小説
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落ちる
ものが支えを失って落ちる。
lúin brúuma éndra es orénos, dúlau gromó si selvá.
読み:ルーイン ブルーマ エンドラ エス オレーノス、ドゥーラウ グロモー シ セルヴァー。
| lúin | brúum-a | éndra | es | orén-os, | dúl-au | gromó | si | selvá. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 人<主格> | から | 縁-<属格> | 下る-<双数> | 体<主格> | と | 魂<主格> |
「人が縁から落ちると、体も魂もともに下へ引かれていく。」
崖から落ちて死ぬことが恐れられる理由を述べる、教えの文。単数の名詞を si で二つ並べたので、動詞は双数の dúlau になり、性を区別しない。重い体と軽い魂がそろって下るのは、高原の考えではいちばん不吉なことである。
brúumo ílmo es lóuros du lóur.
読み:ブルーモ イルモ エス ローロス ドゥ ロール。
| brúum-o | ílmo | es | lóur-os | du | lóur. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 水<主格> | から | 瀬-<属格> | 下手 | 瀬<対格> |
「水は瀬から瀬へと落ちていく。」
川の流れを言い表す文。es+属格で「〜から」、du+対格で「下手の〜へ」を表す。lóur は重性なので、対格は主格と同じ形になる。川の水が段を下るごとに落ちていくという見方は、系譜を瀬で数える考え方のもとになっている。
brúumo pélsa es fáronos.
読み:ブルーモ ペルサ エス ファーロノス。
| brúum-o | pélsa | es | fáron-os. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 脂の木の材・荷札<主格> | から | 荷-<属格> |
「荷札が荷から落ちた。」
荷札を主語にした文。名詞は軽性の語形 pélsa のままだが、伐った材を指すので、動詞は3人称単数・重性の -o で一致する。立ち木なら同じ動詞でも brúuma になる。
brúumo frúm es fréunos táses.
読み:ブルーモ フルーン エス フレウノス ターセス。
| brúum-o | frúm | es | fréun-os | tás-es. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 血<主格> | から | 額-<属格> | <あなた>-<属格> |
「お前の額から血が垂れているぞ。」
けがを知らせるくだけた文。主語の frúm「血」が重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。es+属格で「〜から」を表す。時制の語形がないので、「垂れた」とも「垂れている」とも読める。
brúumo ílmo es drálos só.
読み:ブルーモ イルモ エス ドラーロス ソー。
| brúum-o | ílmo | es | drál-os | só. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 水<主格> | から | 器の首-<属格> | この<重性> |
「この(甕の)口もとから水がこぼれる。」
drál は、甕や瓶の細くくびれた口もとも指す。重性の指示詞 só は格変化せず、名詞句の終わりに置く。主語の ílmo「水」は重性なので、動詞は -o をとる。
víran dalorárai ré brúuma naþrenár es élvares.
読み:ヴィーラン ダロラーライ レー ブルーマ ナスレナール エス エルヴァレス。
| vír-an | dalorár-ai | ré | brúum-a | naþrenár | es | élvar-es. |
| 言う-<彼らが> | 下の国の者-<〜たちが> | <〜と(節)> | 落ちる-<(軽いものが)> | 異邦人<主格> | から | 天-<属格> |
「下の国の者たちは、異邦人が天から落ちてきたと言う。」
干潟の言い伝えを、高原の人が伝え聞いた形で言う文。ré の節は主節の後ろに置く。高原の世界観では、上から落ちてくる者は流れ星と同じく不吉なものとされるので、この種の話は泥の国の迷信として語られることが多い。es+属格で方向を問わない「〜から」。
raumíre endríña glüníñoi, bruuméla du ílmo.
読み:ラウミーレ エンドリーニャ グリュニーニョイ、ブルーメーラ ドゥ イルモ。
| raum-ír-e | endríña | glüníñ-oi, | bruum-él-a | du | ílmo. |
| 歩く-<もし〜なら>-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 薄氷-<与格> | 落ちる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 下手 | 水<対格> |
「「子どもが薄氷の上を歩けば、水に落ちるだろう。」」
凍りの頃の事故を戒める文。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作り、帰結の節は推量法で言う。水に落ちることは「下へ引かれる」恐ろしい出来事とされるので、du + 対格「下手へ」を使う。主語は人なので、動詞は軽性の形をとる。
lúin brúuma réina, éso rúndo múr.
読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーソ ルンド ムール。
| lúin | brúum-a | réina, | és-o | rúndo | múr. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | いる-<(重いものが)> | 走り水<主格> | 濁った |
「雨が降ると、走り水は濁る。」
lúin で始まる「〜とき」の節を、主節の前に置いた文。雨 réina は軽性で、地を走る水 rúndo は重性なので、二つの節で動詞の語尾が -a と -o に分かれる。雨期に谷の流れが増水して濁るようすを言う。
lúin brúuma réina, ésa fléura du aursárail.
読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーサ フレウラ ドゥ アウルサーライル。
| lúin | brúum-a | réina, | és-a | fléura | du | aursár-ail. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | いる-<(軽いものが)> | 天の屋根<主格> | 下手 | 祖先-<〜らに> |
「雨が降るときも、天の屋根は祖先の方々の下にある。」
雨期に星が見えなくても不安に思わなくてよい、と説くときの決まった言い方。du+与格で「〜の下手に」。天の屋根が祖先の下にあるということは、祖先は屋根の上にいて、変わらず下界を聞いているということになる。
brúuma réina sórel, mé gél du orén!
読み:ブルーマ レーナ ソーレル、メー ゲール ドゥ オレーン!
| brúum-a | réina | sórel, | mé | gél | du | orén! |
| 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | 今日 | <禁止・願いの打ち消し> | 行く<命令法><あなたが> | 下手 | 縁<対格> |
「今日は雨だ。縁へは行くな。」
雨で崖道が滑るときに、目下の者や家の者に言う注意。雨は上から来るものなので軽性で、動詞は -a をとる。禁止は mé+命令法で、命令法の2人称単数はむき出しの語幹 gél になる。
ké bruuméla réina dórel?
読み:ケー ブルーメーラ レーナ ドーレル?
| ké | bruum-él-a | réina | dórel? |
| <〜か> | 落ちる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 雨<主格> | 明日 |
「明日は雨が降るだろうか。」
天気を尋ねる日常の問い。未来のことは推量法で言う。強勢は -él- に移るので、語根の ´ は消える。答えるときは bruuméla「降るだろう」か na bruuméla と、動詞を繰り返す。
brúuma hílva es élvares sórel.
読み:ブルーマ ヒルヴァ エス エルヴァレス ソーレル。
| brúum-a | hílva | es | élvar-es | sórel. |
| 落ちる-<(軽いものが)> | 雪<主格> | から | 天-<属格> | 今日 |
「今日、天から雪が降った。」
凍りの頃の朝によく交わす言葉。雪は上から来るものなので軽性で、動詞は -a をとる。es+属格で「〜から」。時制がないので、「降った」とも「降る」とも訳せる。
lúin brúuma sírna, glǘno véinor.
読み:ルーイン ブルーマ シルナ、グリューノ ヴェーノル。
| lúin | brúum-a | sírna, | glǘn-o | véinor. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 霜<主格> | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> |
「霜が降りるようになると、湖が凍る。」
湖畔の村で季節の移り変わりを言う決まった言い方。従属節の主語 sírna は軽性なので動詞は -a をとり、主節の主語 véinor(地の上の水)は重性なので動詞は -o をとる。性の対比が、一つの文の中に出ている。
dúlo krámbo es orénos, na brúumo.
読み:ドゥーロ クランボ エス オレーノス、ナ ブルーモ。
| dúl-o | krámbo | es | orén-os, | na | brúum-o. |
| 下る-<(重いものが)> | 崖山羊<主格> | から | 縁-<属格> | <〜ない> | 落ちる-<(重いものが)> |
「崖山羊は縁から下りても、落ちはしない。」
崖道でよく言われる言い回し。主語 krámbo が重性なので、二つの動詞はどちらも3人称単数・重性の -o をとる。後ろの節では主語を言わないが、動詞の語尾から同じ崖山羊が主語だとわかる。
brúuma líndra, na hóina.
読み:ブルーマ リンドラ、ナ ホイナ。
| brúum-a | líndra, | na | hóin-a. |
| 落ちる-<(軽いものが)> | 金の落葉樹<主格> | <〜ない> | 帰る-<(軽いものが)> |
「金の葉は散り、もう戻らない。」
去りゆく美しさを詠む詩句。過ぎた若さや亡くなった人をしのぶときに、会話の中でも引かれる。二つの節が接続詞なしで並び、区切りの印で区切られている。
brúumo bóula es árneles.
読み:ブルーモ ボーラ エス アルネレス。
| brúum-o | bóula | es | árnel-es. |
| 落ちる-<(重いものが)> | どんぐり<主格> | から | 木-<属格> |
「どんぐりが木から落ちる。」
村の日常の描写。名詞 bóula は軽性a語幹の形のままだが、木から離れた実はもう昇らないものなので、動詞は重性の -o で一致する。名詞の形と一致が「ちぐはぐ」になる例。es+属格で「〜から」を表す。
brúumo frélo es máros némes.
読み:ブルーモ フレーロ エス マーロス ネーメス。
| brúum-o | frélo | es | már-os | ném-es. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 魚<主格> | から | 手-<属格> | <私>-<属格> |
「魚が私の手から落ちた。」
日常の文。frélo「魚」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。már「手」も重性で、属格は -os。es+属格で「〜から」。所有者の属格 némes は名詞の後ろに置く。
bruumíro fáron es orénos, droumélan faronárai.
読み:ブルーミーロ ファーロン エス オレーノス、ドロウメーラン ファロナーライ。
| bruum-ír-o | fáron | es | orén-os, | droum-él-an | faron-ár-ai. |
| 落ちる-<もし〜なら>-<(重いものが)> | 荷<主格> | から | 縁-<属格> | 嘆く-<〜だろう>-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> |
「縁から荷が落ちれば、運び人たちは嘆くだろう。」
条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の -ír- が強勢をとるので、語根の ´ は消えて bruumíro になる。崖から物が落ちることは忌まれるので、崖道の人々は口にするのを嫌う言い方でもある。
brúumo frúm rús es máros némes.
読み:ブルーモ フルーン ルース エス マーロス ネーメス。
| brúum-o | frúm | rús | es | már-os | ném-es. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 血<主格> | 赤い | から | 手-<属格> | <私>-<属格> |
「私の手から赤い血が落ちる。」
血 frúm は体に属するものなので重性。動詞は3人称単数・重性の -o をとり、形容詞 rús は重性の主格なので語尾がつかない。樵が手を切ったときのような日常の一言。
brúumo reinándo bóralos só.
読み:ブルーモ レイナンド ボーラロス ソー。
| brúum-o | reinándo | bóral-os | só. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 樋<主格> | 家-<属格> | この<重性> |
「この家の樋が落ちた。」
reinándo は甕も樋も表す。軒から落ちるものとして言われていれば、樋の意味だとわかる。重性なので動詞は -o をとる。時制がないので、文脈によって「落ちる」とも「落ちた」とも訳せる。
aursáre! brúumsa faronár es orénos.
読み:アウルサーレ!ブルーンサ ファロナール エス オレーノス。
| aursáre! | brúums-a | faron-ár | es | orén-os. |
| ああ | 落ちる<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | から | 縁-<属格> |
「ああ、ご先祖よ、運び人が縁から落ちてしまった。」
凶事を聞いたときの言い方。崖から落ちて死ぬことは、魂が下へ引かれるとして最も恐れられる死に方で、このような知らせには aursáre を添えることが多い。brúum- の語根は長母音なので、完了相は -s- を足して brúums- になる。
dáloro! brúumso fáron.
読み:ダーロロ!ブルーンソ ファーロン。
| dáloro! | brúums-o | fáron. |
| ちくしょう | 落ちる<〜し終えた>-<(重いものが)> | 荷<主格> |
「ちくしょう!荷が落ちやがった。」
dálor「下の国」の重性呼格から来た卑語。「下の国よ」と呼ぶことが悪態になる。崖道の運び人の言葉に多く、炉の前や目上の人の前では口にしてはならない。fáron は重性なので、動詞は -o をとる。
brúumo krǘmo endríñes
読み:ブルーモ クリューモ エンドリーニェス
| brúum-o | krǘmo | endríñ-es |
| 落ちる-<(重いものが)> | 歯<主格> | 子-<属格> |
「子どもの歯が抜けた。」
子どもの乳歯が抜けた場面。brúumo は主語 krǘmo が重性なので3人称単数・重性語尾-oで受ける。所有者 endríñ-es は名詞krǘmoの後ろに属格を置く。
転ぶ
人がつまずいて倒れる。凍った道や坂でよく使う。
ké brúumes? na brúumim.
読み:ケー ブルーメス?ナ ブルーミン。
| ké | brúum-es? | na | brúum-im. |
| <〜か> | 転ぶ-<あなたが> | <〜ない> | 転ぶ-<私が> |
「「転んだのか?」「いや、転んでない。」」
親しい者どうしのくだけたやりとり。2人称を使っているので、同じ段か下向きの話し方になる。答えは動詞を自分の人称に変えて繰り返し、否定なら na を前に置く。
bruumíre kelár, mé grúun.
読み:ブルーミーレ ケラール、メー グルーン。
| bruum-ír-e | kel-ár, | mé | grúun. |
| 転ぶ-<もし〜なら>-<(軽いものが)> | 伐る-<〜する人・主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 怒る<命令法><あなたが> |
「樵が転んでも、怒るな。」
凍った坂道や森の道での日常の文。条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の3人称単数・軽性は -e で終わる(bruumíre)。人は軽性なので、樵には軽性の形を使う。禁止は「mé+命令法」で、grúun はむき出しの語幹。
意志と関わりなく、ものが落ちる、人が転ぶことを表す。dúl-「下る」は、決まった道や作法に従って下りることを言うが、brúum- は抑えのきかない落下を言う。崖から落ちて死ぬことは高原でいちばん恐れられる死である。そのため、人が崖から落ちたことをこの語で直接言うのは避けられ、遠回しな言い方が使われる。
完了語根は brúums-。使役形 bruumíþ- は「取り落とす」の意味で、うっかり落とすことを言う。作法に従って下ろすのは dulíþ-。
古高原語から受け継いだ語。もとは落ちる音を表す擬音語だったとも言われる。
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