小説
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歌う
節をつけて声に出して歌う。荷担ぎ歌、子守唄、仕事歌などに使う。
ésa kraselvá un lundéi.
読み:エーサ クラセルヴァー ウン ルンデー。
| és-a | kraselvá | un | lund-éi |
| いる-<(軽いものが)> | 割れ息<主格> | 中に | 歌-<与格> |
「歌の中にしわがれ声がある。」
炉ばたでの日常の存在文。un+与格で「〜の中に」。kraselvá は軽性名詞なので、動詞は3人称単数・軽性の és-a をとる。
findíþim lundán endríñei.
読み:フィンディーシン ルンダーン エンドリーニェイ。
| find-íþ-im | lund-án | endríñ-ei. |
| 聞く-<〜させる>-<私が> | 歌-<対格> | 子ども-<与格> |
「子どもに歌を聞かせる。」
家庭の日常。主語の代名詞は省略される。lundán は聞かせる内容、endrīñei は受け手。受け手が聞くことを目的に言葉を送るので、意味2の「聞かせる」が自然に出る。
lúnda faronár lundáis aurándos
読み:ルンダ ファロナール ルンダイス アウランドス
| lúnd-a | faronár | lund-áis | auránd-os |
| 歌う-<(軽いものが)> | 運び人<主格> | 歌-<〜たちを> | 社-<属格> |
「運び人が社の歌を歌う。」
社で歌われる歌の場面。faronár は単数の主語で、動詞は軽性単数一致 -a をとる。aurándo は重性o語幹名詞で、属格は -os。
lúnda flíva lundán
読み:ルンダ フリーヴァ ルンダーン
| lúnd-a | flíva | lund-án |
| 歌う-<(軽いものが)> | 鳥<主格> | 歌-<対格> |
「鳥が歌っている。」
鳥の声に使う例。主語は軽性の単数なので動詞は -a、目的語は軽性単数対格 lundán。
dulráuna éndra lundéi
読み:ドゥルラウナ エンドラ ルンデー
| dulráun-a | éndra | lund-éi |
| 流される-<(軽いものが)> | 人<主格> | 歌-<与格> |
「人は歌の流れに身を預ける。」
祭や夜の語り物で、長い歌に聞き手が乗せられる場面を示す比喩用法。主語 éndra は総称として単数扱いする。lundéi は与格で、流れる媒体としての歌を示す。
fíndim kraselván, lúndin krúndo.
読み:フィンディン クラセルヴァーン、ルンディン クルンド。
| fínd-im | kraselv-án, | lúnd-in | krúndo. |
| 聞く-<私が> | 裂けた声-<対格>, | 歌う-<〜して・〜く> | 荷担ぎ歌<対格> |
「荷担ぎ歌を歌いながら、裂けた声を聞く。」
荷担ぎ歌を歌い続ける日常場面。主節と副動詞の主語は同じ一人称。krúndo は重性o語幹の単数対格で、主格 krúndo に同じ。
(鳥が)さえずる
鳥が節のある声で鳴く。ふくろうの夜の声のように、節を感じさせない鳴き声には使わない。
lúnda flíva.
読み:ルンダ フリーヴァ。
| lúnd-a | flíva |
| さえずる-<(軽いものが)> | 鳥<主格> |
「鳥がさえずっている。」
lúnd- の自動詞用法。主語 flíva は軽性なので、動詞は3人称単数軽性の -a を受ける。意味2では、節のある鳥の声にだけ使い、ふくろうのような節の感じられない鳴き声には用いない。
口ずさむ
詞の意味を気にせず、節だけを小声でなぞる。詞がはっきりしない歌や、意味のわからない歌の一節を口にするときにも使う。
na lúndim dóulin.
読み:ナ ルンディン ドーリン。
| na | lúnd-im | dóulin |
| <〜ない> | 口ずさむ-<私が> | もう |
「もう口ずさんでいない。」
意味3は目的語を伴わない自動詞的にも使える。否定の na は動詞の直前に、相の副詞 dóulin は動詞の直後に置く。
lúndim krúndo.
読み:ルンディン クルンド。
| lúnd-im | krúndo |
| 口ずさむ-<私が> | 荷担ぎ歌<対格> |
「荷担ぎ歌を口ずさんでいる。」
krúndo は重性o語幹で、単数対格は主格 krúndo と同形。荷担ぎ歌を目的語にとるときも krúndo の形を変える。意味3では、詞を正確に唱える lóim- と異なり、節をなぞるだけのニュアンスを含む。
節(旋律)をつけて声に出して歌うこと。運び人の荷担ぎ歌、子守唄、畑や機織りの仕事歌、炉ばたの歌など、暮らしの中で歌う場面に広く使う。lóim-「唱える」とは使い分ける。lóim- は、決まった韻律と語形の詞を整えて声に出すことで、言葉そのものを祖先に届けるのが目的である(森の巫の伐り出しの詞、系譜の唱え、宮廷の詩の朗唱など)。lúnd- は、言葉よりも節と拍子に重きを置く。歌い手が節を崩しても、詞を替えてもかまわない。そのため都の人の感覚では、lúnd- は縁や村の、行の終わりで韻を踏む(脚韻の)歌と結びついている。宮廷の詩を lúnd- で言うと「節をつけて崩した」という軽い響きが出るので、改まった場では詩について lóim- か virér- を使う。ただし音そのものは上へ昇るものとされているので、歌うことが卑しいわけではない。母が子に歌う子守唄は、縁でも都でも lúnd- で言う。
子音語幹の動詞。自動詞として「歌う」、他動詞として歌や詞を対格にとる(lúnda faronár lundán「運び人が歌を歌う」)。聞かせる相手は与格で言う(lúnda líura endríñei「女が子に歌って聞かせる」)。完了語根は lóund-(u→ou)、命令法2単は lún(語末の nd が n に削られる)、2双は lundáu、2複は lúndir。分詞は lúnden。敬語の接頭辞は規則どおりで、aulúnd-「お歌いになる」、dulúnd-「歌わせていただく」となる。くだけた話し方では3単 lúnda が lúnd になり、命令形 lún とはっきり聞き分けられなくなる。
古高原語から受け継いだ語根。口を閉じて節をなぞる「ルン」というハミングをまねた擬音から来たと考えられている。派生語に lundá「歌」(-á:軽いもの)と lundár「歌い手」(-ár:〜する人)がある。日本語話者は l と r を聞き分けにくいので、rúndo「走り水」とまぎれやすい。
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