él

品詞
代名詞
意味
彼
発音
[ˈel]
読み
エル
分野
代名詞・指示詞・疑問詞

意味

  1. 彼

    軽性の3人称単数(人・獣・言葉など)を指す代名詞。関係節の中の再述代名詞にもなる。

    hóina éndra te méirim fáron élei.

    読み:ホイナ エンドラ テ メーリン ファーロン エーレイ。

    hóin-aéndrateméir-imfáronél-ei.
    帰る-<(軽いものが)>人<主格><関係節>与える-<私が>荷<対格>彼-<与格>

    「私が荷を渡した人が帰っていく。」

    関係節の中で受け手(与格)にあたる部分は穴のままにできないので、代名詞の与格 élei で埋める(再述代名詞)。人を受けるので軽性の él を使う。関係節は文の終わりまで続く。

    lúin tóra senár, sénim élan.

    読み:ルーイン トーラ セナール、セーニン エーラン。

    lúintór-asen-ár,sén-imél-an.
    とき来る-<(軽いものが)>見る-<〜する人>見る-<私が>彼-<対格>

    「目付が来たとき、私は彼を見かけた。」

    日常の会話。主語の代名詞は動詞の語尾でわかるので言わない。目的語の代名詞は省けないので、対格の élan を置く。「〜とき」の節は lúin で始めて、主節の前に置く。時制はないので、文脈によって「見る」とも「見た」とも訳せる。

  2. あの・例の

    関係節の te の前で、指示詞 té の代わりに名詞の後ろに置き、その名詞を指し示す。名詞の格に一致して変化する。

    tóra orenvandár él te sénim anórel.

    読み:トーラ オレンヴァンダール エール テ セーニン アノーレル。

    tór-aorenvandáréltesén-imanórel.
    来る-<(軽いものが)>縁商人<主格>あの<関係節>見る-<私が>昨日

    「昨日見かけた、あの縁商人が来る。」

    縁の市での会話。主語の orenvandár が主格なので、él も主格の形(語尾なし)。anórel は関係節の中に入っている(関係節は文の終わりまで続く)。目的語が抜けた穴は空けたままにする。

    méirim sáindaran lisárei élei te tóra.

    読み:メーリン サインダラン リサーレイ エーレイ テ トーラ。

    méir-imsáindar-anlis-ár-eiél-eitetór-a.
    与える-<私が>証文-<対格>書く-<〜する人>-<与格>あの-<与格><関係節>来る-<(軽いものが)>

    「やって来た例の書記に、証文を渡す。」

    軽性の指示詞 té は関係節の te の前に置けない。そのため、代わりに él を「あの・例の」の意味で名詞の後ろに置く。この él は指示詞と違って格変化し、ここでは lisárei に合わせて与格の élei になる。関係節の主語は抜けたまま空けておく。

解説

3人称単数・軽性の人称代名詞。人、鳥獣、言葉など軽性のものを指し、②型の語尾で格変化する(対 élan、属 éles、与 éles ではなく élei)。複数は élai。重性のものは ó で指す。関係節の中で与格・属格などの穴を埋める再述代名詞としても使う。また、関係節を導く te の前では、同じ音の重なりを嫌って軽性の指示詞 té を置けないため、代わりに él を名詞の後ろに置いて「あの・例の」の意味を表す。この用法でも名詞の格に合わせて変化する(senáran élan te…)。

そのほかの用例

gloiréla aulisár es orénos?

読み:グロイレーラ アウリサール エス オレーノス?

gloir-él-aau-lis-áresorén-os
お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>から縁-<属格>

「書記の方は縁からお越しになったのでしょうか。」

目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る形にする。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。強勢が -él- に移るので、語根の ´ は消える。

du pó fleiréla ausenár?

読み:ドゥ ポー フレイレーラ アウセナール?

dupófleir-él-aau-sen-ár?
下手何<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「目付殿は、下手のどちらへお出ましになるのでしょうか。」

上向きの問い。ké を使わず推量法で尋ね、相手は役職名+au- の3人称で言う。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、du pó「下手の何へ」と前置詞句ごと文頭に出す。東西なら or pó・vel pó と言う。

tóra senár él te lísim sáindaran élei.

読み:トーラ セナール エール テ リーシン サインダラン エーレイ。

tór-asen-áréltelís-imsáindar-anél-ei.
来る-<(軽いものが)>見る-<〜する人><3人称単数・軽性><関係節>書く-<私が>証文-<対格><3人称単数・軽性>-<与格>

「私が証文を書いてやる、あの目付が来る。」

与格にあたる部分は、関係節の中で代名詞 élei「その人に」で埋める(再述代名詞)。軽性の「あの」té は関係節の te の前に置けないので、代名詞 él を「あの・例の」の意味で置く。この él は名詞の格に一致する。tóra senár té, lísim sáindaran élei. と、強勢のある té の後ろで区切ると、「あの目付が来る。私はその人に証文を書く」という二つの文になる。書き言葉では te と té は同じ字だが、主節を二つ並べるときはかならず区切りの印を打つ。区切りがなければ関係節と読む。

duliþíre kelár fáron es orénos, toriþéla dálor.

読み:ドゥリシーレ ケラール ファーロン エス オレーノス、トリセーラ ダーロル。

dul-iþ-ír-ekel-árfáronesorén-os,tor-iþ-él-adálor.
下る-<〜させる>-<もし〜なら>-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>荷<対格>から縁-<属格>来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>下の国<対格>

「樵が縁から荷を落とせば、下の国を呼び寄せることになろう。」

条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作り、主節の前に置く。帰結の節は推量法。後半では主語を言っていないが、動詞の語尾から、前半と同じ樵が主語だとわかる。崖から物を落としてはいけない、という禁忌の説明。

léisin sáindaran, méirim élan senárei.

読み:レーシン サインダラン、メーリン エーラン セナーレイ。

léis-insáindar-an,méir-imél-ansen-ár-ei.
書く<〜し終えた>-<〜して・〜く>証文-<対格>与える-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

「証文を書き終えて、それを目付に渡す。」

完了の語根+-in で「〜し終えて」。主語は後ろの動詞と同じ(私)。 副動詞の句と主節は別の文として数えるので、主節の目的語は代名詞 élan で置く。

anórel, an kórvoi, léisin sáindaran, méira lisár élan senárei.

読み:アノーレル、アン コルヴォイ、レーシン サインダラン、メーラ リサール エーラン セナーレイ。

anórel,ankórv-oi,léis-insáindar-an,méir-alis-árél-ansen-ár-ei.
昨日上手倉-<与格>書く<〜し終えた>-<〜して・〜く>証文-<対格>与える-<(軽いものが)>書く-<〜する人><3人称単数・軽性>-<対格>見る-<〜する人>-<与格>

「昨日、倉の北側で、証文を書き終えて、書記はそれを目付に渡した。」

場面の枠は「時 → 場所 → -in の句」の順。それぞれ読点で区切る。「それを」は軽性の証文を受けるので élan。

auelénde autorár aldárei sé.

読み:アウエレンデ アウトラール アルダーレイ セー。

au-el-énd-eau-tor-áraldár-eisé.
<お〜になる・御〜>-座る-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-来る-<〜する人>座-<与格>この<軽性>

「お客人には、この座にお座りいただきたく存じます。」

客を上座へ招くときの改まった言い方。目の前の相手を2人称で呼ばず、au- をつけた名詞の3人称で言い、願望法で頼む。au- と h- がくっつくと h が落ちて auél- になる。指示詞 sé は格変化しない。

toríro nébro, na elþéla ilána faronáres.

読み:トリーロ ネーブロ、ナ エルセーラ イラーナ ファロナーレス。

tor-ír-onébro,naelþ-él-ailánafaron-ár-es.
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>燃える-<〜だろう>-<(軽いものが)>灯<主格>荷-<〜する人>-<属格>

「霧が上がってくれば、運び人の灯もともらなくなるだろう。」

崖道でよく聞かれる嘆き。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作る。霧 nébro は重性なので、動詞は重性の -o をとる。帰結の節は推量法で、否定の na を動詞の直前に置く。ilána は「夜にともる明かり」の意味で、属格の faronáres「運び人の」が後ろからかかる。

aldanéla aulisár aldárei?

読み:アルダネーラ アウリサール アルダーレイ?

aldan-él-aau-lis-áraldár-ei?
おわす-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>座-<与格>

「書記の方は、お席においででしょうか。」

目上の人の居場所を尋ねる丁寧な言い方。目上の人については ké を使わず、推量法で推し量る形にする。場所は前置詞なしの与格 aldárei で言う。強勢は推量法の -él- に移る。

dúla faronár es orénos. mé vír þelán éles!

読み:ドゥーラ ファロナール エス オレーノス。メー ヴィール セラーン エーレス!

dúl-afaronáresorén-os.mévírþel-ánél-es!
下る-<(軽いものが)>運び人<主格>から縁-<属格><禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

「運び人が縁から下りた(落ちて死んだ)。その名を口にするな。」

崖から落ちて死ぬことは、いちばん恐れられる死である。そのため brúum-「落ちる」とは言わず、dúl-「下る」で遠回しに言う。高原語には時制がないので、dúla は文脈によって「下りた」の意味になる。死後一年は死者の名を口にしない禁忌があるので、すぐ後に禁止の文が続く。

aurénde selvá éles.

読み:アウレンデ セルヴァー エーレス。

aur-énd-eselváél-es.
昇る-<〜しますように>-<(軽いものが)>魂<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「その魂が昇りますように。」

火葬で煙が昇るのを見送るときの祈り。願望法の3人称単数・軽性は -énde で終わる。挨拶の aurénde selvá!「ごきげんよう」も同じ形で、もとは相手の息(魂)が昇ることを願う言葉である。

ésa pélsa sé gléin, táula kelár pelsó éles.

読み:エーサ ペルサ セー グレーン、タウラ ケラール ペルソー エーレス。

és-apélsaségléin,tául-akel-árpelsóél-es.
いる-<(軽いものが)>脂の木<主格>この<軽性>清い取る-<(軽いものが)>伐る-<〜する人・主格>樹脂<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

「この脂の木は清い。樵はその樹脂を採る。」

立ち木から樹脂を採る話。立ち木なので、pélsa を受ける繋辞も代名詞も軽性の形になる(ésa、éles)。樹脂 pelsó は重性o語幹の名詞で、主格と対格が同じ形になる。主節を二つ並べるので、あいだに区切りの印を打つ。

ké toréla faronár dórel?

読み:ケー トレーラ ファロナール ドーレル?

kétor-él-afaron-árdórel?
<〜か>来る-<〜だろう>-<(軽いものが)>荷-<〜する人>明日

「運び人は明日来るだろうか。」

同輩どうしの問い。時制の語形がないので、確かでない未来のことは推量法で言う。強勢は推量法の -él- に移り、語根の ´ は消える(tóra → toréla)。faronár は fáron「荷」に -ár「〜する人」がついた語。

na gloiréla aulisár sórel.

読み:ナ グロイレーラ アウリサール ソーレル。

nagloir-él-aau-lis-ársórel.
<〜ない>お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>今日

「書記の方は、今日はお越しにならないでしょう。」

推量法の否定にも na を使う。強勢は推量法の -él- に移るので、語根 glóir- の ´ は消える。glóir- は「来る」の尊敬の補充形で、目上の人の動作を言うときに使う。時を表す sórel は文末に置く。

or pó fleiréla aulisár dórel?

読み:オル ポー フレイレーラ アウリサール ドーレル?

orpófleir-él-aau-lis-árdórel?
日の出側何<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>明日

「書記の方は、明日は日の出側のどちらへお出ましになるのでしょうか。」

上向きの問い。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法 -él- で推し量る形で尋ねる。方向を決めない「どこへ」はないので、or pó「日の出側の何へ」と前置詞句ごと文頭に出す。推量法の接尾辞が強勢をとるので、語根の ´ は消える。

vírim ré torélo nébro dórel.

読み:ヴィーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。

vír-imrétor-él-onébrodórel.
言う-<私が><〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

「明日は霧が来るだろう、と私は言っておく。」

ré は「〜と」の節を導き、主節の後ろに置く。ré の後ろの節は推量法のまま保たれる。主語の霧 nébro が重性なので、動詞の語尾は -o。

luuméla aulisár nébro?

読み:ルーメーラ アウリサール ネーブロ?

luum-él-aau-lis-árnébro?
ご覧になる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>霧<対格>

「書記の方は、霧をご覧になったでしょうか。」

推量法を使った上向きの問い。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る。強勢が -él- に移るので、語根の ´ は消える。霧 nébro は重性o語幹なので、主格と対格が同じ形になる。霧期の始まりを確かめる問いとして使われる。

pá liséla sáindaran?

読み:パー リセーラ サインダラン?

pális-él-asáindar-an?
誰<主格>書く-<〜だろう>-<(軽いものが)>証文-<対格>

「誰が証文を書くのだろう?」

独り言のように尋ねる文。疑問詞 pá を文頭に出し、動詞を推量法にして、ためらいや思案を表している。強勢は推量法の -él- に移る。

an pó fleiréla aurél?

読み:アン ポー フレイレーラ アウレール?

anpófleir-él-aaurél?
上手どこ<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)>あの方

「あの方は、上手のどちらへお出ましになるのでしょうか。」

目上の人の行き先を尋ねる、上向きの問い。高原語には方向を決めない「どこへ」がないので、an pó「上手のどこへ」と前置詞句ごと文頭に出す。ké は使わず、推量法で推し量る形にする。fléir- は「行く」の尊敬の補充形で、強勢は推量法の -él- に移る。

aurélan ombára ilánai dórel.

読み:アウレーラン オンバーラ イラーナイ ドーレル。

aur-él-anombárailán-aidórel.
昇る-<〜だろう>-<彼らが>十灯-<〜たちが>明日

「明日、十の灯が昇るだろう。」

星読みが年の始まりを告げるときの言い方。ombára は星座名の中にだけ残る古い形の「十」で、「そろった・満ちた」という意味を帯びる。格変化はせず、複数の ilánai を前から飾る。ilánai は a語幹 ilána の複数主格で、語根 ilán- に軽性の複数主格の語尾 -ai がついた形。動詞の前に出られる語は限られているので、時を表す dórel は文末に置く。確かでない未来なので推量法を使う。

sáindaran pél luuméla ausenár?

読み:サインダラン ペール ルーメーラ アウセナール?

sáindar-anpélluum-él-aau-sen-ár?
証文-<対格>どのご覧になる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「目付殿は、どの証文をご覧になるのでしょうか。」

上向きの問い。ké は使わず、推量法で推し量る形にする。尊敬の補充形 lúum- に推量法の -él- がつくので、強勢が接尾辞に移る。疑問の名詞句 sáindaran pél は文頭に出す。

plúin gloiréla aulisár?

読み:プルーイン グロイレーラ アウリサール?

plúingloir-él-aau-lis-ár?
いつお越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>

「書記の方はいつお越しになるのでしょうか。」

目上の人の予定を尋ねる、上向きの問い。疑問詞は文頭に残し、動詞は推量法にして推し量る形にする。「来る」には尊敬の補充形 glóir- を使う。強勢は推量法の -él- に移る。目上の人には、ké を使った問いや2人称の問いを避ける。

rimbéla senár sénþar sáindarar dórel.

読み:リンベーラ セナール センサル サインダラル ドーレル。

rimb-él-asen-ársénþarsáindar-ardórel.
数える-<〜だろう>-<(軽いものが)>見る-<〜する人>百証文-<〜らの>明日

「目付は明日、百通の証文を数えるだろう。」

sénþar は名詞として働くので、数えるもの(証文)を複数属格でとる。sáindar は軽性なので、複数属格は -ar。未来のことは推量法で言う。強勢が -él- に移るので、語根の強勢は消える。

auelénde torár an hóum.

読み:アウエレンデ トラール アン ホーン。

au-el-énd-etoráranhóum.
<お〜になる・御〜>-座る-<〜しますように>-<(軽いものが)>客<主格>上手炉<対格>

「お客人には、炉の上手へお座りいただきたく存じます。」

家の主が客を上座へ招く、改まった言い方。炉の北側(上手)が一段高い上座なので、an+対格の an hóum「炉の上手へ」で上座を指す。hóum は重性なので、対格も主格と同じ形になる。尊敬の接頭辞 au- が h で始まる語根につくと、h が落ちる(au-hél- → auél-)。目上の客には2人称を使わず、願望法の3人称で頼む。

méira houmár tambór faronárei, ré eséndo gromó éles krán.

読み:メーラ ホウマール タンボール ファロナーレイ、レー エセンド グロモー エーレス クラーン。

méir-ahoumártambórfaronár-ei,rées-énd-ogromóél-eskrán.
与える-<(軽いものが)>家の主<主格>雑穀<対格>運び人-<与格><〜と(節)>いる-<〜しますように>-<(重いものが)>体<主格><3人称単数・軽性>-<属格>硬い

「家の主は、体が丈夫であるようにと、運び人に雑穀を与える。」

「ré+願望法」で目的を表す文。ここでの願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしいこと」を表す。主語の gromó は重性なので、願望法の語尾は -o になる。

lúin na sénimor gromó éles, elþíþimor fáron éles.

読み:ルーイン ナ セーニモル グロモー エーレス、エルシーシモル ファーロン エーレス。

lúinnasén-imorgromóél-es,elþ-íþ-imorfáronél-es.
とき<〜ない>見る-<我々が>亡骸<対格><3人称単数・軽性>-<属格>燃える-<〜させる>-<我々が>荷<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

「亡骸が見つからないときは、その人の荷を燃やして送る。」

崖から落ちた者や溺れた者を弔うときの習わしを説明する文。「〜とき」の節は lúin で始め、主節の前に置く。élþ-「燃える」に使役の -íþ- をつけて「燃やす」にしている。

maníres þérno, elþélo bélo táses.

読み:マニーレス セルノ、エルセーロ ベーロ ターセス。

man-ír-esþérno,elþ-él-obélotás-es.
食べる-<もし〜なら>-<あなたが>毒きのこ<対格>燃える-<〜だろう>-<(重いものが)>腹<主格><あなた>-<属格>

「毒きのこを食べたら、腹が焼けるぞ。」

条件の節には接続詞を使わず、仮定法 maníres だけで「もし〜なら」を表す。帰結の節は推量法で、主語の bélo が重性なので -o をとる。雨期にきのこを採るときの戒めの言い方。

toriþélo bélo gróm dálor.

読み:トリセーロ ベーロ グローン ダーロル。

tor-iþ-él-obélogrómdálor.
来る-<〜させる>-<〜だろう>-<(重いものが)>欲<主格>重い下の国<対格>

「重い腹は下の国を呼び寄せる。」

欲深さを戒める諺。bélo gróm「重い腹」は食い意地や欲深さを表す決まった言い方で、重いものは下へ沈むという信仰にもとづく。gróm は重性・単数・主格に一致するので、語尾がつかない。

mé vír sérin, findéla éndra.

読み:メー ヴィール セーリン、フィンデーラ エンドラ。

mévírsérin,find-él-aéndra.
<禁止・願いの打ち消し>言う<命令法><あなたが>このように聞く-<〜だろう>-<(軽いものが)>他人<主格>

「そんなことを言うな、人に聞かれるぞ。」

目下の者や身内をたしなめるときの言い方。後半は推量法で、「誰かが聞くだろう」という意味になる。ここの éndra は特定の人ではなく、不特定の他人を指す。

selvána aurólmar ré torélo nébro.

読み:セルヴァーナ アウロルマル レー トレーロ ネーブロ。

selván-aaur-ólmarrétor-él-onébro.
おっしゃる-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-長老<〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>

「長老の方は、霧が来るだろうとおっしゃる。」

敬われる長老の言葉を人に伝える言い方。尊敬の接頭辞 au- は母音の前で aur- になる(au-+ólmar → aurólmar)。selván- は「言う」の尊敬の補充形。ré の後ろの節は元の法を保ち、ここでは推量法。霧 nébro は重性なので、動詞は -o をとる。

plúin hoinéles? du álmarei sé.

読み:プルーイン ホイネーレス?ドゥ アルマレイ セー。

plúinhoin-él-es?duálmar-eisé.
いつ帰る-<〜だろう>-<あなたが>下手ひと月-<与格>この<軽性>

「「いつ帰るつもりだ。」「この月が明けたら。」」

二人の発話。未来の予定は推量法で尋ねる。答えは動詞を省いた前置詞句だけで言う。時間は川の流れとみるので、du+与格「〜の下手で」は「〜の後に」の意味になる。du álmarei sé は「この月の後に」、つまり翌月のこと。

ésa virá éles múrno.

読み:エーサ ヴィラー エーレス ムルノ。

és-aviráél-esmúrno.
いる-<(軽いものが)>言葉<主格><3人称単数・軽性>-<属格>当てにならぬもの

「あいつの言葉は腐り氷だ。」

見かけだけで当てにならない人を評する、くだけた陰口。霧期の腐った氷は張っているように見えて乗れないので、守られない約束のたとえになる。主語の virá は軽性。

glünélo ílmo véinoros.

読み:グリュネーロ イルモ ヴェーノロス。

glün-él-oílmovéinor-os.
凍る-<〜だろう>-<(重いものが)>水<主格>湖-<属格>

「湖の水は凍るだろう。」

天気の見通しを言う言い方。時制がないので、これから起こることは推量法で言う。強勢は推量法の -él- に移る。名詞句は「名詞–属格」の順に並ぶ。

raumíre endríña glüníñoi, bruuméla du ílmo.

読み:ラウミーレ エンドリーニャ グリュニーニョイ、ブルーメーラ ドゥ イルモ。

raum-ír-eendríñaglüníñ-oi,bruum-él-aduílmo.
歩く-<もし〜なら>-<(軽いものが)>子ども<主格>薄氷-<与格>落ちる-<〜だろう>-<(軽いものが)>下手水<対格>

「「子どもが薄氷の上を歩けば、水に落ちるだろう。」」

凍りの頃の事故を戒める文。条件の節は動詞を仮定法にするだけで作り、帰結の節は推量法で言う。水に落ちることは「下へ引かれる」恐ろしい出来事とされるので、du + 対格「下手へ」を使う。主語は人なので、動詞は軽性の形をとる。

ésa élvar þáil sórel, aurélau dáu sílarau.

読み:エーサ エルヴァル サイル ソーレル、アウレーラウ ダウ シーララウ。

és-aélvarþáilsórel,aur-él-audáusílar-au.
いる-<(軽いものが)>天<主格>澄んだ今日昇る-<〜だろう>-<双数>二月-<双数>

「今日は天が澄んでいる。二つの月も昇るだろう。」

乾風期の晴れた日によく交わす言葉。述語の形容詞 þáil は軽性・単数・主格なので語尾がつかない。未来のことは推量法で言い、強勢は -él- に移る。dáu「二」の後ろの名詞は双数になり、双数の動詞は人称も性も区別しない。月は星ではないので、数えて双数にしてもかまわない。

ké bruuméla réina dórel?

読み:ケー ブルーメーラ レーナ ドーレル?

kébruum-él-aréinadórel?
<〜か>落ちる-<〜だろう>-<(軽いものが)>雨<主格>明日

「明日は雨が降るだろうか。」

天気を尋ねる日常の問い。未来のことは推量法で言う。強勢は -él- に移るので、語根の ´ は消える。答えるときは bruuméla「降るだろう」か na bruuméla と、動詞を繰り返す。

tóro duléumo es orénos, esélo nébro dórel.

読み:トーロ ドゥレウモ エス オレーノス、エセーロ ネーブロ ドーレル。

tór-oduléumoesorén-os,es-él-onébrodórel.
来る-<(重いものが)>下の風<主格>から縁-<属格>いる-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

「縁から下の風が来ている。明日は霧が出るだろう。」

空模様を読む日常の文。duléumo は重性o語幹なので、動詞は3人称単数・重性の -o をとる。後半は存在の文を推量法にしたもので、確かでない明日のことは推量法で言う。霧 nébro も重性なので、esélo の語尾は -o になる。下の風は崖下から這い上がる湿った風で、霧と病を運ぶものとされる。

lúin tóra aurléuma, auriþéla nébro.

読み:ルーイン トーラ アウルレウマ、アウリセーラ ネーブロ。

lúintór-aaurléuma,aur-iþ-él-anébro.
とき来る-<(軽いものが)>昇る風<主格>昇る-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>霧<対格>

「昇る風が吹いてくれば、霧を持ち上げるだろう。」

霧期の終わりに、農村で雨期の訪れを読む文。霧が持ち上げられて雲に変わると、雨期が始まる。aurléuma は崖下から来るが、崖で押し上げられて雲をつくるので、重性の duléumo とは別の軽性の語になり、動詞も軽性の -a をとる。aur-íþ- は「昇る」の使役で「上げる」の意味。推量法の -él- が強勢を奪うので auriþéla となる。主語は前の節と同じなので、主節では言わない。nébro は重性なので、主格と対格が同じ形になる。

ésa él dulána, na áura selvá éles. elþíþimor fáron éles.

読み:エーサ エール ドゥラーナ、ナ アウラ セルヴァー エーレス。エルシーシモル ファーロン エーレス。

és-aéldulána,naáur-aselváél-es.elþ-íþ-imorfáronél-es.
いる-<(軽いものが)><3人称単数・軽性>落ちてきた者<主格><〜ない>昇る-<(軽いものが)>息<主格><3人称単数・軽性>-<属格>燃える-<〜させる>-<我々が>荷<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

「その人は落ちた者だ。その息は昇らない。だから我々は、その人の荷を燃やす。」

弔いの場での言い方。崖から落ちて死んだ者は、魂が体と一緒に下へ引かれて昇れなくなるとされ、dulána と呼ばれる。遺体が見つからないときは、持ち物を燃やして魂を上へ送る。dulána は人を指すので、繋辞も代名詞も軽性の形(ésa、él)で受ける。elþ-íþ- は「燃える」の使役で「燃やす」の意味で、直説法では -íþ- に強勢が置かれる。

tóra hervíña té, tául élan ré brolénde ráuvan gleinó.

読み:トーラ ヘルヴィーニャ テー、タウル エーラン レー ブロレンデ ラウヴァン グレイノー。

tór-ahervíñaté,táulél-anrébrol-énd-eráuvangleinó.
来る-<(軽いものが)>麝香鹿<主格>あの<軽性>取る<命令法><あなたが><3人称単数・軽性>-<対格><〜と(節)>作る-<〜しますように>-<(軽いものが)>森の巫<主格>護符<対格>

「あの麝香鹿が来る。森の巫が護符を作れるよう、あれを獲れ。」

森の氏族の長が狩人に命じる、下向きの言い方。hervíña は軽性なので、指示詞は軽性の té になる。té には強勢を置き、読点で区切るので、関係節ではないとわかる。目的は「ré+願望法」で表す。この願望法は丁寧さではなく、「そうなってほしいこと」を表す。護符 gleinó は重性の o 語幹なので、対格も主格と同じ形になる。

mé tául méldo, gruunéla zímbra.

読み:メー タウル メルド、グルーネーラ ジンブラ。

métáulméldo,gruun-él-azímbra
<禁止・願いの打ち消し>取る<命令法><あなたが>蜜<対格>怒る-<〜だろう>-<(軽いものが)>蜜蜂<主格>

「蜜を取るな、蜂が怒るぞ。」

子どもや仲間に向けたくだけた禁止。禁止は「mé+命令法」で言う。後半は推量法で「〜だろう」を表す。推量法の -él- に強勢が移るので、語根の長母音 uu の ´ は消える。

lúin hóinan faronárai, manélan.

読み:ルーイン ホイナン ファロナーライ、マネーラン。

lúinhóin-anfaronár-ai,man-él-an.
とき帰る-<彼らが>運び人-<〜たちが>食事をとる-<〜だろう>-<彼らが>

「運び人たちが戻ったら、食事にするだろう。」

lúin で始まる時の節を主節の前に置いている。主節は推量法で、これから先のことを言う。推量法の -él- には強勢があり、語根の強勢を奪う(mán- → manélan)。主節の主語は、語尾から時の節と同じ運び人たちだとわかるので言わない。

neliséla ausenár frélo?

読み:ネリセーラ アウセナール フレーロ?

nelis-él-aau-sen-árfrélo?
召し上がる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>魚<対格>

「目付殿は、魚を召し上がるでしょうか。」

目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る形にして尋ねる。強勢は推量法の -él- に移り、語根の ´ は消える。給仕をする者が、膳を整える前に好みを確かめるときの言い方。

ésa orenvandár té þérno. séuril virá éles, gráis nourá éles.

読み:エーサ オレンヴァンダール テー セルノ。セウリル ヴィラー エーレス、グライス ノウラー エーレス。

és-aorenvandártéþérno.séurilviráél-es,gráisnouráél-es.
いる-<(軽いものが)>縁商人<主格>あの<軽性>陰で害する者<主格>美しい言葉<主格><3人称単数・軽性>-<属格>悪い心<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「あの縁商人は毒きのこだ。言葉はきれいだが、腹は黒い。」

人を þérno と呼ぶのは強い悪口で、陰口に使う。主語が人なので繋辞は軽性の ésa になるが、重性の名詞を人に当てること自体が侮辱になる。後半は繋辞を落として述語の形容詞を先に置く、諺の語順。

gloumiþéla náuvra tásan; mé mán!

読み:グロウミセーラ ナウヴラ ターサン、メー マーン!

gloum-iþ-él-anáuvratás-an;mémán!
惑う-<〜させる>-<〜だろう>-<(軽いものが)>酔いきのこ<主格><あなた>-<対格><禁止・願いの打ち消し>食べる<命令法><あなたが>

「酔いきのこはお前を惑わすぞ。食べるな!」

目下の者や子どもへの注意。gloum-「惑う」に使役の -íþ- がついて「惑わせる」になる。結果の予告は推量法で言い、強勢は -él- に移る。náuvra は軽性なので、動詞は -a をとる。きのこのうちで náuvra だけが軽性なのは、食べた者を浮わつかせるものと見なされるからだと説明されることがある。

faronerélan faronárai sáko es orénos dórel.

読み:ファロネレーラン ファロナーライ サーコ エス オレーノス ドーレル。

faroner-él-anfaron-ár-aisákoesorén-osdórel.
運ぶ-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>塩<対格>から縁-<属格>明日

「明日、運び人たちが縁から塩を運んでくるだろう。」

これから先のことは推量法 -él- で言う。強勢は -él- に移り、-ér- の ´ は消える。3人称複数の語尾 -an は性を区別しない。塩 sáko は干潟から来る重性の名詞で、上げ荷の代表である。es+属格で、方向を問わない「〜から」を表す。

bruumíro fáron es orénos, droumélan faronárai.

読み:ブルーミーロ ファーロン エス オレーノス、ドロウメーラン ファロナーライ。

bruum-ír-ofáronesorén-os,droum-él-anfaron-ár-ai.
落ちる-<もし〜なら>-<(重いものが)>荷<主格>から縁-<属格>嘆く-<〜だろう>-<彼らが>荷-<〜する人>-<〜たちが>

「縁から荷が落ちれば、運び人たちは嘆くだろう。」

条件の節は接続詞を使わず、動詞を仮定法にするだけで作る。仮定法の -ír- が強勢をとるので、語根の ´ は消えて bruumíro になる。崖から物が落ちることは忌まれるので、崖道の人々は口にするのを嫌う言い方でもある。

lúin pándan viráis éles, áura þelá éles.

読み:ルーイン パンダン ヴィライス エーレス、アウラ セラー エーレス。

lúinpánd-anvir-áisél-es,áur-aþeláél-es.
とき刷る-<彼らが>言葉-<〜たちを><3人称単数・軽性>-<属格>昇る-<(軽いものが)>名声<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「その人の言葉が版木で刷られると、その人の名声は高まる。」

詩合わせで勝った詩が刷られて広まることを言う文。「名が昇る」は、名声が高まるという意味の決まった言い方。前半の pándan は主語を言わない3人称複数で、「人々が刷る」という受け身に近い意味になる。

na ráinim éndran té. ké ráines élan?

読み:ナ ライニン エンドラン テー。ケー ライネス エーラン?

naráin-iméndr-anté.kéráin-esél-an?
<〜ない>面識がある-<私が>人-<対格>あの<軽性><〜か>面識がある-<あなたが><3人称単数・軽性>-<対格>

「あの人は知らない。お前は知っているか。」

日常の会話。二度目は代名詞の対格 élan で、前に出た人を受けている。目上の人を指すときは、代名詞を使わず役職名で言う。

nóurim ré torélo nébro dórel.

読み:ノーリン レー トレーロ ネーブロ ドーレル。

nóur-imrétor-él-onébrodórel.
思う-<私が><〜と(節)>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>明日

「明日は霧が来ると思う。」

ré の節で思う内容を示す。確かでない未来なので、節の中は推量法にしている。霧は重性なので -o。

dunóurim ré fleiréla ausenár du orén.

読み:ドゥノーリン レー フレイレーラ アウセナール ドゥ オレーン。

du-nóur-imréfleir-él-aau-sen-árduorén.
<〜させていただく>-思う-<私が><〜と(節)>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>下手縁<対格>

「目付殿は縁へお出ましになるかと存じます。」

謙譲の du- で自分の考えを低め、目上の人の動きを推量法でやわらげて言う。

viríres lúdro, gruunélan aursárai tásei.

読み:ヴィリーレス ルードロ、グルーネーラン アウルサーライ ターセイ。

vir-ír-eslúdro,gruun-él-anaursár-aitás-ei.
言う-<もし〜なら>-<あなたが>嘘<対格>怒る-<〜だろう>-<彼らが>祖先-<〜たちが><あなた>-<与格>

「嘘をつけば、ご先祖様がお前にお怒りになるだろう。」

年長者が子どもを戒めるときの言い方。条件は接続詞を使わず、仮定法で表す。帰結の部分は推量法になる。法の接尾辞 -ír-・-él- は強勢をもつので、語根の ´ は消える(grúun- → gruunélan)。

na ráinimor fóndar éles, ésa él ível.

読み:ナ ライニモル フォンダル エーレス、エーサ エール イーヴェル。

naráin-imorfóndarél-es,és-aélível.
<〜ない>知る-<我々が>源<対格><3人称単数・軽性>-<属格>いる-<(軽いものが)><3人称単数・軽性>成り上がりの

「あの者の源を我々は知らない。あの者は成り上がりだ。」

婚姻の取り決めで、系譜読みが相手の家を値踏みするときの言い方。重性の fóndar は、対格でも形が変わらない。所有者を表す属格 éles は名詞の後ろに置く。後半は「és-–主語–述語」の順。

fóndel aursár, gléin selvá éles.

読み:フォンデル アウルサール、グレーン セルヴァー エーレス。

fóndelaursár,gléinselváél-es.
源に近い祖先<主格>清い息<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「源に近きは祖、清きはその息。」

諺や詩の形。繋辞を落とし、述語の形容詞を先に置く。ふつうの名詞句は「名詞–形容詞」の順なので、形容詞が先頭に来ると、格言や詩句だとわかる。

éira, na ansénim þelán éles.

読み:エーラ、ナ アンセーニン セラーン エーレス。

éira,naansén-imþel-ánél-es.
ええと<〜ない>思い出す-<私が>名前-<対格><3人称単数・軽性>-<属格>

「ええと、あの人の名前が思い出せない。」

日常のくだけた独り言。否定の na は動詞のすぐ前に置く。「誰の名前か」は属格の代名詞 éles で、名詞の後ろに置く。

lúin méira séulin tambór némei, glénim élei méldo.

読み:ルーイン メーラ セウリン タンボール ネーメイ、グレーニン エーレイ メルド。

lúinméir-aséulintambórném-ei,glén-imél-eiméldo.
とき与える-<(軽いものが)>友<主格>雑穀<対格><私>-<与格>返礼する-<私が><3人称単数・軽性>-<与格>蜜<対格>

「友が私に雑穀をくれると、私はその人に蜜でお返しをする。」

「返礼する」の意味では、お返しの品を対格に、相手を与格にとる。村の暮らしでよく聞く、くだけた言い方。

mé véil grúndo! torélo nébro.

読み:メー ヴェール グルンド!トレーロ ネーブロ。

mévéilgrúndo!tor-él-onébro.
<禁止・願いの打ち消し>忘れる<命令法><あなたが>掛け<対格>来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>

「掛けを忘れるなよ。もうすぐ霧が来るぞ。」

縁の市で商人どうしが交わす念押し。禁止は「mé+命令法」で、命令法2単はむき出しの語幹 véil。grúndo は重性o語幹なので、対格も主格と同じ形。後半は推量法で、主語の霧 nébro が重性なので語尾は -o。霧が来る前に精算する、という市の習わしを踏まえている。

dupovérim aulisárei ré du pó fleiréla ausenár.

読み:ドゥポヴェーリン アウリサーレイ レー ドゥ ポー フレイレーラ アウセナール。

du-povér-imau-lis-ár-eirédupófleir-él-aau-sen-ár.
<〜させていただく>-問う-<私が><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>-<与格><〜と(節)>下手何<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「書記の方にお尋ねいたします。目付殿は下手のどちらへお出ましになったのでしょうか。」

役所での改まった問い合わせ。謙譲の du- は子音 p の前ではそのままの形でつく。方向を決めない「どこへ」はないので、du pó「下手の何へ」と尋ねる。ré の節の中も推量法にして、遠回しな問いにしている。

auransoinéla ausenár sáindaran sé?

読み:アウランソイネーラ アウセナール サインダラン セー?

aur-ansoin-él-aau-sen-ársáindar-ansé?
<お〜になる・御〜>-思い出す<〜し終えた>-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>証文-<対格>この<軽性>

「「目付殿は、この証文を覚えておいででしょうか。」」

上向きの問い。目上の人には ké を使わず、推量法で推し量る形で尋ねる。「覚えている」は「思い出す」ansén- の完了語幹(補充形)ansóin- で言い、尊敬の au- は母音の前で aur- になる。推量法の -él- が強勢をとるので、語根の強勢は消える(auransoinéla)。相手は役職名に au- をつけた3人称で言う。

dróuma houmár ré ésa dulóur éles krán.

読み:ドローマ ホウマール レー エーサ ドゥロール エーレス クラーン。

dróum-ahoumárréés-adulóurél-eskrán.
嘆く-<(軽いものが)>家の主<主格><〜と(節)>いる-<(軽いものが)>子<主格><3人称単数・軽性>-<属格>頑固な

「家の主は、息子が頑固だと嘆いている。」

ré は「〜と」の節を導く。節の中も動詞で始まる。人を重性で受けると侮辱になるので、頑固さを責める文であっても、主語の子は軽性の éisa で受ける。

na esíro fáron, na eséla lúsa faronárei.

読み:ナ エシーロ ファーロン、ナ エセーラ ルーサ ファロナーレイ。

naes-ír-ofáron,naes-él-alúsafaronár-ei.
<〜ない>いる-<もし〜なら>-<(重いものが)>荷<主格><〜ない>いる-<〜だろう>-<(軽いものが)>日々の糧<主格>運び人-<与格>

「荷がなければ、運び人に日々の糧はなかろう。」

崖道の暮らしを言う、決まった言い方。条件の部分は、接続詞を使わずに仮定法だけで作る。荷 fáron が重性なので、動詞は -o をとる。帰結の部分は推量法で、lúsa(軽性)に一致して -a になる。lúsa は「食い扶持」の意味。

kéla houmár árnelais, ré esénde lúsa élei.

読み:ケーラ ホウマール アルネライス、レー エセンデ ルーサ エーレイ。

kél-ahoumárárnel-ais,rées-énd-elúsaél-ei.
伐る-<(軽いものが)>家の主<主格>木-<〜たちを><〜と(節)>いる-<〜しますように>-<(軽いものが)>日々の糧<主格><3人称単数・軽性>-<与格>

「家の主は、粥に困らぬよう木を伐る。」

「ré+願望法」は目的を表す。所有は「ある+持ち主の与格」で言うので、「その人に粥がある」が「暮らしに困らない」という意味になる。élei は家の主を指す。ここでの lúsa は、日々の食い扶持を広く指している。

toríro nébro, na eséla meirtaulá gléin.

読み:トリーロ ネーブロ、ナ エセーラ メイルタウラー グレーン。

tor-ír-onébro,naes-él-ameirtaulágléin.
来る-<もし〜なら>-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>いる-<〜だろう>-<(軽いものが)>取引<主格>清い

「霧が来てから結んだ取引は、清いものとはされまい。」

条件の節は接続詞を使わず、仮定法だけで作る。霧 nébro は重性なので -o をとる。帰結の節は推量法で、na で否定する。主語の meirtaulá は軽性なので -a をとる。霧の中で結んだ約束は重んじられないので、精算は霧の前に済ませる。

ké élþa aurvirá? elþíþir élan elþéi.

読み:ケー エルサ アウルヴィラー?エルシーシル エーラン エルセー。

kéélþ-aaurvirá?elþ-íþ-irél-anelþ-éi.
<〜か>燃える-<(軽いものが)>祈りの紙<主格>燃える-<〜させる>-<皆で〜せよ><3人称単数・軽性>-<対格>火-<与格>

「祈りの紙は燃えているかい。皆でそれを火にくべて燃やしなさい。」

家の中で、年長者が年少の者たちに言う下向きの話し方。élþ- に使役の -íþ- をつけると「燃やす」になり、複数への命令の語尾 -ir が続く。代名詞 élan は軽性の aurvirá を受けている。

þundéla senár grúndo, na gruunéimor.

読み:スンデーラ セナール グルンド、ナ グルーネーモル。

þund-él-asen-árgrúndo,nagruun-é-imor.
決着をつける-<〜だろう>-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>掛け<対格><〜ない>怒る-<〜だろう>-<我々が>

「目付が掛けの決着をつけてくれよう。そうなれば我々も腹を立てずにすむ。」

市で言い争う二人をなだめるときの、並びの話し方。senár は軽性なので、動詞は軽性の -a をとる。後半の推量法は na で否定し、1人称の語尾の前では -él- の l が落ちる。

lúin éso nébro, na áura þondá, na fíndan aursárai élan.

読み:ルーイン エーソ ネーブロ、ナ アウラ ソンダー、ナ フィンダン アウルサーライ エーラン。

lúinés-onébro,naáur-aþondá,nafínd-anaursár-aiél-an.
ときいる-<(重いものが)>霧<主格><〜ない>昇る-<(軽いものが)>誓い<主格><〜ない>聞く-<彼らが>祖先-<〜たちが><3人称単数・軽性>-<対格>

「霧が出ているときには、誓いは昇らない。祖先にはそれが聞こえない。」

霧の夜に立てた誓いは無効だという教えを述べる文。霧 nébro は重性なので éso、þondá は軽性なので動詞は -a で一致する。後半では、その誓いを軽性の代名詞の対格 élan で受けている。

pórin eséla tróval séndos?

読み:ポーリン エセーラ トローヴァル センドス?

pórines-él-atróvalsénd-os?
どのようにいる-<〜だろう>-<(軽いものが)>しきたり<主格>ここ-<属格>

「「こちらのしきたりは、どのようなものでございましょうか。」」

よその土地の年長者に、儀式のやり方を尋ねる言い方。目上の人には問いの小辞 ké を使わず、推量法で推し量る形にする。疑問詞 pórin は動詞の前に出る。推量法の -él- が強勢をとるので、és- は eséla になる。

elþéla hóurna dórel.

読み:エルセーラ ホールナ ドーレル。

elþ-él-ahóurnadórel.
燃える-<〜だろう>-<(軽いものが)>弔い<主格>明日

「明日、弔いの火が焚かれるだろう。」

火葬の予定を知らせる言い方。時制がないので、未来のことは推量法で言う。hóurna は軽性なので、動詞は軽性の -a で一致する。遺体は村の北側の高い所で焼く。

vel pó fleiréla ausenár?

読み:ヴェル ポー フレイレーラ アウセナール?

velpófleir-él-aau-sen-ár?
西へ何<対格>お出ましになる-<〜だろう>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-見る-<〜する人>

「目付殿は、日の入り側のどちらへお出ましになるのでしょうか。」

上向きの丁寧な問い。目上の人には問いの小辞 ké も2人称も使わず、推量法と役職名の3人称で尋ねる。行き先は vel pó「日の入り側の何へ」と、前置詞句ごと文頭に出す。強勢は推量法の -él- に移る。

toréla torár dórelei.

読み:トレーラ トラール ドーレレイ。

tor-él-ator-árdórel-ei.
来る-<〜だろう>-<(軽いものが)>来る-<〜する人>明日-<与格>

「客は明日来るだろう。」

高原語には時制がないので、まだ起きていない明日のことは推量法(-él-)で言うのがふつう。強勢は -él- に移る。torár「客」は tór-「来る」に -ár「〜する人」がついた語。

torélo nébro es orénos dulúin.

読み:トレーロ ネーブロ エス オレーノス ドゥルーイン。

tor-él-onébroesorén-osdulúin.
来る-<〜だろう>-<(重いものが)>霧<主格>から縁-<属格>のち

「のちに、縁から霧が上がってくるだろう。」

乾風期の終わりの、季節の移り変わりを言う文。霧 nébro は重性なので、推量法の動詞も3人称単数・重性の -o をとる(torélo)。副詞の dulúin は動詞の前に出さず、文末に置く。

voilélan éndrai dulúines sóndelan sé.

読み:ヴォイレーラン エンドライ ドゥルーイネス ソンデラン セー。

voil-él-anéndr-aidulúin-essóndel-ansé.
読む-<〜だろう>-<彼らが>人-<〜たちが>行く末-<属格>書物-<対格>この<軽性>

「行く末の人々が、この書物を読むだろう。」

書物の序や詩に見られる言い回し。属格 dulúines を「人々」の後ろに置いて「後の世の人々」と言う。名詞句の中では、名詞のすぐ後ろに属格、そのあとに指示詞 sé が来る。

glóiren, aulisár. auelénde aulisár.

読み:グロイレン、アウリサール。アウエレンデ アウリサール。

glóiren,au-lis-ár.au-el-énd-eau-lis-ár.
ようこそ<お〜になる・御〜>-書く-<〜する人><お〜になる・御〜>-座る-<〜しますように>-<(軽いものが)><お〜になる・御〜>-書く-<〜する人>

「ようこそお越しくださいました、書記の方。どうぞお座りください。」

家の主が目上の客を迎えるときの言い方。glóiren は「来る」の尊敬の補充形 glóir- の分詞から固まった語で、目上の客に使う。同じ段か目下の客には tóren を使う。後半は au- と hél-「座る」がくっついて h が落ちた形の願望法で、目の前の客を3人称の主語「書記の方」として扱っている。

anórel, níla faronár té muró bróus, esós ésa él murár sórel.

読み:アノーレル、ニーラ ファロナール テー ムロー ブロース、エソース エーサ エール ムラール ソーレル。

anórel,níl-afaron-ártémuróbróus,esósés-aélmur-ársórel.
昨日飲む-<(軽いものが)>荷-<〜する人>あの<軽性>濁り酒<対格>多いだからいる-<(軽いものが)><3人称単数・軽性>濁った-<〜する人>今日

「昨日、あの運び人は濁り酒をしこたま飲んだ。だから今日のあいつは、まるで酔いどれだ。」

崖道の宿などで交わす、くだけた噂話。muró「濁り酒」と murár の音が近いことを使った当てこすりで、ここでは「酔ってぼんやりしている者」の意味になる。時の語 anórel は場面の枠に置いて読点で区切る。esós「だから」は二つめの文の頭に置く。主語の代名詞 él をわざわざ言っているので、「あいつときたら」という強調の響きがある。

ésa virá éles snáum

読み:エーサ ヴィラー エーレス スナウン

és-aviráél-essnáum
いる-<(軽いものが)>言葉<主格><3人称単数・軽性>-<属格>取るに足らぬ

「彼の言葉は取るに足らぬ。」

日常会話での貶め。主語節は virá éles の語順で、属格 éles は él の属格。述語の snáum は virá(軽性単数主格)に一致し、無標で済む。

áuro kravó éles

読み:アウロ クラヴォー エーレス

áur-okravóél-es
昇る-<(重いものが)>顎<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「彼の顎が上がった。」

怒りや威勢を示す仕草の文。nóumo「顔」や drál「首」では曖昧になりやすい顎の線の動きを、kravó を主語にして áur-「昇る」型仕草語で直接表す。重性主語なので動詞は3人称単数・重性の -o に一致する。所有の属格 él-es は名詞の後。

salóur, gloiréla torár.

読み:サロール、グロイレーラ トラール。

salóur,gloir-él-atorár.
とはいえお越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)>客<主格>

「とはいえ、お客様はおいでになるでしょう。」

改まった場・上向きの話し方。salóur のあとの文を推量法と敬語の補充形 glóir-「お越しになる」で和らげる用法。「とはいえ」を表す。torár は人を指す軽性なので、3人称単数・軽性の語尾 -a をとる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。

lís plíndo, orvél na vandéla senár fáron.

読み:リース プリンド、オルヴェール ナ ヴァンデーラ セナール ファーロン。

lísplíndo,orvélnavand-él-asen-árfáron.
書く<命令法><あなたが>荷札<対格>,OR<〜ない>量る-<〜だろう>-<(軽いものが)>見る-<〜する人・主格>荷<対格>

「荷札を書け、さもなくば目付は荷を量らないだろう。」

市や帳場でのくだけた命令。命令法は語幹のむき出しの形で、語尾標識がないため書く.IMP.2SGのようにドットで法・人称を示す。orvélが後節の頭に立ち、成り行きを推量法で示す。重性o語幹plíndoは主格と対格が同形なので、対格は無標示として.ACCで注記する。

éso velmár éles fóum

読み:エーソ ヴェルマール エーレス フォーン

és-ovelmárél-esfóum
いる-<(重いものが)>右<主格><3人称単数・軽性>-<属格>暖かい

「彼の右手は暖かい。」

主語の velmár は重性単数主格。体部分の所属を示す属格 éles は後に置き、被修飾名詞は主格のまま。

kráilim élan velmároi némes

読み:クライリン エーラン ヴェルマーロイ ネーメス

kráil-imél-anvelmár-oiném-es
手に持つ-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>右-<与格><私>-<属格>

「私はそれを右手で持つ。」

身体部位を手段・位置として表すときは与格 velmároi を使う。所有の némes は与格名詞句の後置。

þuláura naþelár, áuro nóumo éles

読み:スラウラ ナセラール、アウロ ノーモ エーレス

þuláur-anaþelár,áur-onóumoél-es
得意がる-<(軽いものが)>若者<主格>,上がる-<(重いものが)>顔<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「青年は得意がっており、顔が上がっている。」

得意がりを述べる文に、顔が上がった様子を無接続で添える常套句。主語の若者に動詞が軽性一致し、顔は体の部分で重性なので áur- が重性一致する。顔一面に得意が表れた意。

kúndim élan térin.

読み:クンディン エーラン テーリン。

kúnd-imél-antérin.
する-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>そのように

「私はそれをそのようにします。」

代名詞 élan は él-an に分節した。

kúndau társ dáun élan sérin.

読み:クンダウ タルス ダウン エーラン セーリン。

kúnd-autársdáunél-ansérin.
する-<双数><あなたがた>二人<3人称単数・軽性>-<対格>このように

「あなたたち二人はそれをこのようにします。」

双数の主語 társ dáun は省かない。代名詞 élan は él-an に分節した。

lúin gloiréla torár, gánimor sáko torárei.

読み:ルーイン グロイレーラ トラール、ガーニモル サーコ トラーレイ。

lúingloir-él-atorár,gán-imorsákotorár-ei.
ときお越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)>客<主格>贈る-<我々が>塩<対格>客-<与格>

「客がおいでになると、我らは客に塩を贈る。」

作法や習わしを記すような文。時節の出来事を表す文では、lúin の後ろに動詞を続ける。客の来訪を glóir- で言い、主節では人情として塩を渡す。取引語ではなく、客への礼としての贈与を示す。

sórel, kréla brím éles.

読み:ソーレル、クレーラ ブリーン エーレス。

sórelkrél-abrímél-es
今日足りる-<(軽いものが)>口数<主格><3人称単数・軽性>-<属格>

「今日は彼の口数がほどよい。」

帳簿の数量ではなく、礼法上の適量を評す定型。brím élesは「彼の口数」を表す名詞句で、動詞krél-は主語のbrímに一致して軽形を取る。brímは軽性の名詞として扱う。

éso unlóur sáko un beilíñoi éles.

読み:エーソ ウンロール サーコ ウン ベイリーニョイ エーレス。

és-ounlóursákounbeilíñ-oiél-es
いる-<(重いものが)>まだ塩<主格>内に懐-<与格><3人称単数・軽性>-<属格>

「彼の懐には、まだ塩がある。」

くだけた日常会話。beilíño は「懐」の比喩用法で、物理的な腰袋そのものというより、身につけている少々の備えを表す。un +与格で「〜の中に」。所有者は名詞の後ろの属格 él-es で示す。unlóur は動詞の直後に置く。

wéiro dóulin nórlo éles véun, na hóina

読み:ウェーロ ドーリン ノルロ エーレス ヴェウン、ナ ホイナ

wéir-odóulinnórloél-esvéun,nahóin-a
いる<〜し終えた>-<(重いものが)>もう寝所<主格><3人称単数・軽性>-<属格>空,<〜ない>帰る-<(軽いものが)>

「彼の寝所はもう空だ。彼は帰らない。」

日常の会話で、人の帰る場所・安らぎの場として nórlo を比喩的に用いる。後節の主語は動詞の軽性語尾から推定される。

kreuléla houmár, un houmbrúndoi.

読み:クレウレーラ ホウマール、ウン ホウンブルンドイ。

kreul-él-ahoumár,unhoumbrúnd-oi.
拒む-<〜だろう>-<(軽いものが)>家の主<主格>中に寄り合い-<与格>

「寄り合いの席では、家の主は拒むのでございましょう。」

改まった場での推し量り。直説法で断定せず、推量法で述べる。un+与格で「寄り合いの中で」。上位者や目上の人の行為を直接的に報告しない作法を示す。

lúin práima elþá, houmnílim élan.

読み:ルーイン プライマ エルサー、ホウンニーリン エーラン。

lúinpráim-aelþá,houmníl-imél-an.
とき細る-<(軽いものが)>火<主格>炉を(火を)続ける-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>

「火が細ると、私は炉を続ける。」

lúin で導く従属節も動詞が先頭。細りかけた火を保つ意で、燃料を単に追加する意ではない。目的語 élan は前の elþá を受ける。

lúin víra ólmar élan, núnim

読み:ルーイン ヴィーラ オルマル エーラン、ヌーニン

lúinvír-aólmarél-an,nún-im
とき言う-<(軽いものが)>年長者<主格><3人称単数・軽性>-<対格>目を伏せる-<私が>

「年長者がそれを仰るとき、私は目を伏せる。」

日常の敬意の場面。目上者の前で静かにまぶたを下ろす作法。núnim 自体は謙譲の接頭辞を持たないが、動作が敬意を表す。vír- は他動詞なので、目的語の代名詞 él に対格語尾 -an を付けた él-an を補う。

núnim si nóurim élan

読み:ヌーニン シ ノーリン エーラン

nún-imsinóur-imél-an
目を閉じる-<私が>と思う-<私が><3人称単数・軽性>-<対格>

「目を閉じて、それを思う。」

日常の内省の場面。nún- は、反射的な瞬きでも眠りに入る動作でもなく、意図的にしばらくまぶたを下ろす行為。同一主語の二つの動作を si で並べている。nóur- は他動詞なので、目的語の代名詞 él に対格語尾 -an を付けた él-an を補う。

文法

人称代名詞(3人称単数・軽性)。対 élan、属 éles、与 élei。複数 élai/élais/élar/élail。重性は ó。関係節の中の再述代名詞としても使う。

語源

古高原語 *él から。3人称単数・軽性の人称代名詞として古くからある語。

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