小説
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しかし
前の文と対立・食い違う内容を述べる文を導く。例:lísa lisár sáindaran, salóur na lúuma ausenár élan.「書記は証文を書いた。しかし目付殿はそれをご覧にならない。」
áura selvá, salóur dúlo ílmo.
読み:アウラ セルヴァー、サロール ドゥーロ イルモ。
| áur-a | selvá, | salóur | dúl-o | ílmo. |
| 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> | しかし | 下る-<(重いものが)> | 水<主格> |
「息は昇る。しかし、水は下る。」
salóur「瀬の外に」は逆接。強勢があり、後ろに短い切れ目が入る。
rímbin þílim, salóur na rímbin vúurim sórel.
読み:リンビン シーリン、サロール ナ リンビン ヴーリン ソーレル。
| rímb-in | þíl-im, | salóur | na | rímb-in | vúur-im | sórel. |
| 数える-<〜して・〜く> | 分かる-<私が> | しかし | <〜ない> | 数える-<〜して・〜く> | 届く-<私が> | 今日 |
「数え方は知っているが、今日は数えられない。」
能力の þíl- と、可能の vúur- を並べて使い分ける。
toríþa ráuvan kelárais un krévan, salóur na kélan kelárai árnelan.
読み:トリーサ ラウヴァン ケラーライス ウン クレーヴァン、サロール ナ ケーラン ケラーライ アルネラン。
| tor-íþ-a | ráuvan | kel-ár-ais | un | kréva-n, | salóur | na | kél-an | kel-ár-ai | árnel-an. |
| 来る-<〜させる>-<(軽いものが)> | 森の巫<主格> | 伐る-<〜する人>-<〜たちを> | 内に | 練習の場-<対格> | しかし | <〜ない> | 伐る-<彼らが> | 伐る-<〜する人>-<〜たちが> | 木-<対格> |
「森の巫は樵たちを稽古の場へ呼び寄せるが、樵たちは木を伐らない。」
un と対格を組み合わせると「〜の中へ」の意味になり、un krévan は「稽古の場へ」となる。伐り出しの詞を稽古で唱えても本番の儀式にはならず、樵はそこでは斧を入れない。そのことを言った文である。使役の toríþ-「呼び寄せる」は、後ろに強勢のある接辞がないので、-íþ- が強勢をとる。逆接の salóur は二つめの文の頭に置く。立っている木 árnel は軽性なので、対格は -an になる。
na selvatáulim viráis, salóur selvatáulim virnourán.
読み:ナ セルヴァタウリン ヴィライス、サロール セルヴァタウリン ヴィルノウラーン。
| na | selvatául-im | vir-áis, | salóur | selvatául-im | virnour-án |
| <〜ない> | 聞き取る-<私が> | 言葉-<〜たちを> | しかし | 聞き取る-<私が> | 意味-<対格> |
「言葉そのものではなく、意味を聞き取っている。」
意味をくみ取る用法。na は直説法の否定。salóur は逆接の接続小辞で、二つめの文の頭に置かれる。
na gélim du gólvo, salóur gélim du drúnor.
読み:ナ ゲーリン ドゥ ゴルヴォ、サロール ゲーリン ドゥ ドルーノル。
| na | gél-im | du | gólvo | salóur | gél-im | du | drúnor |
| <〜ない> | 行く-<私が> | 下手 | 旧道<対格> | しかし | 行く-<私が> | 下手 | 崖道<対格> |
「旧道へは行かない、それではなく崖道へ行く。」
場面:道案内・日常会話。salóurは後続の文の頭に立つ逆接。同一主語は動詞の人称語尾が示すので二度目に主語代名詞を添えない。duと組む重性名詞は主格と対格が同形だが、前置詞句として旧道.ACC・崖道.ACCに読む。
na wápim krǘmo, salóur wápim krumsámon.
読み:ナ ワーピン クリューモ、サロール ワーピン クルンサーモン。
| na | wáp-im | krǘmo, | salóur | wáp-im | krumsámon. |
| <〜ない> | 清める-<私が> | 歯<対格> | しかし | 清める-<私が> | 歯の皮<対格> |
「「歯をきれいにしているのではなく、歯の皮をきれいにしている。」」
歯そのものを指す krǘmo と、歯を包む柔らかい口内の皮帯を区別して言う字義どおりの言い方を対比する文。salóur が逆接で、動作の対象を対比している。
éso glünóra, salóur na éso fleuróra.
読み:エーソ グリュノーラ、サロール ナ エーソ フレウローラ。
| és-o | glünóra, | salóur | na | és-o | fleuróra. |
| いる-<(重いものが)> | グリュノーラ<主格> | しかし | <〜ない> | いる-<(重いものが)> | フレウローラ<主格> |
「グリュノーラはあるが、フレウローラはない。」
旧道の岩棚のうち、上部の glünóra は棚として残る一方、下部の fleuróra は崩落したことを、年代記・昔語りで対比する言い方。存在動詞 és- は主語の古地名に合わせ、重性の 3人称単数 -o をとる。逆接の salóur は「同じ瀬の外へ移る」ニュアンスを持つ。
na vándim tromsnórul faronárar, salóur vándim fáron.
読み:ナ ヴァンディン トロンスノールル ファロナーラル、サロール ヴァンディン ファーロン。
| na | vánd-im | tromsnór-ul | faronár-ar, | salóur | vánd-im | fáron. |
| <〜ない> | 量る-<私が> | 歩幅-<〜たちを> | 運び人-<〜らの>, | しかし | 量る-<私が> | 荷<対格> |
「運び人たちの歩幅は量らず、荷を量る。」
帳場や書面の作法を示す文。人の歩みを直接量るのではなく、荷の重さを見積もる。salóurは流れを変える逆接。tromsnórulは重性子音語幹の複数対格で主格と同形、faronárarは運び人の複数属格。
kréuna nóra, salóur áura selvá
読み:クレウナ ノーラ、サロール アウラ セルヴァー
| kréun-a | nóra, | salóur | áur-a | selvá |
| 更ける-<(軽いものが)> | 夜<主格> | しかし | 昇る-<(軽いものが)> | 息<主格> |
「夜は更ける。しかし、息は昇る。」
詩文・儀礼語のような対句。逆接の salóur は第二節頭に立つ。夜 nóra も息 selvá も軽性の主語として扱われ、動詞はいずれも軽性の3人称単数語尾 -a をとる。夜の「更ける」と息の「昇る」を上下の対として並べる型である。
ところが
前の文から当然予想される成り行きに反する展開を示す。例:éso tambór némei, salóur na éso sáko.「雑穀はある。ところが塩はない。」
éso fáron némei, salóur na ésa faronár.
読み:エーソ ファーロン ネーメイ、サロール ナ エーサ ファロナール。
| és-o | fáron | ném-ei, | salóur | na | és-a | faron-ár. |
| いる-<(重いものが)> | 荷<主格> | <私>-<与格> | ところが | <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 荷-<〜する人・主格> |
「荷はある。ところが、運び人がいない。」
市でのやりとり。荷があるのに、それを担ぎ上げる運び人がいない、商いとして当然の取り合いが成り立たない展開を示す。「ところが」の用法。fáron は重性なので存在動詞 éso、faronár は人を指す軽性なので存在動詞 és-a。faron-ár は fáron「荷」+-ár「〜する人」。salóur は後文の頭、否定の na より前に置く。
éso sáko némei, salóur na éso vandó.
読み:エーソ サーコ ネーメイ、サロール ナ エーソ ヴァンドー。
| és-o | sáko | ném-ei, | salóur | na | és-o | vandó. |
| いる-<(重いものが)> | 塩<主格> | <私>-<与格> | ところが | <〜ない> | いる-<(重いものが)> | 分銅<主格> |
「塩はある。ところが、分銅がない。」
市や倉での計測・取引の場面。塩があるのに、重さを確かめる基準としての青銅の分銅がない。sáko, vandó は重性なので存在動詞 éso。salóur は後文の頭、na より前に置く。
とはいえ
相手の発言を受けて文頭に単独で置き、留保や反論を切り出す。目上に対しては推量法と組んで和らげる。
salóur, na és-a torár.
読み:サロール、ナ エーサ トラール。
| salóur, | na | és-a | torár. |
| とはいえ | <〜ない> | いる-<(軽いものが)> | 客<主格> |
「とはいえ、お客様はいません。」
相手の発言を受けて文頭に salóur を置き、留保・反論を切り出す用法。「とはいえ」を表す。torár は人を指す軽性なので存在動詞は és-a。na は直説法・推量法・仮定法を否定する小辞で、動詞の前に立つ。
salóur, gloiréla torár.
読み:サロール、グロイレーラ トラール。
| salóur, | gloir-él-a | torár. |
| とはいえ | お越しになる-<〜だろう>-<(軽いものが)> | 客<主格> |
「とはいえ、お客様はおいでになるでしょう。」
改まった場・上向きの話し方。salóur のあとの文を推量法と敬語の補充形 glóir-「お越しになる」で和らげる用法。「とはいえ」を表す。torár は人を指す軽性なので、3人称単数・軽性の語尾 -a をとる。glóir- は「来る」の尊敬の補充形。
前の文と食い違うこと、予想に反することを述べる二つめの文の前に置く逆接の小辞。「しかし・けれども・ところが」にあたる。語順は「文1, salóur 文2」で、二つめの文の頭(ké・疑問詞・対比で前に出した語句・na・mé・動詞より前)に置き、前の文とのあいだには読点(書き言葉では区切りの印)を打つ。強勢をもち(sa-lóur の ó)、後ろに短い切れ目が入る。無強勢の並列の si(「と・そして」)とは、この強勢と切れ目で聞き分けられる。字義は「瀬の外に」。高原語では時間と話の運びを源から流れ下る川と見るので、前の文と同じ向きに続く話は「同じ瀬の内」にとどまる。逆接はその瀬を外れて別の流れへ移ることであり、同じ語の組み立ての unlóur「まだ(同じ瀬の内に)」と対になる。改まった言葉では、目上の人の言ったことに salóur でじかに逆らうと「相手の流れの外に出る」ことになり、角が立つ。上向きの話し方では、salóur のあとの文を推量法にするか、謙譲の léun-「申す」で受けて和らげるのが作法である。宮廷の詩では、対句の二句目の頭に置いて、上と下・軽と重の向きの転換を示す語として好まれる。崖道や縁の言葉では、くだけて slóur とも言う。
格変化しない接続の小辞。強勢あり。二つの主節(または主節と主節に準ずる文)のうち、二つめの文の最前に置く。ké・疑問詞・前に出した対比の語句・na・mé はすべて salóur の後ろに来る(文1, salóur ké V… / 文1, salóur na V…)。unlóur「まだ」は動詞の直後に置くので、位置で区別できる。名詞と名詞をつなぐ「AだがB」には使わず、文と文だけをつなぐ。単独で文頭に立てて、相手の言葉に「とはいえ」と返すこともできる。
前置詞 sal「〜の外に」+ lóur「瀬」。sal-lóur の重なった l が一つに縮んだ形。unlóur「まだ(同じ瀬の内に)」と同じ作りで、意味が裏返しになっている。くだけた形 slóur は、強勢のない a が落ちたもの(語頭の sl は許される子音のつながり)。
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