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この課では、高原の人が改まった場で名乗るときの、長い名乗りを読み解けるようになることを目指します。
この言語が話されている高原では、人を名だけで言い表すことはあまりありません。ふだんは「名+家名」のフルネームを使います。改まった場では、さらに「どの家の源から何世代下った者か」「身分の階段の何段目にいるか」を一息に添えて名乗ります。名乗りが長いほど古い家の出で、誇らしいこととされます。
この課の目標は次の三つです。
sélvan ráimaros「ライマル家のセルヴァン」)dáumbar téir「二十三」)第2課では þélim sélvanan「セルヴァンと名乗る」という短い名乗りを習いました。この課では、それを宮廷でも通じる長い名乗りまで広げます。
| fóndar | [ˈfondar] | 源 | 「源・泉」。重性なので「〜の」は fóndaros になります。家系の始祖のことも指します。 |
| ráimar | [ˈraimar] | ライマル | 家名(源の名)の例。重性なので「〜の」は ráimaros です。軽性の aldár「座」の「〜の」が aldáres になるのと比べてください。 |
| gléinar | [ˈgleinar] | グレイナル | 家名の例。gléin「清い」と響きが似ているので、聞き違えないようにしましょう。「〜の」は gléinaros です。 |
| ráun | [ˈraun] | 流れ(家系) | 「流れ」のこと。家系を川の流れにたとえた語です。同じ家系の親族は「同じ流れ」の人と言います。 |
| éul | [ˈeul] | 別の流れの | 「別の流れの」。結婚でつながった親族に使います。名詞の後ろに置きます(ráun éul「別の流れ」)。 |
| anlóur | [anˈlour] | 瀬上(親) | 「瀬上」、つまり一つ上の世代=親のことです。父か母かは言い分けません。 |
| dulóur | [duˈlour] | 瀬下(子) | 「瀬下」、つまり一つ下の世代=子のことです。息子か娘かは言い分けません。 |
| þelá | [θeˈla] | 名前 | 「名前」。成人の儀でつけるおとなの名(成名)は、ふつうこの語で言います。 |
| þelíña | [θeˈliɲa] | 幼名 | 「幼名」。þelá に「小さい」の -íña がついた形です。家族とごく親しい人しか使いません。 |
| aurþelá | [aurθeˈla] | 昇名 | 「昇名」。亡くなって一年が過ぎたあとにつける名です。「昇る」aur- が入っています。 |
| lourvirár | [lourviˈrar] | 系譜読み | 「系譜読み」。家の系譜を源から一瀬ずつ唱える役目の人で、多くはその家の年長の女性です。 |
| dáumbar | [ˈdaumbar] | 二十 | 「二十」。dáu「二」と ombár「十」が縮まってできた不規則な形です。 |
規則:人を言い表すときは 名(成名) と 家名 の二つを使います。
高原の人は「人は昇り、家は流れ下る」と言います。名は軽く、家名は重いという性の違いは、この言い方をそのまま文法にしたものです。
例
| フルネーム | 逐語訳 | 意味 |
|---|---|---|
sélvan ráimaros |
セルヴァン・ライマルの | ライマル家のセルヴァン |
viréla gléinaros |
ヴィレラ・グレイナルの | グレイナル家のヴィレラ |
sílan ráimaros |
シラン・ライマルの | ライマル家のシラン |
格の変わり方:文の中で形が変わるのは 名のほうだけ です。家名はいつも「〜の」の形 -os のままです。
| 子音で終わる名 | -a で終わる名 | |
|---|---|---|
| 〜が | sélvan ráimaros |
viréla gléinaros |
| 〜を | sélvanan ráimaros |
virélan gléinaros |
| 〜の | sélvanes ráimaros |
viréles gléinaros |
| 〜に | sélvanei ráimaros |
virélei gléinaros |
注意点
ráimar は、軽性の aldár「座」と同じく -ar で終わる語です。それでも重性なので、「〜の」は aldáres 型ではなく ráimaros になります。語の形ではなく「源の名だから重い」と覚えてください。tóra viréla gléinaros「グレイナル家のヴィレラが来る」)。家名が重性だからといって動詞を -o にすると、その人を重性で指すことになり、ひどい侮辱になります。sélvan, sílan)、女子の名は -a で終わるもの(viréla, silára)が多いですが、これは文法の決まりではなく習わしです。規則:高原の人は、一生のあいだに場面ごとにいくつかの名前を使い分けます。
| 名前 | 高原語 | いつ・誰が使うか |
|---|---|---|
| 幼名 | þelíña |
生まれたときに家でつける。家族とごく親しい人だけが使う |
| 成名(名) | þelá |
成人の儀でつける、おとなの名。ふだんの「名前」 |
| 家名 | (源の名) | その家の流れの源、つまり始祖の名。重性 |
| 昇名 | aurþelá |
亡くなって一年が過ぎたあと、系譜に書き入れるときにつける名 |
例
-íña をつけた形が多いです:silára → silíña「シラーラちゃん」þelíña という語そのものも、þelá + -íña です。注意点
aurél「あの方」で言い表します。規則
dáumbar です。téirombar「テイロンバル」)。| 数 | 高原語 | 数 | 高原語 | |
|---|---|---|---|---|
| 10 | ombár |
60 | sóurombar |
|
| 20 | dáumbar(不規則) |
70 | nélombar |
|
| 30 | téirombar |
80 | ánþombar(ánþa の -a が落ちる) |
|
| 40 | fáirombar |
90 | réumombar |
|
| 50 | límombar |
例
| 数 | 高原語 | 逐語訳 |
|---|---|---|
| 11 | ombár ín |
十・一 |
| 14 | ombár fáir |
十・四 |
| 23 | dáumbar téir |
二十・三 |
| 35 | téirombar lím |
三十・五 |
| 99 | réumombar réum |
九十・九 |
注意点
dáumbar téir fáronul「荷二十三」)。ín・dáu で終わっても、名詞は 複数 にします(dáumbar ín plánais「帳簿二十一冊を」)。単数・双数にするのは、数がちょうど1・2のときだけです。dáumbar を「ダウ・オンバル」と分けて言うと、言い慣れない人の数え方に聞こえます。「ダウンバル」と一息に言いましょう。ombára は星座の名前の中だけに残る古い形です。数を数えるときには使いません。規則:高原語には「第何段」のような序数の言い方がありません。かわりに次の形で言います。
dúlen(下りた)+ 数 + 段þrén/瀬lóurの「〜を」
dúlen ín þrén)、2以上なら複数です。2のときも双数ではなく複数にします(dúlen dáu þrénul)。段や瀬は一段ずつ続いていく道のりで、そろったひと組ではないからです。重性なので、「〜を」は「〜が」と同じ形です。| 意味 | 身分(段 þrén) |
世代(瀬 lóur) |
|---|---|---|
| 下りぬ(0) | þrén nadúlen 下りぬ段(王の段) |
(始祖=源そのもの) |
| 1 | dúlen ín þrén 一段下り |
dúlen ín lóur 一瀬下り(子) |
| 2 | dúlen dáu þrénul 二段下り |
dúlen dáu lóurul 二瀬下り(孫) |
| 4 | dúlen fáir þrénul 四段下り |
dúlen fáir lóurul 四瀬下り |
| 23 | — | dúlen dáumbar téir lóurul 二十三瀬下り |
例
ésa lisár dúlen fáir þrénul.「その書記は四段下りの者だ」注意点
an fóndaros + 家名 -os「〜の源から」を前に置きます。þrén が「スレン」、lóur が「ロール」に聞こえます。音はまったく違うので、取り違えないようにしましょう。規則:改まった場では、謙譲の duþélim「名乗らせていただく」で名乗ります。名前は「〜を」の形にし、源・瀬・段を一息に添えます。
duþélim + 名
-an, an fóndaros + 家名-os+ dúlenan + 数 + lóurul, dúlenan + 数 + þrénul.
例
duþélim sélvanan, an fóndaros ráimaros dúlenan dáumbar téir lóurul, dúlenan fáir þrénul.「ライマルの源から二十三瀬下りた、四段下りの者、セルヴァンと名乗らせていただきます」
| 部分 | 意味 |
|---|---|
duþélim |
名乗らせていただく(du- + þél- + -im) |
sélvanan |
セルヴァンを(名・軽性の「〜を」) |
an fóndaros ráimaros |
ライマルの源から |
dúlenan dáumbar téir lóurul |
二十三瀬下りた |
dúlenan fáir þrénul |
四段下りた |
分詞の形を名前に合わせる:dúlen は「下りた」という飾りの語(分詞)です。飾りの語は、飾る名詞の性・数・格に合わせます(第10課)。名乗りでは名前が「〜を」の形 sélvanan なので、dúlen も dúlenan になります。
| 文の形 | 名前 | 分詞 |
|---|---|---|
| 「〜は…の者だ」 | sélvan(〜が) |
dúlen |
| 改まった名乗り | sélvanan(〜を) |
dúlenan |
注意点
dúlenan の -an は名前に合わせた語尾です。後ろの lóurul・þrénul の「〜を」とは別のものです。dúlenan です。規則:親族は、次の三つを組み合わせて言い表します。
| 語 | 字義 | 意味 |
|---|---|---|
anlóur |
上の瀬 | 親(父・母) |
dulóur |
下の瀬 | 子(息子・娘) |
ráun |
流れ | 家系 |
ráun éul |
別の流れ | 結婚でつながった家系 |
例
ésa endríña sé dulóur némes.「この子は私の子だ」注意点
þrén「段」は使いません。家族の中で段の話をすると、身分の上下の話になってしまうからです。þélim sélvanan ráimaros.
読み:セーリン セルヴァナン ライマロス。
| þél-im | sélvan-an | ráimar-os. |
| 名乗る-<私が> | セルヴァン-<対格> | ライマル-<属格> |
「私はライマル家のセルヴァンと名乗ります。」
ふつうの名乗り。名は「〜を」の -an になり、家名は「〜の」の -os のまま変わりません。
tóra viréla gléinaros es orénos.
読み:トーラ ヴィレーラ グレーナロス エス オレーノス。
| tór-a | viréla | gléinar-os | es | orén-os. |
| 来る-<(軽いものが)> | ヴィレラ<主格> | グレイナル-<属格> | から | 縁-<属格> |
「グレイナル家のヴィレラが縁から来ます。」
人を受ける動詞は軽性の -a です。家名が重性でも、動詞は -o にしません。
vándim dáumbar téir fáronul.
読み:ヴァンディン ダウンバル テール ファーロヌル。
| vánd-im | dáumbar | téir | fáron-ul. |
| 量る-<私が> | 二十 | 三 | 荷-<〜たちを> |
「私は荷を二十三量ります。」
23 は dáumbar téir と、端数を後ろに続けます。3以上なので名詞は複数です。
léisa lisár ombár ín plánais.
読み:レーサ リサール オンバール イーン プラーナイス。
| léis-a | lis-ár | ombár | ín | plán-ais. |
| 書く<〜し終えた>-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 十 | 一 | 帳簿-<〜たちを> |
「書記は帳簿を十一冊書き終えました。」
11 は ombár ín。端数が ín でも、11以上なので名詞は複数にします。
ésa lisár dúlen fáir þrénul.
読み:エーサ リサール ドゥーレン ファイル スレーヌル。
| és-a | lis-ár | dúl-en | fáir | þrén-ul. |
| いる-<(軽いものが)> | 書く-<〜する人> | 下る-<〜した・〜された> | 四 | 段-<〜たちを> |
「その書記は四段下りの者です。」
主語が「〜が」の形なので、分詞は語尾のない dúlen です。þrénul は道のりの「〜を」です。
ésa endríña sé dulóur némes.
読み:エーサ エンドリーニャ セー ドゥロール ネーメス。
| és-a | endríña | sé | dulóur | ném-es. |
| いる-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | この<軽性> | 子 | <私>-<属格> |
「この子は私の子です。」
dulóur「下の瀬」は、息子にも娘にも使います。
ké ráines þelíñan éles? na ráinim.
読み:ケー ライネス セリーニャン エーレス?ナ ライニン。
| ké | ráin-es | þelíñ-an | él-es? | na | ráin-im. |
| <〜か> | 知る-<あなたが> | 幼名-<対格> | <3人称単数・軽性>-<属格> | <〜ない> | 知る-<私が> |
「「彼の幼名を知っているか」「知らない」」
幼名は家族とごく親しい人しか知らないので、知らないのがふつうです。
lóima lourvirár aurþelán aursáres.
読み:ロイマ ロウルヴィラール アウルセラーン アウルサーレス。
| lóim-a | lourvirár | aurþel-án | aursár-es. |
| 唱える-<(軽いものが)> | 系譜読み<主格> | 昇名-<対格> | 祖先-<属格> |
「系譜読みが祖先の昇名を唱えます。」
aurþelá は語尾に強勢があるので、「〜を」は -án です。
duþélim sélvanan, an fóndaros ráimaros dúlenan dáumbar téir lóurul, dúlenan fáir þrénul.
読み:ドゥセーリン セルヴァナン、アン フォンダロス ライマロス ドゥーレナン ダウンバル テール ロールル、ドゥーレナン ファイル スレーヌル。
| du-þél-im | sélvan-an, | an | fóndar-os | ráimar-os | dúl-en-an | dáumbar | téir | lóur-ul, | dúl-en-an | fáir | þrén-ul. |
| <〜させていただく>-名乗る-<私が> | セルヴァン-<対格> | 上手 | 源-<属格> | ライマル-<属格> | 下る-<〜した・〜された>-<対格> | 二十 | 三 | 瀬-<〜たちを> | 下る-<〜した・〜された>-<対格> | 四 | 段-<〜たちを> |
「ライマルの源から二十三瀬下りた、四段下りの者、セルヴァンと名乗らせていただきます。」
改まった名乗り。分詞 dúlenan は二度とも、名前の sélvanan(軽性・「〜を」)に合わせています。
duþélim virélan, an fóndaros gléinaros dúlenan dáumbar ánþa lóurul, dúlenan sóur þrénul.
読み:ドゥセーリン ヴィレーラン、アン フォンダロス グレーナロス ドゥーレナン ダウンバル アンサ ロールル、ドゥーレナン ソール スレーヌル。
| du-þél-im | virél-an, | an | fóndar-os | gléinar-os | dúl-en-an | dáumbar | ánþa | lóur-ul, | dúl-en-an | sóur | þrén-ul. |
| <〜させていただく>-名乗る-<私が> | ヴィレラ-<対格> | 上手 | 源-<属格> | グレイナル-<属格> | 下る-<〜した・〜された>-<対格> | 二十 | 八 | 瀬-<〜たちを> | 下る-<〜した・〜された>-<対格> | 六 | 段-<〜たちを> |
「グレイナルの源から二十八瀬下りた、六段下りの者、ヴィレラと名乗らせていただきます。」
-a で終わる名も、「〜を」は -an です(virélan)。分詞は男女の区別なく dúlenan です。
次のフルネームを高原語で言ってください。
sílan ráimarossilára gléinarostóra silára gléinaros.家名はいつも「〜の」の形 -os です。人を受ける動詞は軽性の -a にします。tóro と言うと、その人を重性で指す侮辱になります。
次の数を高原語で書いてください。
ombár fáirdáumbar(不規則な形。dáuombar ではありません)dáumbar néltéirombar límréumombar réum十の位を先に、端数を後ろに言います。
空欄を埋めて、改まった名乗りを完成させてください。
「グレイナルの源から十九瀬下りた、七段下りの者、ヴィレラと名乗らせていただきます」
duþélim virél___, an fóndaros gléinar___ dúlen___ ombár réum lóurul, dúlen___ nél þrénul.
duþélim virélan, an fóndaros gléinaros dúlenan ombár réum lóurul, dúlenan nél þrénul.
virélan です。gléinaros です。dúlenan です。次の高原語を日本語に訳してください。
ésa lisár dúlen sóur þrénul.ésa sílan dúlen dáu lóurul an fóndaros ráimaros.ké ráines aurþelán aursáres?lóurul で言います。þrén(段)なら身分、lóur(瀬)なら世代です。
dúlen dáu þrénul と dúlen dáu lóurul は、どう意味が違いますか。また、王の段はどう言いますか。
dúlen dáu þrénul:「二段下り」。身分の階段で、王の座から二段下りた身分(王族の傍系や都の古い大家)です。dúlen dáu lóurul:「二瀬下り」。世代で、家の源(始祖)から二世代下った者、つまり始祖の孫です。þrén nadúlen「下りぬ段」と言います。発音の問題です。
dáumbar と téirombar は、どの音節に強勢がありますか。þrén と lóur をそれぞれ何と聞きやすいですか。正しい発音のこつも答えてください。gléinar(家名)と gléin(清い)の違いを、発音で説明してください。þrén は「スレン」や「トレン」に、lóur は「ロール」に聞こえやすいです。þ は舌先を歯に軽く当てて息だけを出します(英語 think の th)。lóur は「ロ・ウ」と二重母音をはっきり言い、語末の r を弾きます。gléin は一音節で「グレイン」です。gléinar は「グレイ・ナル」と二音節で、強勢は最初にあります。-ar が聞こえたら家名です。この言語が話されている高原では、人の位置を二つの「下り」で言い表します。
一つめは段(þrén)です。 身分は、王の丘に刻まれた石段にたとえられます。いちばん上が王の座る「下りぬ段」(þrén nadúlen)で、そこから一段下り、二段下り……と数えて、いちばん下が九段下りです。あわせて十の段になります。高原は十進法の文化で、十は「そろった、欠けのない数」とされるので、段の数も十と決まっています。段は、いま生きている人の並びです。書記や星読みは四段下り、都の商人は六段下り、崖道の運び人は九段下りとされています。
二つめは瀬(lóur)です。 高原では家系を川にたとえます。始祖は北の高みの泉、つまり源(fóndar)で、子孫は世代ごとに一つずつ下へ流れていきます。川が一つ落ちてから次に落ちるまでのひと続きを「瀬」と呼び、この語で世代を数えます。段と違って瀬には上限がなく、古い家では二十瀬、三十瀬を越えます。瀬の数が多いのは、それだけ古くから続いている証なので、恥ではなく誉れです。
王家は、北の空でいちばん明るい星を源とする流れだと唱えています。系譜の上では、今の王は星から何十瀬も下った者です。それでも身分の上では「下りぬ段」にいます。宮廷では、王の座は「星から下りてきた流れが、人の世にはじめて触れるところ」だと説明されます。詩人はこれを「下りぬ段に座し、もっとも長く流れ下った方」と詠みます。
この二つの見方は、名前の文法にも表れています。人の名は息の形とされるので軽性です。家名は源の名なので重性です。「人は昇り、家は流れ下る」という言い方のとおり、フルネーム sélvan ráimaros の中で、軽い名と重い家名が並んでいます。
家の流れを覚えて守るのは、各家の年長の女性、系譜読み(lourvirár)です。婚姻が決まるときには、両家の系譜読みが源から一瀬ずつ名を読み交わし、流れが一瀬も欠けずにつながっていることを確かめます。改まった場で「〇〇の源から何瀬下りた、何段下りの者」と一息に名乗れることは、家柄と教養の証です。長い名乗りをよどみなく唱えられる人ほど、敬われます。
ただし、段にも瀬にも乗らない人々もいます。崖の下の干潟の人や、外から来た人は「段の外の者」(naþrenár)です。系譜をもたないので、亡くなっても昇名が与えられることはありません。
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