小説
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噂
人から人へ言い伝えられている、出どころのはっきりしない話。ふつうは軽性で受ける。
kléla raumvirá rúndelin.
読み:クレーラ ラウンヴィラー ルンデリン。
| klél-a | raumvirá | rúndel-in. |
| 走る-<(軽いものが)> | 噂<主格> | 早い-<〜して・〜く> |
「噂は速く駆け巡る。」
書物やことわざのような比喩的用法。人ではなく「噂」が主語で、話や事態が急速に展開する意。形容詞 rúndel「早い」に副詞化の -in をつけて rúndelin とし、動詞を修飾する。
kramboráuma raumvirá un keréloi.
読み:クランボラウマ ラウンヴィラー ウン ケレーロイ。
| kramboráum-a | raumvirá | un | kerél-oi |
| 素早く進む-<(軽いものが)> | 噂<主格> | 内に | 谷-<与格> |
「谷では、噂が崖山羊のように早く伝わる。」
比喩用法。書物や格言で詠まれる語調。raumvirá は「言葉」系の語として軽性。un keréloi は「谷の中で」を表す。
fléla raumvirá fínduls es fíndur
読み:フレーラ ラウンヴィラー フィンドゥルス エス フィンドゥル
| flél-a | raumvirá | fínd-uls | es | fínd-ur |
| 漏れる-<(軽いものが)> | 噂<主格> | 耳-<〜らに> | から | 耳-<〜らの> |
「噂が耳から耳へと漏れる。」
話・秘密が漏れる比喩的な用法。raumvirá「噂」は主語として軽性。耳への届く先は裸の与格、出所はes+属格。V-S-DAT-PPという基本の語順に従い、与格を前置詞句より前に置く。fínd-ulsは耳の複数与格で、-ulsを一形態素として切る。
あの噂
指示詞 té/tó を添えて、いま世間で騒ぎになっている特定の噂を指す。
mé vír raumvirán té
読み:メー ヴィール ラウンヴィラーン テー
| mé | vír | raumvir-án | té |
| <禁止・願いの打ち消し> | 言う<命令法><あなたが> | 噂-<対格> | あの<軽性> |
「あの噂を言うな。」
日常の叱責・制止。他動詞 vír- の直接目的語には対格が必要で、軽性 a 語幹の単数対格は -án になる。指示詞 té は「いま話題になっている、例の」という限定を表す。
陰口・中傷
指示詞や動詞をわざと重性で受け、悪意のある噂や根も葉もない悪口として言う用法。話し手の軽蔑がこもる。
éso raumvirá tó gróm.
読み:エーソ ラウンヴィラー トー グローン。
| és-o | raumvirá | tó | gróm. |
| いる-<(重いものが)> | 噂<主格> | あの<重性> | 重い |
「あの陰口は、品がなくて重い。」
日常の炉ばたで、特定の中傷を断じる言い方。語そのものは本来軽性だが、指示詞 tó・動詞 éso・形容詞 gróm をわざと重性で受け、「下へ落ちる言葉」「泥の言葉」として蔑む。語形 raumvirá は元の軽性の形のまま。
un nébroi, éso raumvirá tó múr.
読み:ウン ネーブロイ、エーソ ラウンヴィラー トー ムール。
| un | nébr-oi, | és-o | raumvirá | tó | múr. |
| 内に | 霧-<与格> | いる-<(重いものが)> | 噂<主格> | あの<重性> | 濁った |
「霧の中では、あの陰口は濁っている。」
霧期を背景にした日常的な評。un nébroi は「霧の中」と場を限定する。重性一致により、霧が下の国から湧くものとされる含みが重なり、múr は内容の根も葉なさにも転じている。
世間の人が言い伝え、言いふらしている話。字義は「歩く言葉」。高原では、整った言葉は息となって上へ昇り、祖先に届くものとされる。噂はそうではなく、炉から炉へ、町から町へと人の足で地面の上を横に運ばれていく言葉と見られている。そのため「出どころ(源)の知れない言葉」「誰も名乗らない言葉」という含みがあり、書かれた言葉を重んじる役所や法の場では証しにならない。「歩く言葉は昇らない」という言い回しがあり、都の人は噂を口にすること自体をやや品のないふるまいとみなす。指示詞をつけて raumvirá té(重性で受けるなら raumvirá tó)と言うと、いま話題になっている特定の噂、「例の噂」を指す。ふつうは軽性で受けるが、悪意のこもった噂、陰口、根も葉もない中傷として言いたいときは、話し手がわざと指示詞・形容詞・動詞を重性で受ける(性の転用)。重性で受けると「下へ落ちる言葉」「泥の言葉」という響きが加わり、話し手がその噂を軽蔑していることが伝わる。霧期は嘘と争いの増える季節とされ、霧の中で広まる噂はとくに信用されない。
軽性・a語幹(語尾に強勢)。単数:主 raumvirá、対 raumvirán、属 raumvirés、与 raumviréi。複数:主 raumvirái、対 raumviráis、属 raumvirár、与 raumviráil。悪く言うときは、名詞の語形は軽性のまま、まわりの指示詞・形容詞・動詞を重性で受ける(例:tóro raumvirá tó「あの(ろくでもない)噂が来た」)。噂の出どころは es+属格で言い、噂の中身は ré の節で添える。
ráum-「歩く」+ virá「言葉」の複合語。複合語なので前の要素の強勢は落ち、強勢は後ろの要素の -rá に置かれる。m の後ろに v が来るのは、唇音の前で鼻音が m になる規則のとおりである。
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