ormároi

    読み:エーソ ヴェルマール ヌール アン オルマーロイ

    és-ovelmárnúlanormár-oi
    いる-<(重いものが)>右<主格>低い上手左-<与格>

    「右側は左より低い。」

    宮廷の左右の作法を説明する文。比較は述語形容詞の後に an+与格。núl は位階的に一段低い低さを含む。

    snáula arnélvar an élvaran.

    読み:スナウラ アルネルヴァル アン エルヴァラン。

    snául-aarnélvaranélvar-an
    生える-<(軽いものが)>梢の天蓋<主格>上手天-<対格>

    「梢の天蓋が天へ伸びていく。」

    詩的表現。arnélvar を梢の天蓋として、天へ延びる動きに添える。前置詞 an と対格 élvaran が組んで、方向「天へ」を表す。arnélvar は生えている木々の集まりなので軽性だが、詩では梢の上層を天とつなげる比喩として使う。

    un bóraloi, éso krén ául an þúlnoi.

    読み:ウン ボーラロイ、エーソ クレーン アウル アン スルノイ。

    unbóral-oi,és-okrénáulanþúln-oi.
    中に家-<与格>いる-<(重いものが)>天井<主格>高い上手床-<与格>

    「家の中で、天井は床より上にある。」

    un+与格が場面の枠を作る。形容詞 ául に続く an+与格は比較で、家屋の構造上、天井が床より上にあることを示す。構造を説明する文脈向きの文。

    nunésa an aldáran áurenan

    読み:ヌネーサ アン アルダーラン アウレナン

    nun-és-aanaldár-anáur-en-an
    目を伏せる-<〜すべし>-<(軽いものが)>上手座-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<対格>

    「高き座へ向かう際には、目を伏せるべきである。」

    作法書や碑文の当為法。主語を言わない一般主語は軽性の -a で現れる。an aldáran áurenan は「高き座へ向かって」。

  2. 〜から(源から)

    属格と組んで上手からの出どころを表す。an fóndaros「源から」。

    lóima lourvirár þeláis an fóndaros ráimaros.

    読み:ロイマ ロウルヴィラール セライス アン フォンダロス ライマロス。

    lóim-alourvirárþel-áisanfóndar-osráimar-os.
    唱える-<(軽いものが)>系譜読み名前-<〜たちを>〜から源-<属格>ライマル-<属格>

    「系譜読みが、ライマルの源から名を唱えていく。」

    婚姻や祖先祀りで系譜を唱える場面の文。an+属格は「上手から」の出どころを表す。系譜は源から下へ流れるものなので、始祖からの起点は es ではなく an で言うのが改まった言い方になる。

  3. 〜の前に

    与格と組んで時間の前を表す。an nébroi「霧の前に」。

    méirim grúndo tásei an duliþímei fáronos.

    読み:メーリン グルンド ターセイ アン ドゥリシーメイ ファーロノス。

    méir-imgrúndotás-eiandul-iþ-ím-eifáron-os.
    与える-<私が>掛け<対格><あなた>-<与格>〜の前に下る-<〜させる>-<〜の技・〜さ>-<与格>荷-<属格>

    「掛けは、荷を下ろす前にお前に払う。」

    縁の市での約束の言い方。時間は川の流れにたとえられ、早いほうが上手なので、an+与格が「〜の前に」の意味になる。duliþímei は dulíþ-「下ろす」に -ím「〜すること」がついた名詞の与格で、強勢は -ím に移る。同じ組み立ての決まり文句に an nébroi「霧の前に(=期限までに)」がある。

  4. 〜よりまさって

    与格と組んだ比較。an pélsei「脂の木より」。仲間の複数与格と組むと最上級。

    éso gandér gróm an kelárei.

    読み:エーソ ガンデール グローン アン ケラーレイ。

    és-ogandérgrómankel-ár-ei.
    いる-<(重いものが)>硬木<主格>重い〜よりまさって伐る-<〜する人>-<与格>

    「硬木は樵よりも重い。」

    比較は an+与格「〜の上手に」で言い、性質の程度がまさることを表す。重さのような下向きの性質を an で比べると、ふつうは皮肉に響く。ただし硬木の重さは「下へ行く」成就のしるしなので、樵や森の司はこの言い方を誇らしげに使う。主語 gandér が重性なので、繋辞は -o をとる。

    ésa lisím sélvanes séuril an lisímail.

    読み:エーサ リシーン セルヴァネス セウリル アン リシーマイル。

    és-alis-ímsélvan-esséurilanlis-ím-ail.
    いる-<(軽いものが)>書く-<〜の技・〜さ>セルヴァン-<属格>美しい〜よりまさって書く-<〜の技・〜さ>-<〜らに>

    「セルヴァンの書法は、並ぶ書法の中でいちばん美しい。」

    書の競い合いで勝ちの書をほめる言い方。an+同じ仲間の複数与格で最上級になる。述語の形容詞 séuril は軽性の主語 lisím に一致し、単数主格なので語尾がない。

解説

「上手(北)」の方向を表す前置詞。組む格で意味が変わり、対格なら「上手へ」、与格なら「上手で」、属格なら「上手から」。時間を川の流れとみるので、与格と組んで「〜の前に」の意味になる。また、比べるときに「〜より(その性質が)まさって」を表す。上へ向かう語なので、ほめる響きがつきまとう。都の言葉と書き言葉では、an はいつも北を指す(北へ下る斜面でも an)。森や縁の人は、その場の高さで an・du を言い分ける。

そのほかの用例

aulisénde aulisár sáindaran.

読み:アウリセンデ アウリサール サインダラン。

au-lis-énd-eau-lis-ársáindar-an
<お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>証文-<対格>

「書記の方に、証文をお書きいただきたく存じます。」

目上の人に頼むときは、命令法ではなく願望法を使う。願望法の後ろでは、3人称単数・軽性の語尾が -e になる。動詞にも名詞にも au- がつく。

duþélim sélvanan, an fóndaros ráimaros dúlenan dáumbar téir lóurul, dúlenan fáir þrénul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス ライマロス ドゥーレナン ダウンバル テール ロールル、ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osráimar-osdúl-en-andáumbartéirlóur-ul,dúl-en-anfáirþrén-ul
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>二十三瀬-<〜たちを>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>四段-<〜たちを>

「ライマルの源から二十三瀬下りた、四段下りの者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった場での名乗り。固有名も小文字で書く。分詞 dúlenan は二度とも、名前の sélvanan(軽性・単数・対格)に一致している。lóurul と þrénul は道のりの対格。瀬と段は語が違うので、どちらが世代でどちらが身分かがすぐにわかる。

léisa lisár plánan.

読み:レーサ リサール プラーナン。

léis-alis-árplán-an
書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>

「書記は帳簿を書き終えた。」

完了相は、語根の母音 i を二重母音 ei に変えて作る(lís- → léis-)。時制がないので、「書き終えた」とも「書き終えている」とも訳せる。紙の帳簿 plána は軽性a語幹で、主格の -a は類推で復元された母音。

lísa lisár virán pélsei kélenoi.

読み:リーサ リサール ヴィラーン ペルセイ ケーレノイ。

lís-alis-árvir-ánpéls-eikél-en-oi
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>言葉-<対格>脂の木-<与格>伐る-<〜した・〜された>-<重性・与格>

「書記は伐った脂の木(の札)に字を書く。」

pélsa「脂の木」は、名詞としては軽性の語形(与格 -ei)のまま。けれども伐られた材なので、分詞は重性の与格 -oi で一致する。荷札が重性になるのは、この規則による。

dulíþan kelárai slúun báronur gandérur.

読み:ドゥリーサン ケラーライ スルーン バーロヌル ガンデールル。

dul-íþ-ankel-ár-aislúunbáron-urgandér-ur
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>千本-<〜らの>硬木-<〜らの>

「樵たちが硬木千本を下ろす。」

slúun「千」は名詞として働き、量の名詞 báron「本」を複数属格でとる。その báron がさらに硬木を複数属格でとるので、属格が二つ続く。直説法では、-íþ- が自分で強勢をとる。

lísa lisár sáindaran senárei.

読み:リーサ リサール サインダラン セナーレイ。

lís-alis-ársáindar-ansen-ár-ei.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

「書記が目付に証文を書く。」

基本の語順:動詞–主語–目的語–与格(受け手)。lisár は動詞 lís- に -ár「〜する人」がついた語、senár は sén- に -ár がついた語。

mé vír sélvanan nébroi!

読み:メー ヴィール セルヴァナン ネーブロイ!

mévírsélvan-annébr-oi!
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>セルヴァン-<対格>霧-<与格>

「霧の中で、セルヴァンの名を呼ぶな。」

禁止は「mé+命令法」。名前を vír-「言う」の目的語にすると、「名を呼ぶ」の意味になる。場所は前置詞なしの与格で言う。霧の中で名前を呼んではいけない、という禁忌の言い方。

luuménde ausenár plánan sé.

読み:ルーメンデ アウセナール プラーナン セー。

luum-énd-eau-sen-árplán-ansé.
ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>帳簿-<対格>この<軽性>

「目付殿に、この帳簿をご覧いただきたく存じます。」

上向きの依頼。命令法の代わりに願望法の3人称を使い、目の前の相手を主語の「目付殿」として扱う。lúum- は「見る」の尊敬の補充形。下向きなら sén plánan sé!、縁の市なら sén plána, ende. と言う。

sén, senéndes plánan sé.

読み:セーン、セネンデス プラーナン セー。

sén,sen-énd-esplán-ansé.
見る<命令法><あなたが>見る-<〜しますように>-<あなたが>帳簿-<対格>この<軽性>

「見ろ……いや、この帳簿を見てくれぬか。」

段を測りかねる相手への揺れ。都の大商家の手代(六段下り)が、段の外の尋に話しかけている。手代は自分のほうが上だと思っているので、下向きの命令法 sén を言いかけて、並びの願望法2人称に言い直す。最初の sén は市のむき出しの語幹と同じ形だが、格語尾つきの plánan と指示詞 sé が続き、ende がないので、市の言葉ではなく命令法だとわかる。市の目付は干潟の人と縁商人を通して話し、この形を口にしないので、この揺れを見せるのは手代や崖道の商人である。

dulísim sáindaran aulisárei.

読み:ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。

du-lís-imsáindar-anau-lis-ár-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「書記の方に、証文を書いて差し上げます。」

謙譲の動詞(自分を下げる)と、高めた与格(相手を上げる)を一つの文に並べている。「私が・目上の人に」という上下の関係が、文法にすべて表れる。

dúlo du dálor gandér te kéelan kelárai.

読み:ドゥーロ ドゥ ダーロル ガンデール テ ケーラン ケラーライ。

dúl-odudálorgandértekéel-ankel-ár-ai.
下る-<(重いものが)>下手下の国<対格>硬木<主格><関係節>伐る<〜し終えた>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

「樵たちが伐り終えた硬木が、下の国へ下りていく。」

関係節は名詞の後ろに無強勢の te を置き、すぐ後ろに動詞を続ける。目的語が抜けた穴は空けたままにする。関係節は文の終わり(か読点)まで続くので、du dálor を主節にかけるために、関係節つきの重い主語を文末に回している。dúlo gandér te kéelan kelárai du dálor と言うと、du dálor は関係節の中に入ってしまう。gandér は重性だが、関係節を導くのは te のままで、tó にはならない(tó なら「あの硬木」)。

tóra senár él te lísim sáindaran élei.

読み:トーラ セナール エール テ リーシン サインダラン エーレイ。

tór-asen-áréltelís-imsáindar-anél-ei.
来る-<(軽いものが)>見る-<〜する人><3人称単数・軽性><関係節>書く-<私が>証文-<対格><3人称単数・軽性>-<与格>

「私が証文を書いてやる、あの目付が来る。」

与格にあたる部分は、関係節の中で代名詞 élei「その人に」で埋める(再述代名詞)。軽性の「あの」té は関係節の te の前に置けないので、代名詞 él を「あの・例の」の意味で置く。この él は名詞の格に一致する。tóra senár té, lísim sáindaran élei. と、強勢のある té の後ろで区切ると、「あの目付が来る。私はその人に証文を書く」という二つの文になる。書き言葉では te と té は同じ字だが、主節を二つ並べるときはかならず区切りの印を打つ。区切りがなければ関係節と読む。

lúin áuran ombára ilánai, dulíþan kelárai gandér.

読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。

lúináur-anombárailán-ai,dul-íþ-ankel-ár-aigandér.
とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>

「十の灯が昇ると、樵たちは硬木を下ろす。」

「〜とき」の節は lúin で始め、ふつう主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は星座の名前で、古い形の「十」が固まって残ったもの。星を数えているわけではない。

pán þéles? þélim sélvanan.

読み:パーン セーレス?セーリン セルヴァナン。

pánþél-es?þél-imsélvan-an.
誰<対格>名乗る-<あなたが>名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>

「「何と名乗る?」「セルヴァンと名乗る。」」

二人の発話(問いと答え)。疑問詞の対格 pán を文頭に出している。名は軽性なので、目的語では対格 -an がつく。

wéinsa ólmar ilánan.

読み:ウェーンサ オルマル イラーナン。

wéins-aólmarilán-an.
なる<〜し終えた>-<(軽いものが)>年長者<主格>灯-<対格>

「年長の方は星になった。」

「〜になる」wéin- は、なったものを対格で言う(行き着く先の対格)。死後一年が過ぎて昇名が定まった死者について言う。

léisa dóulin lisár plánan.

読み:レーサ ドーリン リサール プラーナン。

léis-adóulinlis-árplán-an.
書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>もう書く-<〜する人>帳簿-<対格>

「書記はもう帳簿を書き終えた。」

「もう」dóulin も動詞の直後、主語の前に置く。完了の語根と組むことが多い。

ké líses sáindaran? lísim.

読み:ケー リーセス サインダラン?リーシン。

kélís-essáindar-an?lís-im.
<〜か>書く-<あなたが>証文-<対格>書く-<私が>

「「証文を書くか」「書く」」

答えの形では、問いに出た目的語の枠を空けてよい。

lísa lisár sáindaran si lúuma ausenár.

読み:リーサ リサール サインダラン シ ルーマ アウセナール。

lís-alis-ársáindar-ansilúum-aau-sen-ár.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>とご覧になる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「書記が証文を書き、目付殿がご覧になる。」

si で文と文を並べる。二つめの文は、同じ目的語を受けるので目的語の枠を空けてよい(1.2節)。

léisa lisár plánan, duói dúlo fáron du orén.

読み:レーサ リサール プラーナン、ドゥオイ ドゥーロ ファーロン ドゥ オレーン。

léis-alis-árplán-an,duóidúl-ofáronduorén.
書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>それから下る-<(重いものが)>荷<主格>下手縁<対格>

「書記が帳簿を書き終え、それから荷が縁へ下りていく。」

duói「それの下手で」は、出来事の順序をはっきりさせる。

ké lísa lisár sáindaran, orvél lísa fléilan?

読み:ケー リーサ リサール サインダラン、オルヴェール リーサ フレーラン?

kélís-alis-ársáindar-an,orvéllís-afléil-an?
<〜か>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>または書く-<(軽いものが)>手紙-<対格>

「書記は証文を書くのか、それとも手紙を書くのか。」

orvél「日の出側か日の入り側か」は選択。問いでは ké を一つめの文にだけ置く。

anórel, léisa lisár plánan.

読み:アノーレル、レーサ リサール プラーナン。

anórel,léis-alis-árplán-an.
昨日書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>

「昨日、書記は帳簿を書き終えた。」

時も場面の枠に置ける。文の後ろに置く言い方(léisa lisár plánan anórel)も使う。

na léisim unlóur sáindaran.

読み:ナ レーシン ウンロール サインダラン。

naléis-imunlóursáindar-an.
<〜ない>書く<〜し終えた>-<私が>まだ証文-<対格>

「私はまだ証文を書き終えていない。」

否定+完了だけなら「書き終えなかった」。「まだ」をはっきり言うときは unlóur を添える。

na léisa unlóur lisár sáindaran.

読み:ナ レーサ ウンロール リサール サインダラン。

naléis-aunlóurlis-ársáindar-an.
<〜ない>書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>まだ書く-<〜する人>証文-<対格>

「書記はまだ証文を書き終えていない。」

相の副詞 unlóur は動詞のすぐ後ろに置き、主語の枠・目的語の枠には数えない。

léisin sáindaran, méirim élan senárei.

読み:レーシン サインダラン、メーリン エーラン セナーレイ。

léis-insáindar-an,méir-imél-ansen-ár-ei.
書く<〜し終えた>-<〜して・〜く>証文-<対格>与える-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

「証文を書き終えて、それを目付に渡す。」

完了の語根+-in で「〜し終えて」。主語は後ろの動詞と同じ(私)。 副動詞の句と主節は別の文として数えるので、主節の目的語は代名詞 élan で置く。

vándin fáron, lísa lisár plánan.

読み:ヴァンディン ファーロン、リーサ リサール プラーナン。

vánd-infáron,lís-alis-árplán-an.
量る-<〜して・〜く>荷<対格>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>

「荷を量りながら、書記は帳簿を書く。」

未完了の語根+-in で「〜しながら」。量るのも書くのも書記。

lísa lisár plánan, vándin fáron.

読み:リーサ リサール プラーナン、ヴァンディン ファーロン。

lís-alis-árplán-an,vánd-infáron.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>量る-<〜して・〜く>荷<対格>

「書記は荷を量りながら、帳簿を書く。」

未完了の -in は文の後ろに置くのが基本。読点で区切るので、枠には数えない。

na vándin fáron, lísa lisár plánan.

読み:ナ ヴァンディン ファーロン、リーサ リサール プラーナン。

navánd-infáron,lís-alis-árplán-an.
<〜ない>量る-<〜して・〜く>荷<対格>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>

「荷を量らずに、書記は帳簿を書く。」

「〜せずに」は -in の動詞の前に na を置く。量らないのも書くのも書記。

lísa lisár plánan gléinin.

読み:リーサ リサール プラーナン グレーニン。

lís-alis-árplán-angléin-in.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>帳簿-<対格>清い-<〜して・〜く>

「書記は帳簿を清く書く。」

形容詞+-in で副詞「〜く」。

áuran sílarau an ilánais.

読み:アウラン シーララウ アン イラーナイス。

áur-ansílar-auanilán-ais.
昇る-<彼らが>月-<双数>上手灯-<〜たちを>

「二つの月が、星々のほうへ昇る。」

崖道の言葉。名詞は双数のまま、動詞は複数で受ける。

sénim lónan áurenan sélvanes.

読み:セーニン ローナン アウレナン セルヴァネス。

sén-imlón-anáur-en-ansélvan-es.
見る-<私が>柱の木-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<対格>セルヴァン-<属格>

「私はセルヴァンの高い柱の木を見る。」

自動詞の分詞(形容詞として固まった áuren)の後ろの属格は、動作主ではなく持ち主。

lisáran té, séna senár.

読み:リサーラン テー、セーナ セナール。

lis-ár-anté,sén-asen-ár.
書く-<〜する人>-<対格>あの<軽性>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

「あの書記をこそ、目付が見る。」

前に出した名詞句が té で終わるときは、té の後ろに区切りを入れる。区切りがないと関係節(te)と読まれる。

sénim lisáran te séna senár.

読み:セーニン リサーラン テ セーナ セナール。

sén-imlis-ár-antesén-asen-ár.
見る-<私が>書く-<〜する人>-<対格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

「私は、目付が見る書記を見る。」

残った名詞の格の形(senár は主格)で役割がわかるので、ó は要らない。

lísa sáindaran lisár te séna senár.

読み:リーサ サインダラン リサール テ セーナ セナール。

lís-asáindar-anlis-ártesén-asen-ár.
書く-<(軽いものが)>証文-<対格>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

「目付が見る書記が、証文を書く。」

都の言葉。関係節つきの主語は目的語の後ろへ回す。目的語は対格の形でわかる。

lísa lisár te séna senár, sáindaran.

読み:リーサ リサール テ セーナ セナール、サインダラン。

lís-alis-ártesén-asen-ár,sáindar-an.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>証文-<対格>

「目付が見る書記が、証文を書く。」

崖道の言葉。読点で関係節を閉じ、読点の後ろは主節の残りの枠(ここでは目的語)に戻る。

sénim lisáran te séna senáran.

読み:セーニン リサーラン テ セーナ セナーラン。

sén-imlis-ár-antesén-asen-ár-an.
見る-<私が>書く-<〜する人>-<対格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>-<対格>

「私は、目付を見る書記を見る。」

要の lisáran が対格なのは主節の目的語だから。関係節の中では、残った senáran が対格なので、要が主語だとわかる。

tóra lisár te séna néman.

読み:トーラ リサール テ セーナ ネーマン。

tór-alis-ártesén-aném-an.
来る-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)><私>-<対格>

「私を見る書記が来る。」

関係節の中の代名詞の目的語は対格(néman)。

sénim plánan te léisa lisár te séna senár.

読み:セーニン プラーナン テ レーサ リサール テ セーナ セナール。

sén-implán-anteléis-alis-ártesén-asen-ár.
見る-<私が>帳簿-<対格><関係節>書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格><関係節>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>

「私は、目付が見る書記が書き終えた帳簿を見る。」

関係節の中の最後の名詞に、さらに関係節がつく。右へ右へと伸ばすのは自然な形。

anórel, sénim plánan te léisa lisár.

読み:アノーレル、セーニン プラーナン テ レーサ リサール。

anórel,sén-implán-anteléis-alis-ár.
昨日見る-<私が>帳簿-<対格><関係節>書く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>

「昨日、私は書記が書き終えた帳簿を見た。」

関係節のある文で、時の語を主節にかけたいときは場面の枠に置く。

lúin fléira aldár áuren es dúnos, snéiman éndrai.

読み:ルーイン フレーラ アルダール アウレン エス ドゥーノス、スネーマン エンドライ。

lúinfléir-aaldáráur-enesdún-os,snéim-anéndr-ai.
ときお出ましになる-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>から王の丘-<属格>身をかがめる-<彼らが>人-<〜たちが>

「高き座が王の丘からお出ましになると、人々は身をかがめる。」

都での王の行幸を言う文。単に dún と言っても、文脈から湖都の北の、王の居所がある丘を指す。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。lúin の時の節は主節の前に置く。

lís þelán táses séndoi!

読み:リース セラーン ターセス センドイ!

lísþel-ántás-essénd-oi!
書く<命令法><あなたが>名前-<対格><あなた>-<属格>ここ-<与格>

「「ここにお前の名を書け。」」

下向きの命令。命令法の2人称単数はむき出しの語幹 lís。目上の人には使えず、目上には願望法3人称(aulisénde …)で頼む。名前を書くことは息を使わないので、名の禁忌には当たらない。

dúlan kelárai es dúnos.

読み:ドゥーラン ケラーライ エス ドゥーノス。

dúl-ankel-ár-aiesdún-os.
下る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>から丘-<属格>

「樵たちが丘から下りてくる。」

es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。主語の kelárai は軽性の複数(kél-「伐る」+-ár「〜する人」)なので、動詞は3人称複数の -an をとる。dún の属格は重性の -os になる。

lúin tóro nébro, na þéla torár þelán.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーラ トラール セラーン。

lúintór-onébro,naþél-ator-árþel-án.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>名乗る-<(軽いものが)>来る-<〜する人>名前-<対格>

「霧が来ると、客は名を名乗らない。」

霧の中で名前を声に出すと下の国に聞かれる、という禁忌を述べた文。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。直説法の否定には na を使う。

méirim sáindaran sélvanei.

読み:メーリン サインダラン セルヴァネイ。

méir-imsáindar-ansélvan-ei.
与える-<私が>証文-<対格>セルヴァン-<与格>

「セルヴァンに証文を渡す。」

受け手は与格で示し、語順は動詞–目的語–与格になる。sélvan は軽性の子音語幹として変化し、対格は sélvanan、属格は sélvanes、与格は sélvanei になる。

dúlan dáumbar fáronul du orén.

読み:ドゥーラン ダウンバル ファーロヌル ドゥ オレーン。

dúl-andáumbarfáron-ulduorén.
下る-<彼らが>二十荷-<〜たちが>下手縁<対格>

「二十の荷が縁へ下りていく。」

崖道で荷が下ろされていくようすを言う文。dáumbar は dáu(二)と ombár(十)が縮まった不規則な形。三以上の数詞と同じく、後ろの名詞を複数にする。重性名詞の複数は -ul になる。動詞は3人称複数の -an で、複数では性を区別しない。

kélan kelárai téir gandérul.

読み:ケーラン ケラーライ テール ガンデールル。

kél-ankel-ár-aitéirgandér-ul.
伐る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>三硬木-<〜たちを>

「樵たちが硬木を三本伐る。」

伐り出しのようすを言う文。会話では量の名詞 báron(本)を省き、数詞の後ろの名詞をそのまま複数にする。重性名詞は複数でも主格と対格が同じ -ul になる。時制がないので、「伐った」とも訳せる。

luuménde ilána aursáres sélvanan.

読み:ルーメンデ イラーナ アウルサーレス セルヴァナン。

luum-énd-eilánaaursár-essélvan-an.
ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)>祖先の星<主格>祖先-<属格>セルヴァン-<対格>

「祖先の星が、セルヴァンを見守ってくださいますように。」

祀りの席で唱える祈りの句。祖先の星は目上なので、「見る」の尊敬の補充形 lúum- を願望法で使う。強勢は -énd- に移り、3人称単数・軽性の語尾は -e になる。

funeléra lisár þelán aldáres áurenes.

読み:フネレーラ リサール セラーン アルダーレス アウレネス。

funelér-alis-árþel-ánaldár-esáur-en-es.
書き留める-<(軽いものが)>書く-<〜する人>名前-<対格>王の位-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

「書記は、高き座の名を書き留める。」

記録の場面の文。属格にすると、分詞も -es で一致して aldáres áurenes「高き座の」となる。王の名は口にできない場合でも、書くことは息を使わないので禁じられない。書くときは上げ書きにする。

lúuma aldár sé sáindaran.

読み:ルーマ アルダール セー サインダラン。

lúum-aaldársésáindar-an.
ご覧になる-<(軽いものが)>王この<軽性>証文-<対格>

「この座(朕)は、証文を見た。」

王は自分を「我」と言わず、aldár sé「この座」と3人称で言う。そのため、動詞は3人称単数・軽性になり、自分の行いにも尊敬の補充形 lúum- を使う。時制がないので「見る」とも「見た」とも訳せる。

na þílim virán dáloros.

読み:ナ シーリン ヴィラーン ダーロロス。

naþíl-imvir-ándálor-os.
<〜ない>分かる-<私が>言葉-<対格>下の国-<属格>

「下の国の言葉は分からん。」

都の人が干潟語について言う、くだけたひとこと。virán dáloros「下の国の言葉」は、「泥の言葉」ほどあからさまな蔑みではないが、距離を置いた言い方。属格は名詞の後ろに置く。

luuménde aldár áuren sáindaran sé.

読み:ルーメンデ アルダール アウレン サインダラン セー。

luum-énd-ealdáráur-ensáindar-ansé.
ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)>座<主格>高い-<〜した・〜された>証文-<対格>この<軽性>

「高き座に、この証文をご覧いただきたく存じます。」

宮廷で王に書きものを差し出すときの、上向きの依頼。命令の代わりに願望法の3人称を使い、「見る」は尊敬の補充形 lúum- にする。aldár áuren「高き座」は王の位の総称で、今の王はふつうこれだけで指す。

mé vír þelán aldáres te áursa!

読み:メー ヴィール セラーン アルダーレス テ アウルサ!

mévírþel-ánaldár-esteáurs-a!
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>座-<属格><関係節>お昇りになる<〜し終えた>-<(軽いものが)>

「お昇りになった座のお名を口にするな。」

王の崩御から一年のあいだの禁忌を言う文。この間は座名も声に出さず、aldár te áursa「お昇りになった座」と言う。aldár áuren「高き座」の分詞ではなく、関係節に完了形を入れて区別している。関係節は文の終わりまで続く。

lúin tóro nébro, dúlan orenvandárai du dálor.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ドゥーラン オレンヴァンダーライ ドゥ ダーロル。

lúintór-onébro,dúl-anorenvandár-aidudálor.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>南へ行く-<彼らが>縁商人-<〜たちが>下手下の国<対格>

「霧が来るころ、縁商人たちは下(干潟)へ帰っていく。」

dúl- は、北が「上」の国では、そのまま「南へ行く・干潟へ行く」の意味になる。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。縁商人は軽性の人なので、複数主格は -ai になる。霧が崖を上りはじめると縁の市が閉じることを述べた文。

dúla faronár es orénos. mé vír þelán éles!

読み:ドゥーラ ファロナール エス オレーノス。メー ヴィール セラーン エーレス!

dúl-afaronáresorén-os.mévírþel-ánél-es!
下る-<(軽いものが)>運び人<主格>から縁-<属格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

「運び人が縁から下りた(落ちて死んだ)。その名を口にするな。」

崖から落ちて死ぬことは、いちばん恐れられる死である。そのため brúum-「落ちる」とは言わず、dúl-「下る」で遠回しに言う。高原語には時制がないので、dúla は文脈によって「下りた」の意味になる。死後一年は死者の名を口にしない禁忌があるので、すぐ後に禁止の文が続く。

dulíþan kelárai gandér es orénos.

読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール エス オレーノス。

dul-íþ-ankel-ár-aigandéresorén-os.
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>杭材<対格>から縁-<属格>

「樵たちは縁から硬木の丸太を下ろす。」

乾風期の吊り下ろしを述べる文。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。動詞のすぐ後ろの kelárai が主語で、その次の gandér が目的語。ここでは数を言わずに、伐り出された材をひとまとまりとして言っている。帳簿で数を書くときは、かならず量の名詞 báron「本」を添える。

toríro nébro, mé vír þelán! ésa þelá selvá, fíndo dálor.

読み:トリーロ ネーブロ、メー ヴィール セラーン!エーサ セラー セルヴァー、フィンド ダーロル。

tor-ír-onébro,mévírþel-án!és-aþeláselvá,fínd-odálor.
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>いる-<(軽いものが)>名前<主格>息<主格>聞く-<(重いものが)>下の国<主格>

「霧が来たら名を呼ぶな。名は息だ、下の国が聞きつける。」

霧期の禁忌を子どもに教える言い方。口に出した名前を selvá「息」としてとらえている。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。dálor は重性なので、動詞 fínd- は重性の -o をとる。

dulíþan slúun kelárar gandér du orén.

読み:ドゥリーサン スルーン ケラーラル ガンデール ドゥ オレーン。

dul-íþ-anslúunkel-ár-argandérduorén.
下る-<〜させる>-<彼らが>数えきれぬ伐る-<〜する人>-<〜らの>硬木<対格>下手縁<対格>

「数えきれぬほどの樵が、硬木を縁へ下ろす。」

誇張をこめた語りの言い方。この slúun は実際の数ではなく、「数えきれないほど多い」の意味。「slúun+複数属格」が主語になると、動詞は3人称複数で受ける。gandér と orén は重性なので、対格は主格と同じ形になる。du+対格で「下手へ」。

áuran slúun sílarar, na tóra lisár.

読み:アウラン スルーン シーララル、ナ トーラ リサール。

áur-anslúunsílar-ar,natór-alis-ár.
昇る-<彼らが>数えきれぬ月-<〜らの><〜ない>来る-<(軽いものが)>書く-<〜する人>

「数えきれぬほど月が昇ったが、書記は来ない。」

詩や改まった語りの言い方。slúun sílarar「千の月」は数えた結果ではなく、「数えきれないほど長い時が過ぎた」という意味の決まり文句。月は星ではないので、数の言い方をしても禁忌には当たらない。時制がないので、áuran は「昇った」とも訳せる。

lúin glóira ausenár, luuménde sáindaran sé.

読み:ルーイン グロイラ アウセナール、ルーメンデ サインダラン セー。

lúinglóir-aau-sen-ár,luum-énd-esáindar-ansé.
ときお越しになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)>証文-<対格>この<軽性>

「目付殿がお越しになりましたら、この証文をご覧いただきたく存じます。」

縁の市で、都の手代のような者が改まって言う依頼。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。後半の主語は前半と同じ目付なので、言わずに省いている。命令の代わりに願望法の3人称を使い、lúum-「見る」の尊敬の補充形を使う。

lísa ilanár sílaran ívelan sóndelei.

読み:リーサ イラナール シーララン イーヴェラン ソンデレイ。

lís-ailanársílar-anível-ansóndel-ei.
書く-<(軽いものが)>星読み<主格>暦の月-<対格>新しい-<軽性・対格>書物-<与格>

「星読みは新しい月を書物に書き記す。」

暦を司る星の司の記録の言い方。十の灯の昇る日がずれると、星読みが月を一つ足し、それを書き留める。形容詞 ível は sílaran に合わせて、軽性・単数・対格の -an で一致する。

lúin lóima ráuvan loimán, kéla kelár gandér.

読み:ルーイン ロイマ ラウヴァン ロイマーン、ケーラ ケラール ガンデール。

lúinlóim-aráuvanloim-án,kél-akel-árgandér.
とき唱える-<(軽いものが)>森の巫<主格>詞-<対格>伐る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>硬木<対格>

「森の巫が詞を唱えると、樵は硬木を伐る。」

硬木を伐る作法を述べた文。「〜するとき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。kelár「樵」は kél- に「〜する人」の -ár がついた語。硬木は重性なので、主格と対格が同じ形 gandér になる。詞を唱えずに伐ることは禁忌とされる。

lúin tóro nébro, na sénimor sílaran.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル シーララン。

lúintór-onébro,nasén-imorsílar-an.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>月-<対格>

「霧が来ると、月が見えなくなる。」

霧期の不安を言う文。霧 nébro は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。主節は直説法なので、否定には na を使う。

éso nébro, na sénimor álmaran.

読み:エーソ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン。

és-onébro,nasén-imorálmar-an.
いる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>白月-<対格>

「霧が出ていて、我々には白月が見えない。」

霧期の暮らしを語るときの言い方。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。霧が出ると、空と人とのあいだに下のものが割りこみ、祖先が下界を見守れなくなる。この文には、そうした不安がこもっている。

ké sénes álmaran? sénim.

読み:ケー セーネス アルマラン?セーニン。

késén-esálmar-an?sén-im.
<〜か>見る-<あなたが>白月-<対格>見る-<私が>

「「白月が見えるか?」「見える。」」

二人の発話。雨期に、雲の切れ間から白月がのぞいているかを尋ねる、家族や同輩どうしの問い。答えは問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返す。目上の人には ké を使わず、尊敬の補充形 lúum- を推量法にして尋ねる。

sénim fáron si sáindaran.

読み:セーニン ファーロン シ サインダラン。

sén-imfáronsisáindar-an.
見張る・検める-<私が>荷<対格>と証文-<対格>

「荷と証文を検めます。」

市や倉で、荷とその書きつけを突き合わせて確かめるときの言い方。「AとB」は si で並べ、二つとも目的語にする。重性の fáron は対格でも語尾がなく、軽性の sáindar は -an をとる。

lúin tóro nébro, mé hál þelán!

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン!

lúintór-onébro,méhálþel-án!
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

「霧が来たら、名を呼ぶな。」

親が子に言い聞かせる禁止の言い方。霧の中で名前を大声で呼ぶと、下の国にその名を聞かれ、名の主が下へ引かれるとされる。nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。禁止は「mé+命令法」で言う。霧の中で人を呼ぶときは、名前の代わりに té「そこの方」などを使う。

lúin éso nébro, mé þondésa þondán.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。

lúinés-onébro,méþond-és-aþond-án.
ときいる-<(重いものが)>霧期<主格><禁止・願いの打ち消し>誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)>誓い-<対格>

「霧期のあいだは、誓いを立てぬこと。」

法典や碑文に見られる、当為法を使った禁止。主語を言わないので一般の人が主語になり、動詞は軽性の形をとる。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効とされる。その信仰を定めとして書いた文。

na þílim virán sé.

読み:ナ シーリン ヴィラーン セー。

naþíl-imvir-ánsé.
<〜ない>分かる-<私が>言葉-<対格>この<軽性>

「この言葉がわからない。」

日常の言い切りの否定。na は直説法の動詞 þílim の直前に置く。主語は1人称単数の語尾 -im でわかるので、代名詞は言わない。指示詞 sé は名詞の後ろに置き、格では形が変わらない。

lísim ném sáindaran.

読み:リーシン ネーン サインダラン。

lís-imnémsáindar-an.
書く-<私が><私>証文-<対格>

「証文は、この私が書く。」

主語は動詞の語尾 -im でわかるので、代名詞 ném はふつう言わない。それをわざわざ動詞の後ろに置くと、「ほかでもない私が」という強調になる。

mé ombér ausenáran!

読み:メー オンベール アウセナーラン!

méombérau-sen-ár-an!
<禁止・願いの打ち消し>指さす<命令法><あなたが><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<対格>

「目付殿を指さすな!」

親が子どもをたしなめるときの禁止。「mé+命令法」で禁止を表し、mé は強勢をもつ。ombér- は ómbo「指」に -ér- がついた動詞で、命令法2人称単数は語幹そのままになる。目上の人に指を突きつけるのは、星を指さすのと同じ理屈で無礼とされる。目付は目上なので、目的語でも au- をつけたままにする。

méir sáindaran sé némei.

読み:メール サインダラン セー ネーメイ。

méirsáindar-anséném-ei.
与える<命令法><あなたが>証文-<対格>この<軽性><私>-<与格>

「その証文をこっちへよこせ。」

下向きの命令。語順は動詞–目的語–与格(受け手)で、受け手の「私に」は与格 némei で表す。ném は②型の語尾で格変化する。証文 sáindar は軽性の子音語幹なので、対格は -an、指示詞は軽性の sé になる。

séirim tásan, lúin áura sílar.

読み:セーリン ターサン、ルーイン アウラ シーラル。

séir-imtás-an,lúináur-asílar.
待つ-<私が><あなた>-<対格>とき昇る-<(軽いものが)>月<主格>

「月が昇るころ、お前を待っている。」

同じ段の者どうしの、くだけた言い方。tás は②型の語尾で格変化し、対格は tásan になる。lúin は「〜とき」の節を導き、節の中も動詞で始まる。目上の人には tás を使わず、役職名などを3人称で言う。

lúuma ausenár sáindaran némes.

読み:ルーマ アウセナール サインダラン ネーメス。

lúum-aau-sen-ársáindar-anném-es.
ご覧になる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格><私>-<属格>

「目付殿が私の証文をご覧になる。」

縁の市で、目付が証文を検めることを高めて言う直説法の文。lúum- は「見る」sén- の尊敬の補充形。名詞の ausenár は補充形を使わず、sén- に -ár と au- をつけて作る。所有者の属格 némes は名詞の後ろに置く。

na vírimor þelán aldáres áurenes.

読み:ナ ヴィーリモル セラーン アルダーレス アウレネス。

navír-imorþel-ánaldár-esáur-en-es.
<〜ない>言う-<我々が>名前-<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

「我々は高き座の御名を口にしない。」

王の個人名は即位と崩御のときに一度ずつしか唱えないという決まりを述べた文。na は直説法の動詞の直前に置く。分詞 áuren は座 aldár に一致して、軽性の属格 -es をとる。書くことは息を使わないので、この禁忌には当たらない。

lísa aldár sé sáindaran.

読み:リーサ アルダール セー サインダラン。

lís-aaldársésáindar-an.
書く-<(軽いものが)>座<主格>この<軽性>証文-<対格>

「この座が証文を書く。」

王は自分を「我」と言わず、aldár sé「この座」と3人称で言う。そのため動詞は3人称単数・軽性の -a になる。実際の座は石や木でできていても、aldár は人を指すので軽性で、指示詞も軽性の sé を使う。

pómbar báronul dulíþan kelárai du dálor?

読み:ポンバル バーロヌル ドゥリーサン ケラーライ ドゥ ダーロル?

pómbarbáron-uldul-íþ-ankel-ár-aidudálor?
いくつ本-<〜たちを>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

「樵たちは下の国へ何本下ろすのか。」

降ろし場での日常の問い。数を問う pómbar は数詞と同じく名詞の前に置き、量の名詞 báron を複数にする。ここでは目的語なので複数対格 báronul(重性なので主格と同じ形)になる。降ろし場で数えるものは硬木と決まっているので、数えるものの複数属格は省いている。数を問う語句は、目的語の名詞句ごと動詞の前に出る。人を数える問いにはこの形を使わない。

selvána aurél virán fláinan.

読み:セルヴァーナ アウレール ヴィラーン フライナン。

selván-aaurélvir-ánfláin-an.
おっしゃる-<(軽いものが)>あの方<主格>言葉-<対格>上品な-<軽性・対格>

「あの方は上品なお言葉をおっしゃる。」

目上の人をほめる言い方。selván- は「言う」の尊敬の補充形。fláin は「軽い」から転じて、礼にかなった上品さを表す。軽い言葉ほど上へ昇る、という考え方がもとになっている。

lúin tóra senár, sénim élan.

読み:ルーイン トーラ セナール、セーニン エーラン。

lúintór-asen-ár,sén-imél-an.
とき来る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>見る-<私が>彼-<対格>

「目付が来たとき、私は彼を見かけた。」

日常の会話。主語の代名詞は動詞の語尾でわかるので言わない。目的語の代名詞は省けないので、対格の élan を置く。「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。時制はないので、文脈によって「見る」とも「見た」とも訳せる。

méirim sáindaran lisárei élei te tóra.

読み:メーリン サインダラン リサーレイ エーレイ テ トーラ。

méir-imsáindar-anlis-ár-eiél-eitetór-a.
与える-<私が>証文-<対格>書く-<〜する人>-<与格>あの-<与格><関係節>来る-<(軽いものが)>

「やって来た例の書記に、証文を渡す。」

軽性の指示詞 té は関係節の te の前に置けない。そのため、代わりに él を「あの・例の」の意味で名詞の後ろに置く。この él は指示詞と違って格変化し、ここでは lisárei に合わせて与格の élei になる。関係節の主語は抜けたまま空けておく。

vóilim sáindaran gléinan.

読み:ヴォイリン サインダラン グレーナン。

vóil-imsáindar-angléin-an.
読む-<私が>証文-<対格>清らかな-<軽性・対格>

「清らかな書きぶりの証文を読む。」

言葉や書きぶりが整っていることをほめる用法。証文 sáindar は軽性の子音語幹なので、形容詞は軽性・対格の -an で一致する。書きぶりで書き手の教養を測る習わしをふまえた言い方。

lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。

lúintór-onébro,méhálþel-ánéndr-ar.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>人-<〜らの>

「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」

子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。

léunim ré lísa lisár sáindaran.

読み:レウニン レー リーサ リサール サインダラン。

léun-imrélís-alis-ársáindar-an.
申す-<私が><〜と(節)>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>

「書記が証文を書いたと申し上げます。」

目上の人への報告。léun- は「言う」の謙譲の補充形。ré の節は主節の後ろに置き、主節と同じく動詞で始まる。時制がないので、lísa は文脈から「書いた」と訳している。

lóima ráuvan loimán ré aurénde selvá.

読み:ロイマ ラウヴァン ロイマーン レー アウレンデ セルヴァー。

lóim-aráuvanloim-ánréaur-énd-eselvá.
唱える-<(軽いものが)>森の巫<主格>詞-<対格>ように昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>息<主格>

「森の巫は、息が昇るよう詞を唱える。」

葬送の場面を述べた文。ré に願望法を続けると、「〜するように」という目的の節になる。aurénde は挨拶の aurénde と同じ形で、ここでは本来の「昇りますように」という意味で使われている。

séna lisár sáindaran si fáron.

読み:セーナ リサール サインダラン シ ファーロン。

sén-alis-ársáindar-ansifáron.
見る-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>と荷<対格>

「書記は証文と荷を見る。」

si で目的語を二つ並べた文。並べた語は、それぞれ文の中の役割に合う格をとる(どちらも対格。重性の fáron は主格と同じ形)。動詞は主語の書記に一致するので、双数にはならない。

pá liséla sáindaran?

読み:パー リセーラ サインダラン?

pális-él-asáindar-an?
誰<主格>書く-<〜だろう>-<(軽いものが)>証文-<対格>

「誰が証文を書くのだろう?」

独り言のように尋ねる文。疑問詞 pá を文頭に出し、動詞を推量法にして、ためらいや思案を表している。強勢は推量法の -él- に移る。

lóiman lourvirárai lóurul dáunaun.

読み:ロイマン ロウルヴィラーライ ロールル ダウナウン。

lóim-anlourvirár-ailóur-uldáun-aun.
唱える-<彼らが>系譜読み-<〜たちが>瀬-<〜たちを>二人-<双数の〜の・〜に>

「系譜読みたちが、二人の瀬を唱え交わす。」

婚姻の取り決めで、両家の系譜読みが、結ばれる二人の系譜を源から一瀬ずつ読み交わす儀礼を述べた文。dáun の属格は、双数の語尾 -aun を重ねて dáunaun になる。属格は名詞 lóurul の後ろに置く。

aumeirénde ausenár sáindaran dunémei.

読み:アウメイレンデ アウセナール サインダラン ドゥネーメイ。

au-meir-énd-eau-sen-ársáindar-anduném-ei.
<お〜になる・御〜>-与える-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格>手前-<与格>

「目付殿に、手前へ証文をお下げ渡しいただきたく存じます。」

上向きの依頼。相手は2人称で呼ばず、ausenár「目付殿」を主語にした願望法の3人称で言う。受け手の自分は、ném ではなく、へりくだった duném の与格で言う。au- は m の前ではそのままの形でつく(aumeir-)。尊敬の動詞と謙譲の代名詞が一つの文に並ぶので、「目上の人から私へ」という上下の関係が文法の上に表れる。

dulísim duném sáindaran aulisárei.

読み:ドゥリーシン ドゥネーン サインダラン アウリサーレイ。

du-lís-imdunémsáindar-anau-lis-ár-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>手前証文-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「書記の方への証文は、手前が書かせていただきます。」

主語の代名詞は動詞の語尾でわかるのでふつうは言わない。それをわざわざ duném と言うことで、「ほかでもない手前が」という強調になる。謙譲の動詞 dulísim とともに使い、目上の人の前で役目を引き受けるときの改まった言い方。

séiran faronárai társan.

読み:セーラン ファロナーライ タルサン。

séir-anfaronár-aitárs-an.
待つ-<彼らが>運び人-<〜たちが>お前たち-<対格>

「運び人たちがお前たちを待っている。」

語順は「動詞–主語–目的語」。társ の対格は、子音語幹と同じく -an をつけて társan とする。2人称複数の代名詞なので下向きか並びの話し方で、目上の人たちには使わない。

lísan lisárai dáu sáindarau, dulíþan dáun du orén.

読み:リーサン リサーライ ダウ サインダラウ、ドゥリーサン ダウン ドゥ オレーン。

lís-anlis-ár-aidáusáindar-au,dul-íþ-andáunduorén.
書く-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>二証文-<双数>下る-<〜させる>-<彼らが>ふたつ下手縁<対格>

「書記たちは証文を二通書き、そのふたつを縁へ下ろす。」

後半の dáun は、前半の双数 sáindarau を受けている。dáun には性の区別がないので、軽性のものでも重性のものでも同じ形で受ける。後半では主語を省いているが、動詞の語尾から、前半と同じ書記たちが主語だとわかる。

aurélan ombára ilánai dórel.

読み:アウレーラン オンバーラ イラーナイ ドーレル。

aur-él-anombárailán-aidórel.
昇る-<〜だろう>-<彼らが>十灯-<〜たちが>明日

「明日、十の灯が昇るだろう。」

星読みが年の始まりを告げるときの言い方。ombára は星座名の中にだけ残る古い形の「十」で、「そろった・満ちた」という意味を帯びる。格変化はせず、複数の ilánai を前から飾る。ilánai は a語幹 ilána の複数主格で、語根 ilán- に軽性の複数主格の語尾 -ai がついた形。動詞の前に出られる語は限られているので、時を表す dórel は文末に置く。確かでない未来なので推量法を使う。

lúin áuran ombára ilánai, dúlan kelárai du orén.

読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥーラン ケラーライ ドゥ オレーン。

lúináur-anombárailán-ai,dúl-ankel-ár-aiduorén.
とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>下る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「十の灯が昇ると、樵たちは縁へ下りていく。」

「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。ombára ilánai「十の灯」は年の始まりを告げる星の群れの名前で、ombára は数えた結果ではなく名前の一部。そのため、星を数えることの禁忌には当たらない。ilánai は語根 ilán- に複数主格の語尾 -ai がついた形。

pórin lisésa virán sé?

読み:ポーリン リセーサ ヴィラーン セー?

pórinlis-és-avir-ánsé?
どのように書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>言葉-<対格>この<軽性>

「この言葉はどう書けばよいのか。」

学び舎で字の書き方を尋ねる言い方。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」という一般の主語を表し、軽性の形をとる。それで「どう書くべきか」「どう書くものか」の意味になる。疑問詞 pórin は動詞の前に出る。

lís þelán táses sérin.

読み:リース セラーン ターセス セーリン。

lísþel-ántás-essérin.
書く<命令法><あなたが>名前-<対格><あなた>-<属格>このように

「自分の名前を、こうやって書いてごらん。」

師が手本を書いて見せながら、子どもに言う言い方。下向きなので命令法の2人称単数(むき出しの語幹)を使う。sérin は様子を表す語として、文の後ろのほうに置く。目的語に格語尾がついているので、市の取引言葉ではなく命令法だとわかる。

ké lísan dalorárai térin?

読み:ケー リーサン ダロラーライ テーリン?

kélís-andalor-ár-aitérin?
<〜か>書く-<彼らが>下の国-<〜する人>-<〜たちが>そのように

「下の国の者たちは、ああいうふうに書くのか。」

よそから来た文字の書きぶりを見て尋ねる、はい・いいえの問い。ké は文のいちばん前に置く。térin は、離れたところで見た書き方を指す。答えるときは、動詞を繰り返して lísan か na lísan と言う。

sáindaran pél luuméla ausenár?

読み:サインダラン ペール ルーメーラ アウセナール?

sáindar-anpélluum-él-aau-sen-ár?
証文-<対格>どのご覧になる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「目付殿は、どの証文をご覧になるのでしょうか。」

上向きの問い。ké は使わず、推量法で推し量る形にする。尊敬の補充形 lúum- に推量法の -él- がつくので、強勢が接尾辞に移る。疑問の名詞句 sáindaran pél は文頭に出す。

pómbar gandérul dulíþan kelárai?

読み:ポンバル ガンデールル ドゥリーサン ケラーライ?

pómbargandér-uldul-íþ-ankel-ár-ai?
いくつ硬木-<〜たちを>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

「樵たちは硬木を何本下ろすのか。」

降ろし場での問い。帳簿では量の名詞 báron「本」を入れるが、会話では省くことが多い。pómbar は名詞の前に置き、名詞は複数にする。疑問の名詞句は目的語として文頭に出るので、gandérul は複数対格。

loimésa ráuvan loimán sérin.

読み:ロイメーサ ラウヴァン ロイマーン セーリン。

loim-és-aráuvanloim-ánsérin.
唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)>森の巫<主格>詞-<対格>このように

「森の巫は、このように詞を唱えるべし。」

降ろし場の碑の文。法や作法を定めるための当為法で書かれている。sérin は、碑文でこのあとに刻まれている詞そのものを指す。

plúin dulíþan kelárai gandér?

読み:プルーイン ドゥリーサン ケラーライ ガンデール?

plúindul-íþ-ankel-ár-aigandér?
いつ下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>

「樵たちはいつ硬木を下ろすのか。」

疑問詞 plúin は、ほかの疑問詞と同じく動詞の前に置く。plúin は格変化しない。時制がないので、過去のことにも先のことにも使える。答えはふつう、lúin 節(「十の灯が昇ると」など)か、an nébroi「霧の前に」のような時を表す句で返す。

dulísim sáindaran aurélei.

読み:ドゥリーシン サインダラン アウレーレイ。

du-lís-imsáindar-anaurél-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格>あの方-<与格>

「あの方に証文を書いて差し上げます。」

自分の動作には謙譲の du- をつけ、受け手の aurél は与格 -ei にする。こうして、上下の関係が一つの文の中にそろって表れる。aurél は él と同じく②型の語尾で変化する(aurélan・auréles・aurélei)。高め名詞なので、数詞や双数はつけない。

flúuna faronár míran.

読み:フルーナ ファロナール ミーラン。

flúun-afaronármír-an.
洗う-<(軽いものが)>運び人<主格>自分-<対格>

「運び人は自分の体を洗う。」

再帰代名詞 mír の対格 míran が、主語自身を目的語として受けている。él を使って flúuna faronár élan と言うと、別の人を洗う意味になる。mír は主語を指し返す語なので、主格では使わない。

na lúuman aursárai séndo, lúin tóro nébro es orénos.

読み:ナ ルーマン アウルサーライ センド、ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス。

nalúum-anaursár-aiséndo,lúintór-onébroesorén-os.
<〜ない>ご覧になる-<彼らが>祖先-<〜たちが>この世<対格>とき来る-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>

「縁から霧が上がってくるとき、祖先はこの世をご覧にならない。」

霧期を恐れる理由を語る言い方。ここでの séndo は話し手のいる場所ではなく、上(天)と下(干潟・地の底)のあいだにある、人の生きる「中の世界」を指す。祖先には「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。祖先は数えないので、複数はひとまとまりの「方々」の意味になる。

lúuman aursárai séndo es élvares.

読み:ルーマン アウルサーライ センド エス エルヴァレス。

lúum-anaursár-aiséndoesélvar-es.
ご覧になる-<彼らが>祖先-<〜たちが>この世<対格>から天-<属格>

「祖先は天からこの世をご覧になる。」

祖先祀りの詞の一句。上の世界 élvar と、中の世界 séndo が対になる。祖先の行いには尊敬の補充形 lúum- を使う。séndo は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

lísa ínin lisárar þelán míres.

読み:リーサ イーニン リサーラル セラーン ミーレス。

lís-aíninlis-ár-arþel-ánmír-es.
書く-<(軽いものが)>それぞれ<主格>書く-<〜する人>-<〜らの>名前-<対格>自分-<属格>

「書記たちは、それぞれ自分の名を書く。」

ínin は、どの集まりの「それぞれ」かを複数属格(lisárar)で後ろに示す。主語は一つずつに分けられているので、動詞は複数ではなく3人称単数・軽性の lísa になる。役所で証文に名を連ねる場面の言い方。

mé vír þelán élaures!

読み:メー ヴィール セラーン エーラウレス!

mévírþel-ánélaur-es!
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格>昇りゆく人-<属格>

「亡くなった方の名を口にしてはならない。」

喪中に、子どもや目下の者をたしなめる言い方。死後一年は生前の名を声に出せないので、死者は élaur「昇りゆく人」と呼ぶ。禁止は mé+命令法。名前を書くことは禁じられていない。

lísa páin þelán míres sáindarei.

読み:リーサ パイン セラーン ミーレス サインダレイ。

lís-apáinþel-ánmír-essáindar-ei.
書く-<(軽いものが)>誰か<主格>名前-<対格>自分-<属格>証文-<与格>

「誰かが証文に自分の名を書いていった。」

市の帳場で、書いた人のわからない書き込みを見つけたときの言い方。時制がないので、文脈によって「書いた」とも「書いている」とも訳せる。再帰代名詞 mír の属格 míres は主語の páin を指す。紙の証文 sáindar は軽性の子音語幹なので、与格は -ei になる。

hóinan ómbra kelárar.

読み:ホイナン オンブラ ケラーラル。

hóin-anómbrakel-ár-ar.
帰る-<彼らが>みな<主格>伐る-<〜する人>-<〜らの>

「樵たちはみな帰っていく。」

ómbra に人を表す複数属格を添えると、「〜たちの全員」、つまり「みな」の意味になる。意味の上では複数を指すので、動詞は3人称複数で受ける。一人ひとりを数えずに全員をまとめて言う言い方。

na tóran ómbra senárar.

読み:ナ トーラン オンブラ セナーラル。

natór-anómbrasen-ár-ar.
<〜ない>来る-<彼らが>みな<主格>見る-<〜する人>-<〜らの>

「目付たちがみな来たわけではない。」

na で否定すると、「全員が〜したわけではない」という部分否定になる。ómbra は意味の上で複数を受けるので、動詞は3人称複数になる。

dulíþan kelárai gandér du dálor selúin.

読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル セルーイン。

dul-íþ-ankel-ár-aigandérdudálorselúin.
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>下手下の国<対格>今の世

「今の世、樵たちは硬木を下の国へ下ろしている。」

年代記の記事の書きぶり。昔(統一の前)と比べて、今の王の世のならわしを述べている。直説法には時制がないので、selúin が時代を区切る働きをする。gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

tóran faronárai es orénos telúin.

読み:トーラン ファロナーライ エス オレーノス テルーイン。

tór-anfaron-ár-aiesorén-ostelúin.
来る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>その時

「その時、運び人たちが縁から上がってきた。」

昔語りや出来事の報告で、すでに話に出た時を指す言い方。動詞には時制がないので、過去のことだとわかるのは telúin と文脈による。faronár は fáron「荷」に -ár「〜する人」がついた語。

vírau dáun ín virán.

読み:ヴィーラウ ダウン イーン ヴィラーン。

vír-audáunínvir-án.
言う-<双数>二人同じ言葉-<対格>

「二人は同じことを言っている。」

日常の言い方で、二人の言い分が一致していることを表す。ここでの ín virán は「一つの言葉」ではなく「同じ言葉」の意味。双数の動詞は人称も性も区別しない。

tóran sóur faronárai es orénos.

読み:トーラン ソール ファロナーライ エス オレーノス。

tór-ansóurfaron-ár-aiesorén-os.
来る-<彼らが>六荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

「運び人が六人、縁から上がってくる。」

運び人のような目下の者や働き手は、数詞で数えてかまわない。目上の人は数えず、ひとまとまりの複数で言う。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる。

lísa lisár ín sáindaran.

読み:リーサ リサール イーン サインダラン。

lís-alis-árínsáindar-an.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>一証文-<対格>

「書記が証文を一通書く。」

役所での報告。ín「一」の後ろの名詞は単数になり、ここでは目的語なので単数対格 sáindaran になる。帳簿に記すときは量の名詞を入れるが、話し言葉では省いてよい。

faronéran faronárai nél fáronul du orén.

読み:ファロネーラン ファロナーライ ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

faron-ér-anfaron-ár-ainélfáron-ulduorén.
荷-<〜でする>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>七荷-<〜たちを>下手縁<対格>

「運び人たちは荷を七つ担いで縁へ下りる。」

崖道の荷運びを言う文。働き手は数えてもよいが、ここで数えているのは荷のほう。fáron は重性なので、複数対格は -ul で、主格と同じ形になる。

dúlan ombár þrénul es aldáres áurenes.

読み:ドゥーラン オンバール スレーヌル エス アルダーレス アウレネス。

dúl-anombárþrén-ulesaldár-esáur-en-es.
下る-<彼らが>そろった段-<〜たちが>から座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>

「欠けのない段は、高き座から下っていく。」

身分の秩序を説く、改まった言い回し。ombár þrénul は「十の段」だが、数えた結果を言うのではなく、「一段も欠けない階段の全体」という意味で使っている。主語の þrénul は重性の複数主格。es+属格で「〜から」。

dúlan nél fáronul du orén.

読み:ドゥーラン ネール ファーロヌル ドゥ オレーン。

dúl-annélfáron-ulduorén.
下る-<彼らが>七荷-<〜たちが>下手縁<対格>

「七つの荷が縁へ下りていく。」

nél「七」の後ろの名詞は複数になる。fáron「荷」は重性なので、複数主格は -ul。主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。du+対格で「下手へ」の意味になり、重性の orén は主格と対格が同じ形。

ké rímbes néman?

読み:ケー リンベス ネーマン?

kérímb-esném-an?
<〜か>物のように扱う-<あなたが><私>-<対格>

「お前、俺を物扱いするのか。」

人を目的語にとると、「数える」は「物のように扱う、軽んじる」という非難の意味になる。2人称と問いの小辞 ké を使っているので、同じ段か下の段の相手に、腹を立てて言う言い方。

rímban brándalai némoran.

読み:リンバン ブランダライ ネーモラン。

rímb-anbrándal-ainémor-an.
物のように扱う-<彼らが>司-<〜たちが><我々>-<対格>

「お役所の連中は、俺たちを物のように扱う。」

運び人や森の民が、役所への不満を言う決まった言い方。人を数で扱うことは、相手を「下げる」行いとされる。そのため、炉や人数を数えて税を取ることへの反感が、この動詞で言い表される。

lísan lisárai slúumbar lénar sáindarar.

読み:リーサン リサーライ スルーンバル レーナル サインダラル。

lís-anlis-ár-aislúumbarlén-arsáindar-ar.
書く-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>一万枚-<〜らの>証文-<〜らの>

「書記たちは証文を一万枚書く。」

書の司の仕事の多さを言う、帳簿や報告で使う言い方。slúumbar は slúun・sénþar と同じく名詞として働き、量の名詞 lén「枚」を複数属格でとる。その lén がさらに証文 sáindar を複数属格でとるので、属格が二つ続く。

dulíþan slúumbar kelárar gandér.

読み:ドゥリーサン スルーンバル ケラーラル ガンデール。

dul-íþ-anslúumbarkel-ár-argandér.
下る-<〜させる>-<彼らが>一万伐る-<〜する人>-<〜らの>硬木<対格>

「一万人の樵が硬木を下ろす。」

伐り出しの規模を誇張まじりに言う文。目上の人は数えないが、働き手は人数で数えてよいので、kelár「樵」を複数属格でとれる。slúumbar kelárar 全体が主語なので、動詞は3人称複数になる。

léunim virán sníran aurélei.

読み:レウニン ヴィラーン スニーラン アウレーレイ。

léun-imvir-ánsnír-anaurél-ei.
申す-<私が>言葉-<対格>わずかな-<軽性・対格>あの方-<与格>

「あの方に、わずかばかり申し上げます。」

目上の人への口上や手紙の書き出しで使う前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。snír は軽性・単数・対格の virán に一致して sníran になる。自分の言葉を「わずかな」と低める言い方は、指小辞のついた viríña「拙い句」と並んで、改まった場の謙遜の定型である。

tóran pómbarin faronárai es orénos.

読み:トーラン ポンバリン ファロナーライ エス オレーノス。

tór-anpómbarinfaronár-aiesorén-os.
来る-<彼らが>いくつか運び人-<〜たちが>から縁-<属格>

「縁から運び人が何人か上がってくる。」

pómbarin は数詞と同じく名詞の前に置き、後ろの名詞は複数にする。運び人は働き手なので数えてよい。目上の人には、はっきりしない数であっても pómbarin は使えない。その場合は fléiran ausenárai「目付の方々がお出ましになる」のように、ひとまとまりの複数で言う。

lúin glǘno véinor, tóran faronárai snírai séndo.

読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ファロナーライ スニーライ センド。

lúinglǘn-ovéinor,tór-anfaronár-aisnír-aiséndo.
とき凍る-<(重いものが)>湖<主格>来る-<彼らが>運び人-<〜たちが>少ない-<〜たちが>ここ

「湖が凍るころには、ここへ来る運び人は少なくなる。」

lúin の節は主節の前に置く。湖 véinor は地の上の水なので重性で、動詞は -o をとる。主節の主語 faronárai は軽性・複数・主格で、snírai はそれに一致する。運び人のような働き手は数えてよいので、snír で多い少ないを言ってもかまわない。凍りの頃の崖道を言う文。

dulíþan kelárai déral fáronos sórel.

読み:ドゥリーサン ケラーライ デーラル ファーロノス ソーレル。

dul-íþ-ankel-ár-aidéralfáron-ossórel.
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>半分<対格>荷-<属格>今日

「今日、樵たちは荷の半分を下ろす。」

何の半分かは属格(fáronos)で後ろに示す。dulíþ- は dúl-「下る」の使役で「下ろす」。直説法なので -íþ- が強勢をとる。sórel のような時の語は文末に置く。降ろし場で、その日の吊り下ろしの段取りを言う文。

na sénim sáindaran sé, éso senó némes múr.

読み:ナ セーニン サインダラン セー、エーソ セノー ネーメス ムール。

nasén-imsáindar-ansé,és-osenóném-esmúr.
<〜ない>見る-<私が>証文-<対格>この<軽性>いる-<(重いものが)>目<主格><私>-<属格>濁った

「この証文は見えぬ。私の目はかすんでいる。」

年長の者が細かい字を読めないときの言い方。主節二つを接続詞なしで並べるので、あいだに区切りを入れる。senó は重性なので、繋辞は -o をとり、述語の múr「濁った」にも語尾がつかない。目がよく見えないことを、水と同じ「濁る」で言っている。

gélan faronárai du orén dáu fréimau sórel.

読み:ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ダウ フレーマウ ソーレル。

gél-anfaronár-aiduoréndáufréim-ausórel.
行く-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>二度回-<双数>今日

「運び人たちは今日、縁へ二度下りる。」

崖道の仕事ぶりを述べる日常の文。回数は、数詞と fréim の対格で、動詞を修飾する副詞のように言う(道のりの対格と同じ使い方)。dáu の後ろなので双数の fréimau になる。fréim は軽性の子音語幹として変化する。

mé vír virán rúgalan, éso hóum!

読み:メー ヴィール ヴィラーン ルーガラン、エーソ ホーン!

mévírvir-ánrúgal-an,és-ohóum!
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>言葉-<対格>粗い-<軽性・対格>いる-<(重いものが)>炉<主格>

「粗い言葉を言うな。炉の前だぞ。」

家の中で、親が子をたしなめる言い方。炉の前で粗野な言葉を口にしてはいけない、という禁忌を表す。禁止は「mé+命令法」で言う。後半の éso hóum は「炉がある(のだ)」で、場所を示さない存在文。hóum は重性なので、繋辞は -o をとる。

meirésan hóumul meiró aldárei áurenei.

読み:メイレーサン ホームル メイロー アルダーレイ アウレネイ。

meir-és-anhóum-ulmeiróaldár-eiáur-en-ei.
与える-<〜すべし>-<彼らが>世帯-<〜たちが>税<対格>座-<与格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格>

「世帯(炉)はそれぞれ、高き座に税を納めるべし。」

法典の文体。当為法の3人称複数で義務を定める。税を負うのは個人ではなく炉(世帯)で、主語は重性の複数主格 hóumul。méir-「与える」は、ここでは「納める」の意味。受け手の aldár áuren「高き座」は与格で、分詞も軽性の与格 -ei で一致する。

lúin kélan kelárai gandér, loimésa ráuvan loimán téir fréimais.

読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、ロイメーサ ラウヴァン ロイマーン テール フレーマイス。

lúinkél-ankel-ár-aigandér,loim-és-aráuvanloim-ántéirfréim-ais.
とき伐る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)>森の巫<主格>詞-<対格>三度回-<〜たちを>

「樵たちが硬木を伐るときは、森の巫が詞を三度唱えるべし。」

降ろし場の碑に刻まれるような、儀礼の作法を定める当為法の文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。主節では主語を言っているので、それに一致して3人称単数・軽性になる。強勢は当為法の -és- に移り、語根の ´ は消える。三度は téir fréimais(複数対格)。

dúlan dulfáronul bróusul du orén sórel.

読み:ドゥーラン ドゥルファーロヌル ブロースル ドゥ オレーン ソーレル。

dúl-andulfáron-ulbróus-ulduorénsórel.
下る-<彼らが>下ろし荷-<〜たちが>多い-<〜たちが>下手縁<対格>今日

「今日は多くの下ろし荷が縁へ下りていく。」

乾風期の前半、降ろし場や崖道で聞かれる日常の文。形容詞 bróus は名詞の後ろに置き、名詞の性・数・格に一致する。dulfáron は重性なので、形容詞も重性の複数主格 -ul をとる。動詞は複数の主語に一致して3人称複数 -an になる。

mé léim virán gráisan un múndo táses!

読み:メー レーン ヴィラーン グライサン ウン ムンド ターセス!

méléimvir-ángráis-anunmúndotás-es!
<禁止・願いの打ち消し>置く<命令法><あなたが>言葉-<対格>悪い-<対格>内に口<対格><あなた>-<属格>

「悪い言葉を口に入れるな(=口にするな)。」

親が子を叱るときの言い方。炉の前では粗野な言葉を口にしてはいけないとされる。禁止は「mé+命令法」で言う。un+対格で「〜の中へ」を表す。múndo は重性なので、対格は主格と同じ形になる。形容詞 gráis は軽性の virá に合わせて、対格の -an をとる。

dúlan faronárai du múndo orénos.

読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ムンド オレーノス。

dúl-anfaronár-aidumúndoorén-os.
下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手出口<対格>縁-<属格>

「運び人たちは縁の口へ下りていく。」

múndo orénos「縁の口」は、崖道が崖の麓に開く下の口を指す。縁の市はここに立つ。du+対格で「下手へ」。属格の orénos は名詞の後ろに置く。

léunim virán an aufíndo ausenáres.

読み:レウニン ヴィラーン アン アウフィンド アウセナーレス。

léun-imvir-ánanau-fíndoau-sen-ár-es.
申す-<私が>言葉-<対格>上手<お〜になる・御〜>-耳<対格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<属格>

「目付殿の御耳に、一言申し上げます。」

目上の人に話を切り出す改まった前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。目上の人の体の部分には au- をつける。an+対格で「上手へ」、つまり上の人に向けて言葉を届ける感じになる。重性の aufíndo は対格でも主格と同じ形。

léunim virán brésos némes.

読み:レウニン ヴィラーン ブレーソス ネーメス。

léun-imvir-ánbrés-osném-es.
申す-<私が>言葉-<対格>胸の内-<属格><私>-<属格>

「胸の内の言葉を申し上げます。」

改まった場で本心を打ち明けるときの前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。属格が二つ続き、virán brésos némes で「私の胸の内の言葉」になる。

auríþan ólmarai kréinul an þráin.

読み:アウリーサン オルマライ クレーヌル アン スライン。

aur-íþ-anólmar-aikréin-ulanþráin.
昇る-<〜させる>-<彼らが>年長者-<〜たちが>遺骨-<〜たちを>上手峰<対格>

「年長者たちが遺骨を上手の峰へ運び上げる。」

葬送の描写。火葬のあとの骨は、北の高みや丘の上の納骨所に収める。使役の auríþ-「上げる」と an+対格「上手へ」を組み合わせて、骨を高い所へ送る動きを言う。

lúin glóira aldár áuren, snéiman lisárai.

読み:ルーイン グロイラ アルダール アウレン、スネーマン リサーライ。

lúinglóir-aaldáráur-en,snéim-anlis-ár-ai.
ときお越しになる-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>礼をする-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>

「高き座がお越しになると、書記たちは礼をする。」

目上の人に頭を下げて敬意を示す意味。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。宮廷の作法を記した文の言い方。

mé vrín éndran!

読み:メー ヴリーン エンドラン!

mévrínéndr-an!
<禁止・願いの打ち消し>またぐ<命令法><あなたが>人-<対格>

「人をまたぐな!」

人をまたぐのは「その人の上に立つ」ことになるので、強い無礼とされる。禁止は mé+命令法で言う。親が子をたしなめるときによく使う。

vrína endríña gandér, na vrína éndran.

読み:ヴリーナ エンドリーニャ ガンデール、ナ ヴリーナ エンドラン。

vrín-aendríñagandér,navrín-aéndr-an.
またぐ-<(軽いものが)>子ども<主格>硬木<対格><〜ない>またぐ-<(軽いものが)>人-<対格>

「子どもは硬木はまたいでも、人はまたがない。」

物をまたぐのはかまわないが、人をまたぐのは禁忌だという対比。動詞は主語の endríña(軽性)に一致して -a をとる。gandér は重性なので、対格に語尾がつかない。

mé vrinésa houmáran.

読み:メー ヴリネーサ ホウマーラン。

mévrin-és-ahoumár-an.
<禁止・願いの打ち消し>ないがしろにする-<〜すべし>-<(軽いものが)>家の主-<対格>

「家の主をないがしろにせぬこと。」

家の決まりを書いた戒めの文。当為法で主語を言わないので、「人は〜すべし」という一般の主語になり、軽性の形をとる。当為法の否定には mé を使う。

ombéra senár faronáran ré dulíþa fáron es orénos.

読み:オンベーラ セナール ファロナーラン レー ドゥリーサ ファーロン エス オレーノス。

ombér-asenárfaronár-anrédul-íþ-afáronesorén-os.
名指しする-<(軽いものが)>目付<主格>運び人-<対格><〜と(節)>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>荷<対格>から縁-<属格>

「目付は、縁から荷を落としたと運び人を名指しで咎める。」

人を名指しして咎める意味。ré の後ろの節で、何を咎めたかを言う。縁の市の目付が揉め事を裁く場面の言い方。

mé omberénde ausenár néman.

読み:メー オンベレンデ アウセナール ネーマン。

méomber-énd-eau-senárném-an.
<禁止・願いの打ち消し>名指しする-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-目付<私>-<対格>

「目付殿、どうか私を名指しなさいませぬよう。」

上向きの話し方。相手を2人称で呼ばず、ausenár「目付殿」を3人称の主語にする。命令法ではなく願望法を使い、mé で否定して「〜なさいませぬよう」と願う。願望法では3人称単数・軽性の語尾が -e になる。

ombéra endríña aurán te áura an dún.

読み:オンベーラ エンドリーニャ アウラーン テ アウラ アン ドゥーン。

ombér-aendríñaaur-ánteáur-aandún.
指さす-<(軽いものが)>子ども<主格>縁鷲-<対格><関係節>昇る-<(軽いものが)>上手丘<対格>

「子どもが、丘の上手へ昇っていく縁鷲を指さす。」

鳥を指さすのはかまわない。指さすのが禁じられているのは、星と目上の人。aurá は語尾に強勢のあるa語幹なので、対格は aurán。関係節は te で始まり、主語の抜けた穴は空けたままにする。dún「丘」は重性なので、an の後ろの対格も主格と同じ形になる。

rainíþa ólmar loimán dulóurei téir lóurul.

読み:ライニーサ オルマル ロイマーン ドゥローレイ テール ロールル。

rain-íþ-aólmarloim-ándulóur-eitéirlóur-ul.
知る-<〜させる>-<(軽いものが)>年長者<主格>詞-<対格>下の世代の血族-<与格>三瀬-<〜たちを>

「年長者が曾孫に詞を教える。」

森の村などで、古い詞を年長者から三世代下へ受け継ぐ場面。語順は動詞–主語–目的語–与格。dulóur は与格 dulóurei になるが、後ろの téir lóurul は道のりの対格のまま変わらない。

lóima lourvirár virán anlóures téir lóurul.

読み:ロイマ ロウルヴィラール ヴィラーン アンローレス テール ロールル。

lóim-alourvirárvir-ánanlóur-estéirlóur-ul.
唱える-<(軽いものが)>系譜読み<主格>言葉-<対格>上の世代の血族-<属格>三瀬-<〜たちを>

「系譜読みが、曾祖父(曾祖母)の言葉を唱える。」

祖先祀りの場面の文。anlóur は属格の anlóures になるが、後ろの téir lóurul は道のりの対格のまま変わらない。

mé vrín dubrélan táses!

読み:メー ヴリーン ドゥブレーラン ターセス!

mévríndubrél-antás-es!
<禁止・願いの打ち消し>またぐ<命令法><あなたが>弟・妹-<対格><あなた>-<属格>

「弟(妹)をまたぐな。」

親が年上の子をしかるときの決まった言い方。人をまたぐのは、その人の上に立つことになるので強い無礼とされ、相手がきょうだいでも許されない。禁止は「mé+命令法」。語幹 vrín- には削る子音のつながりがないので、命令形は語幹のまま。

fíndan aursárai viráis gléinais.

読み:フィンダン アウルサーライ ヴィライス グレーナイス。

fínd-anaursár-aivir-áisgléin-ais.
聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<〜たちを>清い-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

「祖先たちは、清い言葉を聞き届ける。」

整った言葉は息となって上へ昇り、天の祖先に届くという信仰を表す、格言のような一句。主語の複数主格 aursárai に合わせて、動詞は3人称複数の -an をとる。形容詞 gléin は、修飾する viráis に合わせて軽性・複数・対格の -ais で一致する。

dulísim sáindaran anlóurei éulei.

読み:ドゥリーシン サインダラン アンローレイ エウレイ。

du-lís-imsáindar-ananlóur-eiéul-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格>親-<与格>別の流れの-<軽性・与格>

「義理の親に、証文を書いて差し上げます。」

婚姻の取り決めなどで使う改まった言い方。anlóur éul「別の流れの瀬上」は配偶者の親を指す。謙譲の du- で自分の行いを低めている。形容詞 éul は、修飾する anlóurei に合わせて軽性・与格の -ei をとる。

ké sénes keláran éulan?

読み:ケー セーネス ケラーラン エウラン?

késén-eskel-ár-anéul-an?
<〜か>見る-<あなたが>伐る-<〜する人>-<対格>よその家の-<軽性・対格>

「よその家の樵を見かけたか。」

村の中のくだけた問い。はい・いいえで答える問いは文頭の ké で作る。2人称を使っているので、下向きか並びの話し方になる。kelár は軽性の子音語幹で、対格は -an。éul も軽性・対格の -an で一致する。答えるときは動詞を繰り返し、sénim「見た」か na sénim「見ていない」と言う。

lísa véiran némes sáindaran.

読み:リーサ ヴェーラン ネーメス サインダラン。

lís-avéiranném-essáindar-an.
書く-<(軽いものが)>配偶者<私>-<属格>証文-<対格>

「私の連れ合いが証文を書く。」

véiran は人を指すので軽性で、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。夫と妻を区別しない。持ち主は属格にして名詞の後ろに置く。目上の人の配偶者を言うときは、持ち物と同じように尊敬の au- をつける。au- は v- の前で aub- に融合するので、その場合は aubéiran になる。

lísa lisár sáindaran véiranaun.

読み:リーサ リサール サインダラン ヴェーラナウン。

lís-alis-ársáindar-anvéiran-aun.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>夫婦-<双数の〜の・〜に>

「書記が、その夫婦に証文を書く。」

婚姻の証文を、新しい夫婦に宛てて書く場面。双数では属格と与格が同じ形(-aun)になる。ここでは受け手を表す与格として、目的語の後ろに置いている。

aulisénde aulourvirár þelán dulóures némes sáindarei.

読み:アウリセンデ アウロウルヴィラール セラーン ドゥローレス ネーメス サインダレイ。

au-lis-énd-eau-lourvirárþel-ándulóur-esném-essáindar-ei.
<お〜になる・御〜>-書く-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-系譜読み名前-<対格>瀬下-<属格><私>-<属格>証文-<与格>

「系譜読みの方に、私の子の名を証文へお書きいただきたく存じます。」

系譜読みは家の年長の女性で、発言力も強い。そのため頼みごとは上向きの話し方でする。命令法の代わりに願望法の3人称を使い、相手は尊敬の au- をつけた役名で呼ぶ。au- は l の前では形を変えない。sáindar は軽性の子音語幹で、与格は -ei になる。

mé lisésa endríña sáindaran.

読み:メー リセーサ エンドリーニャ サインダラン。

mélis-és-aendríñasáindar-an.
<禁止・願いの打ち消し>書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>未成年の者<主格>証文-<対格>

「未成年の者は、証文を書いてはならない。」

法典の文体。当為法の否定には mé を使う。ここの endríña は年齢のことではない。成人の儀を終えておらず、成名をもたない者という、法の上での身分を指す。

þelésa torár þelán senárei.

読み:セレーサ トラール セラーン セナーレイ。

þel-és-atorárþel-ánsenár-ei.
名乗る-<〜すべし>-<(軽いものが)>来訪者<主格>名前-<対格>目付-<与格>

「来訪者は目付に名を名乗るべし。」

市や崖道の決まりを書いた札や碑の文体。当為法で、主語の torár を明示している。þél-「名乗る」は名乗る名を対格でとり、名乗る相手を与格で言う。

víran dalorárai ré brúuma naþrenár es élvares.

読み:ヴィーラン ダロラーライ レー ブルーマ ナスレナール エス エルヴァレス。

vír-andalorár-airébrúum-anaþrenáresélvar-es.
言う-<彼らが>下の国の者-<〜たちが><〜と(節)>落ちる-<(軽いものが)>異邦人<主格>から天-<属格>

「下の国の者たちは、異邦人が天から落ちてきたと言う。」

干潟の言い伝えを、高原の人が伝え聞いた形で言う文。ré の節は主節の後ろに置く。高原の世界観では、上から落ちてくる者は流れ星と同じく不吉なものとされるので、この種の話は泥の国の迷信として語られることが多い。es+属格で方向を問わない「〜から」。

meirésan houmárai meiró tambóros brándalei.

読み:メイレーサン ホウマーライ メイロー タンボーロス ブランダレイ。

meir-és-anhoumár-aimeirótambór-osbrándal-ei.
与える-<〜すべし>-<彼らが>世帯主-<〜たちが>税<対格>雑穀-<属格>司-<与格>

「世帯主は、雑穀の税を司に納めるべし。」

法典の条文の文体。当為法 -és- で「〜すべし」を表す。強勢が接尾辞に移るので、語根 méir- の ´ は消える。受け手の司は与格 -ei で表す。

faronéran faronárai fáronul du orén.

読み:ファロネーラン ファロナーライ ファーロヌル ドゥ オレーン。

faronér-anfaronár-aifáron-ulduorén.
担ぐ-<彼らが>運び人-<〜たちが>荷-<〜たちを>下手縁<対格>

「運び人たちが荷を担いで縁へ下っていく。」

乾風期の崖道のありふれた光景を言う文。faronár は軽性の子音語幹なので、複数主格は -ai。fáron「荷」は重性なので、複数対格は -ul。du+対格で下手(南)への方向を表す。縁の orén は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

tóran téir faronárai es orénos.

読み:トーラン テール ファロナーライ エス オレーノス。

tór-antéirfaronár-aiesorén-os.
来る-<彼らが>三運び人-<〜たちが>から縁-<属格>

「縁から運び人が三人上がってくる。」

運び人のような働き手は、数詞で人数を数えてよい。目上の人を数えるのは失礼なので、このような言い方はしない。三以上の数詞の後ろでは名詞が複数になる。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

lísa orenvandár sáindaran senárei.

読み:リーサ オレンヴァンダール サインダラン セナーレイ。

lís-aorenvandársáindar-ansen-ár-ei.
書く-<(軽いものが)>縁商人<主格>証文-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

「縁商人が目付に証文を書く。」

縁の市でよくある場面の文。基本の語順(動詞–主語–目的語–与格)のとおりに並んでいる。縁商人は高原の文字で読み書きができるので、市の目付に出す証文を自分で書く。時制の語形がないので、「書いた」とも訳せる。

mé rimbésa rúsilan, rimbésa álmaran.

読み:メー リンベーサ ルーシラン、リンベーサ アルマラン。

mérimb-és-arúsil-an,rimb-és-aálmar-an.
<禁止・願いの打ち消し>数える-<〜すべし>-<(軽いものが)>赤月の巡り-<対格>数える-<〜すべし>-<(軽いものが)>ひと月-<対格>

「赤月の巡りで日を数えぬこと、白月の月で数えること。」

都の年長者が、崖道帰りの若者などをたしなめるときに使う、戒めの決まった言い方。当為法で主語を言わないので「人は〜すべし」の意味になり、動詞は軽性の形をとる。禁止の前半は mé で否定する。赤月で日を数えるのは、都では田舎くさい、下の国に染まった習慣とされる。

ráuman faronárai tráumoi véinoros.

読み:ラウマン ファロナーライ トラウモイ ヴェーノロス。

ráum-anfaronár-aitráum-oivéinor-os.
歩く-<彼らが>運び人-<〜たちが>渡り氷-<与格>湖-<属格>

「「運び人たちが、湖の厚い氷の上を歩いて渡る。」」

湖が厚く凍ると、氷の上が道にも市にもなる。tráumo は道のりの対格。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。

éso þúumo séndoi, na sénim tásan.

読み:エーソ スーモ センドイ、ナ セーニン ターサン。

és-oþúumosénd-oi,nasén-imtás-an.
いる-<(重いものが)>濃霧<主格>ここ-<与格><〜ない>見る-<私が><あなた>-<対格>

「「ここは濃霧だ。お前が見えない。」」

霧期に、すぐそばの相手に話しかける日常の言い方。þúumo は重性なので、存在の動詞は éso になる。読点で区切って主節を二つ並べている。後半は直説法なので na で否定する。2人称の tás を使っているので、同輩か目下の相手への話し方になる。

mé taulésa hérvanan.

読み:メー タウレーサ ヘルヴァナン。

métaul-és-ahérvan-an.
<禁止・願いの打ち消し>取る-<〜すべし>-<(軽いものが)>大鹿-<対格>

「大鹿を獲らぬこと。」

法典や王の森の触れ書きに見られる当為法の文。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。当為法の -és- が強勢を奪うので、語根 tául- の ´ は消える。軽性の子音語幹の対格は -an になる。

toríro þúumo, mé hál þelán!

読み:トリーロ スーモ、メー ハール セラーン!

tor-ír-oþúumo,méhálþel-án!
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>濃霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

「濃霧が来たら、名を呼ぶな。」

霧の中で名前を大声で呼ぶと下の国に聞かれる、という禁忌を戒める言い方。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。þúumo は重性なので -o をとる。禁止は mé+命令法。þúumo は、ふつうの霧 nébro より濃く、隣の人も見えない霧を言う。

tóra hervíña té, tául élan ré brolénde ráuvan gleinó.

読み:トーラ ヘルヴィーニャ テー、タウル エーラン レー ブロレンデ ラウヴァン グレイノー。

tór-ahervíñaté,táulél-anrébrol-énd-eráuvangleinó.
来る-<(軽いものが)>麝香鹿<主格>あの<軽性>取る<命令法><あなたが><3人称単数・軽性>-<対格><〜と(節)>作る-<〜しますように>-<(軽いものが)>森の巫<主格>護符<対格>

「あの麝香鹿が来る。森の巫が護符を作れるよう、あれを獲れ。」

森の氏族の長が狩人に命じる、下向きの言い方。hervíña は軽性なので、指示詞は軽性の té になる。té には強勢を置き、読点で区切るので、関係節ではないとわかる。目的は「ré+願望法」で表す。この願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしいこと」を表す。護符 gleinó は重性の o 語幹なので、対格も主格と同じ形になる。

émbelan faronárai krámbo.

読み:エンベラン ファロナーライ クランボ。

émbel-anfaronár-aikrámbo.
祀る-<彼らが>運び人-<〜たちが>崖山羊<対格>

「運び人たちは崖山羊を祀る。」

崖道の運び人の信仰を述べる文。krámbo は動物なのに重性o語幹に属する古い語で、主格と対格が同じ形になる。そのため、目的語だとわかるのは VSO の語順(動詞のすぐ後ろの faronárai が主語)による。

lúin glǘno véinor, tóran dráunai du véinor.

読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ドラウナイ ドゥ ヴェーノル。

lúinglǘn-ovéinor,tór-andráun-aiduvéinor.
とき凍る-<(重いものが)>湖<主格>来る-<彼らが>狼-<〜たちが>下手湖<対格>

「湖が凍ると、狼たちが湖へ下りてくる。」

湖畔の村で凍りの頃について言う文。lúin の節は主節の前に置く。dráun は軽性の子音語幹で、複数主格は dráunai。du+対格で「下手へ」。véinor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

sénimor fíñelan an árnelei.

読み:セーニモル フィーニェラン アン アルネレイ。

sén-imorfíñel-ananárnel-ei.
見る-<我々が>山猫-<対格>上手木-<与格>

「我々は木の上に山猫を見た。」

狩りの報告。時制がないので、直説法のままで「見た」とも訳せる。fíñel は軽性の子音語幹で、対格は -an。生えている木 árnel は軽性なので、与格は -ei をとる。

ké sénes fíñelan? nés, sénim dráunan.

読み:ケー セーネス フィーニェラン?ネース、セーニン ドラウナン。

késén-esfíñel-an?nés,sén-imdráun-an.
<〜か>見る-<あなたが>山猫-<対格>いや見る-<私が>狼-<対格>

「「山猫を見たか?」「いや、狼を見た。」」

森の民どうしのくだけたやりとり。はい・いいえで答える問いは、文頭の ké で作る。否定の答えでは、間投詞 nés のあとに、動詞を自分の人称に変えて言い直す。2人称を使っているので、並びか下向きの話し方になる。

ráina tókal árnelan, ráina kelár tókalan.

読み:ライナ トーカル アルネラン、ライナ ケラール トーカラン。

ráin-atókalárnel-an,ráin-akel-ártókal-an
知る-<(軽いものが)>きつつき<主格>木-<対格>知る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>きつつき-<対格>

「きつつきは木を知り、樵はきつつきを知る。」

樵のあいだの諺。きつつきの叩く音を聞き分けて、木の中が空洞か詰まっているかを知る習わしを言う。tókal は軽性の子音語幹で、対格は tókal-an。前半と後半はどちらも動詞で始まる VSO の文で、同じ形の文を二つ並べる対句になっている。

lúin kéla kelár árnelan, na kéla búl.

読み:ルーイン ケーラ ケラール アルネラン、ナ ケーラ ブール。

lúinkél-akel-árárnel-an,nakél-abúl.
とき伐る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>木-<対格><〜ない>伐る-<(軽いものが)>根<対格>

「樵は木を伐るとき、根は伐らない。」

búl は重性なので、主格と対格が同じ形になる。伐る前の木は立ち木なので、軽性の対格 árnelan をとる。後半の節は主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。

faronéran faronárai árnelan só du orén.

読み:ファロネーラン ファロナーライ アルネラン ソー ドゥ オレーン。

faron-ér-anfaron-ár-aiárnel-ansóduorén.
荷-<〜でする>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>木-<対格>この<重性>下手縁<対格>

「運び人たちがこの材木を縁へ担いでいく。」

faronér-「担ぐ」は fáron「荷」に、名詞から動詞を作る -ér- をつけた語。faronár「運び人」は同じ語に -ár「〜する人」をつけた語。伐られた木なので、名詞は軽性の対格 árnelan のまま、指示詞は重性の só で一致させる。名詞の語尾と一致の性が食い違うのは、伐った木の決まった扱い方。

þóran planélai bróusai or flaindélail.

読み:ソーラン プラネーライ ブローサイ オル フラインデーライル。

þór-anplanél-aibróus-aiorflaindél-ail.
立つ-<彼らが>白樹皮の木-<〜たちが>多い-<〜たちが>日の出側版の木-<〜らに>

「版の木々の日の出側に、白樹皮の木がたくさん立っている。」

森の道案内や土地の説明に使う言い方。方角は絶対方位で言い、or+与格で「〜の日の出側に」を表す。生えている木は軽性なので、planél の複数主格は -ai になり、形容詞 bróus も軽性の複数主格 -ai で一致する。版の木も軽性なので、複数与格は -ail になる。

mé kél árnelan sé, ésa bóula fóndel.

読み:メー ケール アルネラン セー、エーサ ボーラ フォンデル。

mékélárnel-ansé,és-abóulafóndel.
<禁止・願いの打ち消し>伐る<命令法><あなたが>木-<対格>この<軽性>,いる-<(軽いものが)>どんぐりの木<主格>古い

「この木を伐るな。このどんぐりの木は由緒ある古木だ。」

森の村で、年長者が若い樵をたしなめるときの言い方。禁止は mé+命令法(むき出しの語幹 kél)で言うので、下向きの話し方になる。後半では、生えているどんぐりの木が軽性なので、繋辞は ésa になる。fóndel は「古くて由緒ある」というほめる響きの語。

táulan faronárai drúmo ré noiréndan.

読み:タウラン ファロナーライ ドルーモ レー ノイレンダン。

tául-anfaronár-aidrúmorénoir-énd-an.
取る-<彼らが>運び人-<〜たちが>苔<対格><〜と(節)>眠る-<〜しますように>-<彼らが>

「運び人たちは、眠るために苔を集める。」

崖道の野宿を語る文。苔は寝具や家のすき間の詰め物に使われる。drúmo は重性o語幹なので、対格は主格と同じ形になる。目的の「〜するために」は ré+願望法で表す。ここでの願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしいこと」を表す。

lúin hóinan faronárai, manélan.

読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、マネーラン。

lúinhóin-anfaronár-ai,man-él-an.
とき帰る-<彼らが>運び人-<〜たちが>食事をとる-<〜だろう>-<彼らが>

「運び人たちが戻ったら、食事にするだろう。」

lúin で始まる時の節を主節の前に置いている。主節は推量法で、これから先のことを言う。推量法の -él- には強勢があり、語根の強勢を奪う(mán- → manélan)。主節の主語は、語尾から時の節と同じ運び人たちだとわかるので言わない。

méiran ólmarai kailó kelárail.

読み:メーラン オルマライ カイロー ケラーライル。

méir-anólmar-aikailókel-ár-ail.
与える-<彼らが>年長者-<〜たちが>乾酪<対格>伐る-<〜する人>-<〜らに>

「年長者たちが樵たちに乾酪を与える。」

主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。語順は動詞–主語–目的語–与格(受け手)。受け手の kelár「樵」は軽性の子音語幹で、複数与格は -ail。kailó「乾酪」は重性o語幹の名詞で、対格も主格と同じ形。

meirésa orenvandár sáindaran senárei.

読み:メイレーサ オレンヴァンダール サインダラン セナーレイ。

meir-és-aorenvandársáindar-ansen-ár-ei.
渡す-<〜すべし>-<(軽いものが)>縁商人<主格>証文-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

「縁商人は、証文を目付に渡すこと。」

市の決まりを記した文書の文体で、当為法を使う。強勢は -és- に移り、語根の強勢は消える(meirésa)。証文を目付に預けて検めてもらうことなので、所有が移るわけではない。

dutáulim sáindaran es aulisáres.

読み:ドゥタウリン サインダラン エス アウリサーレス。

du-tául-imsáindar-anesau-lis-ár-es.
<〜させていただく>-受け取る-<私が>証文-<対格>から<お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>

「書記の方から証文を頂戴いたします。」

目上の人から物を受け取るときの改まった言い方。自分の行いには謙譲の du- をつけ、出どころの書記には尊敬の au- をつけて、上下の関係を両方とも示している。受け取る相手は es+属格で表す。

bróla lisár virán aursárail.

読み:ブローラ リサール ヴィラーン アウルサーライル。

bról-alis-árvir-ánaursár-ail.
詩を作る-<(軽いものが)>書く-<〜する人>言葉-<対格>祖先-<〜らに>

「書記が祖先に捧げる詩を作る。」

祖先に詩を捧げる習わしを言う文。virá を目的語にとると「詩を作る」の意味になる。捧げる相手は与格で示す。

kráila kelár árnelan.

読み:クライラ ケラール アルネラン。

kráil-akel-árárnel-an.
つかんで離さない-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>木-<対格>

「樵が木にしがみついている。」

しがみつく対象を対格の目的語にとる。生えている木 árnel は軽性の子音語幹なので、対格は -an になる。

gélan kelárai or véinor dórel.

読み:ゲーラン ケラーライ オル ヴェーノル ドーレル。

gél-ankel-ár-aiorvéinordórel.
行く-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>日の出側湖<対格>明日

「明日、樵たちは日の出側の湖へ行く。」

時制の語形はないので、未来のことでも直説法で言い切れる。確かでなければ推量法 geléla などを使う。東西の移動は or(日の出側)・vel(日の入り側)+対格で表す。véinor は重性で、対格でも形が変わらない。

drénan dubrélai némes an dún sórel.

読み:ドレーナン ドゥブレーライ ネーメス アン ドゥーン ソーレル。

drén-andubrél-ainém-esandúnsórel.
参る-<彼らが>弟妹-<〜たちが><私>-<属格>上手丘<対格>今日

「今日、私の弟たちが丘の上へ参ります。」

話し手自身だけでなく、身内の行き先を目上の人に告げるときにも謙譲の drén- を使う。an+対格で「上手へ」。丘の上は身分の高い家の場所なので、丘へ上がる身内を低めて言う。

mána kelár þérno! hál ráuvanan!

読み:マーナ ケラール セルノ!ハール ラウヴァナン!

mán-akel-árþérno!hálráuvan-an!
食べる-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>毒きのこ<対格>呼ぶ<命令法><あなたが>森の巫-<対格>

「樵が毒きのこを食べた!森の巫を呼べ!」

急を告げるくだけた言い方。動詞に時制の形がないので、mána だけで「食べた」の意味になる。重性名詞の þérno は、対格でも形が変わらない。命令法の2人称単数は、むき出しの語幹 hál。森の村では、毒や葬送のことは森の巫に任される。

gloumiþéla náuvra tásan; mé mán!

読み:グロウミセーラ ナウヴラ ターサン、メー マーン!

gloum-iþ-él-anáuvratás-an;mémán!
惑う-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>酔いきのこ<主格><あなた>-<対格><禁止・願いの打ち消し>食べる<命令法><あなたが>

「酔いきのこはお前を惑わすぞ。食べるな!」

目下の者や子どもへの注意。gloum-「惑う」に使役の -íþ- がついて「惑わせる」になる。結果の予告は推量法で言い、強勢は -él- に移る。náuvra は軽性なので、動詞は -a をとる。きのこのうちで náuvra だけが軽性なのは、食べた者を浮わつかせるものと見なされるからだと説明されることがある。

drénim es orénos, ré luuménde ausenár sáindaran sé.

読み:ドレーニン エス オレーノス、レー ルーメンデ アウセナール サインダラン セー。

drén-imesorén-os,réluum-énd-eau-sen-ársáindar-ansé.
伺う-<私が>から縁-<属格><〜と(節)>ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格>この<軽性>

「目付殿にこの証文をご覧いただきたく、縁から伺いました。」

役所に用事で出向き、来た目的を述べるときの決まった言い方。時制の形がないので、drénim は「伺う」とも「伺った」とも訳せる。目的を表す ré の節では願望法を使う。その中でも、目上の人は職名に au- をつけた3人称で主語にし、「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。

faronerélan faronárai sáko es orénos dórel.

読み:ファロネレーラン ファロナーライ サーコ エス オレーノス ドーレル。

faroner-él-anfaron-ár-aisákoesorén-osdórel.
運ぶ-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>塩<対格>から縁-<属格>明日

「明日、運び人たちが縁から塩を運んでくるだろう。」

これから先のことは推量法 -él- で言う。強勢は -él- に移り、-ér- の ´ は消える。3人称複数の語尾 -an は性を区別しない。塩 sáko は干潟から来る重性の名詞で、上げ荷の代表である。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

lúin glóira ausenár, þóran faronárai.

読み:ルーイン グロイラ アウセナール、ソーラン ファロナーライ。

lúinglóir-aau-sen-ár,þór-anfaron-ár-ai.
ときお越しになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>立つ-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>

「目付殿がお越しになると、運び人たちは立ち上がる。」

lúin で始まる「〜とき」の節を主節の前に置いている。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。þór- は「立っている」状態と「立ち上がる」動作の両方を表し、時制がないので、どちらの意味かは文脈で決まる。

lúin tóro nébro, ráuman faronárai du orén.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ラウマン ファロナーライ ドゥ オレーン。

lúintór-onébro,ráum-anfaron-ár-aiduorén.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「霧が来ると、運び人たちは縁のほうへ歩いていく。」

lúin の節を主節の前に置いている。霧 nébro は重性o語幹なので、動詞は -o をとる。行き先は du+対格「下手へ」で言う。高原語の移動の言い方では、上るのか下るのかをかならず言い分ける。

lúin ráumsan faronárai téir lóurul, hélan.

読み:ルーイン ラウンサン ファロナーライ テール ロールル、ヘーラン。

lúinráums-anfaron-ár-aitéirlóur-ul,hél-an.
とき旅をする<〜し終えた>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>三瀬-<〜たちを>座る-<彼らが>

「瀬を三つたどり終えると、運び人たちは腰を下ろす。」

ráum- の語根は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して ráums- にする。téir lóurul は、どれだけの道のりをたどったかを表す道のりの対格で、téir「三」の後ろの重性名詞は複数 -ul になる。川沿いの道を、瀬をひとつずつ数えながら進む言い方。

léimsa brándal ré lisésa senár sáindaran.

読み:レーンサ ブランダル レー リセーサ セナール サインダラン。

léims-abrándalrélis-és-asen-ársáindar-an.
据える<〜し終えた>-<(軽いものが)>司<主格><〜と(節)>書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>証文-<対格>

「司は、目付が証文を書くべしと定めた。」

léim- を決まりごとに使うと「定める」の意味になる。ré の後ろの節は、定められた中身を当為法のまま保つ。語根が二重母音をもつので、完了相は -s- を足して léims- にする。書かれたものを正しいとする王国らしい決まりの文。

léimsan aursárai sárvo ré mé duliþésa fáron du dálor.

読み:レーンサン アウルサーライ サルヴォ レー メー ドゥリセーサ ファーロン ドゥ ダーロル。

léims-anaursár-aisárvorémédul-iþ-és-afárondudálor.
据える<〜し終えた>-<彼らが>祖先-<〜たちが>禁忌<対格><〜と(節)><禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>荷<対格>下手下の国<対格>

「祖先たちは、下の国へ荷を落としてはならぬという禁忌を定めた。」

ré の後ろの節は当為法を保ち、mé で否定している。主語を言わない当為法は「人は〜すべし」の意味で、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。崖から物を落としてはいけない、という禁忌のいわれを語る文。

bruumíro fáron es orénos, droumélan faronárai.

読み:ブルーミーロ ファーロン エス オレーノス、ドロウメーラン ファロナーライ。

bruum-ír-ofáronesorén-os,droum-él-anfaron-ár-ai.
落ちる-<もし〜なら>-<(重いものが)>荷<主格>から縁-<属格>嘆く-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>

「縁から荷が落ちれば、運び人たちは嘆くだろう。」

条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の -ír- が強勢をとるので、語根の ´ は消えて bruumíro になる。崖から物が落ちることは忌まれるので、崖道の人々は口にするのを嫌う言い方でもある。

lúin tóro nébro, hóinan faronárai es orénos.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ホイナン ファロナーライ エス オレーノス。

lúintór-onébro,hóin-anfaron-ár-aiesorén-os.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>帰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から縁-<属格>

「霧が来ると、運び人たちは縁から帰っていく。」

縁の市の季節の終わりを言う文。nébro「霧」は重性なので、tóro は重性の -o をとる。市は霧の前に閉じるので、崖道の人々は霧を合図に故郷へ帰る。

pán séires? séirim séulinan.

読み:パーン セーレス?セーリン セウリナン。

pánséir-es?séir-imséulin-an.
誰<対格>待つ-<あなたが>待つ-<私が>友-<対格>

「「誰を待っている?」「友を待っている。」」

日常のやりとり。疑問詞の対格 pán を文頭に出す。答えでは、問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返す。

duséiran lisárai aldáran áurenan.

読み:ドゥセーラン リサーライ アルダーラン アウレナン。

du-séir-anlis-ár-aialdár-anáur-en-an.
<〜させていただく>-控えて待つ-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>座-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>

「書記たちは高き座(のお指図)を控えて待つ。」

宮廷の記録の文体。王に仕える者の行いを、王に対して低めて謙譲の duséir- で書く。aldár áuren「高き座」は対格になり、分詞 áuren も軽性・対格の -an で一致する。

élþan elþái aursárar élvarei, áurau dáu sílarau.

読み:エルサン エルサイ アウルサーラル エルヴァレイ、アウラウ ダウ シーララウ。

élþ-anelþ-áiaursár-arélvar-ei,áur-audáusílar-au.
灯る-<彼らが>火-<〜たちが>祖先-<〜らの>天-<与格>昇る-<双数>二月-<双数>

「天に祖先たちの火が灯り、二つの月が昇る。」

詩の言い回し。星を祖先の炉の火と見る考え方から、星を「祖先たちの火」と言い換え、élþ-「灯る」を使っている。星を数えない言い方なので禁忌には当たらない。月は星ではないので、数詞 dáu をつけて双数で言える。

séira lisár senáran du aldárei.

読み:セーラ リサール セナーラン ドゥ アルダーレイ。

séir-alis-ársen-ár-andualdár-ei.
待つ-<(軽いものが)>書く-<〜する人>見る-<〜する人>-<対格>下手座-<与格>

「書記は上座の手前で目付を待つ。」

日常の文。待つ相手は対格で示す。senár「目付」は軽性の子音語幹なので、対格は -an になる。du+与格で「〜の下手で」と言い、目上の座より低い位置で待っていることを表す。

duséirim aulisáran.

読み:ドゥセーリン アウリサーラン。

du-séir-imau-lis-ár-an.
<〜させていただく>-控えて待つ-<私が><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<対格>

「書記の方を、控えてお待ちしております。」

上向きの改まった言い方。謙譲の du- をつけた duséir- で自分の行いを低め、待つ相手の役職名には尊敬の au- をつけて高める。「私が・目上の人を」という上下の関係が、動詞と名詞の両方に表れる。

fíndan aursárai viráis némores an élvarei.

読み:フィンダン アウルサーライ ヴィライス ネーモレス アン エルヴァレイ。

fínd-anaursár-aivir-áisnémor-esanélvar-ei.
聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<〜たちを><我々>-<属格>上手天-<与格>

「祖先たちは天の上で、我々の言葉を聞いている。」

信仰を説く言い方。言葉は息なので上へ昇り、天にいる祖先の耳に届く、という考えを表している。時制がないので、いつでも成り立つ事柄として直説法で言う。an+与格で「上手の側で」。

aufindénde ausenár virán némes.

読み:アウフィンデンデ アウセナール ヴィラーン ネーメス。

au-find-énd-eau-sen-árvir-ánném-es.
<お〜になる・御〜>-聞き入れる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>言葉-<対格><私>-<属格>

「目付殿に、私の願いをお聞き入れいただきたく存じます。」

上向きの話し方で願い出る決まった言い方。命令法は使わず、願望法の3人称にして、目の前にいる相手を役職名の主語として扱う。動詞には尊敬の au- がつき、強勢が -énd- に移るので、語根の ´ は消える。「言葉を聞き入れる」で「願いを容れる」の意味になる。

ké fíndes virán némes?

読み:ケー フィンデス ヴィラーン ネーメス?

kéfínd-esvir-ánném-es?
<〜か>聞く-<あなたが>言葉-<対格><私>-<属格>

「俺の声が聞こえるか。」

日常のくだけた問い。はい・いいえで答える問いなので、文のいちばん前に ké を置き、2人称を使っている(下向きか並びの話し方)。答えるときは動詞を繰り返し、fíndim「聞こえる」/na fíndim「聞こえない」と言う。virá「言葉」は、ここでは相手に届く声や話を指す。

na fíndan kelárai viráis ólmarar.

読み:ナ フィンダン ケラーライ ヴィライス オルマラル。

nafínd-ankel-ár-aivir-áisólmar-ar.
<〜ない>聞き入れる-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>年長者-<〜らの>

「「樵たちは年長者の言うことを聞かない。」」

年長者がこぼすときによく使う言い方。直説法なので、否定は na を動詞の直前に置く。この意味の fínd- は、言葉を耳で聞くことではなく、言われたとおりにすることを表す。

hálim ólmaran, na tóra.

読み:ハーリン オルマラン、ナ トーラ。

hál-imólmar-an,natór-a.
呼ぶ-<私が>年長者-<対格><〜ない>来る-<(軽いものが)>

「年長者を呼んだのに、来ない。」

日常の言い方。時制がないので、hálim は「呼ぶ」とも「呼んだ」とも訳せる。後半では主語を言っていないが、動詞の軽性の語尾から、呼ばれた年長者が主語だとわかる。名前で呼ぶのではなく、ólmar「年長者」のような呼び名を使うのが礼にかなっている。

hálimor aursáran nadúlenan fóndar.

読み:ハーリモル アウルサーラン ナドゥーレナン フォンダル。

hál-imoraursár-anna-dúl-en-anfóndar.
呼ぶ-<我々が>祖先-<対格><〜ない>-下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>源<対格>

「我々は、下りぬ祖先を「源」と呼ぶ。」

二つの対格をとる用法。一つ目の対格が呼ばれるもの、二つ目の対格がその呼び名を表す。fóndar は重性なので、対格も主格と同じ形になる。分詞 nadúlenan は aursáran(軽性・単数・対格)に一致している。家系を川の流れとみる世界観で、始祖のことを説明するときの言い方。

lúin pándan viráis éles, áura þelá éles.

読み:ルーイン パンダン ヴィライス エーレス、アウラ セラー エーレス。

lúinpánd-anvir-áisél-es,áur-aþeláél-es.
とき刷る-<彼らが>言葉-<〜たちを><3人称単数・軽性>-<属格>昇る-<(軽いものが)>名声<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「その人の言葉が版木で刷られると、その人の名声は高まる。」

詩合わせで勝った詩が刷られて広まることを言う文。「名が昇る」は、名声が高まるという意味の決まった言い方。前半の pándan は主語を言わない3人称複数で、「人々が刷る」という受け身に近い意味になる。

ké ráines ré dúlan faronárai du orén dórel?

読み:ケー ライネス レー ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン ドーレル?

kéráin-esrédúl-anfaronár-aiduoréndórel?
<〜か>知る-<あなたが><〜と(節)>下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>明日

「運び人たちが明日縁へ下りることを、お前は知っているか。」

知っている内容を ré の節で示す、日常の問い。ké は文のいちばん前に置く。ré の後ろの節も動詞で始まる。下向きか並びの相手に使う言い方。

ké ráines orenvandáran té?

読み:ケー ライネス オレンヴァンダーラン テー?

kéráin-esorenvandár-anté?
<〜か>面識がある-<あなたが>縁商人-<対格>あの<軽性>

「あの縁商人と知り合いか。」

人を対格の目的語にとると「見知っている」の意味になる。指示詞 té は格変化せず、名詞句の終わりに置く。

na ráinim éndran té. ké ráines élan?

読み:ナ ライニン エンドラン テー。ケー ライネス エーラン?

naráin-iméndr-anté.kéráin-esél-an?
<〜ない>面識がある-<私が>人-<対格>あの<軽性><〜か>面識がある-<あなたが><3人称単数・軽性>-<対格>

「あの人は知らない。お前は知っているか。」

日常の会話。二度目は代名詞の対格 élan で、前に出た人を受けている。目上の人を指すときは、代名詞を使わず役職名で言う。

ráina ólmar loimán gandéros.

読み:ライナ オルマル ロイマーン ガンデーロス。

ráin-aólmarloim-ángandér-os.
心得ている-<(軽いものが)>年長者<主格>詞-<対格>硬木-<属格>

「年長者は硬木の詞を心得ている。」

硬木を伐るときに唱える詞のような、身につけた知識について言う。属格 gandéros は名詞の後ろに置く。

ké þíles virán némes?

読み:ケー シーレス ヴィラーン ネーメス?

kéþíl-esvir-ánném-es?
<〜か>分かる-<あなたが>言葉-<対格><私>-<属格>

「私の言うことが分かるか。」

言葉が通じるかを確かめる、日常の問い。所有者は属格の代名詞 némes で表し、名詞の後ろに置く。

lúin sénim álmaran, nóurim tásan.

読み:ルーイン セーニン アルマラン、ノーリン ターサン。

lúinsén-imálmar-an,nóur-imtás-an.
とき見る-<私が>白月-<対格>思い慕う-<私が><あなた>-<対格>

「白月を見るたびに、あなたを想う。」

人を対格にとると「思い慕う」の意味になる。手紙や詩によく出る言い方。2人称の tás は、親しい間柄でだけ使う。

na þílim sáindaran sé.

読み:ナ シーリン サインダラン セー。

naþíl-imsáindar-ansé.
<〜ない>分かる-<私が>証文-<対格>この<軽性>

「この証文が分からない。」

書きものを読むときの言い方。くだけた話し方では、na þílim が縮んだ間投詞 naþíl「わからん」もよく使う。

lúin nóiran kelárai, nóura ólmar.

読み:ルーイン ノイラン ケラーライ、ノーラ オルマル。

lúinnóir-ankel-ár-ai,nóur-aólmar.
とき眠る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>思案する-<(軽いものが)>年長者<主格>

「樵たちが眠ると、年長者は思いにふける。」

「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。nóur- はここでは、ひとりで静かに考えこむことを表す。

ésa nourá némes ré lísa lisár sáindaran dórel, ausenár.

読み:エーサ ノウラー ネーメス レー リーサ リサール サインダラン ドーレル、アウセナール。

és-anouráném-esrélís-alis-ársáindar-andórel,au-sen-ár.
いる-<(軽いものが)>思い<私>-<属格><〜と(節)>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>明日<お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「目付殿、私の考えは、明日書記が証文を書く、というものです。」

目上の人に意見を述べるときの言い方。自分の思いには au- をつけない。ré の節で考えの中身を示し、呼びかけの役職名は文の終わりに読点で区切って添える。

néulan aursárai viráis séurilais.

読み:ネウラン アウルサーライ ヴィライス セウリライス。

néul-anaursár-aivir-áisséuril-ais.
好む-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<〜たちを>美しい-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

「祖先は美しい言葉を好む。」

整った言葉は昇って祖先に届く、という信仰を言う教えの文。形容詞 séuril は、修飾する virá(軽性)の複数対格に一致して -ais をとる。

dunéulimor aldáran áurenan.

読み:ドゥネウリモル アルダーラン アウレナン。

du-néul-imoraldár-anáur-en-an.
<〜させていただく>-慕う-<我々が>座-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>

「我らは高き座をお慕い申し上げる。」

改まった場での言い方。自分たちの行いなので謙譲の du- をつける。分詞 áuren は、目的語の aldár(軽性・単数・対格)に一致して -an をとる。

dróuman kelárai es meirós.

読み:ドローマン ケラーライ エス メイロース。

dróum-ankel-ár-aiesmeir-ós.
嘆く-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>から税-<属格>

「樵たちは税を嘆いている。」

日常の不満を言う文。meiró は語尾に強勢のある重性o語幹で、属格は -ós。

néulan lisárai rainiþáran.

読み:ネウラン リサーライ ライニサーラン。

néul-anlis-ár-airainiþár-an.
慕う-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>師-<対格>

「書記たちは師を慕っている。」

人を目的語にすると「慕う」の意味になる。直説法には法の印がないので、語根に3人称複数の -an が直接つく。lisár は lís-「書く」に -ár「〜する人」がついた語。

lúin sénan éndrai sílarau, gréman aursárar.

読み:ルーイン セーナン エンドライ シーララウ、グレーマン アウルサーラル。

lúinsén-anéndr-aisílar-au,grém-anaursár-ar.
とき見る-<彼らが>人-<〜たちが>月-<双数>畏れる-<彼らが>祖先-<〜らの>

「人は二つの月を仰ぐとき、祖先を畏れかしこむ。」

lúin の節は主節の前に置く。月は星ではないので双数で言える。後半の主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から前半と同じ人々だとわかる。畏れる対象は属格でとる。

ausailéndan aursárai lisímei sé.

読み:アウサイレンダン アウルサーライ リシーメイ セー。

au-sail-énd-anaursár-ailis-ím-eisé.
<お〜になる・御〜>-嘉する-<〜しますように>-<彼らが>祖先-<〜たちが>書く-<〜の技・〜さ>-<与格>この<軽性>

「ご祖先がこの手跡を嘉したまいますように。」

願いを書いた紙を燃やして祖先に届けるときの決まり文句。高い者が主語なので尊敬の au- をつけ、願望法で言う。強勢は -énd- に移る。嘉する対象は与格。

rainiþésan rainiþárai hémbro éndrail.

読み:ライニセーサン ライニサーライ ヘンブロ エンドライル。

rain-iþ-és-anrainiþár-aihémbroéndr-ail.
知る-<〜させる>-<〜すべし>-<彼らが>師-<〜たちが>恥じる心<対格>人-<〜らに>

「師たちは、人々に恥を知る心を教えるべし。」

学び舎の心得を記した書の文。当為法の3人称複数。強勢は -és- に移る。教わる相手は与格の複数 -ail で示す。重性の hémbro は対格でも主格と同じ形。

viríres lúdro, gruunélan aursárai tásei.

読み:ヴィリーレス ルードロ、グルーネーラン アウルサーライ ターセイ。

vir-ír-eslúdro,gruun-él-anaursár-aitás-ei.
言う-<もし〜なら>-<あなたが>嘘<対格>怒る-<〜だろう>-<彼らが>祖先-<〜たちが><あなた>-<与格>

「嘘をつけば、ご先祖様がお前にお怒りになるだろう。」

年長者が子どもを戒めるときの言い方。条件は接続詞を使わず、仮定法で表す。帰結の部分は推量法になる。法の接尾辞 -ír-・-él- は強勢をもつので、語根の ´ は消える(grúun- → gruunélan)。

séirimor órelan sáunan ré liséndimor sáindaran.

読み:セーリモル オーレラン サウナン レー リセンディモル サインダラン。

séir-imorórel-ansáun-anrélis-énd-imorsáindar-an.
待つ-<我々が>日-<対格>吉い-<軽性・対格><〜と(節)>書く-<〜しますように>-<我々が>証文-<対格>

「証文を書くために、我々は吉い日を待つ。」

大事な取り決めを結ぶ日取りについて言う文。この意味の sáun は、日取りや兆しの縁起が良いことを表す。「〜するように」という目的は、ré+願望法で表す。願望法の -énd- は強勢をもつ。

lúin éso nébro, mé þondésa þondán.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、メー ソンデーサ ソンダーン。

lúinés-onébro,méþond-és-aþond-án.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>誓う-<〜すべし>-<(軽いものが)>誓い-<対格>

「霧が出ているときには、誓いを立てぬこと。」

言い伝えや法典に出てくる禁止の言い方。霧の夜の誓いは祖先に届かず無効だ、という信仰を表している。前半は lúin「〜とき」の節で、主語の霧 nébro が重性なので、繋辞は és-o になる。後半は当為法の文で、mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移るので、語根の ´ は消える。目的語の þondá「誓い」は、þónd- に -á がついた派生名詞。

duþélim sélvanan, an fóndaros móros ráimaros dúlenan téir lóurul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス モーロス ライマロス ドゥーレナン テール ロールル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osmór-osráimar-osdúl-en-antéirlóur-ul.
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>偉大な-<重性・属格>ライマル-<属格>下る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>三瀬-<〜たちを>

「偉大なるライマルの源から三瀬下りた、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった場での名乗り。名詞句の中は「名詞–形容詞–属格」の順に並び、形容詞は重性の fóndar に合わせて属格 -os になる。mór を家や氏族に使うと、その勢いが大きいことを誇る言い方になる。目上の人自身を mór と言うことはしない。

dulísim sáindaran ívelan aulisárei.

読み:ドゥリーシン サインダラン イーヴェラン アウリサーレイ。

du-lís-imsáindar-anível-anau-lis-ár-ei.
<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格>新しい-<軽性・対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「書記の方に、新しい証文を書いて差し上げます。」

謙譲の du- と、高めた与格の aulisárei を一つの文に並べている。証文を書き直して新しくするときの、改まった言い方。

éso nébro só gráis, na lísimor sáindaran.

読み:エーソ ネーブロ ソー グライス、ナ リーシモル サインダラン。

és-onébrosógráis,nalís-imorsáindar-an.
いる-<(重いものが)>霧<主格>この<重性>不吉な<〜ない>書く-<我々が>証文-<対格>

「この霧は縁起が悪い。我々は証文を書かない。」

霧期には大事な契約を結ばないという習わしを、兆しの言い方で述べている。霧 nébro は重性なので、繋辞は -o をとり、指示詞は só になる。重性・単数・主格の形容詞には語尾がつかない。主節が二つ並ぶので、あいだを読点で区切る。

lísa lisár sáindaran móran.

読み:リーサ リサール サインダラン モーラン。

lís-alis-ársáindar-anmór-an.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>大がかりな-<軽性・対格>

「書記は、大がかりな取引の証文を書く。」

事業や取引の規模が大きいことを言う用法。形容詞は、軽性の sáindar の対格に一致して -an をとる。

kráila lisár sáindaran ívelan.

読み:クライラ リサール サインダラン イーヴェラン。

kráil-alis-ársáindar-anível-an.
手に持つ-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>新しい-<軽性・対格>

「書記は新しい証文を手に取る。」

できたばかりのものについて言う用法。形容詞は、軽性の sáindar の対格に一致して -an をとる。

léunim virán fóndelan.

読み:レウニン ヴィラーン フォンデラン。

léun-imvir-ánfóndel-an.
申す-<私が>言葉-<対格>古い-<軽性・対格>

「古い詩句を一つ申し上げます。」

改まった場で、古い詩句を引く前に置く前置き。léun- は「言う」の謙譲の補充形。virá は軽性なので、形容詞は対格の -an で一致する。

éira, na ansénim þelán éles.

読み:エーラ、ナ アンセーニン セラーン エーレス。

éira,naansén-imþel-ánél-es.
ええと<〜ない>思い出す-<私が>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

「ええと、あの人の名前が思い出せない。」

日常のくだけた独り言。否定の na は動詞のすぐ前に置く。「誰の名前か」は属格の代名詞 éles で、名詞の後ろに置く。

lúin kélan kelárai gandér, lóima ráuvan loimán.

読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、ロイマ ラウヴァン ロイマーン。

lúinkél-ankel-ár-aigandér,lóim-aráuvanloim-án.
とき伐る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>唱える-<(軽いものが)>森の巫<主格>詞-<対格>

「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫が詞を唱える。」

硬木を伐るときの儀礼を説明する文。loimá「詞」は lóim- に -á「〜するもの」がついた派生語で、動詞の目的語に同じ語根の名詞をとっている。

lúin áura sílar, ansénan aursárais.

読み:ルーイン アウラ シーラル、アンセーナン アウルサーライス。

lúináur-asílar,ansén-anaursár-ais.
とき昇る-<(軽いものが)>月<主格>思い出す-<彼らが>祖先-<〜たちを>

「月が昇ると、人々は祖先を思い出す。」

祖先祀りの習わしを述べる文。月 sílar は軽性なので、動詞は3単・軽性の -a。主節の主語を言わない3人称複数 ansénan は、「人々は」という一般の主語を表す。

poverésa senár fáronul te dúlan es orénos.

読み:ポヴェレーサ セナール ファーロヌル テ ドゥーラン エス オレーノス。

pover-és-asen-árfáron-ultedúl-anesorén-os.
取り調べる-<〜すべし>-<(軽いものが)>見る-<〜する人>荷-<〜たちを><関係節>下る-<彼らが>から縁-<属格>

「目付は、縁から下りてくる荷を検めるべし。」

市の決まりを記した碑文の文体。当為法の -és- が強勢をとるので、語根の強勢は消える。主語の senár(軽性)を明示しているので、動詞は3単・軽性。fáronul は重性の複数対格で、関係節 te dúlan es orénos がこれを修飾する。

éso nébro. lúin hála páin þelán táses, mé glén!

読み:エーソ ネーブロ。ルーイン ハーラ パイン セラーン ターセス、メー グレーン!

és-onébro.lúinhál-apáinþel-ántás-es,méglén!
いる-<(重いものが)>霧<主格>とき呼ぶ-<(軽いものが)>誰か<主格>名前-<対格><あなた>-<属格><禁止・願いの打ち消し>答える<命令法><あなたが>

「霧が出ている。誰かがお前の名を呼んでも、答えてはいけない。」

霧の禁忌について、親が子に言い聞かせる言葉。「霧がある」は繋辞 és- で言い、霧 nébro が重性なので語尾は -o。禁止は「mé+命令法」。

lúin lóima endríña virán, glenésa ólmar.

読み:ルーイン ロイマ エンドリーニャ ヴィラーン、グレネーサ オルマル。

lúinlóim-aendríñavir-án,glen-és-aólmar.
とき詠む-<(軽いものが)>子ども<主格>言葉-<対格>句を返す-<〜すべし>-<(軽いものが)>年長者<主格>

「子どもが句を詠んだら、年長者が句を返すべし。」

詩の挨拶の作法を述べる文。目下の者が先に詠み、目上の者が返す。「句を返す」の意味では、目的語を言わずに使うことが多い。virá「言葉」は、詠む動詞の目的語になると「句」の意味になる。

auglenénde aulisár virán.

読み:アウグレネンデ アウリサール ヴィラーン。

au-glen-énd-eau-lis-árvir-án.
<お〜になる・御〜>-句を返す-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>言葉-<対格>

「書記の方に、返しの句をお詠みいただきたく存じます。」

自分が先に句を詠んだあと、目上の人に返しを願う言い方。尊敬の au- は子音 g の前ではそのままの形でつく。願望法の3単・軽性は -e で終わる。返しの句そのものを、対格の目的語にとっている。

lóimsa endríña virán an aursárais.

読み:ロインサ エンドリーニャ ヴィラーン アン アウルサーライス。

lóims-aendríñavir-ánanaursár-ais.
詠む<〜し終えた>-<(軽いものが)>子ども<主格>言葉-<対格>上手祖先-<〜たちを>

「子どもは祖先たちへ向けて、句を詠み終えた。」

成人の儀を終えたことを伝える文。語根 lóim- は二重母音をもつので、完了相は -s- を足して lóims- にする。「an+対格」で、祖先のいる上方へ向けることを表す。

auransoinéla ausenár sáindaran sé?

読み:アウランソイネーラ アウセナール サインダラン セー?

aur-ansoin-él-aau-sen-ársáindar-ansé?
<お〜になる・御〜>-思い出す<〜し終えた>-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格>この<軽性>

「「目付殿は、この証文を覚えておいででしょうか。」」

上向きの問い。目上の人には ké を使わず、推量法で推し量る形で尋ねる。「覚えている」は「思い出す」ansén- の完了語幹(補充形)ansóin- で言い、尊敬の au- は母音の前で aur- になる。推量法の -él- が強勢をとるので、語根の強勢は消える(auransoinéla)。相手は役職名に au- をつけた3人称で言う。

ráinim nourán fóuman séulines.

読み:ライニン ノウラーン フォーマン セウリネス。

ráin-imnour-ánfóum-anséulin-es.
知る-<私が>心-<対格>親身な-<軽性・対格>友-<属格>

「私は友の親身な心を知っている。」

心やもてなしの温かさも fóum で表す。nourá「心」は語尾に強勢のある軽性a語幹なので、対格は -án になる。形容詞は語根に強勢があるので、無強勢の -an で一致する。

tául sáindaran trúuman sé!

読み:タウル サインダラン トルーマン セー!

táulsáindar-antrúum-ansé!
取る<命令法><あなたが>証文-<対格>古びた-<軽性・対格>この<軽性>

「この古びた証文を取ってくれ!」

目下の者に言う命令法で、日常的な言い方。紙の証文 sáindar は軽性なので、形容詞も軽性・対格の -an で一致する。指示詞 sé は名詞句の最後に置き、格変化しない。

tául pélsan trúum!

読み:タウル ペルサン トルーン!

táulpéls-antrúum!
取る<命令法><あなたが>脂の木-<対格>古びた

「その古びた脂の木の板を取ってくれ!」

荷札にする板について言う文。pélsa は名詞の形としては軽性なので、対格 -an をとる。しかし伐られた材なので、形容詞は重性の一致になる。重性の対格には語尾がないので、trúum は語尾なしの形のまま。名詞と形容詞の語尾が食い違う典型的な例。

dulíþan kelárai téir gandérul dréumul.

読み:ドゥリーサン ケラーライ テール ガンデールル ドレウムル。

dul-íþ-ankel-ár-aitéirgandér-uldréum-ul.
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>三硬木-<〜たちを>黒い-<重性・〜ら(古い母音交替)・対格>

「樵たちは黒い硬木を三本下ろす。」

心材の黒い硬木を言う文。会話なので、量の名詞を省いている。三より上の数の後ろでは名詞が複数になり、形容詞も重性・複数・対格の -ul で一致する。

tául pélsan dréum, endríña.

読み:タウル ペルサン ドレウン、エンドリーニャ。

táulpéls-andréum,endríña.
取る<命令法><あなたが>脂の木-<対格>黒い子ども

「その黒い脂の木の板を取ってくれ、子どもよ。」

煤や脂で黒ずんだ板について言う日常の文。年長者が子どもに使う、下向きの命令法。伐られた材なので、形容詞は重性の一致になる。重性の対格には語尾がつかない。

na fíndan aursárai virán múran.

読み:ナ フィンダン アウルサーライ ヴィラーン ムーラン。

nafínd-anaursár-aivir-ánmúr-an.
<〜ない>聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<対格>崩れた-<軽性・対格>

「祖先は崩れた言葉を聞き入れない。」

宮廷や家で、言葉づかいを戒めるときの言い方。virá「言葉」は軽性なので、形容詞は軽性・対格の -an をとって múran となる。崩れた言葉は重く、上へ昇らないという信仰が背景にある。

víran faronárai viráis múrais senárei.

読み:ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ムーライス セナーレイ。

vír-anfaron-ár-aivir-áismúr-aissen-ár-ei.
言う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>崩れた-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>見る-<〜する人>-<与格>

「運び人たちは目付に崩れた言葉で話す。」

都の人が、縁の市の取引言葉について言うときの言い方。受け手の目付は与格 senárei で表す。形容詞は軽性・複数・対格の -ais の形で viráis に一致している。

mé vír virán rúgalan ólmarei!

読み:メー ヴィール ヴィラーン ルーガラン オルマレイ!

mévírvir-ánrúgal-anólmar-ei!
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>言葉-<対格>粗野な-<軽性・対格>年長者-<与格>

「年長者に粗野な言葉を口にするな。」

家の戒め。禁止は「mé+命令法」で言う。rúgal を言葉に使うと、品のない、粗野な言い方を指す。炉の前で下品な言葉を言ってはならない、という禁忌とも結びついた言い方。

dróuma ólmar ré víran faronárai viráis rúgalais.

読み:ドローマ オルマル レー ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ルーガライス。

dróum-aólmarrévír-anfaron-ár-aivir-áisrúgal-ais.
嘆く-<(軽いものが)>年長者<主格><〜と(節)>言う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>粗野な-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>

「年長者は、運び人たちが粗野な言葉を使うと嘆く。」

都でよく聞く嘆き。ré の後ろの節も、主節と同じく動詞で始まる。形容詞は軽性・複数・対格の rúgalais の形で viráis に一致している。

táulan kelárai méldo.

読み:タウラン ケラーライ メルド。

tául-ankel-ár-aiméldo.
取る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>蜜<対格>

「樵たちは蜜をとる。」

森の暮らしを述べる文。méldo は重性o語幹で、対格は主格と同じ形。森の民は蜂の巣から蜜と蝋の両方をとる。

sén fóurelan rúsan téndo.

読み:セーン フォーレラン ルーサン テンド。

sénfóurel-anrús-anténdo.
見る<命令法><あなたが>香の木-<対格>赤い-<軽性・対格>あそこ

「あそこの赤い香の木を見ろ。」

下向きの命令法2単数(むき出しの語幹 sén)。香の木 fóurel は赤い樹皮をもつ木で、生えているあいだは軽性なので、形容詞も軽性の対格 -an で一致する。形容詞は名詞のすぐ後ろに置く。

néulimor þáilan élvares, grémimor nébros.

読み:ネウリモル サイラン エルヴァレス、グレーミモル ネーブロス。

néul-imorþáil-anélvar-es,grém-imornébr-os.
好む-<我々が>澄み-<対格>天-<属格>恐れる-<我々が>霧-<属格>

「「我々は空の澄みを好み、霧を恐れる。」」

þáil を名詞として使い、軽性の対格 -an をつけている。二つの主節を読点で区切って並べた文。澄んだ空と霧を、上と下の対として語る高原らしい言い方。

lísa lisár þelán aldáres áurenes þáiles sáindarei.

読み:リーサ リサール セラーン アルダーレス アウレネス サイレス サインダレイ。

lís-alis-árþel-ánaldár-esáur-en-esþáil-essáindar-ei.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>名前-<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格>澄み-<属格>証文-<与格>

「書記は証文に「澄みの高き座」の名を書く。」

座名「aldár áuren+称えの語の属格」で、名詞として使った þáil「澄み」が称えの語になっている。座名ごと属格で þelán にかかる。書き言葉では座名を記してよく、上げ書きにする。

dulíþan faronárai kumbórul du orén.

読み:ドゥリーサン ファロナーライ クンボールル ドゥ オレーン。

dul-íþ-anfaron-ár-aikumbór-ulduorén.
下る-<〜させる>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>青銅器-<〜たちを>下手縁<対格>

「運び人たちが青銅器を縁へ下ろしていく。」

下ろし荷の品目としての kumbór。器の一つ一つを指すときは、重性の複数 kumbórul(主格・対格が同じ形)を使う。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

méiran orenvandárai sáko, méirimor kumbórul.

読み:メーラン オレンヴァンダーライ サーコ、メーリモル クンボールル。

méir-anorenvandár-aisáko,méir-imorkumbór-ul.
与える-<彼らが>縁商人-<〜たちが>塩<対格>与える-<我々が>青銅器-<〜たちを>

「縁商人は塩を出し、我々は青銅器を出す。」

取引の取り決めを述べる文。二つの主節を接続詞なしで並べ、読点で区切っている。上げ荷の塩と下ろし荷の青銅器を対にして言うのは、帳簿の見開きの書き方にも通じる言い回しである。

lúin tóro nébro, kúulan ólmarai.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、クーラン オルマライ。

lúintór-onébro,kúul-anólmar-ai.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格>煮出す-<彼らが>年長者-<〜たちが>

「霧が来るころになると、年長者たちは(影の木の葉を)煮出す。」

霧の季節に葉を煮出して茶にする習わしを述べた文。煮出す物は文脈でわかるので、言っていない。lúin の節は主節の前に置く。霧 nébro は重性なので、節の動詞は -o をとる。

ésa snélo élvares dréum, na sénimor sílaran.

読み:エーサ スネーロ エルヴァレス ドレウン、ナ セーニモル シーララン。

és-asnéloélvar-esdréum,nasén-imorsílar-an.
いる-<(軽いものが)>天の屋根<主格>天-<属格>黒い<〜ない>見る-<我々が>月-<対格>

「天の屋根が黒く、月が見えない。」

snélo élvares「天の屋根」は高い雲を言う詩的な表現。名詞の形は重性の o語幹のままだが、雲は上に属するものなので一致は軽性になり、繋辞は ésa、述語の形容詞 dréum も軽性の形をとる。雨期の夜によく言う言い方。

lúin ésa snélo élvares dréum, lúuman aursárai némoran.

読み:ルーイン エーサ スネーロ エルヴァレス ドレウン、ルーマン アウルサーライ ネーモラン。

lúinés-asnéloélvar-esdréum,lúum-anaurs-ár-ainémor-an.
ときいる-<(軽いものが)>天の屋根<主格>天-<属格>黒いご覧になる-<彼らが>昇る<〜し終えた>-<〜する人>-<〜たちが><我々>-<対格>

「天の屋根が黒いときも、祖先は我々をご覧になっている。」

雨期に星が見えなくても不安がらない理由を説く、信仰の言い方。雲は上の層に属するので、祖先は屋根の上から変わらず下界を見ていると考えられている。snélo は重性の語形だが、この意味では一致が軽性になる(ésa)。lúum- は「見る」の尊敬の補充形。

duténdim ín virán.

読み:ドゥテンディン イーン ヴィラーン。

du-ténd-imínvir-án
<〜させていただく>-句を編む-<私が>一言葉-<対格>

「一句、編ませていただきます。」

詩の挨拶や詩合わせで、目下の者が先に詠むときの前置き。ténd- を詩句に使うのは、「言葉を布のように整えて組む」という比喩による。謙譲の du- は、t- の前ではそのままの形でつく。ín「一」の後ろの名詞は単数になる。

fléiran aubrándalai an dún.

読み:フレーラン アウブランダライ アン ドゥーン。

fléir-anau-brándal-aiandún.
お出ましになる-<彼らが><お〜になる・御〜>-諸司-<〜たちが>上手丘<対格>

「宮廷の方々が丘の上へお出ましになる。」

複数形で宮廷の役人全体を漠然と指す、高めた言い方。高め名詞には数詞をつけられないので、何人かは言わず、ひとまとまりの複数で受ける。dún は重性で、対格は主格と同じ形。

na néulan brándalai virán dalorárar.

読み:ナ ネウラン ブランダライ ヴィラーン ダロラーラル。

nanéul-anbrándal-aivir-ándalorár-ar.
<〜ない>好む-<彼らが>諸司-<〜たちが>言葉-<対格>下の国の者-<〜らの>

「宮廷のお役人たちは、下の国の者の言葉を好まない。」

運び人や崖道の商人の、くだけた陰口。au- をつけずに brándalai と言うのは、相手のいない場での遠慮のない言い方。否定の na は動詞の直前に置く。

lúuma elþá aursáres némoran.

読み:ルーマ エルサー アウルサーレス ネーモラン。

lúum-aelþáaursár-esnémor-an.
ご覧になる-<(軽いものが)>火<主格>祖先-<属格><我々>-<対格>

「祖先の火(星)が、我々をご覧になっている。」

白月の満月の夜に祖先を祀るときなどの、祀りの言葉。祖先の火(星)は目上のものなので、「見る」の尊敬の補充形 lúum- で受ける。

sénan senárai nébro orénos.

読み:セーナン セナーライ ネーブロ オレーノス。

sén-ansenár-ainébroorén-os.
見る-<彼らが>番人-<〜たちが>霧<対格>縁-<属格>

「番人たちは縁の霧を見張っている。」

縁の肩の番人を言う文。この意味では九段下りの者を指すので、au- をつけた高め形にはしない。番人は人なので複数で言ってよく、複数主格は -ai になる。nébro は重性で、対格は主格と同じ形。

méiran houmárai tambór brándalei.

読み:メーラン ホウマーライ タンボール ブランダレイ。

méir-anhoumár-aitambórbrándal-ei.
与える-<彼らが>家の主-<〜たちが>雑穀<対格>司-<与格>

「家の主たちは司に雑穀を納める。」

乾風期の前半に、倉の司が税の雑穀を取り立てることを言う文。受け手の司は与格 -ei で言う。

dúlan dulfáronul du orén.

読み:ドゥーラン ドゥルファーロヌル ドゥ オレーン。

dúl-andulfáron-ulduorén.
下る-<彼らが>下ろし荷-<〜たちが>下手縁<対格>

「下ろし荷が縁へ下りていく。」

dulfáron は fáron「荷」と同じく重性の子音語幹で、複数主格は dulfáronul になる。3人称複数の動詞は性を区別しない。乾風期の前半、硬木・地金・紙などの下ろし荷が崖道を下りる。

rainíþa rainiþár férmalan kloimárail.

読み:ライニーサ ライニサール フェルマラン クロイマーライル。

rain-íþ-arain-iþ-árférmal-ankloim-ár-ail.
知る-<〜させる>-<(軽いものが)>知る-<〜させる>-<〜する人・主格>法-<対格>学ぶ-<〜する人>-<〜らに>

「師は弟子たちに法を教える。」

書記を育てる学び舎での営みを述べる文。基本の語順は、動詞–主語–目的語–与格(受け手)。rainíþ-「教える」は ráin-「知る」の使役形で、-ár をつけると「師」になる。

dulémbelim virán aursárail.

読み:ドゥレンベリン ヴィラーン アウルサーライル。

dul-émbel-imvir-ánaursár-ail.
<〜させていただく>-捧げる-<私が>言葉-<対格>祖先-<〜らに>

「ご先祖さまに、言葉を捧げさせていただきます。」

祖先を祀る場で詩を捧げるときの前置き。謙譲の du- は母音の前で dul- になる。捧げる相手は与格で表す。

lúin hóinan faronárai, émbelan virán aursárail.

読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、エンベラン ヴィラーン アウルサーライル。

lúinhóin-anfaron-ár-ai,émbel-anvir-ánaursár-ail.
とき帰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>捧げる-<彼らが>言葉-<対格>祖先-<〜らに>

「運び人たちは帰ってくると、祖先に言葉を捧げる。」

崖道から戻った者が、改まった言葉を祖先に捧げる習わしを説明する文。後半の主語は前半と同じなので言わない。

lúin kélan kelárai gandér, áura aurvirá ráuvanes.

読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ アウルヴィラー ラウヴァネス。

lúinkél-ankel-ár-aigandér,áur-aaurviráráuvan-es.
とき伐る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>昇る-<(軽いものが)>祈り<主格>森の巫-<属格>

「樵たちが硬木を伐るとき、森の巫の祈りが昇る。」

硬木を伐るときの儀式を述べる文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。属格 ráuvanes は名詞の後ろに置く。

ké élþa aurvirá? elþíþir élan elþéi.

読み:ケー エルサ アウルヴィラー?エルシーシル エーラン エルセー。

kéélþ-aaurvirá?elþ-íþ-irél-anelþ-éi.
<〜か>燃える-<(軽いものが)>祈りの紙<主格>燃える-<〜させる>-<皆で〜せよ><3人称単数・軽性>-<対格>火-<与格>

「祈りの紙は燃えているかい。皆でそれを火にくべて燃やしなさい。」

家の中で、年長者が年少の者たちに言う下向きの話し方。élþ- に使役の -íþ- をつけると「燃やす」になり、複数への命令の語尾 -ir が続く。代名詞 élan は軽性の aurvirá を受けている。

faronéran faronárai aurfáron an orén.

読み:ファロネーラン ファロナーライ アウルファーロン アン オレーン。

faronér-anfaronár-aiaurfáronanorén.
担ぐ-<彼らが>運び人-<〜たちが>上げ荷<対格>上手縁<対格>

「運び人たちが上げ荷を縁の上へ担ぎ上げる。」

崖道の日常の描写。aurfáron は重性の子音語幹なので、主格と対格が同じ形になる。an+対格は「上手へ」の移動を表し、崖の下から縁へ荷を運び上げる向きをはっきり示す。

na ráines tróvalan, endríña.

読み:ナ ライネス トローヴァラン、エンドリーニャ。

naráin-estróval-an,endríña.
<〜ない>知る-<あなたが>作法-<対格>子ども<主格>

「お前は作法を知らないね、坊や。」

年長者が子どもをたしなめる、下向きの話し方。2人称の動詞をそのまま使っている。tróval は軽性の子音語幹で、対格は -an。呼びかけには呼格を使わず、名詞を読点で区切って文末に添える。

kloimésa endríña tróvalan es ólmares.

読み:クロイメーサ エンドリーニャ トローヴァラン エス オルマレス。

kloim-és-aendríñatróval-anesólmar-es.
学ぶ-<〜すべし>-<(軽いものが)>子ども<主格>作法-<対格>から年長者-<属格>

「子どもは年長者から作法を学ぶべし。」

教訓の書や家訓の書き方。当為法 -és- は強勢をもつので、語根 klóim- の強勢は消える。es+属格は、方向を問わない「〜から」で、教えの出どころを表す。

lóiman ráuvanai loimán sérin, ésa tróval fóndel.

読み:ロイマン ラウヴァナイ ロイマーン セーリン、エーサ トローヴァル フォンデル。

lóim-anráuvan-ailoim-ánsérin,és-atróvalfóndel.
唱える-<彼らが>森の巫-<〜たちが>詞-<対格>このようにいる-<(軽いものが)>しきたり<主格>古い

「森の巫たちはこのように詞を唱える。それが由緒あるしきたりなのだ。」

儀式の手順を説明する文。接続詞なしで節を二つ並べ、読点で区切っている。fóndel は「由緒ある古さ」を表す形容詞で、主語の tróval(軽性・主格)に一致し、語尾はつかない。

lúin éso nébro, na áura þondá, na fíndan aursárai élan.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ アウラ ソンダー、ナ フィンダン アウルサーライ エーラン。

lúinés-onébro,naáur-aþondá,nafínd-anaursár-aiél-an.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>昇る-<(軽いものが)>誓い<主格><〜ない>聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが><3人称単数・軽性>-<対格>

「霧が出ているときには、誓いは昇らない。祖先にはそれが聞こえない。」

霧の夜に立てた誓いは無効だという教えを述べる文。霧 nébro は重性なので éso、þondá は軽性なので動詞は -a で一致する。後半では、その誓いを軽性の代名詞の対格 élan で受けている。

ái, dúla hóurna du orén! hálimor ráuvanan.

読み:アイ、ドゥーラ ホールナ ドゥ オレーン!ハーリモル ラウヴァナン。

ái,dúl-ahóurnaduorén!hál-imorráuvan-an.
おや下る-<(軽いものが)>送りの煙<主格>下手縁<対格>呼ぶ-<我々が>森の巫-<対格>

「おや、送りの煙が縁のほうへ下りていく!森の巫を呼ぼう。」

風で煙が南(下)へ流れたときの驚きの声。これは不吉なこととされ、魂を上へ引き上げる詞を唱えてもらうために祭司を呼ぶ。du+対格で「下手へ」。

ké tóra ráuvan? na tóra. séiran kelárai.

読み:ケー トーラ ラウヴァン?ナ トーラ。セーラン ケラーライ。

kétór-aráuvan?natór-a.séir-ankel-ár-ai.
<〜か>来る-<(軽いものが)>森の巫<主格><〜ない>来る-<(軽いものが)>待つ-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>

「「巫は来たか?」「まだ来ていない。樵たちが待っている。」」

伐り出しの前の、森の村での日常のやりとり。二人の発話を一つにまとめている。儀式の詞を唱えずには硬木を伐れないので、樵たちは森の巫の到着を待つ。「はい/いいえ」にあたる語はなく、問いの動詞を繰り返して答える(否定なら na tóra)。時制がないので、tóra は「来た」とも「来ている」とも訳せる。

mé rimbéndes, endríña! rímban ilanárai.

読み:メー リンベンデス、エンドリーニャ!リンバン イラナーライ。

mérimb-énd-es,endríña!rímb-anilanár-ai.
<禁止・願いの打ち消し>数える-<〜しますように>-<あなたが>子ども数える-<彼らが>星読み-<〜たちが>

「数えてはいけませんよ。数えるのは星読みたちです。」

星を数えようとする子を、親がたしなめるときの言い方。命令法の代わりに「mé+願望法2人称」を使った、やわらかい禁止になっている。強勢は願望法の -énd- に移る。呼びかけの endríña は読点で区切る。後ろの文は ilanárai が主語で、「数えてよいのは星読みたちだけだ」という対比を表す。何を数えるかは言わなくても文脈でわかる。

lúin kélan kelárai gandér, áura loimá ráuvanes.

読み:ルーイン ケーラン ケラーライ ガンデール、アウラ ロイマー ラウヴァネス。

lúinkél-ankel-ár-aigandér,áur-aloimáráuvan-es.
とき伐る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>昇る-<(軽いものが)>詞<主格>森の巫-<属格>

「樵たちが硬木を伐るときには、森の巫の詞が立ちのぼる。」

硬木を伐る作法を述べた文。詞は息なので、煙のように上へ昇るものとされ、動詞 áur-「昇る」の主語になる。loimá は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。硬木 gandér は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

na ésa ilanrimbá ráinen éndrar, ráinan ilanárai.

読み:ナ エーサ イランリンバー ライネン エンドラル、ライナン イラナーライ。

naés-ailanrimbáráin-enéndr-ar,ráin-anilanár-ai.
<〜ない>いる-<(軽いものが)>灯の数え<主格>知る-<〜した・〜された>人-<〜らの>知る-<彼らが>星読み-<〜たちが>

「灯の数えは世の人に知られていない。知っているのは星読みたちだ。」

灯の数えが秘儀であることを言う、一般向けの説明の文。分詞の後ろの属格 éndrar は「人々によって」の意味になる。接続詞を使わずに主節を二つ並べるので、あいだに区切りの印(読点)を打つ。ilanrimbá は ilána(灯)と rimbá(数)を合わせた複合語で、軽性である。

lúin tóro nébro, mé virésa éndran. éso sárvo.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ヴィレーサ エンドラン。エーソ サルヴォ。

lúintór-onébro,mévir-és-aéndr-an.és-osárvo.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<〜すべし>-<(軽いものが)>人-<対格>いる-<(重いものが)>禁忌<主格>

「霧が来たら、人の名を呼ばぬこと。これは禁忌である。」

季節の言い習わし。霧の中で名前を呼ぶと、下の国にその名前を聞かれるとされる。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。当為法は mé で否定し、主語を言わないときは一般の人が主語になるので、軽性の形をとる。vír-「言う」は人の対格をとると「名を呼ぶ」の意味になる。最後の文は、存在の és- と重性の sárvo で「禁忌である」と言う。

lúin glóira aurilanár es dúnos, dulísimor plánan.

読み:ルーイン グロイラ アウリラナール エス ドゥーノス、ドゥリーシモル プラーナン。

lúinglóir-aaur-ilanáresdún-os,du-lís-imorplán-an.
ときお越しになる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-星読み<主格>から丘-<属格><〜させていただく>-書く-<我々が>帳簿-<対格>

「星読みの方が丘からお越しになるときは、我々が帳簿を書かせていただきます。」

目下の者が星読みについて話す改まった文。星読みは四段下りの役人なので、au- をつけて高める。au- は母音の前で aur- になるので、au-ilanár は aurilanár になる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。主節は謙譲の接頭辞 du- で自分たちの行いを低めている(du-lís-imor)。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。

vándan lisárai meiró tambóros.

読み:ヴァンダン リサーライ メイロー タンボーロス。

vánd-anlis-ár-aimeirótambór-os.
量る-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>税<対格>雑穀-<属格>

「書記たちが雑穀の税を量る。」

乾風期の前半、倉の司が雑穀の税を取り立てる場面の文。meiró は méir-「与える」に重いものを表す -ó がついた語で、もとは「差し出されるもの」の意味。重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。何の税かは、属格を後ろに置いて表す。

duméiran kelárai meiró pelsós aldárei áurenei.

読み:ドゥメーラン ケラーライ メイロー ペルソース アルダーレイ アウレネイ。

du-méir-ankel-ár-aimeirópels-ósaldár-eiáur-en-ei.
<〜させていただく>-与える-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>貢ぎ物<対格>樹脂-<属格>座-<与格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・与格>

「樵たちは、高き座に樹脂の貢ぎ物を献上する。」

森の氏族が王に産物を納めることを述べる文。差し出す側を低める謙譲の du- を動詞につけ、受け手の「高き座」は与格で表す。分詞 áurenei は aldárei(軽性・単数・与格)に一致する。同じ meiró でも、受け手が王なら「貢ぎ物」、倉なら「税」と訳し分ける。

gélan faronárai or kórvo.

読み:ゲーラン ファロナーライ オル コルヴォ。

gél-anfaronár-aiorkórvo.
行く-<彼らが>運び人-<〜たちが>東へ倉<対格>

「運び人たちは倉の東の方へ向かっていく。」

東への移動を言う文。or+対格で、目印の東側へ向かう動きを表す。kórvo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形になる。この場所で止まっていることを言うなら、与格の or kórvoi にする。

hóinan faronárai vel orén.

読み:ホイナン ファロナーライ ヴェル オレーン。

hóin-anfaronár-aivelorén.
帰る-<彼らが>運び人-<〜たちが>西へ縁<対格>

「運び人たちは縁の日の入り側へと帰っていく。」

西への移動を言う文。vel+対格で「西へ」の意味になる。属格と組んだ vel orénos なら「縁の日の入り側から」になる。高原では南北を an・du の高さで言い、東西はこの or・vel で言い分ける。

dulíþan kelárai gandér an órunei.

読み:ドゥリーサン ケラーライ ガンデール アン オールネイ。

dul-íþ-ankel-ár-aigandéranórun-ei.
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>上手日の出-<与格>

「樵たちは日の出の前に硬木を下ろす。」

時の前後を、川の上手・下手として言う文。an+与格は「〜の上手で」で、「〜の前に」を表す。「日の出の後に」なら du órunei と言う。órun は軽性の子音語幹で、与格は -ei になる。

sénim órunan es dúnos.

読み:セーニン オールナン エス ドゥーノス。

sén-imórun-anesdún-os.
見る-<私が>東-<対格>から丘-<属格>

「私は丘の上から東を眺める。」

órun を、方角や東の土地を指す目的語として使った文。軽性名詞なので、対格は -an になる。órun「日の出・東」と órel「日・太陽」は似た響きなので、日本語話者は聞き違えやすい。

tóran ólmarai an aurándo, émbelan aursárais.

読み:トーラン オルマライ アン アウランド、エンベラン アウルサーライス。

tór-anólmar-aianaurándo,émbel-anaursár-ais.
来る-<彼らが>年長者-<〜たちが>上手社<対格>祀る-<彼らが>祖先-<〜たちを>

「年長者たちは上手の社へやって来て、祖先を祀る。」

儀礼について述べる文。白月の満月の夜の祖先祀りなどで使う言い方。aurándo は áur-「昇る」+-ándo「〜する所」から来た語で、「昇る所」を表す。重性o語幹なので、対格は主格と同じ形になる。an+対格で「上手へ」を表す。後半の節は主語を言わず、動詞の語尾から前半と同じ年長者たちが主語だとわかる。

lúin áura álmar or dún, émbelan ólmarai aursárais.

読み:ルーイン アウラ アルマル オル ドゥーン、エンベラン オルマライ アウルサーライス。

lúináur-aálmarordún,émbel-anólmar-aiaursár-ais.
とき昇る-<(軽いものが)>白月<主格>日の出側丘<対格>祀る-<彼らが>年長者-<〜たちが>祖先-<〜たちを>

「白月が丘の日の出側に昇ると、年長者たちは祖先を祀る。」

天体の位置を言う決まった言い方。星や月は指さしてはいけないので、よく知られた目印と方向の前置詞で位置を示す。or+対格で「〜の日の出側へ」を表す。lúin で始まる時の節は主節の前に置く。

tóran ólmarai vel kórvo.

読み:トーラン オルマライ ヴェル コルヴォ。

tór-anólmar-aivelkórvo.
来る-<彼らが>年長者-<〜たちが>日の入り側倉<対格>

「年長者たちは日の入り側の倉へやって来る。」

行き先を方角で言う文。vel+対格で、日の入り側(西側)へ向かうことを表す。vel は vélun「日の入り」から来た語で、強勢がない。kórvo は重性なので、対格は主格と同じ形になる。日本語話者は v をバ行に聞くので、vel を「ベル」と聞き取ることが多い。

émbelan ólmarai aursárais órunei.

読み:エンベラン オルマライ アウルサーライス オールネイ。

émbel-anólmar-aiaursár-aisórun-ei.
祀る-<彼らが>年長者-<〜たちが>祖先-<〜たちを>日の出-<与格>

「年長者たちは日の出の時刻に祖先を祀る。」

時刻を言う文。前置詞のない与格 órunei で、「日の出の時刻に」「明け方に」を表す。年代記で、出来事が明け方に起きたことを書くときにも、この与格を使う。

lóima ráuvan loimán anlúines.

読み:ロイマ ラウヴァン ロイマーン アンルーイネス。

lóim-aráuvanloim-ánanlúin-es.
唱える-<(軽いものが)>森の巫<主格>詞-<対格>昔-<属格>

「森の巫が、昔の詞を唱える。」

伐り出しや葬送の儀礼の場面。属格 anlúines を名詞の後ろに置いて「昔の〜」と言う。an-「上手」を含む語で、時を源から流れ下る川と見るので、古い時代ほど「上手」、つまり源に近い時とされる。

na lísim sáindaran selúin, lísim dulúin.

読み:ナ リーシン サインダラン セルーイン、リーシン ドゥルーイン。

nalís-imsáindar-anselúin,lís-imdulúin.
<〜ない>書く-<私が>証文-<対格>今書く-<私が>のち

「証文は今は書かない、のちに書く。」

市や帳場での、くだけたやりとり。selúin「今」と dulúin「のちに」を対にしている。どちらも格語尾をつけない副詞として、文の後ろに置く。du-「下手」を含む語で、時の流れの下手、つまり後の時を表す。

voilélan éndrai dulúines sóndelan sé.

読み:ヴォイレーラン エンドライ ドゥルーイネス ソンデラン セー。

voil-él-anéndr-aidulúin-essóndel-ansé.
読む-<〜だろう>-<彼らが>人-<〜たちが>行く末-<属格>書物-<対格>この<軽性>

「行く末の人々が、この書物を読むだろう。」

書物の序や詩に見られる言い回し。属格 dulúines を「人々」の後ろに置いて「後の世の人々」と言う。名詞句の中では、名詞のすぐ後ろに属格、そのあとに指示詞 sé が来る。

sénim tásan anlúin.

読み:セーニン ターサン アンルーイン。

sén-imtás-ananlúin.
見る-<私が><あなた>-<対格>以前に

「お前には以前に会ったことがある。」

くだけた日常の会話で、下向きか同じ段の相手に使う。高原語には時制がないので、動詞の形は「見る」と同じままでよい。過去のことだとわかるのは副詞 anlúin「以前に」があるからである。anlúin は格語尾をつけずに副詞として働き、文の後ろに置く。

tóra tráimel ível, dulíþan kelárai gandér.

読み:トーラ トライメル イーヴェル、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール。

tór-atráimelível,dul-íþ-ankel-ár-aigandér.
来る-<(軽いものが)>年<主格>新しい下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>

「新しい年が来て、樵たちは硬木を下ろす。」

暦と仕事の流れを説明する文。年は乾風期の初めに始まり、硬木の最初の下ろしもこの時期に行われる。tráimel は軽性の子音語幹で、形容詞 ível はその後ろに置いて一致させる。主節は二つ並んでいるので、あいだに読点を打つ。

dulíþan kelárai dáumbar gandérul tráimelei sé.

読み:ドゥリーサン ケラーライ ダウンバル ガンデールル トライメレイ セー。

dul-íþ-ankel-ár-aidáumbargandér-ultráimel-eisé.
下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>二十硬木-<〜たちを>年-<与格>この<軽性>

「この年、樵たちは硬木を二十本下ろした。」

年代記や森の司の記録に見られる書き方。「この年に」は、与格 tráimelei に指示詞 sé を添えて言う。九十九までの数詞は名詞の前に置き、三以上なら名詞を複数にする。重性の複数対格は -ul になる。

dúlan téir tráimelai, na tóra séulin némes.

読み:ドゥーラン テール トライメライ、ナ トーラ セウリン ネーメス。

dúl-antéirtráimel-ai,natór-aséulinném-es.
下る-<彼らが>三年齢・年数-<〜たちが><〜ない>来る-<(軽いものが)>友<主格><私>-<属格>

「三年が過ぎたが、私の友は来ない。」

年月が経つことは、川の水が下るのにたとえて dúl-「下る」で言う。時制がないので、「過ぎた」ことは文脈から読みとる。三以上の数詞の後ろでは、名詞は複数になる(tráimelai)。動詞はこの複数の主語に一致して、3人称複数の -an をとる。

lísa lisár sáindaran dulúinei.

読み:リーサ リサール サインダラン ドゥルーイネイ。

lís-alis-ársáindar-andulúin-ei.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>行く末-<与格>

「書記は、行く末のために証文を書く。」

改まった文。与格 dulúinei は受け手を表し、「行く末の世に向けて」という意味になる。書かれた言葉は消えずに後の世へ残る、という考えが背景にある。sáindar「証文」は軽性の子音語幹で、対格は -an。

lúin tóra vélun, hóinan kelárai an dún.

読み:ルーイン トーラ ヴェールン、ホイナン ケラーライ アン ドゥーン。

lúintór-avélun,hóin-ankel-ár-aiandún.
とき来る-<(軽いものが)>日の入り<主格>帰る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>上手丘<対格>

「日が沈むと、樵たちは丘の上へ帰っていく。」

vélun は軽性の子音語幹として変化する。lúin の節は主節の前に置く。「日の入りが来る」という言い方で「夕方になる」を表す。日常の語り口の文。

áura órel es órunes, dúla un vélunan.

読み:アウラ オーレル エス オールネス、ドゥーラ ウン ヴェールナン。

áur-aórelesórun-es,dúl-aunvélun-an.
昇る-<(軽いものが)>日<主格>から日の出-<属格>下る-<(軽いものが)>中へ・中から西-<対格>

「日は日の出の方から昇り、西へと沈む。」

子どもに教える書物によく出る決まった言い方。後半の主語は動詞の語尾でわかるので省いている。un+対格で「西の内へ」と、方角に入っていく動きを表す。órun と vélun が対になる。

dúlan faronárai du dúror.

読み:ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ドゥーロル。

dúl-anfaronár-aidudúror.
下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手下手・南<対格>

「運び人たちは南の縁へと下りていく。」

dúror は重性の子音語幹で、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「下手へ」。高原では南は低い土地なので、崖道を下る動きと南へ向かう動きが同じ言い方になる。

mé duliþésa ólmaran du dúror.

読み:メー ドゥリセーサ オルマラン ドゥ ドゥーロル。

médul-iþ-és-aólmar-andudúror.
<禁止・願いの打ち消し>下る-<〜させる>-<〜すべし>-<(軽いものが)>年長者-<対格>下手下座<対格>

「年長者を下座へ下げてはならない。」

作法の書に見られる当為法の文。当為法は mé で否定する。主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。強勢は -és- に移る。

dúlan faronárai es méndales orénos.

読み:ドゥーラン ファロナーライ エス メンダレス オレーノス。

dúl-anfaronár-aiesméndal-esorén-os.
下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>からまん中-<属格>縁-<属格>

「「運び人たちは縁のまん中から下りていく。」」

崖道の主な道筋が、長川の峡谷に沿って縁のまん中を通っていることを言う。「〜のまん中から」は、es+méndal の属格に、全体を表す名詞の属格を続けて言うので、属格が二つ続く。

lísa lisár þelán némes un sáindarei.

読み:リーサ リサール セラーン ネーメス ウン サインダレイ。

lís-alis-árþel-ánném-esunsáindar-ei.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>名前-<対格><私>-<属格>内に証文-<与格>

「書記は証文の中に私の名を書く。」

un+与格で「〜の内に」を表す。前置詞なしの与格でも場所は言えるが、un を添えると「その内側に」という意味がはっきりする。un には強勢がない。名前を書くことは息を使わないので、禁忌にならない。

lúin tóro nébro, na sénimor álmaran un élvarei.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ セーニモル アルマラン ウン エルヴァレイ。

lúintór-onébro,nasén-imorálmar-anunélvar-ei.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>見る-<我々が>白月-<対格>内に天-<与格>

「霧が来ると、天の内に白月が見えなくなる。」

霧期を言う文。un+与格で、天という広がりの内側にあることを表す。霧は下から割りこむ帳なので、天にあるものが見えなくなる。

lúin éso nébro trúin, mé hál þelán!

読み:ルーイン エーソ ネーブロ トルーイン、メー ハール セラーン!

lúinés-onébrotrúin,méhálþel-án!
ときいる-<(重いものが)>霧<主格>近い<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>

「霧が近いときは、名前を呼ぶな。」

親が子に言い聞かせる、禁忌の言い方。霧の中で名を呼ぶと下の国に聞かれる、という信仰による。nébro「霧」は重性なので、繋辞は éiso になる。禁止は「mé+命令法」で言う。

tóran kelárai sal hóum.

読み:トーラン ケラーライ サル ホーン。

tór-ankel-ár-aisalhóum.
来る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>〜の外に炉<対格>

「樵たちが炉ばたの外へ出てくる。」

日常の文。sal はほかの方向の前置詞と同じく強勢をもたず、組む格で意味が変わる。この文のように対格と組むと「〜の外へ」という向きを表し、与格と組むと「〜の外で」という場所を表す。hóum「炉」は重性なので、対格は主格と同じ形になる。

tór, lúin tóra nóra! séirim tásan.

読み:トール、ルーイン トーラ ノーラ!セーリン ターサン。

tór,lúintór-anóra!séir-imtás-an.
来る<命令法><あなたが>とき来る-<(軽いものが)>夜分<主格>待つ-<私が><あなた>-<対格>

「晩になったら来い。待っているぞ。」

親しい目下の相手への、くだけた誘い。lúin tóra nóra「夜分が来るとき」で「晩になったら」を表す。命令法の2人称単数は語幹そのままの tór。

ké vóiles sáindaran anóreles?

読み:ケー ヴォイレス サインダラン アノーレレス?

kévóil-essáindar-ananórel-es?
<〜か>読む-<あなたが>証文-<対格>昨日-<属格>

「昨日の証文は読んだか。」

同じ段か目下の相手への、くだけた問い。属格の anóreles を名詞の後ろに置いて、「昨日の〜」を表す。目上の人には ké を使わず、推量法で尋ねる。

lisésa lisár sáindaran un téir ombrénail.

読み:リセーサ リサール サインダラン ウン テール オンブレーナイル。

lis-és-alis-ársáindar-anuntéirombrén-ail
書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>内三十日-<〜らに>

「書記は三旬のうちに証文を書くべし。」

法典や役所の定めの文体で、当為法を使っている。勤めや期限は十日を単位に数えるので、「三つの十日」でおよそ一か月を表す。三以上の数詞の後ろでは名詞が複数になり、un「〜の内に」と組むので与格をとる。

lúin tóra reinálva, lísan éndrai.

読み:ルーイン トーラ レイナルヴァ、リーサン エンドライ。

lúintór-areinálva,lís-anéndr-ai
とき来る-<(軽いものが)>雨期<主格>書く-<彼らが>人-<〜たちが>

「雨期が来ると、人々は書きものをする。」

雨期は家にこもって書を写し、詩を作る季節とされる。そのことを述べた一般的な文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。reinálva は雨(上から来るもの)に属する季節なので軽性で、動詞は -a で一致する。

lúin ésa reinálva, na dúlan faronárai du dálor.

読み:ルーイン エーサ レイナルヴァ、ナ ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

lúinés-areinálva,nadúl-anfaron-ár-aidudálor
ときいる-<(軽いものが)>雨期<主格><〜ない>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

「雨期のあいだは、運び人は下の国へ下りない。」

雨期には崖道が滑りやすく、閉じられることを述べた文。「雨期である間」は lúin+és- で言う。否定の na は動詞の直前に置く。faronár は「荷」に行為者の -ár をつけた語で、軽性なので複数主格は -ai になる。

lúin tóra kailálva, dúlan faronárai du dálor.

読み:ルーイン トーラ カイラルヴァ、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ ダーロル。

lúintór-akailálva,dúl-anfaron-ár-aidudálor
とき来る-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手下の国<対格>

「乾風期が来ると、運び人たちは下の国へ下りていく。」

乾風期に崖道が開き、縁の市へ荷が運ばれることを述べた文。前の雨期の例文とちょうど裏返しの内容になる。kailálva は軽性なので、動詞は -a で一致する。dálor は重性なので、対格も主格と同じ形になる。

lúin ésa kailálva, dulíþan kelárai gandér du dálor.

読み:ルーイン エーサ カイラルヴァ、ドゥリーサン ケラーライ ガンデール ドゥ ダーロル。

lúinés-akailálva,dul-íþ-ankel-ár-aigandérdudálor
ときいる-<(軽いものが)>乾風期<主格>下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>下手下の国<対格>

「乾風期のあいだ、樵たちは硬木を下の国へ下ろす。」

乾風期が硬木の伐り出しと吊り下ろしの季節であることを述べた文。gandér と dálor は重性なので、主格と対格が同じ形になる。使役の -íþ- は、後ろに強勢をもつ接辞がないので、自分で強勢をとる。

lúin éso nebrálvo, mé lisésa sáindaran.

読み:ルーイン エーソ ネブラルヴォ、メー リセーサ サインダラン。

lúinés-onebrálvo,mélis-és-asáindar-an
ときいる-<(重いものが)>霧期<主格><禁止・願いの打ち消し>書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>証文-<対格>

「霧期のあいだは、証文を書かぬこと。」

市の決まりや法典の文体。nebrálvo は霧と同じく重性o語幹なので、「霧期である間」の és- は重性の -o(éso)をとる。主節は当為法なので mé で否定する。主語を言わないので「人は」という一般の主語になり、軽性の形 lisésa をとる。

kélan kelárai gandér þailúinei.

読み:ケーラン ケラーライ ガンデール サイルーイネイ。

kél-ankel-ár-aigandérþailúin-ei.
伐る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>硬木<対格>澄みの頃-<与格>

「澄みの頃には、樵たちが硬木を伐る。」

森の村で、一年の仕事の段取りを話すときの言い方。時を表す þailúin は前置詞をつけず、与格だけで「〜の頃に」を表す。軽性の子音語幹なので与格は -ei になる。硬木の伐り出しが始まる時期であることをよく表す文。

lúin tóra þailúin, dúlan faronárai du orén.

読み:ルーイン トーラ サイルーイン、ドゥーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。

lúintór-aþailúin,dúl-anfaronár-aiduorén.
とき来る-<(軽いものが)>澄みの頃<主格>下る-<彼らが>運び人-<〜たちが>下手縁<対格>

「澄みの頃が来ると、運び人たちが縁へ下りていく。」

「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。þailúin は節の主語で、動詞は軽性の tóra で受ける。崖道がいちばんにぎわい、縁の市が盛りを迎える時期を言う、決まった言い回し。

grómim. véilim þelán táses, séulin.

読み:グローミン。ヴェーリン セラーン ターセス、セウリン。

grómim.véil-imþel-ántás-es,séulin.
すまない忘れる-<私が>名前-<対格><あなた>-<属格>友

「すまない、友よ。お前の名前を忘れてしまった。」

親しい相手への、くだけた謝罪。grómim は「私は重い」というのがもとの意味で、過ちを「自分が重くなった」ととらえる見方から来ている。呼びかけの séulin は、読点で区切って文の終わりに置く。

grómim! na sénim tásan.

読み:グローミン!ナ セーニン ターサン。

grómim!nasén-imtás-an.
すまない<〜ない>見る-<私が><あなた>-<対格>

「すまない!お前が見えなかった。」

人混みの市で人にぶつかったときの、とっさの謝罪。直説法の文は、動詞の直前に na を置いて否定する。2人称の tás を使っているので、目上の人には使えない。

snéimim. léunim ín virán, ausenár.

読み:スネーミン。レウニン イーン ヴィラーン、アウセナール。

snéimim.léun-imínvir-án,au-sen-ár.
失礼します申す-<私が>一言葉-<対格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「失礼いたします。一言申し上げます、目付殿。」

目上の人どうしの話に割りこむときの言い方。snéimim で話の流れを止め、謙譲の補充形 léun-「申す」で発言の許しを求める。ín「一」の後ろの名詞は単数になる。

snéimim, ausenár. luuménde ausenár sáindaran sé.

読み:スネーミン、アウセナール。ルーメンデ アウセナール サインダラン セー。

snéimim,au-sen-ár.luum-énd-eau-sen-ársáindar-ansé.
失礼します<お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格>この<軽性>

「失礼いたします、目付殿。この証文をご覧いただきたく存じます。」

目上の人の前に進み出て、用件を切り出すときの言い方。snéimim はもとは snéim-「身をかがめる」の直説法1人称単数(私は身をかがめる)だが、定型句として固まっているので、一語のまま扱う。頭を下げながら言う。呼びかけ ausenár は読点で区切って文の終わりに添える。続く依頼は、命令法ではなく願望法3人称(上向きの話し方)になっている。

lís sáindaran sé! dómim.

読み:リース サインダラン セー!ドーミン。

líssáindar-ansé!dómim.
書く<命令法><あなたが>証文-<対格>この<軽性>承りました

「「この証文を書け。」「承りました。」」

二人の発話。目上の者が下向きの命令法で言いつけ、目下の者が dómim で受ける。dómim はもとは「控える」の謙譲の補充形 dóm- の1人称単数で、「(お言いつけのもとに)控えております」という意味が固まった定型の返事。役所や大家で、命令を受けた者がまず口にする。

hóu! ké éses? na sénim tásan.

読み:ホー!ケー エーセス?ナ セーニン ターサン。

hóu!kéés-es?nasén-imtás-an.
おい<〜か>いる-<あなたが><〜ない>見る-<私が><あなた>-<対格>

「おい!いるのか?お前が見えない。」

霧期に、名前を呼ぶかわりに hóu で相手の注意を引く言い方。霧の中で名前を呼ぶと名前の主が下の国に引かれるとされるので、名前のかわりにこの声を使う。はい・いいえの問いは文のいちばん前の ké で作る。

hóu! mé hál þelán némes!

読み:ホー!メー ハール セラーン ネーメス!

hóu!méhálþel-ánném-es!
おい<禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格><私>-<属格>

「おい!俺の名を呼ぶな!」

霧の中で自分の名を呼ばれたときに、たしなめる言い方。禁止は「mé+命令法」。þelá は語尾に強勢のある軽性a語幹なので、対格は þelán になる。霧の中では hóu や té「そこの方」で呼びかけるのが決まりなので、hóu がそのまま禁忌を守った呼びかけになっている。

dómim. dulísim sáindaran aulisárei.

読み:ドーミン。ドゥリーシン サインダラン アウリサーレイ。

dómim.du-lís-imsáindar-anau-lis-ár-ei.
承りました<〜させていただく>-書く-<私が>証文-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格>

「承りました。書記の方に証文を書いて差し上げます。」

言いつけを受けたあと、するべきことを謙譲の形で言い直して請け合う、改まった返事。謙譲の動詞と高めた与格を並べて、自分と相手の上下を表している。dómim のあとは、謙譲の接頭辞 du- を使った動詞で続けるのがふつう。

kloimár! dómim. sén sáindaran sé.

読み:クロイマール!ドーミン。セーン サインダラン セー。

kloim-ár!dómim.sénsáindar-ansé.
学ぶ-<〜する人>はい、ここに見る<命令法><あなたが>証文-<対格>この<軽性>

「「弟子よ!」「はい、ここに。」「この証文を見よ。」」

学び舎や工房で、師が弟子を役割の名で呼び、弟子が dómim で応じ、師が用件を命令法で続ける流れ。日常では呼格を使わないので、呼びかけは主格の形の役割名だけで言う。dómim は呼ばれたらすぐ口にする返事で、続く言いつけを受ける構えも示す。

lísa lisár sáindaran senárei. vérin.

読み:リーサ リサール サインダラン セナーレイ。ヴェーリン。

lís-alis-ársáindar-ansen-ár-ei.vérin.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>見る-<〜する人>-<与格>そのとおり

「「書記が目付に証文を書くのだな。」「そのとおり。」」

市の手順を確かめ合うやりとり。取引の約束は書きつけが重いので、書記が証文を書いて目付に渡す。vérin は、相手が述べた決まりや事実をそのまま認める応答で、身分を問わず使える。

éira, duþélim sélvanan.

読み:エーラ、ドゥセーリン セルヴァナン。

éira,du-þél-imsélvan-an.
ええと<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>

「ええと……セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった名乗りで言いよどんだ例。改まった場で éira をはさむのは、言葉が整っていないしるしとして嫌われ、教養が足りないと見られやすい。du- は謙譲の接頭辞、名乗る名前は対格に置く。

aursáre! lísa endríña virán.

読み:アウルサーレ!リーサ エンドリーニャ ヴィラーン。

aursáre!lís-aendríñavir-án.
おお書く-<(軽いものが)>子ども<主格>言葉-<対格>

「おお、子どもが字を書いているぞ!」

ほめるときの感嘆。virá を lís-「書く」の目的語にすると「字を書く」の意味になる。書かれた言葉は上へ昇るものとされるので、字を書くことをほめるときに祖先を呼ぶ aursáre はよく合う。

ké vóiles sáindaran sé?

読み:ケー ヴォイレス サインダラン セー?

kévóil-essáindar-ansé?
<〜か>読む-<あなたが>証文-<対格>この<軽性>

「お前、この証文が読めるか?」

下向きの問い。はい・いいえで答える問いは、文のいちばん前に ké を置いて作る。答えるときは動詞を繰り返して vóilim(読める)、na vóilim(読めない)と言う。目上の人には ké も2人称も使わない。

meiréndes sóndelan sé némei.

読み:メイレンデス ソンデラン セー ネーメイ。

meir-énd-essóndel-anséném-ei.
与える-<〜しますように>-<あなたが>書物-<対格>この<軽性><私>-<与格>

「この書物を私に譲ってくれぬか。」

同じ段の相手への依頼で、願望法の2人称を使う。目下の相手なら命令法 méir、目上の相手なら願望法の3人称にする。sóndel は軽性・子音語幹で、指示詞 sé も軽性の形をとる。

aurainiþénde aulisár lisán sé némei.

読み:アウライニセンデ アウリサール リサーン セー ネーメイ。

au-rainiþ-énd-eau-lis-árlis-ánséném-ei.
<お〜になる・御〜>-教える-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>字-<対格>この<軽性><私>-<与格>

「書記の方に、この字をお教えいただきたく存じます。」

目上の人に教えを請う改まった言い方。尊敬の au- を動詞と名詞の両方につけ、願望法の3人称で頼む。強勢は願望法の -énd- に移り、語根の強勢は消える。

lúin tóro nébro, na trálan lisárai sóndelais.

読み:ルーイン トーロ ネーブロ、ナ トラーラン リサーライ ソンデライス。

lúintór-onébro,natrál-anlis-ár-aisóndel-ais.
とき来る-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>写す-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>書物-<〜たちを>

「霧が来ると、書記たちは書物を写さない。」

霧の中で書いた字は下へ流れるとされるので、霧期には書物の書き写しを避ける(書物を写すのは雨期の仕事)。否定の小辞 na は動詞の直前に置く。sóndel は巻物も綴じ本も含めた書物全般を指す。

funeléran lisárai sélvanan.

読み:フネレーラン リサーライ セルヴァナン。

funelér-anlis-ár-aisélvan-an.
書き留める-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>セルヴァン-<対格>

「書記たちはセルヴァンの名を書き留める。」

言葉を消えないように字にして留めることを表す動詞。書くことは息を使わないので、口にしてはいけない名前でも書き留めてかまわない。直説法の3人称複数 -an には強勢がないので、強勢は -ér- に残る。

lisésa aldáran áurenan aurlisímei.

読み:リセーサ アルダーラン アウレナン アウルリシーメイ。

lis-és-aaldár-anáur-en-anaurlisím-ei.
書く-<〜すべし>-<(軽いものが)>座-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>上げ書き-<与格>

「「高き座」は上げ書きで書くべし。」

書の作法を教える書物の一句。当為法で主語を言わないので一般の人が主語になり、軽性の -a をとる。分詞 áurenan は aldáran(軽性・単数・対格)に一致する。手段の「〜で」を与格 aurlisímei で言っている。

ésa fírna tásei, lís þelán táses.

読み:エーサ フィルナ ターセイ、リース セラーン ターセス。

és-afírnatás-ei,lísþel-ántás-es.
いる-<(軽いものが)>筆<主格><あなた>-<与格>書く<命令法><あなたが>名前-<対格><あなた>-<属格>

「筆はあるだろう、自分の名を書いてごらん。」

師や親が子どもに字を習わせるときの、下向きの言い方。所有は「ある+持ち主の与格」で言い、動詞は持ち主ではなく、持たれている fírna(軽性)に一致する。命令法の2人称単数は語幹そのまま(lís)。二つの節を接続詞なしで並べるので、あいだを読点で区切る。

tóran kloimárai an kloimándo lisárar.

読み:トーラン クロイマーライ アン クロイマンド リサーラル。

tór-ankloim-ár-aiankloimándolis-ár-ar.
来る-<彼らが>学ぶ-<〜する人>-<〜たちが>上手学び舎<対格>書く-<〜する人>-<〜らの>

「弟子たちが、上手にある書記たちの学び舎へ上ってくる。」

都の様子を記した書物の文。学び舎は場所名詞 -ándo の語で重性なので、対格は主格と同じ形になる。an+対格で「上手へ」。属格 lisárar「書記たちの」は名詞の後ろに置く。

sén sáindaran sé te lísa lisár!

読み:セーン サインダラン セー テ リーサ リサール!

sénsáindar-ansételís-alis-ár!
見る<命令法><あなたが>証文-<対格>この<軽性><関係節>書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>

「書記が書いたこの証文を見ろ。」

役所や商家で、目上の者が目下の者に言う命令で、下向きの話し方にあたる。関係節は名詞句のいちばん最後に置く。ti のすぐ後ろには動詞が来る。関係節の目的語にあたる部分(証文)は、何も置かずに空けておく。指示詞 sé「この」は ti の前に置いてよい。sáindar「証文」は軽性の子音語幹の名詞なので、対格は -an になり、指示詞も軽性の sé になる。動詞には時制がないので、lísa は文脈によって「書いた」とも訳せる。

lúin tíla tilár pandán, lóima loimán.

読み:ルーイン ティーラ ティラール パンダーン、ロイマ ロイマーン。

lúintíl-atil-árpand-án,lóim-aloim-án.
とき彫る-<(軽いものが)>彫る-<〜する人>版木-<対格>唱える-<(軽いものが)>詞-<対格>

「彫り師は版木を彫るとき、詞を唱える。」

彫り師が彫りはじめに、版の木へ「言葉を載せて運んでほしい」と願う短い詞を唱える習わし。lúin で始まる「〜とき」の節は、主節の前に置く。後半の主節では主語を言わないが、動詞の語尾から、前半と同じ彫り師が主語だとわかる。

tílan þelán houmáres.

読み:ティーラン セラーン ホウマーレス。

tíl-anþel-ánhoumár-es.
刻む-<彼らが>名前-<対格>家の主-<属格>

「家の主の名を刻む。」

鋳物師が青銅の器に持ち主の名を入れる習わしを述べた文。銘は鋳型に刻んでから鋳こむ。主語を言わない3人称複数で、「(鋳物師たちは)〜する」という一般的な事柄を表す。名前を書いたり刻んだりするのは息を使わないので、禁忌には当たらない。

trálim sóndelan sé.

読み:トラーリン ソンデラン セー。

trál-imsóndel-ansé.
写す-<私が>書物-<対格>この<軽性>

「この書物を写す。」

時制がないので、習慣としても予定としても読める。指示詞は名詞の後ろに置き、格では形が変わらない。

trála lisár sóndelan.

読み:トラーラ リサール ソンデラン。

trál-alis-ársóndel-an.
写す-<(軽いものが)>書く-<〜する人>書物-<対格>

「書記は書物を写す。」

書の司の仕事を述べる、記録の文体の文。動詞–主語–目的語の基本の語順。

trálan kloimárai lisáis.

読み:トラーラン クロイマーライ リサイス。

trál-ankloim-ár-ailis-áis.
手本をなぞる-<彼らが>学ぶ-<〜する人>-<〜たちが>字-<〜たちを>

「弟子たちは手本の字をなぞる。」

弟子 kloimár は軽性なので、複数主格は -ai。主語が複数なので、動詞は3人称複数の -an をとる。

féila lisár plánan.

読み:フェーラ リサール プラーナン。

féil-alis-árplán-an.
引く<〜し終えた>-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>帳簿-<対格>

「書記は帳簿に罫を引き終えた。」

帳簿を目的語にとって「帳簿に罫を引く」。完了語根 féil-。

þúnda þundár þondán.

読み:スンダ スンダール ソンダーン。

þúnd-aþund-árþond-án.
裁く-<(軽いものが)>裁く-<〜する人・主格>誓い-<対格>

「法官が約束を裁く。」

toríþa ráuvan kelárais un krévan, salóur na kélan kelárai árnelan.

読み:トリーサ ラウヴァン ケラーライス ウン クレーヴァン、サロール ナ ケーラン ケラーライ アルネラン。

tor-íþ-aráuvankel-ár-aisunkréva-n,salóurnakél-ankel-ár-aiárnel-an.
来る-<〜させる>-<(軽いものが)>森の巫<主格>伐る-<〜する人>-<〜たちを>内に練習の場-<対格>しかし<〜ない>伐る-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>木-<対格>

「森の巫は樵たちを稽古の場へ呼び寄せるが、樵たちは木を伐らない。」

un と対格を組み合わせると「〜の中へ」の意味になり、un krévan は「稽古の場へ」となる。伐り出しの詞を稽古で唱えても本番の儀式にはならず、樵はそこでは斧を入れない。そのことを言った文である。使役の toríþ-「呼び寄せる」は、後ろに強勢のある接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。逆接の salóur は二つめの文の頭に置く。立っている木 árnel は軽性なので、対格は -an になる。

drénan kloimárai un krévan, duói léunan mélnan rainiþárei, si na rímba rainiþár virán gráisan.

読み:ドレーナン クロイマーライ ウン クレーヴァン、ドゥオイ レウナン メルナン ライニサーレイ、シ ナ リンバ ライニサール ヴィラーン グライサン。

drén-ankloimár-aiunkréva-n,duóiléun-anméln-anrainiþár-ei,sinarímb-arainiþárvir-ángráis-an.
参る-<彼らが>弟子-<〜たちが>内に練習の場-<対格>それから申す-<彼らが>詩-<対格>師-<与格>と<〜ない>数える-<(軽いものが)>師<主格>言葉-<対格>悪い-<対格>

「弟子たちは稽古の場へ参り、それから師に詩を申し上げる。師は言い誤りを数えない。」

宮廷や学び舎での詩の稽古を言った文。弟子の行いは謙譲の補充形で表し、drén-「参る」と léun-「申す」を使っている。un krévan は「稽古の場へ」で、本番ではない場であることを示す。virán gráisan「悪い言葉」は、ここでは無礼な言葉ではなく、言い損なった語を指す。形容詞 gráis は名詞の後ろに置かれ、軽性・対格の -an で一致している。

dórel, sarénei, méirim sáindaran senárei.

読み:ドーレル、サレーネイ、メーリン サインダラン セナーレイ。

dórel,sarén-ei,méir-imsáindar-ansen-ár-ei.
明日本番-<与格>与える-<私が>証文-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

「明日、本番で、私は目付に証文を渡す。」

縁の市で、目付の前に正式に証文を差し出す場面を言う。場面の枠は「時→場所」の順に並べ、時の dórel を先に置く。sarénei は場面の枠に入れ、動詞の後ろの与格は受け手の senárei 一つだけにする(裸の与格は一つまで)。

sarénei, loimésa ráuvan loimán gandéroi.

読み:サレーネイ、ロイメーサ ラウヴァン ロイマーン ガンデーロイ。

sarén-ei,loim-és-aráuvanloim-ángandér-oi.
本番-<与格>唱える-<〜すべし>-<(軽いものが)>森の巫<主格>詞-<対格>硬木-<与格>

「本番には、森の巫が硬木に向かって詞を唱えるべし。」

伐り出しの作法を書き記した文で、碑文や作法書の当為法。主語の ráuvan は人なので、当為法は軽性の -ésa になる。強勢は -és- に移るので、語根 lóim- の強勢は消える。下詠みや練習で詞を唱えても数に入らず、木の前で唱える本番の詞だけが儀式として成り立つ、という含みがある。

lúin tóra saréna mélnes, mé véil virán!

読み:ルーイン トーラ サレーナ メルネス、メー ヴェール ヴィラーン!

lúintór-asarénaméln-es,mévéilvir-án!
とき来る-<(軽いものが)>本番<主格>詩-<属格><禁止・願いの打ち消し>忘れる<命令法><あなたが>言葉-<対格>

「詩合わせで正式の詠みの番が来たら、句を忘れるなよ。」

詩合わせの前に、目上の者が目下の者に言う励ましの言葉。saréna mélnes「詩の本番」は、勝ち負けの判定にかかる正式の詠みを指し、その前の下詠みと区別する。lúin 節では saréna が主語になり、軽性なので動詞は -a で受ける。禁止は mé +命令法の言い方で、2人称単数なので下向きの話し方になる。

ké súles lúsan?

読み:ケー スーレス ルーサン?

késúl-eslús-an?
<〜か>すする-<あなたが>粥-<対格>

「粥をすすっているのか。」

食卓での日常的な問い。ké ではい・いいえの問いを作る。2人称を使っているので、同じ身分か目下の相手への問い。答えは動詞を繰り返して「súlim」(すすっている)または「na súlim」(すすっていない)。

súlim lúsan.

読み:スーリン ルーサン。

súl-imlús-an.
すする-<私が>粥-<対格>

「粥をすすっている。」

雨期の食卓での日常の場面。súl- は他動詞で、流質の食物 lúsa を対格で取る。日本語話者は lúsan の対格語尾 -an を聞き落とし、「粥」が目的語だと気づきにくい。

súla endríña lúsan un hóumoi.

読み:スーラ エンドリーニャ ルーサン ウン ホーモイ。

súl-aendríñalús-anunhóum-oi.
すする-<(軽いものが)>子ども<主格>粥-<対格>内に炉-<与格>

「子どもが炉のそばで粥を吸い上げている。」

椀を口元まで傾けて汁を直接吸い上げる動作(意味2)。un+与格で「〜の内で」を表す。hóum は重性名詞(炉・世帯の量名詞)で、与格は -oi。endríña は指小辞 -íña でできた軽性名詞(子ども)。日本語話者は endríña の ñ を「ニャ」と聞き取れるが、語末の -a を「エ」と聞き、主格だと気づきにくい。

sórel, luséra dórin lúsan.

読み:ソーレル、ルセーラ ドーリン ルーサン。

sórel,lus-ér-adórinlús-an.
今日粥-<〜でする>-<(軽いものが)>男<主格>粥-<対格>

「今日は男が粥を食べている。」

炉ばたの日常文。場の枠「今日」を動詞前に置き、読点で区切る。主語 dórin は人なので軽性一致となり、動詞は3人称単数軽性の -a をとる。目的語 lúsa は軽性a語幹の対格 lúsan。

sórel foumtáula endríña lúsan

読み:ソーレル フォウンタウラ エンドリーニャ ルーサン

sórelfoumtául-aendríñalús-an
今日温取る-<(軽いものが)>子ども<主格>粥-<対格>

「今日は、子どもが温かい粥をすする。」

雨期の食卓など温かい粥の場面での日常の叙述。foumtául- は温かい粥・汁物のような流質食物を目的語にとり、固形の食物や冷たい水には使わない。直説法現在で主語 endríña は軽性なので語尾は -a。

ké foumtáules tás lúsan?

読み:ケー フォウンタウレス タース ルーサン?

kéfoumtául-estáslús-an
<〜か>温取る-<あなたが><あなた・主格>粥-<対格>

「お前は温かい粥をすするのか。」

日常会話での直接問い。縁の市の取引言葉では foumtául- は使われない。2人称単数の直説法 foumtáules を使っている。

krúnan faronárai gandér.

読み:クルーナン ファロナーライ ガンデール。

krún-anfaronár-aigandér.
支える-<彼らが>運び人-<〜たちが>硬木<対格>

「運び人たちが硬木を支えている。」

降ろし場や荷場での共同作業を示す文。複数人が体重をかけて硬木の重みに耐えている。硬木は重性名詞で、対格語尾はつかないが、VSO語順により目的語とわかる。主語が複数なので動詞は3PLを用いる。

krávan faronárai du orén.

読み:クラーヴァン ファロナーライ ドゥ オレーン。

kráv-anfaron-ár-aiduorén
叫ぶ-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「「運び人たちが縁へ向けて叫ぶ。」」

縁や降ろし場で、荷の動きを知らせる合図として叫ぶ描写。主語が複数名なので直説法複数 -an。faronár の複数は faronárai。du+対格は縁の市・崖下への方向を示す。

sénan torárai bormúndo.

読み:セーナン トラーライ ボルムンド。

sén-antor-ár-aibormúndo.
見る-<彼らが>来る-<〜する人>-<〜たちが>出入口<対格>

「客たちが出入口を見る。」

見出し語 bormúndo は重性o語幹の単数主格・対格と同一形なので、ここでは与格や属格を作らず、そのまま対格として用いる。

brúnan faronárai dulfáron.

読み:ブルーナン ファロナーライ ドゥルファーロン。

brún-anfaron-ár-aidulfáron
背負う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下ろし荷<対格>

「運び人たちは下ろし荷を背負う。」

縁の市での仕事の描写。faronárは人なので、動詞は性を区別しない3複。dulfáronは「下ろし荷」を表す重性名詞で、対格も主格と同形。

brúna lisár sáindaran.

読み:ブルーナ リサール サインダラン。

brún-alis-ársáindar-an
背負う-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>証文-<対格>

「書記は証文の務めを背負う。」

比喩用法。書かれた約束の責任を負う意。主語lisárは人なので軽性3単。sáindar-anは軽性の子音語幹名詞の対格。

þúelan kelárai tromó.

読み:スーエラン ケラーライ トロモー。

þúel-ankel-ár-aitromó.
追う-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>足跡<対格>

「樵たちは足跡をたどる。」

kelárai は kelár「樵」の複数主語。tromó は足跡をひと続きの痕として受ける。比喩的「跡を追う」の用法。

þúelim tásan.

読み:スーエリン ターサン。

þúel-imtás-an.
追う-<私が><あなた>-<対格>

「あなたについていく。」

人称代名詞 tás に、対格接尾辞 -an を付けた形。

raunérim ólmaran.

読み:ラウネーリン オルマラン。

raunér-imólmar-an.
追う-<私が>年長者-<対格>

「私は年長者についていく。」

意味1の日常会話。人を追う・ついていく用法。他動詞の目的語は対格で、ólmár は軽性人名詞なので単数対格に -an が付く。

lúin háles þelán némes, þréelim.

読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、スレーリン。

lúinhál-esþel-ánném-es,þréel-im
when呼ぶ-<あなたが>名前-<対格><私>-<属格>振り返る<〜し終えた>-<私が>

「あなたが私の名を呼ぶと、私は振り向いた。」

lúin 節では動詞が節頭に来る。主語は人称語尾に含み、所有は名詞 þelán の後ろに属格 ném-es を置く。主節の完了相 þréel- は動詞の完了形で、名詞の呼称ではない。

krúmim endríñan.

読み:クルーミン エンドリーニャン。

krúm-imendríñ-an.
抱える-<私が>子ども-<対格>

「私は子どもを抱えている。」

家庭の場面。krúm-は人を両腕で胸の高さに引きつけて支える動作にも使う。endrīñ-「子ども」の単数対格は-anをとる。

púlan faronárai krúndo.

読み:プーラン ファロナーライ クルンド。

púl-anfaron-ár-aikrúndo.
軽く叩く-<彼らが>運ぶ-<〜する人>-<〜たちが>荷担ぎ歌<対格>

「運び人たちは荷担ぎ歌(の拍子)を軽く打つ。」

荷運びの拍子に軽く打つ用法。目的語の krúndo は重性o語幹の単数対格で、主格 krúndo と同形である。軽性の対格語尾 -án を添えるのは誤り。ここでは歌そのものより、その歌に付随する拍子を受ける比喩的用法。主体 faronárai は複数軽性なので、動詞は性を区別しない3人称複数 -an をとる。

sórel, vélan endríñai.

読み:ソーレル、ヴェーラン エンドリーニャイ。

sórel,vél-anendríñ-ai.
今日渇く-<彼らが>子ども-<〜たちが>

「今日、子どもたちは渇いている。」

書物の記述では、時の語を短く示してから状態を言い切る。複数の子どもは軽性だが、動詞は複数の人称語尾のみで性を区別しない。

snémbo már virán.

読み:スネンボ マール ヴィラーン。

snémb-omárvir-án.
なぞる-<(重いものが)>手<主格>言葉-<対格>

「手が、言葉の上をなぞる。」

詩的用法。主語 már は体の部分なので重性であり、動詞は3人称単数重性 -o をとる。目的語 virán は抽象的な「言葉」だが、書かれた言葉の表面を指先で触る意に転じた用法。

sénim plánan múlan sé

読み:セーニン プラーナン ムーラン セー

sén-implán-anmúl-ansé
見る-<私が>帳簿-<対格>分厚い-<対格>この<軽性>

「私はこの分厚い帳簿を見る。」

帳簿など一枚ものの厚みを指す sense 2 の用法。plána「帳簿」は軽性で、対格単数では plánan になる。形容詞 múl も軽性対格の語尾 -an を受けて múlan となる。指示詞 sé は格標識をもたない。

krailsál rásan, endríña!

読み:クライルサール ラーサン、エンドリーニャ!

krailsálrás-an,endríña!
丁寧に畳む<命令法><あなたが>衣-<対格>子

「衣を丁寧に畳みなさい、この子。」

手仕事を教える場。命令法2人称単数は語幹のむき出し形で、語幹末の l は語末に置ける。文末の endríña は呼語で、日常では呼格語尾を添えず、名詞をそのまま置く。rása は軽性a語幹で、対格は rás-an の形をとる。

krailsáilim dóulin snélan.

読み:クライルサイリン ドーリン スネーラン。

krailsáil-imdóulinsnél-an.
丁寧に畳む<〜し終えた>-<私が>もう布-<対格>

「私はもう布を丁寧に畳み終えた。」

肯定文で dóulin「もう」を使う場合、対応する動詞は完了相になる(例:léisa dóulin…)。krailsál- の完了相は母音交替 krailsál- → krailsáil- で、krailsáilim のようになる。直説法1人称単数の語尾 -im が主語を示し、主語代名詞は省く。相の副詞 dóulin は動詞の直後に置かれ、主語を省いた文では目的語の前に来る。

auþovonóran ólmarai.

読み:アウソヴォノーラン オルマライ。

au-þovonór-anólmar-ai
<お〜になる・御〜>-顔を影へ向ける-<彼らが>年長者-<〜たちが>

「年長者たちは、顔を影へ向けられた。」

礼法書や詩で、年長者複数名の失望を示す叙述。主語は人なので軽性複数-ai、動詞は3複-an。au- は年長者複数全体への敬意を示す。日常では用いられず、礼法上の不信心・道徳的拒絶を記すときに近い。

lóima kelár loimán, senkráno senó keláres.

読み:ロイマ ケラール ロイマーン、センクラーノ セノー ケラーレス。

lóim-akel-árloim-án,senkrán-osenókel-ár-es.
唱える-<(軽いものが)>伐る-<〜する人>詞-<対格>,目が止まる-<(重いものが)>目<主格>伐る-<〜する人>-<属格>

「樵が詞を唱えると、樵の目は思わず見開かれた。」

儀礼の詞を唱える場面を想定した文。森の言葉ではこの語が通常の言い方として使われ、宮廷では「目が硬くなる」という語感が粗野に響くため、婉曲的な言い方に置き換えることがある。loimán は loimá「詞」の対格。

na vírin virán, senosálimor.

読み:ナ ヴィーリン ヴィラーン、セノサーリモル。

navír-invir-án,senosál-imor.
<〜ない>言う-<〜して・〜く>言葉-<対格>目合わせ-<我々が>

「私たちは、ひとことも言わず、目を合わせる(無言で合意する)。」

意味2。副動詞 -in に na をつけた否定形で「言わずに」と前置し、本句の「目合わせる」が無言の合意を示す。主語は本句の -imor が示す一人称複数。virán は virá「言葉」の単数対格。

lúin áuran ombára ilánai, þrínan éndrai.

読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、スリーナン エンドライ。

lúináur-anombárailán-ai,þrín-anéndr-ai.
とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>目を覚ます-<彼らが>人-<〜たちが>

「十の灯が昇ると、人々は目を覚ます。」

暦や儀礼の詞に似た書面の文。lúin 節は主節の前に置く。ombára ilánai は「十の灯」という星座名で、古い形 ombára が名前にだけ残っている。「十の灯」は通常の星の数えではなく、星を数えている意味にはならない。3複数の動詞は性を区別しない。

lúin áuran ombára ilánai, seláura ólmar.

読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、セラウラ オルマル。

lúináur-anombárailán-ai,seláur-aólmar
とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>目覚める-<(軽いものが)>年長者<主格>

「十の灯が昇ると、年長者は目を覚ます。」

書物・年代記向けの描写。lúin による時節節が主節の前に置かれる。áuran ombára ilánai は「十の灯が昇る」という星座名に基づく定型表現。主節の seláura は主語 ólmar に一致して軽性 3 人称単数。

kekélan kelárai derván.

読み:ケケーラン ケラーライ デルヴァーン。

kekél-ankel-ár-aiderv-án.
こねる-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>粉-<対格>

「樵たちは粉をこねる。」

食事作りの場面。主語 kelárai が複数名詞句なので、動詞は3人称複数形の kekélan になる。粉を表す dervá は軽性a語幹で、対格は derv-án。

kekéla lisár dreumán.

読み:ケケーラ リサール ドレウマーン。

kekél-alis-árdreum-án.
こねる-<(軽いものが)>書く-<〜する人>墨-<対格>

「書記が墨を練る。」

書記が書き仕事のために墨を練る場面。主語 lisár は軽性単数なので、動詞は軽性の3人称単数形 kekéla。墨 dreumá の対格は dreum-án。

mé dulilán ilánan!

読み:メー ドゥリラーン イラーナン!

médulilánilán-an!
<禁止・願いの打ち消し>消す<命令法><あなたが>灯-<対格>

「灯を消すな。」

親しい相手への強い禁止。mé に命令法単数のむき出しの語幹を続ける。禁止語 mé は強勢をもつ。

dulilána endríña elþán sé.

読み:ドゥリラーナ エンドリーニャ エルサーン セー。

dulilán-aendríñaelþ-ánsé.
消す-<(軽いものが)>子ども<主格>火-<対格>この<軽性>

「子どもはこの火を消している。」

炉場や家庭での日常文。人の子は軽性なので、3単の語尾は -a。

þalíþim ilánan.

読み:サリーシン イラーナン。

þal-íþ-imilán-an.
止まる-<〜させる>-<私が>灯-<対格>

「私は灯を消す。」

日常の室内での言い方。þalíþ- は þál-「止まる」に -íþ- がついた使役形。灯 ilána は軽性a語幹で、単数対格は ilánan。主語「私」は代名詞ではなく語尾 -im に表れる。

þalíþa andaulóura elþán hóumos.

読み:サリーサ アンダウローラ エルサーン ホーモス。

þal-íþ-aandaulóuraelþ-ánhóum-os.
止まる-<〜させる>-<(軽いものが)>祖母<主格>火-<対格>炉-<属格>

「祖母は炉の火を消す。」

家庭の日常。人間は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。elþá は軽性a語幹で単数対格 elþán。名詞句 elþán hóumos は「炉の火」。

ké þóla endríña selván?

読み:ケー ソーラ エンドリーニャ セルヴァーン?

kéþól-aendríñaselv-án
<〜か>息を止める-<(軽いものが)>子ども<主格>息-<対格>

「子どもは息を止めていますか。」

日常会話の疑問文。疑問小辞 ké は文頭に置く。主語 endríña は人を指す軽性名詞なので、動詞は 3人称単数・軽性の語尾 -a を受ける。目的語は selván。

tána houmár snélan sé.

読み:ターナ ホウマール スネーラン セー。

tán-ahoum-ársnél-ansé.
張る-<(軽いものが)>炉-<〜する人・主格>布-<対格>この<軽性>

「家主はこの布を張る。」

家の中で、染め・仕上げ・干しのために布を枠などに平らに張る場面。主語「houmár」は軽性名詞なので、動詞は軽性単数の tána。「snéla」は軽性a語幹で、対格は snélan、指示詞は軽性の sé。

snéla endríña snélan.

読み:スネーラ エンドリーニャ スネーラン。

snél-aendríñasnél-an.
皺にする-<(軽いものが)>子<主格>布-<対格>

「子どもが布をくしゃくしゃにしている。」

布・紙・葉などを目に見えるしわにする意味。目的語は snéla の対格 snélan。顔の表情を指す用法ではない。

virsnáles tás si na víres virán

読み:ヴィルスナーレス タース シ ナ ヴィーレス ヴィラーン

virsnál-estássinavír-esvir-án
口をとがらせる-<あなたが><あなた・主格>CONN<〜ない>言う-<あなたが>言葉-<対格>

「あなたは口をとがらせ、ひとことも言わない。」

「言葉を閉じる」意を、物を言わない述語節で明示する文。主語を繰り返さず、同じ聞き手への否定節も人称語尾 -es を保つ。na は文ではなく動詞の直前に来る。

nárim velíman nílin ílmo

読み:ナーリン ヴェリーマン ニーリン イルモ

nár-imvel-ím-anníl-inílmo
しのぐ-<私が>渇く-<〜の技・〜さ>-<対格>飲む-<〜して・〜く>水<対格>

「私は水を飲んで渇きをしのぐ。」

日常会話で、喉の渇きを完全に止めるまでではないが、水を含んで取り急ぎやりすごす動作を示す。velím は véli- の語根 vel- に抽象名詞化の -ím をつけた軽性名詞で、対格単数は -an。副動詞 nílin は主語が後ろの動詞と同一であることを示す。ílmo は重性名詞で、対格単数は同形。

súna mélna sé nourán

読み:スーナ メルナ セー ノウラーン

sún-amélnasénour-án
袖引く-<(軽いものが)>詩<主格>この<軽性>心-<対格>

「この詩は心を引く。」

書物・詩の用法。sún- は比喩的に「聞き手の注意や関心を軽く引く」意になる。主語 mélna「詩」は軽性a語幹なので、動詞は軽性の直説法3人称単数 sún-a。nourán は軽性a語幹 nourá「心」の対格。

súnim tásan

読み:スーニン ターサン

sún-imtás-an
袖引く-<私が><あなた>-<対格>

「私はあなたの袖をちょっと引く。」

くだけた用法。sún- は相手の袖・衣端を指先で軽くつまんで一瞬引く身振りで、目的語に相手(人)をとり、「こっちへ」「見てくれ」の軽い合図として使う。力を入れて引く動詞とは別。人称代名詞を目的語にとる場合は対格が必要で、2人称単数の対格は tásan。

un sélnarail, snénan torárai.

読み:ウン セルナライル、スネーナン トラーライ。

unsélnar-ail,snén-antorár-ai.
内宿場-<〜らに>泊まる-<彼らが>客-<〜たちが>

「宿場では客が泊まる。」

意味2。宿場の複数与格un sélnarailを場面枠として動詞前に置く。toráraiは客の複数主格。

sneníþa houmár toráran.

読み:スネニーサ ホウマール トラーラン。

snen-íþ-ahoumártorár-an
泊まる-<〜させる>-<(軽いものが)>炉の主<主格>客-<対格>

「炉の主人が客を泊める。」

基本語順 VSO に従い、動詞を文頭に置く。使役形 snen-íþ- で「泊める」。客人 torár は軽性子音語幹なので対格 toráran。

funelkráilim toráran

読み:フネルクライリン トラーラン

funelkráil-imtorár-an
綱に持つ-<私が>客-<対格>

「私は客を綱の荷として引き受ける。」

引き受けを宣言する文。1人称の引き受け手は語尾 -im に現れる。torár-an は語基 torár と単数対格 -an の組み合わせなので、グロスは 客-ACC とする。人を目的語に取るため、単に荷を預かる意味ではなく、綱に掛かったものとして引き渡すまで責任を負う意味になる。縁の市では、この語で引き受けを述べたかどうかが争点になりうる。

luuménde ausenár kráunan sé.

読み:ルーメンデ アウセナール クラウナン セー。

luum-énd-eau-sen-árkráun-ansé
ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>襟-<対格>この<軽性>

「「目付殿に、この襟をご覧いただきたく存じます」」

改まった依頼。命令法の代わりに願望法3人称を使い、相手は高めた役職名ausenárを主語に立つ。kráunanは軽性子音語幹の単数対格、指示詞sé。

vélma lisár plánan sé.

読み:ヴェルマ リサール プラーナン セー。

vélm-alis-árplán-ansé.
開く-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>帳簿-<対格>この<軽性>

「書記はこの帳簿を開く。」

帳面・書物を開いて、中に書かれた字を参照する用法。主語 lisár は軽性の行為者名詞なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。

sénim vróundan un orénoi.

読み:セーニン ヴローンダン ウン オレーノイ。

sén-imvróund-anunorén-oi.
見る-<私が>人ごみ-<対格>内に縁-<与格>

「縁のあたりに人ごみが見える。」

道案内・日常会話向けの知覚文。vróunda は人を数える語ではなく、密集した状況を単数の集合名詞として扱う。軽性の目的語なので対格語尾 -an をつける。

lísa kundár plánan

読み:リーサ クンダール プラーナン

lís-akundárplán-an
書く-<(軽いものが)>役人<主格>帳簿-<対格>

「役人が帳簿を書く。」

帳場の帳簿類を記す場面の定型。kundárは行為者名詞の接辞-árで作られた軽性子音語幹で、動詞は軽性・単数主語に一致して3人称単数軽性の-aをとる。

vándan kundárai fáron

読み:ヴァンダン クンダーライ ファーロン

vánd-ankundár-aifáron
量る-<彼らが>役人-<〜たちが>荷<対格>

「役人たちが荷を量る。」

縁の市や降ろし場の帳場で、度量の手当て・荷の検めを記す文。複数主語でも人を数詞で直接数えず、名詞の複数形で受ける。荷を量るのは帳場の勤め人の仕事として描かれる。

snauléndan lénþai!

読み:スナウレンダン レンサイ!

snaul-énd-anlénþ-ai!
生える-<〜しますように>-<彼らが>若菜-<〜たちが>

「若菜たちが育ちますように!」

儀礼・祈願。願望法3複 -énd-an。語根の強勢が消え、接辞 -énd- に移る。

anórel, na snáulan lénþai.

読み:アノーレル、ナ スナウラン レンサイ。

anórel,nasnául-anlénþ-ai.
昨日<〜ない>生える-<彼らが>若菜-<〜たちが>

「昨日、若菜は伸びなかった。」

書物・記録。場面枠の anórel の後に否定 na を動詞の直前に置く。

þínim lénþan sórel

読み:シーニン レンサン ソーレル

þín-imlénþ-ansórel
摘む-<私が>若菜-<対格>今日

「今日、若菜を摘む。」

日常の草摘み。主語の「私」は語尾 -im で示し、代名詞は省く。時間表現 sórel は文後に置いた。

ké þínes lénþan

読み:ケー シーネス レンサン

kéþín-eslénþ-an
<〜か>摘む-<あなたが>若菜-<対格>

「若菜を摘むのか。」

日常の素朴な問い。ké が文頭に立ち、2人称単数の語尾 -es で主語を表す。

lenþéra endríña lénþan.

読み:レンセーラ エンドリーニャ レンサン。

lenþér-aendríñalénþ-an.
若菜を摘む-<(軽いものが)>子ども<主格>若菜-ACC.

「子どもが若菜を摘む。」

基本のVSO。主語 endríña が軽性単数なので動詞は3人称単数・軽性の -a。若菜 lénþa の対格は lénþan。

vóta líura endríñan.

読み:ヴォータ リーウラ エンドリーニャン。

vót-alíuraendríñ-an.
産む-<(軽いものが)>女<主格>子-<対格>

「女が子どもを産む。」

日常的な事実の言い切り。主語の女性は人として軽性。目的語の子は軽性 a 語幹の対格単数。母という語を明示せず、出産する女性を líura で表す。

vótan méulai endríñais.

読み:ヴォータン メウライ エンドリーニャイス。

vót-anméul-aiendríñ-ais.
産む-<彼らが>毛山羊-<〜たちが>子-<〜たちを>

「毛山羊たちが子を出す。」

群れの記録のような記述。主語と目的語が複数。主語は軽性 a 語幹の複数主格 -ai、目的語は軽性 a 語幹の複数対格 -ais。直説法で事実として言い切る。

kráilin kailíñan, tóra endríña.

読み:クライリン カイリーニャン、トーラ エンドリーニャ。

kráil-inkailíñ-an,tór-aendríña.
手に持つ-<〜して・〜く>藁-<対格>来る-<(軽いものが)>子<主格>

「藁を持って、子どもが来る。」

同一主語を続ける副動詞 -in の構文。「持ってくる」を「持つ-CVB」と「来る」の二語で表す。主語 endríña は軽性。

lísa lisár rimblisán filplénoi.

読み:リーサ リサール リンブリサーン フィルプレーノイ。

lís-alis-árrimblis-ánfilplén-oi.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>数字-<対格>数え盤-<与格>

「書記は数え盤に数字を書く。」

書記の帳場での場面。裸の与格 filplénoi は、書く先としての盤・作業面を示す。rimblisán は rimblisá の単数対格。

na eelþérim tásan.

読み:ナ エールセーリン ターサン。

naeelþér-imtás-an
<〜ない>からかう-<私が><あなた>-<対格>

「私はあなたをからかっていません。」

くだけた日常会話。否定小辞 na は動詞の直前に置く。二人称代名詞の直接目的語は対格 tásan をとる。

tendéra andaulóura endríñan.

読み:テンデーラ アンダウローラ エンドリーニャン。

tendér-aandaulóuraendríñ-an.
抱く-<(軽いものが)>祖母<主格>子-<対格>

「祖母が子どもを抱きしめている。」

家庭内のくつろぎの動作。tendér-は人を腕に覆い寄せる意で、宮廷や帳簿では避けられ、身内の語として聞かれる。

tendéra dóulin ambrél endríñan.

読み:テンデーラ ドーリン アンブレール エンドリーニャン。

tendér-adóulinambrélendríñ-an.
寝かしつける-<(軽いものが)>もう兄・姉<主格>子-<対格>

「兄姉はもう子どもを寝かしつけた。」

寝かしつける意味ではdóulin「もう」を添えて完了に近づける。相の副詞は動詞の直後、主語の前に置く。

tendéran endríñai.

読み:テンデーラン エンドリーニャイ。

tendér-anendríñ-ai.
身を寄せ合う-<彼らが>子ども-<〜たちが>

「子どもたちは身を寄せ合っている。」

意味3は複数を主語として取る。専用の相互語形はないが、自動詞用法の目的語無配列が相互的な読みを補う。

léisim lím sándorul un plánan.

読み:レーシン リーン サンドルル ウン プラーナン。

léis-imlímsándor-ulunplán-an.
書く<〜し終えた>-<私が>五穂-<〜たちを>中に帳簿-<対格>

「帳簿に穂を五つ書き込んだ。」

帳簿の記入文。sándor は脱穀前の穂を数える単位として使うため、分類器なしで数詞と直接組み合わせる。plána は軽性a語幹で、対格語尾 -an が現れる。

un drúnoroi, krándan faronárai dulfáronul

読み:ウン ドルーノロイ、クランダン ファロナーライ ドゥルファーロヌル

undrúnor-oi,kránd-anfaron-ár-aidulfáron-ul
内に道-<与格>奪う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下ろし荷-<〜たちを>

「崖道で、運び人たちが下ろし荷を掠め取る。」

道での争いや混乱に乗じて、荷を取り合う場面。un+与格の場所句を動詞の前に置くと、そこで起きた出来事として述べる。運び人は faron「荷」+-ár「〜する人」で表し、複数主格は faronárai。下ろし荷 dulfáron は重性複数名詞で、主格と対格が同形。

kríla lisár sáindaran.

読み:クリーラ リサール サインダラン。

kríl-alis-ársáindar-an
離す-<(軽いものが)>書く-<〜する人>証文-<対格>

「書記は証文を離した(請求・義務から離れた)。」

年代記・書面の用法。kríl- は原語形。sáindar は「証文」だが、ここでは証文に結ばれた請求・義務・係わりを表し、関係を断つ比喩用法になる。時制標識はないが、出来事が済みとして語られる場面に向く。

nébroi, selvatáula endríña selván.

読み:ネーブロイ、セルヴァタウラ エンドリーニャ セルヴァーン。

nébr-oi,selvatául-aendríñaselv-án
霧-<与格>聞き取る-<(軽いものが)>子<主格>息-<対格>

「霧の中では、子どもが息づかいを聞き取る。」

霧の中の描写。主語 endríña は人を指す軽性で、動詞は3人称単数軽性 -a と一致する。

selvatáula ólmar þelán sé.

読み:セルヴァタウラ オルマル セラーン セー。

selvatául-aólmarþel-ánsé
聞き取る-<(軽いものが)>年長者<主格>名前-<対格>この<軽性>

「年長者がこの名を聞き取る。」

改まった名乗り・系譜の場面。名 þelá の対格 þelán に指示詞 sé を添える。主語 ólmar は人を指す軽性。

na selvatáulim viráis, salóur selvatáulim virnourán.

読み:ナ セルヴァタウリン ヴィライス、サロール セルヴァタウリン ヴィルノウラーン。

naselvatául-imvir-áis,salóurselvatául-imvirnour-án
<〜ない>聞き取る-<私が>言葉-<〜たちを>しかし聞き取る-<私が>意味-<対格>

「言葉そのものではなく、意味を聞き取っている。」

意味をくみ取る用法。na は直説法の否定。salóur は逆接の接続小辞で、二つめの文の頭に置かれる。

sénim plánan sívalan té

読み:セーニン プラーナン シーヴァラン テー

sén-implán-ansíval-anté
見る-<私が>帳簿-<対格>青い-<対格>あの<軽性>

「あの青い帳簿を見る。」

帳簿・書物を扱う場面。目的語 plána は軽性a語幹で、対格 plánan。形容詞 síval も軽性対格の語尾 -an を取って sívalan と一致する。指示詞 té は名詞句の末尾に置かれる。主語「私」は語尾 -im に現れる。

þarnéran plánai.

読み:サルネーラン プラーナイ。

þarnér-anplán-ai.
切り上がる-<彼らが>帳簿-<〜たちが>

「帳簿が切り上がる。」

帳簿・会計の締めを表す事務的な文。plána は軽性 a 語幹で、複数主格は plánai。物事を一区切りとして終える意味 2 の用法。

nanóirim du oráuran.

読み:ナノイリン ドゥ オラウラン。

nanóir-imduoráur-an.
眠れない-<私が>下手夜明け-<対格>

「私は夜明けまで眠れない(一晩醒めている)。」

日常の独白。第一人称は語尾 -im で示し、主語代名詞は省略する。du に軽性子音語幹の対格 oráuran を受けた句を後続させ、「夜明けまで」という時間終点を表す。眠りに入れないまま朝を待つ状態を指す。

senáurimor némor sílaran.

読み:セナウリモル ネーモル シーララン。

senáur-imornémorsílar-an.
見上げる-<我々が><我々・主格>月-<対格>

「私たちは月を見上げる。」

日常の用法。夜空にある月をふと見上げる。一人称複数。月 sílar は軽性なので対格は -an。

senáura ólmar aldáran áurenan.

読み:セナウラ オルマル アルダーラン アウレナン。

senáur-aólmaraldár-anáur-en-an.
見上げる-<(軽いものが)>年長者<主格>座-<対格>昇る-<〜した・〜された>-<軽性・対格>

「年長者は高き座を見上げる。」

敬意を伴う仰ぎ。高き座(aldár áuren)を見上げる作法。対象の名詞と分詞が軽性単数対格に一致する。-an を LT.ACC として独立の形態素で示す。

gúnan háunai.

読み:グーナン ハウナイ。

gún-anháun-ai.
集まる-<彼らが>大人-<〜たちが>

「成人たちが集まる。」

帳簿・規約・年代記のような文。複数形háunaiは、集会・労働・礼法に出席すべき成人集団を指す。動詞は3人称複数。単数の成人個人ではなく、共同体の義務を担う総称として使う。

lóima háun loimán.

読み:ロイマ ハウン ロイマーン。

lóim-aháunloim-án.
唱える-<(軽いものが)>大人詞-<対格>

「成人が詞を唱える。」

儀礼の場面。主語の成人は人を指すため軽性で、動詞は3人称単数軽性の-aを取る。loimá「詞」は言葉を表す語として軽性a語幹に扱い、単数対格はloimánになる。成人儀礼を経て祭祀・詞への出席資格を得た個人の行為として使う。

sénim treníman séurilan.

読み:セーニン トレニーマン セウリラン。

sén-imtrením-anséuril-an.
見る-<私が>織り模様-<対格>美しい-<対格>

「私は美しい織り模様を見る。」

見立てや布仕事の場面での日常的用法。目的語が軽性子音語幹名詞の単数対格になり、後置の形容詞も単数対格で一致する。意味1の、布に現れた規則的な目を見ている。

klóimim treníman, duói téndim treníman.

読み:クロイミン トレニーマン、ドゥオイ テンディン トレニーマン。

klóim-imtrením-an,duóiténd-imtrením-an.
学ぶ-<私が>織り模様-<対格>それから織る-<私が>織り模様-<対格>

「私は織り型を覚え、それからその織り模様を織る。」

修練・制作の場面。後文の主語は同一話者で省略している。duói は出来事の継起を表す。目的語は名詞句を繰り返す。

torarérim naþrenáran.

読み:トラレーリン ナスレナーラン。

torarér-imnaþrenár-an.
客扱いする-<私が>段の外の人-ACC.

「私は段の外の人を客扱いします。」

日常の宣言。torarér- は客人となる人物を直接目的語にとる。naþrenár「段の外の人」のような段の外の存在を迎え入れる場合、単に食事を差し出す意味を超え、接待義務と客人の権利を与える社会的手続きを示す。

torarér endríñan!

読み:トラレール エンドリーニャン!

torarérendríñ-an!
客扱いする<命令法><あなたが>子ども-ACC.

「この子を客として迎えてくれ!」

日常の依頼。命令法2人称単数は語幹むき出しで、語末が r である torarér はそのまま用いられる。endrína「子ども」は軽性 a 語幹で、対格は -an。

dutorarérim aulisáran.

読み:ドゥトラレーリン アウリサーラン。

du-torarér-imau-lis-ár-an.
<〜させていただく>-客扱いする-<私が><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-ACC.

「書記の方を、客としてお迎えいたします。」

礼法上の低い者から高い者への言い方。自分の動作は du- で低め、客人となる人物は au- のついた名詞 aulisár「書記の方」で高める。au-lis-ár-an は「書記の方を」で、au- と -ár のついた名詞に対格 -an がつく。

noumosénan houmárai.

読み:ノウモセーナン ホウマーライ。

noumosén-anhoumár-ai
顔色をうかがう-<彼らが>家の主-<〜たちが>

「家の主たちが顔色をうかがい合った。」

集まりや相談の場面、また書物の記述に多い言い方。複数の者が判断の手がかりを得るため互いの顔を読む意。主語が複数なので動詞は3複数。noumosén- の第二義。

rainíþa rainiþár pílman sé.

読み:ライニーサ ライニサール ピルマン セー。

rainíþ-arainiþárpílm-ansé
教える-<(軽いものが)>師<主格>字の読み-<対格>この<軽性>

「師がこの字の読みを教える。」

文字教学の場での文。pílma の単数対格は pílman。読みそのものは物・抽象物として扱うが、主語 rainiþár は人なので動詞は軽性単数になる。

sórel, vólim lisíñan.

読み:ソーレル、ヴォーリン リシーニャン。

sórel,vól-imlisíñ-an.
今日読む-<私が>字のしるし-<対格>

「今日、字のしるしを読む。」

帳簿や書物の読み書きの場面。時を表す語を場面の枠として文頭に置き、主語は動詞語尾で示す。lisíñ は小さな補助記号や、自分の注記をへりくだって指すのに使う。

léunim lisíñan sé.

読み:レウニン リシーニャン セー。

léun-imlisíñ-ansé.
申す-<私が>字のしるし-<対格>これ<軽性>

「この字のしるしを申し上げます。」

自分の注記をへりくだって示す場面。謙譲の léun- を使う。lisíñ は指小語として、公式の印ではなく小さな補助符号をへりくだって指す。

glímo ílmo un plánan.

読み:グリーモ イルモ ウン プラーナン。

glím-oílmounplán-an.
滲む-<(重いものが)>水<主格>内に帳簿-<対格>

「水が帳簿の中へ滲む。」

書き物の場で、水分が帳簿の中へ移る動作を中立的に述べる日常の文。主語の ílmo は地を流れる水として重性なので、動詞は 3人称単数・重性の -o をとる。un+対格は「〜の中へ」。

lúin tóra oráur, lisan lisárai plánan.

読み:ルーイン トーラ オラウル、リサン リサーライ プラーナン。

lúintór-aoráur,lís-anlis-ár-aiplán-an.
とき来る-<(軽いものが)>夜明け<主格>書く-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>帳簿-<対格>

「夜明けが来ると、書記たちは帳簿を書く。」

帳場・書記の場面。lisár は lís「書く」+ -ár「〜する人」。目的語 planned は軽性a語幹の対格。

lúin tóra oráur, gélan faronárai du orén.

読み:ルーイン トーラ オラウル、ゲーラン ファロナーライ ドゥ オレーン。

lúintór-aoráur,gél-anfaron-ár-aiduorén.
とき来る-<(軽いものが)>夜明け<主格>行く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>下手縁<対格>

「夜明けが来ると、運び人たちは縁へ下る。」

運搬作業の場面。lúin 節は主節の前に置く。gélan は gél-「行く」+3複数 -an。faronárai は faron「荷」+ -ár「〜する人」+軽性複数主格 -ai。

plúna houmár faronáran du orén.

読み:プルーナ ホウマール ファロナーラン ドゥ オレーン。

plún-ahoumárfaronár-anduorén.
使いに出す-<(軽いものが)>家の主<主格>運び人-<対格>下手縁<対格>

「家の主は運び人を縁へ使いに出す。」

家庭・職場での日常の文。段の低い運び人を、所定の用向きに遣る言い方。やや直截だが、この範囲では普通に使える。

plúnim virán tásei.

読み:プルーニン ヴィラーン ターセイ。

plún-imvir-ántás-ei.
使いに出す-<私が>言葉-<対格><あなた>-<与格>

「あなたにひと言伝えてやる。」

伝言・申し送りに使う日常文。言葉を直接相手に届ける意味。目下・同輩向けのややぶっきらぼうな語として機能する。

funeltrénan faronárai fúnel gléinin.

読み:フネルトレーナン ファロナーライ フーネル グレーニン。

funeltrén-anfaron-ár-aifúnelgléin-in.
綱を手繰る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>綱<対格>清い-ADV

「運び人たちは綱を整えながら手繰る。」

作法書や手引のような常態文。主語が複数なので動詞は3複語尾 -an。gléinin が整える様子を表し、意味2として読む。

frándan plíndul un plánail.

読み:フランダン プリンドゥル ウン プラーナイル。

fránd-anplínd-ulunplán-ail.
並ぶ-<彼らが>荷札-<〜たちが>中に帳簿-<〜らに>

「帳簿の中に荷札が並んでいる。」

記録・書物についての文。札が帳簿の中で横に揃った状態を記述する。意図的な整列の行為は表さず、出来上がっている列の状態を言う。

findíþa senár virán faronárei.

読み:フィンディーサ セナール ヴィラーン ファロナーレイ。

find-íþ-asenárvir-ánfaronár-ei.
聞く-<〜させる>-<(軽いものが)>目付<主格>言葉-<対格>運び人-<与格>

「目付が運び人に言葉を伝える。」

市や役所の場面。伝達内容は virán のように対格に、受け手は faronárei のように与格に置く。findíþ- は単に何かを言うのではなく、言葉が聞き手に届くことを焦点とする。

findíþim lundán endríñei.

読み:フィンディーシン ルンダーン エンドリーニェイ。

find-íþ-imlund-ánendríñ-ei.
聞く-<〜させる>-<私が>歌-<対格>子ども-<与格>

「子どもに歌を聞かせる。」

家庭の日常。主語の代名詞は省略される。lundán は聞かせる内容、endrīñei は受け手。受け手が聞くことを目的に言葉を送るので、意味2の「聞かせる」が自然に出る。

vóloi, dunþréman dǘn.

読み:ヴォーロイ、ドゥンスレーマン デューン。

vól-oi,dunþrém-andǘn.
地面-<与格>腫れる-<彼らが>丘<〜ら(古い母音交替)><主格>

「地面に、丘々が盛り上がっている。」

書物的な地形描写風。dún の複数主格 dǘn は接辞をもたない母音交替形で、複数を表す独立の形態素が存在しない。そのため dǘn のグロスは、一つの語形に grammatical categories を付す書き方として丘.PL.NOM とする。地面は与格 vóloi で場所を示す。主語が複数なので、動詞は3人称複数 -an で受ける。

funelérim fláumo un plánan.

読み:フネレーリン フラウモ ウン プラーナン。

funelér-imfláumounplán-an.
書き留める-<私が>枠<対格>内に帳簿-<対格>

「帳簿に枠を書き留める。」

帳簿・書記の場面。fláumo は重性o語幹で、単数の主格と対格は同形。un+対格で「〜の中へ」。

ké tánes tanfílan?

読み:ケー ターネス タンフィーラン?

kétán-estanfíl-an
<〜か>張る-<あなたが>経糸-<対格>

「お前は経糸を張っているのか。」

作業中に互いに確認し合う日常の疑問文。tanfíl は軽性子音語幹なので、直接目的語には単数対格 -an をつける。2人称の疑問文で、くだけた場の下向きの問い。

pláinan faronárai es nourés senáres.

読み:プライナン ファロナーライ エス ノウレース セナーレス。

pláin-anfaron-ár-aiesnour-éssen-ár-es
気づく-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>から心-<属格>見る-<〜する人>-<属格>

「運び人たちは目付の心中を察する。」

nourán は対格なので pláin- に合わない。es nourés とし、属格の従属語を後置して es nourés senáres とする。faronárai は既知の語と接辞 -ár, -ai で作られる。

klóima kloimár alvelóiman reinálves.

読み:クロイマ クロイマール アルヴェロイマン レイナルヴェス。

klóim-akloim-áralvelóim-anreinálv-es
学ぶ-<(軽いものが)>学ぶ-<〜する人>挨拶-<対格>雨期-<属格>

「弟子は雨期の挨拶を学ぶ。」

学び舎・書物の場面。主語 kloimár は動詞 klóim-「学ぶ」に -ár「〜する人」が付いた派生名詞で、主格は無標識。目的語 alvelóiman は軽性名詞の対格 -an を受ける形。名詞句 alvelóiman reinálves は「雨期の挨拶」で、目的語の後に属格の修飾語が後続する。

bróla endríña hilvíñan

読み:ブローラ エンドリーニャ ヒルヴィーニャン

bról-aendríñahilvíñ-an
作る-<(軽いものが)>子ども<主格>雪玉-<対格>

「子どもが雪玉を作る。」

日常の遊びの場面。動詞 bról- は主語 endríña に一致して軽性 3人称単数 -a をとる。hilvíña は軽性 a 語幹で、斜格では語末の主格 -a を失った語幹 hilvíñ- に -an をつける。

þráun hilvíñan sé

読み:スラウン ヒルヴィーニャン セー

þráunhilvíñ-ansé
投げる<命令法><あなたが>雪玉-<対格>この<軽性>

「この雪玉を投げろ。」

子ども同士や親しい者どうしのくだけた命令。命令法 2人称単数は語幹のむき出し形で表す。目的語も軽性 a 語幹の斜格語幹 hilvíñ- に -an を付けた形。指示詞 sé は名詞句の末尾に置く。

gromvíres néman!

読み:グロンヴィーレス ネーマン!

gromvír-esném-an!
人を重として呼ぶ-<あなたが><私>-<対格>

「「お前は私を重だと言い立てるのか!」」

口論でよく聞く直接的な罵倒。gromvír- は人を目的語にとる他動詞で、ここでは1人称単数の対格 néman を受ける。動詞は主語(二人称)に一致する。重性の代名詞を明示しなくても、人を重扱いに呼ぶという語感で使える。

na ráinim kléiman sé

読み:ナ ライニン クレーマン セー

naráin-imkléim-ansé
<〜ない>知る-<私が>呼称-<対格>この<軽性>

「この呼称を知らない。」

日常・学び。否定の na は動詞の直前に置く。主語の代名詞は語尾に含まれる。目的語の呼称に軽性対格 -an、指示詞 sé を添える。

funeléra lisár aldarviran.

読み:フネレーラ リサール アルダルヴィラン。

funelér-alisáraldarvir-an
書き留める-<(軽いものが)>書記<主格>敬称-<対格>

「書記が敬称を書き留める。」

帳場・記録の場面。動詞 funelér- は「書き留める」で、対象を対格にとる。lisár は行為者名詞。人の名ではなく、座や役で言い表す言い換えそのものを帳簿用語として記す用法。意味1。

lóima ilanár aldarviran aldáres áurenes.

読み:ロイマ イラナール アルダルヴィラン アルダーレス アウレネス。

lóim-ailanáraldarvir-analdár-esáur-en-es
唱える-<(軽いものが)>星読み<主格>敬称-<対格>座-<属格>昇る-<〜した・〜された>-<属格>

「星読みが高き座の座名を唱える。」

宮廷儀礼の場面。名詞句の中心を対格 aldarviran とし、その後に「高き座の」という属格句 aldáres áurenes を修飾として置く。「高き座」の属格は aldáres áurenes。王や高位の人の座につけられた固有名を唱える用法。意味2。

ké þalfíndes virán?

読み:ケー サルフィンデス ヴィラーン?

kéþalfínd-esvir-án
<〜か>耳を澄ます-<あなたが>言葉-<対格>

「言葉に耳を澄ませているのか。」

日常の問い。kéは文頭に置き、同輩・目下への直接の疑問を作る。目上にはkéを使わず推量法で尋ねる。

lúin tóra loimá, þalfínda ólmar loimán.

読み:ルーイン トーラ ロイマー、サルフィンダ オルマル ロイマーン。

lúintór-aloim-á,þalfínd-aólmarloim-án
とき来る-<(軽いものが)>詞-<主格>耳を澄ます-<(軽いものが)>年長者<主格>詞-<対格>

「詞が来るとき、年長者は詞に耳を澄ます。」

祀りの詞の場面。時節はlúinで導き、主節に先立つ。主節動詞は年長者に一致して軽性3単。語り詞の継ぎ目で、次の音を受けるために静止して聞く意。

mánim noralúsan.

読み:マーニン ノラルーサン。

mán-imnoralús-an.
食べる-<私が>夜粥-ACC.

「私は夜粥を食べる。」

日常会話で使う自己申告の文。動詞が文頭に立ち、軽性の対格語尾 -an を付けた目的語が続く。

léimim noralúsan an aldárei.

読み:レーミン ノラルーサン アン アルダーレイ。

léim-imnoralús-ananaldár-ei.
置く-<私が>夜粥-<対格>上手座-DAT.

「私は夜粥の膳を上手の座に据える。」

家庭での動作。「粥そのもの」より「定まった晩の膳」を指す用法。場所を表すには前置詞 an と与格を用いる。

unsléla líura rásan.

読み:ウンスレーラ リーウラ ラーサン。

unslél-alíurarás-an.
裏返して広げる-<(軽いものが)>女<主格>衣-<対格>

「女は衣を裏返して広げる。」

直説法基本語順の叙述文。主語の女は人なので軽性、動詞は軽性の語尾 -a をとる。衣は対格 rásan。日常の家事・仕立・繕いの場面。

unsléla senár rásan.

読み:ウンスレーラ セナール ラーサン。

unslél-asenárrás-an.
裏地を確かめる-<(軽いものが)>目付<主格>衣-<対格>

「目付は衣の裏地を確かめる。」

公的な検め、帳簿や記録に立てられるような短文。主語の目付は人なので軽性、動詞は -a。目的語の衣は対格 rásan。

prémpa faronár endríñan orénoi.

読み:プレンパ ファロナール エンドリーニャン オレーノイ。

prémp-afaronárendríñ-anorén-oi.
受け止める-<(軽いものが)>運び人<主格>子ども-<対格>縁-<与格>

「運び人が、縁で子どもを受け止める。」

縁での場面を短く言い切る文。orénoi は orén の与格で「縁で」。

snelíþa anlóur endríñan es nébros.

読み:スネリーサ アンロール エンドリーニャン エス ネーブロス。

snelíþ-aanlóurendríñ-anesnébr-os.
隠す-<(軽いものが)>親<主格>子-<対格>から霧-<属格>

「親が霧から子どもを隠す。」

家族・養育の場面。人避けだけでなく、害から守るため対象を覆い隠す意で使う。`es`+属格は、害・視線・原因からの起点を表す。

kámim snélan un ílmoi.

読み:カーミン スネーラン ウン イルモイ。

kám-imsnél-anunílm-oi
浸す-<私が>布-<対格>中に水-<与格>

「私は布を水に浸しています。」

日常の家事の文。主語は動詞の語尾からわかるため省略できる。un は「〜の中に」の場所を表し、与格をとる。

káma líura snélan káilan un ílmoi.

読み:カーマ リーウラ スネーラン カイラン ウン イルモイ。

kám-alíurasnél-ankáil-anunílm-oi
浸す-<(軽いものが)>女<主格>布-<対格>乾いた-<対格>中に水-<与格>

「その女は、乾いた布を水に浸して扱いやすく戻す。」

「乾いた布」という文脈で、単に浸すのではなく元に戻す意味が出る。主語が軽性の女であるため、動詞は軽性の語尾 -a をとる。

lísa viréla sáindaran.

読み:リーサ ヴィレーラ サインダラン。

lís-avirélasáindar-an.
書く-<(軽いものが)>ヴィレラ<主格>証文-<対格>

「ヴィレラは証文を書く。」

書記・帳簿のような場面の平叙。動詞 lís-「書く」の直説法3人称単数・軽性は語尾に法の接尾辞がなく、語根に強勢が残って lísa になる。固有名詞 viréla が主語でも動詞は軽性の語尾 -a で受ける。sáindaran は軽性子音語幹 sáindar の単数対格。

duþélim sílanan

読み:ドゥセーリン シーラナン

du-þél-imsílan-an
<〜させていただく>-名乗る-<私が>シラン-<対格>

「シランと名乗らせていただきます。」

成人儀礼や改まった自己紹介での名乗り。謙譲接頭辞 du- を付けた þél-「名乗る」で、自己の行いを低める。固有名 sílan は目的語として対格 -an を受ける。動詞の人称語尾 -im が一人称主語を示すため、主語代名詞は不要。

duþélim sílanan gléinaros

読み:ドゥセーリン シーラナン グレーナロス

du-þél-imsílan-angléinar-os
<〜させていただく>-名乗る-<私が>シラン-<対格>グレイナル-<属格>

「グレイナル家のシランと名乗らせていただきます。」

改まった名乗り。duþél- は þél-「名乗る」に謙譲の du- がついた形。個人名 sílan を対格 sílanan とし、家名 gléinar を属格 gléinaros で添える。人を指す個人名が主語になるときの動詞の一致は軽性になるが、家名そのものは重性の属格形をとる。

lísa lisár traimlisán anaurímes

読み:リーサ リサール トラインリサーン アナウリーメス

lís-alis-ártraimlis-ánanaurím-es
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>年代記-<対格>上手の高み-<属格>

「書記は「上手の高み」の年代記を書く。」

公的書物の文。改まった正式名を属格に用いて「上手の高みの年代記」とする。口頭の常談では análor が多く、anaurím は書式語として残る。traimlisá は軽性 a語幹として対格 -án をとる。

lúnda flíva lundán

読み:ルンダ フリーヴァ ルンダーン

lúnd-aflívalund-án
歌う-<(軽いものが)>鳥<主格>歌-<対格>

「鳥が歌っている。」

鳥の声に使う例。主語は軽性の単数なので動詞は -a、目的語は軽性単数対格 lundán。

lísa híro plánan

読み:リーサ ヒーロ プラーナン

lís-ahíroplán-an
書く-<(軽いものが)>ヒロ<主格>帳簿-<対格>

「ヒロが帳簿を書く。」

帳場・記録での報告のような文。人を指す名なので、動詞の3人称単数は軽性 -a で受ける。名自身は形を変えない。

sála endríña sávran.

読み:サーラ エンドリーニャ サーヴラン。

sál-aendríñasávr-an
ならす-<(軽いものが)>子ども<主格>葦笛-<対格>

「その子は葦笛を鳴らす。」

sávr-an は sávra の斜格語幹 sávr に単数対格 -an が付いた形。葦笛を意味する sávra は、材としての葦と違って軽性のまま受ける。endríña「子ども」も軽性なので、動詞は軽性の語尾 -a で受ける。

mé vír selvíñan nébroi!

読み:メー ヴィール セルヴィーニャン ネーブロイ!

mévírselvíñ-annébr-oi!
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>セルヴィーニャ-<対格>霧-<与格>

「霧の中で、セルヴィーニャの名を呼ぶな!」

家庭の禁止表現。mé に動詞の命令法(むき出しの語幹)を続ける。vír に固有名を対格で取ると「その名を呼ぶ」意になる。nébroi は前置詞なしの与格で「霧の中で」。selvíña は指小 a 語幹として対格 -an を取り selvíñan になる。霧では名を大声で呼ばない禁忌を前提にした、親しい家族間の下向きの言い方。

vólim plánan þailvéinoros

読み:ヴォーリン プラーナン サイルヴェーノロス

vól-implán-anþailvéinor-os
読む-<私が>帳簿-<対格>都-<属格>

「都の帳簿を読む。」

帳簿・帳場での場面。名詞句は中心語 plána の対格 plánan のあとに属格 þailvéinoros を置いて、「都の〜」を作る。þailvéinor を直接の目的語としてではなく、修飾語として属格にする点に注意。

hóinan krambárai sórel.

読み:ホイナン クランバーライ ソーレル。

hóin-ankrambár-aisórel
帰る-<彼らが>狩人-<〜たちが>今日

「狩人たちは今日戻る。」

複数名詞krambáraiを主語に取った出入り記録向きの文。縁の町では特定の獲物を限定せず、狩人一般を指す用法がある。双数ではなく複数で受ける。

sén traimfilán sé

読み:セーン トラインフィラーン セー

séntraimfil-ánsé
見る<命令法><あなたが>年輪-<対格>この<軽性>

「この年輪を見ろ」

木口を指して年輪を確かめる場での命令法。目的語は軽性a語幹 traimfilá の単数対格 traimfilán、指示詞 sé は軽性の名詞句末尾に置く。

dérva endríña derván

読み:デルヴァ エンドリーニャ デルヴァーン

dérv-aendríñaderv-án
挽く-<(軽いものが)>子<主格>粉-<対格>

「子どもが粉を挽く。」

家庭で粉を挽く日常場面。動詞 dérv- は主語 endríña が軽性なので、3人称単数・軽性の語尾 -a をとる。語根に強勢が残って dérv-a となる。dervá の目的語は derván。

anlúin, máinan éndrai hégro bóules.

読み:アンルーイン、マイナン エンドライ ヘーグロ ボーレス。

anlúin,máin-anéndr-aihégrobóul-es.
昔食べる<〜し終えた>-<彼らが>人-<〜たちが>団子<対格>どんぐり-<属格>

「昔、人々はどんぐり団子を食べた。」

歴史的な過去は完遂相の直説法で表す。hégro bóules は熟語的にどんぐり団子を指す。

séulan lisárai dulfáron hóumuls.

読み:セウラン リサーライ ドゥルファーロン ホームルス。

séul-anlis-ár-aidulfáronhóum-uls.
散らして配る-<彼らが>書く-<〜する人>-<〜たちが>下ろし荷<対格>炉-<与格・〜ら(古い母音交替)>

「書記たちが、下ろし荷を各家の炉へ配る。」

倉・市での分配を表す日常用法。dulfáron は下ろし荷という集団的な受詞。hóumuls は与格複数で、各家の世帯を表す。動詞 séulan は主語 lisárai と複数一致している。

séulan fléurai réinan.

読み:セウラン フレウライ レーナン。

séul-anfléur-airéin-an.
散らして配る-<彼らが>雲-<〜たちが>雨-<対格>

「雲たちが、雨を散らして配る。」

詩的な用法。天からの恵みが四方へ散る意味に用いられる。fléura は軽性名詞で、fléurai は複数主格。受詞 réinan は軽性の対格。与格は文脈で省略されている。

buldúlan aursárai éndrais

読み:ブルドゥーラン アウルサーライ エンドライス

buldúl-anaursár-aiéndr-ais
根を下ろす-<彼らが>祖先-<〜たちが>人-<〜たちを>

「祖先たちが、人々の根となる。」

儀礼や系譜の唱えに用いる句。主語 aursárai は軽性複数で、動詞は 3人称複数 -an をとる。目的語 éndrais は軽性複数の対格。人数を表すには数詞や双数を避け、複数形だけで表す。比喩的な主語が人を支える基盤になるという意味。

vúla ólmar nourán endríñei.

読み:ヴーラ オルマル ノウラーン エンドリーニェイ。

vúl-aólmarnour-ánendríñ-ei.
注ぐ-<(軽いものが)>年長者<主格>心-<対格>子-<与格>

「年長者は子どもへ心を注ぐ。」

液体を器へ注ぐ動作を転じて、注意や関心を相手へ向ける意。抽象名詞 nourá を直接目的語に取る。

mélirim snélan sé.

読み:メーリリン スネーラン セー。

mélir-imsnél-ansé
染める-<私が>布-<対格>この<軽性>

「私はこの布を染める。」

日常の作業で、自分が染めていることを述べる文。語尾 -im が主語の一人称を表し、代名詞 ném は強調しない限り不要。目的語の布は軽性 a 語幹の単数対格 snélan。指示詞 sé は名詞句の末尾に置かれ、軽性を示す。

méilan endríñai.

読み:メーラン エンドリーニャイ。

méil-anendríñ-ai
遊ぶ-<彼らが>子ども-<〜たちが>

「子どもたちが遊んでいる。」

日常の描写文。endrīña は人を指す軽性名詞で、複数主格は -ai。méil- は自動詞なので、この文には直接格の目的語はない。

wáurim kláulan

読み:ワウリン クラウラン

wáur-imklául-an
まねる-<私が>真似-<対格>

「真似をする。」

くだけた日常会話での自己申告。主語代名詞 ném は置かず、動詞の語尾だけで表す。klául は軽性子音語幹名詞として扱い、単数対格は -an。

wáura endríña kláulan faronáres

読み:ワウラ エンドリーニャ クラウラン ファロナーレス

wáur-aendríñaklául-anfaron-ár-es
まねる-<(軽いものが)>子ども<主格>物真似-<対格>荷-<〜する人>-<属格>

「子どもが運び人の物真似をする。」

日常場面での特定人物の癖の真似。目的語 kláulan を名詞句として取り、対象を属格 faronáres で後に修飾する。動詞は主語 endríña に一致して軽性 3 単数。faron-ár は「運び人」。

wálan torárai sórel

読み:ワーラン トラーライ ソーレル

wál-antor-ár-aisórel
変わる-<彼らが>来る-<〜する人>-<〜たちが>今日

「今日、客たちが替わる。」

話相手が次々と交代する「替わる」の用法。torár は tor-(来る) + -ár の派生語で、複数主格は tor-ár-ai。主語が複数なので、動詞は3人称複数 -an をとる。

gélim un dravénan némes

読み:ゲーリン ウン ドラヴェーナン ネーメス

gél-imundravén-anném-es
行く-<私が>内に氏族の谷-<対格><私>-<属格>

「私はわが森の中へ行く。」

森の氏族の用法で、dravéna は単に木々の土地ではなく、氏族が代々住んできた谷筋そのものを指す。dravénan némes は「私の森」であり、そのまま「私の氏族の地・わが谷」を意味する。前置詞 un と対格は「〜の中へ」を表す。

trálin, sénim páilan píran.

読み:トラーリン、セーニン パイラン ピーラン。

trál-in,sén-impáil-anpír-an
写す-<〜して・〜く>,見る-<私が>間違い-<対格>小さい-<対格>

「写しながら、私は小さな誤りを見つける。」

書の場で、手順のなかの小さな狂いを言う。同一主語の動作を副動詞 -in で主節につなぐ。páilan píran は目的語と、それに後置して一致する形容詞。páil は軽性子音語幹名詞で、目的語に -an が付く。形容詞 pír も軽性対格として píran になる。

táulin, sénim páilan píran.

読み:タウリン、セーニン パイラン ピーラン。

tául-in,sén-impáil-anpír-an
取る-<〜して・〜く>,見る-<私が>間違い-<対格>小さい-<対格>

「取っている途中で、小さなうっかりを見つける。」

物の受け取り・扱いの場面。副動詞 -in の動作と主節の動作は同一主語。受け渡しの中の不手際を、罪ではなく正しうる小さな誤りとして表す。

wéinsa élaur ilánan.

読み:ウェーンサ エーラウル イラーナン。

wéins-aélaurilán-an.
なる<〜し終えた>-<(軽いものが)>昇りゆく人<主格>灯-<対格>

「昇りゆく人は星になった。」

死後一年のあいだは élaur として扱い、昇名が定まって系譜に書き入れられたのちにだけ用いる言い方。一年の忌明けに、改まった場と炉ばたの両方で聞く。

wéinsa andaulóura némes ilánan.

読み:ウェーンサ アンダウローラ ネーメス イラーナン。

wéins-aandaulóuraném-esilán-an.
なる<〜し終えた>-<(軽いものが)>祖母<主格><私>-<属格>灯-<対格>

「私の祖母は星になった。」

一年の忌明けを終えた家での、くだけた言い方。一年の間は élaur と言い、「星になった」と言ってはいけない。

áuran ombára ilánai, duói dulíþan kelárai dulfáron.

読み:アウラン オンバーラ イラーナイ、ドゥオイ ドゥリーサン ケラーライ ドゥルファーロン。

áur-anombárailán-ai,duóidul-íþ-ankel-ár-aidulfáron.
昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>その次に下る-<〜させる>-<彼らが>伐る-<〜する人>-<〜たちが>下ろし荷<対格>

「十の灯が昇る。その次に、樵たちが下ろし荷を下ろす。」

年代記の記事を読み上げる場面。決まった順の項目を、文1, duói 文2の形でつなぐ改まった用法。duóiは原因ではなく単に項目順を示す。第二節は動詞で始まる。

lóima ólmar þelán ráimaros, duói lóima ólmar þelán gléinaros.

読み:ロイマ オルマル セラーン ライマロス、ドゥオイ ロイマ オルマル セラーン グレーナロス。

lóim-aólmarþel-ánráimar-os,duóilóim-aólmarþel-ángléinar-os.
唱える-<(軽いものが)>年長者<主格>名前-<対格>ライマル-<属格>その次に唱える-<(軽いものが)>年長者<主格>名前-<対格>グレイナル-<属格>

「年長者がライマルの名を唱え、その次に、グレイナルの名を唱える。」

系譜の名を一瀬ずつ唱える儀礼の場面。duóiは名と名を結び、前の名を上手、次の名を下手に置く。名は属格で「〜の名」とする。主語は年長者。

ké vándes fáron, orvél líses sáindaran?

読み:ケー ヴァンデス ファーロン、オルヴェール リーセス サインダラン?

kévánd-esfáron,orvéllís-essáindar-an?
<〜か>量る-<あなたが>荷<対格>,OR書く-<あなたが>証文-<対格>?

「荷を量っているのか、それとも証文を書いているのか。」

縁の市で働き手に仕事の種別を選ぶ問い。orvélが節を並べ、同じ2人称主語は第二節の動詞語尾だけで示す。目的語の枠は空けず、二つ目の節でも名詞を置く。

esós lísim sáindaran sórel.

読み:エソース リーシン サインダラン ソーレル。

esóslís-imsáindar-ansórel
そういうわけで書く-<私が>証文-<対格>今日

「そういうわけで、今日証文を書く。」

『なぜ証文を書くのか』(es pós líses sáindaran?)と問われたとき、答えの文頭に置いて、書くという帰結を述べる例。帳簿・書記の場面。答語では目的語を繰り返してもよい。

kráilim élan velmároi némes

読み:クライリン エーラン ヴェルマーロイ ネーメス

kráil-imél-anvelmár-oiném-es
手に持つ-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>右-<与格><私>-<属格>

「私はそれを右手で持つ。」

身体部位を手段・位置として表すときは与格 velmároi を使う。所有の némes は与格名詞句の後置。

brólan faronárai helándo.

読み:ブローラン ファロナーライ ヘランド。

bról-anfaron-ár-aihelándo.
作る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>休み場<対格>

「運び人たちは休み場を作る。」

道路整備や作業の場面。重性名詞 helándo は主格と対格が同型だが、VSO の語順により目的語として読める。faronárai は faron「荷」+-ár「〜する人」+複数主格。

loiménde andaulóura sé lourlisán.

読み:ロイメンデ アンダウローラ セー ロウルリサーン。

loim-énd-eandaulóurasélourlis-án.
唱える-<〜しますように>-<(軽いものが)>祖母<主格>この<軽性>系譜の巻-<対格>

「この祖母(家のおばあ)に、系譜の巻を唱えていただきたい。」

年長者に直接命令せず、願望法・3人称単数・軽形の loiménde で上向きの依頼を表す。主語 andaulóura sé は軽性a語幹で、指示詞 sé を伴う。対象 lourlisá も軽性a語幹で、対格は lourlisán になる。家系の老女として系譜を預かる年長の女性を、敬意と親しみをこめてこの語で呼ぶ。

ké kúndes monsnembán sórel?

読み:ケー クンデス モンスネンバーン ソーレル?

kékúnd-esmonsnemb-ánsórel?
<〜か>する-<あなたが>石写し-<対格>今日

「今日、石写しの作業をするのか。」

作業の予定を確認する日常の質問。動作としての石写しを、名詞 monsnembá を対格に取って表す。monsnembá は軽性 a 語幹として扱う。

kúndim monsnembán un aurándoi.

読み:クンディン モンスネンバーン ウン アウランドイ。

kúnd-immonsnemb-ánunauránd-oi.
する-<私が>石写し-<対格>中に社-<与格>

「社の中で石写しの作業をする。」

儀礼の場での所作を示す文。un は与格と組んで「〜の中で」を表す。aurándo は重性 o 語幹の社名。

vóilim monsnembán.

読み:ヴォイリン モンスネンバーン。

vóil-immonsnemb-án.
読む-<私が>写し-<対格>

「写しを読む。」

書物や資料として写しを読む場面。monsnembá の「写し」の意味。対格のみで用いる。

méir monsnembán némei, ende.

読み:メール モンスネンバーン ネーメイ、エンデ。

méirmonsnemb-ánném-ei,ende.
与える<命令法><あなたが>写し-<対格><私>-<与格>どうぞ

「写しを、私に、頼む。」

手渡して欲しいものを求める日常会話。命令法は語幹 méir を用い、受取手は与格で表す。文末の ende で要求を柔らかくする。

kúndim élan térin.

読み:クンディン エーラン テーリン。

kúnd-imél-antérin.
する-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>そのように

「私はそれをそのようにします。」

代名詞 élan は él-an に分節した。

kúndau társ dáun élan sérin.

読み:クンダウ タルス ダウン エーラン セーリン。

kúnd-autársdáunél-ansérin.
する-<双数><あなたがた>二人<3人称単数・軽性>-<対格>このように

「あなたたち二人はそれをこのようにします。」

双数の主語 társ dáun は省かない。代名詞 élan は él-an に分節した。

mé vír raumvirán té

読み:メー ヴィール ラウンヴィラーン テー

mévírraumvir-ánté
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>噂-<対格>あの<軽性>

「あの噂を言うな。」

日常の叱責・制止。他動詞 vír- の直接目的語には対格が必要で、軽性 a 語幹の単数対格は -án になる。指示詞 té は「いま話題になっている、例の」という限定を表す。

wéinsa flíva ilánan

読み:ウェーンサ フリーヴァ イラーナン

wéins-aflívailán-an
なる<〜し終えた>-<(軽いものが)>昇る魂<主格>灯-<対格>

「昇る魂が星になる。」

弔い・詩の語法。wéin-「なる」の完了形に、行き着く先を対格で取る(wéins-a ... ilán-an)。flíva は軽性a語幹の単数主語で、格接語はつかない。ここでは「鳥」ではなく、肉体を離れて星(祖先)になると言われる魂の詩語として使う。

sórel, kúndimor mirkrilíman.

読み:ソーレル、クンディモル ミルクリリーマン。

sórel,kúnd-imormirkril-ím-an.
今日する-<我々が>分ける-<〜の技・〜さ>-<対格>

「今日は、手分けをします。」

日常会話。kúnd-「する」が抽象名詞 mirkrilím を対格で受け、手分けの手配をすることを表す。mirkrilím は軽性で、対格は mirkrilíman。主語「我ら」は語尾 -imor に含み、独立した代名詞は添えない。

lísa lisár mirkrilíman kórvos.

読み:リーサ リサール ミルクリリーマン コルヴォス。

lís-alis-ármirkril-ím-ankórv-os.
書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人>分ける-<〜の技・〜さ>-<対格>倉-<属格>

「書記が倉の持ち場割りを書きつける。」

記録・帳場の場面。名詞句は中心語 mirkrilíman の後ろに属格 kórvos を置き、「倉の分ける配分=持ち場割り」とする。lisár は lís-「書く」に行為者接尾辞 -ár を付けた語。mirkrilím は対格 mirkrilíman で直接目的語になる。

un kórvoi, séna senár mirkrilíman.

読み:ウン コルヴォイ、セーナ セナール ミルクリリーマン。

unkórv-oi,sén-asen-ármirkril-ím-an.
内倉-<与格>見る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>分ける-<〜の技・〜さ>-<対格>

「倉の中で、目付が持ち場割りを確かめる。」

確認・立ち合いの場面。senár「目付」は見る者ではなく検査役。sén-a は軽性の主語 senár に一致する。mirkrilíman を直接目的語に取ることで、持ち場割りが配置そのものとして確かめられているニュアンスが出る。un kórv-oi が場面枠。

sén reiníñan sé, ende

読み:セーン レイニーニャン セー、エンデ

sénreiníñ-ansé,ende
見る<命令法><あなたが>小雨-<対格>この<軽性>どうぞ

「この小雨を見ておくれ。」

くだけた日常の依頼。動詞命令法に、決まり文句 ende を添えてやわらげている。軽性a語幹名詞 reiníña の対格は語根 reiníñ- に -an を付けた形。指示詞 sé は軽性の形。

víra endríña hueníñan

読み:ヴィーラ エンドリーニャ フエニーニャン

vír-aendríñahueníñ-an
言う-<(軽いものが)>子ども<主格>つぶやき-<対格>

「子どもがつぶやきを口にする。」

日常会話。子どもが、言葉になりかけの小さな声を漏らす場面。hueníña は軽性 a 語幹の見出しで、対格は語幹 hueníñ に語尾 -an を付けた hueníñ-an として取る。

orveléima lisár mélnan.

読み:オルヴェレーマ リサール メルナン。

orveléim-alis-árméln-an.
語順を入れ替える-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>詩-<対格>

「書記は詩の語順を入れ替える。」

書記が詩文を書き改める場での言い方。直接目的語の mélnan は、物理的な巻物そのものではなく、詩文の中の語の並びを指す。詩・句・文などの並びに対して使う。

próso fáron néman, esós trolþálim.

読み:プローソ ファーロン ネーマン、エソース トロルサーリン。

prós-ofáronném-an,esóstrolþál-im.
押す-<(重いものが)>荷<主格><私>-<対格>だから踏ん張る-<私が>

「荷が私を押すので、私は踏ん張る。」

荷は重性なので prós- は 3人称単数・重性の -o を受ける。一人称代名詞の対格は néman と書き、形態素境界は ném-an と書く。esós は直前の出来事を理由として後続の節を導く。荷の力を受け止める意味では、圧力に耐える場そのものが想定される。

láma ólmar endríñan.

読み:ラーマ オルマル エンドリーニャン。

lám-aólmarendríñ-an.
慰める-<(軽いものが)>年長者<主格>子ども-<対格>

「年長者が子どもを慰める。」

目的語に人を取ると、冷えや不安を和らげる手当てとしての「慰める」意になる。子どもは軽性a語幹で、対格は -an をとる。

láma séulin néman.

読み:ラーマ セウリン ネーマン。

lám-aséulinném-an.
慰める-<(軽いものが)>友<主格><私>-<対格>

「友が私を慰める。」

人同士の慰めを言う言い方。第一人称目的語は ném-an(néman)を使う。主語の友は人なので、動詞は軽性の3人称単数 -a で受ける。

lusérim lúsan sé.

読み:ルセーリン ルーサン セー。

lusér-imlús-ansé.
流質の食事をとる-<私が>粥-<対格>この<軽性>

「私はこの粥を、流質の食事としていただこう。」

食卓での改まった申し出。くだけた場では mán- や súl- に置き換えられることが多い。名詞 lúsa は軽性a語幹で、対格は lúsan。指示詞 sé は軽性の形。

luséra ilanár lúsan an nébroi.

読み:ルセーラ イラナール ルーサン アン ネーブロイ。

lusér-ailanárlús-anannébr-oi.
流質の食事をとる-<(軽いものが)>星読み<主格>粥-<対格>上手霧-<与格>

「星読みは、霧の前に粥という流質の食事をとる。」

作法書や記録のような文。動詞が文頭に立ち、主語の ilanár は人間なので動詞は軽性3単 -a が付く。an nébroi は「霧の前に」の前置詞句で、ここでは時を示す。

krúnim virán táses.

読み:クルーニン ヴィラーン ターセス。

krún-imvir-ántás-es
支える-<私が>言葉-<対格><あなた>-<属格>

「「あなたの言葉を支えます。」」

日常会話で、親しい相手や目下・対等相手に、その発言・申し出・約束を追認して後押しする場面。krún- は本来、重い物に身体や道具の重みで持続的に耐える動詞だが、抽象物・行為を目的語にとると「支える(比喩)」の用法になる。krúnim は直説法・1人称単数で、主語の代名詞は省略されている。目的語 virán は軽性 a 語幹 virá の対格、táses は二人称単数属格「あなたの」。

dukrúnim auloimán aulisáres.

読み:ドゥクルーニン アウロイマーン アウリサーレス。

du-krún-imau-loim-ánau-lis-ár-es
<〜させていただく>-支える-<私が><お〜になる・御〜>-詞-<対格><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<属格>

「「書記の方の詞を、手前が支えます。」」

書簡・改まった場で、目上の書記の方の詞(公言・決まり文句・申し立て)を追認し、保障する意。敬語では所有者だけでなく所有されるものにも au- を添えるため、`loimán` を `auloimán` とする。動詞には謙譲の接頭辞 du- を添え、所有者名も au- 付き属格 aulisáres にしている。語順は VSO で、主語は語尾 -im から判別される。

dulþól selván nébroi!

読み:ドゥルソール セルヴァーン ネーブロイ!

dulþólselv-ánnébr-oi!
息を伏せ殺す<命令法><あなたが>息-<対格>霧-<与格>

「霧の中では、息を伏せ殺せ。」

霧の中で気配を断つよう命じる、一人称への日常の命令文。命令の二人称単数はむき出しの語幹で言う。場所としての霧は前置詞を伴わない与格で表す。

dulþóla éndra selván nébroi.

読み:ドゥルソーラ エンドラ セルヴァーン ネーブロイ。

dulþól-aéndraselv-ánnébr-oi.
息を伏せ殺す-<(軽いものが)>人<主格>息-<対格>霧-<与格>

「人は霧の中で息を伏せ殺す。」

習俗や一般の行為について記す直説法。総称的な主語「人」を軽性の単数として受け、無時制で習慣的な行為を表す。目的語の「息」と場所の与格が文の後半に続く。

vrúna líura sóilan sélvan-es.

読み:ヴルーナ リーウラ ソイラン セルヴァネス。

vrún-alíurasóil-ansélvan-es.
巻く-<(軽いものが)>女<主格>髪-<対格>セルヴァン-<属格>

「女がセルヴァンの髪を結い上げる。」

日常文。主語 líura は軽性。名詞句内の属格 sélvan-es で「セルヴァンの」を示す。髪 sóila は語彙上軽性の a語幹で、直接目的語は対格語尾 -an を受ける。

ráinim amvirán.

読み:ライニン アンヴィラーン。

ráin-imamvir-án
知る-<私が>高原語-<対格>

「私は高原語を知っている。」

日常会話で、高原語を身につけていることを言う文。amvirá は目的語として対格 amvirán をとる。

lísa lisár plánan amvirés.

読み:リーサ リサール プラーナン アンヴィレース。

lís-alisárplán-anamvir-és
書く-<(軽いものが)>書記<主格>帳簿-<対格>高原語-<属格>

「書記は高原語の帳簿を書いている。」

書記の作業の場面。名詞句は「名詞+属格」の順で、plánan amvirés は「高原語の帳簿」。amvirá の属格は amvirés。

vír amvirán ende.

読み:ヴィール アンヴィラーン エンデ。

víramvir-ánende
言う<命令法><あなたが>きちんとした言葉づかい-<対格>どうぞ

「きちんとした言葉づかいで言え、頼む。」

市でのたしなめ。命令法 vír に目的語 amvirán を置き、縁の市で多用する ende を添える。この用法では amvirá が「正しく整った言葉づかい」を指す。

ké líses plánan un þailviréi?

読み:ケー リーセス プラーナン ウン サイルヴィレー?

kélís-esplán-anunþailvir-éi?
<〜か>書く-<あなたが>帳簿-<対格>内に都の改まった言葉-<与格>

「帳簿を都の改まった言葉で書くか。」

帳場や書記の日常で、書きぶりの改まりを確かめる文。un+与格で「〜という言語・文体で」と範囲を示す。þailviráは宮廷語と都の標準的な書き言葉を指す。

ké vóilin þíles sóndelan un þailviréi?

読み:ケー ヴォイリン シーレス ソンデラン ウン サイルヴィレー?

kévóil-inþíl-essóndel-anunþailvir-éi?
<〜か>読む-<〜して・〜く>分かる-<あなたが>書物-<対格>内に高原語(雅称)-<与格>

「書物を高原語(雅称)で読めるか。」

学び舎で能力を尋ねる文。副動詞+þíl-「分かる」で、やり方を身につけていてできることを問う。ここでのþailviráは、都の改まった言葉としてだけでなく、高原語全体を雅に呼ぶ名として使う。

lúin lóima ilanár virán, elþaséna senár kumbór.

読み:ルーイン ロイマ イラナール ヴィラーン、エルサセーナ セナール クンボール。

lúinlóim-ailanárvir-án,elþasén-asenárkumbór.
とき唱える-<(軽いものが)>星読み<主格>言葉-<対格>,疵を確かめる-<(軽いものが)>目付<主格>青銅<対格>

「星読みが詞を唱えるとき、目付は青銅を火に透かして疵を確かめる。」

lúin は時の節を導き、節内も VSO。lóima は他動詞なので目的語枠を空けず、virán「ことば/詞」で埋める。lóima は主語 ilanár に一致し、elþaséna は senár に一致する。kumbór は重性なので対格語尾がない。

krúelan ráuvul anórel.

読み:クルーエラン ラウヴル アノーレル。

krúel-anráuv-ulanórel.
動く-<彼らが>森の氏族-<〜たちが>昨日

「森の氏族たちが昨日動いた。」

年代記・公式記録の場面。krúel- を換喩的に用い、森の氏族が動きを見せたことを示す。主語は複数 ráuvul。

un tráumoi slúnan drólmul

読み:ウン トラウモイ スルーナン ドロルムル

untráum-oislún-andrólm-ul
内に渡り氷-<与格>滑る-<彼らが>趾-<〜たちが>

「渡り氷の上では趾先が滑る。」

凍りの頃の道や渡り氷についての注意文。tráumo は渡り氷。drólmul は趾を個別または複数として数えた重性名詞の複数主格で、動詞 slún- は複数主語を受けて 3PL の -an をとる。un + 与格で「渡り氷の中で/渡り氷の上で」。

séira unlóur toráran.

読み:セーラ ウンロール トラーラン。

séir-aunlóurtor-ár-an.
待つ-<(軽いものが)>まだ来る-<〜する人>-ACC.

「客をまだ待っている。」

séir- は他動詞で目的語を要するため、torár は主語ではなく目的語にする。軽性の -ár 名詞の単数対格は -an を取る。動詞 séira の -a は省略された三人称軽性主語の一致である。

gǘla senár sáindaran es kórvos.

読み:ギューラ セナール サインダラン エス コルヴォス。

gǘl-asen-ársáindar-aneskórv-os
取り出す-<(軽いものが)>見る-<〜する人>証文-<対格>から倉-<属格>

「目付は証文を倉から取り出す。」

市の帳場での検め。主語 senár は人で軽性なので、動詞は3人称単数軽性 -a。sáindaran は軽性子音語幹の対格。es は属格を支配し「〜から」。kórvos は kórvo の属格で、倉から出す出所を示す。gǘl- は単に外へ出すだけでなく、中身を出して並べ広げるまでを指す。

slévim elþán.

読み:スレーヴィン エルサーン。

slév-imelþ-án.
守る-<私が>火-ACC.

「私は火を守る。」

家庭・炉端の日常表現。主語は語尾 -im からわかるので代名詞を添えない。火 elþá は軽いものに数えられ、目的語では -án を取る。火そのものを保持するのではなく、災いから無事に保つ意で使う。

sléva lisár plánan.

読み:スレーヴァ リサール プラーナン。

slév-alisárplán-an.
守る-<(軽いものが)>書記<主格>帳簿-ACC.

「書記が帳簿を守る。」

書・帳簿を扱う書面的な場面。主語 lisár は軽性の語、動詞は3人称単数軽性 -a をとる。帳簿 plána は軽性a語幹で、目的語は plánan。書き換えや毀損から記録を守る意。

houmséna endríñan.

読み:ホウンセーナ エンドリーニャン。

houmsén-aendríñ-an.
見守る-<(軽いものが)>子ども-<対格>

「子どもを見守る。」

主語を明示しない、一般の主語としての言い方。動詞が3人称単数・軽性で、炉まわりの当番のような主語を文脈から示す。endrínは人を指す軽性a語幹名詞で、単数対格に-anがつく。

dúlan faronárai bérun du dálor.

読み:ドゥーラン ファロナーライ ベールン ドゥ ダーロル。

dúl-anfaron-ár-aibérundudálor
下る-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>道のり<対格>下手下の国<対格>

「運び人たちは道のり(道筋)を下りて下の国へ行く。」

移動動詞と組む道のり用法。重性名詞 bérun は対格接語を持たず、主格と同形のまま道のりを表す。複数主語 faronárai は軽性行為者名詞 faronár の複数主格。

pá hoinkráila tásan?

読み:パー ホインクライラ ターサン?

páhoinkráil-atás-an?
誰<主格>出迎え-<(軽いものが)><あなた>-<対格>

「誰があなたを出迎えるの?」

日常会話の質問文。主語が人を指す疑問代名詞 pá なので、動詞は軽性の3人称単数で一致する。目的語の2人称単数代名詞は対格 tásan をとる。

lóimo mérvo lourlisán.

読み:ロイモ メルヴォ ロウルリサーン。

lóim-omérvolourlis-án.
唱える-<(重いものが)>村の人々<主格>系譜の巻-ACC.

「村の人々は系譜の巻を唱える。」

系譜や儀礼を記す文脈でも、mérvo は村の住人全体を指す語として使える。動詞は grammatical に重性の単数で受ける。語順は動詞—主語—目的語。

fíndim virán mérvos.

読み:フィンディン ヴィラーン メルヴォス。

fínd-imvir-ánmérv-os.
聞く-<私が>言葉-<対格>田舎-<属格>

「私は田舎の言葉が聞こえる。」

名詞に後置された属格 mérvos は「田舎の」。日常では単に都の外、とくに湖盆の村由来であることを示すだけだが、改まった場で人やその言葉・持ち物に対して使うと、田舎くさいという見下した含みを持つ。

funeléra lisár próunan sé.

読み:フネレーラ リサール プローナン セー。

funelér-alis-árpróun-ansé.
書き留める-<(軽いものが)>書く-<〜する人>正当な所有者-<対格>この<軽性>

「書記がこの正当な所有者を書き留める。」

帳簿・記録の場面。帳簿上の帰属先として、正当な所有者を名指しして記す。próun は人を指すので軽性。単数対格は próunan。指示詞 sé は性を示し、格では変化しない。

méira senár sáindaran próunei sé.

読み:メーラ セナール サインダラン プローネイ セー。

méir-asen-ársáindar-anpróun-eisé.
与える-<(軽いものが)>見る-<〜する人>証文-<対格>正当な所有者-<与格>この<軽性>

「目付が証文をこの正当な所有者に渡す。」

証文交付・帳簿上の精算の場面。返還・請求の相手として、正当な所有者に交付する。próun の与格は próunei。VSO の基本語順では、与格は目的語の後に置く。

klámbau ánor si dúror lisáran.

読み:クランバウ アーノル シ ドゥーロル リサーラン。

klámb-auánorsidúrorlisár-an
板挟みにする-<双数>上手と下手書記-<対格>

「上手と下手が書記を板挟みにする。」

比喩的な用い方。単数名詞 ánor と dúror を si で主語にすると、動詞は双数 -au。人を指す lisár は軽性なので、対格は -an。

houméran endríñai elþán

読み:ホウメーラン エンドリーニャイ エルサーン

houmér-anendríñ-aielþ-án
囲む-<彼らが>子ども-<〜たちが>火-<対格>

「子どもたちが火を囲む。」

日常場面。elþá「火」は軽性a語幹で、単数対格は elþán。主語 endríñai は「子どもたち」の複数主格。

houméran dráunai hervíñan

読み:ホウメーラン ドラウナイ ヘルヴィーニャン

houmér-andráun-aihervíñ-an
囲む-<彼らが>狼-<〜たちが>小鹿-<対格>

「狼たちが小鹿を囲む。」

獣が獲物を四方から取り巻く場面。dráun「狼」は軽性の子音語幹で、複数主格は dráunai。hervíña「小鹿」は軽性a語幹で、単数対格は hervíñan。

houméran endríñai si torárai ó

読み:ホウメーラン エンドリーニャイ シ トラーライ オー

houmér-anendríñ-aisitorár-aió
囲む-<彼らが>子ども-<〜たちが>と客-<〜たちが><3人称単数・重性・対格>

「子どもたちと客たちは、炉を囲んで炉ばたに集う。」

本来は目的語 hóum「炉」を伴う他動詞用法。目的語を省略しないため、3人称重性の対格 ó を残す。

na véilimor seiraldáran.

読み:ナ ヴェーリモル セイラルダーラン。

navéil-imorseiraldár-an
<〜ない>忘れる-<我々が>待席-<対格>

「我らは、待席の作法を忘れない。」

共同体で作法を守る言い方。na は直説法の否定。動詞語尾 -imor により 1 人称複数主語を明示し、主語代名詞は必要ない。seiraldár は「作法」として抽象用法で、対格 seiraldáran を取る。

ké sénes seiraldáran némes?

読み:ケー セーネス セイラルダーラン ネーメス?

késén-esseiraldár-anném-es
<〜か>見る-<あなたが>待席-<対格><私>-<属格>

「私の待席が見えるか。」

日常会話で、目の前や見覚えの席を確かめる問い。ké が文頭に立つ。seiraldár は軽性単数で、目的語には -an が付く。所有表現は、対格の seiraldáran の後ろに 1 人称属格 némes を置く。

foumtáulim lúsan sórel

読み:フォウンタウリン ルーサン ソーレル

foumtául-imlús-ansórel
いただく-<私が>粥-<対格>今日

「私は今日、粥をいただく。」

雨期や霧期の食卓で、温かい粥を口にする際の改まった言い回し。 foumtául- は温かい流質食物を摂ることに限られ、冷たい水や固形食物には使わない。 foumtáulim は第一人称単数の直説法。 lúsa は軽性の語で、格語尾が付く際は語幹を lús とし、対格は lús-an になる。

prálan trúndul si kumbórul.

読み:プラーラン トルンドゥル シ クンボールル。

prál-antrúnd-ulsikumbór-ul.
ぶつかる-<彼らが>杭-<〜たちが>と青銅-<〜たちが>

「杭と青銅の塊とがぶつかり合った。」

ぶつかり合う意味では、物の複数や群れを si で並べて主語にする。複数主語には動詞の3人称複数語形 -an をつける。

prálan fáronul si fróumul.

読み:プラーラン ファーロヌル シ フロームル。

prál-anfáron-ulsifróum-ul.
ぶつかる-<彼らが>荷-<〜たちが>と荷車-<〜たちが>

「荷と荷車とがぶつかり合った。」

荷や運び道具のように動きやすい物を並べ、双方の接触として述べる。文脈によって、荷積みの場や通路での偶然の触れ合いを示す。

krémban virái sé nouráis

読み:クレンバン ヴィライ セー ノウライス

krémb-anvir-áisénour-áis
引きつける-<彼らが>言葉-<〜たちが>この<軽性>心-<〜たちを>

「これらの言葉は、心を引きつける。」

くだけた日常語でも使える喩的用法。主語が複数なので動詞は3人称複数形をとり、性を区別しない。目的語は「心」の複数対格 nouráis。krémb- の本来の「引く・曳く」から、心や関心を引きつける意味へ転じた文。

krémba virá séuril sé nourán

読み:クレンバ ヴィラー セウリル セー ノウラーン

krémb-aviráséurilsénour-án
引きつける-<(軽いものが)>言葉<主格>美しいこの<軽性>心-<対格>

「この美しい言葉は、心を引きつける。」

詩的・改まった文体での用法。形容詞 séuril は名詞の直後、指示詞の前に置く。主格の軽性a語幹 virá は語全体を一つの形態素として書き、主語が軽性単数なので動詞は 3人称単数・軽性形 krémba になる。心を引きつけるという抽象的な目的語も、本来の他動詞 krémb- の枠に収まる。

marméira lisár sáindaran senárei

読み:マルメーラ リサール サインダラン セナーレイ

marméir-alisársáindar-ansenár-ei
手で差し出す-<(軽いものが)>書記<主格>証文-<対格>目付-<与格>

「書記は目付に証文を差し出す。」

まだ目付が受け取っていない証文を手渡す動作。lisár は軽性子音語幹で、動詞は軽性の 3 人称単数になる。sáindar は軽性で対格 -an をとる。

bála houmár aldáran torárei.

読み:バーラ ホウマール アルダーラン トラーレイ。

bál-ahoumáraldár-antorár-ei.
空ける-<(軽いものが)>家の主<主格>座-<対格>客-<与格>

「家の主が客のために座を空ける。」

炉ばたの上座の作法。席を次の人、ここでは客に譲るため空ける。与格単数で利益者を示す。

fíndim gláuran sé.

読み:フィンディン グラウラン セー。

fínd-imgláur-ansé
聞く-<私が>笑い声-<対格>この<軽性>

「私はこの笑い声を聞く。」

日常会話で、笑いを直接耳にしたいう句。gláur は軽性子音語幹名詞で、単数対格は -an。指示詞 sé は名詞の後ろに置き、軽性単数の形。fíndim は直説法1人称単数で、時制は語形には表れない。

bónda lisár sáindaran.

読み:ボンダ リサール サインダラン。

bónd-alisársáindar-an
曲げる-<(軽いものが)>書記<主格>証文-<対格>

「書記が証文を折り曲げる。」

書記の事務的な場面。主語 lisár は人なので動詞は軽性3単 bónda。証文 sáindar は軽性子音語幹の文書類で、対格 -an をとる。硬い材を折る意味ではなく、紙や薄い板を角度を残して曲げる。

bondéndes plánan.

読み:ボンデンデス プラーナン。

bond-énd-esplán-an
折り曲げる-<〜しますように>-<あなたが>帳簿-<対格>

「帳簿を折り曲げてくれ(折り曲げなさいますよう)。」

帳場での改まった依頼。願望法2単 bondéndes で命令を和らげる。語根の強勢が接尾辞 -énd- に移るため、表記では bond- が無強勢となる。帳簿 plána は軽性a語幹の対格 plánan。

púnim plánan sé

読み:プーニン プラーナン セー

pún-implán-ansé
覗く-<私が>帳簿-<対格>この<軽性>

「私はこの帳簿を、確かめるように覗いている。」

自分の帳簿の細部や行を確認する場面。plána は軽性 a 語幹で、対格には -an をつける。指示詞 sé は軽性の名詞句の最後に置いて対象を指す。

fíndim tíulan núlan

読み:フィンディン ティーウラン ヌーラン

fínd-imtíul-annúl-an
聞く-<私が>音-<対格>低い-<対格>

「私は低い声(音)を聞く。」

tíula は「音・声」の意で軽性。fínd-「聞く」の目的語として単数対格 tíulan を取り、それに後置された形容詞も軽性対格 núlan に一致する。この用法の núl は高さではなく、声や音のピッチが低いことを表す。

duþélim sélvanan, an fóndaros gléinaros dúlenan fáir þrénul.

読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス グレーナロス ドゥーレナン ファイル スレーヌル。

du-þél-imsélvan-an,anfóndar-osgléinar-osdúlen-anfáirþrén-ul.
<〜させていただく>-名乗る-<私が>セルヴァン-<対格>上手源-<属格>グレイナル-<属格>下りた-<対格>四段-<〜たちを>

「グレイナルの源から四段下った者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」

改まった名乗り定型。duþél- は謙譲の「名乗らせていただく」で、名前を対格で受ける。dúlen-an は見出し語 dúlen に軽性対格単数の接辞 -an を付けた形で、sélvanan に一致して後置修飾する。þrénul は「何段下りたか」を表す道のりの対格。

flóran faronárai prámbo.

読み:フローラン ファロナーライ プランボ。

flór-anfaron-ár-aiprámbo.
取り決める-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>値<対格>

「運び人たちが値をとり決める。」

prámbo「値」は重性語で、単数の目的語には対格語尾が overt に立たない。複数主体 faronárai に応じて動詞は -an。値決めを段取りとして確定させる用法。

klonéro fáron só faronáran.

読み:クロネーロ ファーロン ソー ファロナーラン。

klon-ér-ofáronsófaron-ár-an.
膝-<〜でする>-<(重いものが)>荷<主格>この<重性>荷-<〜する人>-<対格>

「荷が運び人の膝を抜く(運び人をよろめかせる)。」

市や道での日常で使える他動詞用法。主語「荷」が重性なので動詞は3人称単数・重性の語尾 -o をとる。目的語「運び人」は軽性子音語幹名詞の対格 -an をとる。

hoinkráila houmár toráran fándoi.

読み:ホインクライラ ホウマール トラーラン ファンドイ。

hoinkráil-ahoumártorár-anfánd-oi
出迎える-<(軽いものが)>家の主<主格>客-<対格>戸口-<与格>

「家の主は戸口で客を出迎える。」

もてなしや礼法の記述。fándoi は迎え場の与格。torár は軽性子音語幹の客で、対格単数は toráran。主語 houmár は人なので軽性。

séira toráran fándoi.

読み:セーラ トラーラン ファンドイ。

séir-atorár-anfánd-oi
待つ-<(軽いものが)>客-<対格>戸口-<与格>

「戸口で客を待つ。」

迎え場としての用法。場所を示す fándoi は与格。toráran は目的語の対格で、目的語の枠を埋める。主語は動詞語尾から読み取れる3人称単数・軽性で、省略している。

séndoi sénim kruléndran

読み:センドイ セーニン クルレンドラン

sénd-oisén-imkruléndr-an
ここ-<与格>見る-<私が>人壁-<対格>

「ここで人壁が見える。」

狭い所や広場で、人々が密集して固まっている様子を表す日常の言い方。séndoi は「ここ」の与格で、知覚文の場所を示す。krúlendra は「人壁」を表す軽性a語幹の一語で、目的語としては単数対格 krúlendran になる。

brólim líran.

読み:ブローリン リーラン。

bról-imlír-an.
作る-<私が>糸-<対格>

「私は糸を作る。」

作業の場面でのありふれた文。基本語順は動詞-主語-目的語だが、1 人称主語は語尾 -im で示されるため代名詞 ném は省かれる。軽性 a 語幹の単数対格は -an で、lír-an となる。

sénim líran nébros.

読み:セーニン リーラン ネーブロス。

sén-imlír-annébr-os.
見る-<私が>糸-<対格>霧-<属格>

「私は霧の細い筋を見る。」

líra を比喩的に「細い一本の筋」として使う文。名詞句では頭部名詞が格標志(対格 -an)を受け、その後に属格 nébros が置かれる。「霧の細い筋」は、霧の切れ目のように細い線を糸にたとえた言い方。

anórel, fíndim gláuran þrúlan.

読み:アノーレル、フィンディン グラウラン スルーラン。

anórel,fínd-imgláur-anþrúl-an.
昨日聞く-<私が>笑い声-<対格>騒がしい-<対格>

「昨日、騒がしい笑い声を聞いた。」

家庭内で耳に入った笑い声について述べる文。目的語 gláuran に修飾形容詞 þrúlan が軽性単数対格で一致する。þrúl- は、笑い声を不快に受け取ったことを含み、改まった場では使わない。無時制のため、昨日という時間は場面の枠に置かれた anórel が示す。

kráila endríña fénlan sléimenan.

読み:クライラ エンドリーニャ フェンラン スレーメナン。

kráil-aendríñafénl-ansléim-en-an
手に取る-<(軽いものが)>子ども<主格>切り枝-<対格>切る-<〜した・〜された>-<対格>

「子供が切り枝を手に取る。」

日常会話。切り取られた枝(意味2)を、手持ちの材として扱う場面。名詞 fénlan は語根 fénl- に軽性 a 語幹の対格語尾 -an が付いた形で、分詞も名詞に一致して軽性・単数・対格の語尾 -an を受ける。

lúin háles þelán némes, nóumaurim.

読み:ルーイン ハーレス セラーン ネーメス、ノーマウリン。

lúinhál-esþel-ánném-es,nóumaur-im
とき呼ぶ-<あなたが>名前-<対格><私>-<属格>照れる-<私が>

「あなたが私の名前を呼ぶと、私は照れる。」

日常会話。lúin節が主節に先行する。þelá「名前」の対格 þelán に、所有の属格 némes を後置して「私の名前」を作る。主節は1人称語尾 -im によって主語を省略できる。

lóima kraselvá lisáres loimán.

読み:ロイマ クラセルヴァー リサーレス ロイマーン。

lóim-akraselvális-ár-esloim-án.
唱える-<(軽いものが)>裂けた声<主格>書く-<〜する人>-<属格>詞-<対格>

「書記の裂けた声が詞を唱える。」

祭祀や書物の場の描写。主語は「裂けた声」で、その前に属格を置いて「書記の裂けた声」を作る。主語が軽性単数なので動詞は -a。

fíndim kraselván, lúndin krúndo.

読み:フィンディン クラセルヴァーン、ルンディン クルンド。

fínd-imkraselv-án,lúnd-inkrúndo.
聞く-<私が>裂けた声-<対格>,歌う-<〜して・〜く>荷担ぎ歌<対格>

「荷担ぎ歌を歌いながら、裂けた声を聞く。」

荷担ぎ歌を歌い続ける日常場面。主節と副動詞の主語は同じ一人称。krúndo は重性o語幹の単数対格で、主格 krúndo に同じ。

líreran endríñai vrélmo.

読み:リーレラン エンドリーニャイ ヴレルモ。

lírer-anendríñ-aivrélmo
縫う-<彼らが>子ども-<〜たちが>毛皮<対格>

「子どもたちは毛皮を縫う。」

主語が複数の現在の文。動詞は3人称複数で性を区別しない。毛皮を接ぐという日常の縫い仕事の場面。

noumovíran aursárai, na víran aursárai

読み:ノウモヴィーラン アウルサーライ、ナ ヴィーラン アウルサーライ

noumo-vír-anaursár-ai,navír-anaursár-ai
顔-言う-<彼らが>祖先-<〜たちが><〜ない>言う-<彼らが>祖先-<〜たちが>

「祖先たちは顔で通じ合い、口には語らない。」

儀礼・系譜の読み上げなどで祖先どうしの通じを述べる、改まった定型句。主語 aursárai「祖先たち」が複数なので動詞は3複の -an をとる。第二節で vír-「言う」の否定を並べ、無言の合図が発語と同格に扱われることを示す。

slélim snélan

読み:スレーリン スネーラン

slél-imsnél-an
広げる-<私が>布-<対格>

「私は布を広げている。」

家庭で布や衣を平に開く日常の場面。動詞の一人称単数語尾が主語を示すため、代名詞は省ける。

sléla andaulóura snélan

読み:スレーラ アンダウローラ スネーラン

slél-aandaulóurasnél-an
広げる-<(軽いものが)>祖母<主格>布-<対格>

「祖母が布を広げている。」

家の中で年長者が布を扱う場面。主語は人なので、動詞は軽性の三人称単数語尾 -a をとる。

duslélim snélan ausenárei

読み:ドゥスレーリン スネーラン アウセナーレイ

du-slél-imsnél-anau-sen-ár-ei
<〜させていただく>-広げる-<私が>布-<対格><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>-<与格>

「目付殿に布を広げて差し上げます。」

改まった場面で、相手の前に布を平に広げて提示する意。動詞に謙譲接頭辞 du-、受取人に高めた目付の与格 ausenárei を用いている。

slél snélan ném-ei ende

読み:スレール スネーラン ネーメイ エンデ

slélsnél-anném-eiende
広げる<命令法><あなたが>布-<対格><私>-<与格>どうぞ

「布を広げて、私に見せてくれ。」

市や店での依頼。命令法と依頼の小辞 ende を組み合わせ、布を自分のほうへ平に広げて差し出させる意を示す。与格 némei が受取人・提示先を表す。

sléla lisár plánan

読み:スレーラ リサール プラーナン

slél-alis-árplán-an
広げる-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>帳簿-<対格>

「書記が帳簿を広げる。」

帳場や役所で帳簿を開いて机に広げる場面。布に限らず、書類や帳簿を平に扱う意でこの語が使える。

þrunéndes dulsóilan.

読み:スルネンデス ドゥルソイラン。

þrun-énd-esdulsóil-an.
削る-<〜しますように>-<あなたが>下髪-<対格>

「顎毛を剃ってくれませんか。」

日常の整髪の場で、同等者へ整髪を依頼する文。dulsóila は対格 dulsóilan として直接受ける。

víra ólmar ré þrunésa dulsóilan.

読み:ヴィーラ オルマル レー スルネーサ ドゥルソイラン。

vír-aólmarréþrun-és-adulsóil-an.
言う-<(軽いものが)>年長者<主格><〜と(節)>削る-<〜すべし>-<(軽いものが)>下髪-<対格>

「年長者は「顎毛は剃るべきだ」と言う。」

作法・戒めを述べる文。当為法 þrunésa は主語を明示しないとき、一般の人を主語として軽性の形をとる。

šelvimor virán tásei.

読み:シェルヴィモル ヴィラーン ターセイ。

šelv-imorvir-ántás-ei
ささやく-<我々が>言葉-<対格><あなた>-<与格>

「私たちがあなたにひとことささやく。」

くだけた日常会話。主語の「我ら」は代名詞 némor を省き、語尾 -imor に示す。声量の低さを指し、声に出す内容の善し悪しは含意しない。

tréna endríña sóilan.

読み:トレーナ エンドリーニャ ソイラン。

trén-aendríñasóil-an.
編む-<(軽いものが)>子<主格>髪-<対格>

「子どもが髪を編む。」

女児の髪の手入れを表す日常の平叙文。主語endríñaは軽性なので、動詞は3人称単数軽性の-aをとる。髪sóilaは-a語尾の軽性語として扱い、単数対格は語根sóil-に-anをつけてsóilanとなる。自他の所有は明示しておらず、文脈で誰の髪かが決まる。

trén sóilan!

読み:トレーン ソイラン!

trénsóil-an!
編む<命令法><あなたが>髪-<対格>

「髪を編みなさい。」

身近な相手への命令の文。命令法の2人称単数は語根trénのみで、主語や人称語尾をもたない。目的語は通常の対格語尾-anを備えているため、縁の市のような裸の語幹命令とは区別される。

na pléla sélvan þelasnélan sé.

読み:ナ プレーラ セルヴァン セラスネーラン セー。

naplél-asélvanþelasnél-ansé.
<〜ない>着る-<(軽いものが)>セルヴァン<主格>頭巾-<対格>この<軽性>

「セルヴァンはこの頭巾を身につけない。」

記録や叙述のような中立的な文。否定は動詞の直前に na を置く。plél- は自動詞なので、目的語を伴う他動詞用法は使役 -íþ- で作る。改まった婉曲語 þelasnéla は、礼装を記録する文脈でも用いられる。

sléva þelasnéla selván.

読み:スレーヴァ セラスネーラ セルヴァーン。

slév-aþelasnélaselv-án.
守る-<(軽いものが)>名布<主格>息-<対格>

「名布は息を守る。」

比喩用法。頭巾を「息を守る布」として名布と呼ぶ言い方。動詞 slév- の主語 þelasnéla が軽性なので sléva、目的語 selvá は対格 selván。selván は selv-án の形。

sénim þelasnélan te sléva selván.

読み:セーニン セラスネーラン テ スレーヴァ セルヴァーン。

sén-imþelasnél-anteslév-aselv-án.
見る-<私が>名布-<対格><関係節>守る-<(軽いものが)>息-<対格>

「私は息を守る名布を見る。」

関係節 te を用いた比喩的な言い表し。関係節内の動詞 sléva は、先行詞 þelasnéla が軽性であることから軽性の語尾をとる。この用法は「名布=その人の息を守るもの」という含みを明示する。selván は selv-án の形。

síl-a endríña derván es máros.

読み:シーラ エンドリーニャ デルヴァーン エス マーロス。

síl-aendríñaderv-ánesmár-os
払う(弾いて落とす)-<(軽いものが)>子ども<主格>粉-<対格>から手-<属格>

「子どもが手から粉を払う。」

dervá「粉」を目的語に取り、手についた粉を軽く弾いて落とす日常の動作。síl- は klén-「拭く」とはちがい、表面に軽く当てて粒子を飛ばす意。es+属格は払い落とす出所を示す。

síl-a ráuvan elþíñan es máros.

読み:シーラ ラウヴァン エルシーニャン エス マーロス。

síl-aráuvanelþíñ-anesmár-os
払う(弾いて落とす)-<(軽いものが)>巫<主格>火の粉-<対格>から手-<属格>

「森の巫が手から火の粉を払う。」

elþíña「火の粉」を目的語とする。炉仕事や儀礼のあと、手についていた小さな火の粉を軽く弾いて落とす場面。拭くのではなく、何回か軽く叩いて外へ落とす動作である。

houmnílau andaulóura si brél elþán.

読み:ホウンニーラウ アンダウローラ シ ブレール エルサーン。

houmníl-auandaulóurasibrélelþ-án.
炉を(火を)続ける-<双数>祖母<主格>と兄弟<主格>火-<対格>

「祖母と兄弟は炉を続ける。」

二つの単数名詞を si で並べると、動詞は双数になる。brél はきょうだいの総称。家庭の炉維持の日常語で、改まった場では使わない。

lúin práima elþá, houmnílim élan.

読み:ルーイン プライマ エルサー、ホウンニーリン エーラン。

lúinpráim-aelþá,houmníl-imél-an.
とき細る-<(軽いものが)>火<主格>炉を(火を)続ける-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>

「火が細ると、私は炉を続ける。」

lúin で導く従属節も動詞が先頭。細りかけた火を保つ意で、燃料を単に追加する意ではない。目的語 élan は前の elþá を受ける。

gléla endríña lúsan es kúulos.

読み:グレーラ エンドリーニャ ルーサン エス クーロス。

glél-aendríñalús-aneskúul-os
よそう-<(軽いものが)>子ども<主格>粥-<対格>から鍋-<属格>

「子どもが鍋から粥をよそう。」

日常の記述文。gléla は 3人称単数・軽性の直説法で、主語 endríña は人なので軽性。出所は前置詞句 es kúulos(kúulo の単数属格)で表す。glél は社会的な配給や抽象的な「与える」ではなく、匙で食物を別の器に移す動作そのものを指す。

glél lúsan!

読み:グレール ルーサン!

gléllús-an
よそう<命令法><あなたが>粥-<対格>

「粥をよそえ。」

くだけた日常の命令。命令法2人称単数は語幹そのまま glél。目的語 lúsan は対格。glél 自体には上下の含みはないが、命令法そのものは下向きの場面で使うのが普通。

na ráinim virán, esós drúnim.

読み:ナ ライニン ヴィラーン、エソース ドルーニン。

naráin-imvir-án,esósdrún-im.
<〜ない>知る-<私が>言葉-<対格>,だから首を傾ける-<私が>

「言葉がわからないので、首を傾ける。」

日常会話での一人称の発話。否定の na は直説法動詞の直前に置き、原因を表す接続 esós は後続節の頭に立つ。主語は動詞の人称接辞 -im から示され、名詞は置かない。drúnim は、一度だけ首を横に傾ける仕草を表す自動詞用法。

lúin na ráinan endríñai amvirán, drúnan.

読み:ルーイン ナ ライナン エンドリーニャイ アンヴィラーン、ドルーナン。

lúinnaráin-anendríñ-aiamvir-án,drún-an.
とき<〜ない>知る-<彼らが>子ども-<〜たちが>高地語-<対格>,首を傾ける-<彼らが>

「子どもたちは高地語がわからないと、首を傾ける。」

書物的な常態表現。lúin が「〜すると」と副節を導く。副節は否定の na、動詞、主語、目的語の順で、主節は人称接辞 -an が副節の主語 endríñai を受けて省略される。drúnan は、聞き手が相手の言葉を整理しようとするときに見られる自動詞用法。

lúin na vírim þelán, núnim

読み:ルーイン ナ ヴィーリン セラーン、ヌーニン

lúinnavír-imþel-án,nún-im
とき<〜ない>言う-<私が>名-<対格>目を閉じる-<私が>

「その名を口にしないとき、私は目を閉じる。」

弔いや深い悲しみの場面。亡き者の名を唱えない禁忌や、悼みの中で言葉を控える動作として núnim が用いられる。lúin は主節に先行する時の節を導く。

lúin víra ólmar élan, núnim

読み:ルーイン ヴィーラ オルマル エーラン、ヌーニン

lúinvír-aólmarél-an,nún-im
とき言う-<(軽いものが)>年長者<主格><3人称単数・軽性>-<対格>目を伏せる-<私が>

「年長者がそれを仰るとき、私は目を伏せる。」

日常の敬意の場面。目上者の前で静かにまぶたを下ろす作法。núnim 自体は謙譲の接頭辞を持たないが、動作が敬意を表す。vír- は他動詞なので、目的語の代名詞 él に対格語尾 -an を付けた él-an を補う。

núnim si nóurim élan

読み:ヌーニン シ ノーリン エーラン

nún-imsinóur-imél-an
目を閉じる-<私が>と思う-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>

「目を閉じて、それを思う。」

日常の内省の場面。nún- は、反射的な瞬きでも眠りに入る動作でもなく、意図的にしばらくまぶたを下ろす行為。同一主語の二つの動作を si で並べている。nóur- は他動詞なので、目的語の代名詞 él に対格語尾 -an を付けた él-an を補う。

kréima lisár plánan endríñei.

読み:クレーマ リサール プラーナン エンドリーニェイ。

kréim-alis-árplán-anendríñ-ei.
説明する-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>帳簿-<対格>子ども-<与格>

「書記は子どもに帳簿について説明する。」

日常の帳場・学びの場面での用い方。受け手は与格で表す。帳簿そのものを内容の焦点として目的語にとる。

kréima ólmar loimán torárei.

読み:クレーマ オルマル ロイマーン トラーレイ。

kréim-aólmarloim-ántorár-ei.
説明する-<(軽いものが)>年長者<主格>詞-<対格>客-<与格>

「年長者は客に詞について説明する。」

儀礼・法廷での用い方。唱えることそのものではなく、詞の内容や作法を言葉で説明する意味になる。受け手は与格。

mé ombér selmán!

読み:メー オンベール セルマーン!

méombérselm-án!
<禁止・願いの打ち消し>指さす<命令法><あなたが>太陽-<対格>

「太陽を指さすな。」

太陽をじかに指さすのは粗末な振る舞いとされるため、子どもや身内に注意する際によく言う文。禁止は否定小辞 mé を動詞の前に置き、命令法の動詞を続ける。目的語の selmán は、軽性a語幹の語根 selm- に単数対格の語尾 -án を付けた形で、形態素境界は selm-án と切る。

sénim anrásan sé.

読み:セーニン アンラーサン セー。

sén-imanrás-ansé.
見る-<私が>上層の衣-<対格>この<軽性>

「私はこの上層の衣を見る。」

衣服の説明や整理の場面などで、内側の衣と区別した最上層を見ると言う文。anrása の対格は語根 anrás- に -an が付く形。指示詞 sé は格変化しない。

áumel, lísa lisár plánan.

読み:アウメル、リーサ リサール プラーナン。

áumel,lís-alis-árplán-an.
朝書く-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>帳簿-<対格>

「朝、書記が帳簿を書く。」

帳簿・書記の日常業務としての朝。基本語順は動詞–主語–目的語。lisár は行為者名詞、plána は軽性a語幹名詞で対格が -an。

rainíþim þúmvan endríñail sérin

読み:ライニーシン スンヴァン エンドリーニャイル セーリン

rainíþ-imþúmv-anendríñ-ailsérin
教える-<私が>口笛-<対格>子-<与格・〜ら(古い母音交替)>このように

「子どもたちに口笛をこのように教える。」

教則・作法の書のような記述。rainíþ- は教えるものを対格、受け手を与格に取る。endríñail は endríña の与格複数。行為のやり方を教える文脈で、音としての一声ではなく働きを表す。

sórel, kúnda endríña þúmvan

読み:ソーレル、クンダ エンドリーニャ スンヴァン

sórel,kúnd-aendríñaþúmv-an
今日,する-<(軽いものが)>子<主格>口笛-<対格>

「今日は、子どもが口笛をする。」

日常の観察の文。行為そのものを目的語として受け、口笛という働きを指す。kúnd- は行為名詞を対格で受ける。主語 endríña が軽性単数なので、動詞語尾は -o ではなく -a になる。þúmvan は þúmva の対格で、語根 þúmv- に -an が付いた形。

un funelándo tóran fáronul.

読み:ウン フネランド トーラン ファーロヌル。

unfunelándotór-anfáron-ul.
中に綱場<対格>来る-<彼らが>荷-<〜たちが>

「荷が綱場へ入ってくる。」

在庫・入荷の記録。un+対格で「〜の中へ」。見出し語 funelando がそのまま形態素として現れる。

houmselván léunim, houmár.

読み:ホウンセルヴァーン レウニン、ホウマール。

houmselv-ánléun-im,houmár.
ただいま-<対格>,申す-<私が>,主

「「ただいま」と申し上げます、主よ。」

儀礼的・書面的な発話。houmselvá を名詞として引用し、軽性a語幹の対格形 houmselván にする。謙譲の léun- を用い、直接呼かけの houmár は無標のまま末尾に添える。実際の帰宅挨拶では、普通は無標主格 houmselvá を単独、または主格のまま用いる。

houmsíla houmár endríñan

読み:ホウンシーラ ホウマール エンドリーニャン

houmsíl-ahoumárendríñ-an
炉ばたで諫める-<(軽いものが)>家主<主格>子-<対格>

「家の主が炉ばたで子どもを諫めている。」

日常の家庭内の文。動詞 houmsíl- が軽性の主語 houmár に一致し、目的語 endríña は軽性 a 語幹の対格 -an をとる。声高に叱るのではなく、炉での所作を直し、越えてはならない線を静かに引かえすニュアンス。

ké houmsíla ólmar endríñan hóumoi

読み:ケー ホウンシーラ オルマル エンドリーニャン ホーモイ

kéhoumsíl-aólmarendríñ-anhóum-oi
<〜か>炉ばたで諫める-<(軽いものが)>年長者<主格>子-<対格>炉-<与格>

「年長者が炉ばたで子どもを諫めているのか。」

改まった場面での問い。疑問小辞 ké が文頭に立つ。houmár の場合と違い、ólmar を主語にして、炉の場を hóumoi の裸与格で補っている。儀礼的な所作を含む戒めとして使える。

ké ráuman faronárai drúnoroi es orénos du kéndor?

読み:ケー ラウマン ファロナーライ ドルーノロイ エス オレーノス ドゥ ケンドル?

kéráum-anfaron-ár-aidrúnor-oiesorén-osdukéndor?
<〜か>歩く-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>縁の石段道-<与格>から縁-<属格>下手市<対格>

「運び人たちは、縁の石段道を、縁から市まで歩いているのか。」

日常の問いかけ。faronárai は faronár の複数。drúnor は重性子音語幹として与格単数 drúnoroi を取る。 ráum-「歩く」は道・経路を裸の与格で取るため un は用いない。 es orénos du kéndor が両端を指定することで、縁の石段道をひと続きの区間として指す用法を示す。

文法

前置詞(無強勢、次の語に寄りかかる)。対格・与格・属格と組む。唇音の前では[am]と発音するが綴りは an。

語源

古高原語 *an から

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