小説
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濁った
水・空気に泥や混ざりものがあること。
na sénim sáindaran sé, éso senó némes múr.
読み:ナ セーニン サインダラン セー、エーソ セノー ネーメス ムール。
| na | sén-im | sáindar-an | sé, | és-o | senó | ném-es | múr. |
| <〜ない> | 見る-<私が> | 証文-<対格> | この<軽性> | いる-<(重いものが)> | 目<主格> | <私>-<属格> | 濁った |
「この証文は見えぬ。私の目はかすんでいる。」
年長の者が細かい字を読めないときの言い方。主節二つを接続詞なしで並べるので、あいだに区切りを入れる。senó は重性なので、繋辞は -o をとり、述語の múr「濁った」にも語尾がつかない。目がよく見えないことを、水と同じ「濁る」で言っている。
gléin þéul, múr dálor.
読み:グレーン セウル、ムール ダーロル。
| gléin | þéul, | múr | dálor. |
| 清い | 清い始まり<主格> | 濁った | 下の国<主格> |
「清きは始まり、濁れるは下の国。」
格言・詩句の形。繋辞を落とし、述語の形容詞を先に置いている。源に近いものほど清く、下るほど濁るという、川と系譜の見方を一句にまとめたもの。会話に引くと、形容詞が先頭に来る語順から格言だとわかる。
lúin brúuma réina, éso rúndo múr.
読み:ルーイン ブルーマ レーナ、エーソ ルンド ムール。
| lúin | brúum-a | réina, | és-o | rúndo | múr. |
| とき | 落ちる-<(軽いものが)> | 雨<主格> | いる-<(重いものが)> | 走り水<主格> | 濁った |
「雨が降ると、走り水は濁る。」
lúin で始まる「〜とき」の節を、主節の前に置いた文。雨 réina は軽性で、地を走る水 rúndo は重性なので、二つの節で動詞の語尾が -a と -o に分かれる。雨期に谷の流れが増水して濁るようすを言う。
mé níl ílmo múr!
読み:メー ニール イルモ ムール!
| mé | níl | ílmo | múr! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 飲む<命令法><あなたが> | 水<対格> | 濁った |
「濁った水を飲むな!」
禁止は「mé+命令法」。形容詞 múr は名詞の後ろに置き、重性・単数・対格の ílmo に一致するが、語尾はつかない。濁った水は重く病を運ぶものとされ、とくに霧期によく言われる戒め。
mé níl ílmo múr!
読み:メー ニール イルモ ムール!
| mé | níl | ílmo | múr! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 飲む<命令法><あなたが> | 水<対格> | 濁った |
「濁った水を飲むな。」
親が子どもに言う日常の禁止。mé+命令法で禁止を表す。ílmo「水」は重性o語幹なので、対格も ílmo のまま。形容詞 múr も重性・単数・対格で一致し、語尾はつかない。
tóro duléumo múr es orénos.
読み:トーロ ドゥレウモ ムール エス オレーノス。
| tór-o | duléumo | múr | es | orén-os. |
| 来る-<(重いものが)> | 下の風<主格> | 濁った | から | 縁-<属格> |
「縁から濁った下の風が上がってくる。」
霧期の前に交わされる天気の話。duléumo「下の風」は重性なので、動詞は3人称単数・重性の -o、形容詞は語尾なしの形をとる。崖の下から来る湿った風は、病を運ぶ濁ったものとされる。
mé þráun fáron es orénos, murár!
読み:メー スラウン ファーロン エス オレーノス、ムラール!
| mé | þráun | fáron | es | orén-os, | mur-ár! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 投げる<命令法><あなたが> | 荷<対格> | から | 縁-<属格> | 濁った-<〜する人> |
「縁から荷を投げるな、このぼんくら!」
崖の上の降ろし場や崖道で、年長の者が目下の者をどなりつけるときの言い方。禁止は「mé+命令法」で言い、命令法の2人称単数は語幹のまま(þráun)。murár は呼びかけなので、文の終わりに読点で区切って主格のまま添える。崖から物を投げ落とすのは禁忌なので、ここではただの不注意ではなく、「下の国を呼び寄せかねない愚かさ」をとがめる響きがある。
ésa faronár té murár.
読み:エーサ ファロナール テー ムラール。
| és-a | faron-ár | té | mur-ár. |
| いる-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | あの<軽性> | 濁った-<〜する人> |
「あの運び人は間抜けだ。」
本人のいない所での陰口。「és-+主語+述語の名詞」の文で、述語の murár は軽性の主格のまま置く。繋辞は主語の運び人(人なので軽性)に合わせて -a をとる。これを重性の éso で受けると、人を「泥の者」扱いすることになり、ずっと強い侮辱になる。指示詞 té の後ろに動詞が来ていないので、関係節の te とは紛れない。
anórel, níla faronár té muró bróus, esós ésa él murár sórel.
読み:アノーレル、ニーラ ファロナール テー ムロー ブロース、エソース エーサ エール ムラール ソーレル。
| anórel, | níl-a | faron-ár | té | muró | bróus, | esós | és-a | él | mur-ár | sórel. |
| 昨日 | 飲む-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人> | あの<軽性> | 濁り酒<対格> | 多い | だから | いる-<(軽いものが)> | <3人称単数・軽性> | 濁った-<〜する人> | 今日 |
「昨日、あの運び人は濁り酒をしこたま飲んだ。だから今日のあいつは、まるで酔いどれだ。」
崖道の宿などで交わす、くだけた噂話。muró「濁り酒」と murár の音が近いことを使った当てこすりで、ここでは「酔ってぼんやりしている者」の意味になる。時の語 anórel は場面の枠に置いて読点で区切る。esós「だから」は二つめの文の頭に置く。主語の代名詞 él をわざわざ言っているので、「あいつときたら」という強調の響きがある。
mé níl dóulin muró, murár!
読み:メー ニール ドーリン ムロー、ムラール!
| mé | níl | dóulin | muró, | mur-ár! |
| <禁止・願いの打ち消し> | 飲む<命令法><あなたが> | もう | 濁り酒<対格> | 濁った-<〜する人> |
「もう濁り酒は飲むな、この酔っぱらいめ!」
縁や崖道の炉ばたで、家の者が酔った身内をたしなめる言い方。相の副詞 dóulin「もう」は動詞のすぐ後ろに置き、否定と組んで「もう〜しない」の意味になる。muró と murár を並べた語呂合わせが面白がられ、決まり文句のようにも使われる。都の改まった言葉では、この当てこすりの使い方はしない。
un nébroi, éso raumvirá tó múr.
読み:ウン ネーブロイ、エーソ ラウンヴィラー トー ムール。
| un | nébr-oi, | és-o | raumvirá | tó | múr. |
| 内に | 霧-<与格> | いる-<(重いものが)> | 噂<主格> | あの<重性> | 濁った |
「霧の中では、あの陰口は濁っている。」
霧期を背景にした日常的な評。un nébroi は「霧の中」と場を限定する。重性一致により、霧が下の国から湧くものとされる含みが重なり、múr は内容の根も葉なさにも転じている。
崩れた
言葉や語形が整っておらず、訛っていること。
na fíndan aursárai virán múran.
読み:ナ フィンダン アウルサーライ ヴィラーン ムーラン。
| na | fínd-an | aursár-ai | vir-án | múr-an. |
| <〜ない> | 聞く-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | 言葉-<対格> | 崩れた-<軽性・対格> |
「祖先は崩れた言葉を聞き入れない。」
宮廷や家で、言葉づかいを戒めるときの言い方。virá「言葉」は軽性なので、形容詞は軽性・対格の -an をとって múran となる。崩れた言葉は重く、上へ昇らないという信仰が背景にある。
víran faronárai viráis múrais senárei.
読み:ヴィーラン ファロナーライ ヴィライス ムーライス セナーレイ。
| vír-an | faron-ár-ai | vir-áis | múr-ais | sen-ár-ei. |
| 言う-<彼らが> | 荷-<〜する人>-<〜たちが> | 言葉-<〜たちを> | 崩れた-<軽性・〜ら(古い母音交替)・対格> | 見る-<〜する人>-<与格> |
「運び人たちは目付に崩れた言葉で話す。」
都の人が、縁の市の取引言葉について言うときの言い方。受け手の目付は与格 senárei で表す。形容詞は軽性・複数・対格の -ais の形で viráis に一致している。
水や空気が濁っていることを言う語。泥を含んだ川の水、霧期の空気、混ざりものの多い地金に使う。高原では、水は段を下るごとに濁って重くなると考えられているので、下の国に近いものの性質とされる。言葉について言うと「崩れた」「訛った」の意味になる。
形容詞。名詞の後ろに置き、性・数・格に一致する。
múrno「腐り氷」(霧期に溶けはじめた氷)はこの語から派生したと考えられている。
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