小説
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ここ
話し手のいる場所。
ésim séndoi du nébro.
読み:エーシン センドイ ドゥ ネーブロ。
| és-im | sénd-oi | du | nébro. |
| いる-<私が> | ここ-<与格> | 下手 | 霧<対格> |
「私は霧の季節までここにいる。」
du+対格「〜の下手へ」は、時の名詞では「〜まで」。
lís þelán táses séndoi!
読み:リース セラーン ターセス センドイ!
| lís | þel-án | tás-es | sénd-oi! |
| 書く<命令法><あなたが> | 名前-<対格> | <あなた>-<属格> | ここ-<与格> |
「「ここにお前の名を書け。」」
下向きの命令。命令法の2人称単数はむき出しの語幹 lís。目上の人には使えず、目上には願望法3人称(aulisénde …)で頼む。名前を書くことは息を使わないので、名の禁忌には当たらない。
léim fáron séndo, ende.
読み:レーン ファーロン センド、エンデ。
| léim | fáron | séndo, | ende. |
| 置く<命令法><あなたが> | 荷<対格> | ここ | どうぞ |
「荷はここに置いてくれ、頼む。」
縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹 léim で、末尾の ende「どうぞ」が添えてある。市は段に乗らない場なので、この形でも無礼にはならない。fáron は重性名詞なので、主格と対格が同じ形になる。
léimim fáron séndoi ré luuménde ausenár ó.
読み:レーミン ファーロン センドイ レー ルーメンデ アウセナール オー。
| léim-im | fáron | sénd-oi | ré | luum-énd-e | au-sen-ár | ó. |
| 置く-<私が> | 荷<対格> | ここ-<与格> | ように | ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | <3人称単数・重性> |
「「目付殿がご覧になれるよう、荷をここに置きます。」」
縁の市で荷を検めてもらうときの言い方。ré と願望法を組み合わせると目的を表す。ここでの願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしい」という意味を表す。ó は荷を受ける重性の代名詞で、主格と対格が同じ形。
ké dúlo fáron du séndo?
読み:ケー ドゥーロ ファーロン ドゥ センド?
| ké | dúl-o | fáron | du | séndo? |
| <〜か> | 下る-<(重いものが)> | 荷<主格> | 下手 | ここ<対格> |
「荷はここへ下りてくるのか。」
店先で荷の行き先を確かめる、くだけた問い。séndo は重性o語幹の名詞として変化し、主格と対格が同じ形になる。du+対格で「(下手の)ここへ」を表す。動詞は主語の fáron(重性)に一致して dúlo になる。答えは dúlo(来る)か na dúlo(来ない)。
tóra faronár an séndo es orénos.
読み:トーラ ファロナール アン センド エス オレーノス。
| tór-a | faronár | an | séndo | es | orén-os. |
| 来る-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 上手 | ここ<対格> | から | 縁-<属格> |
「運び人が縁からここへ上ってくる。」
道筋を言う文。行き先は an+対格で「上手のここへ」と、高さを決めて言う。出どころは、方向を問わない es に属格を組み合わせて言う。時制がないので「上ってくる」とも「上ってきた」とも訳せる。
na ésa páin séndoi.
読み:ナ エーサ パイン センドイ。
| na | és-a | páin | sénd-oi. |
| <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 誰も<主格> | ここ-<与格> |
「「ここには誰もいない。」」
呼びかけに返事がないときなどの、日常の言い方。存在の és- が先頭に来て、主語 páin は軽性なので ésa になる。人が一人もいないことを言うのに数詞は使わず、na と páin だけで言う。
lúin glǘno véinor, tóran faronárai snírai séndo.
読み:ルーイン グリューノ ヴェーノル、トーラン ファロナーライ スニーライ センド。
| lúin | glǘn-o | véinor, | tór-an | faronár-ai | snír-ai | séndo. |
| とき | 凍る-<(重いものが)> | 湖<主格> | 来る-<彼らが> | 運び人-<〜たちが> | 少ない-<〜たちが> | ここ |
「湖が凍るころには、ここへ来る運び人は少なくなる。」
lúin の節は主節の前に置く。湖 véinor は地の上の水なので重性で、動詞は -o をとる。主節の主語 faronárai は軽性・複数・主格で、snírai はそれに一致する。運び人のような働き手は数えてよいので、snír で多い少ないを言ってもかまわない。凍りの頃の崖道を言う文。
nóira endríña séndoi.
読み:ノイラ エンドリーニャ センドイ。
| nóir-a | endríña | sénd-oi. |
| 眠る-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | ここ-<与格> |
「「ここで子どもが眠っている。」」
家の中で声を落とさせるときの、日常の一言。endríña は éndra「人」に指小の -íña がついてできた語で、軽性の a 語幹として変化する。
éso þúumo séndoi, na sénim tásan.
読み:エーソ スーモ センドイ、ナ セーニン ターサン。
| és-o | þúumo | sénd-oi, | na | sén-im | tás-an. |
| いる-<(重いものが)> | 濃霧<主格> | ここ-<与格> | <〜ない> | 見る-<私が> | <あなた>-<対格> |
「「ここは濃霧だ。お前が見えない。」」
霧期に、すぐそばの相手に話しかける日常の言い方。þúumo は重性なので、存在の動詞は éso になる。読点で区切って主節を二つ並べている。後半は直説法なので na で否定する。2人称の tás を使っているので、同輩か目下の相手への話し方になる。
ésa hervíña séndoi.
読み:エーサ ヘルヴィーニャ センドイ。
| és-a | hervíña | sénd-oi. |
| いる-<(軽いものが)> | 小鹿<主格> | ここ-<与格> |
「「ここに小鹿がいる。」」
狩り場で、獲物の気配を仲間に知らせる言い方。存在は「és-+主語+場所」で表す。hervíña は軽性なので、és- は3人称単数・軽性の ésa になる。
ké ésa orenvandár séndoi? na ésa, válsa.
読み:ケー エーサ オレンヴァンダール センドイ?ナ エーサ、ヴァルサ。
| ké | és-a | orenvandár | sénd-oi? | na | és-a, | váls-a. |
| <〜か> | いる-<(軽いものが)> | 縁商人<主格> | ここ-<与格> | <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 行く<〜し終えた>-<(軽いものが)> |
「「縁商人はここにいるか?」「いない。もう行ってしまった。」」
gél- を、行き先を言わずに使うと「立ち去る・いなくなる」の意味になる。時制の形がないので、géla だけで「行ってしまった」と訳せる。答えは問いの動詞を繰り返して na ésa とする。
léim fáron séndo, ende.
読み:レーン ファーロン センド、エンデ。
| léim | fáron | séndo, | ende. |
| 置く<命令法><あなたが> | 荷 | ここ | どうぞ |
「荷はここに置いてくれ、頼む。」
縁の市の取引言葉。動詞はむき出しの語幹 léim で言い、ende を添える。séndo「ここ」は格変化をしない場所の語。荷解きの場でよく聞かれる言い方である。
ésau þovríl si kailó séndoi.
読み:エーサウ ソヴリール シ カイロー センドイ。
| és-au | þovríl | si | kailó | sénd-oi. |
| いる-<双数> | 茶<主格> | と | 乾酪<主格> | ここ-<与格> |
「「ここに茶と乾酪がある。」」
客を炉端に迎えて、茶と乾酪を出すときの言い方。存在の文で、繋辞 és- が先頭に来る。単数の名詞が si で二つ並んでいるので、動詞は双数 ésau になる。双数の動詞は性を区別しないので、この文からは þovríl の性はわからない。
pórin eséla tróval séndos?
読み:ポーリン エセーラ トローヴァル センドス?
| pórin | es-él-a | tróval | sénd-os? |
| どのように | いる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | しきたり<主格> | ここ-<属格> |
「「こちらのしきたりは、どのようなものでございましょうか。」」
よその土地の年長者に、儀式のやり方を尋ねる言い方。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る形にする。疑問詞 pórin は動詞の前に出る。推量法の -él- が強勢をとるので、és- は eséla になる。
glóira aurél séndo anlúin.
読み:グロイラ アウレール センド アンルーイン。
| glóir-a | aurél | séndo | anlúin. |
| お越しになる-<(軽いものが)> | あの方<主格> | ここ | 以前に |
「あの方は、以前にもここへお越しになった。」
目上の人のことを第三者に話す文。主語の aurél「あの方」に合わせて、動詞は尊敬の補充形 glóir- を使う。副詞の anlúin も séndo「ここ」も、格語尾をつけずに文の後ろに並べる。
aurénde, séulin! séirim séndoi dórel.
読み:アウレンデ、セウリン!セーリン センドイ ドーレル。
| aurénde, | séulin! | séir-im | sénd-oi | dórel. |
| さようなら | 友 | 待つ-<私が> | ここ-<与格> | 明日 |
「「さようなら、友よ。明日ここで待っている。」」
親しい者どうしの別れ際。別れの aurénde にも「相手の息が無事に昇るように」という願いがこもるが、日常ではただの「さようなら」として使う。séir- は直説法で、時制がないので、「明日待つ」という未来の予定もこの形で言える。
léimim fáron séndoi. fláinim.
読み:レーミン ファーロン センドイ。フライニン。
| léim-im | fáron | sénd-oi. | fláinim. |
| 置く-<私が> | 荷<対格> | ここ-<与格> | 軽くなった |
「「ここに荷を置くぞ。ああ、軽くなった。」」
背負った荷を下ろしたときの、文字どおりの言い方。感謝の fláinim は、この「肩が軽くなった」という言い方から広がったとされる。重い荷を下ろすことは、信仰の上でも「軽くなる」ことと結びついている。
ké éso fenlapúl séndoi?
読み:ケー エーソ フェンラプール センドイ?
| ké | és-o | fenlapúl | sénd-oi? |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | 蒸し枝<主格> | ここ-<与格> |
「ここに蒸し枝があるか。」
汗蒸し小屋や道具場で、蒸し枝の有無を尋ねる口語的な文。存在の動詞 és- は、主語 fenlapúl が重性なので語尾が -o で受け取る。séndoi は séndo「ここ」の与格形。
éso lúuko séndoi.
読み:エーソ ルーコ センドイ。
| és-o | lúuko | sénd-oi. |
| いる-<(重いものが)> | 熱石<主格> | ここ-<与格> |
「ここに熱石がある。」
肯定の存在文。lúuko は主格として引用形そのものを用いる。
ké éso lúuko séndoi?
読み:ケー エーソ ルーコ センドイ?
| ké | és-o | lúuko | sénd-oi? |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | 熱石<主格> | ここ-<与格> |
「ここに熱石があるのか。」
存在文のはい/いいえの問い。ké は文頭に置く。
tína torár séndoi.
読み:ティーナ トラール センドイ。
| tín-a | torár | sénd-oi |
| 落ち着く-<(軽いものが)> | 客<主格> | ここ-<与格> |
「客はここに落ち着く。」
書物・地の文のような場面。人の身や心が、動揺・緊張・違和感を失ってその場に自然に立てるようになる意。tín- は慣れる対象を裸の与格で示す。séndo は副詞ではなく、sénd- の与格 séndoi を使う。
tinénde endríña séndoi.
読み:ティネンデ エンドリーニャ センドイ。
| tin-énd-e | endríña | sénd-oi |
| 落ち着く-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | ここ-<与格> |
「子どもがここに落ち着いてくれますように。」
祝福・儀礼の定型。願望法では接尾辞 -énd- が強勢を取り、語根の強勢は消えるので tinénde となる。改まった祝福では、目の前の人を3人称として受ける。tín- は慣れる対象を裸の与格で示すので、séndoi を使う。
séndoi sénim kruléndran
読み:センドイ セーニン クルレンドラン
| sénd-oi | sén-im | kruléndr-an |
| ここ-<与格> | 見る-<私が> | 人壁-<対格> |
「ここで人壁が見える。」
狭い所や広場で、人々が密集して固まっている様子を表す日常の言い方。séndoi は「ここ」の与格で、知覚文の場所を示す。krúlendra は「人壁」を表す軽性a語幹の一語で、目的語としては単数対格 krúlendran になる。
この世(中の世界)
詩や祈りで、上でも下でもない、人の生きる高原の世界を指す。
na lúuman aursárai séndo, lúin tóro nébro es orénos.
読み:ナ ルーマン アウルサーライ センド、ルーイン トーロ ネーブロ エス オレーノス。
| na | lúum-an | aursár-ai | séndo, | lúin | tór-o | nébro | es | orén-os. |
| <〜ない> | ご覧になる-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | この世<対格> | とき | 来る-<(重いものが)> | 霧<主格> | から | 縁-<属格> |
「縁から霧が上がってくるとき、祖先はこの世をご覧にならない。」
霧期を恐れる理由を語る言い方。ここでの séndo は話し手のいる場所ではなく、上(天)と下(干潟・地の底)のあいだにある、人の生きる「中の世界」を指す。祖先には「見る」の尊敬の補充形 lúum- を使う。祖先は数えないので、複数はひとまとまりの「方々」の意味になる。
lúuman aursárai séndo es élvares.
読み:ルーマン アウルサーライ センド エス エルヴァレス。
| lúum-an | aursár-ai | séndo | es | élvar-es. |
| ご覧になる-<彼らが> | 祖先-<〜たちが> | この世<対格> | から | 天-<属格> |
「祖先は天からこの世をご覧になる。」
祖先祀りの詞の一句。上の世界 élvar と、中の世界 séndo が対になる。祖先の行いには尊敬の補充形 lúum- を使う。séndo は重性なので、対格も主格と同じ形になる。
話し手のいる場所を指す場所の指示詞。名詞として格変化し、与格 séndoi で「ここで」、属格 es séndos で「ここから」となる。方向を決めない「どこへ」はないが、séndo は場所そのものが方向を決めるので、前置詞なしの対格で「ここへ」と言える(tór séndo!「ここへ来い」)。場所は地に属するので重性。
重性・o語幹。主・対 séndo、属 séndos、与 séndoi。複数はない。
近称の指示詞 sé +場所名詞を作る -ándo「〜する所」。*sé-ándo が縮んだ形。
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