éndra

品詞
名詞
意味
人
発音
[ˈendra]
読み
エンドゥラ
分野
人・親族

意味

  1. 人

    人間一般。獣や木と区別して、息をもつ人を指す。

    ésau éndra si fáron káilau.

    読み:エーサウ エンドラ シ ファーロン カイラウ。

    és-auéndrasifáronkáil-au.
    いる-<双数>人<主格>と荷<主格>乾いた-<双数>

    「人と荷は乾いている。」

    性の違う語を並べたとき、人が含まれれば形容詞は軽性にする。単数が二つなので双数。

    tóra éndra un kórvos.

    読み:トーラ エンドラ ウン コルヴォス。

    tór-aéndraunkórv-os.
    来る-<(軽いものが)>人<主格>内に倉-<属格>

    「人が倉の中から来る。」

    un+属格で「〜の中から」。

    tóra éndra es sílaraun.

    読み:トーラ エンドラ エス シーララウン。

    tór-aéndraessílar-aun.
    来る-<(軽いものが)>人<主格>から月-<双数の〜の・〜に>

    「人が二つの月のほうから来る。」

    es は属格としか組まないので、双数の属格のままでよい。

    sénim gandér te dulíþa éndra.

    読み:セーニン ガンデール テ ドゥリーサ エンドラ。

    sén-imgandértedul-íþ-aéndra.
    見る-<私が>硬木<対格><関係節>下る-<〜させる>-<(軽いものが)>人<主格>

    「私は、人が下ろす硬木を見る。」

    関係節の動詞の -a(軽性)が主語は人だと示すので、重性の要は目的語とわかる。

    ésa lisár éndra te sénim.

    読み:エーサ リサール エンドラ テ セーニン。

    és-alis-áréndratesén-im.
    いる-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>人<主格><関係節>見る-<私が>

    「書記は、私が見た人だ。」

    名詞が述語の文では、関係節のついた名詞句を述語として読む。

    éndra te sénim, ésa lisár.

    読み:エンドラ テ セーニン、エーサ リサール。

    éndratesén-im,és-alis-ár.
    人<主格><関係節>見る-<私が>いる-<(軽いものが)>書く-<〜する人・主格>

    「私が見た人は、書記だ。」

    関係節のついた名詞句を主語にしたいときは、読点で閉じて前に出す。

    lúin fléira aldár áuren es dúnos, snéiman éndrai.

    読み:ルーイン フレーラ アルダール アウレン エス ドゥーノス、スネーマン エンドライ。

    lúinfléir-aaldáráur-enesdún-os,snéim-anéndr-ai.
    ときお出ましになる-<(軽いものが)>座<主格>昇る-<〜した・〜された>から王の丘-<属格>身をかがめる-<彼らが>人-<〜たちが>

    「高き座が王の丘からお出ましになると、人々は身をかがめる。」

    都での王の行幸を言う文。単に dún と言っても、文脈から湖都の北の、王の居所がある丘を指す。fléir- は「行く」の尊敬の補充形。lúin の時の節は主節の前に置く。

    ésa þelá selvá éndres.

    読み:エーサ セラー セルヴァー エンドレス。

    és-aþeláselváéndr-es.
    いる-<(軽いものが)>名前<主格>息<主格>人-<属格>

    「名前は、その人の息そのものである。」

    書物や師の教えに出てくる格言ふうの文。名前は息の形だと考えられているので、目上の人の名、死後一年の名、霧の中の名を口にしない禁忌の理由として引かれる。書くことは息を使わないので、禁忌に当たらない。

    lúin brúuma éndra es orénos, dúlau gromó si selvá.

    読み:ルーイン ブルーマ エンドラ エス オレーノス、ドゥーラウ グロモー シ セルヴァー。

    lúinbrúum-aéndraesorén-os,dúl-augromósiselvá.
    とき落ちる-<(軽いものが)>人<主格>から縁-<属格>下る-<双数>体<主格>と魂<主格>

    「人が縁から落ちると、体も魂もともに下へ引かれていく。」

    崖から落ちて死ぬことが恐れられる理由を述べる、教えの文。単数の名詞を si で二つ並べたので、動詞は双数の dúlau になり、性を区別しない。重い体と軽い魂がそろって下るのは、高原の考えではいちばん不吉なことである。

    hóina éndra te méirim fáron élei.

    読み:ホイナ エンドラ テ メーリン ファーロン エーレイ。

    hóin-aéndrateméir-imfáronél-ei.
    帰る-<(軽いものが)>人<主格><関係節>与える-<私が>荷<対格>彼-<与格>

    「私が荷を渡した人が帰っていく。」

    関係節の中で受け手(与格)にあたる部分は穴のままにできないので、代名詞の与格 élei で埋める(再述代名詞)。人を受けるので軽性の él を使う。関係節は文の終わりまで続く。

    lúin tóro nébro, mé hál þelán éndrar.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ハール セラーン エンドラル。

    lúintór-onébro,méhálþel-ánéndr-ar.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>呼ぶ<命令法><あなたが>名前-<対格>人-<〜らの>

    「霧が来たら、人の名を呼ぶな。」

    子どもに霧期の禁忌を教えるときの言い方。lúin の節は主節の前に置き、読点で区切る。霧 nébro は重性なので、動詞は -o の形になる。禁止は mé と命令法で言う。

    mé vrín éndran!

    読み:メー ヴリーン エンドラン!

    mévrínéndr-an!
    <禁止・願いの打ち消し>またぐ<命令法><あなたが>人-<対格>

    「人をまたぐな!」

    人をまたぐのは「その人の上に立つ」ことになるので、強い無礼とされる。禁止は mé+命令法で言う。親が子をたしなめるときによく使う。

    vrína endríña gandér, na vrína éndran.

    読み:ヴリーナ エンドリーニャ ガンデール、ナ ヴリーナ エンドラン。

    vrín-aendríñagandér,navrín-aéndr-an.
    またぐ-<(軽いものが)>子ども<主格>硬木<対格><〜ない>またぐ-<(軽いものが)>人-<対格>

    「子どもは硬木はまたいでも、人はまたがない。」

    物をまたぐのはかまわないが、人をまたぐのは禁忌だという対比。動詞は主語の endríña(軽性)に一致して -a をとる。gandér は重性なので、対格に語尾がつかない。

    ké ésa éndra téndoi? na ésa éndra, ésa hérvan.

    読み:ケー エーサ エンドラ テンドイ?ナ エーサ エンドラ、エーサ ヘルヴァン。

    kéés-aéndraténd-oi?naés-aéndra,és-ahérvan.
    <〜か>いる-<(軽いものが)>人<主格>あそこ-<与格><〜ない>いる-<(軽いものが)>人<主格>いる-<(軽いものが)>大鹿<主格>

    「「「あそこに人がいるか?」「いや、人じゃない。大鹿だ。」」」

    二人の発話。「はい」「いいえ」にあたる語がないので、問いの動詞を繰り返し、na をつけて否定の答えにしている。éndra は、獣と区別した「人」を指す。人も大鹿も軽性なので、動詞はどちらも ésa になる。

    áura éndra, dúlo gandér.

    読み:アウラ エンドラ、ドゥーロ ガンデール。

    áur-aéndra,dúl-ogandér.
    昇る-<(軽いものが)>人<主格>下る-<(重いものが)>硬木<主格>

    「人は昇り、硬木は下る。」

    教えの書にある、人と物の違いを説く一句。人は軽性なので、動詞は -a をとる。硬木は重性なので、動詞は -o をとる。二つの文の動詞の語尾の違いに、「軽いものは上へ、重いものは下へ」という世界観が表れている。

    an éndrail snélo, du aursárail fléura.

    読み:アン エンドライル スネーロ、ドゥ アウルサーライル フレウラ。

    anéndr-ailsnélo,duaursár-ailfléura.
    上手人-<〜らに>屋根<主格>下手祖先-<〜らに>天の屋根<主格>

    「人の上には家の屋根、祖先の下には天の屋根。」

    雨期の詩合わせでよく引かれる、動詞のない詩句。an と du、家の屋根(重性の snélo)と天の屋根(軽性の fléura)を対にしている。人は家の屋根の下に、祖先は天の屋根の上にいる、という縦の並びを詠んでいる。

    na ráinim éndran té. ké ráines élan?

    読み:ナ ライニン エンドラン テー。ケー ライネス エーラン?

    naráin-iméndr-anté.kéráin-esél-an?
    <〜ない>面識がある-<私が>人-<対格>あの<軽性><〜か>面識がある-<あなたが><3人称単数・軽性>-<対格>

    「あの人は知らない。お前は知っているか。」

    日常の会話。二度目は代名詞の対格 élan で、前に出た人を受けている。目上の人を指すときは、代名詞を使わず役職名で言う。

    lúin sénan éndrai sílarau, gréman aursárar.

    読み:ルーイン セーナン エンドライ シーララウ、グレーマン アウルサーラル。

    lúinsén-anéndr-aisílar-au,grém-anaursár-ar.
    とき見る-<彼らが>人-<〜たちが>月-<双数>畏れる-<彼らが>祖先-<〜らの>

    「人は二つの月を仰ぐとき、祖先を畏れかしこむ。」

    lúin の節は主節の前に置く。月は星ではないので双数で言える。後半の主節では主語を言っていないが、動詞の語尾から前半と同じ人々だとわかる。畏れる対象は属格でとる。

    rainiþésan rainiþárai hémbro éndrail.

    読み:ライニセーサン ライニサーライ ヘンブロ エンドライル。

    rain-iþ-és-anrainiþár-aihémbroéndr-ail.
    知る-<〜させる>-<〜すべし>-<彼らが>師-<〜たちが>恥じる心<対格>人-<〜らに>

    「師たちは、人々に恥を知る心を教えるべし。」

    学び舎の心得を記した書の文。当為法の3人称複数。強勢は -és- に移る。教わる相手は与格の複数 -ail で示す。重性の hémbro は対格でも主格と同じ形。

    na ésa ilanrimbá ráinen éndrar, ráinan ilanárai.

    読み:ナ エーサ イランリンバー ライネン エンドラル、ライナン イラナーライ。

    naés-ailanrimbáráin-enéndr-ar,ráin-anilanár-ai.
    <〜ない>いる-<(軽いものが)>灯の数え<主格>知る-<〜した・〜された>人-<〜らの>知る-<彼らが>星読み-<〜たちが>

    「灯の数えは世の人に知られていない。知っているのは星読みたちだ。」

    灯の数えが秘儀であることを言う、一般向けの説明の文。分詞の後ろの属格 éndrar は「人々によって」の意味になる。接続詞を使わずに主節を二つ並べるので、あいだに区切りの印(読点)を打つ。ilanrimbá は ilána(灯)と rimbá(数)を合わせた複合語で、軽性である。

    lúin tóro nébro, mé virésa éndran. éso sárvo.

    読み:ルーイン トーロ ネーブロ、メー ヴィレーサ エンドラン。エーソ サルヴォ。

    lúintór-onébro,mévir-és-aéndr-an.és-osárvo.
    とき来る-<(重いものが)>霧<主格><禁止・願いの打ち消し>言う-<〜すべし>-<(軽いものが)>人-<対格>いる-<(重いものが)>禁忌<主格>

    「霧が来たら、人の名を呼ばぬこと。これは禁忌である。」

    季節の言い習わし。霧の中で名前を呼ぶと、下の国にその名前を聞かれるとされる。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。当為法は mé で否定し、主語を言わないときは一般の人が主語になるので、軽性の形をとる。vír-「言う」は人の対格をとると「名を呼ぶ」の意味になる。最後の文は、存在の és- と重性の sárvo で「禁忌である」と言う。

    voilélan éndrai dulúines sóndelan sé.

    読み:ヴォイレーラン エンドライ ドゥルーイネス ソンデラン セー。

    voil-él-anéndr-aidulúin-essóndel-ansé.
    読む-<〜だろう>-<彼らが>人-<〜たちが>行く末-<属格>書物-<対格>この<軽性>

    「行く末の人々が、この書物を読むだろう。」

    書物の序や詩に見られる言い回し。属格 dulúines を「人々」の後ろに置いて「後の世の人々」と言う。名詞句の中では、名詞のすぐ後ろに属格、そのあとに指示詞 sé が来る。

    lúin tóra reinálva, lísan éndrai.

    読み:ルーイン トーラ レイナルヴァ、リーサン エンドライ。

    lúintór-areinálva,lís-anéndr-ai
    とき来る-<(軽いものが)>雨期<主格>書く-<彼らが>人-<〜たちが>

    「雨期が来ると、人々は書きものをする。」

    雨期は家にこもって書を写し、詩を作る季節とされる。そのことを述べた一般的な文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。reinálva は雨(上から来るもの)に属する季節なので軽性で、動詞は -a で一致する。

    na rainiþíre kréva ó, na ráina éndra ó sarénei.

    読み:ナ ライニシーレ クレーヴァ オー、ナ ライナ エンドラ オー サレーネイ。

    narainiþ-ír-ekrévaó,naráin-aéndraósarén-ei.
    <〜ない>教える-<もし〜なら>-<(軽いものが)>練習<主格><3人称単数・重性・対格><〜ない>知る-<(軽いものが)>人<主格><3人称単数・重性・対格>本番-<与格>

    「練習でできないことは、本番でもできない。」

    【既存の用例との照合】既存の用例と比べて、次の点が一致していることを確かめました。 - kréva「練習」は語根に強勢のあるa語幹です(対格は kréva-n)。ここでは主格のまま主語に使っています。 - 「教える」は使役形 rainíþ- です(rainiþ-énd-e、rain-íþ-a と同じ語)。 - 否定の na は動詞の直前に置きます。 - 仮定法の節は主節の前に置き、接続詞は使いません(toríro nébro…, na senéimor… と同じ型)。 - 目的語の ó は 3SG.HV.ACC とグロスします。 直すべき食い違いはなかったので、訳は変えていません。 【言い換え】辞書には「できる」にあたる語がありません。そこで ráin-「知る・心得ている」で言い換えました。後半は「人は本番でそれを心得ていない」になります。前半は同じ動詞の使役形 rainíþ-「教える(=知らせる)」を使い、「練習が身につけさせないなら」としました。こうすると、「練習で身につかないものは、本番でも身につかない」という元の意味が保てます。 【構文】仮定法の3人称単数・軽性は -íre です。強勢が -ír- に移るので、-íþ- の強勢は消えます(rainiþíre)。 【一致】 - 前半の主語 kréva は軽性a語幹なので、語尾は -e(仮定法・軽性)になります。 - 後半の主語 éndra「人」は、一般の人を指します。前半とは主語が違うので、省かずに言いました。人なので軽性で、語尾は -a です。 【目的語】目的語の枠は空けられません。どちらの節にも、重性の代名詞 ó(対格)「それ(しなければならない事柄)」を置きました。受け手の「人に」は、言わなくても文が成り立つので省いています。 【法】帰結の節は格言で、一般に成り立つことを言っています。そのため推量法ではなく、直説法で言い切りました。 【「でも」】「も」にあたる小辞は辞書にありません。同じ動詞(ráin-/rainíþ-)と同じ代名詞 ó を前後に並べた対句にして、「同じく〜ない」の響きを出しました。

    na klonéra unlóur éndra.

    読み:ナ クロネーラ ウンロール エンドラ。

    naklonér-aunlóuréndra.
    <〜ない>膝が抜けてよろける-<(軽いものが)>まだ人<主格>

    「その人はまだよろけない。」

    日常の否定文。否定の小辞 na は動詞の直前に置き、副詞 unlóur は動詞の直後に置く。未完了の動詞と組んで「まだ〜しない」を表す。

    bróla éndra monþór.

    読み:ブローラ エンドラ モンソール。

    bról-aéndramonþór
    作る-<(軽いものが)>人<主格>壁<対格>

    「人は壁を作る。」

    動作文。重性名詞 monþór は単数対格で主格と同形になるため、語順 VSO が目的語を示す手がかりになる。動詞 bról-a は主語 éndra(軽性)に一致する。

    lúin áuran ombára ilánai, þrínan éndrai.

    読み:ルーイン アウラン オンバーラ イラーナイ、スリーナン エンドライ。

    lúináur-anombárailán-ai,þrín-anéndr-ai.
    とき昇る-<彼らが>十灯-<〜たちが>目を覚ます-<彼らが>人-<〜たちが>

    「十の灯が昇ると、人々は目を覚ます。」

    暦や儀礼の詞に似た書面の文。lúin 節は主節の前に置く。ombára ilánai は「十の灯」という星座名で、古い形 ombára が名前にだけ残っている。「十の灯」は通常の星の数えではなく、星を数えている意味にはならない。3複数の動詞は性を区別しない。

    lúin héla éndra, éso heló klér.

    読み:ルーイン ヘーラ エンドラ、エーソ ヘロー クレール。

    lúinhél-aéndra,és-ohelóklér.
    とき座る-<(軽いものが)>人<主格>居る-<(重いものが)>尻<主格>冷たい

    「人が座ると、尻は冷たい。」

    暮らしの心得や書物のような場面を想定した文。lúin で「〜とき」節を導き、節内も動詞を先頭に置いた VSO とする。heló は重性単数の主語で、klér はそれに一致して単数主格形のまま。

    anlúin, máinan éndrai hégro bóules.

    読み:アンルーイン、マイナン エンドライ ヘーグロ ボーレス。

    anlúin,máin-anéndr-aihégrobóul-es.
    昔食べる<〜し終えた>-<彼らが>人-<〜たちが>団子<対格>どんぐり-<属格>

    「昔、人々はどんぐり団子を食べた。」

    歴史的な過去は完遂相の直説法で表す。hégro bóules は熟語的にどんぐり団子を指す。

    buldúlan aursárai éndrais

    読み:ブルドゥーラン アウルサーライ エンドライス

    buldúl-anaursár-aiéndr-ais
    根を下ろす-<彼らが>祖先-<〜たちが>人-<〜たちを>

    「祖先たちが、人々の根となる。」

    儀礼や系譜の唱えに用いる句。主語 aursárai は軽性複数で、動詞は 3人称複数 -an をとる。目的語 éndrais は軽性複数の対格。人数を表すには数詞や双数を避け、複数形だけで表す。比喩的な主語が人を支える基盤になるという意味。

    vrunkríla éndra fúnel an nébroi

    読み:ヴルンクリーラ エンドラ フーネル アン ネーブロイ

    vrunkríl-aéndrafúnelannébr-oi
    ほどく-<(軽いものが)>人<主格>綱<対格>上手霧-<与格>

    「人は霧の前に綱をほどく。」

    主語 éndra は軽性単数なので動詞は3人称単数軽性の語尾 -a をとる。前置句 an nébroi は「霧の前に」という時間の句。

    sán éndrai eulérenai es némores.

    読み:サーン エンドライ エウレーレナイ エス ネーモレス。

    sánéndr-aieuléren-aiesnémor-es.
    いる<彼らが>人-<〜たちが>流れの違う-<〜たちが>から<我々>-<属格>

    「人々は我々とは違う(身内ではない)。」

    人を指して euléren を使うと、単に性質が違うのではなく、「別の流れ」に属する、つまり身内でないという冷ややかな意味になる。es némoresは「我々から/我々の身内から」。

    flínim viráis te na lísa éndra.

    読み:フリーニン ヴィライス テ ナ リーサ エンドラ。

    flín-imvir-áistenalís-aéndra.
    受け入れがたいと思う-<私が>言葉-<〜たちを><関係節><〜ない>書く-<(軽いものが)>人<主格>

    「人々が書き残さない言葉は、受け入れがたい。」

    帳場や書の文脈で、書き残されない言葉を不当・不自然とみなす言い方。主文の目的語は軽性複合語viráの複対形viráis。関係節はteで導かれ、te句では関係の要となる目的語の空白をそのまま空ける。不定の一般的主語としてéndraを主格に置き、関係節内の動詞lís-aはその軽性の主語に一致する。teは無強勢で、指示詞の強勢あるtéと転写上は区別される。

    dulþóla éndra selván nébroi.

    読み:ドゥルソーラ エンドラ セルヴァーン ネーブロイ。

    dulþól-aéndraselv-ánnébr-oi.
    息を伏せ殺す-<(軽いものが)>人<主格>息-<対格>霧-<与格>

    「人は霧の中で息を伏せ殺す。」

    習俗や一般の行為について記す直説法。総称的な主語「人」を軽性の単数として受け、無時制で習慣的な行為を表す。目的語の「息」と場所の与格が文の後半に続く。

    dulráuna éndra lundéi

    読み:ドゥルラウナ エンドラ ルンデー

    dulráun-aéndralund-éi
    流される-<(軽いものが)>人<主格>歌-<与格>

    「人は歌の流れに身を預ける。」

    祭や夜の語り物で、長い歌に聞き手が乗せられる場面を示す比喩用法。主語 éndra は総称として単数扱いする。lundéi は与格で、流れる媒体としての歌を示す。

  2. 他人・世間の人

    不特定の誰か、世間の人々。複数 éndrai は「人々・世の人」の意味で使う。

    víra éndra ré tóro nébro es dáloros.

    読み:ヴィーラ エンドラ レー トーロ ネーブロ エス ダーロロス。

    vír-aéndrarétór-onébroesdálor-os.
    言う-<(軽いものが)>世間の人<主格><〜と(節)>来る-<(重いものが)>霧<主格>から下の国-<属格>

    「世の人は、霧は下の国から来ると言う。」

    言い伝えを紹介するときの決まった言い方。éndra を、特定の誰かではない主語として使うと、「世の人」「人は」という意味になる。ré の後ろの節では、主語の霧 nébro が重性なので、動詞は -o をとる。

    mé vír sérin, findéla éndra.

    読み:メー ヴィール セーリン、フィンデーラ エンドラ。

    mévírsérin,find-él-aéndra.
    <禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>このように聞く-<〜だろう>-<(軽いものが)>他人<主格>

    「そんなことを言うな、人に聞かれるぞ。」

    目下の者や身内をたしなめるときの言い方。後半は推量法で、「誰かが聞くだろう」という意味になる。ここの éndra は特定の人ではなく、不特定の他人を指す。

解説

人間一般を指すいちばん基本の語。身分や性別、年齢を問わず「人」を表す。軽性の名詞の代表で、高原の人々にとって、人は上へ昇る息をもつ「軽いもの」である。目上の人をこの語で指すのは素っ気なく、ふつうは役職名や座名を使う。人を重性の一致(動詞の -o など)で受けると、強い侮辱になる。人数を数えるときは目下の者にかぎって数詞をつけられるが、税や兵役では人ではなく「炉」を数える。

文法

名詞(軽性・a語幹、強勢は語根)。対 éndran、属 éndres、複 éndrai

語源

古高原語 *éndra から。森の言葉でも同じ形で使われる。

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