小説
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段の外の者
身分の段に属さない者。干潟の人や外来の者。
ésa orenvandár naþrenár.
読み:エーサ オレンヴァンダール ナスレナール。
| és-a | orenvandár | naþrenár. |
| いる-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | 段の外の者 |
「縁商人は段の外の者だ。」
身分について説明する文。縁商人は干潟の人なので段の外にいるが、市の札を帯びて商いをしているあいだだけは、六段下りに準ずる仮の段として扱われる。naþrenár は否定の na-、þrén「段」、-ár「〜する人」からできた語で、文法上は人として軽性で受ける。
na éso þrén naþrenárei.
読み:ナ エーソ スレーン ナスレナーレイ。
| na | és-o | þrén | naþrenár-ei. |
| <〜ない> | いる-<(重いものが)> | 段<主格> | 段の外の者-<与格> |
「段の外の者には段がない。」
宮廷の礼法家がよく口にする言い方。「持つ」の動詞がないので、所有は「ある+持ち主の与格」で言う。動詞は持ち主ではなく、持たれている物 þrén(重性)に一致する。段の外の者をどう迎えるかが、いつも議論になることを踏まえた言い回し。
ésa dalorár naþrenár.
読み:エーサ ダロラール ナスレナール。
| és-a | dalorár | naþrenár. |
| いる-<(軽いものが)> | 下の国の者<主格> | 段の外の者<主格> |
「下の国の者は段の外の者である。」
礼法の書や法典の注釈に見られる、総称を言う文。dalorár を人として扱っているので、繋辞は3人称単数・軽性の -a になる。干潟の人は身分が低いのではなく、「階段に乗っていない」という考え方を言い表している。
mé gelésa naþrenár an kéumo.
読み:メー ゲレーサ ナスレナール アン ケウモ。
| mé | gel-és-a | naþrenár | an | kéumo. |
| <禁止・願いの打ち消し> | 行く-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 段の外の者<主格> | 上手 | 境の石<対格> |
「段の外の者は、境の石より上手へ行かぬこと。」
社の境などに据えた石の決まりを、当為法で記した文。当為法の -és- は強勢をもつので、語根の強勢が移って gelésa になる。an+対格で「上手へ」を表す。重性の kéumo は、対格も主格と同じ形。
異邦人
高原の外から来た、正体のわからない者。
víran dalorárai ré brúuma naþrenár es élvares.
読み:ヴィーラン ダロラーライ レー ブルーマ ナスレナール エス エルヴァレス。
| vír-an | dalorár-ai | ré | brúum-a | naþrenár | es | élvar-es. |
| 言う-<彼らが> | 下の国の者-<〜たちが> | <〜と(節)> | 落ちる-<(軽いものが)> | 異邦人<主格> | から | 天-<属格> |
「下の国の者たちは、異邦人が天から落ちてきたと言う。」
干潟の言い伝えを、高原の人が伝え聞いた形で言う文。ré の節は主節の後ろに置く。高原の世界観では、上から落ちてくる者は流れ星と同じく不吉なものとされるので、この種の話は泥の国の迷信として語られることが多い。es+属格で方向を問わない「〜から」。
na vóila naþrenár té lisáis némores.
読み:ナ ヴォイラ ナスレナール テー リサイス ネーモレス。
| na | vóil-a | naþrenár | té | lis-áis | némor-es. |
| <〜ない> | 読む-<(軽いものが)> | 異邦人<主格> | あの<軽性> | 字-<〜たちを> | <我々>-<属格> |
「あの異邦人は我々の字を読めない。」
日常の会話。時制も「できる」の語形もないので、「読まない」と「読めない」は文脈で決まる。na は動詞の直前に置く。名詞句は「名詞+指示詞」「名詞+属格」の順。
十の段のどこにも乗っていない人。崖の下の干潟の人や、外の土地から来た者を指す、宮廷と役所の改まった語。身分が低いという意味ではなく、「階段に乗っていない、扱い方のわからない人」という意味である。宮廷ではこうした者を迎えるたびに仮の段を与えるかどうかが議論になる。
torarérim naþrenáran.
読み:トラレーリン ナスレナーラン。
| torarér-im | naþrenár-an. |
| 客扱いする-<私が> | 段の外の人-ACC. |
「私は段の外の人を客扱いします。」
日常の宣言。torarér- は客人となる人物を直接目的語にとる。naþrenár「段の外の人」のような段の外の存在を迎え入れる場合、単に食事を差し出す意味を超え、接待義務と客人の権利を与える社会的手続きを示す。
名詞(軽性・子音語幹、-ár に強勢)。対 naþreráran ではなく naþrenáran、複 naþrenárai
否定の接頭辞 na- + þrén「段」+ -ár「〜する人」。na- はふつう分詞にしかつかないが、礼法の用語として名詞につけた例外的な語。「段なき者」の意。
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