小説
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十
数の十。三十から九十までの複合語の後ろの要素にもなる。
pómbar fáronul faronéres? faronérim ombár fáronul.
読み:ポンバル ファーロヌル ファロネーレス?ファロネーリン オンバール ファーロヌル。
| pómbar | fáron-ul | faron-ér-es? | faron-ér-im | ombár | fáron-ul. |
| いくつ | 荷-<〜たちを> | 荷-<〜でする>-<あなたが> | 荷-<〜でする>-<私が> | 十 | 荷-<〜たちを> |
「「荷をいくつ担ぐんだ?」「十担ぐ。」」
二人の発話。疑問の数詞 pómbar は、名詞ごと動詞の前に出る。高原語には「はい」にあたる語がないので、答えは動詞を自分の人称に変えて繰り返し、数を添える。崖道での、くだけたやりとり。
luuménde ausenár ombár fáronul.
読み:ルーメンデ アウセナール オンバール ファーロヌル。
| luum-énd-e | au-sen-ár | ombár | fáron-ul. |
| ご覧になる-<〜しますように>-<(軽いものが)> | <お〜になる・御〜>-見る-<〜する人> | 十 | 荷-<〜たちを> |
「目付殿に、十の荷をお検めいただきたく存じます。」
縁の市で、都の手代が目付に頼むときの改まった言い方。命令の代わりに願望法の3人称を使う。lúum- は「見る」の尊敬の補充形で、強勢が -énd- に移るので語根の ´ は消える。数えているのは目上の人ではなく荷なので、数詞を使ってよい。
ké víres dáumbar? vírim, ombár dáu fréimau.
読み:ケー ヴィーレス ダウンバル?ヴィーリン、オンバール ダウ フレーマウ。
| ké | vír-es | dáumbar? | vír-im, | ombár | dáu | fréim-au. |
| <〜か> | 言う-<あなたが> | 二十 | 言う-<私が> | 十 | 二 | 倍-<双数> |
「「二十と言ったか?」「言った。十の二倍だ。」」
二人の発話。市で数を確かめ合うやりとり。はい・いいえにあたる語がないので、問いの動詞を自分の人称に変えて繰り返して答える(vírim)。そのあとに念押しの言い換えを添える。掛ける数が dáu なので、fréim は双数の fréimau になる。
slúun rólanar sóndelar, ombár ombár fréimai, ombár fréimai.
読み:スルーン ローラナル ソンデラル、オンバール オンバール フレーマイ、オンバール フレーマイ。
| slúun | rólan-ar | sóndel-ar, | ombár | ombár | fréim-ai, | ombár | fréim-ai. |
| 千 | 巻-<〜らの> | 書物-<〜らの> | 十 | 十 | 倍-<〜たちが> | 十 | 倍-<〜たちが> |
「書物千巻。十の十倍、そのまた十倍。」
荷札や帳簿の、数の念押し(freimvirá)の定型。動詞のない名詞句を並べる。千 slúun は量の名詞 rólan を複数属格でとり、rólan がさらに書物を複数属格でとるので、属格が二つ続く。念押しは「掛けられる数+掛ける数+fréim」の順で言い、fréim の数は掛ける数に合わせる(ombár の後ろなので複数)。干潟の千(sélu)との取り違えを防ぐための言い換えで、度量衡の碑の「千とは、十を十度、それを十度」と同じ考えに立つ。
rímbim ombár fáronul.
読み:リンビン オンバール ファーロヌル。
| rímb-im | ombár | fáron-ul. |
| 数える-<私が> | 十 | 担ぎ-<〜たちを> |
「十担ぎを数える。」
帳簿や仕分けで単位を数える場面。数詞 ombár は「十」で、重性名詞 fáron の複数(主格・対格) fáronul に掛かる。動詞 rímb- は1人称単数。
そろった・欠けのない
何一つ欠けずにそろっていることを表す。十の段、十の灯のように、満ちた全体を言うときに使う。
dúlan ombár þrénul es aldáres áurenes.
読み:ドゥーラン オンバール スレーヌル エス アルダーレス アウレネス。
| dúl-an | ombár | þrén-ul | es | aldár-es | áur-en-es. |
| 下る-<彼らが> | そろった | 段-<〜たちが> | から | 座-<属格> | 昇る-<〜した・〜された>-<軽性・属格> |
「欠けのない段は、高き座から下っていく。」
身分の秩序を説く、改まった言い回し。ombár þrénul は「十の段」だが、数えた結果を言うのではなく、「一段も欠けない階段の全体」という意味で使っている。主語の þrénul は重性の複数主格。es+属格で「〜から」。
ésa plána sé ombár.
読み:エーサ プラーナ セー オンバール。
| és-a | plána | sé | ombár. |
| いる-<(軽いものが)> | 帳簿<主格> | この<軽性> | そろった |
「この帳簿は、一行も欠けずにそろっている。」
掛けを精算する前に帳簿を突き合わせて、記載に欠けがないことを確かめたあとの言い方。ombár を述語にして、「欠けがない・満ちている」という意味で使っている。数詞は格変化しないので、述語になっても語尾がつかない。紙の帳簿 plána は軽性なので、繋辞は -a、指示詞は sé になる。plána の主格はそのままの形(a語幹の -a は類推で復元された語幹の母音)なので、ここでは切り分けずに示した。
基数の「十」。十進法の位の基本になる語。三十から九十までは「一の位の数詞+ombár」の複合語で言い、強勢は前の数詞に移る(téirombar「三十」、fáirombar「四十」)。十一から十九は、ombár の後ろに一の位の数詞を続けて言う(ombár ín「十一」、ombár dáu「十二」)。二十の dáumbar だけは縮まった不規則な形になる。両手の指がすべてそろった数なので、「そろった」「欠けのない」という意味ももつ。身分の段が十と決まっているのもこの感覚から来ている。古い形 ombára は、星座名 ombára ilánai「十の灯」の中にだけ固まって残っている。綴りは〈ombara〉。
数詞。不変化。後続の名詞は複数。十の位の複合語では後ろの要素になる。
古高原語 *ombára から。古い脱落で語末の母音が落ちた。星座名の ombára は脱落前の形。
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