krás-

品詞
動詞(自動詞)
意味
割れる
発音
[ˈkras]
読み
クラス
分野
性質・状態

意味

  1. 割れる

    木や石が、木目や層に沿って割れる・裂ける。分かれて二つ以上になる場合にも、途中まで裂ける場合にも使う。

    kráiso krailó kórvos.

    読み:クライソ クライロー コルヴォス。

    kráis-okrail-ókórv-os
    割れる<〜し終えた>-<(重いものが)>手に持つ-<〜するもの(重)・重性・主格>倉-<属格>

    「倉の取っ手が割れた。」

    自動詞krás-の完了語根kráis-に重性単数主語krailóに対する一致語尾-oがつき、kráisoとなる。時制語形はないが完了相のため、文脈によっては現在結果的「割れている」とも取る。属格kórv-osは接尾辞-osを使う。

    kráiso dóulin snaló.

    読み:クライソ ドーリン スナロー。

    kráis-odóulinsnaló.
    割れる<〜し終えた>-<(重いものが)>既にかさぶた<主格>

    「かさぶたはもう割れている。」

    肯定文で dóulin と組んで完了の意味を表すときは、未完了語幹 krás- ではなく完了語幹 kráis- を使う。重性の主語 snaló に一致して、語尾に3単数重性 -o がつく。dóulin は動詞の直後に置く「もう」。「時制を表す語形がないため、変化の完了は完了語幹と相の副詞で示す」という手当て書・現場観察文らしい簡潔な描写。

    anórel, kráiso dóulin tórvo mór.

    読み:アノーレル、クライソ ドーリン トルヴォ モール。

    anórel,kráis-odóulintórvomór
    昨日割れる<〜し終えた>-<(重いものが)>もう梁<主格>大きい<主格>

    「昨日、大きな梁がもう割れた。」

    肯定の「もう」dóulin は完了相の動詞と組むため、割れる krás- の完了語根 kráis- を用いて kráiso とする。場面の枠 anórel を文頭に置き、相の副詞 dóulin は動詞の直後、主語の前に置く。

    krásau dulóra si fleuróra.

    読み:クラーサウ ドゥローラ シ フレウローラ。

    krás-audulórasifleuróra.
    割れる-<双数>ドゥローラ<主格>とフレウローラ<主格>

    「ドゥローラとフレウローラが崩れた。」

    年代記や旧道の記録に多い、出来事を簡潔に述べる文。単数の固有名詞二つを si で並べると動詞は双数になる。krás- は自然物が裂けて崩れる自動詞。固有名詞は主格の辞書形のまま。

    kráso kloníño sáves só.

    読み:クラーソ クロニーニョ サーヴェス ソー。

    krás-okloníñosáv-essó.
    割れる-<(重いものが)>小さな継ぎ目<主格>匙-<属格>この<重性>

    「匙のこの小さな継ぎ目が割れた。」

    日常の道具について。器の曲がった継ぎ部を kloníño で呼ぶ拡張。sáves は sáva の属格で、語根に強勢を保つ。指示詞 só は中心名詞 kloníño(重性)に一致し、名詞句の末尾に置かれる。

  2. ひびが入る

    割れきらずに、表面や芯に筋が走る。干した材の干し割れや、凍りの頃に立ち木の幹が縦に裂けることも言う。

    lúin glǘno glünó, krása lóna.

    読み:ルーイン グリューノ グリュノー、クラーサ ローナ。

    lúinglǘn-oglünó,krás-alóna.
    とき凍る-<(重いものが)>氷<主格>ひびが入る-<(軽いものが)>柱の木<主格>

    「氷が凍ると、柱の木にひびが入る。」

    凍りの頃に立ち木が寒さで縦に裂けることを言う。副文は lúin に導かれ、動詞が主語に先立つ。主文も VSO で krása lóna とする。lóna は軽性なので、動詞は軽性の krása をとる。割れきって粉になる意味ではなく、裂け目が入る意味。

    kráso món só.

    読み:クラーソ モーン ソー。

    krás-omónsó.
    ひびが入る-<(重いものが)>石<主格>この<重性>

    「この石にひびが入った。」

    石が層に沿って割れ目が入った文。món は重性なので、動詞は重性の kráso をとる。粉々に砕けた意味ではなく、割れ目が入った意味。

  3. 割れあり(検めの語)

    分詞 krásen の形で、材木に割れや裂け目があることを示す検めの言葉。帳簿や検めの書きつけで、等級を下げる理由として記す。

    éso gandér só krásen.

    読み:エーソ ガンデール ソー クラーセン。

    és-ogandérsókrás-en.
    いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>割れあり-<〜した・〜された>

    「この硬木には割れがある。」

    検めや会話で、材木に割れがあることを述べる文。主語 gandér と指示詞 só が重性、分詞 krásen が重性単数の述語として機能する。帳簿や荷札では品名に krásen を添えて「割れあり」と記す。

    lísim plíndo só ré éso gandér só krásen.

    読み:リーシン プリンド ソー レー エーソ ガンデール ソー クラーセン。

    lís-implíndosóréés-ogandérsókrás-en.
    書く-<私が>札<対格>この<重性><〜と(節)>いる-<(重いものが)>硬木<主格>この<重性>割れあり-<〜した・〜された>

    「私はこの荷札に、この硬木には割れがある、と書き込む。」

    帳簿や荷札に、硬木に割れがあることを書き記す場面。主文は第一人称の lísim で、目的語 plíndo só のあとに ré で内容節を置く。内容節は éso gandér só krásen で、krásen が「割れあり」の検めの語として述語になる。

解説

木や石が割れる・裂ける・ひびが入ることを表す自動詞。木目や石の層に沿って筋が走り、ひと続きだったものが分かれる動きを言う。粉々に砕けることには使わず、「筋が入る」「裂け目ができる」ことに重きがある。 実際には、分詞 krásen「割れた・割れのある」の形でいちばんよく使われる。とくに材木の検めでは、木口や木の肌に割れや干し割れがあることを示す決まった語になっている(éso gandér krásen.「この硬木には割れがある」)。帳簿や検めの書きつけでは、品名のあとに krásen を添えて「割れあり」とし、等級を下げる理由として記す。反対に、割れのない材は否定の接頭辞をつけて nakrásen「割れなし」と書き、上等の材をほめる言い方になる。 硬木は詰まった木で、ふつうは割れにくい。そのため、硬木に割れが見つかると、等級の問題にとどまらない。伐り出しの詞を唱えずに伐った木は割れやすい、という言い伝えがあるからである。gandér krásen と言うことは、その木が正しい儀式を経ていないのではないかという疑いをほのめかすことにもなる。そのため森の司の検め役は、硬木の割れを口にするとき言葉を選び、干して出た表面の割れなのか、芯まで通った割れなのかを言い分けようとする。 石についても使う。石を割れ方で呼び分ける習わしがあり、「板状に割れる石」「塊のまま割れる石」を言うときの動詞もこれである。凍りの頃に、立ち木の幹が寒さで縦に裂けることも krás- で言う。 性の一致は、割れるものの性に従う。石や伐った材が割れるなら重性の kráso、立ち木が裂けるなら軽性の krása になる。伐った柱の木は名詞の語形が軽性のままでも、分詞は重性で一致する(lónan krásen「割れた柱材を」)。

そのほかの用例

krasíþim fálno.

読み:クラシーシン ファルノ。

kras-íþ-imfálno
割る-<〜させる>-<私が>薪<対格>

「私は薪を割る。」

日常の薪割りの文。1人称単数の語尾 im が主語を示し、主語の代名詞は省かれる。対象は叩けば筋に沿って開く薪。

krasíþa faronár gandér.

読み:クラシーサ ファロナール ガンデール。

kras-íþ-afaronárgandér
割る-<〜させる>-<(軽いものが)>運び人<主格>硬木<対格>

「運び人が硬木を劈く。」

楔や刃で筋に沿って開くように割る意の例。主語 faronár は軽性なので、動詞は3人称単数・軽性の -a をとる。対象 gandér は重性で、対格の語尾はつかない。

文法

自動詞。完了語幹は kráis-(a→ai の母音交替):kráiso「割れてしまった」。分詞 krásen は修飾する名詞の性・数・格に一致し、名詞の後ろに置く(gandér krásen「割れた硬木」、gandérul krásenul「割れた硬木ども」)。否定の分詞は nakrásen「割れのない」。使役形 krasíþ-「割る・裂く」(例:krasíþa kelár pélsan「樵が脂の木を割る」)。もの名詞 krasó(重性・o語幹)「割れ目・裂け目」。

語源

古高原語の *kras- にさかのぼる。木が裂けるときの乾いた音をまねた擬音から生まれた語と考えられている。使役形 krasíþ- は krás- に -íþ- がついたもの、krasó は -ó「〜するもの(重)」がついたもの、nakrásen は分詞 krásen に否定の na- がついたものである。

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