小説
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手
手首から先の部分。
flúun már, endríña.
読み:フルーン マール、エンドリーニャ。
| flúun | már, | endríña. |
| 洗う<命令法><あなたが> | 手<対格> | 子ども |
「手を洗いなさい、坊や。」
食事の前に子どもに言う日常の命令。már は重性の子音語幹名詞なので、対格は主格と同じ形。呼びかけには呼格を使わず、名詞を文末に読点で区切って添える。
auflúuna aurél aumár.
読み:アウフルーナ アウレール アウマール。
| au-flúun-a | aurél | au-már. |
| <お〜になる・御〜>-洗う-<(軽いものが)> | あの方 | <お〜になる・御〜>-手<対格> |
「あの方は御手をお洗いになる。」
目上の人の体の部分には au- をつけて aumár「御手」と言い、動詞にも尊敬の au- をつける。aumár は重性なので、対格は主格と同じ形。御手を双数にして aumárou「御両手」と言うのは、人を数えることにならないので許される。
flúunim frúm es máros.
読み:フルーニン フルーン エス マーロス。
| flúun-im | frúm | es | már-os. |
| 洗う-<私が> | 血<対格> | から | 手-<属格> |
「手から血を洗い流す。」
狩りで獲物をさばいたあとなどの日常の言い方。重性の frúm は対格も主格と同じ形。洗い落とす元の場所は es+属格で示す。
flúuna líura már si nóumo.
読み:フルーナ リーウラ マール シ ノーモ。
| flúun-a | líura | már | si | nóumo. |
| 洗う-<(軽いものが)> | 女<主格> | 手<対格> | と | 顔<対格> |
「女が手と顔を洗う。」
基本の VSO の文。主語の líura は人なので、動詞は軽性の -a をとる。体の部分 már・nóumo は重性なので、対格も主格と同じ形になる。目的語を二つ並べるときは si でつなぐ。
flúun már si nóumo, endríña.
読み:フルーン マール シ ノーモ、エンドリーニャ。
| flúun | már | si | nóumo, | endríña. |
| 洗う<命令法><あなたが> | 手<対格> | と | 顔<対格> | 子ども |
「手と顔を洗いなさい、子よ。」
下向きの命令法2人称単数は、むき出しの語幹 flúun で言う。呼びかけは呼格を使わず、読点で区切って文の終わりに添える。
brúumo frélo es máros némes.
読み:ブルーモ フレーロ エス マーロス ネーメス。
| brúum-o | frélo | es | már-os | ném-es. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 魚<主格> | から | 手-<属格> | <私>-<属格> |
「魚が私の手から落ちた。」
日常の文。frélo「魚」は重性o語幹なので、動詞は重性の -o をとる。már「手」も重性で、属格は -os。es+属格で「〜から」。所有者の属格 némes は名詞の後ろに置く。
brúumo frúm rús es máros némes.
読み:ブルーモ フルーン ルース エス マーロス ネーメス。
| brúum-o | frúm | rús | es | már-os | ném-es. |
| 落ちる-<(重いものが)> | 血<主格> | 赤い | から | 手-<属格> | <私>-<属格> |
「私の手から赤い血が落ちる。」
血 frúm は体に属するものなので重性。動詞は3人称単数・重性の -o をとり、形容詞 rús は重性の主格なので語尾がつかない。樵が手を切ったときのような日常の一言。
lúin þrílo már, mé vandésa fáron.
読み:ルーイン スリーロ マール、メー ヴァンデーサ ファーロン。
| lúin | þríl-o | már, | mé | vand-és-a | fáron. |
| とき | 震える-<(重いものが)> | 手<主格> | <禁止・願いの打ち消し> | 量る-<〜すべし>-<(軽いものが)> | 荷<対格> |
「手が震えるときは、荷を量ってはならない。」
帳場や作法書に見る規則。時節 lúin 節は主節の前に置ける。手のみが一時的に震える(意味2)。主節は主語を言わない当為法なので軽性形 vandésa。
snémbo már virán.
読み:スネンボ マール ヴィラーン。
| snémb-o | már | vir-án. |
| なぞる-<(重いものが)> | 手<主格> | 言葉-<対格> |
「手が、言葉の上をなぞる。」
詩的用法。主語 már は体の部分なので重性であり、動詞は3人称単数重性 -o をとる。目的語 virán は抽象的な「言葉」だが、書かれた言葉の表面を指先で触る意に転じた用法。
snála endríña már
読み:スナーラ エンドリーニャ マール
| snál-a | endríña | már |
| 閉じる-<(軽いものが)> | 子<軽性><主格> | 手<重性><対格> |
「「その子は手を握る。」」
már を目的語に取ると、開いた手を閉じて握る意。már は重性で、単数対格は無標識。主語の身体部分は所有を表さないのが自然。
lína ólmar márou.
読み:リーナ オルマル マーロウ。
| lín-a | ólmar | már-ou. |
| 伸ばす-<(軽いものが)> | 年長者<主格> | 手-<双数・対格> |
「年長者は両手を伸ばす。」
両手という一対の肢体。目的語に双数形 márou を取る。主語の身体部位を指す場合、所有の属格を添えない形も自然。
glünlúin, gíro duléumo klér már.
読み:グリュンルーイン、ギーロ ドゥレウモ クレール マール。
| glünlúin, | gír-o | duléumo | klér | már |
| 凍りの頃 | 刺す-<(重いものが)> | 下風<主格> | 冷たい | 手<対格> |
「凍りの頃、冷たい下風が手を刺す。」
凍りの頃の冷気による刺すような感覚。凍りの頃を場面の枠として文頭に置く。 klér が主語 duléumo を修飾する。冷気が主語の言い方は、改まった場でも自然。
lámim már táses.
読み:ラーミン マール ターセス。
| lám-im | már | tás-es. |
| 掌でさする-<私が> | 手<対格> | <あなた>-<属格> |
「私はあなたの手を掌でさする。」
相対で冷えた手のひらに掌を添える場面。目的語は手。所有は第二人称代名詞の属格を名詞後に後置して示す。
hoinkráilim fáron es máros ós.
読み:ホインクライリン ファーロン エス マーロス オース。
| hoinkráil-im | fáron | es | már-os | ós |
| 手受け-<私が> | 荷<対格> | から | 手-<属格> | <3人称単数・重性・属格> |
「私は彼の手の荷を受け取る。」
日常の実務的な場面。手受け義で荷を目的語に取る。es が支配する属格句で出所を表す。所属は possessum と possessors を属格で示す。3人称重性単数属格の代名詞は語全体の形 ós として扱い、ó-s と分割しない。
klámba andaulóura kréin dáu mároun.
読み:クランバ アンダウローラ クレーン ダウ マーロウン。
| klámb-a | andaulóura | kréin | dáu | már-oun |
| 挟む-<(軽いものが)> | 祖母<主格> | 骨<対格> | 二 | 手-<双数・与格> |
「祖母は両手で骨を挟んで押さえている。」
世話的な用い方。基本語順はVSOで、主語は動詞の直後に置く。人の主語なので動詞は軽性の語尾 -a。kréin「骨」は重性だが、重性名詞は対格が無標。押さえる側の「両手」は与格双数 dáu mároun。
marméir már táses, ende.
読み:マルメール マール ターセス、エンデ。
| marméir | már | tás-es, | ende |
| 差し向ける<命令法><あなたが> | 手<対格> | <あなた>-<属格> | どうぞ |
「あなたの手を差し向けてくれ、頼む。」
物の受け渡しではなく、受け取る用意を示す身振り。命令法は語幹形になる。már は重性子音語幹で、直接格に語尾がつかない。tás の属格は táses。
síl súm mároi!
読み:シール スーン マーロイ!
| síl | súm | már-oi! |
| 払う<命令法><あなたが> | 煤<対格> | 手-<与格> |
「手から煤を払い落としなさい。」
家事や食事の前の、くだけた指示の場面。síl は「払い落とす」の意の命令法で、取り除く対象を対格に、その対象が付着している身体部位を与格に取る。この文の súm は炉の炭化物一般ではなく、手にこびりついて黒ずんだ汚れになっている煤を指す。
síl-a endríña derván es máros.
読み:シーラ エンドリーニャ デルヴァーン エス マーロス。
| síl-a | endríña | derv-án | es | már-os |
| 払う(弾いて落とす)-<(軽いものが)> | 子ども<主格> | 粉-<対格> | から | 手-<属格> |
「子どもが手から粉を払う。」
dervá「粉」を目的語に取り、手についた粉を軽く弾いて落とす日常の動作。síl- は klén-「拭く」とはちがい、表面に軽く当てて粒子を飛ばす意。es+属格は払い落とす出所を示す。
síl-a ráuvan elþíñan es máros.
読み:シーラ ラウヴァン エルシーニャン エス マーロス。
| síl-a | ráuvan | elþíñ-an | es | már-os |
| 払う(弾いて落とす)-<(軽いものが)> | 巫<主格> | 火の粉-<対格> | から | 手-<属格> |
「森の巫が手から火の粉を払う。」
elþíña「火の粉」を目的語とする。炉仕事や儀礼のあと、手についていた小さな火の粉を軽く弾いて落とす場面。拭くのではなく、何回か軽く叩いて外へ落とす動作である。
手跡
書かれた字の書きぶり。書の巧拙を言うときに使う(már sélvanes「セルヴァンの手」)。
éso már sélvanes séuril.
読み:エーソ マール セルヴァネス セウリル。
| és-o | már | sélvan-es | séuril. |
| いる-<(重いものが)> | 手跡<主格> | セルヴァン-<属格> | 美しい |
「セルヴァンの手跡は美しい。」
手跡の意味でも már は重性のままで、繋辞は -o をとる。書き手は属格で後ろに示す。書きぶりや字の美しさが身分と教養の証になるので、人の手跡をほめるのは改まった賛辞になる。
ké éso már táses só?
読み:ケー エーソ マール ターセス ソー?
| ké | és-o | már | tás-es | só? |
| <〜か> | いる-<(重いものが)> | 手跡<主格> | <あなた>-<属格> | この<重性> |
「「この手跡はお前のものか。」」
はい・いいえの問いで、ké を文のいちばん前に置く。már は重性なので、指示詞は重性の só、繋辞は -o。手紙や証文の筆跡が誰のものか確かめるときの、下向きの問い。目上の人には ké を使わず、推量法で尋ねる。
手(長さの単位)
長さの単位。腕(daumár)の十分の一。手を広げた幅(約17センチ)。
rímbim lím márul fúnelos.
読み:リンビン リーン マールル フーネロス。
| rímb-im | lím | már-ul | fúnel-os. |
| 数える-<私が> | 五 | 手(長さの単位)-<〜たちを> | 綱-<属格> |
「綱の五手分を数える。」
帳簿・記録での数量の言い方。数詞+単位 márul+対象の属格 fúnelos という定型で、「五手分の綱」を表す。単位としての már は重性の名詞として働く。
手首から先の手。物をつかむ、書く、量る手を指す、もっともふつうの語。体の部分なので重性。両手をそろえて言うときは双数 márou を使う。目上の人の手は au- をつけて aumár「御手」と言い、双数 aumárou「御両手」も許される(高めた持ち物は数えてよいため)。比喩で「書きぶり・手跡」の意味にもなる。
名詞・重性・子音語幹。属 máros、与 mároi、双 márou、複 márul。尊敬形 aumár。
古高原語 *mára から。古い語末母音の脱落で már になった。綴りは〈mara〉。
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