múr

品詞
形容詞
意味
濁った
発音
[ˈmur]
読み
ムール
分野
性質・状態

意味

  1. 濁った

    水・空気に泥や混ざりものがあること。

    na sénim sáindaran sé, éso senó némes múr.

    読み:ナ セーニン サインダラン セー、エーソ セノー ネーメス ムール。

    nasén-imsáindar-ansé,és-osenóném-esmúr.
    <〜ない>見る-<私が>証文-<対格>この<軽性>いる-<(重いものが)>目<主格><私>-<属格>濁った

    「この証文は見えぬ。私の目はかすんでいる。」

    年長の者が細かい字を読めないときの言い方。主節二つを接続詞なしで並べるので、あいだに区切りを入れる。senó は重性なので、繋辞は -o をとり、述語の múr「濁った」にも語尾がつかない。目がよく見えないことを、水と同じ「濁る」で言っている。

    gléin þéul, múr dálor.

    読み:グレーン セウル、ムール ダーロル。

    gléinþéul,múrdálor.
    清い清い始まり<主格>濁った下の国<主格>

    「清きは始まり、濁れるは下の国。」

    格言・詩句の形。繋辞を落とし、述語の形容詞を先に置いている。源に近いものほど清く、下るほど濁るという、川と系譜の見方を一句にまとめたもの。会話に引くと、形容詞が先頭に来る語順から格言だとわかる。

    lúin brúuma réina, éso rúndo múr.

    読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーソ ルンド ムール。

    lúinbrúum-aréina,és-orúndomúr.
    とき落ちる-<(軽いものが)>雨<主格>いる-<(重いものが)>走り水<主格>濁った

    「雨が降ると、走り水は濁る。」

    lúin で始まる「〜とき」の節を、主節の前に置いた文。雨 réina は軽性で、地を走る水 rúndo は重性なので、二つの節で動詞の語尾が -a と -o に分かれる。雨期に谷の流れが増水して濁るようすを言う。

    mé níl ílmo múr!

    読み:メー ニール イルモ ムール!

    ménílílmomúr!
    <禁止・願いの打ち消し>飲む<命令法><あなたが>水<対格>濁った

    「濁った水を飲むな!」

    禁止は「mé+命令法」。形容詞 múr は名詞の後ろに置き、重性・単数・対格の ílmo に一致するが、語尾はつかない。濁った水は重く病を運ぶものとされ、とくに霧期によく言われる戒め。

    mé níl ílmo múr!

    読み:メー ニール イルモ ムール!

    ménílílmomúr!
    <禁止・願いの打ち消し>飲む<命令法><あなたが>水<対格>濁った

    「濁った水を飲むな。」

    親が子どもに言う日常の禁止。mé+命令法で禁止を表す。ílmo「水」は重性o語幹なので、対格も ílmo のまま。形容詞 múr も重性・単数・対格で一致し、語尾はつかない。

    tóro duléumo múr es orénos.

    読み:トーロ ドゥレウモ ムール エス オレーノス。

    tór-oduléumomúresorén-os.
    来る-<(重いものが)>下の風<主格>濁ったから縁-<属格>

    「縁から濁った下の風が上がってくる。」

    霧期の前に交わされる天気の話。duléumo「下の風」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o、形容詞は語尾なしの形をとる。崖の下から来る湿った風は、病を運ぶ濁ったものとされる。

    mé þráun fáron es orénos, murár!

    読み:メー スラウン ファーロン エス オレーノス、ムラール!

    méþráunfáronesorén-os,mur-ár!
    <禁止・願いの打ち消し>投げる<命令法><あなたが>荷<対格>から縁-<属格>濁った-<〜する人>

    「縁から荷を投げるな、このぼんくら!」

    崖の上の降ろし場や崖道で、年長の者が目下の者をどなりつけるときの言い方。禁止は「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数は語幹のまま(þráun)。murár は呼びかけなので、文の終わりに読点で区切って主格のまま添える。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、ここではただの不注意ではなく、「下の国を呼び寄せかねない愚かさ」をとがめる響きがある。

    ésa faronár té murár.

    読み:エーサ ファロナール テー ムラール。

    és-afaron-ártémur-ár.
    いる-<(軽いものが)>荷-<〜する人>あの<軽性>濁った-<〜する人>

    「あの運び人は間抜けだ。」

    本人のいない所での陰口。「és-+主語+述語の名詞」の文で、述語の murár は軽性の主格のまま置く。繋辞は主語の運び人(人なので軽性)に合わせて -a をとる。これを重性の éso で受けると、人を「泥の者」扱いすることになり、ずっと強い侮辱になる。指示詞 té の後ろに動詞が来ていないので、関係節の te とは紛れない。

    anórel, níla faronár té muró bróus, esós ésa él murár sórel.

    読み:アノーレル、ニーラ ファロナール テー ムロー ブロース、エソース エーサ エール ムラール ソーレル。

    anórel,níl-afaron-ártémuróbróus,esósés-aélmur-ársórel.
    昨日飲む-<(軽いものが)>荷-<〜する人>あの<軽性>濁り酒<対格>多いだからいる-<(軽いものが)><3人称単数・軽性>濁った-<〜する人>今日

    「昨日、あの運び人は濁り酒をしこたま飲んだ。だから今日のあいつは、まるで酔いどれだ。」

    崖道の宿などで交わす、くだけた噂話。muró「濁り酒」と murár の音が近いことを使った当てこすりで、ここでは「酔ってぼんやりしている者」の意味になる。時の語 anórel は場面の枠に置いて読点で区切る。esós「だから」は二つめの文の頭に置く。主語の代名詞 él をわざわざ言っているので、「あいつときたら」という強調の響きがある。

    mé níl dóulin muró, murár!

    読み:メー ニール ドーリン ムロー、ムラール!

    méníldóulinmuró,mur-ár!
    <禁止・願いの打ち消し>飲む<命令法><あなたが>もう濁り酒<対格>濁った-<〜する人>

    「もう濁り酒は飲むな、この酔っぱらいめ!」

    縁や崖道の炉ばたで、家の者が酔った身内をたしなめる言い方。相の副詞 dóulin「もう」は動詞のすぐ後ろに置き、否定と組んで「もう〜しない」の意味になる。muró と murár を並べた語呂合わせが面白がられ、決まり文句のようにも使われる。都の改まった言葉では、この当てこすりの使い方はしない。

    un nébroi, éso raumvirá tó múr.

    読み:ウン ネーブロイ、エーソ ラウンヴィラー トー ムール。

    unnébr-oi,és-oraumvirátómúr.
    内に霧-<与格>いる-<(重いものが)>噂<主格>あの<重性>濁った

    「霧の中では、あの陰口は濁っている。」

    霧期を背景にした日常的な評。un nébroi は「霧の中」と場を限定する。重性一致により、霧が下の国から湧くものとされる含みが重なり、múr は内容の根も葉なさにも転じている。

  2. 崩れた

    言葉や語形が整っておらず、訛っていること。

    na fíndan aursárai virán múran.

    読み:ナ フィンダン アウルサーライ ヴィラーン ムーラン。

    nafínd-anaursár-aivir-ánmúr-an.
    <〜ない>聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが>言葉-<対格>崩れた-<軽性・対格>

    「祖先は崩れた言葉を聞き入れない。」

    宮廷や家で、言葉づかいを戒めるときの言い方。virá「言葉」は軽性なので、形容詞は軽性・対格の -an をとって múran となる。崩れた言葉は重く、上へ昇らないという信仰が背景にある。

    víran faronárai viráis múrais senárei.

    読み:ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ムーライス セナーレイ。

    vír-anfaron-ár-aivir-áismúr-aissen-ár-ei.
    言う-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>言葉-<〜たちを>崩れた-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格>見る-<〜する人>-<与格>

    「運び人たちは目付に崩れた言葉で話す。」

    都の人が、縁の市の取引言葉について言うときの言い方。受け手の目付は与格 senárei で表す。形容詞は軽性・複数・対格の -ais の形で viráis に一致している。

解説

水や空気が濁っていることを言う語。泥を含んだ川の水、霧期の空気、混ざりものの多い地金に使う。高原では、水は段を下るごとに濁って重くなると考えられているので、下の国に近いものの性質とされる。言葉について言うと「崩れた」「訛った」の意味になる。

文法

形容詞。名詞の後ろに置き、性・数・格に一致する。

語源

múrno「腐り氷」(霧期に溶けはじめた氷)はこの語から派生したと考えられている。

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