krél-

品詞
動詞
意味
足りる
発音
[ˈkrel]
読み
クレル
分野
性質・状態

意味

  1. 足りる

    必要な量に達している。食料、塩、物資などが、その目的(食べる、使う、精算する)に対して十分である。

    krélo tambór un kórvoi.

    読み:クレーロ タンボール ウン コルヴォイ。

    krél-otambórunkórv-oi
    足りる-<(重いものが)>雑穀<主格>内に倉-<与格>

    「倉の中の雑穀は足りている。」

    倉や貯蔵所で在庫の充足を確認する日常の言い方。主語の tambór「雑穀」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。un+与格で「倉の中に」。くだけた言葉では krél tambór un kórv-oi とも言うが、語末の -o が落ちた形(krél)でも、文脈から「足りている」と読み取れる。

    krélo sáko an nébroi.

    読み:クレーロ サーコ アン ネーブロイ。

    krél-osákoannébr-oi
    足りる-<(重いものが)>塩<主格>上手霧-<与格>

    「塩は霧の前に足りている。」

    縁の市や倉の司の帳場で、塩の在庫が霧期(季節の変わり目)まで十分かを確認する改まった言い方。an+与格の時読みで「〜の前に」。an nébroi「霧の前に」は市の決まり文句で、「期限までに」の意味も帯びる。主語の sáko「塩」は重性o語幹なので、動詞は -o。干潟から来る塩はすべて重性に入る。

    krélim.

    読み:クレーリン。

    krél-im
    足りる-<私が>

    「(私には)足りている。」

    食事や飲物のあとにもう一度勧められたとき、あるいは荷を分けてもらったあとに、控えめに断る際の定型の応答。1人称単数の語尾 -im が主語「私」を兼ねるので、名詞の主語は文脈から推される(粥、塩、毛織物など)。くだけた話し方の語末母音脱落は -m で終わるこの形には及ばない。改まった場面ではこの一語で足りるが、目上の人に対しては「もう十分でございます」にあたる謙譲の言い回し(léun- 系の補充形を用いる形)に切り替えるのが習わしい。

    na kréla krélna.

    読み:ナ クレーラ クレルナ。

    nakrél-akrélna
    <〜ない>足りる-<(軽いものが)>松明<主格>

    「松明が足りない。」

    否定の na は動詞の直前に置く。主語 krélna は軽性なので、動詞 krél- の三人称単数は軽性の -a になる。備えの不足を告げる、書き物や日常的な指示でも使える言い方。

    krélau vrélmo só si tambór só

    読み:クレーラウ ヴレルモ ソー シ タンボール ソー

    krél-auvrélmosósitambórsó
    足りる-<双数>毛皮<主格>この<重性>と雑穀<主格>この<重性>

    「この毛皮とこの雑穀が足りている。」

    森の民や湖畔の市で、物々交換の持ち寄りを確かめる場面。単数の名詞を si で二つ並べると、動詞は双数になる。双数動詞 krélau は性を区別しないので、重性の vrélmo と tambór を並べてもこの形を使う。

    na krélo tanó só.

    読み:ナ クレーロ タノー ソー。

    nakrél-otanósó
    <〜ない>足りる-<(重いものが)>弦<主格>この<重性>

    「この弦は張りが足りない。」

    弓や楽器の点検で、張りが足りないと述べる言い方。主語tanóは重性o語幹なので、krél-「足りる」は3人称単数・重性の-oを用いる。tanóは弦そのものの張力・緊張に焦点を当てる語として使われる。

    ké krélo houmkreló só?

    読み:ケー クレーロ ホウンクレロー ソー?

    kékrél-ohoumkrelósó?
    <〜か>足りる-<(重いものが)>家分<主格>この<重性>

    「この家分は足りるか。」

    日常のやり取り。yes-no 疑問は ké を文頭に置く。主語の houmkreló は重性o語幹の単数で、動詞 krél- は 3人称単数・重性語尾 -o を受ける。指示詞 só は名詞句に後置し、格変化しない。

    sórel, kréla brím éles.

    読み:ソーレル、クレーラ ブリーン エーレス。

    sórelkrél-abrímél-es
    今日足りる-<(軽いものが)>口数<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

    「今日は彼の口数がほどよい。」

    帳簿の数量ではなく、礼法上の適量を評す定型。brím élesは「彼の口数」を表す名詞句で、動詞krél-は主語のbrímに一致して軽形を取る。brímは軽性の名詞として扱う。

    lúin tóra léuma, kréla dralsnéla

    読み:ルーイン トーラ レウマ、クレーラ ドラルスネーラ

    lúintór-aléuma,krél-adralsnéla
    とき来る-<(軽いものが)>風<主格>足りる-<(軽いものが)>首巻き<主格>

    「風が吹くと、首巻きで足りる。」

    凍りの頃でなく、風の強い日に、首のあたりだけ巻く装いで間に合うという用例。lúin が導く節は「lúin 動詞 主語」の順で、tóra léuma のように動詞が主語に先行する。主節では kréla の主語が dralsnéla。krél- は「足りる」を表す自動詞。

  2. 足る(比喩)

    目的や役割に対して十分な水準に達している。「この言葉は足りる」は、言いたいことが十分伝わっている、という意味。

    kréla virá sé.

    読み:クレーラ ヴィラー セー。

    krél-avirásé
    足りる-<(軽いものが)>言葉<主格>この<軽性>

    「この言葉で足りる。」

    改まった場で、宣言・証言・詩の挨拶のあと、言うべきことを言ったと表明する表現。「この言葉で(言いたいことは)十分だ」の意で、比喩的な充足(意味の2)を表す。主語の virá「言葉」は軽性a語幹なので、動詞は軽性の -a。指示詞 sé(軽性)が名詞句を閉じる。法典や裁きの場で、証人が言い終えたあとに法官が言って場を閉じる文脈でよく見られる。

解説

生存や用途に対して必要な水準に達している状態を表す自動詞。高原語の「足りる」は、単に量が多い・少ないということではなく、その物事がある目的(食料、塩、取引の精算、役目の遂行)に対して十分な基準に達しているかどうかを問う。倉の司の帳簿では雑穀の在庫の充足を、縁の市では精算の充足を表すのに使う。改まった言葉では直説法で言い(kréla, krélo)、くだけた言葉では語末の母音が落ちる(krél)。重性の主語(穀物、塩、荷)には重性の語尾 -o、軽性の主語(言葉、備え、抽象的な充足)には軽性の -a をとる。

そのほかの用例

krémero krénmo krélvoi

読み:クレーメロ クレンモ クレルヴォイ

krémer-okrénmokrélv-oi
環に掛かる-<(重いものが)>環<主格>鉤-<与格>

「輪が鉤に掛かっている。」

krémer-の自動詞用法で、輪や鉤に捕まって懸かっている状態を表す。krénmoが重性主語なので、動詞は3人称単数・重性の-oをとりkrémeroとなる。掛かり先は与格で示す。

krémera faronár fáron krélvoi

読み:クレーメラ ファロナール ファーロン クレルヴォイ

krémer-afaronárfáronkrélv-oi
環に掛ける-<(軽いものが)>運び人<主格>荷<対格>鉤-<与格>

「運び人が荷を鉤に掛ける。」

krémer-の他動詞用法。荷を目的語にとる。荷は重性なので対格語尾がなく、fáronの形のまま。主語のfaronárは人なので軽性となり、動詞は3人称単数・軽性の-aをとる。

krémer fáron krélvoi, ende

読み:クレーメル ファーロン クレルヴォイ、エンデ

krémerfáronkrélv-oi,ende
環に掛ける<命令法><あなたが>荷<対格>鉤-<与格>どうぞ

「荷を鉤に掛けてくれ、頼む。」

現場での指示。命令法・2人称単数は語幹形krémerを用いる。依頼の定型endeを添えている。掛かり先の与格はkrélv-oi。

hél hóumes krélei!

読み:ヘール ホーメス クレーレイ!

hélhóum-eskrél-ei!
座る<命令法><あなたが>炉-<属格>向かい-<与格>

「炉の向かいに座れ。」

屋内で炉を挟んだ反対側を指示する日常の命令。kréla は関係名詞「向かい」で、語幹は krél-。参照点となる hóumes「炉の」を伴い、単数与格は krél-ei(krélei)となる。命令法は下向きの話し方として使う。

ésa plána hóumes krélei.

読み:エーサ プラーナ ホーメス クレーレイ。

és-aplánahóum-eskrél-ei.
いる-<(軽いものが)>帳簿<主格>炉-<属格>向かい-<与格>

「帳簿は炉の向かいにある。」

帳簿の所在を述べる文。存在の動詞 és- は主語 plána「帳簿」に一致して軽性 ésa になる。hóumes krél-ei が「炉の向かいに」という屋内の相対方位を表す。kréla の語幹 krél- に与格語尾 -ei が付く。

文法

自動詞。完了語幹は kréel-(e→ee)。重性主語には 3 人称単数の語尾 -o(krélo)、軽性には -a(kréla)。

語源

古高原語 *krél- から

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