小説
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祖母
父母の母のうち、自分と同じ流れに属する人。別の流れの祖母は andaulóura éul と言い分ける。
þalíþa andaulóura elþán hóumos.
読み:サリーサ アンダウローラ エルサーン ホーモス。
| þal-íþ-a | andaulóura | elþ-án | hóum-os. |
| 止まる-<〜させる>-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | 火-<対格> | 炉-<属格> |
「祖母は炉の火を消す。」
家庭の日常。人間は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。elþá は軽性a語幹で単数対格 elþán。名詞句 elþán hóumos は「炉の火」。
súndau andaulóura si séulin hóumoi.
読み:スンダウ アンダウローラ シ セウリン ホーモイ。
| súnd-au | andaulóura | si | séulin | hóum-oi. |
| 世間話する-<双数> | 祖母<主格> | と | 友<主格> | 炉-<与格> |
「祖母と友が炉で世間話をする。」
炉ばたでの日常。場所を示す裸の与格。単数の主語を二人並べると動詞は双数で一致する。
tendéra andaulóura endríñan.
読み:テンデーラ アンダウローラ エンドリーニャン。
| tendér-a | andaulóura | endríñ-an. |
| 抱く-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | 子-<対格> |
「祖母が子どもを抱きしめている。」
家庭内のくつろぎの動作。tendér-は人を腕に覆い寄せる意で、宮廷や帳簿では避けられ、身内の語として聞かれる。
monlína andaulóura téir kúrmul trélmoi
読み:モンリーナ アンダウローラ テール クルムル トレルモイ
| monlín-a | andaulóura | téir | kúrm-ul | trélm-oi |
| 並べる-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | 三 | 壺-<〜たちを> | 棚-<与格> |
「祖母は棚の上に三つの壺を並べる。」
日常の倉・棚まわりの言い方。棚のような場所は裸の与格で置く。数量を示す数詞は名詞の前に置く。
marléuma andaulóura térin.
読み:マルレウマ アンダウローラ テーリン。
| marléum-a | andaulóura | térin |
| 風を送る-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | そのように |
「祖母は風を送るように手を振る。」
意味2の用例。実際の風を起こす意ではなく、手の動きが風を思わせる所作を述べる。副詞 térin「そのように」を文の後ろに置いて、仕草のありようを表す。この用法では語根 marléum- を「風を送る」と対応させる。
liníþa andaulóura pelsó.
読み:リニーサ アンダウローラ ペルソー。
| liníþ-a | andaulóura | pelsó |
| 塗る-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | 樹脂<対格> |
「祖母は(継ぎ目などに)樹脂を塗っている。」
日常の作業の文。主語は人なので動詞は軽性・3人称単数の語尾 -a を受ける。目的語には塗るものを取り、被塗布面や対象は文脈で省略する。
wéinsa andaulóura némes ilánan.
読み:ウェーンサ アンダウローラ ネーメス イラーナン。
| wéins-a | andaulóura | ném-es | ilán-an. |
| なる<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | <私>-<属格> | 灯-<対格> |
「私の祖母は星になった。」
一年の忌明けを終えた家での、くだけた言い方。一年の間は élaur と言い、「星になった」と言ってはいけない。
méira andaulóura soilkrélvo aursárei.
読み:メーラ アンダウローラ ソイルクレルヴォ アウルサーレイ。
| méir-a | andaulóura | soilkrélvo | aursár-ei. |
| 与える-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | 髪留め<対格> | 祖先-<与格> |
「祖母が祖先に髪留めを渡す。」
祀りの場面。主語のandaulóuraは人なので軽性・3人称単数-a。受け手は与格aursárei。soilkrélvoは対格だが重性のため無標識。
ésa sé freunþál te kúnda andaulóura.
読み:エーサ セー フレウンサール テ クンダ アンダウローラ。
| és-a | sé | freunþál | te | kúnd-a | andaulóura |
| いる-<(軽いものが)> | この<軽性> | 額寄せ<主格> | <関係節> | する-<(軽いものが)> | 祖母<主格> |
「これは、祖母がする額寄せです。」
日常の家庭文脈で、どのような所作かを説明する文。freunþál は述語名詞だが、関係節 te kúnda andaulóura の中で目的語として受け取られている。関係節は名詞句の終わりに置かれ、関係節内部は VSO 語順になる。freunþál 自体には格標識がつかない。
klámba andaulóura kréin dáu mároun.
読み:クランバ アンダウローラ クレーン ダウ マーロウン。
| klámb-a | andaulóura | kréin | dáu | már-oun |
| 挟む-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | 骨<対格> | 二 | 手-<双数・与格> |
「祖母は両手で骨を挟んで押さえている。」
世話的な用い方。基本語順はVSOで、主語は動詞の直後に置く。人の主語なので動詞は軽性の語尾 -a。kréin「骨」は重性だが、重性名詞は対格が無標。押さえる側の「両手」は与格双数 dáu mároun。
sléla andaulóura snélan
読み:スレーラ アンダウローラ スネーラン
| slél-a | andaulóura | snél-an |
| 広げる-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | 布-<対格> |
「祖母が布を広げている。」
家の中で年長者が布を扱う場面。主語は人なので、動詞は軽性の三人称単数語尾 -a をとる。
houmnílau andaulóura si brél elþán.
読み:ホウンニーラウ アンダウローラ シ ブレール エルサーン。
| houmníl-au | andaulóura | si | brél | elþ-án. |
| 炉を(火を)続ける-<双数> | 祖母<主格> | と | 兄弟<主格> | 火-<対格> |
「祖母と兄弟は炉を続ける。」
二つの単数名詞を si で並べると、動詞は双数になる。brél はきょうだいの総称。家庭の炉維持の日常語で、改まった場では使わない。
家の老女・系譜読みのお婆
転じて、一つの炉(世帯)で系譜を預かる最年長の女性を、敬意と親しみをこめて呼ぶ言い方。村や縁ではとくによく使う。
ésa andaulóura sé lourvirár.
読み:エーサ アンダウローラ セー ロウルヴィラール。
| és-a | andaulóura | sé | lourvirár. |
| いる-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | この<軽性> | 系譜読み<主格> |
「祖母(家のおばあ)は、系譜読みだ。」
この用例では「祖母」が、家系図を読み預かる家屋の老女を指す呼称として使われている。主語 andaulóura sé は軽性a語幹の名詞句で、指示詞 sé を名詞の後ろに置く。繋辞 és- は軽性単数の主語に合わせて 3SG.LT の -a をとる。述語 lourvirár は名詞のまま、主格の裸形を置く。家では個人名で呼ばず、この呼称そのものが呼び名になる。
loiménde andaulóura sé lourlisán.
読み:ロイメンデ アンダウローラ セー ロウルリサーン。
| loim-énd-e | andaulóura | sé | lourlis-án. |
| 唱える-<〜しますように>-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | この<軽性> | 系譜の巻-<対格> |
「この祖母(家のおばあ)に、系譜の巻を唱えていただきたい。」
年長者に直接命令せず、願望法・3人称単数・軽形の loiménde で上向きの依頼を表す。主語 andaulóura sé は軽性a語幹で、指示詞 sé を伴う。対象 lourlisá も軽性a語幹で、対格は lourlisán になる。家系の老女として系譜を預かる年長の女性を、敬意と親しみをこめてこの語で呼ぶ。
自分から二瀬上にあたる女性の血族。つまり父母の母を指す。高原語の親族名称は「何瀬上か・何瀬下か」「年の上か下か」「同じ流れ(家系)か別の流れか」を組み合わせて作る。この語はそのうち「二瀬上」と「女性」を表し、何もつけなければ自分と同じ流れに属する祖母を指す。子は両親のうち段の高いほうの流れに入るので、もう一方の祖母は別の流れの人になることが多い。その祖母は後ろに éul「別の流れの」を添えて andaulóura éul と言う。父方か母方かは区別しない。家族の中では「段」を口にしないのと同じく、祖母を名前で呼ぶこともない。目下の者が年長者の個人名を口にするのは無礼なので、この語がそのまま呼び名になる。家の年長の女性は系譜読み(lourvirár)として源からの流れを唱え、婚姻や相続にも強い発言力をもつ。そのためこの語には、家の記憶と系譜を預かる人という重い敬意がこもる。外の人に対して改まって言うときは、尊敬の接頭辞をつけて aurandaulóura「お祖母様」と言う。高め名詞なので数詞はつけない。
軽性・a語幹(人なので軽性)。強勢は語根の lóu にあり、曲用は andaulóura/-an(対)/-es(属)/-ei(与)、双数 -au、複数 -ai(主)/-ais(対)。尊敬形は au- が母音の前で aur- になり aurandaulóura となる。古い詩や系譜の唱えでは呼格 andaulóure が残る。くだけた話し方では、語末の母音が落ちて andaulóur となり、男女を問わない「祖父母」の語と同じ音になる。
an「上手」+dáu「二」+lóur「瀬」に、女性を表す -a がついた複合語。字義は「二瀬上手の女」。anlóur「瀬上(親)」と同じ組み立てで、間に数詞を挟んで世代を数える。dáu は複合語の中で強勢を失う。語末の -a は、女子の名が軽性a語幹をとる習わし(viréla, silára)と同じもので、男女を問わない andaulóur「祖父母」に対する女性形として働く。
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